JP6862285B2 - 負帯電用電子写真感光体 - Google Patents

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Description

本発明は、像担持体の上に形成された静電像をトナーにより可視化して画像を得る複写機、プリンターなどの電子写真装置に用いる負帯電用電子写真感光体に関する。
電子写真方式の画像形成装置では、電子写真感光体(以下、「感光体」とも表記する。)の表面を帯電装置によって一様に帯電し、帯電した感光体を像露光装置によって露光して静電潜像を形成する。その後に、この静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する。そして、このトナー像を用紙などの転写材に転写し、そのトナー像を転写材に定着させ、トナー像が定着された転写材を画像形成装置から出力する。
今まで電子写真方式の画像形成装置は、オフィス等で数枚から数十枚程度プリントすることが主な使われ方であったが、近年、オフセット印刷機が主流であったプロダクション市場へも参入し始めている。
これは、電子写真方式の画像形成装置が、高速化により生産性が向上したためである。また、小ロットへの対応性とバリアブル印刷に関して、オフセット印刷機より優れるという特徴をデジタル化とカラー化されたことで、さらに生かせるようになったためである。
そして、プロダクション市場で扱われるプリントは、マニュアルやダイレクトメール等の低画像密度のものから、チラシ、ポスターやグラフィックアート等の高画像密度のプリントまでバリエーションが幅広いため、高画質化への要求は以前に増して高まっている。高画質としては、画像濃度ムラが少ないこと、高解像であること、高精細であること、画像欠陥(白抜けや黒点など)が少ないこと等が挙げられる。
このようなプロダクション市場へ電子写真方式の画像形成装置が参入するためには対策しなければならない課題も多い。
例えば、高画質が求められるプロダクション市場のポスターやグラフィックアート等では画像濃度ムラが問題となる場合がある。画像濃度ムラの原因の一つとしては、感度の不均一が挙げられる。感度が不均一になる理由の一つとしては、感光体が繰り返し使用され、感光体表面が、用紙、トナー、現像器、クリーナー等との摺擦で不均一に削られることで、反射率の変動にムラが発生するためである。このため、画像濃度ムラを抑制するために反射率のムラが発生しない感光体を得ることは重要な課題となっている。
また、生産性向上のために高速化の要求も強く、上記プロセスの時間がさらに短くなっていく傾向にある。これに伴い、前のプロセスで形成された静電潜像の履歴が時間経過により消去される前に、次のプロセスが行われて次のプロセスで形成される静電潜像に影響を及ぼし、残像を生じさせる、いわゆるゴースト画像という問題が発生し易くなっている。
このゴースト画像とは、感光体表面に静電潜像を形成する際、前回のプロセスで露光された前回露光部分と、未露光の前回未露光部分との両方が露光されたときに、前回露光部分と前回未露光部分とで露光後電位に差が生じる、いわゆる光メモリーである。光メモリーは、露光からの時間経過により減少するが、光メモリーによる露光後電位の差が画像上目視で確認できるレベルであると、ゴースト画像が発生する。このため、プロセス時間が短いほどゴースト画像の問題は顕著になる。したがって、生産性向上のためにはゴースト画像がでない感光体を得ることは重要な課題となっている。
そして、今まで上記のような反射率のムラによる画像濃度ムラ、光メモリーによるゴースト画像に対して様々な対策が行われている。
反射率のムラによる画像濃度ムラに対しては、例えば、感光層と表面層との界面における屈折率及び光学的バンドギャップ(Egopt)差を適正化し、画像濃度むらを抑える技術が開示されている。(特許文献1参照)。
光メモリーによるゴースト画像に対しては、例えば、表面層中の炭素原子を積層方向に対して不均一に分布させ、炭素原子含有量の積層方向に対する分布に極大値を存在させる技術が開示されている(特許文献2参照)。
また、近年、上記の高画質と生産性向上と共に印刷物の一枚当たりの価格、ランニングコストを抑制することが求められている。このため、消耗品の交換頻度を抑制し、メンテナンス回数を減らすことが大きな課題となっている。これは、消耗品の一つである感光体についても当てはまり、感光体の高耐久性、長寿命化は重要な課題となっている。
そして、このような状況の中で、有機光導電体を用いた感光体(以下、「OPC」とも表記する。)に対し高耐久で長寿命なアモルファスシリコン(以下「a−Si」ともいう)系材料で構成された光導電層を有するa−Si感光体が注目されている。
特公平5−73232号公報 特開2002−123020号公報
従来、上記のような技術により、電子写真感光体の電気的、光学的、光導電的特性が向上し、それに伴って、画像濃度ムラ、光メモリーによるゴースト画像等の画像品質も向上してきた。
しかしながら、上記のようにカラー機、特にプロダクション市場で用いられる画像形成装置に要求されるスペックは厳しく、今までは問題にならなかったレベルが問題視される場合がある。
このため、従来のa−Si系材料で構成された光導電層を有する負帯電用a−Si感光体は、更なる画像品質の向上のために、光感度、光応答性等の電気的、光学的、光導電特性の点で改善の余地が存在する。さらには経時安定性および耐久性の点において、総合的な特性向上、改良されるべき余地も存在する。
従来の負帯電用a−Si感光体を用いた場合には、次のような課題がある。
まず、光メモリーによるゴースト画像を改善するための課題は以下である。光メモリーによるゴースト画像の原因は、光導電層で生成された光キャリアが、次のプロセスまでに再結合で消えないことである。
光メモリー低減対策としては、感光体の表面層の炭素原子の積層方向の分布、画像形成装置の露光波長や露光量、除電露光条件の最適化等により改善を図ってきた。
しかしながら、プロセスの高速化により光キャリアの再結合に費やせる時間が短縮される場合、上記の対策だけではゴースト画像の発生の抑制が充分ではない。また、プロダクション市場のような1ジョブ当りのプリントボリュームが膨大で光メモリーが蓄積しやすい条件では、更なる特性向上が必要である。
このため膜構造、膜組成で、露光によって発生する光キャリアの移動度、再結合までの時間(以下、「キャリアのライフタイム」とも表記する。)を適切に制御することが、ゴースト画像を改善するための課題である。
また、反射率のムラによる画像濃度ムラの課題は以下である。上記のように反射率のムラは、繰り返し使用の摺擦で起きる表面層の削れ量のムラが原因である。
このような表面層の削れ量のムラによる反射率のムラは、反射防止膜の技術、屈折率及び光学的バンドギャップ(Egopt)差の最適化、露光波長の工夫によって改善を行ってきた。
しかしながら、高画質な写真やプロダクション市場のポスターやグラフィックアート等では画像濃度ムラに対する要求レベルは高く、反射率のムラを更に抑制する必要がある。
また、プロセスが高速化され、単位面積あたりに露光できる時間が短縮され、露光の光量が厳しくなるために感度が重要になっている。
このため、負帯電用の電子写真感光体の画像濃度ムラでは、反射率ムラの抑制が課題である。更に、光導電層の上に積層される表面層、電荷注入阻止層、光導電層と電荷注入阻止層、または電荷注入阻止層と表面層を接続する層である中間層の透過率を向上させることが課題である。
従って、本発明の目的は、感度を向上させながら、光メモリーに代表されるゴースト画像及び画像濃度ムラを低減し、画像品質を向上することのできる負帯電用電子写真感光体を提供することである。
上述した目的を達成するため、本発明の負帯電用電子写真感光体は、導電性基体、前記導電性基体上の光導電層、前記光導電層上の中間層、及び前記中間層上の表面層を有する負帯電用の電子写真感光体において、
前記光導電層が、ケイ素原子を含有するアモルファス材料で形成されており、
前記表面層および前記中間層が、アモルファスシリコンカーバイドで形成されており、
前記中間層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)の和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.05以上0.75以下であり、
前記中間層が、その層厚方向に周期表第13族に属する原子を含有する領域前記周期表第13族に属する原子を含有しない領域を有し、
前記中間層の屈折率が、層厚方向に連続に漸次変化し、
前記領域Eが、記領より前記表面層側に位置し、
前記領域と前記領Eとが接する界面において、前記比(C/(Si+C))が不連続となり、
前記界面において、前記領E側の前記比(C/(Si+C))が前記領D側の前記比(C/(Si+C))より小さ
ことを特徴とする。
本発明よれば、感度を向上させながら、光メモリーに代表されるゴースト画像、画像濃度ムラを低減し、画像品質も向上することのできる負帯電用電子写真感光体を提供することが可能である。
本発明の中間層の屈折率と比(C/(Si+C))を模式的に示した図である。 本発明の負帯電用の電子写真感光体の層構成の一例を模式的に示した図である。 RFプラズマCVD法による堆積層形成装置の一例を示した図である。 比較例1の中間層の屈折率と比(C/(Si+C))を模式的に示した図である。 ゴースト評価に用いた画像を模式的に示した図である。
本願発明は、導電性基体、導電性基体上の光導電層、光導電層上の中間層、及び中間層上の表面層を有する負帯電用電子写真感光体に関する。
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、中間層において、アモルファスシリコンカーバイド(以下、「a−SiC」とも表記する。)で形成される膜構造および膜組成を従来にない構成にすることで、感度が向上し、光メモリーによるゴースト画像を低減し、反射率のムラを抑制することが可能となることを見出した。
具体的には、第一に本願発明は、中間層のa−SiCを構成するケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)の和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.05以上0.75以下である膜組成を有する。
次に、本願発明に係る中間層の屈折率が、上述の膜組成の範囲内において、周期表族の分類における周期表第13族に属する原子を含有する領域内において層厚方向に屈折率を漸次変化している。同様に、本願発明に係る中間層の範囲内において、周期表第13族に属する原子を含有しない領域内で屈折率が層厚方向に連続に漸次変化している。また、本願発明に係る中間層の範囲内において、周期表第13族に属する原子を含有する領域および周期表第13族に属する原子を含有しない領域の間の、膜構造および上述の比(C/(Si+C))は不連続で、屈折率は連続に漸次変化している。
さらに、図1に示すように、本願発明に係る中間層が、上述の周期表第13族に属する原子を含有しない領域の前述の比(C/(Si+C))が、含有する領域の前述の比(C/(Si+C))より小さくなる領域を有する。
このような膜構造および膜組成で構成された中間層を負帯電用の電子写真感光体に設けることで、上述の目的を達成できる知見を得た。
現時点で詳細は不明であるが、この理由を推察する。
まず、上述の中間層のa−SiCを構成するケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)の和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.05以上0.75以下とすることで、ゴースト画像を抑制する効果が得られる。
上述の比(C/(Si+C))を0.05以上とすることで、フリーキャリア、サーマルキャリアを抑制することができ、帯電特性が向上すると考えている。また、上述の比(C/(Si+C))が0.75以下とすることで、キャリア全体の移動度が向上し、ゴースト画像の発生をより抑制すると考えている。
したがって、中間層における上述の比(C/(Si+C))を、0.05以上0.75以下とすることで本発明のゴースト画像の抑制の効果が得られ、帯電特性が向上すると推察する。
次に、上述の膜組成の範囲内において、周期表第13族に属する原子を含有する領域内において層厚方向に屈折率を漸次変化させる。同様に、上述の膜組成の範囲内において、周期表第13族に属する原子を含有しない領域内で屈折率を層厚方向に連続に漸次変化させる。さらに、周期表第13族に属する原子を含有する領域と含有しない領域の間の境界においても、屈折率を連続的に漸次変化させることで反射率のムラを低減できると考えている。この理由は以下と考えている。
これは、屈折率を漸次変化することで連続した逆位相が形成され、入射光が相殺されるため反射光が低減し、反射率のムラが低減すると考えている。したがって、上述のように中間層全体で層厚方向に屈折率を漸次変化させることで反射率のムラが低減できると考えている。
したがって、本発明の周期表第13族に属する原子を含有する領域と含有しない領域で上述の膜構造および比(C/(Si+C))が不連続となる場合においても、屈折率を層厚方向に連続に漸次変化させる。このことで反射率のムラを低減する効果が得られると推察される。
さらに、少なくとも周期表第13族に属する原子を含有しない領域を周期表第13族に属する原子を含有する領域より表面層側に配置する。そして、上述の周期表第13族に属する原子を含有しない領域の前述の比(C/(Si+C))が、含有する領域の上述の比(C/(Si+C))より小さくなる領域を有することで感度が向上する効果が得られる。この理由は以下と推察する。
従来のように、周期表第13族に属する原子を含有しない領域の前述の比(C/(Si+C))が、含有する領域の比(C/(Si+C))より小さくなる領域を有さず、比(C/(Si+C))を連続変化させる。この場合は、周期表第13族に属する原子を含有しない領域で吸収が増加し、感度が悪化する。これは、比(C/(Si+C))が増加するほど光学的バンドギャップが狭くなるためと考えている。
そこで本発明では、周期表第13族に属する原子を含有しない領域の比(C/(Si+C))を下げて、光学的バンドギャップを広げ、吸収を低減し感度を向上させた。
しかしながら、周期表第13族に属する原子を含有しない領域の比(C/(Si+C))を下げた場合、周期表第13族に属する原子を含有しない領域と含有する領域の間で屈折率が不連続になるため、光学的な干渉が発生し、感度変動が悪化する。
そこで本発明では、周期表第13族に属する原子を含有しない領域の堆積膜形成において、例えば基板加熱温度を下げる、あるいは水素を添加する方法を用いることで、比(C/(Si+C))を下げた場合においても、屈折率が連続的に変化するようにした。このため、感度を良化させながら、感度変動も抑制できる。
また、本発明者らは、中間層の層厚を250nm以上1000nm以下とすることで、感光体の実使用上、中間層の光吸収が感度に対して問題にならない程度に抑えられ、且つ反射率の変動が効果的に得られることも見出した。これは、電子写真装置で用いられる露光の光に対して、逆位相が生成されるために必要になる層厚が250nm以上であり、実使用上の露光量で問題なく感度が得られる層厚が1000nm以下となるためである。したがって、中間層の層厚が、250nm以上1000nm以下とすることが好ましい。
さらに、周期表第13族に属する原子を含有する領域において、周期表第13族に属する原子の濃度を、層厚方向に変化させることでゴースト画像の低減できる。
これは、a−SiCを構成するケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)の和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))によって、周期表13族に属する原子の効果が異なり、キャリアの走行性への影響も違うためと考えている。したがって、周期表13族に属する原子の含有量を層厚方向に変化させることが好ましい。
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照し、さらに詳細に説明する。
<負帯電用電子写真感光体>
図2は、導電性基体である円筒状基体2101の表面に下部電荷阻止層2201、光導電層2301、中間層2401、表面層2501を順次積層した負帯電用電子写真感光体2000の模式図である。
図2を使用して電負帯電用子写真感光体を構成する各層について説明する。
(円筒状基体)
まず、堆積膜を形成する円筒状基体2101の材質としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタンやこれらの合金を用いることができる。中でも、加工性や製造コストを考慮すると、アルミニウムが優れている。この場合、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金のいずれかを用いることが好ましい。円筒状基体2101は、基体洗浄装置で処理される前に、例えば表面を鏡面切削加工することがある。
<光導電層>
光導電層2301は、一定極性の帯電処理では電荷を保持し、受光した際には導電する働きがある。光導電層2301は、シリコン原子を母体とするアモルファス材料からなり、光導電性および電荷保持特性を向上させるための原子や、伝導性を制御するための原子を含有させても良い。光導電性および電荷保持特性を向上させるための原子としては、水素原子やハロゲン原子を用いることができる。
水素原子やハロゲン原子は、シリコン原子の未結合手に結合し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させ得る。水素原子の含有量は、特に制限はなく、露光系の波長に合わせて適宜変化させることができ、例えばシリコン原子と水素原子の和に対して10〜40原子%などとすることができる。また、その分布形状に関しても、露光系の波長に合わせて適宜調整することができる。特に、水素原子やハロゲン原子の含有量をある程度多くすると、光学的バンドギャップが大きくなり、感度のピークが短波長側にシフトすることが知られている。
伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、周期表第13族に属する原子(第13族原子とも略記する)、または周期表第15族に属する原子(第15族原子とも略記する)を用いることができる。
第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にBが好適である。
第15族原子として、具体的には、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にPが好適である。
伝導性を制御する原子の光導電層中の含有量は、特に制限されないが、一般には0.01〜1000atmppmとすることができる。また、画像露光の到達する範囲においては、伝導性を制御する原子を実質的に含有しないものであってもよい。
光導電層2301の層厚は所望の電子写真特性が得られること及び製造上の効率や経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、例えば10〜80μm、好ましくは15〜60μm、より好ましくは20〜50μmである。層厚が10μm以上であれば、帯電能や感度等の電子写真特性が実用上使用可能となり、80μm以下であれば、光導電層2301を効率よく製造することができる。
<下部電荷阻止層>
次に下部電荷阻止層2201について説明する。下部電荷阻止層2201は、円筒状基体2101側からの電荷の注入を阻止する働きがある。下部電荷阻止層2201は光導電層2202が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、円筒状基体2101側より光導電層2202側に電荷が注入されるのを阻止する。また、光導電層2301で発生したキャリアを円筒状基体2101側へ通過させる整流性を有している。
下部電荷阻止層2201には、水素原子やハロゲン原子を含有するシリコン原子を母材とし、さらに導電性を制御する不純物を含有させても良い。
また、負帯電用電子写真感光体の場合、下部電荷阻止層2201に含有される不純物元素としては、第15族原子を用いることが出来る。
下部電荷阻止層2201中に含有される第13族原子および第15族原子の含有量は、所望にしたがって適宜決定される。好ましくは下部電荷阻止層中の構成原子の総量に対して10atmppm以上10000atmppm以下、より好適には50atmppm以上7000atmppm以下、最適には100atmppm以上5000atmppm以下とされるのが好ましい。
更に、下部電荷阻止層には、窒素原子、酸素原子及び炭素原子を少なくとも1つを含有させることによって、該下部電荷阻止層と円筒状基体との間の密着性の向上を図ることが可能となる。また、負帯電用電子写真感光体の場合には、下部電荷阻止層に不純物元素をドープしなくても窒素原子、酸素原子及び炭素原子を最適に含有させることで優れた電荷注入阻止能を有することも可能となる。
具体的には、下部電荷阻止層の全層領域に含有される窒素原子、酸素原子及び炭素原子の含有量は、窒素原子、酸素原子及び炭素原子の和を下部電荷阻止層中の構成原子の総量に対して、0.1atm%以上40atm%以下が好ましい。より好ましくは1.2atm%以上20atm%以下とすることにより、電荷注入阻止能が向上する。
下部電荷阻止層の層厚は、0.1μm以上10μm以下とすることで、円筒状基体2101からの電荷の注入阻止能が充分となり、充分な帯電能が得られ、電子写真特性の向上が期待でき、残留電位の上昇などの弊害を抑制できるため好ましい。
<中間層>
次に、中間層2401について説明する。
中間層2401はアモルファスシリコンカーバイドで形成される。中間層2401を構成するケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)の和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.05以上0.75以下である。また、少なくとも周期表第13族に属する原子を含有しない領域を周期表第13族に属する原子含有する領域より表面層側に有する。
また、上述の膜組成の範囲内において、周期表第13族に属する原子を含有する領域内において層厚方向に屈折率および膜組成を連続的に漸次変化させる。同様に、上述の膜組成の範囲内において、周期表第13族に属する原子を含有しない領域内で屈折率および膜組成を層厚方向に連続に漸次変化させる。
さらに、周期表第13族に属する原子を含有する領域および含有しない領域の間においては、膜構造および上述の比(C/(Si+C))は不連続で、屈折率は連続に漸次変化させる。
p型の伝導性を付与し阻止能を持たせるために含有される第13族原子の含有量は、中間層2401の層厚方向の各々箇所で適宜決定される。好ましくは中間層2401の任意の箇所における構成原子の総量に対して1atmppm以上5000atmppm以下である。好適には5atmppm以上3000atmppm以下の範囲とするのが好ましい。
なお、本発明において13族原子を含まないとはSIMS分析で測定した値がおおむね0.1atmppm以下であることを意味しコンタミネーションは除外する。
上記のように、中間層2401に含有される第13族原子の濃度としては、中間層2401に万偏なく均一に分布されていても良いが、層厚方向に変化させることで、帯電能および感度、ゴーストの向上ができる。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
又、中間層における周期表第13族に属する原子を含有する領域において、周期表第13族に属する原子の濃度が異なる領域を2つ以上有し、かつ前記中間層の層厚方向に変化している場合が好ましい。
また、中間層2401のアモルファスシリコンカーバイドに含有される水素原子の含有量は、中間層2401中の構成原子の総量に対して通常の場合5atm%以上70atm%以下が好ましい。より好ましくは10atm%以上65atm%以下、最適には15atm%以上60atm%以下とするのが好ましい。
<表面層>
次に、表面層2501について説明する。表面層2501は、連続繰り返し使用耐性、耐湿性、使用環境耐性、電気特性に関して良好な特性を得るために設けられる。
前述のように、ランニングコストを抑制することが求められ、消耗品の交換頻度を抑制し、メンテナンス回数を減らすためにも、高耐久性、特に耐摩耗性が優れた表面層が好ましい。
表面層2501は、アモルファスシリコン系の材料であればいずれの材質でも可能である。例えば、水素原子(H)および/またはハロゲン原子(X)を含有し、さらに炭素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiC:H,X」と表記する)材料も好適に用いられる。または、酸素原子や窒素原子を含有するa−SiO:HX、a−SiN:HXも好適に用いられる。
具体的な耐摩耗性に優れた表面層の一例としては、次の表面層がある。SiとCの原子密度の和に対するCの原子密度の比が、0.61以上0.75以下であり、かつSiの原子密度とCの原子密度の和が6.60×1022原子/cm3以上のa−SiC:Hである表面層が挙げられる。
表面層2501の層厚は、求められる電子写真感光体の寿命や表面層2501の膜質により異なるが、耐摩耗性に優れた表面層で通常0.3μm〜2.5μnm、好適には0.5μm〜2.0μmとされるのが好ましい。
層厚は0.3μm以上にすることで、光受容部材を使用中に摩耗等の理由により表面層が失われるリスクを回避することができる。また、層厚は2.5μnm以下にすることで、表面層の応力による膜剥れや、例えば感度や残留電位の悪化を防ぐことができる。
表面層の膜厚の増加は膜応力の増加につながるため、膜剥れと寿命とのバランスの見極めと適宜調整が必要である。
以上が電子写真感光体を構成する各層に求められる特性および役割である。
<堆積膜形成装置>
図3は、本発明の電子写真感光体の製造に使用できる、高周波電源を用いたRFプラズマCVD法により堆積膜を形成する装置の一例の模式図である。
この装置は主として、反応容器3110を有する堆積膜形成装置3100、原料ガス供給装置3200、および、反応容器3110の中を減圧する為の排気装置(図示せず)から構成されている。
反応容器3110の中にはアースに接続された円筒状基体3112、円筒状基体加熱用ヒーター3113および原料ガス導入管3114が設置されている。また、ガス導入管3114に設けられたガス導入口3115の位置により、反応容器3110内おける原料ガスの導入量の分布を制御する。煩雑になるため、図3ではガス導入口3115は5個しか記載していないが、実際にはガス導入口3115の数は適宜調整するのが好ましい。
そして、カソード電極3111には高周波マッチングボックス3122を介して高周波電源3120が接続されている。
原料ガス供給装置3200は、原料ガスボンベ3221〜3225であるSiH4,H2,CH4,NO,B2H6,CF4等のボンベを具備する。また、ガス供給停止用のバルブとして、バルブ3231〜3235、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255を具備する。そして、圧力調整器3261〜3265およびマスフローコントローラー3211〜3215を具備する。
次にこの装置を使った堆積膜の形成方法について説明する。まず、円筒状基体3112を反応容器3110に受け台3123を介して設置する。次に、排気装置(図示せず)を運転し、反応容器3110の中を排気する。真空計3119の表示を見ながら、反応容器3110の中の圧力がたとえば1Pa以下の所定の圧力になったところで、円筒状基体加熱用ヒーター3113に電力を供給し、円筒状基体3112を例えば100℃から350℃の所望の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置3200より、Ar、He等の不活性ガスを反応容器3110に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。
負帯電用電子写真感光体を構成する各層、例えば下部電荷阻止層、光導電層、中間層、表面層、に応じてガス供給装置3200より各堆積膜の形成に用いるガスを反応容器3110に供給する。すなわち、必要に応じバルブ3231〜3235、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255を開き、マスフローコントローラ3211〜3215に流量設定を行う。各マスフローコントローラの流量が安定したところで、真空計3119の表示を見ながらメインバルブ3118を操作し、反応容器3110の中の圧力が所望の圧力になるように調整する。所望の圧力が得られたところで高周波電源3120より高周波電力を印加すると同時に高周波マッチングボックス3122を操作し、反応容器3110の中にプラズマ放電を生起する。その後、速やかに高周波電力を所望の電力に調整し、堆積膜の形成を行う。
多層膜を形成する場合には、各層の堆積膜が所望の膜厚になった時点で高周波電力の印加を停止し、再び上記の手順を繰り返してそれぞれの層を形成すれば良い。また、連続的に高周波電力、原料ガスの種類、流量設定、円筒状基体加熱用ヒーター3113の電力、反応容器3110の中の圧力を再設定して堆積膜を形成してもよい。
中間層2401は、原料ガス流量、圧力、周波数、電力等を変化させることで、上述の比(C/(Si+C))を0.05以上0.75以下の範囲内で、層厚方向に漸次変化させることができる。
また、上述の周期表第13族に属する原子を含有しない領域の比(C/(Si+C))が、含有する領域の比(C/(Si+C))より小さくなる領域を持たせ、かつ屈折率を一致させる。このために、2つの領域で基板加熱温度、圧力、周波数、電力、H2やAr、He等の希釈ガスの希釈率等を変更する。
周期表第13族に属する原子を含有する領域および含有しない領域の間においては、放電を一旦切ることが望ましい。また、周期表第13族に属する原子の含有量が変化する領域間においても放電を一旦切っても良い。
以上のようにして、所定の層だけ堆積膜の形成が終わったところで、電力の印加を停止する。そして、バルブ3231〜3235、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255、および補助バルブ3260を閉じる。そして、原料ガスの供給を終えると同時に、排気バルブ3118を開き、反応容器3110の中を1Pa以下の圧力まで排気する。
このようにして、すべての堆積膜形成が終わった後は、排気バルブ3118を閉じ、反応容器3110の中に不活性ガスを導入し大気圧に戻した後、円筒状基体3112を取り出す。
以上が、RFプラズマCVD法による堆積膜形成を用いた電子写真感光体の製造方法である。
また、前述のように周波数13.56MHz以下の電力を与え原料ガスの分解によるグロー放電を用いたプラズマCVD法であれば、周波数3kHz以上300kHz以下の低周波を用いた低周波プラズマCVD法により堆積膜を形成しても良い。
このように製造された電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版機などの電子写真応用分野にも広く用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
<実施例1>
導電性の基体として、外径φ84mm、長さ381mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、上記の手順で電子写真感光体を作製した。なお、本実施例では図2に示した、下部電荷阻止層、光導電層、中間層、表面層の層構成からなる電子写真感光体を採用した。
下部電荷阻止層、光導電層、表面層は、図3に示す堆積膜形成装置で、高周波電源を用いたRFプラズマCVD法により形成した。
また、下部電荷阻止層、光導電層、表面層の形成条件を表1に示す。以下、実施例7以外は、全ての実施例、比較例で下部電荷阻止層、光導電層、表面層は表1の条件を用いている。
Figure 0006862285
次に、RFプラズマCVD法により作成した中間層の成膜条件を表2に示す。
Figure 0006862285
図1に示すように周期表第13族に属する原子を含有しない領域の前述の比(C/(Si+C))が、含有する領域の前述の比(C/(Si+C))より小さくなる領域を有する中間層を作製した。
図1のように、周期表第13族に属する原子を含有しない領域と含有する領域の屈折率を連続的に変化させるために、周期表第13族元素のホウ素原子を含有する領域と含有しない領域で成膜条件である基板加熱温度の条件を変更した。
なお、実施例および比較例の中間層の成膜において、中間層の形成条件をA〜Fの6個のポイントとそのポイントの間を結ぶ領域に分けた。また、第13族元素のホウ素原子を含有する領域と含有しない領域のポイント間、およびホウ素原子の濃度を急峻に変化するポイント間では、プラズマ放電用電力を一度切った。
プラズマ放電用電力を切るポイント間では、プラズマ放電用電力を一度切った後に、圧力と原料ガスの設定を変更し、安定した後にプラズマ放電用電力を再度投入した。なお、その他のポイント間では連続放電とし、プラズマ放電用電力を切らないポイント間では成膜条件を直線的に漸次変化させている。
具体的には、Aポイントの圧力と原料ガス流量でプラズマ放電用電力を投入し、Bポイントの成膜条件になるまで、成膜条件を直線的に補間するように漸次変化させ、Bポイントの成膜条件になったところでプラズマ放電用電力を切った。
そして、次にCポイントにおける圧力と原料ガス流量に設定を変更し、安定した後にプラズマ放電用電力を再度投入し、Dポイントの成膜条件になるまで、成膜条件を直線的に補間するように漸次変化させた。そして、Dポイントの成膜条件になったところでプラズマ放電用電力を切った。
次に、Eポイントにおける基板加熱温度、圧力と原料ガス流量に設定を変更し、安定した後にプラズマ放電用電力を再度投入し、Fポイントの成膜条件になるまで、成膜条件を直線的に補間するように漸次変化させた。そして、Fポイントの成膜条件になったところでプラズマ放電用電力を切った。
最後に、表面層の圧力と原料ガス流量に設定を変更し、安定した後にプラズマ放電用電力を再度投入し表面層を成膜した。
なお、BとC、DとEポイントの成膜条件は、反射防止効果が得られるように屈折率が同じになるように調整した。
<比較例1>
比較例1では、図4に示したように、実施例1と異なり周期表第13族に属する原子を含有する領域の前述の比(C/(Si+C))と、含有しない領域の比(C/(Si+C))が連続的に変化する成膜条件とした。比較例1の成膜条件を表3に示す。
ホウ素原子については、実施例1と同様に、中間層の膜厚方向において、表3のA、B、CおよびDポイントにホウ素原子を含有させた。
成膜は、実施例1と同様に、ホウ素原子の濃度が変わる表3のBとCの領域の間、ホウ素原子を含む領域と含まない領域の境界であるDとEのポイントの間で、プラズマ放電用電力を一度切った。そして、原料ガス流量の設定を変更し、安定した後にプラズマ放電用電力を再度投入した。
Figure 0006862285
<比較例2>
比較例2では、表4に示したように、中間層を漸次変化させずに形成条件を一定にして均一の膜構造とした。
Figure 0006862285
<比較例3>
比較例3では、表5に示したように、中間層に用いる膜質について、C/(Si+C)が0.05未満の膜組成を含むようにした。
また、実施例1と同様に図1のように、周期表第13族に属する原子を含有しない領域の前述の比(C/(Si+C))が、含有する領域の比(C/(Si+C))より小さくなるようにした。
そして、中間層の膜厚方向において、表5のA、B、CおよびDのポイントの間の領域にホウ素原子を含有させた。成膜は、実施例1と同様に、ホウ素原子の濃度が変わる表5のBとCのポイントの間、ホウ素原子を含む領域と含まない領域の境界であるDとEのポイントの間で、プラズマ放電用電力を一度切った。そして、原料ガス流量の設定および基板加熱温度を変更し、安定した後にプラズマ放電用電力を再度投入した。
また、BとCのポイント、およびDとEのポイントの成膜条件は、反射防止効果が得られるように屈折率が同じになるように調整した。
Figure 0006862285
<比較例4>
比較例4では、表6に示したように、中間層に用いる膜質について、C/(Si+C)が0.75を超える膜組成を含むようにした。
また、実施例1と同様に図1のように、周期表第13族に属する原子を含有しない領域の前述の比(C/(Si+C))が、含有する領域の比(C/(Si+C))より小さくなるようにした。
そして、中間層の膜厚方向において、表6のA、B、CおよびDのポイントの間の領域にホウ素原子を含有させた。成膜は、実施例1と同様に、ホウ素原子の濃度が変わる表6のBとCのポイントの間、ホウ素原子を含む領域と含まない領域の境界であるDとEのポイントの間で、プラズマ放電用電力を一度切った。そして、原料ガス流量の設定および基板加熱温度を変更し、安定した後にプラズマ放電用電力を再度投入した。
また、BとCのポイント、およびDとEのポイントの成膜条件は、反射防止効果が得られるように屈折率が同じになるように調整した。
Figure 0006862285
<実施例2>
実施例2では、表7に示したようにAおよびBの領域を周期表第13族に属する原子を含有しない成膜条件とした。
C、D、EおよびFの領域については実施例1と同じ条件とした。
成膜は、ホウ素原子を含む領域と含まない領域の境界であるBとCのポイントの間およびDとEのポイントの間で、プラズマ放電用電力を一度切った。そして、原料ガス流量の設定および基板加熱温度を変更し、安定した後にプラズマ放電用電力を再度投入した。
Figure 0006862285
以上のように実施例1〜2、比較例1〜4を成膜した。
なお、表の中間層における層厚は、漸次変化させている領域であるA〜Bのポイント間、C〜Dのポイント間、E〜Fのポイント間の各々の層厚とA〜Fのポイントの中間層全体の層厚を示している。
中間層の層厚については、まず前述のように中間層の形成条件をA〜Fの6個のポイントに分けた各ポイントの成膜条件と同様の条件下で、コーニング社製のガラス(商品名:1737)上に膜厚0.5μmの膜を形成した中間層個別測定用サンプルを作製した。そして、中間層個別測定用サンプルの堆積速度を計算し堆積膜の形成時間を調整した。
このように作製した中間層個別測定用サンプルを用いて、前述の比C/(Si+C)、屈折率を以下の分析方法で測定した。
(中間層のC/(Si+C)の測定)
中間層のC/(Si+C)の測定は、上述A〜Fの6個のポイントにおける中間層個別測定用サンプルについて、ESCA(PHI Quantum 2000 Scaning ESCA)により測定した。測定は、2mm×2mmの範囲を4kVで5分間スパッタして表面付着物の影響を取り除いた上で測定した。
そして、中間層の各ポイントのケイ素原子と炭素原子の和に対する炭素原子の比C/(Si+C)を各々算出した。
(屈折率)
中間層の屈折率の測定は、上述A〜Fの6個のポイントにおける中間層個別測定用サンプルについて、紫外・可視分光光度計(日本分光製V−570)により行った。試料に2500nmから250nmの波長の光を照射して透過率スペクトルを測定し、該スペクトルの谷を検出した。第一の試料の透過率スペクトルの谷の透過率Tを用いて下記の式を用いての膜の屈折率n1を計算した。
n1=[(1/T−1/2)(n02+ng2)+[(1/T−1/2)2(n02+ng2)2−n02ng2]1/2]1/2
ここでn0は空気の透過率、ngはガラス基板の透過率を表す。谷が2つ以上検出された場合には谷のそれぞれについて屈折率を計算しその平均値を膜の屈折率とすることが好ましい。
表8に、実施例1〜2、比較例1〜4のA〜Fの6個のポイントにおけるC/(Si+C)の測定結果および屈折率の測定結果を示す。
Figure 0006862285
(感度評価)
感度評価には、キヤノン製複写機iRC7065を実験用に改造した電子写真装置において、プロセススピードを500mm/secとして実施した。
作製した電子写真感光体を、電子写真装置に設置し、像露光を切った状態で電子写真感光体の長手方向中央位置における現像器位置の電位が−450Vになるように主帯電器に供給する電流量を調整した。その後、像露光を照射し現像器位置の電位が−50Vになるように像露光の光量を調整した。その際の像露光の光量を用いて評価を行った。
感度評価で用いた電子写真装置の像露光光源は、発振波長が658nmの半導体レーザーである。評価結果は比較例1で作製した成膜条件No.2の電子写真感光体を搭載した場合の像露光の光量を1.00とした相対比較で示した。感度評価に対しては、数値が小さいほど良く、EランクからAランクへ向かうほど良好である。
A‥比較例1で作製した成膜条件No.2の電子写真感光体での像露光光の光量に対する像露光光の光量の比が0.6未満。
B‥比較例1で作製した成膜条件No.2の電子写真感光体での像露光光の光量に対する像露光光の光量の比が0.6以上0.85未満。
C‥比較例1で作製した成膜条件No.2の電子写真感光体での像露光光の光量に対する像露光光の光量の比が0.85以上0.90未満。
D‥比較例1で作製した成膜条件No.2の電子写真感光体での像露光光の光量に対する像露光光の光量の比が0・90以上1.10未満。
E‥比較例1で作製した成膜条件No.2の電子写真感光体での像露光光の光量に対する像露光光の光量の比が1.10以上。
(長期使用時の感度ムラ)
長期使用時の感度ムラ評価には、キヤノン製複写機iRC7065を実験用にマイナス帯電方式に改造した電子写真装置において、プロセススピードを500mm/secとして実施した。
作製した電子写真感光体を、電子写真装置に設置し、像露光を切った状態で電子写真感光体の長手方向中央位置における現像器位置の暗部電位が−450Vになるように主帯電器に供給する電流量を調整する。その後、像露光光を照射し、現像器位置の明部電位が−50Vになるように像露光光の光量を調整した。この状態において、電子写真感光体における暗部電位と明部電位との電位差(暗部電位−明部電位)の分布を以下の位置で測定し、その最大値の最小値に対する比(%)と100(%)との差を電位ムラとして測定した。
電位分布の測定位置は電子写真感光体の長手方向9点(電子写真感光体の長手方向中央を基準として、0mm、±50mm、±90mm、±130mm、±150mm)とした。
この、9点の測定値の最大値と最小値の比から、以下に示す判断基準によってランク判定を行った。
また、感度ムラの評価は25万枚ごとに実施し、100万枚画像出力までの感度ムラを評価し、その最悪値を採用した。感度ムラの評価に対しては、数値が小さいほど良く、DランクからAランクへ向かうほど良好である。
A:2.5%未満の電位ムラ
B:2.5%以上3.5%未満の電位ムラ
C:3.5%以上4.0%未満の電位ムラ
D:4.0%以上の電位ムラ
(ゴースト評価)
ゴースト評価は、キヤノン製複写機iRC7065を実験用に改造した電子写真装置において、プロセススピードを500mm/secで、図5に示すようなテストチャートを用いて以下のように実施した。
まず、実験用に改造した電子写真装置を22℃、50%の環境下に設置し、感光体ヒーターをONにして、電子写真感光体の表面を約40℃に保った条件で前記テストチャートを出力した。
テストチャートは、画像左端部側にA3チャートの短辺の中央位置、左端から40mm位置を中心に40mm□の範囲に反射濃度1.4の黒色四角を有している。そして、左端から80mmの位置から右端から5mmの位置まで反射濃度0.4のハーフトーン(HT)を有している。
次に、出力したテストチャートを用い、テストチャート左端側を原稿先端として原稿台に置き、現像バイアスを調整して、出力された画像におけるテストチャートのHT部の反射濃度が0.4となるように設定した。その状態でA3の電子写真画像を出力し、出力された画像の反射濃度を測定した。
反射濃度の測定は、反射濃度計(X−Rite Inc製:504 分光濃度計)を用いて測定した。測定位置は、A3の画像短辺の中央位置で、A3の画像左端から303mm位置(前述の黒色四角の中心から電子写真感光体1周分の位置)を基準位置とした。基準位置と比較位置(基準位置に対してA3の画像短辺方向±30mm、長辺方向±30mmの4点)の合計5点で測定を行った。そして、4点の比較位置で測定した反射濃度の平均値Yを算出した。
さらに、基準位置での反射濃度Fと比較位置での反射濃度の平均値Gの差(F−G)を算出し、この差を用いてゴーストの評価を行った。
なお、評価結果は比較例4で作製した電子写真感光体を搭載した場合の前記基準位置での反射濃度Fと前記比較位置での反射濃度の平均値Gの差(F−G)を1.00とした相対比較で示した。
ゴーストが発生した場合、比較位置での反射濃度の平均値Gよりも基準位置での反射濃度Fが高くなる。よって、この評価においては、数値が小さいほどゴーストに対して良好である。
A‥上記(F−G)の値が比較例4で作製した電子写真感光体に対して0.70未満。
B‥上記(F−G)の値が比較例4で作製した電子写真感光体に対して0.70以上、0.80未満。
C‥上記(F−G)の値が比較例4で作製した電子写真感光体に対して0.80以上、0.95未満。
D‥上記(F−G)の値が比較例4で作製した電子写真感光体に対して0.95以上、1.05未満。
E‥上記(F−G)の値が比較例4で作製した電子写真感光体に対して1.05以上。
(帯電能評価)
帯電能評価は、キヤノン製複写機iRC7065を実験用にマイナス帯電方式に改造した電子写真装置において、プロセススピードを500mm/secとして実施した。
像露光を切った状態で主帯電器に印加する電流量を−1600μAに調整して電子写真感光体の長手方向中央位置における現像器位置での電子写真感光体の表面電位を測定し、その表面電位の値を帯電能とした。
評価結果は実施例2で作製した成膜条件No.4の電子写真感光体を搭載した場合の帯電能を1.00とした相対比較で示した。なお、帯電能評価に対して、C以上であれば良好であると判断した。
A‥実施例2で作製した成膜条件No.6の電子写真感光体の帯電能に対する評価感光体の帯電能の比が1.10以上。
B‥実施例2で作製した成膜条件No.6の電子写真感光体の帯電能に対する評価感光体の帯電能の比が1.05以上1.10未満。
C‥実施例2で作製した成膜条件No.6の電子写真感光体の帯電能に対する評価感光体の帯電能の比が1.00以上1.05未満。
D‥実施例2で作製した成膜条件No.6の電子写真感光体の帯電能に対する評価感光体の帯電能の比が1.00未満。
(総合評価)
総合評価は、感度、長期使用時の感度ムラ、ゴースト、帯電能の評価結果における最も評価のランクが低いものを各実施例、比較例の総合評価の結果とした。
総合評価において、C以上であれば本発明の効果が得られたと判断した。
感度、長期使用時の感度ムラ、ゴースト、帯電能の評価結果を表12に示す。
Figure 0006862285
表9の結果から、以下のことが判った。
実施例1は、比較例1に対し、周期表第13族に属する原子を含有しない領域の前述の比(C/(Si+C))が、含有する領域の比(C/(Si+C))より小さくなる領域を設けた。
比較例1および実施例1の結果から、周期表第13族に属する原子を含有する領域の前述の比(C/(Si+C))が、含有する領域の比(C/(Si+C))より小さくなる領域を設けることで、感度が向上することがわかった。
実施例1は、実施例2に対し、ホウ素原子含有量が異なる領域を設けた。
実施例1および実施例2の結果から、ホウ素原子の含有量が異なる領域を設けることで帯電能を向上させられることがわかった。
比較例2は、実施例1に対し、中間層における比C/(Si+C)が中間層の層厚方向に漸次変化させない均一の膜にした。
実施例1および比較例2の結果から、中間層における比C/(Si+C)が中間層の層厚方向に漸次変化させることで、感度ムラが抑制され、長期使用時の表面層削れによる画像濃度ムラが抑制されることが判った。
比較例3は、実施例1に対して、中間層における比(C/(Si+C))が、0.05未満である膜組成を含むようにした。実施例1と比較例3の結果から、中間層における比(C/(Si+C))が0.05以上とすることで、帯電能が向上することが判った。
比較例4は、実施例1に対して、中間層における比(C/(Si+C))が、0.75以上である膜組成を含むようにした。実施例1と比較例4の結果から、中間層における比(C/(Si+C))が0.75未満とすることで、ゴースト画像が抑制されることが判った。
<実施例3〜6>
次に、実施例1のA〜Fの6点における膜構造と膜特性で、中間層の膜厚だけ変更した負帯電用電子写真感光体を作製した。中間層の形成条件を表10〜13に示す。
Figure 0006862285
Figure 0006862285
Figure 0006862285
Figure 0006862285
実施例1と同様に各々の電子写真感光体を用いて、感度、長期使用時の感度ムラ、ゴースト、帯電能、について評価した。評価の結果を表11に示す。
Figure 0006862285
表14の結果から、中間層の層厚が、250nm以上で長期使用時の感度ムラが良好になり、1000nm以下では感度およびゴーストも良好である。
このことから、中間層の層厚が250nm以上1000nm以下で、表面層削れによる長期使用時の感度ムラで発生する画像濃度ムラ、ゴーストを抑制しながら、良好な感度を得られることが判った。
<実施例7>
次に、実施例7として、図3に示す装置を用いて、高周波電源3120、マッチングボックス3122を低周波電源に置き換えて、実施例1と同じ負帯電用電子写真感光体を作成した。成膜条件は、表15とした。
実施例1と同様に各々の電子写真感光体を用いて、感度、長期使用時の感度ムラ、ゴースト、帯電能、について評価した。その結果、実施例1と同様の良好な結果が得られた。
Figure 0006862285
以上、説明したように本発明の負帯電用電子写真感光体は、感度を向上させながら、光メモリーに代表されるゴースト画像、画像濃度ムラを抑制しながら、良好な帯電能および感度が得られ、長期使用時の画像濃度ムラを抑制し、画像品質を向上できる。

Claims (2)

  1. 導電性基体、前記導電性基体上の光導電層、前記光導電層上の中間層、及び前記中間層上の表面層を有する負帯電用の電子写真感光体において、
    前記光導電層が、ケイ素原子を含有するアモルファス材料で形成されており、
    前記表面層および前記中間層が、アモルファスシリコンカーバイドで形成されており、
    前記中間層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)の和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.05以上0.75以下であり、
    前記中間層が、その層厚方向に周期表第13族に属する原子を含有する領域前記周期表第13族に属する原子を含有しない領域を有し、
    前記中間層の屈折率が、層厚方向に連続に漸次変化し、
    前記領域Eが、記領より前記表面層側に位置し、
    前記領域と前記領Eとが接する界面において、前記比(C/(Si+C))が不連続となり、
    前記界面において、前記領E側の前記比(C/(Si+C))が前記領D側の前記比(C/(Si+C))より小さ
    ことを特徴とする負帯電用の電子写真感光体。
  2. 前記中間層の層厚が、250nm以上1000nm以下である請求項1に記載の負帯電用の電子写真感光体。
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