JP2006133524A - 電子写真感光体および電子写真装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】次世代の超高画質カラー電子写真装置に搭載可能で、総合的な耐磨耗性に優れた電子写真感光体を供給すること。
【構成】本発明の電子写真感光体は、基体と、該基体上に順次設けられた光導電層と、表面層とを有する電子写真感光体において、感光体を回転させる回転手段および表面層に当接する導電性の接触体を有する帯電手段を備えた電子写真装置に搭載されたとき、表面層の磨耗に伴う層の厚さの減少につき、式(1)[Wn≦Wp×3](式中、Wpは、接触体をプラスの電圧を印加したときの感光体の1万回転当たりの磨耗量 [nm/1万回転]を示し、Wnは、接触体をマイナスの電圧を印加したときの感光体の1万回転当たりの磨耗量 [nm/1万回転]を示す。)で表される関係を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高画質の画像を得ることができる耐磨耗性に優れた電子写真感光体およびこれを用いた電子写真装置に関するものである。
より詳しくは、波長が380nm以上500nm以下の波長帯の光を露光に用いた電子写真装置に最適な電子写真感光体およびこれを用いた電子写真装置に関するものである。
プリンター、ファクシミリ、複写機などに用いられる電子写真装置においては、帯電手段により帯電した感光体に画像を通して光を照射し、画像に相当する部分以外、あるいは画像に相当する部分を放電することにより画像に対応した静電潜像を感光体に形成し、これにトナーを供給して静電潜像を現像し、静電潜像に付着したトナーを転写部材上へ転写した後、更に転写部材上のトナーを給紙上へ転写、定着し、その後感光体表面を除電する工程を経て、給紙上への画像の形成が行われている。
従来、複写機やレーザービームプリンタに用いられる高性能、高耐久、無公害な電子写真感光体の材料の一つとして、水素または/およびハロゲン元素を含有するアモルファスシリコン(以下、a−Si)堆積膜が用いられている。a−Si堆積膜を用いた電子写真感光体の構成としては、主として光導電性を有する光導電層と、この上に電荷の阻止能や感光安定性の付与や、耐磨耗性等を目的とした表面層等とを有する構成、さらに、導電性の基体を用いた場合に基体から電荷の注入を阻止する働きを持つ下部阻止層などを設けた構成が選択されている。このような構成の電子写真感光体においては、表面層は電子写真感光体の電気的、光学的特性及び使用環境特性、耐久性を左右するものであるところから、これまでに様々な構成元素や組成の表面層の改良がなされ、これらの表面層の改良を含めた種々の構成の電子写真感光体が提案されている。
例えば、a−Si堆積膜で構成された光導電層を有する光導電部材の、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、光学的、光導電的特性及び耐湿性等の使用環境特性、さらには経時安定性について改善を図るため、シリコン原子を母体としたアモルファス材料で構成された光導電層上に、シリコン原子及び炭素原子を含む非光導電性のアモルファス材料で構成された表面障壁層を設ける技術が知られている。
また、基板、障壁層、光導電層、表面層からなるアモルファスシリコン感光体を、SiH4、H2、N2、B26から作成し、それぞれの流量比を規定する事でp−i−n接合の逆バイアス状態となるように構成した電子写真感光体などが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
また、基体上に少なくとも光導電層とa−SiN:Hからなる表面層とを有する感光体であり、表面層の窒素濃度を自由表面側に向けて増大させることにより、レーザーを用いたデジタル複写システムにおける画像ムラの低減が可能な電子写真感光体についても報告されている(例えば、特許文献2参照)。
また、導電性基体上にアモルファスシリコンからなる光導電層とアモルファス窒化ケイ素からなる表面層を有する電子写真感光体において、感光体の最表面におけるN/Siの元素組成比が0.8〜1.33の範囲で、O/Siの元素組成比が0〜0.9の範囲にあることを特徴とする電子写真感光体(例えば、特許文献3参照)や、表面層が窒素含有アモルファスシリコンか、窒素並びに第III族元素及び/又は第V族元素を含有するアモルファスシリコンからなり、表面層の赤外吸収スペクトル伸縮振動の吸光度がN-H>Si-Hの関係を有し、且つ、水素量が1〜7atm%の範囲にあることを特徴とする電子写真感光体(例えば、特許文献4参照)や、アモルファスシリコン感光体の表面層として、窒素、炭素、酸素のうち、少なくとも1つを含むアモルファスシリコンで構成されており、その含有量が最表面に向かって連続的に増大する組成にする(例えば、特許文献5参照)などが知られている。
従来のa−Si系電子写真感光体は、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、光学的、光導電特性、及び使用環境特性の点、さらには経時安定性および耐久性の点において、各々個々には特性の向上が図られてはいるが、総合的な特性向上を図る上でさらに改良される余地が存在するのが実状である。
特に、近年急速にデジタル化、カラー化へのシフトが進み、電子写真装置の高画質化への要求は以前に増して高まっている。ここでいう高画質とは、高解像であること、高精細であること、濃度ムラがないこと、画像欠陥(白抜けや黒点など)がないことを指している。加えて、高速化、高耐久化への要求も急速に増しており、電子写真感光体においては電気的特性や光導電特性の向上、均一性や画像欠陥低減の向上とともに、耐久性や耐環境性(温度・湿度変化追従性)も含めて大幅に性能を延ばすことが求められている。
特に、濃度ムラに関しては、例えば、写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像をプリントアウトする場合において、出力画像の品質を左右する大きな要素の一つであるため、感光体の持つ特性ムラに対しても従来より非常に厳しいスペックが要求される。しかし、a−Si感光体に関しては、堆積膜を成膜する面積が非常に広く、電子写真プロセスにおいて必要とされるさまざまな特性に関して、すべての特性ムラをゼロにすることは、極めて難しい技術である。従って、感光体が搭載される電子写真装置の使いこなしの工夫によって、感光体の特性ムラがプリントアウトされる画像に反映され難い構成が必要となる。このため、例えば、帯電手段の構成としては、帯電工程において感光体の持つ帯電特性のムラを軽減し、帯電後の電位が均一化され易い構成が好ましい。
電子写真装置の画像形成における感光体の帯電手段としては、コロナ放電方式の帯電手段が一般的に広く用いられている。しかしながら、最近においては、電源の低電圧化が図れ、また、オゾンの発生が極めて微量或は皆無である等の長所を有していることから、導電部材を感光体に接触させる接触式の帯電手段が、実用化されるようになってきた。このような接触式の帯電手段としては、電圧を印加した帯電部材を感光体表面に当接させてその表面を所定の電位に帯電するものや、磁性体と磁性粒子(あるいは粉体)からなる磁気ブラシ状粒子の接触帯電部材を感光体表面に接触させて電荷を付与するものや、導電性と弾性を有する担持体の表面に帯電粒子を担持するように構成された担持体を感光体表面に接触させて電荷を付与するもの、などが知られている。
これらの帯電手段の中で、感光体の特性ムラを軽減し、帯電後の電位を均一化する効果に着目すると、コロナ帯電方式より、接触帯電方式のほうが有利である。しかしながら、接触帯電方式は、何らかの部材が感光体に接触し、それが感光体表面を摺擦する構成であるため、感光体にとっては厳しい環境に曝されることとなる。その上、接触帯電方式の場合は、接触帯電部材の被帯電体への接触状態が変化すると、磨耗ムラが生じるおそれがあり、微視的な帯電不均一や感度不均一につながって、ブラシで掃いたような掃きムラといわれる画像となる場合がある。このため、表面層の耐磨耗性に関しては、更なる改善が求められている。
感光体の磨耗特性の評価に関する従来の方法としては、弾性ゴムブレードでスクレープクリーニングする電子写真装置を用い、A4紙へのプリント工程を行った場合の1万枚当たりの磨耗量を規定した耐久試験(例えば、参考文献6参照)や、研磨用のラッピングテープを使った磨耗試験での磨耗量を規定した磨耗試験(例えば、参考文献7参照)などが報告されている。しかしながら、本発明者らが、それらの磨耗特性評価方法を含むさまざまな評価方法を用いて、感光体の耐磨耗特性と磨耗ムラの関係を検討したところ、上記のような従来から知られている磨耗評価方法において磨耗特性がよいと評価される感光体が、接触帯電方式の帯電を用いたときにおける磨耗レートや磨耗ムラ性能まで含めた、総合的な耐磨耗特性という観点では、必ずしもよいというわけではないことが判った。
これは、磨耗はその形態として、アブレッシブ磨耗、ディラミネーション(疲労)磨耗、凝着磨耗、化学(腐食)磨耗というように分類され、使用される電子写真プロセスや材料等により、主体になる磨耗形態が異なるためであると推測される。このような背景から、接触帯電方式の帯電手段を用いる場合において、総合的な耐磨耗特性に優れる感光体が強く要請されている。
一方、高画質化の要請に対応する方法としては、トナーの小粒径化と並んで、静電潜像の高精細化の方法を挙げることができる。静電潜像の高精細化を達成するためには、画像露光用レーザー光のスポット径を小さくすることが有効である。レーザー光のスポット径はレーザー光の波長と結像レンズの開口率で決まる回折限界までしか絞ることができないため、レーザー光のスポット径を小さくする手段としては、レーザー光の光学系の精度を向上させたり、結像レンズの開口率を大きくしたりすること等が挙げられるが、レンズの大型化や機械精度の向上等の理由により装置の大型化やコスト上昇は避け難い。
このため、レーザー光のスポット径の小径化手段として、レーザー光のスポット径の下限がレーザー光の波長に比例することから、レーザー光の波長を短くしてスポット径を小さくし、静電潜像の解像度を高めるという技術が注目されている。従来の電子写真装置においては、画像露光の際に600〜800nmの発振波長を有するレーザー光が一般的に用いられており、この波長をさらに短くすることで画像の解像度を高めることができる。近年、発振波長の短い半導体レーザーの開発が急速に進んでおり、400nm近辺に発振波長を有する半導体レーザーが実用化されている。
かかる短波長のレーザー光を画像露光に使用することに対応するためは、感光体がそのような短波長帯の光に対応できるように、感光層がこの波長に対して十分な感度を有すること、表面層がこの波長に対して感度を有しない、即ち、ほとんど吸収しないことの二つの条件を満たすことが必要である。
例えばアモルファスシリコン系の感光層は感度のピークが600〜700nm付近であるため、ピーク感度に比べればやや劣るものの、条件を工夫すれば400〜410nm付近の感度は有しており、例えば、405nmの短波長レーザーを用いた場合でも使用可能である。ただし、405nm波長に対する感度としてはピーク感度に比べて半分前後となる場合もあり、表面層における吸収が殆どないことが好ましいことになる。
しかし、従来表面層に好適に用いられてきた水素化アモルファス炭化シリコン(a-SiC:H)系材料や水素化アモルファスカーボン(a-C:H)系材料の場合、400〜410nm近辺では吸収が大きくなりやすい傾向があった。即ち、a−SiC系材料では、条件を工夫することで透過率を向上させ、またある程度膜厚を薄くすることで対処することも可能であったが、表面層は複写機内で摺擦によって徐々に削られていくという宿命にあり、長寿命というa−Si系感光体の特性を十分に生かしきるためには、ある程度以上の膜厚が必要である。よって、表面領域における吸収量と寿命とがトレードオフの関係に陥る場合がある。また、a−C系材料の場合、条件によっては透過率のよい膜も作成可能であったが、その場合にはポリマーに近い構造となり、硬度が低くなったり、抵抗値が高くなりすぎたりする場合があった。よって、a−C系材料の場合には、透過率と硬度あるいは抵抗とのトレードオフになる場合がある。
これらの材料に対して、水素化アモルファス窒化シリコン(a-SiN)系材料を用いた場合、条件を最適化することにより400〜410nm付近の吸収係数を下げられることが判っていたが、そのような膜は感光体の表面層としては使用が難しく、これまで実用化に至らなかった。例えば、特許文献1においては、a−SiNの原料ガスの違いによって様々な利点と欠点があることが示されており、表面層として好適な条件を得るためには一定の工夫が必要であることを示している。特許文献1における工夫により、表面層として好適なa−SiN系の膜の作成条件が開示されているが、この場合でも露光に供される波長は550nmまでしか考慮されておらず、それよりさらに短波長の露光における感度についての言及はない。一方で、特許文献1では表面層の膜厚が0.8μmを超えると感度が低下することに言及されている。即ち、550nmの露光波長でも、0.8μmを越えると感度が低下する。
特開平05−150532号公報 特公平05−073234号公報 特開平08−171220号公報 特開平08−082943号公報 特開平07−306539号公報 特開平11−184341号公報 特開平06−332197号公報
本発明の課題は、電子写真装置における接触式の帯電手段に対しても耐磨耗性を有する表面層を備え、使用環境特性、経時安定性、耐久性を有し、380〜500nmの波長帯の光に対しても、実用上充分な感度を有し、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気写真特性に優れ、総合的な特性が向上した電子写真感光体や、このような感光体を備えた電子写真装置を提供することにある。
本発明者らは上記の諸問題を解決し、高画質、高耐久、高速の電子写真装置に好適に使用でき、総合的な耐磨耗特性に優れ、短波長露光に対して実用上十分な感度を有する電子写真感光体について鋭意検討した。
本発明者らは、表面層に求められる重要な特性の一つである耐磨耗特性の評価に関して特許文献7や特許文献8などにあるような感光体の磨耗特性の評価が、接触帯電方式の電子写真装置に実際に搭載したときの感光体の磨耗特性の評価と一致しない理由を探求するうち、感光体の磨耗に関しては、接触帯電部材やクリーニングブレード等の何らかの部材と感光体表面との摺擦による物理的な磨耗だけでなく、帯電による電気的な作用が関与しているとの知見を得た。実際の電子写真プロセスにおける帯電工程は、一次帯電だけでなく、転写帯電や分離帯電など複数の帯電工程があり、そのいずれかには感光体の帯電極性と逆極性の帯電が行われる場合が普通である。従って、総合的な磨耗特性の良し悪しを評価していくためには、上述の電気的な作用による磨耗までも評価に加えることが重要であり、それにはプラスとマイナスの両極性に対して、磨耗特性を評価することが重要であることがわかった。そして更に帯電方式における感光体の磨耗について鋭意検討の結果、プラスの電圧を印加しながら測定したときの感光体表面層の磨耗量Wp[nm/1万回転]とし、マイナスの電圧を印加しながら測定したときの感光体表面層の磨耗量Wn[nm/1万回転]としたとき、Wn≦Wp×3なる関係式を満足する感光体を用いることで、僅かなムラ削れであっても、その影響が濃度ムラとなり得る写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される高画質カラー画像をプリントアウトするような場合においても、非常に良好な画像が得られることを見い出した。
この現象に対するメカニズムは、詳細には明らかになっていないが、現状では次のように推察している。即ち、実際の電子写真装置本体を使用した通紙耐久では、一次帯電の影響だけでなく、転写や分離帯電といった全ての帯電による電気的な影響が磨耗量に関与していると考えられる。このため、Wn/Wpの値が3以下となる感光体は、帯電による電気的な作用に対する耐性が、プラスとマイナスで、ほぼ同等と考えられる。この結果、プラス帯電とマイナス帯電の両方の環境に曝される場合においても、それらの影響はほぼ均一であり、磨耗に対しても、さまざまな要因が平均化される方向で作用するために、均一に磨耗され易く、ムラ削れし難いと考えられる。逆に、Wn/Wpの値が3を超え、即ち、WnとWpの値が大きく異なる値となる感光体は、マイナスの帯電による電気的な作用による磨耗に弱いと考えられる。この結果、プラス帯電とマイナス帯電の両方の環境に曝される場合においては、マイナスの影響を強く受け易く、このため、ある特定の帯電からの影響をより強く受けることになり易い。その結果、摺擦や帯電などに何らかの不均一が発生すると、ムラ削れの原因になりうると考えられる。
一方、400〜410nm付近の波長の光を使用したより高画質を目指した電子写真装置に搭載するために、表面層の材料的な特性について、更に詳しく検討を行った。本発明者らは、特許文献1などにあるような従来の方法により、表面層として好適なa−SiN:H系材料の薄膜を作成したが、これらの方法で作成した膜は短波長の光、例えば波長405nm付近の光に対する吸収係数が比較的大きく、そのような表面層をもつ感光体では、波長405nm付近の光に対しては感度が不十分であった。その後検討を重ね、原料ガス種、原料ガスの流量とこれらの比率、投入電力とガス量に対する比などを適切に、これらが限定された特定の範囲において作製したとき、初めて405nmなどの短波長光に対して吸収の少ない表面層が得られることが判った。ここで、吸収が少ない膜とは、定量的に表すとすれば、入射光の光量をT0、透過光の光量をT、膜厚をt(cm)としたとき、下記式
α=−(lnT/T0)/t
で表される吸収係数αが、5000cm-1以下、好ましくは3000cm-1以下の膜をいう。
このような特定の限定された条件で作成した表面層を、最表面の環境による影響を受けた部分を取り除いた上で、XPS(X線光電子分光法)、RBS(ラザフォード後方散乱分光法)、SIMS(二次イオン質量分析法)などで分析したところ、窒素の含有範囲としては、実用膜厚における吸収が許容できる値として、N/(Si+N)(式中、Nは窒素原子の数を示し、Siはシリコン原子の数を示す。)と表記した場合で0.3以上が好ましく、より好ましくは0.35以上であることが分かった。また、上限としては、膜の歩留まりの関係から、0.7以下が好ましく、より好ましくは0.6以下であることが分かった。この範囲を超えるような条件で作成した場合、膜厚や硬度、抵抗などのムラが発生しやすくなり、歩留まり率が大きく低下する場合があることが分かった。この理由としては、窒素が多くなりすぎると膜の結合が非常に不安定になるためではないかと予想される。また、0.7以下の範囲が、膜の強度が保て、表面層として使用する際にはより望ましいことが判った。
ここで、最表面の環境による影響を受けた部分とは、最表面に吸着した元素や表面に形成された酸化膜の影響を受けた部分のことを指している。シリコンを含む化合物は、表面にあるシリコン原子が空気中では容易に酸化されてしまう。この影響を除去する方法としては、真空中でAr原子などを用いたスパッタを施すことにより、表面をおよそ10nm、好ましくは20nm程度除去する手段が採られる。例えば、SIMSなどでチャージアップを防ぐための導電膜を蒸着してから測定する場合には、蒸着膜の厚さと、除去膜厚20nm程度とを合計した膜厚相当分をスパッタしてやればよい。このようにすることで、最表面の吸着原子や自然酸化膜の影響を実質的に除去することが可能である。
本発明者らは、別途の切り口から、露光用レーザーのスポットの小径化を図ることができる表面層の材質を見い出すべく、655nmと405nmの波長のレーザー光を用いて、アモルファスシリコン系光導電層と各種アモルファス窒化シリコン系表面層を有する感光体(1)〜(5)に画像露光したときの、スポット径と画像上または感光体の静電潜像上のドット径の関係について検討した。各感光体毎にレーザー光を照射し、横軸にレーザーポット径、縦軸に静電潜像や画像上のドット径をとったグラフ上にプロットすると、図11に示すように、655nmのレーザー光を用いた場合(図11の(1)、以下、感光体(1)という。)では、スポット径は光学系の開口数などで何とか絞ることが可能でも、ある程度限界があるのに対し、405nmのレーザー光を用いた場合(図11の(2)〜(5)、以下、感光体(2)〜(5)という。)では、短波長露光を用いているので、更にスポット径を絞ることが可能であることが分かった。
また、露光波長の違いは、光導電層における光吸収にも影響する。短い露光波長では光導電層における光吸収が非常に薄い領域に限られる。光生成キャリアは、表面電荷が形成する電界によって加速され、膜の厚さ方向に移動する。そして、表面電荷と逆極性のキャリアが表面に移動し、電荷をキャンセルすることで、静電潜像が形成される。しかし、キャリア移動の際に、キャリア同士の静電的な反発力によって、膜の面方向(厚さ方向と垂直方向)にも移動する可能性があり、潜像のぼけにつながるおそれがある。従って、露光パターンにより忠実な静電潜像パターンを形成するためには、光生成キャリアが表面電荷をキャンセルするために移動する距離を短くした方が好ましく、即ち、光キャリアの生成領域は、表面に近い方が好ましい。従来の600〜800nmの露光では、a−Si感光体の光学特性から光導電層の上部数μm〜十数μmまで光が到達してキャリア生成が起こる。一方、例えば405nmの露光では、光導電層最上部の極めて薄い範囲で光吸収が終了し、光生成キャリアが上部に到達するまでに広がる余地が殆どないため、更に高解像が期待できることとなる。このことから、仮に同じスポット径(図11のイにおける(1)と(2)に相当)でも、解像力に差がでることが期待できる。
一方、感光体の実力から、ある程度以上スポット径を絞ってもそれ以上ドット径が小さくならない場合が発生する。例えば、例えば、レーザー光として同じ405nm波長光を用い最小スポット径は同じような大きさであっても、感光体(5)においては感光体(2)〜(4)と比較して画像上または感光体の静電潜像上のドット径が小さくならない。同じ短波長のレーザー光を用いて画像露光を行っても、スポット径を小さくしたことによるメリットが得られない場合があることが示された。これとは逆に、感光体(3)、(4)では、スポット径を最小まで絞った場合、同じ最小径のスポット径を有する感光体(2)における画像上または潜像上のドット径より小さいドット径とすることができる。このように、作成条件を工夫して短波長レーザー光の透過性のよいアモルファス窒化シリコン系膜を作成したとしても、解像力の向上には直結しない場合があることがわかった。感光体(5)では、表面層などの膜中の欠陥などに起因して潜像がぼけてしまうのではないかと思われ、感光体(3)、(4)では、表面層の最適化により更に解像力を向上させることが予測できた。
そこで、本発明者らは、380〜500nm付近の波長に対し吸収が少ない表面層を備え、解像力に優れた感光体を見い出すべく作成条件を変更して種々の表面層を作製し、更に検討を重ねたところ、微量の酸素を添加することにより、吸収係数を小さく抑えながら解像力を大きく向上させることが可能であることがわかった。具体的には、酸素の含有量として、表面の環境による影響を受けた部分を除いた上で、XPS(X線光電子分光法)、RBS(ラザフォード後方散乱分光法)、SIMS(二次イオン質量分析法)などで分析したところ、O/(Si+N+O)の形で、膜中の平均濃度が0.0001以上0.2以下である場合に、これらの電子写真特性が飛躍的に向上することが判った。
この原因としては、キャリアの走行が複雑である点、過渡現象なので正確な現象を追いにくい点などから、すべてを明らかにすることは難しいが、現時点では以下のように考えている。
前述したような短波長の光に対する吸収係数が小さい膜を得るためには、窒素原子の濃度が比較的高い膜である必要があるが、一般にアモルファスシリコン系の膜においては、炭素原子や窒素原子の量が増えるにしたがって、エネルギーバンドギャップ中に存在する準位の数が増大することが知られている。また、一般的にエネルギーバンドギャップの広い材料は高抵抗になりやすく、キャリアが通り抜けにくくなるという傾向が見られる。また、光導電層材料であるアモルファスシリコン膜のバンドギャップは1.7〜2.0eV程度であるが、前述したように条件を選んだa−SiN:H系材料であれば、バンドギャップは2.8eV以上となり、バンドギャップの不整合が大きくなることもキャリアの流れを妨げる要因となる可能性がある。
まず、これらの解決のために積極的な水素終端やフッ素終端などを試みたが、十分ではなかった。そこで、さまざまなガスについて微量添加による膜質改善を試みたところ、酸素を適量添加することにより、バンド中の準位が減少し、抵抗値を適切な範囲に調整でき、またバンドの不整合によるキャリアの蓄積などが起こりにくくなることが分かってきた。これらのことにより、解像力が大きく向上することになったと考えられる。
この理由としてはまだ分かっていないが、酸素を微量添加することにより、応力の大きなa−SiNなどの膜において結合の緩和が起こり、結果として欠陥が減少したと考えられる。前述したように窒素濃度の高いa−SiN系の膜は吸収係数が小さく硬度も非常に大きいので、表面層として使用するには好適であるが、硬度が大きいと膜中の応力も大きくなる場合があり、非常に大きな残留応力が膜中に残ってしまう場合がある。このような場合には応力による歪を緩和するために結合が切れたりして、膜堆積後に欠陥(トラップ)が生成されることが考えられる。酸素は結合手の数が2本であることから、原子間に効果的に入り結合のひずみを緩和する働きをすることが予想でき、欠陥生成を効果的に抑制するのではないかと考えられる。一方、水素終端などは膜形成中に欠陥を修復する効果はあるものの、無理な結合や弱い結合が膜堆積後に欠陥に変わってしまうような場合には効果が得られない。微量酸素によって結合の緩和が起こり、水素による欠陥修復と並行して、これまで成膜後に生成されていた欠陥を効果的に低減させ、総合的に欠陥低減が実現できたのではないかと考えられる。このように、低欠陥化やバンド構造の最適化が実現すると、膜中にある浅いトラップが減り、例えば帯電後にトラップに束縛されたキャリアが、現像までの間に再励起して出てくることが低減される。本来、このような浅いトラップから出てくるキャリアは、潜像形成によって生じた電位差を埋めるようにドリフトすると考えられるので、潜像をなまらせたり、潜像の深さを浅くしたりしてしまうと考えられる。このため、トラップの低減を図ることができれば、潜像をなまらせる原因が減り、解像度が高まると考えられる。
また、バンドの不整合が低減していると考えられる点に関しては、未確定ではあるが微量な酸素がドーパントのような役割を果たしており、そのためにバンドがシフトし、キャリアの蓄積などが起こりにくくなったのではないかと考えられる。このことから、キャリア蓄積による横流れを抑制することができ、潜像のボケが低減し、解像度が向上すると考えられる。
ここで、酸素の平均濃度としては、0.01atm%以上含有させることで上述の添加効果が効果的に得られ、20atm%以下の範囲で含有させることにより、添加物的な役割にとどまることで構造材的な役割に変化することがなく、膜の硬度を維持できるばかりか、抵抗値の上昇が抑えられるために残留電位の上昇が発生しにくいことが分かった。また、親水性のSiO結合が増加しないことで表面が親水性になりにくく、感光体の表面層としては、高温高湿下で画像がボケたりする現象が発生しにくくなることが分かった。本発明者らは上記知見に基づき、本発明をするに至った。
すなわち、本発明は、基体と、該基体上に順次設けられた光導電層と、表面層とを有する電子写真感光体において、感光体を回転させる回転手段および表面層に接触する導電性の接触体を有する帯電手段を備えた電子写真装置に搭載されたとき、表面層の磨耗に伴う層の厚さの減少につき、式(1)
Wn≦Wp×3 (1)
(式中、Wnは接触体をマイナスに印加したときの感光体が1万回転した後の減少を示し、Wpは接触体をプラスに印加したときの感光体が1万回転した後の減少を示す。)で表される関係を有する電子写真感光体に関する。
本発明の電子写真感光体は、耐久による表面層の耐磨耗性能に優れるだけでなく、スジ削れといった磨耗要因のミクロな帯電不均一や感度不均一による濃度ムラも含めた総合的な耐磨耗性に優れ、高画質な画像を長期に亘って得ることができる。このため、接触帯電方式の帯電器を使用し、感光体の耐磨耗性に関して厳しい環境に曝される構成の電子写真装置においても、カラー写真画像のような高い品質が要求される画質レベルを、長期間に亘って高いレベルで維持できる。本発明の電子写真感光体において、380nm〜500nmの波長帯の光に対して、十分な感度を有する結果、露光系の光源に青色発光半導体レーザーを用い、レーザースポット径を小径化した次世代超高画質を狙った電子写真装置に搭載することを可能とし、その高解像な画質を長期間に亘って安定的に維持できる。
以下に、図を参照して本発明についてより詳しく説明する。
図1(a)の概略模式図に示すように、本発明の電子写真感光体10は、基体101と、該基体の上に順次設けられる光導電層102、表面層103とを有する電子写真装置用感光体において、回転手段により回転される感光体の表面に接触する導電性の接触体を有する電子写真装置の帯電手段により帯電されたとき、表面層が、接触体の接触による磨耗に伴う層の厚さの減少につき、式(1)
Wn≦Wp×3 (1)
(式中、Wnは接触体をマイナスに印加したときの感光体が1万回転した後の減少を示し、Wpは接触体をプラスに印加したときの感光体が1万回転した後の減少を示す。)で表される関係を有するものであれば、特に制限されるものではない。
また、本発明の電子写真感光体は、図1(b)に示すように、基体101上に導電性基体側からの電荷の注入を阻止するために、下部電荷注入阻止層104を設け、下部電荷注入阻止層104上に光導電層102と、表面層103とを順次設けた電子写真感光体11であってもよい。必要に応じて、光導電層102は、基体101側から第一の層領域と第二の層領域とからなる2層構成にしてもよい。
また、本発明の電子写真感光体は、図1(c)に示すように、基体101と、該基体101上に、下部電荷注入阻止層104と、光導電層102と、上部電荷注入阻止層105と、表面層103とを順次設けた電子写真感光体12とし、上部からの電荷注入を低減し、帯電性を向上させる目的で上部電荷注入阻止層105を設け負帯電用電子写真感光体に特に好適なものとしてもよい。
また、本発明の電子写真感光体は、図1(d)に示すように、基体101と、該基体101上に、下部電荷注入阻止層104と、光導電層102と、上部電荷注入阻止層105と、組成傾斜層106と、表面層103とを順次設けた電子写真感光体13であってもよい。
以下、前述した各層について詳細に説明する。
[基体]
本発明の電子写真感光体において使用される基体としては、その上に光導電層を設けることができるものであれば、特に制限されるものではなく、材質も導電性でも電気絶縁性であってもよい。かかる基体が導電性の場合の材質としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fc等の金属、およびこれらの合金、例えばステンレス等を挙げることができる。
また、電気絶縁性の場合の基体の材質としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミック等を挙げることができる。これらの電気絶縁性基体の場合は、少なくとも感光層を形成する側の表面は、蒸着法や、スパッタ法などにより導電性物質を堆積させ導電性に処理されたものが好ましい。
基体の形状は円筒状または無端ベルト状であることが搭載される電子写真装置の構造上好ましく、その表面は平滑表面であっても、または凹凸を有する表面であってもよい。基体の厚さは、搭載される電子写真装置の関連において要求される強度、上層に設けられる光導電層などにより適宜決定することができ、感光体としての可撓性が要求される場合には、基体としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることが好ましいが、製造上および取り扱い上、機械的強度等の点から例えば10μm以上とすることができる。
[光導電層]
本発明の電子写真装置用感光体における光導電層は、特に制限されるものではないが、380〜500nmの波長の光に感度を有する非単結晶材料からなるものが好ましく、かかる非単結晶材料としては多結晶や微結晶など単結晶材料でない材料であればよいが、非晶質の状態、即ちアモルファスの状態の部分を主体として構成されるものが好ましい。
光導電層のかかる波長の光に感度を有する材質として、シリコン原子を母体とするアモルファス材料を含むことが好ましい。シリコン原子を母体とするとは、水素原子および/またはハロゲン原子を除いて総てがシリコン原子であってもよいが、アモルファス材料中シリコン原子が、例えば50%以上を占める場合をいう。
また、光導電層には、光導電性および電荷保持特性を向上させるため、水素原子および/またはハロゲン原子を含有していてもよい。これらの原子はシリコン原子の未結合手と結合し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させ得る。水素原子の含有量は、シリコン原子と水素原子の数の和に対して10〜40atm%であることが好ましく、また、その分布形状に関しても、露光系の波長に合わせて含有量を変化させるなど、適宜調整することができる。特に、水素原子やハロゲン原子の含有量をある程度多くすると、光学的バンドギャップが大きくなり、感度のピークが短波長側にシフトすることが知られている。このような光学的バンドギャップの拡大は、短波長、380〜500nmの波長の露光を用いる際には好ましく、その場合にはシリコンと水素原子の数の和に対して15atm%以上とすることが好ましい。
加えて、光導電層には伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子は、光導電層の層厚方向に対して単位長さ当たりの原子の数が不均一な分布状態で含有されることが好ましい。光導電層のキャリアの走行性を調整し、或は補償して走行性を高次でバランスさせることにより、帯電能の向上、光メモリー低減、感度の向上のために有効である。
この伝導性制御原子は、膜厚方向の単位長さ当たりの含有量が連続的に、または段階的に漸増または漸減するように含有されていてもよく、漸増または漸減して含有される状態において厚さ方向の一定長あたりの含有量が変化しない状態で含有されていてもよい。
伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、周期表第13族に属する原子(第13族原子とも略記する)、又は周期表第15族に属する原子(第15族原子とも略記する)を用いることができる。第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。第15族原子として、具体的には、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、As、Sbが好適である。
伝導性を制御する原子の光導電層における含有量は、0.05〜5atmppmとすることができる。また、光の到達する範囲においては、伝導性を制御する原子を実質的に含有しないものであってもよい。
かかる光導電層はいずれの波長の光に対して感度を有するものであってもよいが、380〜500nmの波長の光に対して感度を有するものが好ましい。ここで感度としては、暗電位の表面電位を有するところ波長380〜500nmの波長光を照射することにより、表面電位が変化するものであればよく、そのときの露光量が少ないものを高感度として判断することができる。
光導電層の層厚は所望の電子写真特性が得られること、作製が容易であること、及び経済的効果等の点から適宜選択することができ、感光体の形態により異なるが、例えば、5〜50μm、好ましくは10〜45μm、より好ましくは20〜40μmである。層厚が5μm以上であれば帯電能や感度等の実用上の電子写真特性を備えたものとなり、50μm以下であれば光導電層の作製に時間を要せず製造コストを抑えることができる。層厚が10〜45μm、20〜40μmとなるに伴いかかる効果を顕著に得ることができる。
このような膜特性を有する光導電層を形成するには、基体上に例えばグロー放電法によって光導電層を形成することができる。かかるグロー放電法としては、後述する高周波プラズマCVD装置を用いた方法を挙げることができ、内部を減圧できる反応容器内の載置台に基体を載置し、この反応容器内にシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガスおよび/またはハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原料ガスとを、所望のガス状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起させ、基体上にシリコン、水素原子、ハロゲン原子などを含むアモルファス膜を形成する方法などを挙げることができる。
上記Si供給用ガスとしては、SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態の、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)を挙げることができ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率のよさ等の点でSiH4、Si26を好ましいものとして挙げることができる。なお、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても用いることができ、膜の物性の制御性、ガスの供給の利便性などを考慮し、これらのガスに更に、H2、He及び水素原子を含むケイ素化合物から選ばれる1種以上のガスを所望量混合して層形成することもできる。ハロゲン原子供給用の原料ガスとしては、具体的には、フッ素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物、SiF4、Si26等のフッ化ケイ素を好ましいものとして挙げることができる。
また、光導電層の伝導性を制御する原子を導入するための原料物質として、第13族原子導入用の原料物質としては、具体的には、ホウ素原子導入用としては、B26、B410、B59、B511、B610、B612、B614等の水素化ホウ素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化ホウ素等この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。第15族原子導入用の原料物質としてリン原子導入用としては、PH3、P24等の水素化リン、PH4I、PF3、PF5、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化リンが挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等も第15族原子導入用の出発物質として挙げることができる。また、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質は適宜選択して1種または2種以上を混合して用いることができ、必要に応じてH2および/またはHeにより希釈して使用してもよい。
これらの原料ガスを用いて光導電層を作製するには、Si供給用、ハロゲン添加用等のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体温度を適宜設定することが望ましい。希釈ガスとして使用するH2および/またはHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用ガスに対し、例えば3〜30倍、好ましくは4〜15倍、より好ましくは5〜10倍である。反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、例えば1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、より好ましくは1×10-1〜2×102Paである。
放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量ml/min(normal)に対する放電電力Wの比を、例えば0.5〜8、好ましくは2〜6の範囲に設定することができる。
さらに、基体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、例えば200〜350℃とすることができ、好ましくは210〜330℃、より好ましくは220〜300℃である。
光導電層を形成するための基体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが好ましい。
[表面層]
本発明の電子写真感光体に用いられる表面層は、主に380〜500nm波長光透過性、高解像度、連続繰り返し使用耐性、耐湿性、使用環境耐性、良好な電気特性などに関して良好な特性を得るために設けられており、正帯電用電子写真感光体の場合には帯電保持層としての役割も有している。負帯電用電子写真感光体の場合にも、それ自体が帯電保持層としての役割を持ってもよいが、後述する上部電荷注入阻止層に帯電保持の機能を持たせ、表面層の組成設計の自由度を得ることとしてもよい。
本発明における表面層は、感光体を回転させる回転手段および表面層に接触する導電性の接触体を有する帯電手段を備えた電子写真装置に搭載されたとき、接触体の接触による磨耗に伴う層の厚さの減少につき、式(1)
Wn≦Wp×3 (1)
(式中、Wnは接触体をマイナスに印加したときの感光体が1万回転した後の減少を示し、Wpは接触体をプラスに印加したときの感光体が1万回転した後の減少を示す。)で表される関係を有するものであれば、特に制限されるものではない。ここで、式(1)の関係は、電子写真装置の帯電手段における磨耗による関係であって、表面層の磨耗に伴う層の厚さの減少の特定は、回転手段により回転される感光体の表面に接触する導電性の接触体を有する電子写真装置の帯電手段に接触してなされ、電子写真装置の感光体の内外に設けられる帯電手段以外の例えば、感光体のクリーナーや、転写ドラムあるいは転写ベルトなどは除き、例えば、図2に示すような、感光体21外周に帯電手段22と、除電露光23を備えた状態の実験装置を用いて行うことができる。帯電手段に設けられる帯電の両極性の磨耗に伴い減少する層の厚さが、式(1)で表される関係を有する表面層においては、かかる表面層を有する感光体が導電性の接触体を有する帯電手段を備えた電子写真装置に搭載されたとき、接触体がローラー、ブラシなどの形態を問わず、静電潜像を形成するための露光前の帯電や、それを転写するための印加、クリーニングなど、感光体が両極の帯電により受ける影響を平均化することができ、磨耗による削れが抑制できる。かかる電子写真装置の感光体を回転させる回転手段は電子写真装置における感光体の回転手段であれば、いずれのものであってもよく、その回転速度も電子写真装置の作動状態における感光体の回転速度で行うことができるものであればよい。また、帯電手段も電子写真装置に用いられる感光体を帯電させる導電性の接触体を備えたものであれば、接触体がローラー、ブラシ、ベルト、ブレードなど何れの形態の接触体であってもよいが、接触体としては、磁性部材と、この磁性部材に導電性磁性粒子を保持させたブラシを有し、導電性磁性粒子に電圧を印加したものであってもよい。
本発明における表面層の材質としては、マイナス帯電、プラス帯電のときの磨耗に伴う層厚の減少がこのような関係を有する材質であればいずれのものであってもよく、例えば、シリコン原子と窒素原子を母体とし、酸素原子を含む非単結晶材料からなるものが好ましく、かかる非単結晶材料としては多結晶や微結晶など単結晶材料でない材料であればよいが、非晶質の状態、即ちアモルファスの状態の部分を主体として構成されるものが好ましい。非単結晶材料において、シリコン原子と窒素原子を母体とするとは、シリコン原子と窒素原子を本体とするものであればよく、酸素原子を除いて総てがシリコン原子と窒素原子であってもよいが、非単結晶材料中シリコン原子と窒素原子が例えば50%以上を占める場合をいう。
表面層中の窒素原子の含有量としてはシリコン原子と共に母体を構成する範囲であればよいが、平均濃度において式(2)
0.3≦N/(Si+N)≦0.7 (2)
(式中、Nは窒素原子の数を示し、Siはシリコン原子の数を示す。)で表される範囲であると、均一な表面層を作製することが容易であり製造上歩留まりがよく、380〜500nmの波長光の吸収が殆どないため好ましい。窒素原子の含有量が0.4≦N/(Si+N)≦0.6で表される範囲であれば、上記効果を更に顕著に得ることができる。
また、表面層における酸素原子含有量は、表面層中、平均濃度において式(3)
0.0001≦O/(Si+N+O)≦0.2 (3)
(式中、Nは窒素原子の数を示し、Siはシリコン原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示す。)で表される範囲であると、380〜500nm波長の画像露光を吸収しないため好ましい。酸素原子の含有量が0.001≦O/(Si+N+O)≦0.1で表される範囲であれば、上記効果を顕著に得ることができ、0.005≦O/(Si+N+O)≦0.08で表される範囲であれば、上記効果をより顕著に得ることができる。酸素原子を上記範囲で含有する表面層を持った電子写真感光体は、380〜500nm波長の透過性を十分に保ちつつ、電子写真特性に優れた特性を有する。すなわち、通常a−SiN:Hなどのワイドバンドギャップ半導体は、ギャップ中に多くの欠陥準位をもつようになり、欠陥を低減することが難しくなってくる。表面層内に存在する欠陥(主にシリコン原子や窒素原子のダングリングボンド)は電子写真感光体としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。特に短波長の露光を用いた場合には、光のエネルギーが大きいために結合を壊す可能性もあり、壊れた結合はダングリングボンドを生成してしまうことが考えられる。このダングリングボンドによる悪影響としては、例えば自由表面から電荷の注入による帯電特性の劣化、使用環境、例えば高い湿度のもとで表面構造が変化することによる帯電特性の変動、更にコロナ帯電時や光照射時に光導電層により表面層に電荷が注入され、前記表面層内の欠陥に電荷がトラップされることにより繰り返し使用時の残像現象の発生等がこの悪影響として挙げられる。
このような表面層には、他の原子を含有させることができ、かかる原子として、水素原子、ハロゲン原子が含有されることが好ましい。これらの原子はシリコン原子の未結合手と結合し、層品質を向上させる。水素含有量は、構成原子の総量に対して例えば5〜70atm%とすることができ、好ましくは8〜60atm%、より好ましくは10〜50atm%である。また、ハロゲン原子の含有量として、例えば0.01〜15atm%とすることができ、好ましくは0.1〜10atm%、より好ましくは0.6〜4atm%である。
さらに、表面層には必要に応じて、周期表第13族原子または第15族原子などの伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子は、表面層中に万遍なく均一に分布した状態で含有されてもよく、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。これら伝導性を制御する原子の表面層中の含有量としては、例えば1×10-3〜1×103原子ppmとすることができ、好ましくは1×10-2〜5×102原子ppm、より好ましくは1×10-1〜102原子ppmである。
表面層の層厚としては、例えば0.01〜3μmとすることができ、好ましくは0.05〜2μm、より好ましくは0.1〜1μmである。層厚が0.01μm以上であれば感光体の耐磨耗性を向上させることができ、3μm以下であれば残留電位が増加することなく感光体において優れた電子写真特性を得ることができる。
このような表面層を作製するには、上記光導電層上に、例えば、グロー放電法によってアモルファス膜として作製することができる。かかるグロー放電法としては、Si供給用の原料ガスと、N供給用の原料ガスと、O供給用の原料ガスと、H供給用の原料ガス及び/又はハロゲン原子(X)供給用の原料ガスを、内部を減圧にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置された基体上の光導電層上にa−SiN:O:H,Xなどを含む膜を形成する方法を挙げることができる。
Si供給用ガスとしては、SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状物、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスは1種または2種以上を所望の混合比で混合して用いることができ、必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
窒素または酸素供給用ガスとしては、N2、NH3、NO、N2O、NO2、O2、CO、CO2、等のガス状物、またはガス化し得る化合物が挙げられる。中でも、窒素供給用ガスとしては窒素が最も良好な特性が得られるため、好ましい。また、酸素供給用ガスとしては同様にNOが好ましい。また、これらの窒素、酸素供給用の原料ガスは1種または2種以上を所望の混合比で混合して用いることができ、必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。特に酸素を微量添加する場合、例えばNOガスをHeガスで予め希釈して供給することで、流量の正確な制御が可能となる。
また、ハロゲン原子供給用の原料ガスとしては、フッ素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物や、SiF4、Si26等のフッ化ケイ素を用いることができる。
これらの原料ガスを用いて表面層を作製するには、反応容器のガス圧、放電電力、ならびに基体の温度を適宜設定することができる。基体温度は、層設計に従って最適範囲が適宜選択されるが、例えば150℃以上350℃以下とすることができ、好ましくは180℃以上330℃以下、より好ましくは200℃以上300℃以下である。反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば1×10-2Pa以上1×103Pa以下とすることができ、好ましくは5×10-2Pa以上5×102Pa以下、より好ましくは1×10-1Pa以上1×102Pa以下である。本発明においては、表面層を作製するための基体の温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが好ましい。
また、本発明における表面層を作製するに当たり、例えばRF帯の高周波を用いたグロー放電法の場合には、放電電力としては10〜5000W、カソード電極面積あたりに換算すると2mW/cm2から1.4W/cm2程度の範囲が好適である。中でも、前述した窒素原子の濃度範囲アモルファス膜を得るためには、シリコン含有ガスの流量FSi(単位:ml/min(normal))、窒素含有ガスの流量FN(単位:ml/min(normal))、放電電力P(単位:W)を適切な関係にすることが好ましい。即ち、単位ガス量あたりの電力、特にシリコン原子含有ガスの単位ガス量に対する電力(P/FSi)と、窒素含有ガスとシリコン含有ガスのガス濃度比(FN/FSi)との積であるP・FN/FSi 2が50以上300W・min/ml(normal)以下、より好ましくは80以上200W・min/ml(normal)以下とすることが好ましい。この範囲に設定することで、総合的な耐磨耗性に優れた、本発明の表面層に好適な膜が作成でき、更に、膜の光学的バンドギャップとしては2.8eV以上程度となり、吸収係数も3000cm-1以下となり、短波長の光を効率よく透過できる膜が作成できる。この電力と流量比の積が50W・min/ml(normal)以上であれば、380〜500nmの波長の光の吸収を抑制し高い透過率を有する表面層に好適な膜を得ることができ、300W・min/ml(normal)以下であれば、硬度の高い膜を得ることができる。この理由としては明らかではないが、窒素原子を上記範囲で含有する膜を得るためには、プラズマ中に存在する原料物質のラジカルが適切なバランスをとっていることが好ましく、原料ガスが分解された際のラジカルの濃度は、複数の原料ガスを使用する場合、原料ガス濃度比と電力によって決まると考えられ、ガス種によって分解効率に差があるため、シリコン原子含有ガスの単位ガス量に対する電力(P/FSi)と、窒素原子含有ガスとシリコン原子含有ガスのガス濃度比(FN/FSi)との積をこの範囲に調整することにより、ラジカル濃度が適切な範囲となると考えられる。
また、本発明における表面層を作製するに当たり、上記範囲で酸素原子を含有するように含有量を調整するためには、例えばNOのような酸素原子含有ガスをHeなどのガスで希釈したものを、マスフローコントローラーを介して正確に流量制御して添加すればよい。酸素原子は原料ガスを微量添加しただけで、膜中に容易に取り込まれるため、希釈した上で微量添加することが好ましい。
[下部電荷注入阻止層]
本発明の電子写真感光体において、図1(b)から図1(d)に示すように、導電性基体101の上層には、基体101側からの電荷の注入を阻止する働きのある下部電荷注入阻止層104を設けるのが効果的である。下部電荷注入阻止層は表面層が一定極性の帯電処理をその開放表面に受けた際、基体側より光導電層側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有している。
下部電荷注入阻止層の材質としては、シリコン原子を母体とする非単結晶材料からなるものが好ましく、かかる非単結晶材料としては多結晶や微結晶など単結晶材料でない材料であればよいが、主としてアモルファス材料を含むものを挙げることができる。下部電荷注入阻止層としては、導電性を制御する不純物を光導電層に比べて比較的多く含有したものが好ましい。電子写真感光体がプラス帯電用の場合、下部電荷注入阻止層に含有される不純物元素としては、周期表第13族元素を用いることが好ましく、また、マイナス帯電用の場合、下部電荷注入阻止層に含有される不純物元素としては、周期表第15族元素を用いることが好ましい。本発明においては下部電荷注入阻止層中に含有される不純物元素の含有量率は、本発明の目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜決定されるが、下部電荷注入阻止層中の構成原子の総量に対して例えば10atmpm以上10000atmppm以下とすることができ、好ましくは50atmppm以上7000atmppm以下、より好ましくは100atmppm以上5000atmppm以下である。
更に、下部電荷注入阻止層は、窒素及び酸素を含有することによって、該下部電荷注入阻止層と基体との間の密着性を向上させることができる。また、マイナス帯電用電子写真感光体の場合には、下部電荷注入阻止層に不純物元素をドープしなくても窒素および酸素を最適に含有させることで優れた電荷注入阻止能を有するものとなる。下部電荷注入阻止層の全層領域に含有される窒素原子および酸素原子の含有量率は、窒素原子および酸素原子の数の和を下部電荷注入阻止層中の構成原子の総量に対して、例えば0.1atm%以上40atm%以下とすることができ、より好ましくは1.2atm%以上20atm%以下であり、40atm%以下、より好ましくは20atm%以下とすることにより、電荷注入阻止能が向上する。
また、本発明における下部電荷注入阻止層には水素原子を含有させるのが好ましく、この場合、含有される水素原子は、層内に存在する未結合手に結合し膜質の向上に効果を奏する。下部電荷注入阻止層中の水素原子の含有量は、下部電荷注入阻止層中の構成原子の総量に対して例えば1atm%以上50atm%以下、好ましくは5atm%以上40atm%以下、より好ましくは10atm%以上30atm%以下である。
本発明において、下部電荷注入阻止層の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点から例えば100nm以上5000nm以下とすることができ、好ましくは300nm以上4000nm以下、より好ましくは500nm以上3000nm以下である。層厚を100nm以上5000nm以下とすることにより、基体からの電荷の注入阻止能が充分となり、充分な帯電能が得られると共に電子写真特性の向上が期待でき、残留電位の上昇を抑制することができる。
下部電荷注入阻止層を形成するには、上記基体上に、例えば、グロー放電法によってアモルファス膜として作製することができる。かかるグロー放電法としては、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定して行うことができる。導電性基体温度(Ts)は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば150℃以上350℃以下とすることができ、好ましくは180℃以上330℃以下、より好ましくは200℃以上300℃以下である。反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば1×10-2Pa以上1×103Pa以下とすることができ、好ましくは5×10-2Pa以上5×102Pa以下、より好ましくは1×10-1Pa以上1×102Pa以下である。
[上部電荷注入阻止層]
本発明の電子写真感光体において、例えば図1(c)に示すように、光導電層102と表面層103の間に上部電荷注入阻止層105を設けることが、負帯電電子写真感光体の場合、その目的を効果的に達成するためには好ましい。本発明における上部電荷注入阻止層は、表面層側からの電荷の注入を低減し、表面層における帯電能を向上させる。
上部電荷注入阻止層の材質としては、表面層と同じくシリコン原子と窒素原子を母体とした非単結晶材料からなるものが好ましく、かかる非単結晶材料としては多結晶や微結晶など単結晶材料でない材料であればよいが、主としてアモルファス材料を含むものを挙げることができる。上部電荷注入阻止層に含有されるシリコン原子および窒素原子は、該層中に万偏なく均一に分布されてもよく、あるいは密着性の向上や干渉防止等の効果を得るために層厚方向に不均一に分布する状態で含有されていてもよい。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも好ましい。
上部電荷注入阻止層中の窒素原子の含有量は、構成原子のシリコン原子と窒素原子の数の総和に対して5atm%以上35atm%以下の範囲とするのが好ましい。より好ましくは10atm%以上30atm%以下、更に好ましくは15atm%以上30atm%以下である。
上部電荷注入阻止層を構成するシリコン原子と窒素原子を母体とする非単結晶材料には不純物として、周期表第13族元素を、光導電層に比べて比較的多く含有したものが好ましい。前記周期表第13族元素としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等を挙げることができ、このうち特にホウ素が好適である。上部電荷注入阻止層に含有される伝導性を制御する原子は、上部電荷注入阻止層に万偏なく均一に分布されていてもよく、あるいは層厚方向に不均一に分布する状態で含有されていてもよい。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。上部電荷注入阻止層中の周期表第13族元素の含有量は、構成原子の総量に対して30atmppm以上5000atmppm以下、好適には100atmppm以上3000atmppm以下の範囲である。
また、上部電荷注入阻止層には、水素原子が含有されることが好ましい。水素原子はシリコン原子の未結合手と結合し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させる効果を奏する。水素原子の上部電荷注入阻止層中の含有量は、構成原子の総量に対して例えば30atm%以上70atm%以下とすることができ、好適には35atm%以上65atm%以下、より好ましくは40atm%以上60atm%以下である。
上部電荷注入阻止層の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点から、例えば5nm以上1000nm以下とすることができ、好ましくは10nm以上800nm以下、より好ましくは15nm以上500nm以下である。層厚を5nm以上1000nm以下とすることにより、表面側からの電荷の注入阻止が充分に行われ表面層の帯電が保持され感光体において優れた電子写真特性を得ることができる。
このような上部電荷注入阻止層を作製するには、グロー放電法などによることができ、上記したシリコン原子供給用のガスと炭素原子供給用のガスと同様の原料ガスを用いて、その混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定して行う。反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば1×10-2Pa以上1×103Pa以下とすることができ、好ましくは5×10-2Pa以上5×102Pa以下、より好ましくは1×10-1Pa以上1×102Pa以下である。さらに、基体の温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、例えば150℃以上350℃以下とすることができ、好ましくは180℃以上330℃以下、より好ましくは200℃以上300℃以下である。
[組成傾斜層]
組成傾斜層106は、表面層103と上部電荷注入阻止層105との間に設けられ、屈折率が連続的に変化するものである。このように、表面層103の屈折率と上部電荷注入阻止層105の屈折率とをなだらかに接続することにより、この層界面における光の反射が抑えられ、可干渉光を露光に用いた場合の表面での干渉を防ぐことができる。また、露光に可干渉光以外の光(例えばLEDなど)を用いた場合でも、このような界面における干渉を持っていると削れによる感度の変動が起こりやすく、僅かな削れムラが画像濃度の顕著なムラとなる場合がある。従って、このような界面における反射をできるだけ少なくすることがより好ましい。また、図1(d)の例では、上部注入阻止層105を設けた場合を示したが、上部注入阻止層105を設けない場合には光導電層102と表面層103の間で組成変化をなだらかにすることにより屈折率の差に起因する層界面をなくすことができる。また、図1(d)は上部注入阻止層と光導電層の屈折率差が少ない場合に好適な一例であるが、この屈折率差が大きい場合には、上部注入阻止層105と光導電層102との間にも屈折率がなだらかに変化する変化領域を設けてもよい。
(本発明の電子写真感光体の製造方法)
本発明の電子写真感光体の製造方法について、以下に説明する。
本発明の電子写真感光体は、高周波プラズマCVD装置を用いて基体上に光導電層、表面層を作製することができる。図3に示すように、本発明の電子写真感光体の製造に使用することが可能なRF帯の高周波を用いたプラズマCVD法による堆積装置は大別すると、堆積装置2100、原料ガスの供給系2200、反応容器2110内を減圧するための排気装置(図示せず)から構成されている。堆積装置2100中の反応容器2110内には円筒状基体2110を載置する載置台2112、基体加熱用ヒーター2113、原料ガス導入管2114が設置され、更に高周波マッチングボックス2115を介して高周波電源(図示せず)が反応容器を兼ねるカソード電極2111に接続されている。
原料ガス供給装置2200は、原料ガスのボンベ2221〜2226とバルブ2231〜2236、2241〜2246、2251〜2256、及び、マスフローコントローラー2211〜2216から構成され、各原料ガスのボンベはバルブ2260を介して反応容器2110内のガス導入管2114に接続されている。
この装置を用いた堆膜の形成は、例えば以下のような手順によって行われる。
まず、反応容器2110内に円筒状基体2112を設置し、例えば真空ポンプなどの排気装置(図示せず)により反応容器2110内を排気する。続いて、基体加熱用ヒーター2113により円筒状基体2112の温度を200℃乃至350℃の所定の温度に制御する。
次に、堆積膜形成用の原料ガスを、ガス供給装置2200により流量制御し、反応容器2110内に導入する。そして、排気速度を調整することにより所定の圧力に設定する。
以上のようにして堆積の準備が完了した後、以下に示す手順で各層の形成を行う。
内圧が安定したところで、高周波電源2120を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス2115を通じてカソード電極2111に供給し高周波グロー放電を生起させる。放電に用いる周波数は1〜30MHzのRF帯が好適に使用できる。
この放電エネルギーによって反応容器2110内に導入された各原料ガスが分解され、円筒状基体2112上に所定のシリコン原子を主成分とする堆積膜が形成される。所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、ガス供給装置の各バルブを閉じて反応容器2110への各原料ガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の感光層が形成される。また、膜形成の均一化を図るために、層形成を行っている間は、円筒状基体2112を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効である。さらに、上述のガス種およびバルブ操作は各々の層の作製条件にしたがって変更が加えられることは言うまでもない。
本発明の電子写真感光体の製造に使用することが可能なVHF帯の高周波を用いたプラズマCVD法による堆積装置は、図4(a)の概略断面図、図4(b)の(a)におけるA−A’線断面図に示すように、大別すると、ガス供給装置(図示せず)、円筒状基体609が設置される反応容器601、及び、反応容器601内を減圧するための排気装置(図示せず)から構成されている。
反応容器601には、その容器内の気体を反応容器601の外部に排出するための排気管602が一体的に形成されている。排気管602はガス排気バルブ619およびガス排気接続部620を介してガス排気部(図示せず)に接続されている。反応容器601の上部には開口部が形成されており、その開口部が蓋614によって密閉されている。反応容器601内は、その容器と同心の円筒状の隔壁607によって区分けされている。隔壁607の少なくとも一部は誘電体部材で構成されており、円筒状の隔壁607の内側の空間がプラズマ処理空間606となっている。反応容器601内における隔壁607の外側の空間には、反応容器601内に高周波電力を導入するための電極603が複数設置されている。複数の電極603は、反応容器601と同心の円周上に所定の間隔をおいて並んでいる。高周波電源604より高周波電力が出力され、出力された高周波電力がマッチングボックス605およびコンデンサ616を経てそれぞれの電極603よりプラズマ処理空間606内に供給される。放電に用いる周波数は50〜450MHzのVHF帯が好適に使用できる。
プラズマ処理空間606内には、円筒状基体609が複数配置されている。それらの円筒状基体609は反応容器601と同心の円周上に所定のピッチで等間隔に並べられており、それぞれの円筒状基体609上に堆積膜が形成される。各々の円筒状基体609は、その基体の中心軸と平行な方向に延びる軸610によって保持されている。また、各々の円筒状基体609の内側には、必要に応じて発熱体611が配置され、発熱体611によって円筒状基体609が加熱されるようになっている。
さらに、それぞれの円筒状基体609を回転させる機構を必要に応じて設けてもよい。図4に示される装置では、円筒状基体609を支持する軸610の下端部は反応容器601の底面608より反応容器601の外部に突出しており、その軸610の下端部が、反応容器601の外部にある減速ギア613を介してモーター612の回転軸に繋がっている。モーター612を駆動することにより、減速ギア613を介して軸610が回転し、軸610の回転に伴って円筒状基体609がその中心軸のまわりで回転する。
反応容器601のほぼ中央部にはガス供給管615の一端部が配置され、ガス供給管615の他端部は反応容器601の外部でガス供給バルブ617およびガス供給接続部618を介してガス供給部(図示せず)に接続されている。そのガス供給部より、ガス供給管615を通してプラズマ処理空間606内に所望のプラズマ処理用ガスが供給される。
図4に示した装置を用いた堆積膜の形成は、概略以下のような手順によって行われる。
まず、反応容器601内に円筒状基体609を設置し、不図示の排気装置により排気管602を通して反応容器601内を排気する。続いて、発熱体611により円筒状基体609を200〜300℃程度の所定の温度に加熱・制御する。
円筒状基体609が所定の温度となったところで、不図示のガス供給装置から供給される原料ガスを、ガス供給管615を介して反応容器601内に導入する。原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器601内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源604からマッチングボックス605を介して電極603へ所定のVHF電力を供給する。これにより、VHF電力が反応容器601に導入され、プラズマ処理空間606にグロー放電が生起し、原料ガスは励起・解離して円筒状基体609上に堆積膜が形成される。
所望の膜厚の形成が行なわれた後、VHF電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の感光層が形成される。
(感光体の耐磨耗特性の評価装置)
感光体の耐磨耗性についての良し悪しを評価する為に、図2に示した評価装置を用いた。図2は、使用した評価装置の断面図であり、21が評価する感光体、22が帯電手段、23が除電露光である。図2に示したように、この装置においては、クリーニングブレード等を用いたクリーニング手段を有していない。これは、クリーニング手段に起因する磨耗と、その他の要因による磨耗とを分離して評価を行い、帯電手段に起因する磨耗量をのみを評価する為に、そのような構成とした。帯電手段は、磁気ブラシ方式の帯電手段を用いたが、ローラ帯電方式の帯電手段や帯電粒子方式の帯電手段を用いても、同様の評価が可能である。
(電子写真装置)
1.転写ドラムを用いた画像形成装置
本発明の電子写真装置は、本発明の電子写真感光体を搭載したものであれば特に制限されるものではない。
本発明の電子写真装置を適用したカラー画像形成装置について図5の概略構成図を参照して説明する。
図5に示すカラー電子写真装置は、円筒状に張設された誘電体の記録材担持シートからなる転写ドラム705を用いて転写を行う電子写真プロセスを利用したカラー画像形成装置(複写機またはレーザービームプリンター)の一例である。
図5に示すカラー電子写真装置には、上述の基体上に光導電層と表面層とが順次積層され、回転手段(図示せず)により回転される感光体である感光ドラム701が備えられ、感光体ドラム701の周りには、感光体ドラム701の表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる磁気ブラシなどが備えられた1次帯電器702と、帯電された感光体ドラム701の表面に画像露光703を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置されている。画像露光装置には、カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系や、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系などが備えられる。更に、感光体701の周りには、形成された静電潜像上にトナーを付着させて現像する現像器として、ブラックトナーBを付着させる現像器とイエロートナーYを付着させる現像器とマゼンタトナーMを付着させる現像器とシアントナーCを付着させる現像器とを内蔵した回転型の現像器704が配置されている。さらに、転写部材である転写ドラム705にトナー像を転写した後、感光体ドラム701上をクリーニングする感光体クリーナ706、及び、感光体ドラム701の除電を行う除電露光707が設けられている。
転写ドラム705は、感光体ドラム701に当接して回転可能なように配置されており、内側には、感光体ドラム701上に形成されたトナー像を転写ドラム705に静電吸着された記録材713に転写するための転写帯電器708が配備されている。転写帯電器708には感光体ドラム701上のトナー像を転写するための転写バイアスを印加するバイアス電源(不図示)が接続されている。また、記録材713を転写ドラム705に静電吸着させるための吸着帯電器711a、吸着ローラ711bが、転写ドラム705の内側、及び、外側にそれぞれ配置される。また、所望のトナー像を転写ドラム705に静電吸着された記録材713に転写が終了した後、記録材713を転写ドラム705から分離するための分離帯電器712a、分離爪712bが配置されている。
また、この画像形成装置は、画像が形成される複数の記録材713を保持する給紙カセット714と、記録材713を給紙カセット714から転写ドラム705を介して搬送する搬送機構とが設けられている。記録材713の搬送経路上には、記録材713上に転写されたトナー像を記録材713上に定着させる定着器715が配置されている。
次に、この画像形成装置の動作について説明する。
まず、図5に矢印で示すように、感光体ドラム701が、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動され、転写ドラム705が、反時計方向に、感光体ドラム701と同じ周速度で回転駆動される。
感光体ドラム701は、回転過程で、一次帯電器702により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、画像露光703を受け、これにより感光体ドラム701の表面上には、目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばマゼンタ成分像)に対応した静電潜像が形成される。次いで、現像器が回転し、マゼンタトナーMを付着させる現像器が所定の位置にセットされ、その静電潜像が第1色であるマゼンタトナーMにより現像される。
一方、所定のタイミングで給紙カセット714から記録材713が給送され、吸着帯電器711a、吸着ローラ711bによって転写ドラム705の外周に記録材713が静電吸着される。そして、感光体ドラム701上に形成担持された第1色のマゼンタトナー像は、感光体ドラム701と転写ドラム705の外周に静電吸着された記録材713との当接ニップ部を通過する過程で、転写帯電器708に印加された電界により記録材713に順次転写される。
記録材713に第1色のマゼンタトナー像を転写し終えた感光体ドラム701の表面は、感光体クリーナ706によりクリーニングされる。次に、感光体ドラム701の清掃された表面上に、第1色のトナー像の形成と同様に、第2色のトナー像(例えばシアントナー像)が形成され、この第2色のトナー像が、第1色のトナー像が転写された記録材713の表面上に重畳転写される。以下同様に、第3色のトナー像(例えばイエロートナー像)、第4色のトナー像(例えばブラックトナー像)が記録材713上に順次重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。
次に、合成カラートナー像が転写された記録材713は、分離帯電器712a、及び、分離爪712bによって、転写ドラム705から分離され、定着器715へと搬送されて、ここで記録材713上にトナー像が加熱定着される。
本画像形成装置の動作において、感光体ドラム701から転写ドラム705上に静電吸着された記録材713への第1〜第4色のトナー像の順次転写実行時には、吸着ローラ711b、及び、分離爪712bは転写ドラム705から離間させるようにしてもよい。
2.中間転写体を用いた電子写真装置
本発明の電子写真装置を適用した、中程度の抵抗の弾性ローラである中間転写体205を用いて転写を行う電子写真プロセスを利用したカラー画像形成装置(複写機またはレーザービームプリンター)について、図6の概略構成図を参照して説明する。
図6に示すカラー画像形成装置には、上述の基体上に光導電層と表面層とが順次積層され、回転機構(図示せず)により回転される感光体である感光ドラム201が備えられ、感光体ドラム201の周りには、感光体ドラム201の表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる磁気ブラシなどが備えられた一次帯電器202と、帯電された感光体ドラム201の表面に画像露光203を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置されている。この画像露光装置には、カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系や、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系などが備えられる。また、形成された静電潜像上にトナーを付着させて現像する現像器として、マゼンタトナーMを付着させる第1現像器204aと、シアントナーCを付着させる第2現像器204bと、イエロートナーYを付着させる第3現像器204cと、ブラックトナーBを付着させる第4現像器204dとが配置されている。さらに、転写部材である中間転写体205にトナー像を転写した後、感光体ドラム201上をクリーニングする感光体クリーナ206、及び、感光体ドラム201の除電を行う除電露光207が設けられている。
中間転写体205は、感光体ドラム201に当接して回転可能なように配置されており、パイプ状の芯金205aと、芯金205aの外周面に形成された弾性層205bとを有している。芯金205aには、感光体ドラム201上に形成されたトナー像を中間転写体に転写するための一次転写バイアスを印加するバイアス電源が接続されている。バイアス電源からは、トナーとは逆極性(+)の、例えば+2kV〜+5kVの範囲の電圧が印加される。中間転写体205の周りには、中間転写体205に転写されたトナー像を記録材213にさらに二次転写するための二次転写ローラ209が、中間転写体205の回転軸に平行に軸支されて中間転写体205の下面部に接触するように設けられている。二次転写ローラ209には、中間転写体205上のトナー像を記録材213に転写するための二次転写バイアスを印加するバイアス電源が接続されている。また、中間転写体205上のトナー像を記録材213に転写した後、中間転写体205の表面上に残留した転写残トナーをクリーニングするための中間転写体クリーナ210が設けられている。
また、この画像形成装置は、画像が形成される複数の記録材213を保持する給紙カセット214と、記録材213を給紙カセット214から中間転写体205と二次転写ローラ209との当接ニップ部を介して搬送する搬送機構とが設けられている。記録材213の搬送経路上には、記録材213上に転写されたトナー像を記録材213上に定着させる定着器215が配置されている。
次に、この画像形成装置の動作について説明する。
まず、図6に矢印で示すように、感光体ドラム201が、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動され、中間転写体205が、反時計方向に、感光体ドラム201と同じ周速度で回転駆動される。
感光体ドラム201は、回転過程で、一次帯電器202により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、画像露光203を受け、これにより感光体ドラム201の表面上には、目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばマゼンタ成分像)に対応した静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像が第1現像器204aにより第1色であるマゼンタトナーMにより現像される。このとき、第2現像器204b、第3現像器204c、第4現像器204dは、作動オフになっていて感光体ドラム201には作用せず、第1色のマゼンタトナー像に影響を与えることはない。
このようにして、感光体ドラム201上に形成担持された第1色のマゼンタトナー像は、感光体ドラム201と中間転写体205とのニップ部を通過する過程で、バイアス電源から印加される一次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体205外周面に順次中間転写される。
中間転写体205に第1色のマゼンタトナー像を転写し終えた感光体ドラム201の表面は、感光体クリーナ206によりクリーニングされる。次に、感光体ドラム201の清掃された表面上に、第1色のトナー像の形成と同様に、第2色のトナー像(例えばシアントナー像)が形成され、この第2色のトナー像が、第1色のトナー像が転写された中間転写体205の表面上に重畳転写される。以下同様に、第3色のトナー像(例えばイエロートナー像)、第4色のトナー像(例えばブラックトナー像)が中間転写体205上に順次重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。
次に、給紙カセット214から中間転写体205と二次転写ローラ209との当接ニップ部に所定のタイミングで記録材213が給送され、二次転写ローラ209が中間転写体205に当接されると共に、二次転写バイアスがバイアス電源から二次転写ローラ209に印加されることにより、中間転写体205上に重畳転写された合成カラートナー像が、第2の画像担持体である記録材213に転写される。記録材213へのトナー像の転写終了後、中間転写体205上の転写残トナーは中間転写体クリーナ210によりクリーニングされる。トナー像が転写された記録材213は定着器215に導かれ、ここで記録材213上にトナー像が加熱定着される。
本画像形成装置の動作において、感光体ドラム201から中間転写体205への第1〜第4色のトナー像の順次転写実行時には、二次転写ローラ209および中間転写体クリーナ210は中間転写体205から離間させるようにしてもよい。
このような中間転写体を用いた電子写真によるカラー画像形成装置は、以下に示す特徴を有している。第一に、重ね合わせ時に各色のトナー像の形成位置がずれる色ズレが少ない。また、図6に示すように、記録材213をなんら加工、制御(例えばグリッパーに把持する、吸着する、曲率を持たせるなど)する必要なしに、中間転写体205からトナー像を転写させることができ、記録材213として多種多様なものを用いることができる。例えば、薄い紙(40g/m2紙)から厚い紙(200g/m2紙)までの種々の厚みのものを選択して記録材213として使用可能である。また、幅の広狭または長さの長短によらず種々の大きさのものを記録材213として使用可能である。さらには、封筒、ハガキ、ラベル紙などを記録材213として使用可能である。また、中間転写体205に剛性が優れたものを用いることができ、こうすることにより、繰り返し使用によるへこみ、ひずみ、変形などを抑えて、寸法精度の狂いの発生を抑制でき、さらに、中間転写体205の交換頻度を少なくすることができる。
3.中間転写ベルトを用いた電子写真装置
本発明の電子写真装置を適用した、フィルム状の誘電体ベルトからなる中間転写ベルトを用いて転写を行う電子写真プロセスを利用したカラー画像形成電子写真装置(複写機またはレーザービームプリンター)について、図7の概略構成図を参照して説明する。
図7に示すカラー画像形成電子写真装置には、上述の基体上に光導電層と表面層とが順次積層され、回転機構(図示せず)により回転される感光体である感光体ドラム301が備えられ、感光体ドラム301の周りには、感光体ドラム301の表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる磁気ブラシを備えた1次帯電器302と、帯電された感光体ドラム301の表面に画像露光303を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置されている。この画像露光装置には、カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系や、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系などが備えられる。また、形成された静電潜像上にトナーを付着させて現像する現像器として、ブラックトナーBを付着させる第1現像器304aと、イエロートナーYを付着させる現像器とマゼンタトナーMを付着させる現像器とシアントナーCを付着させる現像器とを内蔵した回転型の第2の現像器304bとが配置されている。さらに、転写 部材である中間転写ベルト305にトナー像を転写した後、感光体ドラム301上をクリーニングする感光体クリーナ306、及び、感光体ドラム301の除電を行う除電露光307が設けられている。
中間転写ベルト305は、感光体ドラム301に当接ニップ部を介して駆動するように配置されており、内側には感光体ドラム301上に形成されたトナー像を中間転写ベルト305に転写するための一次転写ローラ308が配備されている。一次転写ローラ308には、感光体ドラム301上のトナー像を中間転写ベルト305に転写するための一次転写バイアスを印加するバイアス電源(不図示)が接続されている。中間転写ベルト305の周りには、中間転写ベルト305に転写されたトナー像を記録材313にさらに転写するための二次転写ローラ309が、中間転写ベルト305の下面部に接触するように設けられている。二次転写ローラ309には、中間転写ベルト305上のトナー像を記録材313に転写するための二次転写バイアスを印加するバイアス電源が接続されている。また、中間転写ベルト305上のトナー像を記録材313に転写した後、中間転写ベルト305の表面上に残留した転写残トナーをクリーニングするための中間転写ベルトクリーナ310が設けられている。
また、この画像形成装置は、画像が形成される複数の記録材313を保持する給紙カセット314と、記録材313を給紙カセット314から中間転写ベルト305と二次転写ローラ309との当接ニップ部を介して搬送する搬送機構とが設けられている。記録材313の搬送経路上には、記録材313上に転写されたトナー像を記録材313上に定着させる定着器315が配置されている。
次に、この画像形成電子写真装置の動作について説明する。
まず、図7に矢印で示すように、感光体ドラム301が、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動され、中間転写ベルト305が、反時計方向に、感光体ドラム301と同じ周速度で回転駆動される。
感光体ドラム301は、回転過程で、一次帯電器302により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、画像露光303を受け、これにより感光体ドラム301の表面上には、目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばマゼンタ成分像)に対応した静電潜像が形成される。次いで、第2現像器が回転し、マゼンタトナーMを付着させる現像器が所定の位置にセットされ、その静電潜像が第1色であるマゼンタトナーMにより現像される。この時、第1現像器304aは、作動オフになっていて感光体ドラム301には作用せず、第1色のマゼンタトナー像に影響を与えることはない。
このようにして、感光体ドラム301上に形成担持された第1色のマゼンタトナー像は、感光体ドラム301と中間転写ベルト305とのニップ部を通過する過程で、一次転写バイアスがバイアス電源(不図示)から一次転写ローラ308に印加されることによって形成される電界により、中間転写ベルト305外周面に順次中間転写される。
中間転写ベルト305に第1色のマゼンタトナー像を転写し終えた感光体ドラム301の表面は、感光体クリーナ306によりクリーニングされる。次に、感光体ドラム301の清掃された表面上に、第1色のトナー像の形成と同様に、第2色のトナー像(例えばシアントナー像)が形成され、この第2色のトナー像が、第1色のトナー像が転写された中間転写ベルト305の表面上に重畳転写される。以下同様に、第3色のトナー像(例えばイエロートナー像)、第4色のトナー像(例えばブラックトナー像)が中間転写ベルト305上に順次重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。
次に、給紙カセット314から中間転写ベルト305と二次転写ローラ309との当接ニップ部に所定のタイミングで記録材313が給送され、二次転写ローラ309が中間転写ベルト305に当接されると共に、二次転写バイアスがバイアス電源から二次転写ローラ309に印加されることにより、中間転写ベルト305上に重畳転写された合成カラートナー像が、第2の画像担持体である記録材313に転写される。記録材313へのトナー像の転写終了後、中間転写ベルト305上の転写残トナーは中間転写ベルトクリーナ310によりクリーニングされる。トナー像が転写された記録材313は定着器315に導かれ、ここで記録材313上にトナー像が加熱定着される。
本画像形成電子写真装置の動作において、感光体ドラム301から中間転写ベルト305への第1〜第4色のトナー像の順次転写実行時には、二次転写ローラ309および中間転写ベルトクリーナ310は中間転写ベルト305から離間させるようにしてもよい。
このような中間転写ベルトを用いた電子写真によるカラー画像形成電子写真装置は、以下に示す特徴を有している。第一に、重ね合わせ時に各色のトナー像の形成位置がずれる色ズレが少ない。また、図7に示すように、記録材313をなんら加工、制御(例えばグリッパーに把持する、吸着する、曲率を持たせるなど)する必要なしに、中間転写ベルト305からトナー像を転写させることができ、記録材313として多種多様なものを用いることができる。例えば、薄い紙(40g/m2紙)から厚い紙(200g/m2紙)までの種々の厚みのものを選択して記録材313として使用可能である。また、幅の広狭または長さの長短によらず種々の大きさのものを記録材313として使用可能である。さらには、封筒、ハガキ、ラベル紙などを記録材313として使用可能である。
また、中間転写ベルト305は、柔軟性に優れており、感光体ドラム301や記録材313とのニップを自由に設定することができるため、設計の自由度が高く、転写効率などを最適化しやすいといった特徴がある。
4.タンデム方式の電子写真装置
本発明の電子写真装置を適用した、電子写真感光体をタンデム式に配列したカラー画像形成電子写真装置(複写機またはレーザービームプリンター)について、図8の概略構成図を参照して説明する。
図8に示すカラー画像形成装置には、装置本体内にたとえばイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの可視画像を形成することができる第1、第2、第3、第4の画像形成部I、II、III、IVをタンデムに配列している。各画像形成部I〜IVは、それぞれ本発明の電子写真感光体である感光体801a〜dを有し、その周りには、感光体801a〜dの表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる磁気ブラシを備えた1次帯電器802a〜d、帯電された感光体の表面に画像露光803a〜dを行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置、形成された静電潜像上にトナーを付着させて現像する現像器804a〜d、転写部材である中間転写ベルト805にトナー像を転写した後、感光体をクリーニングする感光体クリーナ806a〜d、及び、感光体の除電を行う除電露光807a〜dなどが、それぞれ配置されている。上記画像露光装置としては、カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系や、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系などが用いられる。
中間転写ベルト805は、感光体に当接ニップ部を介して駆動するように配置されており、内側には感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルト805に転写するための一次転写ローラ808a〜dが配備されている。一次転写ローラ808a〜dには、感光体上のトナー像を中間転写ベルト805に転写するための一次転写バイアスを印加するバイアス電源(不図示)が接続されている。中間転写ベルト805の周りには、中間転写ベルト805に転写されたトナー像を記録材813にさらに転写するための二次転写ローラ809が、中間転写ベルト805の下面部に接触するように設けられている。二次転写ローラ809には、中間転写ベルト805上のトナー像を記録材813に転写するための二次転写バイアスを印加するバイアス電源が接続されている。
また、この画像形成装置は、画像が形成される複数の記録材813を保持する給紙カセット814と、記録材813を給紙カセット814から中間転写ベルト805と二次転写ローラ809との当接ニップ部を介して搬送する搬送機構とが設けられている。記録材813の搬送経路上には、記録材813上に転写されたトナー像を記録材813上に定着させる定着器815が配置されている。
次に、この画像形成装置の動作について説明する。
まず、図8に矢印で示すように、感光体801a〜dが、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動され、中間転写ベルト805が、反時計方向に、感光体801a〜dと同じ周速度で回転駆動される。
カラー画像形成を行うには、まず、第一画像形成部Iにおいて、感光体801aは、
回転過程で、一次帯電器802aにより所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、画像露光803aを受け、これにより感光体ドラム801aの表面上には、目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばマゼンタ成分像)に対応した静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像は、現像器804aにより第1色であるマゼンタトナー像として現像される。このようにして、感光体ドラム801a上に形成担持された第1色のマゼンタトナー像は、感光体ドラム801と中間転写ベルト805とのニップ部を通過する過程で、一次転写バイアスがバイアス電源(不図示)から一次転写ローラ808aに印加されることによって形成される電界により、中間転写ベルト805の外周面に順次中間転写される。第2の画像形成部IIにおいても同様な工程が行われ、2色目のたとえばシアントナー像が中間転写ベルト805の外周面に中間転写され、同様な工程を第3、第4の画像形成部III、IVにおいても行うことにより、中間転写ベルト305上に、第3色のトナー像(例えばイエロートナー像)、第4色のトナー像(例えばブラックトナー像)が順次重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。
次に、給紙カセット814から中間転写ベルト805と二次転写ローラ809との当接ニップ部に所定のタイミングで記録材813が給送され、二次転写ローラ809が中間転写ベルト805に当接されると共に、二次転写バイアスがバイアス電源から二次転写ローラ809に印加されることにより、中間転写ベルト805上に重畳転写された合成カラートナー像が、第2の画像担持体である記録材813に転写される。記録材813へのトナー像の転写終了後、中間転写ベルト805上の転写残トナーは中間転写ベルトクリーナ(不図示)によりクリーニングされる。トナー像が転写された記録材813は定着器815に導かれ、ここで記録材813上にトナー像が加熱定着される。
このようなタンデム方式の電子写真によるカラー画像形成装置は、1パスで4色の画像を重ねたカラー画像が得られるため高速でカラー記録を行うのに適している。
次に、以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の電子写真感光体の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1および比較例1]
図3に示したプラズマCVD装置を用い、図1(b)に示した層構成となるように、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、表1、及び、表2に示した条件で、下部阻止層、光導電層、及び、表面層からなる堆積膜を順次積層し、A(実施例1)、B(比較例1)の2種類の層設計に基づく感光体を作製した。表1には共通条件として下部阻止層、光導電層の成膜条件を、表2にはそれぞれ異なる表面層の成膜条件を示した。
このようにして製作した感光体A、Bを、図2に示した電子写真装置の帯電手段にセットし、帯電手段102にプラスの電圧を印加させながら、感光体を回転させて、感光体表面層の磨耗量を測定し、1万回転当たりの磨耗量を算出し、その値をWp(nm/1万回転)とした。続いて、帯電手段102にマイナスの電圧を印加させながら、感光体を回転させて、感光体表面層の磨耗量を測定し、1万回転当たりの磨耗量を算出し、その値をWn(nm/1万回転)とした。磨耗量の測定は、大塚電子製分光測定装置MCPD−2000を使用して反射スペクトルを測定し、表面層材料の屈折率等から表面層厚を算出し、磨耗評価前の膜厚との差で感光体表面層の磨耗量を求め、Wn/Wpを計算した。その結果を表2に示す。
結果から明らかなように、感光体Aと感光体Bは、プラスの電圧を印加させながら回転させたときは、ほぼ同等の磨耗量であるのに対し、マイナスの電圧を印加させながら回転させたときは、明らかに、感光体Aの方が感光体Bよりも磨耗量が少ない結果が得られた。この結果より、感光体の磨耗特性に対しては、接触帯電部材等の摺擦による物理的な磨耗だけでなく、帯電による電気的な作用が関与していることが明らかとなった。実際の電子写真プロセスにおける帯電工程は、一次帯電だけでなく、転写帯電や分離帯電など複数の帯電工程があり、そのいずれかには感光体の帯電極性と逆極性の帯電が行われる場合が普通である。従って、総合的な磨耗特性の良し悪しを評価していくためには、上述の電気的な作用による磨耗までも評価に加えることが重要であり、感光体に対してプラスとマイナスの両極性に対して、磨耗特性を評価することが重要であることが明らかとなった。
Figure 2006133524
Figure 2006133524
[実施例2]
図3に示したプラズマCVD装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、表3に示した条件で堆積膜を順次積層し、図1(b)に示す下部阻止層、光導電層、及び、表面層からなる感光体を製作した。下部阻止層と光導電層は、共通条件として、すべて表3に示した条件で成膜し、表面層に関しては、基体温度を表5に示すように各感光体毎に変化させて成膜し、表面層の構成のみが異なる感光体C〜Eを製作した。表面層成膜時の具体的な基板温度は、表6に示す。
[比較例2]
比較例として、表面層として基体温度を150℃として成膜した他は、実施例2と同様にして感光体Iを製作した。
Figure 2006133524
このようにして製作した感光体C〜E、Iを、図6に示した電子写真装置の帯電手段にセットし、実施例1と同様の方法で、Wp、Wnを求め、それらの値の比を計算した。その結果を表5に示す。また、感光体C〜E、Iの表面層中における実際の窒素原子濃度と酸素原子濃度を、表面をおよそ20nm程度除去することで最表面の影響を取り除いた上でSIMS(二次イオン質量分析法)により分析した。結果を表5に合わせて示す。表5における窒素原子、酸素原子の濃度は、表面層中の平均濃度を表している。
一方、それらの感光体C〜E、Iを、電子写真方式の画像形成装置(キヤノン製電子写真装置iR−6000を実験用に帯電器を磁気ブラシ方式に改造し、帯電極性を変更可能に改造した機械)にセットし、A4コピー紙50万枚の通紙耐久試験を行いながら、所定の間隔にて、感光体のムラ削れと磨耗レートの評価を行った。ムラ削れに関しては、べた黒画像、ハーフトーン画像、べた白、及び、バイアスハーフトーン画像(画像露光を照射しない状態で、現像バイアスを調整して出すハーフトーン)における、濃度均一性によって評価を行い、特に、微視的な帯電不均一や感度不均一によるミクロな濃度ムラにまでも着目して、ムラ削れの評価を行った。通常のモノクロ機に於いては、軽微なムラ削れが発生し、若干の濃度ムラや、所謂「掃きムラ」が発生しても、その程度によっては、実用上問題とはならない場合があった。しかし、更なる高画質を目指した、いわゆる、超ピクトリアルカラー機においては、写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像をプリントアウトする場合が多く、僅かな濃度ムラであっても、画像上で問題となる場合が考えられる。このため、本実施例では、超ピクトリアルカラー機へ搭載するため、より厳しい評価基準によって、評価を行った。また、磨耗レートに関しては、実施例1と同様の方法で測定した表面層厚と、耐久試験開始前の膜厚との差で感光体表面層の磨耗量を求め、評価時点の通紙枚数から、1万枚通紙当たりの磨耗量に換算して求めた数値によって評価を行った。どちらの評価も、SiC系表面層を有する感光体Bをリファレンスドラムとして、以下に示す基準によって、評価を行った。以上の結果についても表5に合わせて示す。
◎:リファレンスに比べて20%以上改善され、非常に良いレベル
○:リファレンスに比べて10%以上改善され、良いレベル
△:リファレンスに比べて10%未満の改善であり、略リファレンスと同等レベル
[実施例3]
直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、表4に示した条件で、堆積膜を順次積層し、図1(c)に示す下部阻止層、光導電層、上部阻止層、及び、表面層からなる感光体を製作した。下部阻止層と光導電層と上部阻止層は、共通条件として、すべて表4に示した条件で成膜し、表面層に関しては、基体温度を表5示すように各感光体毎に変化させて成膜し、表面層の構成のみが異なる感光体F〜Hを製作した。
[比較例3]
比較例として、表面層として基体温度を120℃として成膜した他は、実施例3と同様にして感光体Jを製作した。
Figure 2006133524
作製した感光体F〜Hと、感光体Jとを実施例2と同様にして、帯電下の磨耗量、Wn/Wpの値、表面層における窒素原子および酸素原子の濃度を測定し、ムラ削れ性能、磨耗レート、通紙試験による評価を行った。結果を表5に示す。
Figure 2006133524
結果から明らかなように、Wn/Wpの値とムラ削れは非常によい相関関係にあり、Wn/Wpの値が3以下である感光体C〜Hは、3以上である感光体I、J(比較例2、3)と比較して、ムラ削れ性能に関して10%以上改善でき、磨耗レートに関しては、Wnと相関があり、Wnを0.5nm/1万回転以下にすると、磨耗量そのものが10%以上改善できることがわかった。
[実施例4]
図3に示したプラズマCVD装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、表6に示した条件で堆積膜を順次積層し、図1(b)に示した層構成となるように、下部阻止層、光導電層、及び、表面層からなる堆積膜を順次積層し、感光体を製作した。下部阻止層と光導電層は、共通条件として、すべて表6に示した条件で成膜し、表面層に関しては、SiH4のガス流量、SiH4とN2の混合比、SiH4あたりの電力量を表7に示すように各感光体毎に変化させその他の条件は表6に示した条件で成膜し、表面層中における窒素原子濃度が異なる感光体K〜Pを製作した。
Figure 2006133524
このようにして製作した感光体K〜Pを、実施例2と同様にして、Wn/Wpの値、表面層中における実際の窒素原子濃度と酸素原子濃度、ムラ削れ性能、磨耗レート、通紙試験による評価を行った。結果についても表7に合わせて示す。
また、400〜410nm付近の短波光への適応性を評価するために、感光体K〜Pの分光感度特性を測定した。ここで分光感度特性とは、一定暗部電位から一定明部電位まで光減衰させるのに必要な光量の逆数、即ち、光の単位エネルギー量当たりの電位減衰量を各波長毎に求め、その最大値を有する波長における電位減衰量を100としたときの各波長における電位減衰量を表している。図9にその一例として感光体L分光感度特性の測定結果を示す。感光体K〜Pについて405nmの波長の光に対する感度の値を表7に合わせて示す。更に、図10に、表面層中における窒素原子濃度と405nmの波長の光に対する感度との相関についてプロットしたグラフを示す。
Figure 2006133524
結果から、窒素原子濃度と405nmの光に対する感度との間には、相関が見られ、概ね窒素原子の表面層中における平均濃度が高くなるにつれて、405nmの光に対する感度がよくなり、即ち、400〜410nm付近の短波光に対する適応性が向上する傾向を示すことがわかる。
しかしながら、感光体Kに関しては、波長405nmの光に対する感度が不十分であり、400〜410nm付近の短波光を画像露光光源として用いる電子写真に搭載する場合には、十分な電位コントラストを得ることが困難であった。電子写真プロセスにおいて必要とされる感光体の感度の値に関しては、使用するレーザー素子や光学系の性能に依存するものであり、一概にその絶対値を言及することは難しいが、本発明者らのさまざまな検討の結果、図9に示したような分光感度特性のピーク値で規格化した指標で、30%以上の感度を有することが好ましく、望ましくは40%以上の感度を有することがより好ましい。従って、そのような感度を得るためには、窒素原子濃度を、表面層中における平均値で30atm%以上、より好ましくは35atm%以上が好適であることがわかる。そうすることで、400〜410nm付近の短波光に対しても電子写真プロセスにおいても必要とされる感度を十分有するようになり、青色発光半導体レーザーのような短波長レーザーを画像露光光源として用いる電子写真装置への搭載が可能となり、更なる高画質化を達成できることが明らかとなった。
その一方、感光体Fでは膜厚ムラが大きく、表面層中の窒素原子濃度は、好ましくは70atm%以下、より好ましくは60atm%以下が好適であることがわかった。
[実施例5]
図3に示したプラズマCVD装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、表8に示した条件で堆積膜を順次積層し、図1(c)に示した下部阻止層、光導電層、上部阻止層、及び、表面層からなる感光体を製作した。下部阻止層と光導電層と上部阻止層は、共通条件として、すべて表8に示した条件で成膜し、表面層に関しては、SiH4とNOの混合比を表9に示すように各感光体毎に変化させその他の条件は表8に示した条件で成膜し、表面層中における酸素原子濃度が異なる感光体Q〜Wを製作した。
Figure 2006133524
このようにして製作した感光体を実施例2と同様にして、Wn/Wpの値、表面層中における実際の窒素原子濃度、及び、酸素原子濃度を測定した。結果についても表9に合わせて示す。表9における窒素原子、酸素原子の濃度は、表面層中の平均濃度を表している。
一方、それらの感光体Q〜Wを、iR-6000改造機(キヤノン製電子写真装置iR−6000を実験用に帯電器をマイナス帯電の磁気ブラシ方式に改造し、画像露光方式をIAE方式に改造し、画像露光の光源を発振波長405nmの青色発光半導体レーザーに改造し、ドラム面照射スポット径が調整可能に画像露光の光学系を改造した機械)にセットし、次の評価を行った。
(1)解像度
まず、感光体の解像度を測定するために、1ドット1スペース画像をプリントアウトし、その画像におけるドットの再現性によって解像度の評価を行った。出力画像を光学顕微鏡で拡大観察し、ドットサイズを求め、その数値と画像形成光レーザーのスポットサイズとの比較を行った。画像上で計測したドットサイズとレーザースポット径との差の絶対値をドットの歪みとし、ドットの歪み/レーザースポット径の値によって、感光体の解像度の評価を行った。図11で説明したように、感光体の解像度は、レーザースポット径を絞っていったときのドットの歪みによって、その良し悪しを判断することが可能である。そこで、レーザースポット径を20μmとした場合の、ドットの歪み/レーザースポット径の値に着目し、感光体Q〜Wに対しての解像度測定を行った。得られた結果は、SiC系の表面層を有する感光体Bに、表8に記載の条件の上部電荷注入阻止層を追加した層構成の感光体をリファレンスドラムとし、下記に示す基準によって、各々の感光体の解像度の判定を行った。その評価結果を表9に示す。
ここで、リファレンスドラムに関しては、表面層において400〜410nm付近の波長帯の光に対する吸収が大きく、405nmの青色半導体レーザーに対しては十分な感度が得られなかったため、リファレンスドラムの評価条件は、画像露光の光源を発振波長655nmの赤色半導体レーザーとし、レーザースポット径を30μmとした。レーザースポット径を30μmとした理由は、本実施例の装置構成で655nmのレーザー光に対しては、20μmまでスポット径を絞ることが困難であったため、安定して調整可能であった30μmのスポット径をリファレンス条件とした。
☆:リファレンスに比べて20%以上向上し、極めてよいレベル
◎:リファレンスに比べて10%以上向上し、非常によいレベル
○:リファレンスに比べて5%以上向上し、よいレベル
△:リファレンスに比べて5%未満の向上であり、略リファレンス同等レベル
(2)環境特性
次に、感光体の耐環境特性を評価するため、室温30℃、湿度80%の高温高湿環境実験室に、上記実験用電子写真装置を設置し、A4コピー紙50万枚の通紙耐久試験を行いながら、所定の間隔にて、画像特性の評価を行った。画像特性は、
(1) 画素密度が0%〜100%まで段階的に変化している画像
(2) 5ポイントサイズの文字を配列した画像
の2種類の画像を用いて評価を行った。(1)を用いてドットレベルでのミクロな画像流れの有無を、ハーフトーンの階調性、即ち、画素密度と画像濃度とのリニアリティによって評価し、(2)を用いて文字レベルにおいて確認できる画像流れの有無を評価した。そして更に、以上に説明した高温高湿環境における画像特性評価を、露光光学系を600dpi、1200dpi、2400dpiに調整してそれぞれ行った。以上の測定により得られた結果は、下記に示す基準によって、各々の感光体に対して判定を行った。
◎:耐久期間にわたって、画像流れがまったく発生せず、非常によい
○:耐久が進んだ時に、朝一の機械立上げ直後において、ハーフトーン階調性が低下 する場合があったが、数枚の通紙で完全に回復し、よい
△:耐久が進んだ時に、朝一の機械立上げ直後において、文字レベルで確認できる画像流れが発生する場合があったが、数枚の通紙で完全に回復し、実用は問題なし
Figure 2006133524
結果から明らかなように、酸素原子を添加することで、酸素原子を添加していない場合に比べて解像度が向上していることが確認できる。より具体的には、酸素原子濃度を0.01atm%以上とすることで、リファレンス条件より10%以上解像度が向上し、更に、酸素原子濃度を0.5atm%以上とすることで、リファレンス条件より20%以上解像度が向上することがわかる。
その一方で、酸素原子濃度が高くなりすぎると、高温高湿環境における画像流れが発生し易くなる傾向を示すことがわかった。即ち、本実施例における実験の結果では、600dpiの場合においては、酸素濃度によらず全ての感光体で、高温高湿流れはまったく発生しなかったが、1200dpiや2400dpiにし、より高画質を狙った条件においては、酸素濃度が高くなったときに、高温高湿流れの評価ランク低下が認められた。この結果より、酸素濃度の好適な範囲としては上限があり、好ましくは20atm%以下、より好ましくは10atm%以下が好適であることがわかった。
[実施例6]
図3に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、表10に示した条件で堆積膜を成膜し、図1(b)に示す下部阻止層、光導電層、及び、表面層からなる感光体を製作した。
Figure 2006133524
このようにして製作した感光体を、実施例2と同様の方法で、磨耗量Wn、Wp、表面層中における実際の窒素原子濃度、及び、酸素原子濃度を測定した。磨耗量Wn、Wp、Wn/Wpの値については表11に示す。表面層中における窒素原子濃度、及び、酸素原子濃度は平均濃度で、
N/(Si+N) : 52 atm%
O/(Si+N+O): 1.2 atm%
であった。
一方、電子写真装置としては、図7に示した構成の電子写真装置を準備した。帯電手段には、磁気ブラシ方式の帯電器を使用し、極性はプラス帯電とした。また、画像露光の光には波長655nmの赤色発光半導体レーザーを使用した。また、一次帯電の極性がプラス帯電であるため、画像露光方式は、非画像部(背景部)を露光するバックグラウンド露光方式(以下、BAE方式という。)とし、トナーはネガトナーを使用した。このようなBAE方式では、現像機構、クリーニング機構、現像剤等をアナログ方式の電子写真装置と共通化できる。
この電子写真装置に、作製した感光体をセットし、電位特性、画像特性、耐久特性などの評価を行った。
電位特性に関しては、帯電特性、感光特性とも十分に良好な特性が得られた。初期画像特性における画質に関しては、孤立ドットの再現性、細線の再現性、階調性、濃度の均一性に関して、十分に良好な特性が得られ、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像に関しても、十分に良好な画像を得ることができた。また、A4紙300万枚を通紙しての耐久試験の結果、初期とまったく同等の非常に良好な画像が得られ、感光体の磨耗ムラによる濃度ムラは一切発生しなかった。
[比較例4]
また、比較例として、感光体Bと同じ表面層とした他は、実施例6と同様に作製した感光体を用いて、実施例6と同様に評価を行った。
耐磨耗性の評価結果に関しては、表11に実施例6の結果と合わせて示す。そして、実施例6で使用した電子写真装置にセットし、実施例6と同様の方法において、電位特性、画像特性、耐久特性などの評価を行った。
電位特性に関しては、帯電特性、感光特性とも十分に良好な特性が得られた。初期画像特性における画質に関しては、孤立ドットの再現性、細線の再現性、階調性、濃度の均一性に関して、十分に良好な特性が得られ、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像に関しても、十分に良好な画像を得ることができた。しかしながら、A4紙300万枚を通紙しての耐久試験の結果、モノクロ画像のような単色画像においては、ほとんどわからない軽微なレベルであったが、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像において、識別できるレベルの、スジ削れに起因する濃度ムラが、若干発生した。
Figure 2006133524
以上から明らかなように、本実施例の感光体を用いることによって、接触帯電方式の帯電器を使用し、感光体の耐磨耗性に関して厳しい構成の電子写真装置においても、カラー写真画像のような高い品質が要求される画質レベルを、長期間にわたって高いレベルで維持できること明らかとなった。
[実施例7]
図4に示したプラズマCVD装置を用い、図1(c)に示した層構成となるように、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、表12に示した条件で堆積膜を順次積層し、図1(c)に示す下部阻止層、光導電層、上部阻止層、及び、表面層からなる感光体を製作した。
Figure 2006133524
このようにして製作した感光体について、実施例2と同様の方法で、Wn/Wpの値を求めた。その結果を表11に示す。また、製作した感光体の表面層中における実際の窒素原子濃度、及び、酸素原子濃度を実施例2と同様の方法で分析した結果、表面層中における平均濃度で、
N/(Si+N) : 48 atm%
O/(Si+N+O): 4.6 atm%
であった。
一方、電子写真装置としては、図6に示した構成の電子写真装置を準備した。帯電手段には、磁気ブラシ方式の帯電器を使用し、極性はマイナス帯電とした。また、画像露光の光には波長655nmの赤色発光半導体レーザーを使用した。また、一次帯電の極性がマイナス帯電であるため、画像露光方式は、画像部を露光するイメージエリア露光方式(以下、IAE方式という。)とし、トナーはネガトナーを使用した。このようなIAE方式では、画像部に直接露光をする方式であるため、潜像形成のラティテュードが広く、高画質化という観点では有利な方式である。
この電子写真装置に、作製した感光体をセットし、電位特性、画像特性、耐久特性などの評価を行った。
電位特性に関しては、帯電特性、感光特性とも十分に良好な特性が得られた。初期画像特性における画質に関しては、孤立ドットの再現性、細線の再現性、階調性、濃度の均一性に関して、十分に良好な特性が得られ、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像に関しても、十分に良好な画像を得ることができた。また、A4紙300万枚を通紙しての耐久試験の結果、初期とまったく同等の非常に良好な画像が得られ、感光体の磨耗ムラによる濃度ムラは一切発生しなかった。
[比較例5]
また、比較例として、感光体Bと同じ表面層とした他は、実施例7と同様に感光体を作製しこれを用いて、実施例7と同様の評価を行った。
耐磨耗性の評価結果に関しては、表11に実施例7の結果と合わせて示す。そして、実施例7と同様の方法において、電位特性、画像特性、耐久特性などの評価を行った。
電位特性に関しては、帯電特性、感光特性とも十分に良好な特性が得られた。初期画像特性における画質に関しては、孤立ドットの再現性、細線の再現性、階調性、濃度の均一性に関して、十分に良好な特性が得られ、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像に関しても、十分に良好な画像を得ることができた。しかしながら、A4紙300万枚を通紙しての耐久試験の結果、モノクロ画像のような単色画像においては、ほとんどわからない軽微なレベルであったが、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像において、識別できるレベルの、スジ削れに起因する濃度ムラが、若干発生した。
以上から明らかなように、実施例7の感光体を用いることによって、接触帯電方式の帯電器を使用し、感光体の耐磨耗性に関して厳しい構成の電子写真装置においても、カラー写真画像のような高い品質が要求される画質レベルを、長期間にわたって高いレベルで維持できること明らかとなった。
更に、実施例7の構成の電子写真装置においては、帯電器の極性をマイナス帯電とし、画像露光方式にIAE方式を用いているため、特に、孤立ドット再現の安定性やドットサイズを小さくしていった場合のドット再現性などの点で、実施例6の構成よりも画質を向上させることができた。
[実施例8]
図3に示したプラズマCVD装置を用い、直径108mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、表13に示す条件で堆積膜を成膜し、図1(c)に示す下部阻止層、光導電層、上部阻止層、及び、表面層からなる感光体を製作した。
このようにして製作した感光体を、実施例2と同様の方法で、Wn/Wpの値を求めた。その結果を表11に示す。また、製作した感光体の表面層中における実際の窒素原子濃度、及び、酸素原子濃度を、実施例2と同様の方法で測定した。表面層中における平均濃度で、
N/(Si+N) : 58 atm%
O/(Si+N+O): 0.7 atm%
であった。
一方、電子写真装置としては、図5に示した構成の電子写真装置を準備した。帯電手段には、磁気ブラシ方式の帯電器を使用し、帯電後の電位を均一化する効果をより高める為に、そのような磁気ブラシを2本配備する構成の帯電器を使用した。また、画像露光の光には波長405nmの青色発光半導体レーザーを使用し、レーザースポットサイズを1200dpiに相当する約25μmとし、更なる高解像な画像が得られる構成とした。また、一次帯電の極性をマイナス帯電とし、画像露光方式は、IAE方式とし、トナーはネガトナーを使用した。
この電子写真装置に、作製した感光体をセットし、電位特性、画像特性、耐久特性などの評価を行った。
電位特性に関しては、帯電特性、感光特性とも十分に良好な特性が得られ、本実施例の感光体は、380nm〜500nmの比較的短い波長帯の光に対して、十分な感度を有していた。初期画像特性における画質に関しては、孤立ドットの再現性、細線の再現性、階調性、濃度の均一性に関して、十分に良好な特性が得られ、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像に関しても、十分に良好な画像を得ることができた。また、A4紙300万枚を通紙しての耐久試験の結果、初期とまったく同等の非常に良好な画像が得られ、感光体の磨耗ムラによる濃度ムラは一切発生しなかった。
[比較例6]
また、比較例として、感光体Bと同じ表面層とした他は、実施例8と同様に感光体を作製し、これを用いて、実施例8と同様に評価を行った。
耐磨耗性の評価結果に関しては、表11にあわせて示す。実施例8と同様の方法において、電位特性、画像特性、耐久特性などの評価を行った。
電位特性に関しては、帯電特性は十分に良好な特性が得られたが、感光特性に関しては、波長405nmの光に対するSiC表面層の吸収が大きく、電子写真に用いるのに十分な感度が得られなかった。
そこで、耐磨耗性に関する評価を行うために、露光系の条件だけ変更し、画像露光に用いる光の光源を655nmのレーザーに改造し、画像特性の評価を行った。その結果、初期画像特性における画質に関しては、孤立ドットの再現性、細線の再現性、階調性、濃度の均一性に関して、十分に良好な特性が得られ、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像に関しても、十分に良好な画像を得ることができた。しかしながら、A4紙300万枚を通紙しての耐久試験の結果、モノクロ画像のような単色画像においては、ほとんどわからない軽微なレベルであったが、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像において、識別できるレベルの、スジ削れに起因する濃度ムラが、若干発生した。
以上から明らかなように、実施例8の感光体を用いることによって、接触帯電方式の帯電器を使用し、感光体の耐磨耗性に関して厳しい構成の電子写真装置においても、カラー写真画像のような高い品質が要求される画質レベルを、長期間にわたって高いレベルで維持できること明らかとなった。
更に、実施例8の感光体は、380nm〜500nmの波長帯の光に対して、十分な感度を有しており、露光系の光源に青色発光半導体レーザーを用いた電子写真装置に搭載することが可能である。このため、レーザースポット径を小径化でき、実施例7の構成よりも、更に画質を向上させることができた。
[実施例9]
直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を用いた他は、実施例8と同様にして、表13に示した条件で堆積膜を順次積層し、図1(c)に示す下部阻止層、光導電層、上部阻止層、及び、表面層からなる感光体を製作した。
Figure 2006133524
このようにして製作した感光体を実施例1と同様の方法で、Wn/Wpの値を測定した。その結果を表11に示す。また、製作した感光体の表面層中における実際の窒素原子濃度、及び、酸素原子濃度を、実施例8と同様の方法で測定した。表面層中における平均濃度で、
N/(Si+N) : 55 atm%
O/(Si+N+O): 2.1 atm%
であった。
一方、電子写真装置としては、図8に示した構成の電子写真装置を準備した。帯電手段には、磁気ブラシ方式の帯電器を使用し、帯電後の電位を均一化する効果をより高める為に、そのような磁気ブラシを2本配備する構成の帯電器を使用した。また、画像露光の光には波長405nmの青色発光半導体レーザーを使用し、レーザースポットサイズを1200dpiに相当する約25μmとし、更なる高解像な画像が得られる構成とした。また、一次帯電の極性をマイナス帯電とし、画像露光方式は、IAE方式とし、トナーはネガトナーを使用した。
この電子写真装置に、作製した感光体をセットし、電位特性、画像特性、耐久特性などの評価を行った。
電位特性に関しては、帯電特性、感光特性とも十分に良好な特性が得られ、本実施例の感光体は、380nm〜500nmの比較的短い波長帯の光に対して、十分な感度を有していた。初期画像特性における画質に関しては、孤立ドットの再現性、細線の再現性、階調性、濃度の均一性に関して、十分に良好な特性が得られ、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像に関しても、十分に良好な画像を得ることができた。また、A4紙300万枚を通紙しての耐久試験の結果、初期とまったく同等の非常に良好な画像が得られ、感光体の磨耗ムラによる濃度ムラは一切発生しなかった。
[比較例7]
また、比較例として、感光体Bと同じ表面層とした他は、実施例9と同様に感光体を作製し、これを用いて、実施例9と同様の評価を行った。
耐磨耗性の評価結果に関しては、表11にあわせて示す。実施例9と同様の方法において、電位特性、画像特性、耐久特性などの評価を行った。
電位特性に関しては、帯電特性は十分に良好な特性が得られたが、感光特性に関しては、波長405nmの光に対するSiC表面層の吸収が大きく、電子写真に用いるのに十分な感度が得られなかった。
そこで、耐磨耗性に関する評価を行うために、露光系の条件だけ変更し、画像露光に用いる光の光源を655nmのレーザーに改造し、画像特性の評価を行った。その結果、初期画像特性における画質に関しては、孤立ドットの再現性、細線の再現性、階調性、濃度の均一性に関して、十分に良好な特性が得られ、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像に関しても、十分に良好な画像を得ることができた。しかしながら、A4紙300万枚を通紙しての耐久試験の結果、モノクロ画像のような単色画像においては、ほとんどわからない軽微なレベルであったが、カラー写真画像のような微妙な濃淡差の再現性が要求される画像において、識別できるレベルの、スジ削れに起因する濃度ムラが、若干発生した。
以上から明らかなように、実施例9の感光体を用いることによって、接触帯電方式の帯電器を使用し、感光体の耐磨耗性に関して厳しい構成の電子写真装置においても、カラー写真画像のような高い品質が要求される画質レベルを、長期間に亘って高いレベルで維持できること明らかとなった。
更に、実施例9の感光体は、380nm〜500nmの波長帯の光に対して、十分な感度を有しており、露光系の光源に青色発光半導体レーザーを用いた電子写真装置に搭載することが可能である。このため、レーザースポット径を小径化でき、実施例7の構成よりも、更に画質を向上させることができた。
更に、本実施例の電子写真装置は、電子写真感光体、および、それを中心とした画像形成部を4式配備した、タンデム方式の電子写真装置であり、1パスで4色の画像を重ねたカラー画像を得ることが可能であり、実施例8の構成よりも高速化が達成される。
(a)本発明の電子写真感光体の一実施例を示す概略模式図である。(b)本発明の電子写真感光体の一実施例を示す概略模式図である。(c)本発明の電子写真感光体の一実施例を示す概略模式図である。(d)本発明の電子写真感光体の一実施例を示す概略模式図である。 本発明の電子写真感光体が適用される帯電手段を示す概略構成図である。 本発明の電子写真感光体の製造に用いるRF帯高周波使用のプラズマCVD装置を示す概略構成図である。 (a)本発明の電子写真感光体の製造に用いるVHF帯高周波使用のプラズマCVD装置を示す概略断面構成図である。(b)(a)に示す概略断面構成図のAA´における断面図である。 本発明の電子写真装置を示す概略構成図である。 本発明の電子写真装置を示す概略構成図である。 本発明の電子写真装置の他の例を示す概略構成図である。 本発明の電子写真装置の他の例を示す概略構成図である。 本発明の電子写真感光体の各波長に対する分光感度特性の測定結果の一例を表すグラフである。 本発明の電子写真感光体の表面層中における窒素原子濃度と波長405nmの光に対する感度との相関を測定した結果を表すグラフである。 本発明の電子写真感光体のドット径とレーザー光のスポット径との関係を示す図である。
符号の説明
10、11、12、13、21・・・電子写真感光体
101・・・基体
102・・・光導電層
103・・・表面層
105・・・上部電荷注入阻止層
106・・・組成傾斜層
204a〜204d、304a、304b、704・・・現像手段
205、305、705、805・・・転写手段

Claims (12)

  1. 基体と、該基体上に順次設けられた光導電層と、表面層とを有する電子写真感光体において、
    感光体を回転させる回転手段および表面層に当接する導電性の接触体を有する帯電手段を備えた電子写真装置に搭載されたとき、
    表面層の磨耗に伴う層の厚さの減少につき、式(1)
    Wn≦Wp×3 (1)
    (式中、Wpは、接触体をプラスの電圧を印加したときの感光体の1万回転当たりの磨耗量 [nm/1万回転]を示し、
    Wnは、接触体をマイナスの電圧を印加したときの感光体の1万回転当たりの磨耗量 [nm/1万回転]を示す。)
    で表される関係を有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記導電性の接触体は、磁性部材表面に電圧を印加した導電性磁性粒子を保持した磁気ブラシであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記感光体は、少なくとも380〜500nmの波長の光に感度を有し、前記光導電層が、シリコン原子を母体とし、水素原子および/またはハロゲン原子を含有する非単結晶材料からなり、
    前記表面層が、シリコン原子と窒素原子を母体とし、酸素原子を含有する非単結晶材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記表面層が、式(2)
    0.3≦N/(Si+N)≦0.7 (2)
    (式中、Nは窒素原子の数を示し、Siはシリコン原子の数を示す。)で表される平均濃度として窒素原子を含有することを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. 前記表面層が、式(3)
    0.0001≦O/(Si+N+O)≦0.2 (3)
    (式中、Nは窒素原子の数を示し、Siはシリコン原子の数を示し、Oは酸素原子の数を示す。)で表される平均濃度として酸素原子を含有することを特徴とする請求項3または4に記載の電子写真感光体。
  6. 前記光導電層と前記表面層との間に、シリコン原子と窒素原子を母体とし、周期表第13族元素を含む非単結晶材料からなる上部注入阻止層を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
  7. 前記光導電層と前記表面層との間に、シリコン原子と窒素原子を母体とし、厚さ方向の単位長さ当たりに含有されるシリコン原子の数Siに対する、厚さ方向の単位長さ当たりに含有される窒素原子の数Nの比N/Siの値が、表面層に向かって増加するようにシリコン原子および窒素原子を含有する変化層を有することを特徴とする、請求項の3〜6のいずれかに記載の電子写真感光体。
  8. 請求項1〜7のいずれか記載の電子写真感光体と、回転手段により回転される感光体に、印加した導電性の接触体を接触し感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電した感光体の表面に画像パターンにしたがって光ビームを照射して静電潜像を形成する画像露光手段と、静電潜像が形成された表面上にトナーを付着させトナー像を形成する現像手段と、現像されたトナー像を感光体表面から転写部材上に転写する転写手段とを有し、転写部材上において複数色のトナー像を重畳することによってカラー画像を形成することを特徴とする電子写真装置。
  9. 請求項1〜7のいずれか記載の電子写真感光体と、回転手段により回転される感光体に、印加した導電性の接触体を接触し感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電した感光体の表面に画像パターンにしたがって光ビームを照射して静電潜像を形成する画像露光手段と、静電潜像が形成された表面上にトナーを付着させトナー像を形成する現像手段とを有する画像形成部が複数並列に配置されて設けられ、各画像形成部で現像されたトナー像を転写部材上に重畳して転写する転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
  10. 前記帯電手段が、磁性部材と、磁性部材表面に保持され、電圧が印加される導電性磁性粒子とを有する磁気ブラシを感光体に接触させる帯電手段であることを特徴とする請求項8または9に記載の電子写真装置。
  11. 前記帯電手段がマイナス帯電方式であり、前記画像露光が画像部分を露光するイメージエリア露光方式であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の電子写真装置。
  12. 前記画像露光手段が380nm以上、500nm以下の波長の光ビームを用いることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の電子写真装置。
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