JP2015007753A - 電子写真感光体 - Google Patents

電子写真感光体 Download PDF

Info

Publication number
JP2015007753A
JP2015007753A JP2014060962A JP2014060962A JP2015007753A JP 2015007753 A JP2015007753 A JP 2015007753A JP 2014060962 A JP2014060962 A JP 2014060962A JP 2014060962 A JP2014060962 A JP 2014060962A JP 2015007753 A JP2015007753 A JP 2015007753A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
surface layer
layer
sic
photosensitive member
image
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014060962A
Other languages
English (en)
Inventor
小澤 智仁
Tomohito Ozawa
智仁 小澤
大脇 弘憲
Hironori Owaki
弘憲 大脇
阿部 幸裕
Yukihiro Abe
幸裕 阿部
純 大平
Jun Ohira
純 大平
高典 上野
Takanori Ueno
高典 上野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2014060962A priority Critical patent/JP2015007753A/ja
Publication of JP2015007753A publication Critical patent/JP2015007753A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】画像流れの抑制とゴーストの抑制を可能な電子写真感光体を提供する。【解決手段】光導電層と、光導電層の上の水素化アモルファスSiCで構成された表面層とを有する電子写真感光体において、表面層のケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が0.50以上0.60以下であり、表面層のケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和が6.60?1022原子/cm3以上であり、表面層の赤外吸収スペクトルにおいて、Si-Cの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をISiCとし、Si-Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をISiHnとし、C-Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をICHnとしたとき、ISiHn/ISiCが0.08以上0.15以下、かつ、ICHn/ISiCが0.03以上0.06以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、複写機、プリンター、ファックスなどの電子写真プロセスを利用した電子写真装置に適用可能な電子写真感光体に関する。
基体上にアモルファス材料で構成された感光層を有する電子写真感光体は広く知られており、特に、金属製の基体上にCVD、PVDなどの成膜技術により形成された水素化アモルファスシリコン感光体はすでに製品化されている。以下、水素化アモルファスシリコンを「a−Si:H」とも表記し、電子写真感光体を単に「感光体」とも表記する。
このようなa−Si:H感光体の基本構成は、図4に示すように、導電性基体4001上に、a−Si:Hを有する光導電層4004を形成し、さらに水素化アモルファスシリコンカーバイドを有する表面層4005を積層した構成である。以下、水素化アモルファスシリコンカーバイドを「a−SiC:H」とも表記する。
表面層4005は、電子写真特性に係わる重要な層である。表面層に要求される特性としては、耐磨耗性、耐湿性、電荷保持性、光透過性が挙げられる。a−SiC:Hにより構成された表面層は特に耐磨耗性に優れると同時に上記の特性をバランスよく満たしていることから、主にプロセススピードの速い電子写真装置で用いられてきた。しかし、従来のa−SiC:Hにより構成された表面層は、高湿環境下で使用した場合に画像流れが発生する場合があった(以下、「高湿流れ」と称する。)。
高湿流れとは、高湿環境下で、電子写真プロセスで画像形成を繰り返し行い、しばらく時間をあけた後、再び画像を出力したときに、文字がぼける、または、文字が印字されずに白抜けが生じるという画像不良のことである。この現象は、感光体の表面に吸着した水分が原因の一つである。従来、高湿流れの発生を抑えるために、常時、感光体用ヒーターにより電子写真感光体を加熱し、感光体の表面に吸着した水分を低減または除去することが行われてきた。
これに対し、従来から感光体用ヒーター以外の方法で、高湿流れを抑制するための電子写真感光体も提案されている。
特許文献1には、基体の上に光導電層、光導電層の上にa−SiC:Hで構成された表面層が順次積層された電子写真感光体において、
表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)の和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))を所定の範囲とし、
ケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和を所定の値よりも大きくしたa−SiC:H表面層を作製する技術が開示されている。
そして、この技術により、a−SiC:H表面層の膜構造を緻密化し、帯電プロセスによる表面層最表面の酸化を抑制し、その結果、表面層最表面への水分の吸着を低減することが可能となるため高湿流れの抑制が可能であると記載されている。
特開2010−049241号公報
今まで電子写真方式の画像形成装置は、オフィス等で数枚から数十枚程度プリントすることが主な使われ方であったが、近年、オフセット印刷機が主流であったプロダクション市場へも参入し始めている。これは、電子写真方式の画像形成装置が、高速化により生産性が向上したためである。また、小ロットへの対応性とバリアブル印刷に関して、オフセット印刷機より優れるという特徴を、デジタル化とフルカラー化されたことでさらに生かせるようになったためである。
そして、プロダクション市場で扱われるプリントは、マニュアルやダイレクトメール等の低画像密度のものから、チラシ、ポスターやグラフィックアート等の高画像密度のプリントまでバリエーションが幅広いため、高画質化への要求は以前に増して高まっている。このようなプロダクション市場へ電子写真方式の画像形成装置が参入するためには、上述した高湿流れ抑制による画像品質の向上に加え、更なる画像品質の向上のためには、改善を求められる課題もある。
なかでも、前のプロセスで形成された静電潜像の履歴が時間経過により消去される前に次のプロセスが行われることにより、次のプロセスで形成される静電潜像に影響をおよぼし、残像を生じさせる、いわゆるゴーストと呼ばれる画像不良の改善が求められている。
プロダクション市場においては、生産性向上の観点から電子写真装置の高速化への要求が強く、従来よりもゴーストが発生しやすくなると予想される。そのため、更なる画像品質の向上のためには、従来以上にゴーストの抑制が求められている。
よって、本発明の目的は、画像流れの抑制とゴーストの抑制を両立可能な電子写真感光体を提供することにある。
本発明は、光導電層と、前記光導電層の上の水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された表面層とを有する電子写真感光体において、
前記表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.50以上0.60以下であり、
前記表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和が、6.60×1022原子/cm以上であり、
前記表面層の赤外吸収スペクトルにおいて、Si-Cの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をISiCとし、Si-Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をISiHnとし、C-Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をICHnとしたとき、前記ISiHn/ISiCが0.08以上0.15以下であり、かつ、前記ICHn/ISiCが0.03以上0.06以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
本発明によれば、特定な表面層を形成することで、高湿流れの抑制とゴーストの低減を両立することで、高品質な画像を出力できる電子写真感光体を提供することが可能となる。
表面層として用いられるa−SiC:Hから得られる赤外吸収スペクトルの模式的な概略説明図である。 (a)はSi-Hnの結合に起因するピークの拡大図、(b)はC-Hnの結合に起因するピークの拡大図である。 本発明の電子写真感光体の作製に用いられる装置の一例の模式図である。 a−Si感光体の層構成の一例を模式的に示した図である。 (a)は円筒状基体とサンプルの配置を示す概略断面図、(b)は円筒状基体とサンプルの配置を示す概略側面図である。 電子写真装置の一例を示す概略構成図である。 ゴースト評価で用いたテストチャートの模式図である。
以下、本発明の電子写真感光体の構成およびその効果について説明する。
(表面層)
本発明におけるa−SiC:H(水素化アモルファスシリコンカーバイド)により形成される表面層は、以下の要件を満たすことで、上記効果を得ることができる。
表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.50以上0.60以下であり、
表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和が、6.60×1022原子/cm以上であり、
表面層の赤外吸収スペクトルにおいて、Si-Cの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をISiCとし、Si-Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をISiHnとし、C-Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をICHnとしたとき、ISiHn/ISiCが0.08以上0.15以下であり、かつ、ICHn/ISiCが0.03以上0.06以下である。
このような表面層を有する電子写真感光体を用いることにより、高湿流れの抑制とゴーストの低減を両立することができるため、高品質な画像の出力が可能となる。
以下、ケイ素原子の原子数と炭素原子の原子数の和に対する炭素原子の原子数の比を「C/(Si+C)」と表記し、ケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度の和を「Si+C原子密度」と表記する。
以下に表面層の作用について、より詳細に説明する。
本発明の表面層において、Si+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上とすることが必要である。以下に、その理由を示す。
高湿流れは、前述のように電子写真感光体の表面への水分の吸着が原因の一つであるが、電子写真感光体の使用初期の段階では、水分の吸着量は少なく、画像流れは発生しない。電子写真感光体をある程度使用した際に、主に電子写真装置内での帯電プロセスによって、オゾンの影響により、最表面に酸化層が形成され、蓄積される。この酸化層は、最表面に極性基を生成するため、これによって水分の吸着量が増大すると考えられる。
さらに、使用を続ければ、最表面には酸化層が蓄積されつづけ、これにより水分の吸着量も増加し、結果として高湿流れを引き起こすほどの水分の吸着量に至ると考えられている。したがって、高湿流れを抑制するためには、この酸化層を除去するか、あるいは形成そのものを抑制する必要がある。
本発明では、この酸化層の形成を抑制することで、水分の吸着量を減少させ、高湿流れを抑制している。
本発明の表面層の構成によって酸化層の形成を抑制できる理由については、以下のように推察している。a−SiC:Hで形成された表面層の酸化は、a−SiC:Hの表面にオゾンのような酸化作用を有する物質が作用して、ケイ素原子(Si)と炭素原子(C)の結合が切れてCが遊離し、替わりに酸素原子(O)と置換されることによって起こると推測される。
本発明では、Siの原子密度とCの原子密度を向上させることにより、平均的な原子間距離を低減し、また空間率を減少させることで、上記のようなCの遊離を伴う酸化を抑制しているものと思われる。
上記の理由により、表面層のSi+C原子密度は高い方がより好ましく、6.60×1022原子/cm以上とすることで、高湿流れを抑制する効果が得られる。
なお、表面層形成時に使用する条件や装置にもよるが、一般的に、反応容器に供給するガス流量は少なく、高周波電力は高く、基板の温度は高く設定することにより、Si+C原子密度を高くしやすい傾向がある。実際には、これらの条件を適宜組み合わせて設定すればよい。
本発明の表面層において、Si+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上とし、さらに、C/(Si+C)を0.50以上0.60以下、ISiHn/ISiCを0.08以上0.15以下、ICHn/ISiCを0.03以上0.06以下にすることが必要である。以下に、その理由を示す。
まず、ゴーストの発生メカニズムについて説明する。
画像に現れるゴーストは、像露光起因で発生する露光ゴーストと、主帯電工程で付与する電荷に対して逆極性の電荷が付与されることで発生する逆極性ゴーストが合わさったものである。ゴーストを構成する露光ゴーストと逆極性ゴーストのそれぞれの発生メカニズムの違いについて推察をした結果を以下に示す。
まず、露光ゴーストの発生メカニズムについて説明する。なお、以下に示す露光ゴーストの発生メカニズムに関しては、主帯電工程が正帯電の場合を例として説明する。
主帯電工程により正電荷が電子写真感光体に付与された後、像露光によって静電潜像を形成した際、照射された像露光は光導電層で吸収されて、ホール、電子が生成される。この生成された電子の一部と主帯電工程により付与された正電荷が結合して静電潜像が形成される。このとき、光導電層中で生成されたホールや電子の一部は再結合して消滅するが、生成された電子の一部は欠陥に捕捉されて光導電層中に蓄積されるものが存在する。そのため、潜像形成時に像露光が照射されていない部分に比べ、像露光が照射された部分の方が光導電層中に蓄積される電子が多くなる。
そして、再び主帯電工程により電子写真感光体に正電荷が付与されることにより電位差が生じると、この光導電層中に蓄積された電子は再び移動が可能となり、主帯電工程で付与された正電荷と結合してしまう。そのため、前のプロセスで潜像形成時に像露光が照射された部分の方が、光導電層中に蓄積された電子が多いため次のプロセスで主帯電工程により付与された電荷をより多く消去してしまう。
これにより、前のプロセスで像露光が照射された部分の方がより主帯電工程後の表面電位が低下するため、前のプロセスで像露光が照射された部分と像露光が照射されていない部分とで電位差が発生する。この電位差がトナーによって可視化されたものが、露光ゴーストであると推測される。
次に、逆極性ゴーストの発生メカニズムを、正帯電用電子写真感光体をアナログ電子写真装置やBAE方式(像露光が照射されていない部分にトナー像が形成される電子写真プロセス)のデジタル電子写真装置に用いた場合について説明する。
まず、主帯電工程により正電荷を電子写真感光体に付与し、像露光によって静電潜像形成を行った際の光導電層内の状態は、上述した露光ゴーストの場合と同様である。
次に、形成された静電潜像を負帯電トナーにより電子写真感光体上にトナー像を作製すると、像露光が照射されていない部分にトナー像が形成される。そして、主帯電工程で付与する電荷に対し逆極性の電荷を転写前帯電工程で付与する。これにより、像露光が照射されていない部分では、主にトナーに電荷が供給される。
しかし、像露光が照射された部分には電子写真感光体の表面にトナーが存在しないため、電子写真感光体自体に負電荷が供給される。
これにより、電子写真感光体が逆極性に帯電し、基体と表面層との間で電位差が生じるため、転写前帯電工程で付与された電子は、基体側へ向かって表面層中を移動する。しかしながら、転写前帯電工程で付与された電子の一部は基体のホールと再結合できず、表面層中の欠陥に捕捉されてしまう。その結果、像露光が照射されていない部分よりも像露光が照射された部分の方が電子写真感光体内に蓄積された電子の数が多くなる。
そして、再び主帯電工程により電子写真感光体に正電荷が付与されると、像露光が照射された部分の方が表面層中に蓄積された電子が多いため、次の主帯電工程により付与された電荷をより多く消去してしまう。これにより、前のプロセスで像露光が照射された部分の方がより主帯電工程後の表面電位が低下するため、像露光が照射された部分と像露光が照射されていない部分とで電位差が発生する。この電位差がトナーによって可視化されたものが、逆極性ゴーストであると推測される。
なお、アナログ電子写真装置の場合も、電子写真感光体に像露光が照射されなかった部分にトナー像が形成される。また、IAE方式(像露光が照射された部分にトナー像が形成される電子写真プロセス)のデジタル電子写真装置に用いた場合には、BAE方式で発生する逆極性ゴーストと同様のゴーストが、転写帯電起因により発生する場合がある。
上述した逆極性ゴーストの発生メカニズムから、逆極性ゴーストを低減するためには、転写前帯電工程で付与された電荷の基体側へ向かう移動速度を上げることが必要となる。a−Si:Hで形成された光導電層とa−SiC:Hで形成された表面層が順次積層した電子写真感光体において、転写前帯電工程で付与された電荷に対する抵抗は表面層の方が光導電層よりも高い。
よって、転写前帯電工程で付与された電荷が電子写真感光体の最表面から光導電層まで移動する速度を上げることで逆極性ゴーストを低減し、その結果、ゴーストを低減することが可能となる。
転写前帯電工程で付与された電荷の電子写真感光体の最表面から光導電層までの移動速度を上げるためには、表面層自体の抵抗を下げることが必要である。そのためには、転写前帯電工程で付与された電荷が所定の時間内に基板にあるホールと再結合できるように表面層中の欠陥を制御することが必要だと考えられる。
表面層中に存在する欠陥とは、表面層を構成するSiおよびCのダングリングボンドである。このダングリングボンドの数は、表面層作製時に導入されたHによりダングリングボンドを終端することで制御することが可能である。よって、表面層自体の抵抗を制御するためには、a−SiC:Hで形成された表面層の骨格原子であるSiとCに結合しているHの状態を制御することが必要であると本発明者らは考えた。
SiおよびCに結合しているHの状態を制御するためには、表面層作製時にSiやCに結合しているHを脱離させればよく、その一例として、表面層作製時にHeやAr等の不活性ガスを導入することが挙げられる。表面層作製時に不活性ガスを導入すると、SiやCに結合しているHの中で、SiやCとの結合が弱いHを選択的に不活性ガスのプラズマが叩き出すことができる。
表面層の作製条件として、不活性ガスの量を増やす、または原子量が重い不活性ガスを使うことで、SiやCに結合しているHを叩き出す効果が大きくなる。よって、不活性ガスの種類、表面層作製時の不活性ガスの導入量を調整することで、SiおよびCに結合しているHの状態を制御することができる。
本発明では、表面層の骨格原子であるSiとCに結合しているHの状態を数値化する手段として、赤外吸収スペクトルを用いた。
図1は、a−SiC:Hで形成された表面層から得られる赤外吸収スペクトルの模式的な概略説明図である。
図2は、図1の各ピークの拡大図を示したものである。図2(a)はSi-Hnの結合に起因するピークであり、図2(b)はC-Hnの結合に起因するピークを示している。図1および図2を用いて、本発明の表面層の特徴を説明する。
本発明におけるISiCとは、Si−Cの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値を意味する。Si−Cの結合に起因するピークとは、図1に示すようにピーク波数が750cm−1〜790cm−1に位置するピークである。また、本発明におけるISiHnとはSi−Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値を意味する。Si−Hnの結合に起因するピークとは、図2(a)に示すように1900cm−1〜2300cm−1の波数領域に現れるピークである。
さらに、本発明におけるICHnとは、C−Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値を意味する。C-Hnの結合に起因するピークとは、図2(b)に示すように2600cm−1〜3100cm−1の波数領域に現れるピークである。
本発明の表面層は、
6.60×1022原子/cm以上のSi+C原子密度を有し、C/(Si+C)が0.50以上0.60以下の場合に、
赤外吸収スペクトルから求められるISiHn/ISiCを0.08以上0.15以下、ICHn/ISiCを0.03以上0.06以下にすることが必要である。
C/(Si+C)が0.50以上0.60以下の場合に、ISiHn/ISiCが0.15以下、かつICHn/ISiCが0.06以下となるようにSiとCに結合しているHの状態を制御することで、ゴーストが低減し、良好な結果が得られた。これは、表面層中での電子の走行性が向上したことにより、転写前帯電工程で付与された電荷が所定の時間内に基板にあるホールと再結合できるようになったため逆極性ゴーストが低減したためであると思われる。
一方、ISiHn/ISiCが0.08、または、ICHn/ISiCが0.03よりも低くなると、表面層中の欠陥数が増加しすぎることで、主帯電工程にて酸素原子との反応が促進され、十分は酸化抑制効果が得られない場合がある。よって、赤外吸収スペクトルから求められるISiHn/ISiCを0.08以上0.15以下、かつICHn/ISiCを0.03以上0.06以下にすることが必要である。
なお、本発明では、表面層の骨格原子であるSiとCに結合しているHの状態を制御するための値として、Si−Hn結合、C−Hn結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をSi-C結合に起因するピークにおける吸光度の最大値で規格化した値を用いた。これは、表面層のSi+C原子密度が異なる場合、単位体積当たりのSi−C結合の数も変化する。そのため、単位体積当たりのSi-C結合数を揃えたときの表面層の骨格原子に結合しているHの状態の方が欠陥数を比較するには適切である。
以上のことから、本発明の表面層において、Si+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上、さらに、C/(Si+C)が0.50以上0.60以下の場合に、
SiHn/ISiCを0.08以上0.15以下、ICHn/ISiCを0.03以上0.06以下にすることが必要である。これにより、表面層を緻密化することで反応性を低減しつつも、表面層と光導電層のEgの差を減らし、かつ、表面層中のHの結合状態を制御する。このことで、主帯電工程により付与された電荷が電子写真感光体の表面から基体へと移動する速度を向上させることが可能となる。
これにより、反応性が低く、抵抗を制御可能な表面層を作製することができるため、高湿流れ抑制とゴーストの低減の両立が可能となる。
本発明の表面層の形成方法は、前述の規定値を満足する堆積層を形成できるものであれば何れのものであってもよい。たとえばプラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法によって作製可能である。しかしながら、原料供給の容易さからプラズマCVD法が最も好ましい方法である。
形成方法としてプラズマCVD法を選択した場合、表面層の形成方法は以下のとおりである。基本的にケイ素原子供給用の原料ガスと、炭素原子供給用の原料ガスを、内部を減圧にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入し、該反応容器内にグロー放電を生起させる。これによって導入した原料ガスを分解し、あらかじめ所定の位置に設置された導電性の基体にa−SiC:Hからなる層を形成すればよい。
本発明において、ケイ素原子を供給し得る原料ガスは、シラン(SiH4)、ジシラン(Si26)などのシラン類が好適に使用できる。また、炭素原子を供給し得る原料ガスは、メタン(CH4)、アセチレン(C22)などのガスが好適に使用できる。また、主にH/(Si+C+H)を調整するためとして、水素(H2)を、上記のガスと同時に使用しても良い。
(光導電層)
本発明の電子写真感光体における光導電層は、電子写真特性上の性能を満足できる光導電特性を有するものであればいずれのものであっても差し支えない。
しかし、a-Si:Hから形成された光導電層が、耐久性、安定性の観点から、本発明の中間層、表面層に対して最も好ましい。
本発明で光導電層としてa-Si:Hを用いる場合は、a−Si:H中の未結合手を補償するため、水素原子に加えて、ハロゲン原子を含有させることができる。水素原子(H)およびハロゲン原子の含有量の合計は、ケイ素原子と水素原子およびハロゲン原子の和に対して10原子%以上、特に15原子%以上であることが好ましく、また、40原子%以下、特に35原子%以下であることがより好ましい。
本発明において、光導電層には必要に応じて伝導性を制御するための原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御するための原子は、光導電層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、また、層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
伝導性を制御するための原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができる。すなわち、p型伝導性を与える元素周期表13族に属する原子(以後「第13族原子」と略記する)またはn型伝導性を与える元素周期表15族に属する原子(以後「第15族原子」と略記する)を用いることができる。
第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)またはタリウム(Tl)があり、特にホウ素が好適である。第15族原子としては、具体的にはリン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)またはビスマス(Bi)があり、特にリンまたは砒素が好適である。
光導電層に含有される伝導性を制御する原子の含有量は、Siに対して1×10-2原子ppm以上、特に5×10-2原子ppm以上、さらには1×10-1原子ppm以上であることが好ましい。また、1×104原子ppm以下、特に5×103原子ppm以下、さらには1×103原子ppm以下であることが好ましい。
本発明において、光導電層の層厚は、所望の電子写真特性が得られること、経済的効果の点から適宜所望にしたがって決定されるが、15μm以上、特に20μm以上とすることが好ましい。また、60μm以下、特に50μm以下、さらには40μm以下とすることが好ましい。
なお、光導電層は上記のように単一の層から形成されても良いし、電荷発生層と電荷輸送層を分離した複数構成としてもよい。
a-Si:Hから成る光導電層の形成方法としてはプラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法が採用可能であるが、原料供給の容易さなどからプラズマCVD法が最も好ましい方法として採用できる。
(基体)
基体は、導電性を有し表面に形成される光導電層および表面層を保持し得るものであれば特に限定されずいずれのものであってもよい。例えば、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Feなどの金属、および、これらの合金、例えばAl合金、ステンレスが挙げられる。また、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂もしくはポリアミド樹脂などの合成樹脂のフィルム、またはシート、ガラスもしくはセラミックの電気絶縁性支持体も使用できる。この場合、電気絶縁性支持体の少なくとも光導電層を形成する側の表面を導電処理すればよい。
本発明において、電子写真感光体の層構成は上記のほかに、たとえば光導電層の上下に下部電荷注入阻止層または上部電荷注入阻止層を形成してもよい。
これら、下部電荷注入阻止層または上部電荷注入阻止層等の材料は光導電層を構成する材料をベースに形成することが好ましい。本発明において、上部電荷注入阻止層を光導電層の上に設ける場合は、中間層は上部電荷注入阻止層と表面層の間に設けることが好ましい。たとえば、下部電荷注入阻止層を形成した場合の電子写真感光体の層構成を図4に模式的に示す。
図4の例では、基体4001の上に下部電荷注入阻止層4003、光導電層4004、表面層4005を順次形成して電子写真感光体4000を構成している。
下部電荷注入阻止層4003、光導電層4004の間では、それぞれの組成を連続的につなぐ、いわゆる変化層を必要に応じて設けることもできる。
次に、本発明の電子写真感光体の形成手順を、プラズマCVD法で形成する場合を例にとって図面を用いて詳細に説明する。
図3は、電源周波数としてRF帯を用いた高周波プラズマCVD法による感光体製造装置の一例を、模式的に示した構成図である。この装置は、大別すると、堆積装置3100、原料ガス供給装置3200、反応容器3110内を減圧するための排気装置(図示せず)から構成されている。反応容器3110は、絶縁材料3121、カソード電極3111から構成され、高周波マッチングボックス3115を介して高周波電源3120がカソード電極3111に接続されている。
また、反応容器3110内には円筒状の導電性基体3112を載置する載置台3123、基体加熱用ヒーター3113、原料ガス導入管3114が設置されている。反応容器3110は排気バルブ3118を介して排気装置(図示せず)に接続され、真空排気可能となっている。原料ガス供給装置3200は、原料ガスのボンベ3221〜3225とバルブ3231〜3235、3241〜3245、3251〜3255、および、マスフローコントローラ3211〜3215から構成される。各原料ガスのボンベは補助バルブ3260を介して反応容器3110内の原料ガス導入管3114に接続されている。
この装置を用いた堆堆膜の形成は、例えば以下のような手順によって行われる。
まず、反応容器3110内に導電性基体3112を設置し、例えば真空ポンプなどの排気装置(図示せず)により反応容器3110内を排気する。続いて、基体加熱用ヒーター3113により導電性基体3112の温度を200℃〜350℃の所定の温度に制御する。
次に、堆積層形成用の原料ガスを、原料ガス供給装置3200により流量制御し、反応容器3110内に導入する。そして、真空計3119の表示を見ながら排気バルブ3118を操作し所定の圧力に設定する。
以上のようにして堆積の準備が完了した後、以下に示す手順で各層の形成を行う。
圧力が安定したところで、高周波電源3120を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス3115を通じてカソード電極3111に供給し高周波グロー放電を生起させる。放電に用いる周波数は1MHz〜30MHzのRF帯が好適に使用できる。この放電エネルギーによって反応容器3110内に導入された各原料ガスが分解され、導電性基体3112上に所定のケイ素原子を主成分とする堆積層が形成される。所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、ガス供給装置の各バルブを閉じて反応容器3110への各原料ガスの流入を止め、堆積層の形成を終える。
同様の操作を、原料ガスの流量、圧力、高周波電力の条件を変えながら複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の電子写真感光体が形成される。
また、膜形成の均一化を図るために、層形成を行っている間は、導電性基体3112を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効である。
すべての堆積層形成が終わったのち、リークバルブ3117を開き、反応容器3110内を大気圧として、導電性基体3112を取り出す。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
(表面層サンプル作製)
図3に示すプラズマ処理装置を用い、巾10mm、長さ40mmに切断したシリコンウエハ上に表1および表2に示す条件により表面層サンプルを作製した。
図5に示すように、ガラス基板を、外径加工した円筒状基板の任意の周方向で長手方向中央位置に90°毎に4枚設置した。なお、周波数としてRF帯の高周波電源を用いた。
Figure 2015007753
Figure 2015007753
後述の分析方法により、上記条件で作製した表面層サンプルの赤外吸収スペクトルを測定し、ISiHn/ISiCおよびICHn/ISiCを算出した。それらの結果を表4に示す。
(表面層サンプルの赤外吸収スペクトル測定)
上記表面層サンプル作製により作製された成膜条件No.1からNo.14の表面層サンプルを赤外分光光度計(Jasco製、FT/IR−615)で測定し、赤外吸収スペクトルを求めた。
得られた赤外吸収スペクトルの波形を、
400cm−1〜1300cm−1の波数領域、
1900cm−1〜2300cm−1の波数領域および
2600cm−1〜3100cm−1の波数領域
において、任意の波数を中心とした波数25cm−1の領域毎に二乗平均平方根を計算して、測定時の誤差やノイズを除去した。
測定時の誤差やノイズを除去した後の赤外吸収スペクトルの波形において、Si-Cの結合に起因するピーク(ピーク波数が750cm−1〜790cm−1に位置するピーク)の最大値ISiCを求めた。
また、Si−Hnの結合に起因するピーク(1900cm−1〜2300cm−1の波数領域に現れるピーク)の最大値ISiHnおよび
C−Hnの結合に起因するピーク(2600cm−1〜3100cm−1の波数領域に現れるピーク)の最大値ICHn
を求めた。そして、ISiC、ISiHnおよびICHnより、ISiHn/ISiCおよびICHn/ISiCを算出した。
作製した4枚の表面層サンプルを同様に測定した。それぞれの測定で得られたISiHn/ISiCおよびICHn/ISiCの平均値を、各成膜条件で作製したa−SiC:HのISiHn/ISiCおよびICHn/ISiCとした。
<実施例および比較例>
図3に示すプラズマ処理装置を用い、円筒状基体(直径84mm、長さ381mm、厚さ3mmの鏡面加工を施した円筒状のアルミニウム製の導電性基体)上に表3に示す条件でプラス帯電用a−Si感光体を作製した。また、電荷注入阻止層、光導電層、表面層を順次形成し、表面層作製時のSiH流量、He流量、CH流量および高周波電力を上記表2に示す条件とした。また、電子写真感光体の作製本数は、各成膜条件(層形成条件)で2本ずつ作製した。
なお、周波数としてRF帯の高周波電源を用いた。
Figure 2015007753
実施例および比較例で作製した各成膜条件の1本の電子写真感光体を用いて、C/(Si+C)、Si+C原子密度を後述の分析方法により求めた。そして、各成膜条件の残りの1本の電子写真感光体により、後述の評価条件にて高湿流れ、ゴーストの評価を行った。それらの結果を表4に示す。
(C/(Si+C)の測定、Si+C原子密度の測定)
まず、表3の電荷注入阻止層および光導電層のみを形成したリファレンス電子写真感光体を作製し、任意の周方向における長手方向の中央部を15mm四方の正方形で切り出し、リファレンス試料を作製した。次に、電荷注入阻止層、光導電層および表面層を形成した電子写真感光体を同様に切り出し、測定用試料を作製した。リファレンス試料と測定用試料を分光エリプソメトリー(J.A.Woollam社製:高速分光エリプソメトリー M−2000)により測定し、表面層の膜厚を求めた。
分光エリプソメトリーの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
入射角:60°、65°、70°、
測定波長:195nmから700nm、
ビーム径:1mm×2mm
まず、リファレンス試料を分光エリプソメトリーにより各入射角で波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を求めた。
次に、リファレンス試料の測定結果をリファレンスとして、測定用試料をリファレンス試料と同様に分光エリプソメトリーにより各入射角で波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を求めた。
さらに、下記の層構成を計算モデルとして用いて、解析ソフトにより粗さ層の表面層と空気層の体積比を変化させて、各入射角における波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を計算により求めた。
電荷注入阻止層および光導電層、表面層を順次形成し、最表面に表面層と空気層が共存する粗さ層を有する層構成。
そして、各入射角における上記計算により求めた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係と測定用試料を測定して求めた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係の平均二乗誤差が最小となるときの計算モデルを選択した。この選択した計算モデルにより表面層の膜厚を算出し、得られた値を表面層の膜厚とした。
なお、解析ソフトはJ.A.Woollam社製のWVASE32を用いた。また、粗さ層の表面層と空気層の体積比に関しては、表面層:空気層を10:0から1:9まで粗さ層における空気層の比率を1ずつ変化させて計算をした。
本実施例の各成膜条件で作製されたプラス帯電用a−Si感光体においては、粗さ層の表面層と空気層の体積比が8:2のときに
計算によって求められた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係と
測定して求められた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係
の平均二乗誤差が最小となった。
分光エリプソメトリーによる測定が終了した後、上記測定用試料をRBS(ラザフォード後方散乱法)により下記装置を用いて、RBSの測定面積における表面層中のケイ素原子および炭素原子の原子数を測定した。
日新ハイボルテージ(株)製:後方散乱測定装置 AN−2500
測定したケイ素原子および炭素原子の原子数から、C/(Si+C)を求めた。次に、RBSの測定面積から求めたケイ素原子および炭素原子に対し、分光エリプソメトリーにより求めた表面層の膜厚を用いて、Si原子密度、C原子密度およびSi+C原子密度を求めた。
RBSの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
入射イオン:4He、入射エネルギー:2.3MeV、入射角:75°、
試料電流:35nA、入射ビーム経:1mm
また、RBSの検出器は、散乱角:160°、アパーチャ径:8mmで測定を行った。
(高湿流れ評価)
図6に示す構成の電子写真装置を準備して高湿流れ評価で使用した。電子写真装置は、より具体的には、キヤノン(株)製のデジタル電子写真装置「iRA−6065」(商品名)である。
上記電子写真装置に作製した電子写真感光体を設置し、温度25℃、相対湿度75%(容積絶対湿度17.3g/cm)の高湿環境下で連続通紙試験前のA3文字チャート(4pt、印字率4%)の画像を出力した。このとき、感光体ヒーターをONにする条件で実施した。
連続通紙試験前の画像出力後、連続通紙試験を実施した。連続通紙試験時は、電子写真装置を稼働して連続通紙試験を実施している間および電子写真装置を停止している間を通じて常に感光体ヒーターをOFFにする条件で実施した。
具体的には、印字率1%のA4テストパターンを用いて、1日当たり2.5万枚の連続通紙試験を10日間実施して25万枚まで行った。連続通紙試験終了後、温度25℃、相対湿度75%の環境下で15時間静置した。
15時間後、感光体ヒーターをOFFのまま立ち上げ、A3文字チャート(4pt、印字率4%)の画像を出力した。連続通紙試験前に出力した画像と、連続通紙試験後に出力した画像を、それぞれキヤノン(株)製のデジタル電子写真装置「iRC−5870」(商品名)を用いて、モノクロ300dpiの2値の条件でPDFファイルに電子化した。
電子化した画像をAdobe製の画像編集ソフト「Adobe Photoshop」(商品名)を用いて、電子写真感光体1周分の画像領域(251.3mm×273mm)の黒比率を測定した。次に、連続通紙耐久前に出力した画像の黒比率に対する連続通紙試験後に出力した画像の黒比率の比を求め、高湿流れの評価を行った。
高湿流れが発生した場合、画像全体で文字がぼける、または、文字が印字されずに白抜けするため、連続通紙試験前の正常な画像と比較した場合、出力された画像における黒比率が低下する。よって、連続通紙試験前の正常な画像の黒比率に対する連続通紙試験後に出力された画像の黒比率の比が100%に近いほど高湿流れが良好となる。
A‥連続通紙試験前の画像の黒比率に対する連続通紙試験後に出力した画像の黒比率の比が85%以上105%以下。
B‥連続通紙試験前の画像の黒比率に対する連続通紙試験後に出力した画像の黒比率の比が85%未満。
(ゴースト評価)
ゴーストの評価は、キヤノン(株)製デジタル電子写真装置iRA−6065の改造機を用いた。この電子写真装置は、主帯電器のワイヤー、グリットおよび波長630nmの前露光LEDに不図示の外部電源が接続されている。
まず、前露光LEDに接続されている外部電源により、前露光LEDから出力される光量を所定の光量となるように調整した。
次に、作製した電子写真感光体を前述の電子写真装置に設置した後、現像器の位置に電位センサーを電子写真感光体長手方向中央位置に相当する場所に設置する。次に、前述の条件にて前露光を点灯させて、像露光をOFFしてグリット電位を820Vとし、帯電器のワイヤーに供給する電流を調整して現像器位置での電子写真感光体の表面電位が+400Vとなるように設定した。次いで、像露光を照射し、その照射エネルギーを調整することにより現像器位置での電位を100Vとした。その後、電位センサーを取り出し、現像器を設置する。
図7に示すテストチャートを用いてゴーストの評価を行った。
テストチャートは、
画像左端部側にA3チャートの短辺の中央位置、左端から40mm位置を中心に40mm□の範囲に反射濃度1.4の黒色四角を有し、
左端から80mmの位置から右端から5mmの位置まで反射濃度0.4のハーフトーン(HT)が形成されている。
テストチャートを用い、テストチャート左端側を原稿先端として原稿台に置き、現像バイアスを調整して、出力された画像におけるテストチャートのHT部の反射濃度が0.4となるように設定した。その状態でA3の電子写真画像を出力し、出力された画像の反射濃度を測定した。
なお、テストチャートの出力は、電子写真装置を温度22℃、湿度50%の環境下に設置し、感光体ヒーターをONにして、電子写真感光体の表面の温度を約40℃に保った条件で行った。
測定位置は、下記の基準位置(1点)と比較位置(4点)の合計5点とした。
基準位置:A3の画像短辺の中央位置で、A3の画像左端から291mm位置(前述の黒色四角の中心から電子写真感光体の1周分の位置)、
比較位置:基準位置に対してA3の画像短辺方向±30mm、長辺方向±30mmの4点
次に、4点の比較位置で測定した反射濃度の平均値Gを求めた。反射濃度の測定は、反射濃度計(X−Rite Inc製:504分光濃度計)を用いて測定した。
そして、基準位置での反射濃度Fと比較位置での反射濃度の平均値Gの差(F−G)を求め、この差を用いてゴーストの評価を行った。なお、評価結果は比較例1で作製した成膜条件No.7の電子写真感光体を搭載した場合の基準位置での反射濃度Fと比較位置での反射濃度の平均値Gの差(F−G)を1.00とした相対比較で示した。
このゴースト評価では、露光ゴーストと逆極性が両方とも合わさったものを画像上で確認している。そのため、露光ゴーストおよび逆極性ゴーストを合わせたものが、このゴースト評価に反映されている。
ゴーストが発生した場合、比較位置での反射濃度の平均値Gよりも基準位置での反射濃度Fが高くなる。よって、この評価においては、数値が小さいほどゴーストに対して良好である。
A‥上記(F−G)の値が成膜条件No.7の電子写真感光体に対して0.8未満。
B‥上記(F−G)の値が成膜条件No.7の電子写真感光体に対して0.8以上1.0以下。
C‥上記(F−G)の値が成膜条件No.7の電子写真感光体に対して1.0より大きい。
表面層サンプル作製、実施例および比較例で求めたC/(Si+C)、Si+C原子密度、高湿流れおよびゴーストに関する結果を表4に示す。また、表面層サンプル作製において求めたISiHn/ISiCおよびICHn/ISiC、に関しても表4に示す。
また、高湿流れおよびゴーストの評価結果より、評価ランクが低い方の評価結果を用いて電子写真感光体の総合評価とした。なお、総合評価において、A以上で本発明の効果が得られていると判断した。
Figure 2015007753
表4の結果より、表面層におけるSi+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上、さらに、C/(Si+C)が0.50以上0.60以下の場合に、
SiHn/ISiCを0.08以上0.15以下とし、ICHn/ISiCを0.03以上0.06以下とするとき、高湿流れの抑制とゴーストの低減が両立することが確認された。
なお、C/(Si+C)が0.81以上0.92以下の場合には、C/(Si+C)が0.50以上0.60以下の場合と同様な表面層作製手法を用いても、ゴーストの改善が確認できなかった。
3100 堆積装置
3110 反応容器
3111 カソード電極
3112 導電性基体
3113 基体加熱用ヒーター
3114 原料ガス導入管
3115 高周波マッチングボックス
3116 ガス配管
3117 リークバルブ
3118 排気バルブ
3119 真空計
3120 高周波電源
3121 絶縁材料
3123 載置台
3200 原料ガス供給装置
3211〜3215 マスフローコントローラ
3221〜3225 ボンベ
3231〜3235 バルブ
3241〜3245 流入バルブ
3251〜3255 流出バルブ
3260 補助バルブ
3261〜3265 圧力調整器
4001 導電性基体
4002 光受容層
4003 下部電荷注入阻止層
4004 光導電層
4005 表面層
5001 導電性基体
5002 シリコンウエハ
6001 電子写真感光体
6002 主帯電器
6003 前露光
6004 転写ローラー
6005 転写ベルト
6006 像露光手段
6007 マグネットローラー
6008 クリーニングブレード
6009 クリーナー
6010 転写材
6011 現像器
6012 転写前帯電器


Claims (1)

  1. 光導電層と、前記光導電層の上の水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された表面層とを有する電子写真感光体において、
    前記表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.50以上0.60以下であり、
    前記表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和が、6.60×1022原子/cm以上であり、
    前記表面層の赤外吸収スペクトルにおいて、Si-Cの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をISiCとし、Si-Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をISiHnとし、C-Hnの結合に起因するピークにおける吸光度の最大値をICHnとしたとき、前記ISiHn/ISiCが0.08以上0.15以下であり、かつ、前記ICHn/ISiCが0.03以上0.06以下であることを特徴とする電子写真感光体。

JP2014060962A 2013-05-27 2014-03-24 電子写真感光体 Pending JP2015007753A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014060962A JP2015007753A (ja) 2013-05-27 2014-03-24 電子写真感光体

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013111368 2013-05-27
JP2013111368 2013-05-27
JP2014060962A JP2015007753A (ja) 2013-05-27 2014-03-24 電子写真感光体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015007753A true JP2015007753A (ja) 2015-01-15

Family

ID=52338047

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014060962A Pending JP2015007753A (ja) 2013-05-27 2014-03-24 電子写真感光体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015007753A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016112991A1 (en) * 2015-01-16 2016-07-21 Hewlett-Packard Indigo B.V. Determining extent of oxidation of photoconductor surface by means of optical spectroscopy
EP3451065A1 (en) * 2017-09-01 2019-03-06 Canon Kabushiki Kaisha Electrophotographic photosensitive member and method for producing electrophotographic photosensitive member

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016112991A1 (en) * 2015-01-16 2016-07-21 Hewlett-Packard Indigo B.V. Determining extent of oxidation of photoconductor surface by means of optical spectroscopy
US10215711B2 (en) 2015-01-16 2019-02-26 Hp Indigo B.V. Determining oxidation of photoconductor members based on obtained spectrum from optical spectroscopy
EP3451065A1 (en) * 2017-09-01 2019-03-06 Canon Kabushiki Kaisha Electrophotographic photosensitive member and method for producing electrophotographic photosensitive member
US10642175B2 (en) 2017-09-01 2020-05-05 Canon Kabushiki Kaisha Electrophotographic photosensitive member and method for producing electrophotographic photosensitive member

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5081199B2 (ja) 電子写真感光体の製造方法
JP2010049241A (ja) 電子写真感光体および電子写真装置
US7229731B2 (en) Electrophotographic photosensitive member and electrophotographic apparatus using the electrophotographic photosensitive member
JP4612913B2 (ja) 画像形成方法
JP5777419B2 (ja) 電子写真感光体および電子写真装置
JP5675289B2 (ja) 電子写真感光体および電子写真装置
JP2005062846A (ja) 電子写真感光体
JP2015007753A (ja) 電子写真感光体
JP6128885B2 (ja) 電子写真感光体およびその製造方法ならびに電子写真装置
US20140349226A1 (en) Electrophotographic photosensitive member and electrophotographic apparatus
JP4599468B1 (ja) 電子写真感光体および電子写真装置
JP2006189823A (ja) 電子写真感光体
JP4683637B2 (ja) 電子写真感光体および電子写真装置
JP4235593B2 (ja) 電子写真用光受容部材
JP6463086B2 (ja) 電子写真装置および電子写真装置の設計方法
JP2006189822A (ja) 電子写真感光体
JP3420385B2 (ja) 堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法
JP6862285B2 (ja) 負帯電用電子写真感光体
JP5451301B2 (ja) 電子写真感光体の製造方法
JP2013007978A (ja) 電子写真装置
JP2010102131A (ja) 画像形成方法
JP2006133524A (ja) 電子写真感光体および電子写真装置
JP2003107765A (ja) 電子写真感光体及び電子写真感光体の作製方法
JP2002311614A (ja) 電子写真用光受容部材
JPH08211641A (ja) 非晶質シリコン系感光体の形成方法