JPH08171319A - 電子写真装置 - Google Patents

電子写真装置

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JPH08171319A
JPH08171319A JP6315214A JP31521494A JPH08171319A JP H08171319 A JPH08171319 A JP H08171319A JP 6315214 A JP6315214 A JP 6315214A JP 31521494 A JP31521494 A JP 31521494A JP H08171319 A JPH08171319 A JP H08171319A
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JP
Japan
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layer
light
temperature
photoconductor
atom
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Pending
Application number
JP6315214A
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English (en)
Inventor
Tetsuya Karaki
哲也 唐木
Masaya Kawada
将也 河田
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Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
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Publication date
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  • Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
  • Control Or Security For Electrophotography (AREA)
  • Discharging, Photosensitive Material Shape In Electrophotography (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 電気的特性、光学的特性、光導電特性、画像
特性、耐久性、使用環境特性を改善する。 【構成】 感光体は、導電性支持体101と、Si原子を
母体として水素原子及び/またはハロゲン原子を含有す
る非単結晶材料から成り光導電性を示す光導電層103を
有する光受容層102とを備え、光導電層103は10〜30原子
%の水素を含有し、少なくとも光導電層の光の入射する
部分において、サブバンドギャップ光吸収スペクトルか
ら得られる指数関数裾の特性エネルギーが50〜60meV、
かつ伝導帯端下0.45〜0.95eVにおける局在状態密度が1
×1014cm-3以上1×1016cm-3未満のものが用いられ、前
記感光体上の電荷を除電する除電手段の除電光光量は5.
0〜8.0μJ/cm2 、除電光波長は500〜700nmであり、前記
感光体を移動させる移動手段による感光体表面速度は30
0〜400mm/secである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光(ここでは広義の光で
あって、紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線などを
意味する。)のような電磁波に対して感受性のある光受
容部材を用いた電子写真装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】像形成分野において、光受容部材におけ
る光受容層を形成する光導電材料としては、高感度で、
SN比〔光電流(Ip)/暗電流(Id)〕が高く、照
射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクト
ルを有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗値を有
すること、使用時において人体に対して無害であるこ
と、等の特性が要求される。特に、事務機としてオフィ
スで使用される電子写真装置内に組み込まれる電子写真
用光受容部材の場合には、上記の使用時における無公害
性は重要な点である。
【0003】この様な点に優れた性質を示す光導電材料
に水素化アモルファスシリコン(以下、「a−Si:
H」と表記する)があり、例えば、特公昭60−350
59号公報には電子写真用光受容部材としての応用が記
載されている。
【0004】このような電子写真用光受容部材は、一般
的には、導電性支持体を50℃〜400℃に加熱し、該
支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ
ーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCV
D法等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を形成
する。なかでもプラズマCVD法、すなわち、原料ガス
を直流または高周波あるいはマイクロ波グロー放電によ
って分解し、支持体上にa−Si堆積膜を形成する方法
が好適なものとして実用に付されている。
【0005】また、特開昭54−83746号公報にお
いては、導電性支持体と、ハロゲン原子を構成要素とし
て含むa−Si(以下、「a−Si:X」と表記する)
光導電層からなる電子写真用光受容部材が提案されてい
る。当該公報においては、a−Siにハロゲン原子を1
乃至40原子%含有させることにより、耐熱性が高く、
電子写真用光受容部材の光導電層として良好な電気的、
光学的特性を得ることができるとしている。
【0006】また、特開昭57−115556号公報に
は、a−Si堆積膜で構成された光導電層を有する光導
電部材の、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、光
学的、光導電的特性及び耐湿性等の使用環境特性、さら
には経時的安定性について改善を図るため、シリコン原
子を母体としたアモルファス材料で構成された光導電層
上に、シリコン原子及び炭素原子を含む非光導電性のア
モルファス材料で構成された表面障壁層を設ける技術が
記載されている。更に、特開昭60−67951号公報
には、アモルファスシリコン、炭素、酸素及び弗素を含
有してなる透光絶縁性オーバーコート層を積層する感光
体についての技術が記載され、特開昭62−16816
1号公報には、表面層として、シリコン原子と炭素原子
と41〜70原子%の水素原子を構成要素として含む非
晶質材料を用いる技術が記載されている。
【0007】さらに、特開昭57−158650号公報
には、水素を10〜40原子%含有し、赤外吸収スペク
トルの2100cm-1と2000cm-1の吸収ピークの
吸収係数比が0.2〜1.7であるa−Si:Hを光導
電層に用いることにより高感度で高抵抗な電子写真用感
光体が得られることが記載されている。
【0008】一方、特開昭60−95551号公報に
は、アモルファスシリコン感光体の画像品質向上のため
に、感光体表面近傍の温度を30乃至40℃に維持して
帯電、露光、現像および転写といった画像形成行程を行
うことにより、感光体表面での水分の吸着による表面抵
抗の低下とそれに伴って発生する画像流れを防止する技
術が開示されている。
【0009】これらの技術により、電子写真用光受容部
材の電気的、光学的、光導電的特性及び使用環境特性が
向上し、それに伴って画像品質も向上してきた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
a−Si系材料で構成された光導電層を有する電子写真
用光受容部材は、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気
的、光学的、光導電特性及び使用環境特性の点、さらに
は経時安定性および耐久性の点において、各々個々には
特性の向上が図られてはいるが、総合的な特性向上を図
る上でさらに改良される余地が存在するのが実情であ
る。
【0011】特に、電子写真装置の高画質、高速化、高
耐久化は急速に進んでおり、電子写真用光受容部材にお
いては電気的特性や光導電特性の更なる向上とともに、
帯電能、感度を維持しつつあらゆる環境下で大幅に性能
を延ばすことが求められている。
【0012】図8に、電子写真複写機の一般的な一例を
示してある。この図では、感光体はアモルファスシリコ
ン系のものとする。感光体801は図に示してあるよう
に矢印Xの方向に回転し、感光体の周りには良く知られ
ているように、主帯電器802、静電潜像形成部80
3、転写・分離帯電器812、クリーニング装置80
5、搬送系813、除電光源806が配置してある。感
光体801は主帯電器802によって一様に帯電され、
これにハロゲンランプ、蛍光灯などの光源814により
発した光をプラテンガラス818上の原稿807に照射
し、その反射をミラー系819、レンズ系816、フィ
ルター系815を介して感光体表面に導き投影され、感
光体801上に静電潜像が形成される。この潜像は、現
像器804からのトナーの供給により可視像、即ちトナ
ー像となる。一方、転写材Pは、転写紙通路811、レ
ジストローラ809よりなる転写紙供給系810を通っ
て、感光体801方向に供給され、転写帯電器812と
感光体801との間で背面からトナーと反対極性の電界
を与えられ、これによって、感光体表面のトナー像は転
写材Pに転移する。分離された転写材Pは、転写紙搬送
系813を通って定着装置(図では省略)に至り、トナ
ー像は転写材Pに定着されて装置外に排出される。尚、
転写部位において転写に寄与せず感光体表面に残った残
留トナーは、クリーニング装置805に至って、クリー
ニングされ、感光体801の表面から除去される。上記
のクリーニングによって表面からトナーなどの異物を除
去された感光体801は、主除電光源806に至り主除
電光源806から除電露光を照射され再び次の画像形成
プロセスに至る。一方、感光体の直径は、通常80mm
〜120mmであり、これら小さい直径の感光体、特に
アモルファスシリコン系感光体の場合、帯電能がOP
C、Se系の感光体よりも低いこともあり、帯電器の大
型化、暗減衰のおおきさに対する現像器の接近化などの
ため、実装上極めて窮屈なものになっている。また、近
年の複写機の高速化の進展を考慮すると、主帯電器から
主除電器までの時間的距離を確保することが困難となっ
てきている。特に主除電光源は、光メモリー消去及び帯
電確保及び電位シフトの低減の点から、この波長及び光
量は極めて慎重に決めなければならない。従来装置及び
従来のアモルファスシリコン感光体においては、光メモ
リーの低減のために主除電光量を変えた場合、帯電能及
び暗減衰も低下するというような関係があった。
【0013】このような状況下において、前述した従来
技術により上記課題についてある程度の特性向上が可能
になってはきたが、更なる帯電能や画像品質の向上に関
しては未だ充分とはいえない。特にアモルファスシリコ
ン系光受容部材の更なる高画質化への課題として、周囲
温度の変化による電子写真特性の変動や光疲労あるいは
ブランクメモリーやゴーストといった光メモリーを低減
することがいっそう求められるようになってきた。
【0014】例えば、従来は感光体の画像流れの防止の
ために前記特開昭60−95551号公報に記載されて
いるように、複写機内にドラムヒーターを設置して感光
体の表面温度を40℃程度に保っていた。しかしなが
ら、従来の感光体では前露光キャリアや熱励起キャリア
の生成に起因した帯電能の温度依存性、いわゆる温度特
性が大きく、複写機内の実際の使用環境下では本来感光
体が有しているよりも帯電能が低い状態で使用せざるを
えなかった。例えば、室温での使用時に比べてドラムヒ
ーターで40℃程度に加熱している状態では帯電能が1
00V近く低下してしまっていた。
【0015】また、従来は複写機を使用しない夜間でも
ドラムヒーターに通電して、帯電器のコロナ放電によっ
て生成されたオゾン生成物が夜間に感光体表面に吸着す
ることによって発生する画像流れを防止するようにして
いた。しかし、現在では省資源・省電力のために複写機
の夜間通電を極力行わないようになってきている。この
ような状態で連続複写をすると複写機内の感光体周囲温
度が徐々に上昇し、それにつれて帯電能が低下して、複
写中に画像濃度が変わってしまうという問題が生じてい
た。
【0016】一方、同一原稿を連続して繰り返し複写す
ると、画像露光による感光体の光疲労のために、画像濃
度の低下やかぶりが生じることがあった。また、トナー
を節約するために連続複写時の紙間において感光体に照
射される、いわゆるブランク露光の影響によって複写画
像上に濃度差が生じるブランクメモリーや、前回の複写
行程の像露光の残像が次回の複写時に画像上に生じる、
いわゆるゴースト現象等が画像品質を向上させる上で問
題になってきた。
【0017】したがって、電子写真用光受容部材を設計
する際に、上記したような問題が解決されるように電子
写真用光受容部材の層構成、各層の化学的組成など総合
的な観点からの改良を図るとともに、a−Si材料その
ものの一段の特性改良を図ることが求められている。
【0018】(発明の目的)本発明は、上述のごときa
−Siで構成された従来の光受容層を有する電子写真用
光受容部材に於ける諸問題を解決することを目的とする
ものである。
【0019】即ち、本発明の主たる目的は、電気的、光
学的、光導電的特性が使用環境にほとんど依存すること
なく実質的に常時安定しており、耐光疲労に優れ、繰り
返し使用に際しては劣化現象を起こさず耐久性、耐湿性
に優れ、残留電位がほとんど観測されず、更に画像品質
の良好な、シリコン原子を母体とした非単結晶材料で構
成された光受容層を有する電子写真装置を提供すること
にある。
【0020】特に、温度特性や光メモリーを低減して画
像品質を飛躍的に向上させた、シリコン原子を母体とし
た非単結晶材料で構成された光受容層を有する電子写真
装置を提供することにある。
【0021】また、該電子写真装置において、除電光源
の波長及びその光量を感光体使用温度に応じて制御する
ことで、更に環境安定性の優れた電子写真装置を提供す
ることにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは、光導電層のキャリアの挙動に着目
し、バンドギャップ内の局在状態分布と帯電能の温度依
存性や光メモリーとの関係について鋭意検討した結果、
光導電層の少なくとも光の入射する部分において、特定
のエネルギー範囲の局在状態密度を一定範囲に制御する
ことにより上記目的を達成できるという知見を得た。す
なわち、シリコン原子を母体とし、水素原子及び/また
はハロゲン原子を含有する非単結晶材料で構成された光
導電層を有する光受容部材において、その層構造を特定
化するように設計されて作成された光受容部材は、実用
上著しく優れた特性を示すばかりでなく、従来の光受容
部材と比べてみてもあらゆる点において凌駕しているこ
と、特に電子写真用の光受容部材として優れた特性を有
していることを見いだした。そして、併せて除電光波
長、除電光光量、感光体表面速度を一定範囲とすること
で、電子写真装置としてより優れた特性を示すことを見
いだした。
【0023】即ち、本発明の電子写真装置は、導電性基
体上に光導電層を積層させた感光体と、該感光体を移動
させる移動手段と、該感光体上の電荷を除電する除電手
段とを備えた電子写真装置において、前記感光体は、導
電性支持体と、シリコン原子を母体として水素原子及び
/またはハロゲン原子を含有する非単結晶材料から成り
光導電性を示す光導電層を有する光受容層とを備え、該
光導電層は10〜30原子%の水素を含有し、少なくと
も該光導電層の光の入射する部分において、サブバンド
ギャップ光吸収スペクトルから得られる指数関数裾の特
性エネルギーが50meV以上60meV以下、かつ伝
導帯端下0.45〜0.95eVにおける局在状態密度
が1×1014cm-3以上1×1016cm-3未満であるも
のが用いられており、前記除電手段の除電光光量は5.
0〜8.0μJ/cm2 、除電光波長は500nm〜7
00nmであり、前記移動手段による感光体表面速度は
300〜400mm/secであることを特徴とするも
のである。
【0024】上記感光体を上記除電光条件の範囲で使用
することで、感光体の表面電位が温度に対してピークを
有する。更に、除電光を調整することで感光体使用温度
にそのピーク温度をシフトすることができる。即ち、こ
のようにすることで、感光体の電位の温度による変化を
最小限に抑えることが可能となり、極めて優れた使用環
境特性を得ることができる。
【0025】本発明の電子写真装置に用いる光受容部材
は、導電性支持体と、シリコン原子を母体とする非単結
晶材料から成る光導電層を有する光受容層とから構成さ
れ、光導電層は10〜30原子%の水素を含み、サブバ
ンドギャップ光吸収スペクトルの指数関数裾(アーバッ
クテイル)の特性エネルギーが50meV以上60me
V以下であって、かつ伝導帯端下0.45〜0.95e
Vの局在状態密度が3×1014〜5×1015cm-3であ
る。
【0026】さらに本発明の電子写真に用いる光受容部
材は、導電性支持体と、シリコン原子を母体とする非単
結晶材料から成る光導電層を有する光受容層とから構成
され、光導電層は10〜30原子%の水素を含み、赤外
吸収スペクトルから得られるSi−H2 結合とSi−H
結合の吸収ピーク強度比が0.1〜0.5であって、サ
ブバンドギャップ光吸収スペクトルの指数関数裾(アー
バックテイル)の特性エネルギーが50〜60meV、
かつ伝導帯端下0.45〜0.95eVの局在状態密度
が3×1014〜5×1015cm-3である。
【0027】上記したような構成をとるように設計され
た本発明の電子写真用光受容部材は、前記した諸問題点
の全てを解決し得、極めて優れた電気的、光学的、光導
電的特性、画像品質、耐久性及び使用環境特性を示す。
【0028】一般的に、a−Si:Hのバンドギャップ
内には、Si−Si結合の構造的な乱れにもとづくテイ
ル(裾)凖位と、Siの未結合手(ダングリングボン
ド)等の構造欠陥に起因する深い凖位が存在する。これ
らの凖位は電子、正孔の捕獲、再結合中心として働き素
子の特性を低下させる原因になることが知られている。
このようなバンドギャップ中の局在凖位の状態を測定す
る方法として、一般に深凖位分光法、等温容量過渡分光
法、光熱偏向分光法、一定光電流法等が用いられてい
る。中でも一定光電流法〔Constant Phot
ocurrentMethod:以後、「CPM」と略
記する〕は、a−Si:Hの局在凖位に基くサブギャッ
プ光吸収スペクトルを簡便に測定する方法として有用で
ある。
【0029】本発明者らは、CPMによって測定された
サブバンドギャップ光吸収スペクトルから求められる指
数関数裾(アーバックテイル)の特性エネルギー(以
下、「Eu」と略記する〕や局在状態密度(以下、「D
OS」と略記する)と感光体特性との相関を種々の条件
に渡って調べた結果、EuおよびDOSがa−Si感光
体の温度特性や光メモリーと密接な関係にあることを見
いだし、本発明を完成するに至った。
【0030】ドラムヒーター等で感光体を加熱したとき
に帯電能が低下する原因として、熱励起されたキャリア
が帯電時の電界に引かれてバンド裾の局在凖位やバンド
ギャップ内の深い局在凖位への捕獲、放出を繰り返しな
がら表面に走行し、表面電荷を打ち消してしまうことが
挙げられる。この時、帯電器を通過する間に表面に到達
したキャリアについては帯電能の低下にはほとんど影響
がないが、深い凖位に捕獲されたキャリアは、帯電器を
通過した後に表面へ到達して表面電荷を打ち消すために
温度特性として観測される。また、帯電器を通過した後
に熱励起されたキャリアも表面電荷を打ち消し帯電能の
低下を引き起こす。したがって、感光体の使用温度領域
における熱励起キャリアの生成を抑え、なおかつキャリ
アの走行性を向上させることが温度特性の向上のために
要求される。
【0031】さらに、光メモリーはブランク露光や像露
光によって生じた光キャリアがバンドギャップ内の局在
凖位に捕獲され、光導電層内にキャリアが残留すること
によって生じる。すなわち、ある複写行程において生じ
た光キャリアのうち光導電層内に残留したキャリアが、
次回の帯電時あるいはそれ以降に表面電荷による電界に
よって掃き出され、光の照射された部分の電位が他の部
分よりも低くなり、その結果画像上に濃淡が生じる。し
たがって、光キャリアが光導電層内に残留することな
く、1回の複写行程で走行するように、キャリアの走行
性を改善することが求められる。
【0032】したがって、本発明のごとくEuおよび特
定のエネルギー範囲のDOSを制御することにより、熱
励起キャリアの生成が抑えられ、なおかつ熱励起キャリ
アや光キャリアが局在凖位に捕獲される割合を小さくす
ることができるためにキャリアの走行性が著しく改善さ
れる。その結果、感光体の使用温度領域での温度特性が
飛躍的に改善され、同時に光メモリーの発生を抑制する
ことができるために、感光体の使用環境に対する安定性
が向上し、ハーフトーンが鮮明に出てかつ解像力の高い
高品質の画像を安定して得ることができる。
【0033】さらにSi−H2 結合とSi−H結合に起
因する吸収ピークの吸収強度比を特定することにより、
光受容部材の面内でのキャリアの走行性が均一化され、
その結果、ハーフトーン画像における微細な濃度差いわ
ゆるガサツキを低減することができる。
【0034】以下、図面に従って本発明の電子写真用光
受容部材について詳細に説明する。図1は、本発明の電
子写真用光受容部材の層構成を説明するための模式的構
成図である。
【0035】図1(a)に示す電子写真用光受容部材1
00は、光受容部材用としての支持体101の上に、光
受容層102が設けられている。該光受容層102はa
−Si:H,Xからなり光導電性を有する光導電層10
3で構成されている。
【0036】図1(b)は、本発明の電子写真用光受容
部材の他の層構成を説明するための模式的構成図であ
る。図1(b)に示す電子写真用光受容部材100は、
光受容部材用としての支持体101の上に、光受容層1
02が設けられている。該光受容層102はa−Si:
H,Xからなり光導電性を有する光導電層103と、ア
モルファスシリコン系表面層104とから構成されてい
る。
【0037】図1(c)は、本発明の電子写真用光受容
部材の他の層構成を説明するための模式的構成図であ
る。図1(c)に示す電子写真用光受容部材100は、
光受容部材用としての支持体101の上に、光受容層1
02が設けられている。該光受容層102はa−Si:
H,Xからなり光導電性を有する光導電層103と、ア
モルファスシリコン系表面層104と、アモルファスシ
リコン系電荷注入阻止層105とから構成されている。
【0038】図1(d)は、本発明の電子写真用光受容
部材のさらに他の層構成を説明するための模式的構成図
である。図1(d)に示す電子写真用光受容部材100
は、光受容部材用としての支持体101の上に、光受容
層102が設けられている。該光受容層102は光導電
層103を構成するa−Si:H,Xからなる電荷発生
層106ならびに電荷輸送層107と、アモルファスシ
リコン系表面層104とから構成されている。
【0039】(支持体)本発明において使用される支持
体としては、導電性でも電気絶縁性であってもよい。導
電性支持体としては、Al,Cr,Mo,Au,In,
Nb,Te,V,Ti,Pt,Pd,Fe等の金属、お
よびこれらの合金、例えばステンレス等が挙げられる。
また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネー
ト、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化
ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィ
ルムまたはシート、ガラス、セラミック等の電気絶縁性
支持体の少なくとも光受容層を形成する側の表面を導電
処理した支持体も用いることができる。
【0040】本発明において使用される支持体101の
形状は平滑表面あるいは凹凸表面の円筒状または板状無
端ベルト状であることができ、その厚さは、所望通りの
電子写真用光受容部材100を形成し得るように適宜決
定するが、電子写真用光受容部材100としての可撓性
が要求される場合には、支持体101としての機能が充
分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができ
る。しかしながら、支持体101は製造上および取り扱
い上、機械的強度等の点から通常は10μm以上とされ
る。
【0041】特にレーザー光などの可干渉性光を用いて
像記録を行う場合には、可視画像において現われる、い
わゆる干渉縞模様による画像不良をより効果的に解消す
るために、支持体101の表面に凹凸を設けてもよい。
支持体101の表面に設けられる凹凸は、特開昭60−
168156号公報、同60−178457号公報、同
60−225854号公報等に記載された公知の方法に
より作成される。
【0042】また、レーザー光などの可干渉光を用いた
場合の干渉縞模様による画像不良をより効果的に解消す
る別の方法として、支持体101の表面に複数の球状痕
跡窪みによる凹凸形状を設けてもよい。即ち、支持体1
01の表面が電子写真用光受容部材100に要求される
解像力よりも微少な凹凸を有し、しかも該凹凸は、複数
の球状痕跡窪みによるものである。支持体101の表面
に設けられる複数の球状痕跡窪みによる凹凸は、特開昭
61−231561号公報に記載された公知の方法によ
り作成される。
【0043】(光導電層)本発明において、その目的を
効果的に達成するために支持体101上に形成され、光
受容層102の一部を構成する光導電層103は真空堆
積膜形成方法によって、所望特性が得られるように適宜
成膜パラメーターの数値条件が設定されて作成される。
具体的には、例えばグロー放電法(低周波CVD法、高
周波CVD法またはマイクロ波CVD法等の交流放電C
VD法、あるいは直流放電CVD法等)、スパッタリン
グ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD
法、熱CVD法などの数々の薄膜堆積法によって形成す
ることができる。これらの薄膜堆積法は、製造条件、設
備資本投資下の負荷程度、製造規模、作成される電子写
真用光受容部材に所望される特性等の要因によって適宜
選択されて採用されるが、所望の特性を有する電子写真
用光受容部材を製造するに当たっての条件の制御が比較
的容易であることからグロー放電法、特にRF帯または
VHF帯の電源周波数を用いた高周波グロー放電法が好
適である。
【0044】グロー放電法によって光導電層103を形
成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し
得るSi供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し
得るH供給用の原料ガスまたは/及びハロゲン原子
(X)を供給し得るX供給用の原料ガスを、内部が減圧
にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、該反
応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位
置に設置されてある所定の支持体101上にa−Si:
H,Xからなる層を形成すればよい。
【0045】また、本発明において光導電層103中に
水素原子または/及びハロゲン原子が含有されるが、こ
れはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、
特に光導電性および電荷保持特性を向上させるために求
められるからである。水素原子またはハロゲン原子の含
有量、または水素原子とハロゲン原子の和の量はシリコ
ン原子と水素原子または/及びハロゲン原子の和に対し
て10〜30原子%、より好ましくは15〜25原子%
とされるのが望ましい。
【0046】本発明において使用されるSi供給用ガス
となり得る物質としては、SiH4,Si2 6 ,Si
3 8 ,Si4 10等のガス状態の、またはガス化し得
る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとし
て挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給効
率の良さ等の点でSiH4 ,Si2 6 が好ましいもの
として挙げられる。
【0047】そして、形成される光導電層103中に水
素原子を構造的に導入し、水素原子の導入割合の制御を
いっそう容易になるようにはかり、本発明の目的を達成
する膜特性を得るために、これらのガスに更にH2 およ
び/またはHeあるいは水素原子を含む珪素化合物のガ
スも所望量混合して層形成することが求められる。ま
た、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混
合しても差し支えないものである。
【0048】また本発明において使用されるハロゲン原
子供給用の原料ガスとして有効なのは、たとえばハロゲ
ンガス、ハロゲン化物、ハロゲンを含むハロゲン間化合
物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体等のガス状のま
たはガス化し得るハロゲン化合物が好ましく挙げられ
る。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構
成要素とするガス状のまたはガス化し得る、ハロゲン原
子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げるこ
とができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン
化合物としては、具体的には弗素ガス(F2 ),Br
F,ClF,ClF 3 ,BrF3 ,BrF5 ,IF3
IF7 等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハ
ロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で
置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえ
ばSiF4 ,Si2 6 等の弗化珪素が好ましいものと
して挙げることができる。
【0049】光導電層103中に含有される水素原子ま
たは/及びハロゲン原子の量を制御するには、例えば支
持体101の温度、水素原子または/及びハロゲン原子
を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ
導入する量、放電電力等を制御すればよい。
【0050】本発明においては、光導電層103には必
要に応じて伝導性を制御する原子を含有させることが好
ましい。伝導性を制御する原子は、光導電層103中に
万遍なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あ
るいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部
分があってもよい。
【0051】前記伝導性を制御する原子としては、半導
体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、
p型伝導特性を与える周期律表第IIIb族に属する原子
(以後「第IIIb族原子」と略記する)またはn型伝導
特性を与える周期律表第Vb族に属する原子(以後「第
Vb族原子」と略記する)を用いることができる。
【0052】第IIIb族原子としては、具体的には、硼
素(B),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),
インジウム(In),タリウム(Tl)等があり、特に
B,Al,Gaが好適である。第Vb族原子としては、
具体的には燐(P),砒素(As),アンチモン(S
b),ビスマス(Bi)等があり、特にP,Asが好適
である。
【0053】光導電層103に含有される伝導性を制御
する原子の含有量としては、好ましくは1×10-2〜1
×104 原子ppm、より好ましくは5×10-2〜5×
10 3 原子ppm、最適には1×10-1〜1×103
子ppmとされるのが望ましい。伝導性を制御する原
子、たとえば第IIIb族原子あるいは第Vb族原子を構
造的に導入するには、層形成の際に、第IIIb族原子導
入用の原料物質あるいは第Vb族原子導入用の原料物質
をガス状態で反応容器中に、光導電層103を形成する
ための他のガスとともに導入してやればよい。第IIIb
族原子導入用の原料物質あるいは第Vb族原子導入用の
原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状の
または、少なくとも層形成条件下で容易にガス化し得る
ものが採用されるのが望ましい。
【0054】そのような第IIIb族原子導入用の原料物
質として具体的には、硼素原子導入用としては、B2
6 ,B4 10,B5 9 ,B5 11,B6 10,B6
12,B6 14等の水素化硼素、BF3 ,BCl3 ,BB
3 等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、Al
Cl3 ,GaCl3 ,Ga(CH3 3 ,InCl3
TlCl3 等も挙げることができる。
【0055】第Vb族原子導入用の原料物質として有効
に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH3 ,P
2 4 等の水素化燐、PH4 I,PF3 ,PF5 ,PC
3,PCl5 ,PBr3 ,PBr5 ,PI3 等のハロ
ゲン化燐が挙げられる。この他、AsH3 ,AsF3
AsCl3 ,AsBr3 ,AsF5 ,SbH3 ,SbF
3 ,SbF5 ,SbCl3 ,SbCl5 ,BiH3 ,B
iCl3 ,BiBr3等も第Vb族原子導入用の出発物
質の有効なものとして挙げることができる。
【0056】また、これらの伝導性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2 および/またはHeに
より希釈して使用してもよい。
【0057】さらに本発明においては、光導電層103
に炭素原子及び/または酸素原子及び/または窒素原子
を含有させることも有効である。炭素原子及び/または
酸素原子/及びまたは窒素原子の含有量はシリコン原
子、炭素原子、酸素原子及び窒素原子の和に対して好ま
しくは1×10-5〜10原子%、より好ましくは1×1
-4〜8原子%、最適には1×10- 3〜5原子%が望ま
しい。炭素原子及び/または酸素原子及び/または窒素
原子は、光導電層中に万遍なく均一に含有されても良い
し、光導電層の層厚方向に含有量が変化するような不均
一な分布をもたせた部分があっても良い。
【0058】本発明において、光導電層103の層厚は
所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果等の
点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは20
〜50μm、より好ましくは23〜45μm、最適には
25〜40μmとされるのが望ましい。
【0059】本発明の目的を達成し、所望の膜特性を有
する光導電層103を形成するには、Si供給用のガス
と希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力
ならびに支持体温度等を適宜設定する。
【0060】希釈ガスとして使用するH2 および/また
はHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選
択されるが、Si供給用ガスに対しH2 および/または
Heを、通常の場合3〜20倍、好ましくは4〜15
倍、最適には5〜10倍の範囲に制御することが望まし
い。
【0061】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×1
-4〜10Torr、好ましくは5×10-4〜5Tor
r、最適には1×10- 3〜1Torrとするのが好まし
い。
【0062】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量
に対する放電電力を、通常の場合2〜7倍、好ましくは
2.5〜6倍、最適には3〜5倍の範囲に設定すること
が望ましい。
【0063】さらに、支持体101の温度は、層設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜
330℃、最適には250〜310℃とするのが望まし
い。
【0064】本発明においては、光導電層を形成するた
めの支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記
した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に
決められるものではなく、所望の特性を有する光受容部
材を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適
値を決めるのが望ましい。
【0065】(表面層)本発明においては、上述のよう
にして支持体101上に形成された光導電層103の上
に、更にアモルファスシリコン系の表面層104を形成
することが好ましい。この表面層104は自由表面10
6を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的
耐圧性、使用環境特性、耐久性において本発明の目的を
達成するために設けられる。
【0066】又、本発明においては、光受容層102を
構成する光導電層103と表面層104とを形成する非
晶質材料の各々がシリコン原子という共通の構成要素を
有しているので、積層界面において化学的な安定性の確
保が十分成されている。
【0067】表面層104は、アモルファスシリコン系
の材料であればいずれの材質でも可能であるが、例え
ば、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を
含有し、更に炭素原子を含有するアモルファスシリコン
(以下「a−SiC:H,X」と表記する)、水素原子
(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に
酸素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−
SiO:H,X」と表記する)、水素原子(H)及び/
またはハロゲン原子(X)を含有し、更に窒素原子を含
有するアモルファスシリコン(以下「a−SiN:H,
X」と表記する)、水素原子(H)及び/またはハロゲ
ン原子(X)を含有し、更に炭素原子、酸素原子、窒素
原子の少なくとも一つを含有するアモルファスシリコン
(以下「a−SiCON:H,X」と表記する)等の材
料が好適に用いられる。
【0068】本発明において、その目的を効果的に達成
するために、表面層104は真空堆積膜形成方法によっ
て、所望特性が得られるように適宜成膜パラメーターの
数値条件が設定されて作成される。具体的には、例えば
グロー放電法(低周波CVD法、高周波CVD法または
マイクロ波CVD法等の交流放電CVD法、あるいは直
流放電CVD法等)、スパッタリング法、真空蒸着法、
イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法など
の数々の薄膜堆積法によって形成することができる。こ
れらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷
程度、製造規模、作成される電子写真用光受容部材に所
望される特性等の要因によって適宜選択されて採用され
るが、光受容部材の生産性から光導電層と同等の堆積法
によることが好ましい。
【0069】例えば、グロー放電法によってa−Si
C:H,Xよりなる表面層104を形成するには、基本
的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の
原料ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原
料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料
ガスまたは/及びハロゲン原子(X)を供給し得るX供
給用の原料ガスを、内部を減圧にし得る反応容器内に所
望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を
生起させ、あらかじめ所定の位置に設置された光導電層
103を形成した支持体101上にa−SiC:H,X
からなる層を形成すればよい。
【0070】本発明において用いる表面層の材質として
はシリコンを含有するアモルファス材料ならば何れでも
良いが、炭素、窒素、酸素より選ばれた元素を少なくと
も1つ含むシリコン原子との化合物が好ましく、特にa
−SiCを主成分としたものが好ましい。
【0071】表面層をa−SiCを主成分として構成す
る場合の炭素量は、シリコン原子と炭素原子の和に対し
て30%から90%の範囲が好ましい。また、本発明に
おいて表面層104中に水素原子または/及びハロゲン
原子が含有されるが、これはシリコン原子の未結合手を
補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保
持特性を向上させるために要求されるものである。水素
含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜7
0原子%、好適には35〜65原子%、最適には40〜
60原子%とするのが望ましい。また、弗素原子の含有
量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適に
は0.1〜10原子%、最適には0.6〜4原子%とさ
れるのが望ましい。これらの水素及び/または弗素含有
量の範囲内で形成される光受容部材は、実際面において
従来にない格段に優れたものとして充分適用させ得るも
のである。すなわち、表面層内に存在する欠陥(主にシ
リコン原子や炭素原子のダングリングボンド)は電子写
真用光受容部材としての特性に悪影響を及ぼすことが知
られている。例えば自由表面から電荷の注入による帯電
特性の劣化、使用環境、例えば高い湿度のもとで表面構
造が変化することによる帯電特性の変動、更にコロナ帯
電時や光照射時に光導電層により表面層に電荷が注入さ
れ、前記表面層内の欠陥に電荷がトラップされることに
より繰り返し使用時の残像現象の発生等がこの悪影響と
して挙げられる。
【0072】しかしながら、表面層内の水素含有量を3
0原子%以上に制御することで表面層内の欠陥が大幅に
減少し、その結果、従来に比べて電気的特性面及び高速
連続使用性において飛躍的な向上を図ることができる。
一方、前記表面層中の水素含有量が71原子%以上にな
ると表面層の硬度が低下するために、繰り返し使用に耐
えられなくなる。従って、表面層中の水素含有量を前記
の範囲内に制御することが格段に優れた所望の電子写真
特性を得る上で非常に重要な因子の1つである。表面層
中の水素含有量は、H2 ガスの流量、支持体温度、放電
パワー、ガス圧等によって制御し得る。
【0073】また、表面層中の弗素含有量を0.01原
子%以上の範囲に制御することで表面層内のシリコン原
子と炭素原子の結合の発生をより効果的に達成すること
が可能となる。さらに、表面層中の弗素原子の働きとし
て、コロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子
の結合の切断を効果的に防止することができる。
【0074】一方、表面層中の弗素含有量が15原子%
を超えると表面層内のシリコン原子と炭素原子の結合の
発生の効果およびコロナ等のダメージによるシリコン原
子と炭素原子の結合の切断を防止する効果がほとんど認
められなくなる。さらに、過剰の弗素原子が表面層中の
キャリアの走行性を阻害するため、残留電位や画像メモ
リーが顕著に認められてくる。従って、表面層中の弗素
含有量を前記範囲内に制御することが所望の電子写真特
性を得る上で重要な因子の一つである。表面層中の弗素
含有量は、水素含有量と同様にH2 ガスの流量、支持体
温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
【0075】本発明の表面層の形成において使用される
シリコン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、
SiH4 ,Si2 6 ,Si3 8 ,Si4 10等のガ
ス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)
が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時
の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSi
4 ,Si2 6 が好ましいものとして挙げられる。ま
た、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じて
2 ,He,Ar,Ne等のガスにより希釈して使用し
てもよい。炭素供給用ガスとなり得る物質としては、C
4 ,C2 6 ,C3 8 ,C4 10等のガス状態の、
またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものと
して挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給
効率の良さ等の点でCH4 ,C2 6 が好ましいものと
して挙げられる。また、これらのC供給用の原料ガスを
必要に応じてH2 ,He,Ar,Ne等のガスにより希
釈して使用してもよい。
【0076】窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質
としては、NH3 ,NO,N2 O,NO2 ,O2 ,C
O,CO2 ,N2 等のガス状態の、またはガス化し得る
化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。ま
た、これらの窒素、酸素供給用の原料ガスを必要に応じ
てH2 ,He,Ar,Ne等のガスにより希釈して使用
してもよい。
【0077】また、形成される表面層104中に導入さ
れる水素原子の導入割合の制御をいっそう容易になるよ
うに図るために、これらのガスに更に水素ガスまたは水
素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成
することが好ましい。また、各ガスは単独種のみでなく
所定の混合比で複数種混合しても差し支えないものであ
る。
【0078】ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効
なのは、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲ
ンをふくむハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されてシ
ラン誘導体等のガス状のまたはガス化し得るハロゲン化
合物が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン原
子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状のまたはガ
ス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も有
効なものとして挙げることができる。本発明において好
適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗
素ガス(F2 ),BrF,ClF,ClF3 ,Br
3 ,BrF5 ,IF3 ,IF7 等のハロゲン間化合物
を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合
物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体と
しては、具体的には、たとえばSiF4 ,Si2 6
の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。
【0079】表面層104中に含有される水素原子また
は/及びハロゲン原子の量を制御するには、例えば支持
体101の温度、水素原子または/及びハロゲン原子を
含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導
入する量、放電電力等を制御すればよい。
【0080】炭素原子及び/または酸素原子及び/また
は窒素原子は、表面層中に万遍なく均一に含有されても
良いし、表面層の層厚方向に含有量が変化するような不
均一な分布をもたせた部分があっても良い。
【0081】さらに本発明においては、表面層104に
は必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させること
が好ましい。伝導性を制御する原子は、表面層104中
に万遍なく均一に分布した状態で含有されても良いし、
あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している
部分があってもよい。
【0082】前記の伝導性を制御する原子としては、半
導体分野における、いわゆる不純物を挙げることがで
き、p型伝導特性を与える周期律表第IIIb族に属する
原子(以後「第IIIb族原子」と略記する)またはn型
伝導特性を与える周期律表第Vb族に属する原子(以後
「第Vb族原子」と略記する)を用いることができる。
【0083】第IIIb族原子としては、具体的には、硼
素(B),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),
インジウム(In),タリウム(Tl)等があり、特に
B,Al,Gaが好適である。第Vb族原子としては、
具体的には燐(P),砒素(As),アンチモン(S
b),ビスマス(Bi)等があり、特にP,Asが好適
である。
【0084】表面層104に含有される伝導性を制御す
る原子の含有量としては、好ましくは1×10-3〜1×
103 原子ppm、より好ましくは1×10-2〜5×1
2原子ppm、最適には1×10-1〜1×102 原子
ppmとされるのが望ましい。伝導性を制御する原子、
たとえば第IIIb族原子あるいは第Vb族原子を構造的
に導入するには、層形成の際に、第IIIb族原子導入用
の原料物質あるいは第Vb族原子導入用の原料物質をガ
ス状態で反応容器中に、表面層104を形成するための
他のガスとともに導入してやればよい。第IIIb族原子
導入用の原料物質あるいは第Vb族原子導入用の原料物
質となり得るものとしては、常温常圧でガス状のまた
は、少なくとも層形成条件下で容易にガス化し得るもの
が採用されるのが望ましい。そのような第IIIb族原子
導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用と
しては、B2 6 ,B4 10,B5 9 ,B5 11,B
6 10,B6 12,B6 14等の水素化硼素、BF3
BCl3 ,BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられ
る。この他、AlCl3 ,GaCl3 ,Ga(CH3
3 ,InCl3 ,TlCl3 等も挙げることができる。
【0085】第Vb族原子導入用の原料物質として、有
効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH3
2 4 等の水素化燐、PH4 I,PF3 ,PF5 ,P
Cl 3 ,PCl5 ,PBr3 ,PBr5 ,PI3 等のハ
ロゲン化燐が挙げられる。この他、AsH3 ,As
3 ,AsCl3 ,AsBr3 ,AsF5 ,SbH3
SbF3 ,SbF5 ,SbCl3 ,SbCl5 ,BiH
3 ,BiCl3 ,BiBr 3 等も第Vb族原子導入用の
出発物質の有効なものとして挙げることができる。
【0086】また、これらの伝導性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2 ,He,Ar,Ne等
のガスにより希釈して使用してもよい。
【0087】本発明に於ける表面層104の層厚として
は、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μ
m、最適には0.1〜1μmとされるのが望ましいもの
である。層厚が0.01μmよりも薄いと光受容部材を
使用中に摩耗等の理由により表面層が失われてしまい、
3μmを越えると残留電位の増加等の電子写真特性の低
下がみられる。
【0088】本発明による表面層104は、その要求さ
れる特性が所望通りに与えられるように注意深く形成さ
れる。即ち、Si,C及び/またはN及び/またはO,
H及び/またはXを構成要素とする物質はその形成条件
によって構造的には結晶からアモルファスまでの形態を
取り、電気物性的には導電性から半導体性、絶縁性まで
の間の性質を、また、光導電的性質から非光導電的性質
までの間の性質を各々示すので、本発明においては、目
的に応じた所望の特性を有する化合物が形成される様
に、所望に従ってその形成条件の選択が厳密になされ
る。
【0089】例えば、表面層104を耐圧性の向上を主
な目的として設けるには、使用環境において電気絶縁性
的挙動の顕著な非単結晶材料として作成される。
【0090】又、連続繰り返し使用特性や使用環境特性
の向上を主たる目的として表面層104が設けられる場
合には、上記の電気絶縁性の度合はある程度緩和され、
照射される光に対して有る程度の感度を有する非単結晶
材料として形成される。
【0091】本発明の目的を達成し得る特性を有する表
面層104を形成するには、支持体101の温度、反応
容器内のガス圧を所望にしたがって、適宜設定する必要
がある。
【0092】支持体101の温度(Ts)は、層設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜
330℃、最適には250〜310℃とするのが望まし
い。
【0093】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ま
しくは1×10-4〜10Torr、より好ましくは5×
10 -4〜5Torr、最適には1×10-3〜1Torr
とするのが好ましい。
【0094】本発明においては、表面層を形成するため
の支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記し
た範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決
められるものではなく、所望の特性を有する光受容部材
を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値
を決めるのが望ましい。
【0095】さらに本発明においては、光導電層と表面
層の間に、炭素原子、酸素原子、窒素原子の含有量を表
面層より減らしたブロッキング層(下部表面層)を設け
ることも帯電能等の特性を更に向上させるためには有効
である。
【0096】また表面層104と光導電層103との間
に炭素原子及び/または酸素原子及び/または窒素原子
の含有量が光導電層103に向かって減少するように変
化する領域を設けても良い。これにより表面層と光導電
層の密着性を向上させ、界面での光の反射による干渉の
影響をより少なくすることができる。
【0097】(電荷注入阻止層)本発明の電子写真用光
受容部材においては、導電性支持体と光導電層との間
に、導電性支持体側からの電荷の注入を阻止する働きの
ある電荷注入阻止層を設けるのがいっそう効果的であ
る。すなわち、電荷注入阻止層は光受容層が一定極性の
帯電処理をその自由表面に受けた際、支持体側より光導
電層側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆
の極性の帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮
されない、いわゆる極性依存性を有している。そのよう
な機能を付与するために、電荷注入阻止層には伝導性を
制御する原子を光導電層に比べ比較的多く含有させる。
【0098】該層に含有される伝導性を制御する原子
は、該層中に万遍なく均一に分布されても良いし、ある
いは層厚方向には万遍なく含有されてはいるが、不均一
に分布する状態で含有している部分があってもよい。分
布濃度が不均一な場合には、支持体側に多く分布するよ
うに含有させるのが好適である。
【0099】しかしながら、いずれの場合にも支持体の
表面と平行面内方向においては、均一な分布で万遍なく
含有されることが面内方向における特性の均一化をはか
る点からも要求される。
【0100】電荷注入阻止層に含有される伝導性を制御
する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純
物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期律表
第IIIb族に属する原子(以後「第IIIb族原子」と略記
する)またはn型伝導特性を与える周期律表第Vb族に
属する原子(以後「第Vb族原子」と略記する)を用い
ることができる。
【0101】第IIIb族原子としては、具体的には、B
(硼素),Al(アルミニウム),Ga(ガリウム),
In(インジウム),Ta(タリウム)等があり、特に
B,Al,Gaが好適である。第Vb族原子としては、
具体的にはP(燐),As(砒素),Sb(アンチモ
ン),Bi(ビスマス)等があり、特にP,Asが好適
である。
【0102】本発明において電荷注入阻止層中に含有さ
れる伝導性を制御する原子の含有量としては、本発明の
目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜
決定されるが、好ましくは10〜1×104 原子pp
m、より好適には50〜5×103 原子ppm、最適に
は1×102 〜1×103 原子ppmとされるのが望ま
しい。
【0103】さらに、電荷注入阻止層には、炭素原子、
窒素原子及び酸素原子の少なくとも一種を含有させるこ
とによって、該電荷注入阻止層に直接接触して設けられ
る他の層との間の密着性の向上をよりいっそう図ること
ができる。
【0104】該層に含有される炭素原子または窒素原子
または酸素原子は該層中に万遍なく均一に分布されても
良いし、あるいは層厚方向には万遍なく含有されてはい
るが、不均一に分布する状態で含有している部分があっ
てもよい。しかしながら、いずれの場合にも支持体の表
面と平行面内方向においては、均一な分布で万遍なく含
有されることが面内方向における特性の均一化をはかる
点からも必要である。
【0105】本発明における電荷注入阻止層の全層領域
に含有される炭素原子及び/または窒素原子および/ま
たは酸素原子の含有量は、本発明の目的が効果的に達成
されるように適宜決定されるが、一種の場合はその量と
して、二種以上の場合はその総和として、好ましくは1
×10-3〜50原子%、より好適には5×10-3〜30
原子%、最適には1×10-2〜10原子%とされるのが
望ましい。
【0106】また、本発明における電荷注入阻止層に含
有される水素原子および/またはハロゲン原子は層内に
存在する未結合手を補償し膜質の向上に効果を奏する。
電荷注入阻止層中の水素原子またはハロゲン原子あるい
は水素原子とハロゲン原子の和の含有量は、好適には1
〜50原子%、より好適には5〜40原子%、最適には
10〜30原子%とするのが望ましい。
【0107】本発明において、電荷注入阻止層の層厚は
所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等
の点から好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは
0.3〜4μm、最適には0.5〜3μmとされるのが
望ましい。
【0108】本発明において電荷注入阻止層を形成する
には、前述の光導電層を形成する方法と同様の真空堆積
法が採用される。
【0109】本発明の目的を達成し得る特性を有する電
荷注入阻止層105を形成するには、光導電層103と
同様に、Si供給用のガスと希釈ガスとの混合比、反応
容器内のガス圧、放電電力ならびに支持体101の温度
を適宜設定することが必要である。
【0110】希釈ガスであるH2 および/またはHeの
流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択される
が、Si供給用ガスに対しH2 および/またはHeを、
通常の場合1〜20倍、好ましくは3〜15倍、最適に
は5〜10倍の範囲に制御することが望ましい。
【0111】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×1
-4〜10Torr、好ましくは5×10-4〜5Tor
r、最適には1×10-3〜1Torrとするのが好まし
い。
【0112】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量
に対する放電電力を、通常の場合1〜7倍、好ましくは
2〜6倍、最適には3〜5倍の範囲に設定することが望
ましい。
【0113】さらに、支持体101の温度は、層設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜
330℃、最適には250〜310℃とするのが望まし
い。
【0114】本発明においては、電荷注入阻止層を形成
するための希釈ガスの混合比、ガス圧、放電電力、支持
体温度の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げら
れるが、これらの層作成ファクターは通常は独立的に別
々に決められるものではなく、所望の特性を有する表面
層を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて各層
作成ファクターの最適値を決めるのが望ましい。
【0115】このほかに、本発明の電子写真用光受容部
材においては、光受容層102の前記支持体101側
に、少なくともアルミニウム原子、シリコン原子、水素
原子または/及びハロゲン原子が層厚方向に不均一な分
布状態で含有する層領域を有することが望ましい。
【0116】また、本発明の電子写真用光受容部材にお
いては、支持体101と光導電層103あるいは電荷注
入阻止層105との間の密着性の一層の向上を図る目的
で、例えば、Si3 4 ,SiO2 ,SiO,あるいは
シリコン原子を母体とし、水素原子及び/またはハロゲ
ン原子と、炭素原子及び/または酸素原子及び/または
窒素原子とを含む非晶質材料等で構成される密着層を設
けても良い。更に、支持体からの反射光による干渉模様
の発生を防止するための光吸収層を設けても良い。
【0117】次に、光受容層を形成するための装置およ
び膜形成方法について詳述する。図2はRF帯の周波数
を用いた高周波プラズマCVD法(以後「RF−PCV
D」と略記する)による電子写真用光受容部材の製造装
置の一例を示す模式的な構成図である。図2に示す製造
装置の構成は以下の通りである。
【0118】この装置は大別すると、堆積装置(210
0)、原料ガスの供給装置(2200)、反応容器(2
111)内を減圧するための排気装置(図示せず)から
構成されている。堆積装置(2100)中の反応容器
(2111)内には円筒状支持体(2112)、支持体
加熱用ヒーター(2113)、原料ガス導入管(211
4)が設置され、更に高周波マッチングボックス(21
15)が接続されている。
【0119】原料ガス供給装置(2200)は、SiH
4 ,GeH4 ,H2 ,CH4 ,B26 ,PH3 等の原
料ガスのボンベ(2221〜2226)とバルブ(22
31〜2236,2241〜2246,2251〜22
56)およびマスフローコントローラー(2211〜2
216)から構成され、各原料ガスのボンベはバルブ
(2260)を介して反応容器(2111)内のガス導
入管(2114)に接続されている。
【0120】この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば
以下のように行なうことができる。まず、反応容器(2
111)内に円筒状支持体(2112)を設置し、不図
示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器(2
111)内を排気する。続いて、支持体加熱用ヒーター
(2113)により円筒状支持体(2112)の温度を
200℃乃至350℃の所定の温度に制御する。
【0121】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器(21
11)に流入させるには、ガスボンベのバルブ(223
1〜2237)、反応容器のリークバルブ(2117)
が閉じられていることを確認し、又、流入バルブ(22
41〜2246)、流出バルブ(2251〜225
6)、補助バルブ(2260)が開かれていることを確
認して、まずメインバルブ(2118)を開いて反応容
器(2111)およびガス配管内(2116)を排気す
る。
【0122】次に真空計(2119)の読みが約5×1
-6Torrになった時点で補助バルブ(2260)、
流出バルブ(2251〜2256)を閉じる。
【0123】その後、ガスボンベ(2221〜222
6)より各ガスをバルブ(2231〜2236)を開い
て導入し、圧力調整器(2261〜2266)により各
ガス圧を2kg/cm2 に調整する。次に、流入バルブ
(2241〜2246)を徐々に開けて、各ガスをマス
フローコントローラー(2211〜2216)内に導入
する。
【0124】以上のようにして成膜の準備が完了した
後、以下の手順で各層の形成を行う。円筒状支持体(2
112)が所定の温度になったところで流出バルブ(2
251〜2256)のうちの必要なものおよび補助バル
ブ(2260)を徐々に開き、ガスボンベ(2221〜
2226)から所定のガスをガス導入管(2114)を
介して反応容器(2111)内に導入する。次にマスフ
ローコントローラー(2211〜2216)によって各
原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、
反応容器(2111)内の圧力が1Torr以下の所定
の圧力になるように真空計(2119)を見ながらメイ
ンバルブ(2118)の開口を調整する。内圧が安定し
たところで、周波数13.56MHzのRF電源(不図
示)を所望の電力に設定して、高周波マッチングボック
ス(2115)を通じて反応容器(2111)内にRF
電力を導入し、グロー放電を生起させる。この放電エネ
ルギーによって反応容器内に導入された原料ガスが分解
され、円筒状支持体(2112)上に所定のシリコンを
主成分とする堆積膜が形成されるところとなる。所望の
膜厚の形成が行われた後、RF電力の供給を止め、流出
バルブを閉じて反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜
の形成を終える。
【0125】同様の操作を複数回繰り返すことによっ
て、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0126】それぞれの層を形成する際には必要なガス
以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うま
でもなく、また、それぞれのガスが反応容器(211
1)内、流出バルブ(2251〜2256)から反応容
器(2111)に至る配管内に残留することを避けるた
めに、流出バルブ(2251〜2256)を閉じ、補助
バルブ(2260)を開き、さらにメインバルブ(21
18)を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を
必要に応じて行う。
【0127】また、膜形成の均一化を図るために、層形
成を行なっている間は、支持体(2112)を駆動装置
(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効
である。
【0128】さらに、上述のガス種およびバルブ操作は
各々の層の作成条件にしたがって変更が加えられること
は言うまでもない。
【0129】次に、VHF帯の周波数を用いた高周波プ
ラズマCVD(以後「VHF−PCVD」と略記する)
法によって形成される電子写真用光受容部材の製造方法
について説明する。
【0130】図2に示した製造装置におけるRF−PC
VD法による堆積装置(2100)を、図3に示す堆積
装置(3100)に交換して原料ガス供給装置(220
0)と接続することにより、VHF−PCVD法による
電子写真用光受容部材製造装置を得ることができる。
【0131】この装置は大別すると、真空気密化構造を
成した減圧にし得る反応容器(3111)、原料ガスの
供給装置(2200)、および反応容器内を減圧にする
ための排気装置(不図示)から構成されている。反応容
器(3111)内には円筒状支持体(3112)、支持
体加熱用ヒーター(3113)、原料ガス導入管(不図
示)、電極(3115)が設置され、電極には更に高周
波マッチングボックス(3116)が接続されている。
また、反応容器(3111)内は排気管(3121)を
通じて不図示の拡散ポンプに接続されている。
【0132】原料ガス供給装置(2200)は、SiH
4 ,GeH4 ,H2 ,CH4 ,B26 ,PH3 等の原
料ガスのボンベ(2221〜2226)とバルブ(22
31〜2236,2241〜2246,2251〜22
56)およびマスフローコントローラー(2211〜2
216)から構成され、各原料ガスのボンベはバルブ
(2260)を介して反応容器(3111)内のガス導
入管(不図示)に接続されている。また、円筒状支持体
(3112)によって取り囲まれた空間(3130)が
放電空間を形成している。
【0133】VHF−PCVD法によるこの装置での堆
積膜の形成は、以下のように行なうことができる。
【0134】まず、反応容器(3111)内に円筒状支
持体(3112)を設置し、駆動装置(3120)によ
って支持体(3112)を回転し、不図示の排気装置
(例えば拡散ポンプ)により反応容器(3111)内を
排気管(3121)を介して排気し、反応容器(311
1)内の圧力を1×10-7Torr以下に調整する。続
いて、支持体加熱用ヒーター(3113)により円筒状
支持体(3112)の温度を200℃乃至350℃の所
定の温度に加熱保持する。
【0135】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器(31
11)に流入させるには、ガスボンベのバルブ(223
1〜2236)、反応容器のリークバルブ(不図示)が
閉じられていることを確認し、又、流入バルブ(224
1〜2246)、流出バルブ(2251〜2256)、
補助バルブ(2260)が開かれていることを確認し
て、まずメインバルブ(不図示)を開いて反応容器(3
111)およびガス配管内を排気する。
【0136】次に真空計(不図示)の読みが約5×10
-6Torrになった時点で補助バルブ(2260)、流
出バルブ(2251〜2256)を閉じる。
【0137】その後、ガスボンベ(2221〜222
6)より各ガスをバルブ(2231〜2236)を開い
て導入し、圧力調整器(2261〜2266)により各
ガス圧を2kg/cm2 に調整する。次に、流入バルブ
(2241〜2246)を徐々に開けて、各ガスをマス
フローコントローラー(2211〜2216)内に導入
する。以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下
のようにして円筒状支持体(3112)上に各層の形成
を行う。
【0138】円筒状支持体(3112)が所定の温度に
なったところで流出バルブ(2251〜2256)のう
ちの必要なものおよび補助バルブ(2260)を徐々に
開き、ガスボンベ(2221〜2226)から所定のガ
スをガス導入管(不図示)を介して反応容器(311
1)内の放電空間(3130)に導入する。次にマスフ
ローコントローラー(2211〜2216)によって各
原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、
放電空間(3130)内の圧力が1Torr以下の所定
の圧力になるように真空計(不図示)を見ながらメイン
バルブ(不図示)の開口を調整する。
【0139】圧力が安定したところで、例えば周波数5
00MHzのVHF電源(不図示)を所望の電力に設定
して、マッチングボックス(3116)を通じて放電空
間(3130)にVHF電力を導入し、グロー放電を生
起させる。かくして支持体(3112)により取り囲ま
れた放電空間(3130)において、導入された原料ガ
スは、放電エネルギーにより励起されて解離し、支持体
(3112)上に所定の堆積膜が形成される。この時、
層形成の均一化を図るため支持体回転用モーター(31
20)によって、所望の回転速度で回転させる。
【0140】所望の膜厚の形成が行われた後、VHF電
力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガス
の流入を止め、堆積膜の形成を終える。
【0141】同様の操作を複数回繰り返すことによっ
て、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0142】それぞれの層を形成する際には必要なガス
以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うま
でもなく、また、それぞれのガスが反応容器(311
1)内、流出バルブ(2251〜2256)から反応容
器(3111)に至る配管内に残留することを避けるた
めに、流出バルブ(2251〜2256)を閉じ、補助
バルブ(2260)を開き、さらにメインバルブ(不図
示)を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を必
要に応じて行う。
【0143】上述のガス種およびバルブ操作は各々の層
の作成条件にしたがって変更が加えられることは言うま
でもない。
【0144】いずれの方法においても、堆積膜形成時の
支持体温度は、特に200℃以上350℃以下、好まし
くは230℃以上330℃以下、より好ましくは250
℃以上300℃以下が好ましい。
【0145】支持体の加熱方法は、真空仕様である発熱
体であればよく、より具体的にはシース状ヒーターの巻
き付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター等
の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の
熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とし熱交換手
段による発熱体等が挙げられる。加熱手段の表面材質
は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属
類、セラミックス、耐熱性高分子樹脂等を使用すること
ができる。
【0146】それ以外にも、反応容器以外に加熱専用の
容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空中で支持体
を搬送する等の方法が用いられる。
【0147】また、特にVHF−PCVD法における放
電空間の圧力として、好ましくは1mTorr以上50
0mTorr以下、より好ましくは3mTorr以上3
00mTorr以下、最も好ましくは5mTorr以上
100mTorr以下に設定することが望ましい。
【0148】VHF−PCVD法において放電空間に設
けられる電極の大きさ及び形状は、放電を乱さないなら
ばいずれのものでも良いが、実用上は直径1mm以上1
0cm以下の円筒状が好ましい。この時、電極の長さ
も、支持体に電界が均一にかかる長さであれば任意に設
定できる。
【0149】電極の材質としては、表面が導電性となる
ものならばいずれのものでも良く、例えば、ステンレ
ス,Al,Cr,Mo,Au,In,Nb,Te,V,
Ti,Pt,Pb,Fe等の金属、これらの合金または
表面を導電処理したガラス、セラミック等が通常使用さ
れる。
【0150】また本発明では、上記光受容部材を有する
感光体を感光体表面温度を測定する温度センサーを装備
した電子写真装置に用いることによって、使用温度に応
じた除電光光量により優れた環境安定性を実現し、且つ
トータル性能に優れ、高品質の画像の得ることのできる
電子写真装置を提供する。
【0151】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (実施例1)図2に示すRF−PCVD法による電子写
真用光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの鏡
面加工を施したアルミニウムシリンダー上に、表1に示
す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる光
受容部材を作製した。さらに光導電層のSiH4 とH2
との混合比ならびに放電電力を変えることによって、種
々の光受容部材を作製した。作製した光受容部材を図8
に示す電子写真装置にセットして、除電光光量5.0〜
8.0μJ/cm2 、除電光波長500nm〜700n
m、光受容部材表面速度300〜400mm/secの
条件で帯電能の温度依存性(温度特性)、メモリーなら
びに画像欠陥を評価した。温度特性は、光受容部材の温
度を室温から約45℃まで変えて帯電能を測定し、この
ときの温度1℃当たりの帯電能の変化を測定した。ま
た、メモリー、画像流れについては、画像を目視により
判定し、1:非常に良好、2:良好、3:実用上問題な
し、4:実用上やや難ありの4段階にランク分けした。
一方、円筒形のサンプルホルダーに設置したガラス基板
(コーニング社;7059)ならびにSiウェハー上
に、光導電層の作成条件で膜厚約1μmのa−Si膜を
堆積した。ガラス基板上の堆積膜にはAlの串型電極を
蒸着し、CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(E
u)と局在凖位密度(D.O.S)を測定し、Siウェ
ハー上の堆積膜はFTIRにより含有水素量を測定し
た。このときのEuと温度特性との関係を図4に、D.
O.Sとメモリー、画像流れとの関係を図5,図6に示
す。いずれのサンプルも水素含有量は10〜30原子%
の間であった。図4,図5ならびに図6から明らかなよ
うに、Eu=50〜60meV,D.O.S=1×10
14〜5×1015cm-3の範囲にすることが良好な電子写
真特性を得るために必要であることがわかった。
【0152】また表2に示す様に、該条件を満たす光受
容部材は、上記電子写真プロセス条件において、20℃
〜50℃の範囲に電位のピークを持つことがわかった。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】 (実施例2)図3に示すVHF−PCVD法による電子
写真用光受容部材の製造装置を用い、実施例1と同様に
直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリン
ダー(支持体)上に表3に示す条件で電荷注入阻止層、
光導電層、表面層からなる光受容部材を作製した。さら
に光導電層のSiH4 とH2 との混合比、放電電力、支
持体温度ならびに内圧を変えることにより、種々の光受
容部材を作製した。作製した光受容部材を図8に示す電
子写真装置にセットして、除電光光量5.0〜8.0μ
J/cm2 、除電光波長500nm〜700nm、光受
容部材表面速度300〜400mm/secの条件で、
帯電能の温度依存性(温度特性)、ブランク露光メモリ
ーならびにゴーストメモリーを評価した。温度特性なら
びにメモリーの評価は実施例1と同様にした。さらにハ
ーフトーン画像の濃度ムラ(ガサツキ)をメモリーと同
様、4段階のランク分けを行なって評価した。一方、光
導電層の作成条件で、円筒形のサンプルホルダーに設置
したガラス基板(コーニング社 7059)ならびにS
iウェハー上に膜厚約1μmのa−Si膜を堆積した。
ガラス基板上の堆積膜にはAlの串型電極を蒸着して、
CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(Eu)と局
在凖位密度(D.O.S)を測定し、Siウェハー上の
堆積膜はFTIRにより含有水素量ならびにSi−H2
結合とSi−H結合の吸収ピーク強度比を測定した。E
u,D.O.S.と温度特性、メモリー、画像流れとの
関係は実施例1と同様であり、良好な電子写真特性のた
めにはEu=50〜60meV,D.O.S=1×10
14〜5×1015cm-3であることが必要であることがわ
かった。
【0155】また、実施例1と同様にこの条件を満たす
光受容部材は、20℃〜50℃の範囲で電位にピークを
持つことがわかった。
【0156】
【表3】 (実験例1)上記のアモルファスシリコン感光体を電子
写真感光体として、図8に示す系を持つ電子写真装置を
用いて実験した。実験には、図4に示すEu=55〔m
V〕の感光体を用いた。感光体801のその表面の移動
速度を320mm/secとし、主除電光源の波長を5
65nm、主除電光光源の光量を6μJ/cm2 とし感
光体の温度を20℃から50℃の範囲で変えて帯電能の
温度依存性を測定した。感光体の表面温度は、温度セン
サー820により測定した。
【0157】図9は、本実験の結果を示すグラフであ
る。本発明のアモルファスシリコン感光体と従来の一般
的なアモルファスシリコン感光体の場合を示した。図9
に示すように、本発明のアモルファスシリコン感光体
は、帯電能が温度に対して極大値を持つことが確認さ
れ、また電位の温度依存性も小さい。従来の一般的なア
モルファス感光体の場合では、帯電能は、温度に対して
極大を持たず温度上昇に伴い帯電能が減少しており、そ
の変化量は本発明に較べて大きい。
【0158】即ち、本発明の光受容部材を用いた電子写
真装置においては電位の温度依存性が小さく、また更
に、電位がピークを持つ温度で本発明の感光体を使用す
るならば、電位の温度依存性が殆ど無い環境安定性の極
めて良い状態を実現できる。
【0159】(実験例2)図8に示すような電子写真装
置を用い、感光体801をその表面速度が320mm/
secになるように一定速度で回転させ、主除電光源の
光量を6μJ/cm2 にし、波長を565nm〜650
nm、感光体の温度を20℃〜50℃に変えて、帯電能
の温度依存性、主除電光波長存性を測定した。測定には
図4に示すAの感光体を使用した。
【0160】図10図(a),(b)は、本実験の結果
を表すグラフである。図10(a)は本発明例であり、
(b)は従来例である。光量を一定にして波長を長くす
ると、従来例では、帯電能の除電光波長依存性が大きい
ため帯電能の低下が大きく低下している。本発明の場合
においても、除電光波長を長くすることで帯電能が低下
しているが、実使用範囲の40℃〜45℃の範囲におい
て、その低下量は極めて小さい。
【0161】帯電能−温度曲線の除電光波長依存性は、
従来例では波長を長くすることで低電位側にシフトして
いるだけであるが、本発明では、ピークが高温側にシフ
トし、即ち温度特性が除電光波長に依存していることが
解る。
【0162】(実験例3)図8に示すような電子写真装
置を用い、感光体801をその表面速度が320mm/
secになるように一定速度で回転させ、主除電光源の
波長を565nm、除電光光量を6μJ/cm2 〜8μ
J/cm2 、感光体の温度を20℃〜50℃の範囲で変
えて、帯電能の温度依存性、主除電光光量存性を測定し
た。測定には図4に示すAの感光体を使用した。
【0163】図11(a),(b)は、本実験の結果を
表すグラフである。(a)は本発明例、(b)は従来例
を示している。従来例では、光量の増加により、帯電能
が大きく低下している。また帯電能の温度依存性は、光
量に依存していない。本発明の場合においても、光量の
増加により、帯電能が低下しているが、従来例に比べる
とその程度は非常に小さい。また、帯電能の温度依存性
は、光量に大きく依存しており、光量が増加することで
ピークが高温側にシフトしている。
【0164】実験例1,2及び実験例3より、帯電能の
主除電光の光量及び波長に対する依存性は、本発明にお
いてはかなり小さい。また、主除電光の光量の増加及び
波長の長波長化によって帯電能のピーク温度を高温側に
シフトさせることが可能であり、温度特性が除電光光量
に依存していることがわかる。
【0165】以上の結果、感光体の温度の帯電能のピー
クがくるように主除電光の光量、波長を変化させること
で、その温度での感光体の温度特性を殆ど無くすことが
でき、感光体の使用温度に左右されずに高い環境安定性
をしめす画像を得ることができる。
【0166】本発明を更に以下の実施例により説明する
が、本発明はこれらにより何等制限されるものでない。
【0167】(実施例3)図8に示すような電子写真装
置を用い、感光体801を表面速度320mm/sec
で回転させ主除電光源806として波長ピークが565
nmのLEDを用いた。図4に示すAの感光体を用い
た。主除電光源806の光量を5〜8μJ/cm2 の範
囲で可変にし、感光体温度を25℃,35℃,45℃と
変え、各温度において帯電能のピーク温度が感光体の温
度と等しくなるように主除電光光量を制御し、電位及び
画像の安定性を調べた。
【0168】また、感光体の温調用のヒータ基板の温調
範囲の違うものを3種類用意し(A:温調範囲±0.5
℃、B:温調範囲±1℃、C:温調範囲±3℃)、各基
板による電位及び画像の安定性を調べた。
【0169】その結果を表4に示す。温度に対する帯電
能の極大が感光体の使用温度になるように除電光光量を
制御する事で温度に対する電位の安定性が良くなり、高
精度に温調しなくても安定した画像を得ることが可能と
なった。
【0170】(比較例1)図8に示すような電子写真装
置を用い、感光体801を表面速度320mm/sec
で回転させ主除電光源806として波長ピークが565
nmのLEDを用いた。測定には、図4のA,B,C,
Dの感光体、そして従来のアモルファスシリコン感光体
を用いた。主除電光源806の光量を6μJ/cm2
し、感光体温度を25℃,35℃,45℃と変え帯電能
の測定を行った。
【0171】また、感光体の温調用のヒータ基板の温調
範囲の違うものを3種類用意し(A:温調範囲±0.5
℃、B:温調範囲±1℃、C:温調範囲±3℃)、各基
板による電位及び画像の安定性を調べた。
【0172】その結果を表4に示す。本発明の感光体は
この測定条件で、温度に対する帯電能の極大値を30℃
付近に持っており、また電位の温度依存性が小さいた
め、25℃,35℃の温度において電位は安定していた
が、従来例ではどの温度においても高精度に温調しなけ
れば安定した電位を得ることができなかった。
【0173】
【表4】
【0174】
【発明の効果】本発明によれば、電子写真用光受容部材
を前述のごとき特定の構成としたことにより、a−Si
で構成された従来の電子写真用光受容部材における諸問
題を解決することができ、特にきわめて優れた電気的特
性、光学的特性、光導電特性、画像特性、耐久性および
使用環境特性を示す。
【0175】特に本発明においては、光導電層をそのギ
ャップ内凖位を格段に減少せしめたa−Siで構成する
ことによって、周囲環境の変動に対する表面電位の変化
が抑制され、加えて光疲労や光メモリーの発生が実質的
に無視し得るほどになく、極めて優れた電位特性、画像
特性を有するという特徴を有する。
【0176】また、この特徴を有する電子写真用光受容
部材を温度センサーを装備した電子写真装置に使用する
際に、前記除電光源を除電光光量5μJ/cm2 〜8μ
J/cm2 、500〜700nmの除電光波長で使用
し、該光量又は/及び波長を感光体温度に応じ制御する
事で電位の安定性が優れた電子写真特性を得ることがで
き、トータル性能に優れた高品質の画像を得ることがで
きる電子写真装置が見いだされた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真用光受容部材の好適な実施態
様例の層構成を説明するための模式的層構成図である。
【図2】本発明の電子写真用光受容部材の光受容層を形
成するための装置の一例で、RF帯の高周波を用いたグ
ロー放電法による電子写真用光受容部材の製造装置の模
式的説明図である。
【図3】本発明の電子写真用光受容部材の光受容層を形
成するための装置の一例で、VHF帯の高周波を用いた
グロー放電法による電子写真用光受容部材の製造装置の
模式的説明図である。
【図4】本発明の電子写真用光受容部材における光導電
層のアーバックテイルの特性エネルギー(Eu)と温度
特性との関係を示す図である。
【図5】本発明の電子写真用光受容部材における光導電
層の局在状態密度(DOS)と光メモリーとの関係を示
す図である。
【図6】本発明の電子写真用光受容部材における光導電
層の局在状態密度(DOS)と画像流れとの関係を示す
図である。
【図7】本発明の電子写真用光受容部材における光導電
層のSi−H2 結合とSi−H結合の吸収ピーク強度比
とハーフトーン濃度ムラ(ガサツキ)との関係を示す図
である。
【図8】本発明を適用することのできる電子写真装置の
一実施例の断面図である。
【図9】温度に対する帯電能の変化を示したグラフであ
る。
【図10】温度に対する帯電能の変化の除電光源波長依
存性のグラフである。(a)(b)はそれぞれ、本発明
の感光体のグラフ、従来例の感光体のグラフである。
【図11】温度に対する帯電能の変化の除電光源光量依
存性のグラフである。(a)(b)はそれぞれ、本発明
の感光体のグラフ、従来例の感光体のグラフである。
【符号の説明】
100 電子写真用光受容部材 101 支持体 102 光受容層 103 光導電層 104 アモルファスシリコン系表面層 105 アモルファスシリコン系電荷注入阻止層 106 電荷発生層 107 電荷輸送層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基体上に光導電層を積層させた感
    光体と、該感光体を移動させる移動手段と、該感光体上
    の電荷を除電する除電手段とを備えた電子写真装置にお
    いて、 前記感光体は、導電性支持体と、シリコン原子を母体と
    して水素原子及び/またはハロゲン原子を含有する非単
    結晶材料から成り光導電性を示す光導電層を有する光受
    容層とを備え、該光導電層は10〜30原子%の水素を
    含有し、少なくとも該光導電層の光の入射する部分にお
    いて、サブバンドギャップ光吸収スペクトルから得られ
    る指数関数裾の特性エネルギーが50〜60meV、か
    つ伝導帯端下0.45〜0.95eVにおける局在状態
    密度が1×1014cm-3以上1×1016cm-3未満であ
    るものが用いられており、 前記除電手段の除電光光量は5.0〜8.0μJ/cm
    2 、除電光波長は500nm〜700nmであり、 前記移動手段による感光体表面速度は300〜400m
    m/secであることを特徴とする電子写真装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電子写真装置において、
    感光体表面温度20〜50℃の範囲で感光体表面電位が
    ピークを持つことを特徴とする電子写真装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の電子写真装置において、
    該電子写真装置は温度検知手段を備え、該温度検知手段
    によって検知される感光体使用温度に応じて、該感光体
    使用温度が感光体の表面電位のピーク温度に一致するよ
    うに前記除電手段の除電光光量又は/及び除電光波長を
    制御してなる電子写真装置。
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