以下、図面を用いて本発明の電子写真用光受容部材について詳細に説明する。
図1は、本発明の電子写真用光受容部材の層構成の模式的説明図である。図1(a)に示す電子写真用光受容部材は、支持体(101)上に光受容層(102)が設けられている。この光受容層は、水素原子または/及びハロゲン原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−Si:H,X」という。)からなる光導電性を有する光導電層(103)で構成されている。
図1(b)は、本発明の他の電子写真用光受容部材の層構成の模式的説明図である。図1(b)に示す電子写真用光受容部材は、支持体(101)上に光受容層(102)が設けられている。この光受容層はa−Si:H,Xからなる光導電性を有する光導電層(103)と、アモルファスシリコン系表面層(104)とから構成されている。
図1(c)は、本発明の他の電子写真用光受容部材の層構成の模式的説明図である。図1(c)に示す電子写真用光受容部材は、支持体(101)上に光受容層(102)が設けられている。この光受容層はa−Si:H,Xからなる光導電性を有する光導電層(103)と、アモルファスシリコン系表面層(104)と、アモルファスシリコン系電荷注入阻止層(105)とから構成されている。
支持体
本発明において使用される支持体としては、導電性支持体、又は電気絶縁性部材の少なくとも光受容層を形成する側の表面を導電処理した支持体を用いることができる。導電性支持体としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属、及びこれらの合金、例えばステンレス等が挙げられる。また、導電処理した支持体の電気絶縁性部材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルム又はシート、ガラス、セラミック等が挙げられる。
本発明において使用される支持体の形状は、平滑表面あるいは凹凸表面を有する円筒状または無端ベルト状などにすることができる。その厚さは、所望通りの光受容部材を形成し得るように適宜決定するが、光受容部材としての可撓性が要求される場合には、支持体としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることが好ましい。しかしながら、支持体は製造上および取り扱い上、機械的強度等の点から通常は10μm以上とすることが望ましい。
特にレーザー光などの可干渉性光を用いて像記録を行う場合には、可視画像において現われる、いわゆる干渉縞模様による画像不良をより効果的に解消するために、支持体の表面に凹凸を設けてもよい。このような凹凸は、特開昭60−168156号公報、同60−178457号公報、同60−225854号公報等に記載された公知の方法により形成される。
また、レーザー光(例えば788nm)などの可干渉光を用いた場合の干渉縞模様による画像不良をより効果的に解消する別の方法として、支持体の表面に複数の球状痕跡窪みによる凹凸を設けてもよい。この凹凸は、光受容部材に要求される解像力よりも微少であって複数の球状痕跡窪みによるものである。このような支持体の表面に設けられる複数の球状痕跡窪みによる凹凸は、特開昭61−231561号公報に記載された公知の方法により形成される。
光導電層
本発明における光導電層は、その目的を効果的に達成するために、真空堆積膜形成方法によって所望の特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件を設定し、また使用する原料ガスなどを適宜選択して形成する。具体的には、例えばグロー放電法(低周波CVD法・高周波CVD法・マイクロ波CVD法等の交流放電CVD法、あるいは直流放電CVD法など)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法などの数々の薄膜堆積法によって形成することができる。これらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷程度、製造規模、作製される光受容部材に所望される特性等の要因によって適宜選択採用されるが、所望の特性を有する光受容部材を製造するための条件の制御が比較的容易であることから、高周波グロー放電法が好適である。
グロー放電法によって光導電層を形成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガス又は/及びハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原料ガスを、内部を減圧にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置した所定の支持体上にa−Si:H,Xからなる層を形成する。
また、本発明における光導電層中には、水素原子または/及びハロゲン原子が含有されることが必要であるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させるために必須不可欠であるからである。
水素原子もしくはハロゲン原子の含有量または水素原子とハロゲン原子との合計量(Ch)は、第1の発明に関する光受容部材については、シリコン原子と水素原子または/及びハロゲン原子との合計量に対して10〜30原子%、第2の発明に関する光受容部材については10〜20原子%、第3の発明に関する光受容部材については25〜35原子%の範囲内にあることが望ましい。第8の発明に関する光受容部材については、その光導電層の第1の層領域のChが20〜30原子%、第2の層領域のChが10〜25原子%であることが望ましい。第9の発明に関する光受容部材については、その光導電層の第1の層領域のChが25〜40原子%、第2の層領域のChが10〜25原子%であることが望ましい。
本発明において使用されるSi供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si2H6、Si3H8、Si4H10等のガス状態の又はガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、さらに層形成時の取り扱い易さやSi供給効率の良さ等の点でSiH4、Si2H6が好ましいものとして挙げられる。また、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えない。
そして、形成される光導電層中に水素原子を構造的に導入し、水素原子の導入割合の制御をいっそう容易にして、本発明の目的を達成する膜特性を得るために、上記のガスにさらにH2ガス、H2とHeの混合ガス、あるいは水素原子を含む珪素化合物のガス等を所望量混合して層形成することが望ましい。
本発明において使用されるハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なものは、例えば、ハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体等のガス状の又はガス化し得るハロゲン化合物が好ましくものとして挙げられる。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状の又はガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げることができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、例えばSiF4、Si2F6等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。
光導電層中に含有される水素原子または/及びハロゲン原子の量を制御するには、例えば支持体の温度、水素原子または/及びハロゲン原子を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電電力等を制御すればよい。
本発明における光導電層には、伝導性を制御する原子を含有させることが必要である。これは、光導電層のEgやEuといった物性から得られるキャリアの走行性を調整し或いは補償して走行性を高次でバランスさせることにより、帯電能や光メモリー特性を向上させるために必須不可欠であるからである。伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期律表第IIIb族の原子(以下「第IIIb族原子」という。)を用いることができる。
第1〜第3の発明に関する光受容部材については、この第IIIb族原子の含有量は、光導電層の光が入射する側であって光を一定量吸収する第2の層領域における第IIIb族原子含有量がその他の第1の層領域よりも少ないこと、該第2の層領域の第IIIb族原子の含有量がシリコン原子に対して0.03〜5ppmであること、第1の層領域の第IIIb族原子の含有量がシリコン原子に対して0.2〜25ppmであること、第2の層領域の第IIIb族原子の含有量に対する、第1の層領域の第IIIb族原子の含有量の比が1.2〜200であることが望ましい。ここで、第2の層領域の光の吸収量は、像露光のピーク波長光を50〜90%吸収することが好ましい。
第8の発明に関する光受容部材における第IIIb族原子の含有量は、第1の層領域の第IIIb族原子の含有量がシリコン原子に対して0.2〜30ppm、第2の層領域の第IIIb族原子の含有量がシリコン原子に対して0.01〜10ppmであることが望ましい。
第9の発明に関する光受容部材における第IIIb族原子の含有量は、第1の層領域の第IIIb族原子の含有量がシリコン原子に対して0.2〜25ppm、第2の層領域の第IIIb族原子の含有量がシリコン原子に対して0.01〜10ppmであることが望ましい。
また、第8及び第9の発明に関する光受容部材については、正孔電子対が生成し走行する部分である第2の層領域における、像露光のピーク波長光を70%以上吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量が、第1の層領域より少ないこと、さらには、正孔と電子の走行性を高次でバランスさせるために、上記像露光のピーク波長光を70%以上吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量が、シリコン原子に対して0.01〜5ppmであることが望ましい。
第IIIb族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。
伝導性を制御する原子である第IIIb族原子を構造的に導入するには、層形成の際に、第IIIb族原子導入用の原料物質をガス状態で反応容器中に、光導電層を形成するための他のガスとともに導入してやればよい。
このとき、光導電層における第IIIb族元素の含有量は、支持体側から表面側へ向かって減少させることが好ましい。
生成する光キャリヤのうち、支持体方向に走行するのは正孔(ホール)である。その走行性は電子の走行性に比べると劣るが、この正孔を走行させないと、ゴーストメモリレベルの低下や残留電位が高くなる等の問題が生じる。そこで、この正孔の走行性を改善し、電子との走行性のバランスを取るために、第IIIb族元素を含有させる。しかし、第IIIb族元素を含有させていくと、膜中の準位の増加により帯電能の低下という影響もでてくる。この二つの問題をバランス良く効果的に解決するために、第IIIb族元素の含有量に勾配を持たせる。
第IIIb族原子導入用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状の、又は少なくとも層形成条件下で容易にガス化し得るものが望ましい。そのような第IIIb族原子導入用の原料物質としては、硼素原子導入用としてB2H6、B4H10、B5H9、B5H11、B6H10、B6H12、B6H14等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH3)3、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。中でもB2H6は、取り扱いの面からも好ましい原料物質である。また、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH2又は/及びHeにより希釈して使用してもよい。
さらに本発明においては、光導電層に炭素原子および/又は酸素原子および/又は窒素原子を含有させることも有効である。炭素原子および/又は酸素原子および/又は窒素原子の含有量は、シリコン原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子の合計量に対して1×10-5〜10原子%が好ましく、1×10-4〜8原子%がより好ましく、1×10-3〜5原子%が最適である。炭素原子および/又は酸素原子および/又は窒素原子は、光導電層中に万遍なく均一に含有されてもよいし、光導電層の層厚方向に含有量が変化するような不均一な分布を有する部分があってもよい。
本発明において、光導電層の層厚は、所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは20〜50μm、より好ましくは23〜45μm、最適には25〜40μmの範囲である。層厚が20μmより薄くなると帯電能や感度等の電子写真特性が実用上不充分となり、50μmより厚くなると光導電層の作製時間が長くなって製造コストが高くなる。
また、第8及び第9の発明に関する光受容部材については、光導電層全体(第1の層領域および第2の層領域)に対する第2の層領域の厚さの比は、0.05〜0.5であることが望ましい。その比が0.03より小さいと、第2の層領域を表面層側に位置させたときに前露光や像露光を十分に吸収することができず、感度の温度特性の低減や感度の直線性の改善の効果を十分に発揮することができない。また、0.05を超えると帯電能の向上や温度特性に対する効果が十分に発揮されない。
本発明の目的を達成し、所望の膜特性を有する光導電層を形成するには、Si供給用のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに支持体温度を適宜設定することが必要である。
希釈ガスとして使用するH2又は/及びHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択される。第1〜第3の発明に関する光受容部材については、Si供給用ガスに対するH2又は/及びHeの流量を、通常の場合3〜30倍、好ましくは4〜25倍、最適には5〜20倍の範囲に制御する。また、その範囲内で一定の値になるように制御することが好ましい。第8の発明に関する光受容部材については、第1の層領域における、Si供給用ガスに対するH2又は/及びHeの流量を、通常の場合4〜20倍、好ましくは5〜15倍、最適には6〜10倍の範囲に制御することが望ましく、第9の発明に関する光受容部材については、第1の層領域における、Si供給用ガスに対するH2又は/及びHeの流量を、通常の場合2〜15倍、好ましくは3〜12倍、最適には4〜8倍の範囲に制御することが望ましい。そして第2の層領域においては、第8及び第9の発明に関する光受容部材のいずれについても、Si供給用ガスに対するH2又は/及びHeの流量を、通常の場合0.5〜10倍、好ましくは1〜8倍、最適には2〜6倍の範囲に制御することが望ましい。
反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択され、通常の場合1×10-2〜2×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜2×102Paの範囲に制御する。
放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択され、Si供給用のガス流量に対する放電電力の比(W/sccm)を、好ましくは0.3〜10、より好ましくは0.5〜9、最適には1〜6の範囲に制御する。そして、第1の層領域のSi供給用ガスの流量に対する放電電力の比を第2の層領域のそれに比べて大きくし、いわゆるフローリミット領域で作製することが好ましい。
支持体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択され、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃、最適には250〜300℃に設定する。
以上のガス混合比、反応容器内のガス圧、放電電力および支持体温度の望ましい数値範囲は、独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく、相互的かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めることが望ましい。
表面層
本発明においては、上述のようにして支持体上に形成された光導電層の上に、さらにa−Si系の表面層を形成することが好ましい。この表面層は自由表面(110)を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性等において本発明の目的を達成するために設けられる。
また本発明においては、光導電層と表面層を形成するそれぞれの非晶質材料がシリコン原子という共通の構成要素を有しているため、積層界面において化学的な安定性が十分に確保されている。
表面層は、a−Siであればいずれの材質でも使用可能であるが、例えば、水素原子(H)又は/及びハロゲン原子(X)を含有し、さらに炭素原子(C)を含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiC:H,X」と表記する。)、水素原子(H)又は/及びハロゲン原子(X)を含有し、さらに酸素原子(O)を含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiO:H,X」と表記する。)、水素原子(H)又は/及びハロゲン原子(X)を含有し、さらに窒素原子(N)を含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiN:H,X」と表記する。)、水素原子(H)又は/及びハロゲン原子(X)を含有し、さらに炭素原子・酸素原子・窒素原子の少なくとも一つを含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiCON:H,X」と表記する。)等の材料が好適に用いられる。
本発明においてその目的を効果的に達成するために、表面層は、真空堆積膜形成方法によって、所望の特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件が設定されて形成される。具体的には、例えばグロー放電法(低周波CVD法・高周波CVD法・マイクロ波CVD法等の交流放電CVD法、あるいは直流放電CVD法等)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法などの数々の薄膜堆積法によって形成することができる。これらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷程度、製造規模、作製される光受容部材に所望される特性等の要因によって適宜選択採用されるが、光受容部材の生産性から光導電層と同様な堆積法によることが好ましい。
例えば、グロー放電法によってa−SiC:H,Xからなる表面層を形成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガス又は/及びハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原料ガスとを、内部を減圧にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置した光導電層を形成した支持体上にa−SiC:H,Xからなる層を形成する。
本発明における表面層の材質としては、アモルファスシリコン材料ならば何れでもよいが、炭素・窒素・酸素から選ばれた元素を少なくとも1つ含むアモルファスシリコン材料が好ましく、特にa−SiC:H,Xが好ましい。
表面層をa−SiCを主成分として構成する場合の炭素量は、シリコン原子と炭素原子の合計量に対して30〜90%の範囲が好ましい。
また本発明においては、表面層中に水素原子または/及びハロゲン原子が含有されることが必要であるが、これはシリコン原子などの構成原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させるために必須不可欠である。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好ましくは35〜65原子%、より好ましくは40〜60原子%である。また、フッ素等のハロゲン原子の含有量は、通常の場合は0.01〜15原子%、好ましくは0.1〜10原子%、より好ましくは0.6〜4原子%である。
これらの水素または/及びハロゲン含有量の範囲内で形成される光受容部材は、実際面において、従来にない格段に優れたものとして十分適用できるものである。
表面層内に存在する欠陥(主にシリコン原子や炭素原子のダングリングボンド)は電子写真用光受容部材としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば、自由表面からの電荷の注入による帯電特性の劣化、使用環境、例えば高い湿度の下で表面構造が変化することによる帯電特性の変動、コロナ帯電時や光照射時に光導電層から表面層に電荷が注入され前記表面層内の欠陥に電荷がトラップされることによる、繰り返し使用時の残像現象の発生などがこの悪影響として挙げられる。しかしながら表面層内の水素含有量を30原子%以上に制御することで表面層内の欠陥が大幅に減少し、その結果、従来に比べて電気的特性および高速連続使用性において飛躍的な向上を図ることができる。一方、前記表面層中の水素含有量が70原子%を超えると表面層の硬度が低下するために、繰り返し使用に耐えられなくなる場合がある。したがって、表面層中の水素含有量を前記の範囲内に制御することは、格段に優れた所望の電子写真特性を得る上で非常に重要である。表面層中の水素含有量は、原料ガスの流量(比)、支持体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御することができる。
また、表面層中のハロゲン原子含有量を0.01原子%以上に制御することによって、表面層内のシリコン原子と炭素原子の結合の発生をより効果的に達成することが可能となる。さらに、表面層中のハロゲン原子の働きとして、コロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子の結合の切断を効果的に防止することができる。しかし、表面層中のハロゲン原子含有量が15原子%を超えると、表面層内のシリコン原子と炭素原子の結合の発生の効果、及びコロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子の結合の切断を防止する効果がほとんど認められなくなる。さらに、過剰のハロゲン原子が表面層中のキャリアの走行性を阻害するため、残留電位や画像メモリーが顕著に認められてくる。したがって、表面層中のハロゲン含有量を前記範囲内に制御することが所望の電子写真特性を得る上で重要である。表面層中のハロゲン原子含有量は、水素含有量と同様に原料ガスの流量(比)、支持体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御することができる。
本発明の表面層の形成において使用されるSi供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si2H6、Si3H8、Si4H10等のガス状態の又はガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、さらに層形成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si2H6が好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
炭素供給用ガスとなり得る物質としては、CH4、C2H2、C2H6、C3H8、C4H10等のガス状態の又はガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものとして挙げられ、さらに層形成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でCH4、C2H2、C2H6が好ましいものとして挙げられる。また、これらの炭素供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質としては、NH3、NO、N2O、NO2、O2、CO、CO2、N2等のガス状態の又はガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。また、これらの窒素または酸素供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
また、表面層中に導入される水素原子の導入割合の制御をいっそう容易するために、これらのガスにさらに水素ガス、又は水素原子を含む珪素化合物のガスを所望量混合して層形成することが好ましい。なお、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えない。
ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なものは、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体等のガス状の又はガス化し得るハロゲン化合物が挙げられる。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状の又はガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げることができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、例えばSiF4、Si2F6等の弗化珪素を好ましいものとして挙げることができる。
表面層中に含有される水素原子または/及びハロゲン原子の量を制御するには、例えば支持体の温度、水素原子または/及びハロゲン原子を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電電力等を制御すればよい。
炭素原子または/及び酸素原子または/及び窒素原子は、表面層中に万遍なく均一に含有されてもよいし、表面層の層厚方向に含有量が変化するような不均一な分布を有した部分があってもよい。
さらに本発明においては、表面層には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子は、表面層中に万遍なく均一に分布した状態で含有されてもよいし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有されている部分があってもよい。
伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期律表第IIIb族原子またはn型伝導特性を与える周期律表第Vb族原子を用いることができる。
第IIIb族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。第Vb族原子としては、具体的には燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、Asが好適である。
表面層に含有される伝導性を制御する原子の含有量は、好ましくは1×10-3〜1×103原子ppm、より好ましくは1×10-2〜5×102原子ppm、最適には1×10-1〜1×102原子ppmの範囲である。
伝導性を制御する原子、例えば第IIIb族原子あるいは第Vb族原子を構造的に導入するには、層形成の際に、第IIIb族原子導入用の原料物質あるいは第Vb族原子導入用の原料物質をガス状態で反応容器中に、表面層を形成するための他のガスとともに導入してやればよい。
第IIIb族原子導入用の原料物質あるいは第Vb族原子導入用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状の、又は少なくとも層形成条件下で容易にガス化し得るものが望ましい。そのような第IIIb族原子導入用の原料物質としては、硼素原子導入用としてB2H6、B4H10、B5H9、B5H11、B6H10、B6H12、B6H14等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH3)3、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。第Vb族原子導入用の原料物質としては、燐原子導入用としてPH3、P2H4等の水素化燐、PH4I、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化燐などが挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等も第Vb族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることができる。また、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
本発明における表面層の層厚は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.05〜2μm、より好ましくは0.1〜1μmである。層厚が0.01μmよりも薄いと光受容部材を使用中に摩耗等の理由により表面層が失われてしまい、3μmを超えると残留電位の増加等の電子写真特性の低下がみられる。
本発明における表面層は、その要求される特性が所望通りに得られるように注意深く形成する。すなわち、Siと、C・N・Oの少なくとも一つの元素と、H又は/及びXとを構成要素とする物質は、その形成条件によって構造的には結晶からアモルファスまでの形態(総称して「非単結晶」という。)を取り、電気物性的には導電性から半導体性、絶縁性までの間の性質を有し、また光導電的性質から非光導電的性質までの間の性質を各々示すので、本発明においては、目的に応じた所望の特性を有する化合物が形成されるように所望にしたがってその形成条件の選択が厳密になされる。
例えば、表面層を耐圧性の向上を主な目的として設ける場合には、使用環境において電気絶縁性的挙動の顕著な非単結晶材料として形成される。また、連続繰り返し使用特性や使用環境特性の向上を主たる目的として表面層を設ける場合には、上記の電気絶縁性の度合はある程度緩和され、照射される光に対してある程度の感度を有する非単結晶材料として形成される。
本発明の目的を達成し得る特性を有する表面層を形成するには、支持体の温度、反応容器内のガス圧を所望にしたがって適宜設定する必要がある。支持体の温度(Ts)は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃、最適には250〜300℃とする。反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは1×10-2〜2×103Pa、より好ましくは5×10-2〜5×102、最適には1×10-1〜2×102Paとする。本発明においては、表面層を形成するための支持体温度やガス圧の望ましい数値範囲は上記範囲が挙げられるが、これらの条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
さらに、本発明においては、光導電層と表面層との間に、炭素原子・酸素原子・窒素原子の含有量を表面層より減らしたブロッキング層(下部表面層)を設けることも帯電能等の特性をさらに向上させるためには有効である。
また、表面層と光導電層との間に、炭素原子・酸素原子・窒素原子の含有量が光導電層に向かって減少するように変化する領域を設けてもよい。これにより、表面層と光導電層の密着性を向上させ、光キャリアの表面への移動がスムーズになるとともに、光導電層と表面層との界面での光の反射による干渉の影響をより少なくすることができる。
電荷注入阻止層
本発明の光受容部材においては、導電性支持体と光導電層との間に、導電性支持体側からの電荷の注入を阻止する働きのある電荷注入阻止層を設けるのがいっそう効果的である。すなわち、電荷注入阻止層は、光受容層が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、支持体側から光導電層側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性の帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮されない、いわゆる極性依存性を有している。
このような機能を付与するためには、電荷注入阻止層に伝導性を制御する原子を光導電層より比較的多く含有させる。伝導性を制御する原子は、層中に万偏なく均一に分布されてもよいし、あるいは層厚方向には万偏なく含有されてはいるが不均一に分布する状態で含有されている部分があってもよい。濃度分布が不均一な場合には、支持体側に多く分布するように含有させるのが好ましい。但し、いずれの場合も、支持体の表面と平行面内の方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
電荷注入阻止層に含有される伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、第IIIb族原子または第Vb族原子を用いることができる。
第IIIb族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。第Vb族原子としては、具体的には燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、Asが好適である。これらの原子を導入するための原料物質は、前記表面層の形成に使用するものと同様である。
本発明における電荷注入阻止層に含有される伝導性を制御する原子の含有量は、本発明の目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜決定され、好ましくは10〜1×104原子ppm、より好ましくは50〜5×103原子ppm、最適には1×102〜3×103原子ppmである。
さらに、電荷注入阻止層には、炭素原子・窒素原子・酸素原子の少なくとも一種を含有させることによって、該電荷注入阻止層に直接接触して設けられる他の層との間の密着性をよりいっそう向上させることができる。炭素原子・窒素原子・酸素原子は層中に万偏なく均一に分布されてもよいし、あるいは層厚方向には万偏なく含有されてはいるが不均一に分布する状態で含有されている部分があってもよい。但し、いずれの場合にも、支持体の表面と平行面内方向においては均一な分布で万遍なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
本発明における電荷注入阻止層の全層領域に含有される炭素原子・窒素原子・酸素原子の含有量は、本発明の目的が効果的に達成されるように適宜決定され、一種の場合はその量として二種以上の場合はその総和量として、好ましくは1×10-3〜50原子%、より好ましくは5×10-3〜30原子%、最適には1×10-2〜10原子%である。
また、本発明における電荷注入阻止層に含有される水素原子または/及びハロゲン原子は層内に存在する未結合手を補償し膜質の向上に効果を奏する。電荷注入阻止層中の水素原子またはハロゲン原子あるいは水素原子とハロゲン原子との和の含有量は、好ましくは1〜50原子%、より好ましくは5〜40原子%、最適には10〜30原子%である。
本発明における電荷注入阻止層の層厚は、所望の電子写真特性および経済的効果等の点から、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.3〜4μm、最適には0.5〜3μmである。層厚が0.1μmより薄くなると、支持体からの電荷の注入阻止能が不十分になって十分な帯電能が得られなくなり、また5μmより厚くすると電子写真特性の向上は期待できず、作製時間の延長による製造コストの増加を招くことになる。
本発明において電荷注入阻止層を形成するには、前述の光導電層を形成する方法と同様の真空堆積法が採用される。本発明の目的を達成し得る特性を有する電荷注入阻止層を形成するには、前述の光導電層と同様に、Si供給用のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力および支持体の温度を適宜設定することが必要である。
希釈ガスとして使用するH2又は/及びHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択され、Si供給用ガスに対しH2又は/及びHeを、通常の場合0.3〜20倍、好ましくは0.5〜15倍、最適には1〜10倍の範囲に制御する。
反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択され、通常の場合1×10-2〜2×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜2×102Paの範囲に制御する。
放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択され、Si供給用のガス流量に対する放電電力の比(W/SCCM)を、通常の場合0.5〜8、好ましくは0.8〜7、最適には1〜6の範囲に設定する。
支持体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択され、通常の場合、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃、最適には250〜310℃に設定する。
本発明においては、電荷注入阻止層を形成するための希釈ガスの混合比、ガス圧、放電電力および支持体温度の望ましい数値範囲は、独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する電荷注入阻止層を形成すべく、相互的かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めることが望ましい。
この他に、本発明の光受容部材においては、光受容層の前記支持体側に、少なくともアルミニウム原子、シリコン原子、水素原子または/及びハロゲン原子が層厚方向に不均一な分布状態で含有する層領域を設けることが望ましい。また、本発明の光受容部材においては、支持体と光導電層あるいは電荷注入阻止層との間の密着性の一層の向上を図る目的で、例えば、Si3N4・SiO2・SiOあるいはシリコン原子を母体とし、水素原子または/及びハロゲン原子と、炭素原子または/及び酸素原子または/及び窒素原子とを含む非晶質材料等で構成される密着層を設けてもよい。さらに、支持体からの反射光による干渉模様の発生を防止するための光吸収層を設けてもよい。
光受容層形成装置および膜形成方法
次に、光受容層を形成するための装置および膜形成方法について詳述する。
図4は、RF帯の電源周波数を用いた高周波プラズマCVD法(以下「RF−PCVD」と略記する。)による光受容部材の製造装置の一例を示す模式的な構成図である。図4に示す製造装置の構成は以下の通りである。
この装置は大別すると、堆積装置(4100)、原料ガス供給装置(4200)、及び反応容器(4111)内を減圧にするための排気装置(図示せず)から構成されている。堆積装置(4100)中の反応容器(4111)内には円筒状支持体(4112)、支持体加熱用ヒーター(4113)、原料ガス導入管(4114)が設置され、さらに高周波マッチングボックス(4115)が接続されている。
原料ガス供給装置(4200)は、SiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3等の原料ガスボンベ(4221〜4226)、バルブ(4231〜4236,4241〜4246,4251〜4256)及びマスフローコントローラー(4211〜4216)から構成され、各原料ガスボンベはバルブ(4260)を介して反応容器(4111)内のガス導入管(4114)に接続されている。
この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば以下のように行なうことができる。
まず、反応容器(4111)内に円筒状支持体(4112)を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器内を排気する。続いて、支持体加熱用ヒーター(4113)により円筒状支持体の温度を200〜350℃の所定の温度に制御する。
堆積膜形成用の原料ガスを反応容器(4111)に流入させるには、まず、原料ガスボンベバルブ(4231〜4236)及び反応容器リークバルブ(4117)が閉じられていることを確認し、また、ガス流入バルブ(4241〜4246)、ガス流出バルブ(4251〜4256)及び補助バルブ(4260)が開かれていることを確認し、その後にメインバルブ(4118)を開いて反応容器及びガス配管内(4116)を排気する。
次に、真空計(4119)の読みが約1×10-2Paになった時点で補助バルブ及びガス流出バルブを閉じる。
その後、原料ガスボンベから各ガスをバルブ(4231〜4236)を開いて導入し、圧力調整器(4261〜4266)により各ガス圧を2Kg/cm2に調整する。次いでガス流入バルブ(4241〜4246)を徐々に開けて、各ガスをマスフローコントローラー内に導入する。
以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下の手順で各層の形成を行う。
円筒状支持体が所定の温度になったところでガス流出バルブ(4251〜4256)のうちの必要なもの及び補助バルブ(4260)を徐々に開き、原料ガスボンベから所定のガスをガス導入管を介して反応容器内に導入する。次にマスフローコントローラーによって各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器内の圧力が1.5×102Pa以下の所定の圧力になるように真空計を見ながらメインバルブの開口を調整する。内圧が安定したところで、周波数13.56MHzのRF電源(不図示)を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックスを通じて反応容器内にRF電力を導入し、グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器内に導入された原料ガスが分解され、円筒状支持体上に所定のシリコンを主成分とする堆積膜が形成される。所望の膜厚の形成が行われた後、RF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
それぞれの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うまでもなく、また、それぞれのガスが反応容器内や、ガス流出バルブから反応容器に至る配管内に残留することを避けるために、ガス流出バルブを閉じ、補助バルブを開き、さらにメインバルブを全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
また、膜形成の均一化を図るために、層形成を行なっている間は、円筒状支持体を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効である。
さらに、上述のガス種およびバルブ操作は各々の層の形成条件にしたがって変更が加えられることは言うまでもない。
上記の方法において、堆積膜形成時の支持体温度は、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃、最適には250〜300℃である。
支持体の加熱方法は、真空仕様である発熱体を用いればよく、より具体的にはシース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体や気体等を温媒とし熱交換手段による発熱体等が挙げられる。加熱手段の表面材質は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類、セラミックス、耐熱性高分子樹脂等を使用することができる。これら以外にも、反応容器の外部に加熱専用の容器を設け、そこで加熱した後、反応容器内へ真空下で支持体を搬送する方法が用いられる。
〔実験例〕
以下、実験例により本発明の効果を具体的に説明する。
実験例−A1
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表−A1に示す条件で、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。光導電層は、第1の層領域、第2の層領域(波長680nmの光を70%吸収できる層厚の領域)の順で形成し、第IIIb族元素を含有するガス種としてはB2H6を用いてシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。
一方、アルミニウムシリンダーに代えて、サンプル基板を設置するための溝加工を施した円筒形のサンプルホルダーを設置し、ガラス基板(コーニング社 7059)及びSiウエハー上にそれぞれ上記光導電層の形成条件で膜厚約1μmのa−Si膜を堆積した。ガラス基板上の堆積膜は、光学的バンドギャップ(Eg)を測定した後、Crの串型電極を蒸着し、CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(Eu)を測定した。Siウエハー上の堆積膜は、FTIRにより水素含有量(Ch)を測定した。
表−A1の条件による光受容部材の光導電層は、Ch、Eg、Euがそれぞれ21原子%、1.80eV、60meVであった(光受容部材a)。
次に、表−A1において、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガス流量と放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、光導電層のCh、Eg、Euがそれぞれ10原子%、1.75eV、55meV(光受容部材b)、26原子%、1.82eV、61meV(光受容部材c)、30原子%、1.85eV、65meV(光受容部材d)の種々の光受容部材を作製した。
上記の光受容部材を電子写真装置(キヤノン製NP−6550を実験用に改造。波長680nmのLEDとレーザー光が交換可能。)にセットして、電位特性の評価を行った。
その際、プロセススピード380mm/sec、前露光(波長700nmのLED)4 lux・sec、帯電器の電流値1000μAの条件において、電子写真装置の現像器位置にセットした表面電位計(TREK社Model 344)の電位センサーにより光受容部材の表面電位を測定し、その値を帯電能とした。残留電位は、像露光1.5 lux・secのときの表面電位を測定し、その値を残留電位とした。
また、光受容部材に内蔵したドラムヒーターにより、温度を室温(約25℃)から50℃まで変えて、上記条件で帯電能を測定し、そのときの温度1℃当たりの帯電能の変化を帯電能の温度特性とした。
さらに、室温と45℃のそれぞれについて暗電位が400Vとなるように帯電条件を設定し、像露光光源に680nmのLEDを用いてE−V特性(曲線)を測定して、感度の温度特性および感度の直線性を評価した。
光メモリーについては、像露光光源に波長680nmのLEDを用い、上述の条件下において同様の電位センサーによって、非露光状態での表面電位と一旦露光した後に再度帯電したときの表面電位との電位差を測定し、その値をメモリー電位とした。
画像特性は、680nmのLEDをNP−6650にセットして評価した。
それぞれの光受容部材(a〜d)に関して、層厚30μmの光導電層を第1の層領域または第2の層領域のみで構成した場合を基準として、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性および感度の直線性について以下の基準で評価を行った。
◎:光導電層を第1の層領域または第2の層領域のみで構成した場合よりも非常に良好
○:光導電層を第1の層領域または第2の層領域のみで構成した場合よりも良好
△:光導電層を第1の層領域または第2の層領域のみで構成した場合と同等
×:光導電層を第1の層領域または第2の層領域のみで構成した場合よりも劣る。
光導電層を第1の層領域のみで構成した場合と比較した結果を表−A2に、光導電層を第2の層領域のみで構成した場合と比較した結果を表−A3に示す。これらの結果から明らかなように帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性および感度の直線性のいずれについても、光導電層を第1の層領域または第2の層領域のみで構成した場合よりも良好であり、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
* 光導電層の層厚30μmから第2の層領域の層厚を引いた値
** 波長680nmの光を70%吸収できる層厚
実験例−A2
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A1の光受容部材aと同様な条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第2の層領域の光吸収率の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第2の層領域は、680nmの光を40%、50%、80%、90%及び92%吸収できる層厚に変化させた。
作製した個々の光受容部材について、層厚30μmの光導電層を第1の層領域のみで構成した場合を基準として、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性および感度の直線性について以下の基準で評価を行った。
◎:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも非常に良好
○:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも良好
△:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合と同等
×:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも劣る。
結果を表−A4に示す。表−A4から明らかなように第2の層領域が、680nmの光を50〜90%吸収できる層厚において本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A3
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A1の光受容部材bと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第2の層領域の第IIIb族元素の含有量の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を6ppmとし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.01ppm、0.03ppm、0.10ppm、2ppm、5ppm及び5.5ppmと変化させた。このとき、第IIIb族元素を含有するガス種としてB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。
作製した個々の光受容部材について、層厚30μmの光導電層を第1の層領域のみで構成した場合を基準として、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性および感度の直線性について以下の基準で評価を行った。
◎:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも非常に良好
○:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも良好
△:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合と同等
×:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも劣る。
結果を表−A5に示す。表−A5から明らかなように第2の層領域において、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.03〜5ppmにすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A4
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A1の光受容部材cと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第1の層領域の第IIIb族元素の含有量の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.13ppmとし、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.15ppm、0.20ppm、2ppm、10ppm、25ppm及び30ppmと変化させた。このとき、第IIIb族元素を含有するガス種としてB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。
作製した個々の光受容部材について、層厚30μmの光導電層を第2の層領域のみで構成した場合を基準として、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性および感度の直線性について以下の基準で評価を行った。
◎:光導電層を第2の層領域のみで構成した場合よりも非常に良好
○:光導電層を第2の層領域のみで構成した場合よりも良好
△:光導電層を第2の層領域のみで構成した場合と同等
×:光導電層を第2の層領域のみで構成した場合よりも劣る。
結果を表−A6に示す。表−A6から明らかなように第1の層領域において、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.2〜25ppmにすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても同様に良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A5
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A1の光受容部材dと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第1の層領域と第2の層領域との第IIIb族元素の含有量比が異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を一定(6ppm)にし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量に対する第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量の比を1.1、1.2、3、60、200及び600と変化させた。このとき、第IIIb族元素を含有するガス種としてB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。
作製した個々の光受容部材について、層厚30μmの光導電層を第1の層領域のみで構成した場合を基準として帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性および感度の直線性について以下の基準で評価を行った。
◎:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも非常に良好
○:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも良好
△:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合と同等
×:光導電層を第1の層領域のみで構成した場合よりも劣る。
結果を表−A7に示す。表−A7から明らかなように第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量に対する第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量の割合を1.2〜200にすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A6
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して種々の光受容部材を作製した。その際、実験例−A1の表−A1の光導電層について以下のようにした以外は、実験例−A1と同様にして作製した。
(i)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を電荷注入阻止層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって2ppmから0.5ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させ、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.2ppmとした。
(ii)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を2ppmとし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を光導電層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって0.2ppmから0.1ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させた。
(iii)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を電荷注入阻止層側(支持体側)から表面層側(光入射側)に向かって2ppmから0.5ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させ、その各々に対して第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を光導電層側(支持体側)から表面層側(光入射側)に向かって0.2ppmから0.1ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させた。
作製した個々の光受容部材を実験例−A1と同様にして評価を行ったところ、実験例−A1と同様に帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好な結果が得られた。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A7
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、表−A8に示す条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。光導電層は、第1の層領域、第2の層領域(波長680nmの光を70%吸収できる膜厚の層領域)の順で形成し、第IIIb族元素を含有するガス種としてはB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。
一方、アルミニウムシリンダーに代えて、サンプル基板を設置するための溝加工を施した円筒形のサンプルホルダーを設置し、ガラス基板(コーニング社 7059)及びSiウエハー上にそれぞれ上記光導電層の形成条件で膜厚約1μmのa−Si膜を堆積した。ガラス基板上の堆積膜は、光学的バンドギャップ(Eg)を測定した後、Crの串型電極を蒸着し、CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(Eu)を測定した。Siウエハー上の堆積膜は、FTIRにより水素含有量(Ch)を測定した。
表−A8の条件による光受容部材の光導電層は、Ch、Eg、Euがそれぞれ20原子%、1.75eV、55meVであった(光受容部材e)。
次に、表−A8において、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガスと放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、光導電層のCh、Eg、Euがそれぞれ10原子%、1.68eV、47meV(光受容部材f)、15原子%、1.7eV、50meV(光受容部材g)及び18原子%、1.73eV、53meV(光受容部材h)の種々の光受容部材を作製した。
上記の光受容部材e〜hを実験例−A1と同様にして評価を行ったところ、実験例−A1と同様に帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好であることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
* 光導電層の層厚30μmから第2の層領域の層厚を引いた値
** 波長680nmの光を70%吸収できる層厚
実験例−A8
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A7の光受容部材eと同様な条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第2の層領域の光吸収率の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第2の層領域は、680nmの光を40%、50%、80%、90%及び92%吸収できる層厚に変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−A2と同様にして、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性について評価を行ったところ、実験例−A2と同様に第2の層領域が680nmの光を50〜90%吸収できる層厚において本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A9
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A7の光受容部材fと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第2の層領域の第IIIb族元素の含有量の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を6ppmとし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.01ppm、0.03ppm、0.1ppm、2ppm、5ppm及び5.5ppmと変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−A3と同様にして帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性について評価を行ったところ、実験例−A3と同様に第2の層領域においてシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.03〜5ppmにすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A10
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A7の光受容部材gと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第1の層領域の第IIIb族元素の含有量の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.13ppmとし、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.15ppm、0.2ppm、2ppm、10ppm、25ppm及び30ppmと変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−A4と同様にして帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性について評価を行ったところ、実験例−A4と同様に第1の層領域においてシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.2〜25ppmにすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A11
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A7の光受容部材hと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第1の層領域と第2の層領域との第IIIb族元素の含有量比が異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を一定(6ppm)にし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量に対する第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量の割合を1.1、1.2、3、60、200及び600と変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−A5と同様に帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性について評価を行ったところ、実験例−A5と同様に第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量に対する第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量の割合を1.2〜200にすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A12
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して種々の光受容部材を作製した。その際、実験例−A7の表−A8の光導電層について以下のようにした以外は、実験例−A7と同様にして作製した。
(i)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を電荷注入阻止層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって2ppmから0.5ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させ、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.2ppmとした。
(ii)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を2ppmとし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を光導電層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって0.2ppmから0.1ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させた。
(iii)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を電荷注入阻止層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって2ppmから0.5ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させ、その各々に対して第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を光導電層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって0.2ppmから0.1ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させた。
作製した個々の光受容部材を実験例−A1と同様にして評価を行ったところ、実験例−A1と同様に帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好な結果が得られた。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A13
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、表−A9に示す条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。光導電層は、第1の層領域、第2の層領域(波長680nmの光を70%吸収できる層厚領域)の順で形成し、第IIIb族元素を含有するガス種としてはB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。
一方、アルミニウムシリンダーに代えて、サンプル基板を設置するための溝加工を施した円筒形のサンプルホルダーを設置し、ガラス基板(コーニング社 7059)及びSiウエハー上にそれぞれ上記光導電層の形成条件で膜厚約1μmのa−Si膜を堆積した。ガラス基板上の堆積膜は、光学的バンドギャップ(Eg)を測定した後、Crの串型電極を蒸着し、CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(Eu)を測定した。Siウエハー上の堆積膜は、FTIRにより水素含有量(Ch)を測定した。
表−A9の条件による光受容部材は、Ch、Eg、Euがそれぞれ30原子%、1.84eV、53meVであった(光受容部材i)。
次に、表−A9において、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガスと放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、光導電層のCh、Eg、Euがそれぞれ25原子%、1.80eV、47meV(光受容部材j)、33原子%、1.85eV、54meV(光受容部材k)及び35原子%、1.87eV、55meV(光受容部材l)の種々の光受容部材を作製した。
上記の光受容部材i〜lを実験例−A1と同様にして評価を行ったところ、実験例−A1と同様に帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好であることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
* 光導電層の層厚30μmから第2の層領域の層厚を引いた値
** 波長680nmの光を70%吸収できる層厚
実験例−A14
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A13の光受容部材iと同様な条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層、表面層を形成し、第2の層領域の光吸収率の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第2の層領域は、680nmの光を40%、50%、80%、90%及び92%吸収できる層厚に変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−A2と同様にして、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性について評価を行ったところ、実験例−A2と同様に第2の層領域が680nmの光を50〜90%吸収できる層厚において本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A15
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A13の光受容部材jと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第2の層領域の第IIIb族元素の含有量の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を6ppmとし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.01ppm、0.03ppm、0.1ppm、2ppm、5ppm及び5.5ppmと変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−A3と同様にして帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性について評価を行ったところ、実験例−A3と同様に第2の層領域においてシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.03〜5ppmにすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A16
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A13光受容部材kと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第1の層領域の第IIIb族元素の含有量の異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.13ppmとし、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.15ppm、0.2ppm、2ppm、10ppm、25ppm及び30ppmと変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−A4と同様にして帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性について評価を行ったところ、実験例−A4と同様に第1の層領域においてシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.2〜25ppmにすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A17
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、実験例−A13光受容部材lと同様の条件で、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成し、第1の層領域と第2の層領域との第IIIb族元素の含有量比が異なる種々の光受容部材を作製した。その際、第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を一定(6ppm)にし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量に対する第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量の割合を1.1、1.2、3、60、200及び600と変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−A5と同様に帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性について評価を行ったところ、実験例−A5と同様に第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量に対する第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量の割合を1.2〜200にすることで本発明の効果が得られ、さらに画像特性においても良好な画像が得られることがわかった。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−A18
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。その際、実験例−A13の表−A9の光導電層について以下のようにした以外は、実験例−A13と同様にして作製した。
(i)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を電荷注入阻止層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって2ppmから0.5ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させ、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を0.2ppmとした。
(ii)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を2ppmとし、第2の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を光導電層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって0.2ppmから0.1ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させた。
(iii)第1の層領域のシリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を電荷注入阻止層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって2ppmから0.5ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させ、その各々に対して第2の層領域のSiH4に対するB2H6含有量を光導電層側(支持体側)から表面層側(光入射側)へ向かって0.2ppmから0.1ppmへ図5(a)〜(g)に示すようにそれぞれ変化させた。
作製した個々の光受容部材を実験例−A1と同様にして評価を行ったところ、実験例−A1と同様に帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好な結果が得られた。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
実験例−B1
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表−B1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。光導電層は、第1の層領域、第2の層領域の順で形成した。
一方、アルミニウムシリンダーに代えて、サンブル基板を設置するための溝加工を施した円筒形のサンプルホルダーを設置し、ガラス基板(コーニング社7059)及びSiウエハー上にそれぞれ上記光導電層の形成条件で膜厚約1μmのa−Si膜を堆積した。ガラス基板上の堆積膜は、光学的バンドギャッブ(Eg)を測定した後、Crの串型電極を蒸着し、CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(Eu)を測定した。Siウエハー上の堆積膜は、FTIRにより水素含有量(Ch)を測定した。
表−B1の条件による光受容部材の第1の層領域は、Ch、Eg、Euがそれぞれ28原子%、1.80eV、58meVであり、第2の層領域は、14原子%、1.72eV、53meVであった。
次に、第2の層領域において、SiH4ガス流量、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガス流量と放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、第2の層領域のEg(Ch)、Euの異なる種々の光受容部材を作製した。なお、第1及び第2の層領域の膜厚はそれぞれ24μm及び6μmに固定した。
作製した光受容部材を電子写真装置(キヤノン製NP−6650を実験用に改造。)にセットして、電位特性の評価を行った。
その際、プロセススピ−ド380mm/sec、前露光(波長700nmのLED)4 lux・sec、帯電器の電流値1000μAの条件において、電子写真装置の現像器位置にセットした表面電位計(TREK社Model 344)の電位センサーにより光受容部材の表面電位を測定し、その値を帯電能とした。
また、光受容部材に内蔵したドラムヒーターにより、温度を室温(約25℃)から45℃まで変えて、上記条件で帯電能を測定し、そのときの温度1℃当たりの帯電能の変化を帯電能の温度特性とした。
さらに、室温と45℃のそれぞれについて暗電位が400Vとなるように帯電条件を設定し、像露光光源に680nmのLEDを用いてE−V特性(曲線)を測定して、感度の温度特性および感度の直線性を評価した。
光メモリーについては、像露光光源に波長680nmのLEDを用い、上述の条件下において同様の電位センサーによって、非露光状態での表面電位と一旦露光した後に再度帯電した時との電位差を測定し、その値をメモリー電位とした。
本実験例のEu・Egと、帯電能・帯電能の温度特性・光メモリ−・感度の温度特性・感度の直線性との関係をそれぞれ調べた。図6〜図10に第2の層領域についての結果を示す。図中、縦軸の値は、光導電層(総膜厚30μm)を第1の層領域のみで構成した場合を1としたときの相対値である。この値が大きくなるほど、より改善されていることを示す。
図6〜図10からも明らかなように、第1の層領域においてEgが1.75〜1.85eV、Euが55〜65meV以下、水素原子の含有量(Ch)が20原子%以上30原子%未満で、かつ第2の層領域においてEgが1.70〜1.80eV、Euが55meV以下、Chが10原子%以上25原子%未満の条件において、帯電能、帯電能の温度特性、光メモリー、感度の温度特性、感度の直線性ともに良好な特性を得られることがわかった。
実験例−B2
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表−B2に示す条件で、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。光導電層は、第1の層領域、第2の層領域の順で形成した。
一方、アルミニウムシリンダーに代えて、サンプル基板を設置するための溝加工を施した円筒形のサンプルホルダーを設置し、ガラス基板(コーニング社7059)及びSiウエハー上にそれぞれ上記光導電層の形成条件で膜厚約1μmのa−Si膜を堆積した。ガラス支持体上の堆積膜は、光学的バンドギャップ(Eg)を測定した後、Crの串型電極を蒸着し、CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(Eu)を測定した。Siウエハー上の堆積膜は、FTIRにより水素含有量(Ch)を測定した。
表−B2の条件による光受容部材の第1の層領域は、Ch、Eg、Euがそれぞれ29原子%、1.83eV、54meVであり、第2の層領域は、Ch、Eg、Euがそれぞれ16原子%、1.73eV、54meVであった。
次に、第2の層領域において、SiH4ガス流量、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガス流量と放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、第2の層領域のEg(Ch)とEuの異なる種々の光受容部材を作製した。そして、作製した個々の光受容部材について実験例−B1と同様の電位特性評価を行い、実験例−B1と同様にEu・Egと、帯電能・帯電能の温度特性・光メモリー・感度の温度特性・感度の直線性との関係を調べたところ、実験例−B1と同様の傾向を示し、第1の層領域においてEgが1.80〜1.90eV、Euが55meV以下、水素原子の含有量(Ch)が25原子%以上40原子%未満で、かつ第2の層領域においてEgが1.70〜1.80eV、Euが55meV以下、Chが10原子%以上25原子%未満の条件において、帯電能、帯電能の温度特性、光メモリー、感度の温度特性、感度の直線性ともに良好な特性を得られることがわかった。
実験例−B3
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表−B3に示す条件で、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。光導電層は、第1の層領域、第2の層領域の順で形成した。
一方、アルミニウムシリンダーに代えて、サンプル基板を設置するための溝加工を施した円筒形のサンプルホルダーを設置し、ガラス支持体(コーニング社7059)及びSiウエハー上にそれぞれ上記光導電層の形成条件で膜厚約1μmのa−Si膜を堆積した。ガラス支持体上の堆積膜は、光学的バンドギャップ(Eg)を測定した後、Crの串型電極を蒸着し、CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(Eu)を測定した。Siウエハー上の堆積膜は、FTIRにより水素含有量(Ch)を測定した。
表−B3の条件による光受容部材の第1の層領域は、Ch、Eg、Euがそれぞれ28原子%、1.82eV、53meVであり、第2の層領域は、Ch、Eg、Euがそれぞれ15原子%、1.75eV、54meVであった。
ここで、光導電層中の第IIIb族元素の含有量として、像露光のピーク波長光の50%、60%、70%、80%、90%を吸収するに要する表面側からの層領域での含有量を0.3ppmとし、その他の層領域の含有量は均一に1.0ppmとして、第IIIb族元素の含有分布の異なる光受容部材を種々作製した。さらに、これらの光受容部材のそれぞれについて光導電層の全層厚(30μm)に対する第2の層領域の層厚の比を変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−B1と同様の電位特性評価を行った。上記の含有分布および層厚比と、帯電能・帯電能の温度特性・光メモリ−・感度の温度特性・感度の直線性との関係をそれぞれ図11〜図15に示す。図中、縦軸の値は、光導電層の全体に第IIIb族元素1.0ppmを均一に含有させた場合を1としたときの相対値である。この値が大きくなるほど、より改善されていることを示す。
図11〜図15から明らかなように、第2の層領域における、像露光のピーク波長光を70%以上吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量が支持体側の第1の層領域より少ない光受容部材は、層厚比が0.05〜0.5において、第IIIb族元素を均一に含有させたものに比べて、帯電能、帯電能の温度特性、光メモリー、感度の温度特性、及び感度の直線性の全ての特性レベルが向上することがわかった。
* ピーク波長光の50、60、70、80、90%を吸収するそれぞれの層領域は0.3ppm、他は1.0ppm
** 光導電層の全層厚を30μmとして、第1の層領域と第2の層領域の層厚比を変化させた。
実験例−B4
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、表−B4に示す条件で、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。光導電層は、第1の層領域、第2の層領域の順で形成した。
一方、アルミニウムシリンダーに代えて、サンプル基板を設置するための溝加工を施した円筒形のサンプルホルダーを設置し、ガラス支持体(コーニング社7059)及びSiウエハー上にそれぞれ上記光導電層の形成条件で膜厚約1μmのa−Si膜を堆積した。ガラス支持体上の堆積膜は、光学的バンドギャップ(Eg)を測定した後、Crの串型電極を蒸着し、CPMにより指数関数裾の特性エネルギー(Eu)を測定した。Siウエハー上の堆積膜は、FTIRにより水素含有量(Ch)を測定した。
表−B4の条件による光受容部材の第1の層領域は、Ch、Eg、Euがそれぞれ24原子%、1.81eV、58meVであり、第2の層領域は、Ch、Eg、Euがそれぞれ14原子%、1.76eV、53meVであった。
ここで、光導電層中の第IIIb族元素の含有量として、像露光のピーク波長光の50%、60%、70%、80%、90%を吸収するに要する表面側からの層領域での含有量を0.3ppmとし、その他の層領域の含有量を1.0ppmとして、第IIIb族元素の含有分布の異なる種々の光受容部材を作製した。さらに、これらの光受容部材のそれぞれについて光導電層の全層厚(30μm)に対する第2の層領域の層厚の比を変化させた。
作製した個々の光受容部材について実験例−B1と同様の電位特性評価を行った。上記の含有分布および層厚比と、帯電能・帯電能の温度特性・光メモリー・感度の温度特性・感度の直線性との関係は、実験例−B3と同様の傾向を示した。すなわち、第2の層領域における、像露光のピーク波長光を70%以上吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量が支持体側の第1の層領域より少ない光受容部材は、層厚比が0.05〜0.5において、第IIIb族元素を均一に含有させたものに比べて、帯電能、帯電能の温度特性、光メモリー、感度の温度特性、及び感度の直線性の全ての特性レベルが向上することがわかった。
* ピーク波長光の50、60、70、80、90%を吸収するそれぞれの層領域は0.3ppm、他の領域は1.0ppm
** 光導電層の全層厚を30μmとして、第1の層領域と第2の層領域の層厚比を変化させた。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
参考例−A1
図4に示す製造装置を用い、表−A10に示す条件で、表面層のシリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした表面層を有する光受容部材を作製した。このとき、第IIIb族元素を含有するガス種としてB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。表−A10の作製条件による光導電層のCh、Eg、Euはそれぞれ25原子%、1.81eV、57meVであった(光受容部材a)。
さらに、表−A10において、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガスと放電電力との比率、及び支持体温度を種々変えることによって、光導電層のCh・Eg・Euが以下の値を有する種々の光受容部材を作製した。
(i)光導電層のChが10〜30原子%、Egが1.75〜1.85eV、Euが55〜65meVの光受容部材
b)22原子%・1.81eV・60meV
c)10原子%・1.75eV・55meV
d)28原子%・1.83eV・62meV
e)30原子%・1.85eV・65meV
(ii)光導電層のChが10〜20原子%、Egが1.75eV以下、Euが55meV以下の光受容部材
f)20原子%・1.75eV・55meV
g)10原子%・1.68eV・47meV
h)15原子%・1.70eV・50meV
i)19原子%・1.74eV・53meV
(iii)光導電層のChが25〜35原子%、Egが1.80eV以上、Euが55meV以下の光受容部材
j)32原子%・1.85eV・53meV
k)25原子%・1.80eV・47meV
l)34原子%・1.85eV・54meV
m)35原子%・1.87eV・55meV
作製した(a)〜(m)の光受容部材を実験例−A1と同様な評価を行ったところ、実験例−A1と同様に、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好な結果が得られた。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
すなわち本発明は、表面層のシリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした表面層を設けた場合においても、良好な電子写真特性が得られることがわかった。
*光導電層の層厚30μmから第2の層領域の層厚を引いた値
**波長680nmの光を80%吸収できる層厚
参考例−A2
図4に示す製造装置を用い、表−A11に示す条件で、表面層のシリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした表面層を有し、全ての層にフッ素原子、ホウ素原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子を含有する光受容部材を作製した。このとき、第IIIb族元素を含有するガス種としてB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。表−A11の作製条件による光導電層のCh、Eg、Euはそれぞれ23原子%、1.82eV、56meVであった。
さらに、表−A11において、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガスと放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、参考例−A1と同様に、
(i)光導電層のChが10〜30原子%、Egが1.75〜1.85eV、Euが55〜65meVの種々の光受容部材、
(ii)光導電層のChが10〜20原子%、Egが1.75eV以下、Euが55meV以下の種々の光受容部材、
(iii)光導電層のChが25〜35原子%、Egが1.80eV以上、Euが55meV以下の種々の光受容部材を作製した。
作製した種々の光受容部材を実験例−A1と同様な評価を行ったところ、実験例−A1と同様に、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性いずれについても良好な結果が得られた。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
すなわち本発明は、表面層のシリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした表面層を設けるとともに、全ての層にフッ素原子、ホウ素原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子を含有させた表面層を設けた場合においても、良好な電子写真特性が得られることがわかった。
*光導電層の層厚30μmから第2の層領域の層厚を引いた値
**波長680nmの光を60%吸収できる層厚
参考例−A3
図4に示す製造装置を用い、表−A12に示す条件で、表面層を構成する原子として炭素原子の代わりに窒素原子を表面層に含有させた光受容部材を作製した。このとき、第IIIb族元素を含有するガス種としてB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。表−A12の作製条件による光導電層のCh、Eg、Euはそれぞれ28原子%、1.83eV、57meVであった。
さらに、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガスと放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、参考例−A1と同様に、
(i)光導電層のChが10〜30原子%、Egが1.75〜1.85eV、Euが55〜65meVの種々の光受容部材、
(ii)光導電層のChが10〜20原子%、Egが1.75eV以下、Euが55meV以下の種々の光受容部材、
(iii)光導電層のChが25〜35原子%、Egが1.80eV以上、Euが55meV以下の種々の光受容部材を作製した。
作製した種々の光受容部材を実験例−A1と同様な評価を行ったところ、実験例−A1と同様に、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好な結果が得られた。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
すなわち本発明は、表面層を構成する原子として炭素原子の代わりに窒素原子を含有させた表面層を設けた場合においても、良好な電子写真特性が得られることがわかった。
*光導電層の層厚30μmから第2の層領域の層厚を引いた値
**波長680nmの光を70%吸収できる層厚
参考例−A4
図4に示す製造装置を用い、表−A13に示す条件で、表面層を構成する原子として窒素原子および酸素原子を含有させた。このとき、第IIIb族元素を含有するガス種としてB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。表−A13の作製条件による光導電層のCh、Eg、Euはそれぞれ25原子%、1.82eV、55meVであった。
さらに、表−A13において、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガスと放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、参考例−A1と同様に、
(i)光導電層のChが10〜30原子%、Egが1.75〜1.85eV、Euが55〜65meVの種々の光受容部材、
(ii)光導電層のChが10〜20原子%、Egが1.75eV以下、Euが55meV以下の種々の光受容部材、
(iii)光導電層のChが25〜35原子%、Egが1.80eV以上、Euが55meV以下の種々の光受容部材を作製した。
作製した種々の光受容部材を実験例−A1と同様な評価を行ったところ、実験例−A1と同様に、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好な結果が得られた。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
すなわち、表面層を構成する原子として窒素原子および酸素原子を含有させた表面層を設けた場合においても、良好な電子写真特性が得られることがわかった。
*光導電層の層厚30μmから第2の層領域の層厚を引いた値
**波長680nmの光を90%吸収できる層厚
参考例−A5
図4に示す製造装置を用い、表−A14に示す条件、すなわち電荷注入阻止層を形成せず、炭素源としてCH3ガスに代えてC2H2ガスを用いて炭素原子を含有する光導電層および表面層を形成して光受容層を作製した。このとき、第IIIb族元素を含有するガス種としてB2H6を用い、シリコン原子に対する第IIIb族元素の含有量を調節した。表−A14の作製条件による光導電層のCh、Eg、Euはそれぞれ22原子%、1.82eV、55meVであった。
さらに、表−A14において、SiH4ガスとH2ガスとの混合比、SiH4ガスと放電電力との比率および支持体温度を種々変えることによって、参考例−A1と同様に、
(i)光導電層のChが10〜30原子%、Egが1.75〜1.85eV、Euが55〜65meVの種々の光受容部材、
(ii)光導電層のChが10〜20原子%、Egが1.75eV以下、Euが55meV以下の種々の光受容部材、
(iii)光導電層のChが25〜35原子%、Egが1.80eV以上、Euが55meV以下の種々の光受容部材を作製した。
作製した種々の光受容部材を実験例−A1と同様な評価を行ったところ、実験例−A1と同様に、帯電能、残留電位、温度特性、メモリー電位、感度の温度特性、感度の直線性および画像特性のいずれについても良好な結果が得られた。また、露光光源をLEDに代えて半導体レーザー(波長680nm)にした場合も同様に良好な結果が得られることがわかった。
すなわち本発明は、電荷注入阻止層を設けず、炭素源のC2H2ガスを用いて炭素原子を含有する光導電層および表面層を形成した場合においても、良好な電子写真特性を得られることがわかった。
* 光導電層の層厚30μmから第2の層領域の層厚を引いた値
** 波長680nmの光を70%吸収できる層厚
実施例−B1
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。表−B5にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ26原子%、1.84eV、58meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ19原子%、1.74eV、55meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域において2.0ppmの一定の含有量とし、第2の層領域においては像露光のピーク波長光の80%を吸収するに要する表面側からの層領域のみ0.4ppmとし他の領域は2.0ppmの一定の含有量とした。
作製した光受容部材について実験例−B1と同様な評価を行ったところ、帯電能、帯電能の温度特性、光メモリー、感度の温度特性、感度の直線性のいずれの特性も良好であった。また、作製した光受容部材を正帯電して画像評価をしたところ、画像上でも光メモリーは観測されず、その他の画像特性(ポチ、画像流れ)についても良好な電子写真特性が得られた。
すなわち、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
* ピーク波長光の80%を吸収する層領域は0.4ppm、他の領域は2.0ppm
実施例−B2
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、電荷注入阻止層および光導電層の形成時の希釈ガスを実施例1のH2に代えてHeを使用し、表面層については、シリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした。表−B6に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ22原子%、1.78eV、61meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ13原子%、1.72eV、55meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域において4.0ppmの一定の含有量とし、第2の層領域においては像露光ピーク波長光の80%を吸収するに要する表面側からの層領域のみ0.1ppmで他の領域は4.0ppmの一定の含有量とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様な評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
* ピーク波長光の80%を吸収する層領域は0.4ppm、他の領域は4.0ppm
実施例−B3
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、表面層のシリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とするとともに、全ての層にフッ素原子、ホウ素原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子を含有させた。表−B7に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ29原子%、1.84eV、55meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ15原子%、1.73eV、53meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の5.0ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の70%を吸収するに要する領域の最表面側で0.1ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(d)のように層厚を等分して階段上に分布含有させた。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、光導電層中の第IIIb族元素の含有量を図5(d)のように膜厚を等分して階段状に変化させ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B4
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、IR吸収層、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。IR吸収層は、支持体からの反射光による干渉模様の発生を防止するための光吸収層として支持体と電荷注入阻止層との間に設けた。また、表面層については、シリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした。表−B8に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ29原子%、1.83eV、53meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ11原子%、1.71eV、53meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の8.0ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の70%を吸収するに要する領域の最表面側で0.1ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(a)のように直線的な変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、光導電層中の第IIIb族元素の含有量を図5(a)のように直線的に変化させ、支持体側にIR吸収層を設け、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B5
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、シリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした表面層を設けた。表−B9に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の光導電領域のCh、Eg、Euは、それぞれ27原子%、1.82eV、58meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ17原子%、1.76eV、54meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の6.0ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の85%を吸収するに要する領域の最表面側で0.5ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(c)のように、第1の層領域で急峻に変化した後に最表面まで緩やかに滑らかな変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(c)のように第1の層領域で急峻に変化した後に最表面まで緩やかに滑らかに変化させ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B6
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層、表面層を形成して光受容部材を作製した。表−B10にこのときの光受容部林の作製条件を示した。
本実験例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ27原子%、1.83eV、56meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ22原子%、1.75eV、52meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の3.0ppmから、第2の層領域で1ppmにして、さらに最表面から露光波長の90%を吸収するに要する領域で0.3ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(b)のように、第1の層領域で緩やかに変化した後、露光波長の90%を吸収するに要する領域で最表面まで急峻にかつ滑らかな変化とした。
作製した光受容部林を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(b)のように第1の層領域で緩やかに変化させた後に露光波長の90%を吸収するに要する領域で最表面まで急峻にかつ滑らかに変化させ、RF−PCVD法を用い、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B7
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、実施例−B6のH2に代えてHeを使用し、またSiF4を使用しなかった。また表面層を構成する原子として、炭素原子の代わりに窒素原子を含有させた表面層を設けた。表−B11にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の光導電領域のCh、Eg、Euは、それぞれ23原子%、1.81eV、60meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ20原子%、1.77eV、53meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の10.0ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の90%を吸収するに要する領域で1.0ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(e)のように第1の層領域の支持体側で一定の部分を持ち、その後直線的に変化した後、露光波長の90%を吸収するに要する領域では一定になるような変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(e)のように第1の層領域の支持体側で一定の部分を持ち、その後直線的に変化した後、露光波長の90%を吸収するに要する領域で一定になるように変化させ、H2に代えてHeを使用し、表面層を構成する原子として炭素原子の代わりに窒素原子を含有させた表面層を設け、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B8
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、表面層に窒素原子および酸素原子を含有させた。表−B12にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ24原子%、1.83eV、60meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ17原子%、1.74eV、52meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の1.5ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の90%を吸収するに要する領域で0.2ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(f)のように途中で勾配が変化する直線状の変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(f)のように途中で勾配が変化する直線状に変化させ、表面層に窒素原子および酸素原子を含有させた表面層を設け、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B9
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層、中間層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、H2に代えてHeを使用し、また光導電層と表面層との間に、炭素原子の含有量を表面層より減らした伝導性を制御する原子を含有させた中間層(上部阻止層)を設けた。表−B13にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ29原子%、1.82eV、59meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ24原子%、1.78eV、54meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の8.0ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の90%を吸収するに要する領域で0.1ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(g)のように途中で勾配が変化する直線状の変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(g)のように途中で勾配が変化する直線状に変化させ、H2に代えてHeを使用し、伝導性を制御する原子を含有させた中間層(上部阻止層)を設け、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B10
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、電荷注入阻止層を設けず、炭素源としてC2H2ガスを用いて炭素原子を含有する第1の層領域、第2の層領域および表面層を形成した。表−B14に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ25原子%、1.78eV、58meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ17原子%、1.74eV、54meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の20ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の85%を吸収するに要する領域の最表面で0.3ppmとなるように変化させた。変化の形は直線的に表−B14に記載の値を結ぶように変化させた。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を多段階の直線的に変化させ、電荷注入阻止層を設けず、炭素源としてC2H2ガスを用いて炭素原子を含有する光導電層および表面層を形成し、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ20原子%以上30原子%未満、1.75〜1.85eV、55〜65meVとし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B11
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。表−B15にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ31原子%、1.86eV、54meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ17原子%、1.73eV、54meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側から2.0ppmの一定の含有量とし、第2の層領域においては像露光のピーク波長光の80%を吸収するに要する表面側からの層領域のみ0.4ppmで他の領域は2.0ppmの一定の含有量とした。
作製した光受容部材について実験例−B1と同様な評価を行ったところ、帯電能、帯電能の温度特性、光メモリー、感度の温度特性、感度の直線性のいずれの特性も良好であった。また、作製した光受容部材を正帯電して画像評価をしたところ、画像上でも光メモリーは観測されず、その他の画像特性(ポチ、画像流れ)についても良好な電子写真特性が得られた。
すなわち、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
*ピーク波長光の80%を吸収する層領域が0.4ppm、他の領域は2.0ppm
実施例−B12
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、H2に代えてHeを使用し、表面層のシリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした。表−B16に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ28原子%、1.84eV、55meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ12原子%、1.72eV、53meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側から6.5ppmの一定の含有量とし、第2の層領域においては像露光のピーク波長光の80%を吸収するに要する表面側からの層領域のみ0.1ppmで他の領域は6.5ppmの一定の含有量とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様な評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
*ピーク波長光の80%を吸収する層領域は0.1ppm、他の領域は6.5ppm
実施例−B13
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、表面層のシリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とるとともに、全ての層にフッ素原子、ホウ素原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子を含有させた。表−B17に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ35原子%、1.86eV、55meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ14原子%、1.73eV、54meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の8.0ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の70%を吸収するに要する領域の最表面側で0.2ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(d)のように膜厚を等分して階段上に分布含有させた。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、光導電層中の第IIIb族元素の含有量を図5(d)のように膜厚を等分して階段状に変化させ、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B14
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、IR吸収層、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。IR吸収層は、支持体からの反射光による干渉模様の発生を防止するための光吸収層として支持体と電荷注入阻止層との間に設けた。また、表面層については、シリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした。表−B18に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ29原子%、1.83eV、53meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ11原子%、1.71eV、53meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の10.0ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の70%を吸収するに要する領域の最表面側で0.15ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(a)のように直線的な変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、光導電層中の第IIIb族元素の含有量を図5(a)のように直線的に変化させ、支持体側にIR吸収層を設け、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B15
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、シリコン原子および炭素原子の含有量を層厚方向に不均一な分布状態とした表面層を設けた。表−B19に、このときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ35原子%、1.88eV、55meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ19原子%、1.77eV、54meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の8.5ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の85%を吸収するに要する領域の最表面側で0.5ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(c)のように第1の層領域で急峻に変化した後に最表面まで緩やかに滑らかな変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(c)のように第1の層領域で急峻に変化した後に最表面まで緩やかに滑らかに変化させ、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B16
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。表−B20にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ26原子%、1.82eV、52meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ12原子%、1.71eV、51meVであった。
光導電層第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の4.0ppmから、第2の層領域で2.7ppmとし、さらに最表面から露光波長の90%を吸収するに要する領域で0.25ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(b)のように、第1の層領域で緩やかに変化した後、露光波長の90%を吸収するに要する領域で最表面まで急峻にかつ滑らかな変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(b)のように第1の層領域で緩やかに変化した後に露光波長の90%を吸収するに要する領域で最表面まで急峻にかつ滑らかに変化させ、RF−PCVD法を用い、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B17
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、実施例−B16のH2に代えてHeを使用し、またSiF4を使用しなかった。また表面層を構成する原子として、炭素原子の代わりに窒素原子を含有させた表面層を設けた。表−B21にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ33原子%、1.88eV、55meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ18原子%、1.74eV、54meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の12.0ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の90%を吸収するに要する領域で0.5ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(e)のように第1の層領域の支持体側で一定の部分を持ち、その後直線的に変化した後、露光波長の90%を吸収するに要する領域では一定になるような変化とした。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(e)のように第1の層領域の支持体側で一定の部分を持ち、その後直線的に変化した後、露光波長の90%を吸収するに要する領域で一定になるように変化させ、H2に代えてHeを使用し、表面層を構成する原子として炭素原子の代わりに窒素原子を含有させた表面層を設け、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B18
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、表面層に窒素原子および酸素原子を含有させた。表−B22にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ26原子%、1.82eV、52meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ12原子%、1.72eV、52meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の4.5ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の90%を吸収するに要する領域で0.1ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(f)のように途中で勾配が変化する直線状の変化とした。
作製した光受容部林を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(f)のように途中で勾配が変化する直線状に変化させ、表面層に窒素原子および酸素原子を含有させた表面層を設け、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B19
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、電荷注入阻止層、光導電層、中間層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、H2に代えてHeを使用し、また光導電層と表面層との間に、炭素原子の含有量を表面層より減らした伝導性を制御する原子を含有させた中間層(上部阻止層)を設けた。表−B23にこのときの光受容部材の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ38原子%、1.88eV、55meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ22原子%、1.74eV、54meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の9.5ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の90%を吸収するに要する領域で0.15ppmとなるように変化させた。変化の形は図5(g)のように途中で勾配が変化する直線状の変化とした。
作製した光受容部林を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を図5(g)のように途中で勾配が変化する直線状に変化させ、H2に代えてHeを使用し、伝導性を制御する原子を含有させた中間層(上部阻止層)を設け、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。
実施例−B20
図4に示すRF−PCVD法による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に、光導電層および表面層を形成して光受容部材を作製した。本実施例では、電荷注入阻止層を設けず、炭素源としてC2H2ガスを用いて炭素原子を含有する第1の層領域、第2の層領域および表面層を形成した。表−B24に、このときの光受容部林の作製条件を示した。
本実施例では、光導電層の第1の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ26原子%、1.81eV、52meV、第2の層領域のCh、Eg、Euは、それぞれ19原子%、1.75eV、55meVであった。
光導電層における第IIIb族元素の含有量は、第1の層領域の支持体側の22ppmから、第2の層領域の最表面から露光波長の85%を吸収するに要する領域の最表面で0.25ppmとなるように変化させた。変化の形は直線的に表−B14に記載の値を結ぶように変化させた。
作製した光受容部材を実施例−B1と同様の評価をしたところ、同様に良好な電子写真特性が得られた。すなわち、第IIIb族元素の含有量を多段階の直線的に変化させ、電荷注入阻止層を設けず、炭素源としてC2H2ガスを用いて炭素原子を含有する光導電層および表面層を形成し、且つ、第1の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ25原子%以上40原子%未満、1.80〜1.90eV、55meV以下とし、第2の層領域のCh、Eg、Euをそれぞれ10原子%以上25原子%未満、1.70〜1.80eV、55meV以下とすると共に、第2の層領域における、像露光のピーク波長光の70%以上を吸収するに要する表面側からの層領域の第IIIb族元素の含有量を第1の層領域より少なくすることによって良好な電子写真特性が得られることがわかった。