JP3929037B2 - 感光体製造方法、および電子写真感光体、およびそれを用いた電子写真装置 - Google Patents

感光体製造方法、および電子写真感光体、およびそれを用いた電子写真装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体の製造方法及びその電子写真感光体、並びに電子写真装置に関する。具体的には、電子写真感光体表面に露出する突起の存在に起因する画像欠陥および電子写真画像形成工程中の感光体表面のクリーニング工程における弊害・不具合の発生を防止する改良が施された感光体と、かかる感光体を製造する方法、さらには、かかる感光体として、画像欠陥ならびにクリーニング工程における弊害・不具合の発生を防止する電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、ファクシミリ、プリンターなどの電子写真装置では、先ず、導電性の円筒状基体表面に光導電層を設けた感光体の外周面をコロナ帯電等の帯電手段を用いて一様に帯電させる。次いで、被複写体の被複写像を、反射光あるいは変調信号に応じたレーザー光やLED光を用いて、感光体表面の露光を行い、前記感光体の外周面上に静電潜像を形成する。さらに、該感光体上にトナーを付着させることでこの静電潜像よりトナー像を形成し、トナー像を複写用紙などに転写することで複写(画像形成)が行なわれる。このようにして電子写真装置で複写を行った後には感光体の外周面上にトナーが一部残留しているため、次回の複写工程に進む前にこの残留トナーを除去する必要がある。かかる残留トナー除去は、クリーニングブレード、ファーブラシ、マグネットブラシ等を用いたクリーニング装置によって行うのが一般的である。クリーニングに関して特開平3−107983号公報には、クリーニングブレードの先端に摩擦を軽減する為にフッ素樹脂系粉末等の滑性に富む物質を付着させ摩擦を軽減する技術が開示されている。
【0003】
また、電子写真感光体として用いる材料には、水素やハロゲン原子等の一価の元素でダングリングボンドが修飾されたアモルファスシリコン(以後、「a−Si」と表記する)があり、例えば特開昭54−86341号公報には電子写真用感光体への応用が記載されている。
【0004】
従来、導電性基体上にa−Siからなる電子写真用感光体を形成するための形成方法として、スパッタリング法、熱により原料ガスを分解する方法(熱CVD法)、光により原料ガスを分解する方法(光CVD法)、プラズマにより原料ガスを分解する方法(プラズマCVD法)等、多数知られている。なかでもプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを高周波(RF波、VHF波)マイクロ波などのグロー放電によって分解し、導電性基体上に堆積膜を形成する方法は電子写真感光体の形成方法等、現在実用化が非常に進んでいる。
【0005】
このような堆積膜の層構成として、従来から行われてきたa−Siを母体とし、適宜修飾元素を添加した電子写真感光体に加えて、更に表面側に阻止能を持った、いわゆる表面保護層や上部阻止層を積層する構成も提案されている。
【0006】
例えば、特開平8−15882号公報では、光導電層と表面保護層との間に、炭素原子の含有量を表面保護層より減らし、伝導性を制御する原子を含有させた上部阻止層を設けた電子写真感光体が開示されている。
【0007】
一方、近年では、より高い周波数の高周波電源を用いたプラズマCVD法の報告(Plasma Chemistry and Plasma Processing, Vol.7, No.3, (1987),p267−273)があり、そこには放電周波数を従来の13.56MHzより高くすることで、堆積膜の性能を落とさずに堆積速度を向上させることができる可能性が示されており、注目されている。この方法により、製品の低コスト化および高品質化を同時に達成しうるものとして期待される。
【0008】
例えば特開平6−287760にはa−Si系電子写真用光受容部材形成に用いうるVHF帯の周波数を用いたPCVDの装置および方法が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の電子写真感光体製造方法により、ある程度実用的な特性と均一性を持つ電子写真感光体を得ることが可能になった。また真空反応容器内の清掃を厳格に行えば、ある程度欠陥の少ない電子写真感光体を得ることは可能である。しかし、これら従来の電子写真感光体の製造方法では、電子写真用感光体のように大面積で比較的厚い堆積膜が要求される製品については、例えば均一膜質で光学的及び電気的諸特性の要求を満足し、かつ電子写真プロセスにより画像形成時に画像欠陥の少ない堆積膜を高収率で得るのは難しいという解決すべき問題が残存している。
【0010】
特に、a−Si膜は基体表面に数μmオーダーのダストが付着していた場合、成膜中にそのダストを核として異常成長、いわゆる「球状突起」が成長してしまうという性質を持っている。球状突起はダストを起点とした円錐形を逆転させた形をしており、正常堆積部分と球状突起部分の界面では局在準位が非常に多いために低抵抗化し、帯電電荷が界面を通って基体側に抜けてしまうという性質を持っている。このため、球状突起のある部分は、画像上では反転現像方式の場合、べた白画像に黒い点となって現れる。このいわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥は年々規格が厳しくなっており、大きさによってはA3用紙に数個存在していても不良として扱われることがある。また、カラー複写機に搭載される場合にはさらに規格は厳しくなり、A3用紙に1個存在していても不良となる場合がある。
【0011】
この球状突起は、ダストを起点としているため、使用する基体は成膜前に精密に洗浄され、成膜装置に設置する行程は全てクリーンルームあるいは真空下で作業が行われる。このようにして、成膜開始前に基体上に付着するダストは極力少なくするよう努力されてきており、効果を上げてきた。しかし、球状突起の発生原因は基体上に付着したダストのみではない。すなわち、a−Si感光体を製造する場合、要求される膜厚が数μmから数10μmと非常に厚いため、成膜時間は数時間から数十時間に及ぶ。この間に、a−Si膜は基体のみではなく、成膜炉壁や成膜炉内の構造物にも堆積する。これらの炉壁、構造物は基体のように管理された表面を有していないため、場合によっては密着力が弱く、長時間に渡る成膜中に膜剥がれを起こす場合があった。成膜中にわずかでも剥がれが発生すると、それがダストとなり、堆積中の感光体表面に付着し、これが起点となって球状突起の異常成長が発生してしまう。従って、高い歩留まりを維持していくためには、成膜前の基体の管理のみならず、成膜中における成膜炉内の膜剥がれの防止についても慎重な管理が必要とされ、a−Si感光体の製造を難しいものにしていた。
【0012】
一方、電子写真装置において、a−Si感光体の表面状態によっては、表面の粗さや上述した球状突起等に起因したクリーニングブレードの損傷や、使用初期の段階で感光体とクリーニングブレードとの滑り性が良すぎる為、現像剤(トナー)のすり抜け等のクリーニング不良が発生し、画像上に黒スジが生じる場合があった。
【0013】
この様な不具合に対応する為、感光体の表面状態に対応してブレードの材質、当接圧力、現像剤の組成などを注意深く設定し、例えば、初期ブレードの当接圧を高めに設定し徐々に低くする、等の対応である程度は低減できる。しかし、長期にわたって使用し、画像の品質向上のためにはメンテナンスの回数が増加し、更にはメンテナンスが複雑なものになる為に、電子写真装置の稼働率を十分に向上することができず、部品点数が増加するなどの新たな不具合が発生する場合があった。
【0014】
また、感光体の表面状態とクリーニングブレードとの状態によっては、電子写真装置を長期間に渡り使用していると、感光体が回転するに従って徐々にクリーニングブレードに捲れが発生し、トナーを十分にクリーニングできない場合があった。
【0015】
また、ハロゲン光を光源とするアナログシステムでは層界面での反射による干渉模様が画像に現れることは少ないが、デジタルシステムの場合にはレーザーに代表される可干渉光を光源として用いるために、多層構造を有する感光体の層界面での反射によって干渉模様が画像上で観測されることがある。
【0016】
また、a−Si感光体の製造方法に関して、VHF帯の周波数によるプラズマCVD法では、RF帯を用いた場合よりも堆積膜速度を大幅に向上させることが可能となるが、表面性に関して、製造条件によってはRF帯で作製した感光体表面に比べて表面状態が微視的視野レベル(サブミクロンオーダー)で粗くなる場合がある。その為、VHF帯で作製した感光体は、クリーニングブレードの損傷やトナーのすり抜け等のクリーニング不良が発生しやすくなる場合があり、不具合に対応するためのラチチュードが狭いものとなる場合があった。
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するもので、本発明の目的は、感光体の表面状態しいては発生する突起に付随する上述の弊害を無くし、より高い信頼性を有する電子写真用感光体及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の最終的な目的は、かかるより高い信頼性を有する電子写真用感光体を利用する電子写真装置を提供することにある。より具体的には、光導電層のa−Si膜形成に際して、感光体の表面状態しいては発生する突起に起因する画像欠陥およびクリーニング不良の発生も回避できる構造を持つ電子写真用感光体及びその製造方法、並びに電子写真装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非単結晶材料からなる層を含む電子写真感光体の製造方法において、
第1ステップとして、排気手段と原料ガス供給手段を備えた真空気密可能な成膜炉内に導電性の表面を有する円筒状基体を設置し、少なくとも原料ガスを高周波電力により分解し、該基体上に少なくとも、非単結晶材料からなる第1の層を堆積する工程と、
第2ステップとして、該第1の層を堆積した基体を、一旦成膜炉から取り出す工程と、
第3ステップとして、該第1の層を堆積した基体最表面を、10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下になるように研磨加工を施す工程と、
第4ステップとして、排気手段と原料ガス供給手段を備えた真空気密可能な成膜炉内で少なくとも原料ガスを高周波電力により分解し、該第1の層上に非単結晶材料を含む第2の層を再び堆積させる工程と
を有し、
前記第1の層の少なくとも最表面が、少なくともシリコン原子と炭素原子を母材とし、さらに水素原子及び/またはハロゲン原子を含有する非結晶質材料からなる層を有し、かつ
前記第2の層は、少なくともシリコン原子と炭素原子を母材とし、水素原子および/またはハロゲン原子を含有する非単結晶材料からなる表面保護層を有する
ことを特徴とする。
【0019】
第1ステップにおいて堆積速度が早くかつ多数本同時生産が可能なVHF帯を採用したプラズマCVD方式を採用し、第4ステップにおいて堆積膜速度が遅く密着性が良いRF帯を採用したプラズマCVD方式を採用することがコストと感光体特性の両面からより好ましい。
【0020】
第3ステップにおいて、前記第1の層を堆積した膜表面に加工を施す工程は、研磨加工であることが好ましい。その際、研磨工程が、前記第1ステップにおいて堆積された第1の層の表面に研磨テープを弾性ゴムローラを用いて当接させ、前記円筒状基体とともに回転される第1の層表面の回転移動速度と、前記研磨テープを当接させる弾性ゴムローラの回転移動速度との間に、相対的な速度差を設けることによりなされることがより好ましい。
【0021】
また、前記第4ステップに進む前に加工を施した第1の層表面を水と接触させ、洗浄する処理が施されることが好ましく、更には第4ステップであらかじめ前記第1の層の表面をプラズマエッチングした後に、第2の層を堆積させることが、堆積した際の膜の密着性が向上し、膜剥がれに対するラチチュードが非常に広くなる。
【0022】
本発明者らは、非単結晶材料からなる感光体、特にa−Si感光体における重要な問題点である、球状突起に起因する画像欠陥の改善を検討してきた。特に、成膜途中に成膜炉壁や炉内の構造物からの膜剥がれによって発生する球状突起による画像欠陥を防止できないか鋭意努力してきた。
【0023】
前述のように、球状突起がポチのような画像欠陥になるのは、堆積膜の正常堆積部分と球状突起部分の界面に局在準位が多く、そこが低抵抗化し、帯電電荷が界面を通って基体側に抜けてしまうからである。ところが、成膜途中に付着したダストによって発生する球状突起は基板からではなく、堆積膜の途中から成長しているため、表面側に何らかの電荷阻止を有する層を設けて、帯電電荷の注入を防止すれば、たとえ球状突起が存在しても画像欠陥にはならない可能性がある。
【0024】
そこで、本発明者らは、堆積膜の途中から球状突起が成長する成膜条件を選び、この条件で作成した感光体の表面に上部阻止層を設ける実験を行った。ところが予想に反して球状突起からの電荷の注入は防止できず、画像欠陥が発生してしまうことが判明した。
【0025】
この原因を調べるため、球状突起の断面を削りだし、SEM(走査型電子顕微鏡)で詳細に観察を行った。その様子を図1に示す。図において、101は導電性基体、102は第1の層の正常堆積部分、103は球状突起、104は成膜中に付着したダスト、105は上部阻止層、106は球状突起部分と正常堆積部分の境界である。図1から分かるように、球状突起103は第1の層102の正常堆積部分の途中から、ダスト104を起点として成長しており、球状突起103と正常堆積部分の間には境界106が存在している。帯電電荷はこの境界を通って基体側に抜けてしまうため、画像上でポチの原因となる。この球状突起103上に上部阻止層105を堆積しても、上部阻止層105は、それまでに成長した球状突起103の成長パターンを維持して堆積されるため、上部阻止層105にも境界106ができてしまう。その結果、帯電電荷はこの境界を通り抜けてしまい、上部阻止の機能が失われてしまうのである。
【0026】
そこで、本発明者らは、上部阻止層105を積層する際に境界106の成長を防止する検討を鋭意行った。その結果、球状突起から帯電電荷のすり抜けを防止するには、第1の層を形成した後に堆積膜表面を10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下の表面状態にまで加工を行うことで、帯電電荷のすり抜けを完全に防止することが可能となり、最も効果的であることが判明した。
【0027】
図2に、第1の層202を成膜した後、堆積膜表面を10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下の表面状態にまで加工を行った電子写真用感光体の一例を示す。球状突起203は第1の層202の正常堆積部分の成膜途中に付着したダスト204を起点として成長を開始している。しかし、球状突起203は上部阻止層205を堆積する前に加工が施され、平坦化されている。このため、その後に成膜される上部阻止層205は境界部分206をまったく引き継がず、平坦化された表面上に均一に堆積されている。このため、第1の層202の表面を平坦化した後に上部阻止層205を積層することで球状突起部分203と第1の層202の正常堆積部分の間の境界206が封止されるため、帯電電荷が通り抜けるのを防止することができ、画像欠陥を抑制する効果を得ることが可能となる。更に、感光感光体の堆積膜表面を10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下の表面状態にまで加工を行うことで、第2の層を堆積した膜の密着性も十分高まることが分かった。
【0028】
また、本発明者らは、電子写真装置におけるクリーニング不良に関してもトナーのすり抜け原因となるメカニズムを鋭意検討してきた。
【0029】
まず、作製したa−Si感光体の表面は、図4(a)に示すような断面構造となっている。そして、従来、a−Si感光体の表面については、研磨装置を用いて異常成長欠陥のみを研磨し平坦化してきた。その結果、図4(b)に示すように、a−Si感光体の表面において、微細粗さは平坦化されず残存していた。この様な表面状態の感光体を電子写真装置に配置すると、使用開始の初期段階でこの微細粗さによってクリーニングブレードが滑り過ぎるため、現像剤がすり抜けてクリーニング不良が発生する。その為、クリーニング不良は、感光体の表面粗さが大きく、ブレードと感光体との滑りが良すぎるため、トナー等の現像剤がすり抜けることに起因すると考えている。
【0030】
そして、この様な考察に基づき、図4(c)に示すように第1の層の表面状態を10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下となるまで加工を施すことにより、クリーニング不良の発生を防止することが可能となった。
【0031】
また、上述の表面状態にまで加工を施すことで、可干渉光を用いたシステムであっても表面状態に起因した反射の影響を防止することが可能となり、干渉縞の発生を抑制することが可能となる。以上の結果より品位良好な画像を長期にわたり維持できるようになった。
【0032】
本発明は以上の検討により完成されたものである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0034】
<本発明に係わるa−Si感光体>
図3に本発明に係わる電子写真感光体の一例を示す。
【0035】
本発明の電子写真感光体は、例えばAl、ステンレス等の導電性材料からなる基体301上に、第1ステップとして少なくとも非単結晶質材料からなる第1の層302を積層し、第2ステップとして一旦第1の層を積層した基体を成膜炉から取り出し、第3ステップとして第1の層を堆積した基体最表面を10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下になるように加工を施す工程を行い、第4ステップとして再び成膜炉内で第2の層303を積層したものである。このように製造することによって、第1の層中から発生している球状突起308を覆うように第2の層306を堆積することができ、球状突起308が存在したとしても画像には現れず、良好な画質を保つことが可能となる。更にトナーのすり抜け防止ができクリーニング不良を抑制可能となる。本発明においては第1の層302には光導電層305が含まれる。光導電層305の材料としてa−Siが用いられる。また、第1の層の最表面にシリコン原子と炭素原子を母体とした中間層を用いてもよい。また、第1の層302には必要に応じて更に下部阻止層304を設けてもよい。下部阻止層304には、13族元素および15族元素等をドーパントとして選択して含有させて、正帯電、負帯電といった帯電極性の制御も可能となる。
【0036】
ドーパントとなる第13族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Alが好適である。第15族原子としては、具体的には燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にPが好適である。
【0037】
また、第2の層303には、シリコン原子と炭素原子を母体とした電荷阻止機能を有する層を用い、上部阻止層306を設けることがより好ましい。第2の層の最表面307はa−Siを母体とし、必要に応じて炭素、窒素、酸素の少なくとも1つを比較的多量に含有した層が用いられ、耐環境性、耐摩耗性や耐傷性を向上させることができる。また、第2の層には必要に応じて最下部に、第1の最表面の組成と同等な中間層を設けてもよい。
【0038】
<本発明に係わる基体の材質>
基体材質としてはAlおよびステンレス等の導電性材料が一般的であるが、例えば各種のプラスチックやガラス、セラミックス等、特には導電性を有しないものにこれら導電性材料を少なくとも光受容層を形成する側の表面に蒸着するなどして導電性を付与したものも用いることができる。
【0039】
導電性材料としては上記の他、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属、およびこれらの合金が挙げられる。
【0040】
プラスチックとしてはポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等のフィルムまたはシートが挙げられる。
【0041】
<本発明に係わる第1の層>
第1の層302としては、本発明ではシリコン原子を母体とし、更に水素原子及び/又はハロゲン原子を含む非晶質材料(「a−Si(H,X)」と略記する)で構成される。
【0042】
a−Si膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって作成可能であるが、プラズマCVD法を用いて作成した膜は特に高品質の膜が得られるため好ましい。特に第1の層は、電子写真感光体の中で最も厚い層厚が必要とされ、かつ膜質の均一性が要求されるために、堆積膜速度が速いVHF帯を用いたプラズマCVD方式を用いることがより好ましい。
【0043】
原料としてはSiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)を原料ガスとして用い、高周波電力によって分解することによって作成可能である。更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。
【0044】
このとき、基体の温度は、150℃〜350℃、より好ましくは180℃〜300℃程度の温度に保つことが特性上好ましい。これは基体表面での表面反応を促進させ、充分に構造緩和をさせるためである。
【0045】
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、より好ましくは1×10-1〜1×102Paとする。
【0046】
また、これらのガスに更にH2あるいはハロゲン原子を含むガスを所望量混合して層形成することも特性向上の上で好ましい。ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なのは、弗素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF5、IF7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばSiF4、Si26等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。また、これらの炭素供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0047】
第1の層302の層厚としては特に限定はないが、製造コストなどを考慮すると15〜50μm程度が適当である。
【0048】
更に、特性を向上させる為に第1の層302を複数の層構成にしても良い。例えばよりバンドギャップの狭い層を表面側に、よりバンドギャップの広い層を基板側に配置することで光感度や帯電特性を同時に向上させることができる。特に、半導体レーザーのように、比較的長波長であって且つ波長ばらつきのほとんどない光源に対しては、こうした層構成の工夫によって画期的な効果が現れる。
【0049】
必要に応じて設けられる下部阻止層304は、一般的にa−Si(H,X)をベースとし、13族元素、15族元素などのドーパントを含有させることにより伝導型を制御し、基体からのキャリアの注入阻止能を持たせることが可能である。この場合、必要に応じて、C、N、Oから選ばれる少なくとも1つ以上の元素を含有させることで応力を調整し、感光層の密着性向上の機能を持たせることもできる。
【0050】
下部阻止層304のドーパントとして用いられる13族元素、15族元素としては前述したものが用いられる。また、第13族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B26、B410、B59、B511、B610、B612、B614等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。中でもB26は取り扱いの面からも好ましい原料物質の一つである。
【0051】
第15族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH3、P24等の水素化燐、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PI3等のハロゲン化燐、さらにPH4I等が挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等が第15族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げられる。
【0052】
ドーパントの原子の含有量としては、好ましくは1×10-2〜1×104原子ppm、より好ましくは5×10-2〜5×103原子ppm、最適には1×10-1〜1×103原子ppmである。
【0053】
<本発明に係わる第2の層>
本発明に関わる第2の層303は、第1の層302が形成された後に一旦成膜炉から取り出した後に形成される。
【0054】
第2の層の形成には、堆積膜速度が遅く密着性が良いRF帯を用いたプラズマCVD方式を用いることがより好ましい。
【0055】
また、第2の層の形成は、第1の層を堆積した堆積膜最表面を10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下になるように加工を施した表面上に堆積させる。表面の加工は、後述する表面研磨装置によって行うことができる。表面上を特定の範囲からなる状態にまで加工することで、電荷のすり抜けを効果的なものにできると共に、球状突起によるクリーニングブレードの欠けやクリーニング不良を防止でき、更には光の反射による干渉縞の発生を防止することができる。
【0056】
また、成膜炉から第1の層を形成した基体を取り出した際に、必要に応じて感光体の外観検査や特性評価を行うことも有意義である。この時点で検査を行うことで、品質不良の感光体については後の工程を省略することができ、全体としてコストの低減を図ることができる。
【0057】
さらに、成膜炉に再度設置する前に、第1の層を形成した基体を洗浄することは、第2の層303の密着性向上やダスト付着低減のために望ましい。具体的な洗浄方法としては、清浄な布や紙で表面を拭き取ったり、望ましくは有機洗浄や水洗浄などにより精密洗浄を行う。特に、近年の環境に対する配慮からは後述する水洗浄装置による水洗浄がより好ましい。
【0058】
第1の層を形成した基体を成膜炉に再度設置し、第2の層を堆積する前に、あらかじめ第1の層の最表面をエッチングを行うことも好ましい。これにより堆積した際の膜の密着性が向上し、ヒートショック及び振動に対して良好な感光体を得ることができる。なお、装置の簡易さ及びエッチング後連続して第2の層を堆積する工程に移行可能という点から、プラズマエッチングが特に好ましい。
【0059】
本発明の第2の層303には上部阻止層306を含むことが好ましい。上部阻止層306は、感光体が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、表面側より第1の層側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性の帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮されない、いわゆる極性依存性を有している。そのような機能を付与するために、上部阻止層306には伝導性を制御する不純物原子を適切に含有させることが必要である。そのような目的で用いられる不純物原子としては、本発明においてはp型伝導特性を与える第13族原子、あるいはn型伝導特性を与える第15族原子が挙げられる。このような第13族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特に硼素が好適である。第15族原子としては、具体的にはリン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にリンが好適である。
【0060】
上部阻止層306に含有される伝導性を制御する不純物原子の必要な含有量は、上部阻止層306の組成や製造方法を考慮して適宜変更することが好ましいが、一般的にはネットワーク構成原子に対して100原子ppm以上、30000原子ppm以下とされ、500原子ppm以上、10000原子ppm以下とすることが更に好ましい。
【0061】
上部阻止層306に含有される伝導性を制御する原子は、上部阻止層306中に万偏なく均一に分布されていても良いし、あるいは層厚方向に不均一に分布する状態で含有していてもよい。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
【0062】
上部阻止層306は、a−Si系の材料であればいずれの材質でも可能であるが、後述する表面保護層307と同様の材料で構成することが好ましい。すなわち、「a−SiC:H,X」、「a−SiO:H,X」、「a−SiN:H,X」、「a−SiCON:H,X」等の材料が好適に用いられる。上部阻止層306に含有される炭素原子または窒素原子または酸素原子は、該層中に万偏なく均一に分布されても良いし、あるいは層厚方向に不均一に分布する状態で含有していてもよい。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
【0063】
本発明における上部阻止層306の全層領域に含有される炭素原子および/または窒素原子および/または酸素原子の含有量は、本発明の目的が効果的に達成されるように適宜決定されるが、1種類の場合はその量として、2種類以上の場合はその総和量として、シリコンとの総和に対して10%から70%の範囲とするのが好ましい。
【0064】
また、本発明においては上部阻止層306に水素原子および/またはハロゲン原子が含有されることが必要であるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させるために必須不可欠である。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最適には40〜60原子%とするのが望ましい。また、ハロゲン原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.5〜5原子%とされるのが望ましい。
【0065】
第1の層302と第2の層303の密着性を向上させるために、第1の層302の最表面の組成と同等な中間層を第2の層303の最下部に設けることは有効である。
【0066】
さらに、第2の層303は第1の層302側から表面保護層307に向かって組成を連続的に変化させることも好ましく、密着性の向上や干渉防止等に効果がある。
【0067】
本発明の目的を達成し得る特性を有する上部阻止層306を形成するには、Si供給用のガスとCおよび/またはNおよび/またはO供給用のガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定することが必要である。
【0068】
上部阻止層の形成において使用されるシリコン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0069】
炭素供給用ガスとなり得る物質としては、CH4、C22、C26、C38、C410等のガス状態の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、C供給効率の良さ等の点でCH4、C22、C26が好ましいものとして挙げられる。また、これらのC供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0070】
窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質としては、NH3、NO、N2O、NO2、O2、CO、CO2、N2等のガス状態の、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。また、これらの窒素、酸素供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0071】
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜1×102Paとするのが好ましい。
【0072】
さらに、基体の温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜330℃、最適には200〜300℃とするのが望ましい。
【0073】
本発明においては、上部阻止層306を形成するための希釈ガスの混合比、ガス圧、放電電力、基体温度等の層作成ファクターは通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的かつ有機的関連性に基づいて各層作成ファクターの最適値を決めるのが望ましい。
【0074】
本発明の第2の層303には必要に応じて、上部阻止層306の上に、さらに非単結晶材料、特にa−Si系の表面保護層307を設けてもよい。この表面保護層307は自由表面を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性の改善に効果が得られる。
【0075】
また、本発明におけるa−Si系の表面保護層307は、第1の層を構成する光導電層305と表面保護層307とを形成する非晶質材料の各々がシリコン原子という共通の構成要素を有しているので、積層界面において化学的な安定性の確保が十分成されている。表面保護層307の材質としてa−Si系の材料を用いる場合は、炭素、窒素、酸素より選ばれた元素を少なくとも1つ含むシリコン原子との化合物が好ましく、特にa−SiCを主成分としたものが好ましい。
【0076】
表面保護層307が炭素、窒素、酸素のいずれか一つ以上を含む場合、これらの原子の含有量はネットワークを構成する全原子に対して30%から90%の範囲が好ましい。
【0077】
また、表面保護層307中に水素原子および/またはハロゲン原子が含有されることが必要であるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させるために必須不可欠である。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最適には40〜60原子%とするのが望ましい。また、弗素原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.5〜5原子%とされるのが望ましい。
【0078】
これらの水素および/または弗素含有量の範囲内で形成される感光体は、実際面において優れたものとして充分適用させ得るものである。すなわち、表面保護層307内に存在する欠陥(主にシリコン原子や炭素原子のダングリングボンド)は、電子写真感光体としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば自由表面から電荷の注入による帯電特性の劣化、使用環境、例えば高い湿度のもとで表面構造が変化することによる帯電特性の変動、更にコロナ帯電時や光照射時に光導電層より表面保護層に電荷が注入され、前記表面保護層内の欠陥に電荷がトラップされることによる繰り返し使用時の残像現象の発生等が、この悪影響として挙げられる。
【0079】
しかしながら、表面保護層307内の水素含有量を30原子%以上に制御することで表面保護層内の欠陥が大幅に減少し、その結果、従来に比べて電気的特性面及び高速連続使用性において向上を図ることができる。一方、表面保護層307中の水素含有量が70原子%を越えると表面保護層の硬度が低下するために、繰り返し使用に耐えられなくなる。従って、水素含有量を前記の範囲内に制御することが優れた所望の電子写真特性を得る上で重要な因子の1つである。表面保護層307中の水素含有量は、原料ガスの流量(比)、基体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
【0080】
また、前記表面保護層307中の弗素含有量を0.01原子%以上の範囲に制御することで表面保護層内のシリコン原子と炭素原子との結合の発生をより効果的に達成することが可能となる。さらに、弗素原子の働きとして、コロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子との結合の切断を効果的に防止することができる。一方、前記表面保護層307中の弗素含有量が15原子%を超えると表面保護層内のシリコン原子と炭素原子との結合の発生の効果およびコロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子との結合の切断を防止する効果がほとんど認められなくなる。さらに、過剰の弗素原子が表面保護層中のキャリアの走行性を阻害するため、残留電位や画像メモリーが顕著に認められてくる。従って、弗素含有量を前記範囲内に制御することが所望の電子写真特性を得る上で重要な因子の1つである。前記表面保護層307中の弗素含有量は、水素含有量と同様に原料ガスの流量(比)、基体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
【0081】
さらに本発明においては、表面保護層307には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子は、表面保護層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
【0082】
前記の伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える第13族原子、またはn型伝導特性を与える第15族原子を用いることができる。
【0083】
表面保護層307の層厚としては、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μm、最適には0.1〜1μmとされるのが望ましいものである。層厚が0.01μmよりも薄いと感光体を使用中に摩耗等の理由により表面保護層307が失われてしまい、3μmを越えると残留電位の増加等の電子写真特性の低下がみられる。
【0084】
目的を達成し得る特性を有する表面保護層307を形成するには、基体の温度、反応容器内のガス圧を所望により適宜設定する必要がある。基体温度(Ts)は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜330℃、最適には200〜300℃とするのが望ましい。反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜1×102Paとするのが好ましい。
【0085】
表面層の形成に使用される原料ガスとしては、上部阻止層の形成に用いられる原料ガスを用いることができる。
【0086】
表面保護層307を形成するための基体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0087】
<本発明に係わるa−Si感光体成膜装置>
図5は、第2の層形成を行うRF帯の高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図であり、図6は、第1の層形成を行うVHF電源を用いたVHFプラズマCVD法による感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図である。
【0088】
これらの装置は大別すると、堆積装置5100(6100)、原料ガスの供給装置5200、成膜炉5110内を減圧する為の排気装置(図示せず)から構成されている。なお、この装置は図5に示した堆積装置5100を図6の堆積装置6100に置き換えることで構成される。
【0089】
第1の層形成は、図6に示したVHFプラズマCVD法による感光体の堆積装置(第1の成膜炉)によって行なわれる。但し、印加する高周波電力は50MHz〜450MHz、例えば周波数105MHzのVHF電源により行い、圧力は13.3mPa〜1330Pa程度とRFプラズマCVD法よりも低めに保たれる。
【0090】
成膜装置6100の成膜炉6110内にはアースに接続された基体6112、基体の加熱用ヒーター6113、原料ガス導入管6114が設置され、更に高周波マッチングボックス6115を介して高周波電源6120が接続されている。原料ガス供給装置5200は、SiH4、H2、CH4、NO、B26、CF4等の原料ガスボンベ5221〜5226とバルブ5231〜5236、5241〜5246、5251〜5256及びマスフローコントローラー5211〜5216から構成され、各構成ガスのボンベはバルブ5260を介して成膜炉6110内のガス導入管6114に接続されている。
【0091】
基体6112は導電性受け台6123の上に設置されることによってアースに接続される。
【0092】
以下、図6の装置を用いた感光体の形成方法の手順の一例について説明する。成膜炉6110内に基体6112を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により成膜炉6110内を排気する。続いて基体加熱用ヒーター6113により基体6112の温度を200℃〜450℃、より好ましくは250℃〜350℃の所望の温度に制御する。次いで、感光体形成用の原料ガスを成膜炉5110内に流入させるにはガスボンベのバルブ5231〜5236、成膜炉のリークバルブ(不図示)が閉じられている事を確認し又、流入バルブ5241〜5246、流出バルブ5251〜5256、補助バルブ6260が開かれている事を確認し、メインバルブ6118を開いて成膜炉6110及びガス供給配管6116を排気する。
【0093】
その後、真空計6119の読みが0.5mPaになった時点で補助バルブ6260、流出バルブ5251〜5256を閉じる。その後ガスボンベ5221〜5226より各ガスをバルブ5231〜5236を開いて導入し圧力調整器5261〜5266により各ガス圧を0.2MPaに調整する。次に流入バルブ5241〜5246を徐々に開けて各ガスをマスフローコントローラー5211〜5216内に導入する。
【0094】
以上の手順によって成膜準備を完了した後、基体6112上に、まず第1の層、例えば光導電層の形成を行う。
【0095】
即ち、基体6112が所望の温度になったところで、各流出バルブ5251〜5256のうちの必要なものと補助バルブ6260とを徐々に開き、各ガスボンベ5221〜5226から所望の原料ガスをガス導入管6114を介して成膜炉6110内に導入する。次に、各マスフローコントローラー5211〜5216によって、各原料ガスが所望の流量になる様に調整する。その際、成膜炉6110内が13.3mPa〜1330Paの所望の圧力になる様に、真空計6119を見ながらメインバルブ6118の開口を調整する。内圧が安定したところで、高周波電源5120を所望の電力に設定して例えば、50MHz〜450MHz、例えば周波数105MHzのVHF電源を用いて高周波電力を高周波マッチングボックス6115を通じてカソード電極6111に供給し高周波グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって成膜炉6110内に導入させた各原料ガスが分解され、基体6112上に所望のシリコン原子を主成分とする第1の層が成膜される。
【0096】
本装置においては基体6112により取り囲まれた放電空間6130において、導入された原料ガスは、放電エネルギーにより励起されて解離し、基体6112上に所定の堆積膜が形成される。この時、層形成の均一化を図るため基体回転用モーター6120によって、所望の回転速度で回転させる。
【0097】
所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波電力の供給を止め、各流出バルブ5251〜5256を閉じて成膜炉6110への各原料ガスの流入を止め、第1の層の形成を終える。第1の層の組成や膜厚は公知のものを使用することができる。上記第1の層と基体の間に下部阻止層を形成する場合も基本的には上記の操作をあらかじめ行えばよい。
【0098】
上記の手順で第1の層まで成膜した感光体は一旦、成膜炉から取り出し、表面加工を行うことがポイントである。
【0099】
表面加工を行った感光体は、第2の層形成を行うRF帯の高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体の堆積装置(第2の成膜炉)に戻され、上部阻止層を含む第2の層の成膜を行う。第2の層の成膜は原料ガスにCH4、C26などの炭化水素ガス、必要に応じてH2など希釈ガスを追加で用いる以外は基本的に第1の層の成膜に準じる。
【0100】
但し、印加する高周波電力は周波数1MHz〜50MHz、例えば13.56MHzの高周波電力を高周波マッチングボックス5115を通じてカソード電極5111に供給し高周波グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって成膜炉5110内に導入させた各原料ガスが分解され、基体5112上に所望のシリコン原子を主成分とする第2の層が堆積される。その時、圧力は13.3Pa〜1330Pa程度とVHFプラズマCVD法よりも高めに保たれる。
【0101】
第2の層の組成や膜厚は公知のものを使用することができる。上記第2の層と第1の層の間の密着性を向上させるために、第1の層と同様の層を積層した後に第2の層を積層する場合も基本的には上記の操作をあらかじめ行えばよい。
【0102】
さらに、最表面には、Si含有ガス及び炭素含有ガスを用いて、SiC系の表面保護層を積層する。その場合も基本的には上記の操作を行えばよい。
【0103】
<本発明に係わる表面研磨装置>
図7に、本発明の電子写真用感光体の製造工程において、表面加工に際して利用される表面加工装置の一例、具体的には、表面加工として研磨を行う際に利用される表面研磨装置の一例を示す。図7に示す表面研磨装置の構成例において、加工対象物(円筒状の基体上の堆積膜表面)700は、その表面にa−Siからなる第1の層が堆積された円筒状の基体であり、弾性支持機構720に取り付けられる。図7に示す装置において、弾性支持機構720は例えば空気圧ホルダーが利用され、具体的にはブリジストン社製空気圧式ホルダー(商品名:エアーピック、型番:PO45TCA*820)が用いられる。加圧弾性ローラ730は、研磨テープ731を巻回して、加工対象物700のa−Si光導電層または中間層表面に押圧させる。研磨テープ731は、送り出しロール732から供給され巻き取りロール733に回収される。その送り出し速度は、定量送り出しロール734とキャプスタンローラ735により調整され、また、その張力も調整されている。研磨テープ731には、通常ラッピングテープと呼ばれるものが好適に利用される。a−Si等の非単結晶材料の光導電層等の第1の層または上部阻止層等の中間層の表面を加工する際、ラッピングテープには、砥粒としてはSiC、Al23、Fe23などが用いられる。具体的には、富士フィルム社製ラッピングテープLT−C2000を用いた。加圧弾性ローラ730は、そのローラ部は、ネオプレンゴム、シリコンゴムなどの材質からなり、JISゴム硬度20〜80の範囲、より好ましくはJISゴム硬度30〜60の範囲とされている。また、ローラ部形状は、長手方向において、中央部の直径が両端部の直径より若干太いものが好ましく、例えば両者の直径差が0.0〜0.6mmの範囲、より好ましくは、0.2〜0.4mmの範囲となる形状がより好ましい。加圧弾性ローラ730は、回転する加工対象物(円筒状基体上の堆積膜表面)700に対して、加圧圧力9.8kPa〜980kPaの範囲で加圧しながら、研磨テープ731、例えば、上記のラッピングテープを送り堆積膜表面の研磨を行う。
【0104】
なお、本発明で実施される表面研磨に対しては、前記研磨テープを利用する手段以外に、バフ研磨のような湿式研磨の手段を利用することも可能である。また、湿式研磨の手段を利用する際には、研磨加工後、研磨に利用する液の洗浄除去を施す工程を設けるが、その際、表面を水と接触させ、洗浄する処理を併せて実施することができる。
【0105】
<本発明の電子写真用感光体の製造工程における、表面加工前後での表面粗さを確認する手段>
本発明の電子写真用感光体において、前記の表面加工を施した第1の層の表面上に第2の層が堆積される。その際、表面加工、例えば研磨を施した結果、表面性をある特定の値以下にまで加工を施すことが好ましい。
【0106】
この表面加工前後での微視的な表面の変化は、マクロな表面粗さとは異なり、よりミクロな表面形状の変化を観察することが必要となる。このミクロな表面形状の変化を評価することで、本発明の電子写真用感光体の製造工程における、表面加工の条件をより適するものとすることができる。
【0107】
具体的には、表面加工前後において実質的な表面状態を確認する手段として、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)、具体的には、市販される原子間力顕微鏡(AFM)[Quesant社製 Q−Scope250]などを用いて、表面の原子レベルでの変化を検証することが好ましい。原子間力顕微鏡(AFM)を利用するほど高い分解能を持つ観察手段を用いる理由は、表面加工、例えば研磨による正常部分の変化の有無の確認は、用いた円筒状基体自体の表面粗さに支配される、数100nmオーダーの粗さではなく、光導電層や中間層などの堆積膜そのものの性質に起因する、より微細な粗さに注目し、その変化を的確に観察することがより重要であるからである。
【0108】
このような微細な粗さは、例えば、AFMにより、10μm×10μmと測定範囲を狭くし、かつサンプル面の曲率傾き(tilt)による系統誤差を避けるようにすることで、高い精度で再現性良く測定することが可能である。具体的には、前記のQuesant社製 Q−Scope250の測定モードとして、Tile Removalモードを選択し、試料のAFM像の持つ曲率を放物線にフィットさせた後、平坦化する補正(Parabolic)があげられる。電子写真用感光体の表面形状は、概ね円筒形状をとっているため、前記の平坦化補正を利用する観察方法は、より好適な手法である。更に、像全体に傾きが残る場合には、傾きを除去する補正(Line by line)を行う。この様に、データに歪みを生じさせない範囲でサンプル面の傾きを適宜補正することで、目的とする堆積膜そのものの性質に起因するより微細な粗さ情報のみを抽出することが可能である。
【0109】
<本発明に係わる水洗浄装置>
水洗浄に関しては、例えば特許第2786756号公報などに開示されている。本発明に用いることができる水洗浄装置の一例を図8に示す。
【0110】
図8に示す処理装置は、処理部802と被処理部材搬送機構803よりなっている。処理部802は、被処理部材投入台811、被処理部材洗浄槽821、純水接触槽831、乾燥槽841、被処理部材搬出台851よりなっている。洗浄槽821、純水接触槽831とも液の温度を一定に保つための温度調節装置(図示せず)が付いている。搬送機構803は、搬送レール865と搬送アーム861よりなり、搬送アーム861は、レール865上を移動する移動機構862、基体801を保持するチャッキング機構863及びチャッキング機構863を上下させるためのエアーシリンダー864よりなっている。投入台811上に置かれた基体801は、搬送機構803により洗浄槽821に搬送される。洗浄槽821中の界面活性剤水溶液によりなる洗浄液822中で超音波処理されることにより表面に付着している油及び粉体の洗浄が行われる。次に基体801は、搬送機構803により純水接触槽831へ運ばれ、25℃の温度に保たれた抵抗率175kΩ・m(17.5MΩ・cm)の純水をノズル832から4.9MPaの圧力で吹き付けられる。純水接触工程の終わった基体801は搬送機構803により乾燥槽841へ移動され、ノズル842から高温の高圧空気を吹き付けられ乾燥される。乾燥工程の終了した基体801は、搬送機構803により搬出台851に運ばれる。
【0111】
<本発明に係わる電子写真装置>
本発明の電子写真感光体を用いた電子写真装置の一例を図9に示す。
【0112】
図9において、904が本発明で言うところの電子写真感光体であり、905は該感光体904に静電潜像形成のための帯電を行う一次帯電器である。図ではコロナ帯電器を記載してあるが、特開昭63−210864公報記載のような接触帯電器でもよい。906は静電潜像の形成された感光体904に現像材(トナー)906aを供給するための現像器であり、907は感光体表面のトナーを転写材に移行させるための転写帯電器である。図ではコロナ帯電器を記載してあるが、特開昭62−175781公報記載のようなローラー電極でもよい。908は感光体表面の浄化を図るクリーナーである。本例では感光体表面の均一浄化を有効に行うため、弾性ローラー908−1とクリーニングブレード908−2を用いて感光体表面の浄化を行っている。910は次回の複写動作にそなえて感光体表面の除電を行うための除電ランプである。913は紙等の転写材、914は転写材の送りローラーである。露光Aの光源には、ハロゲン光源、或いは単一波長を主とするレーザー、LEDなどの光源を用いる。
【0113】
このような装置を用い、複写画像の形成は、例えば以下のように行なわれる。
【0114】
まず電子写真感光体904を所定の速度で矢印の方向へ回転させ、一次帯電器905を用いて感光体904の表面を一様に帯電させる。次に、帯電された感光体904の表面に画像の露光Aを行い、該画像の静電潜像を感光体904の表面に形成させる。そして感光体904の表面の静電潜像の形成された部分が現像器906の設置部を通過する際に、現像器906によってトナーが感光体904の表面に供給され、静電潜像がトナー906aによる画像として顕像化(現像)され、更にこのトナー画像は感光体904の回転とともに転写帯電器907の設置部に到達し、ここで送りローラー914によって送られてくる転写材913に転写されるのである。
【0115】
転写終了後、次の複写工程に備えるために電子写真感光体904の表面から残留トナーがクリーナー908によって除去され、更に該表面の電位がゼロ若しくは殆どゼロとなるように除電ランプ910により除電され、1回の複写工程を終了する。
【0116】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0117】
[実施例1]
図6に示したVHFプラズマa−Si感光体成膜装置を用いて、表1に示した条件で直径80mmのAl基体上に、第1の層まで堆積した基体を6本製造した。
【0118】
【表1】
Figure 0003929037
【0119】
次いで、第1の層まで堆積した基体6本を一旦成膜炉から取り出し、取り出し直後の基体表面の算術平均粗さRaを測定した。測定は、原子間力顕微鏡(AFM)[Quesant社製 Q−Scope250]で行った。その結果、6本の基体表面は10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが45〜60nmの範囲であった。次いで、作製した6本の基体の中から4本の基体表面の加工を行った。表面の加工は、幅360mmの富士フィルム社製ラッピングテープ(商品名:C2000)をJISゴム硬度30の加圧ローラで400kPaに加圧し、テープ速度3.0mm/min、感光体回転速度60rpm、研磨時間を変化させて表面を研磨した。その結果、各4本の研磨後の表面は、10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが3nm、15nm、19nm、25nmであった。次いで、各4本の基体を図5で示したRFプラズマa−Si感光体成膜炉に戻し、表2に示した条件で第2の層である上部阻止層と表面保護層を堆積した。
【0120】
【表2】
Figure 0003929037
【0121】
以上の手順で得られた感光体は負帯電で用いられる感光体であり、次のように評価した。
【0122】
(画像欠陥)
一次帯電器としてコロナ放電を採用し、また、クリーナーにクリーニングブレードを具える電子写真装置に、本実施例で作製した電子写真用感光体を装着して画像形成を行った。具体的には、キヤノン製iR6000(プロセススピード265mm/sec、イメージ露光)をベースに負帯電が可能なように改造し、トナーをネガトナーに変更した複写機を試験用電子写真装置として用い、A3サイズの白紙原稿を複写した。こうして得られた画像を観察し、直径0.1mm以上の球状突起に起因する黒ポチの個数を数えた。
【0123】
得られた結果は、後述する比較例1での値を100%とした場合の相対比較でランク付けを行った。
◎・・・ 35%以上65%未満
○・・・ 65%以上95%未満
△・・・ 95%以上105%未満
×・・・ 105%以上。
【0124】
(密着性の評価)
「膜剥がれの観察」
作製した電子写真感光体を温度−30℃に調整された容器の中に48時間放置し、その後直ちに温度+50℃、湿度95%に調整された容器の中に48時間放置する。このサイクルを10サイクル繰り返したヒートショック試験の後電子写真感光体表面を観察した。更に、加速度7Gからなる10Hz〜10kHzの振動をスイープ時間2.2分で5サイクル繰り返した振動試験の後電子写真感光体表面を観察した。以下の基準で評価する。
◎:振動試験後、膜剥がれが認められず極めて良好
○:振動試験後、非画像領域の端部に微小な膜剥がれが一部認められるが実用上問題なし
△:ヒートショック試験後、非画像領域の端部に微小な膜剥がれが一部認められるが実用上問題なし
×:ヒートショック試験後、比較的大きな膜剥がれが一部認められ実用上問題あり。
【0125】
(クリーニング性評価)
「トナーのすり抜け」
前述のiR6000改造機を用いて、トナーのすり抜けの評価を行った。原稿にA3サイズの所定用紙を用いて10万枚の通紙耐久した。耐久後、ハーフトーン画像をコピーしてトナーのすり抜けの有無を調べた。具体的には、A3サイズのハーフトーン画像において、トナーすり抜けによる汚れの面積を5枚のコピーサンプルから見積もった。同様の評価を5回行い、5枚のコピーサンプルでの結果を得た。
【0126】
判定基準は以下のように定める。
◎:汚れは全く認められなかった
○:一部汚れが認められるが気にならない程度
△:一部汚れが認められ、少し気になる程度
×:筋状のクリーニング不良による汚れが認められる。
【0127】
「クリーニングブレードエッジの損傷」
前述のiR6000改造機に、本実施例で作製した電子写真用感光体を装着して、500万枚の通紙耐久を行い耐久終了後のクリーニングブレードのエッジの損傷(欠けあるいは捲れ)状態を評価した。
◎・・・ 損傷はまったくなく非常に優れた状態である
○・・・ 優れている
△・・・ 実用上問題無し
×・・・ 大きな損傷が発生し実用上問題あり。
【0128】
[比較例1]
図6に示したVHFプラズマa−Si感光体成膜装置を用いて、表1に示した条件で直径80mmのAl基体上に、第1の層まで堆積した基体6本を製造した。次いで、堆積済みの基体6本を一旦成膜炉から取り出し、取り出し直後の基体表面の算術平均粗さRaを測定した。なお測定は、実施例1と同様に原子間力顕微鏡(AFM)[Quesant社製 Q−Scope250]で行った。その結果、6本の基体表面は10μm×10μm視野での算術平均粗さRaが45〜60nmの範囲であった。次いで、作製した6本の中からRaが58nmの基体1本を、表面加工を行わずに図5で示すRFプラズマa−Si感光体成膜炉に戻し、表2に示した条件で第2の層である上部阻止層と表面保護層を堆積した。
【0129】
[比較例2]
図6に示したVHFプラズマa−Si感光体成膜装置を用いて、表1に示した条件で直径80mmのAl基体上に、第1の層まで堆積した基体6本を製造し、次いで、堆積済みの基体6本を一旦成膜炉から取り出し、取り出し直後の基体表面の算術平均粗さRaを測定した。なお測定は、実施例1と同様に原子間力顕微鏡(AFM)[Quesant社製 Q−Scope250]で行った。その結果、6本の基体表面は10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが45〜60nmの範囲であった。次いで、作製した6本の基体の中から1本の基体表面の加工を行った。表面の加工は、幅360mmの富士フィルム社製ラッピングテープ(商品名:C2000)をJISゴム硬度30の加圧ローラで0.1MPaに加圧し、テープ速度3.0mm/min、感光体回転速度60rpm、の条件で表面を研磨した。その結果、研磨後の表面は10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが29nmであった。次いで、各々の基体を図5で示したRFプラズマa−Si感光体成膜炉に戻し、表2に示した条件で第2の層である上部阻止層と表面保護層を堆積した。
【0130】
実施例1、比較例1および2の結果を表3に示す。表3の結果から明らかなように、第1の層の表面をRaが25nm以下にまで加工を施すことで、画像欠陥を低減する効果が得られた。更に、剥がれの観察結果から、実施例1の感光体は密着性に優れていることが判明した。更に、トナーのすり抜けおよびクリーニングブレードの損傷結果から、実施例1の感光体はクリーニング性に非常に優れていることが明らかとなった。更に、干渉縞の発生は見られず良好な画像が得られた。また、第1の層をVHFプラズマa−Si感光体成膜炉で製造することで、堆積膜速度の高速化により成膜時間の短縮が可能となり、さらには一回の成膜で6本作製可能なことから非常に生産性に優れ、コストダウンを得ることが出来る。
【0131】
【表3】
Figure 0003929037
【0132】
[実施例2]
図5に示したRFプラズマa−Si感光体成膜装置を用いて、表4に示した条件で直径108mmのAl基体に、第1の層まで堆積した基体を1本製造した。
【0133】
【表4】
Figure 0003929037
【0134】
次いで、堆積済みの基体1本を一旦成膜炉から取り出し、取り出し直後の基体表面の算術平均粗さRaを測定した。測定は、原子間力顕微鏡(AFM)[Quesant社製 Q−Scope250]で行った。その結果、基体表面は10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが42nmであった。次いで、作製した基体表面の加工を行った。表面の加工は、実施例1と同様の手法で行った。その結果、表面の10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが12nmであった。次いで、表面加工後の感光体を図5で示したRFプラズマa−Si感光体成膜炉に戻し、表5に示した条件で第2の層である表面保護層を堆積した。
【0135】
【表5】
Figure 0003929037
【0136】
以上の手順で作製した感光体は正帯電用感光体であり、評価にはキヤノン製iR8500を用いて実施例1と同様の手順で評価した。なお、画像欠陥については、比較例3での値を100%にした場合の相対比較でランク付けを行った。結果は表6に示す。
【0137】
[比較例3]
図5に示したRFプラズマa−Si感光体成膜装置を用いて、表4に示した条件で直径108のAl基体上に、第1の層まで堆積した基体1本を製造した。次いで、堆積済みの基体を一旦成膜炉から取り出し、取り出し直後の基体表面の算術平均粗さRaを測定した。なお測定には、実施例2と同様に原子間力顕微鏡(AFM)[Quesant社製 Q−Scope250]で行った。その結果、基体表面は10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが41nmであった。次いで、表面加工を行わずに図5で示すRFプラズマa−Si感光体成膜炉に戻し、表5に示した条件で第2の層である表面保護層を堆積した。
【0138】
実施例2および比較例3の結果を表6に示す。表6の結果から明らかなように、第1の層の表面をRaが25nm以下になるように加工を施すことで画像欠陥を低減する効果が得られた。更に、剥がれの観察結果から実施例1の感光体は密着性に優れていることが判明した。更に、トナーのすり抜けおよびクリーニングブレードの損傷結果から、実施例1の感光体はクリーニング性に非常に優れていることが明らかとなった。更に、干渉縞の発生は見られず良好な画像が得られた。
【0139】
【表6】
Figure 0003929037
【0140】
[実施例3]
図6に示したVHFプラズマa−Si感光体成膜装置を用いて、表7に示した条件で直径80mmのAl基体上に、第1の層まで堆積した基体を6本製造した。
【0141】
【表7】
Figure 0003929037
【0142】
次いで、堆積済みの基体6本を一旦成膜炉から取り出し、取り出し直後の基体表面の算術平均粗さRaを測定した。測定は、原子間力顕微鏡(AFM)[Quesant社製 Q−Scope250]で行った。その結果、6本の基体表面は10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが48〜58nmの範囲であった。次いで、作製した基体表面の加工を行った。表面の加工は実施例1と同様の手法で行った。その結果、表面の10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが8nmであった。次いで、加工後の基体を図8に示した水洗浄装置洗浄した。その後、図5で示したRFプラズマa−Si感光体成膜炉に戻し、表8に示した条件で第2の層である中間層と上部阻止層と表面保護層を堆積した。
【0143】
【表8】
Figure 0003929037
【0144】
以上の手順で得られた負帯電用感光体は実施例1と同様の手順で評価した。
【0145】
実施例3の結果を表11に示す。実施例3の結果から明らかなように、画像欠陥レベルが非常に良好で、クリーニング性についても非常に良好であった。更に、干渉縞の発生は見られず良好な画像が得られた。また、実施例3においては、第2の層を堆積する前に水洗浄装置により洗浄を行うことで、密着性が向上し特にヒートショック試験および振動試験で優れた結果が得られた。また、第1の層をVHFプラズマa−Si感光体成膜炉で作製することで、堆積膜速度の高速化により成膜時間の短縮が可能となり、さらには一回の成膜で6本作製可能なことから非常に生産性に優れ、コストダウンを得ることが出来る。
【0146】
[実施例4]
図6に示したVHFプラズマa−Si感光体成膜装置を用いて、表9に示した条件で直径80mmのAl基体上に、第1の層まで堆積した基体を6本製造した。
【0147】
【表9】
Figure 0003929037
【0148】
次いで、堆積済みの基体6本を一旦成膜炉から取り出し、取り出し直後の基体表面の算術平均粗さRaを測定した。測定は、原子間力顕微鏡(AFM)[Quesant社製 Q−Scope250]で行った。その結果、6本の基体表面は10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが45〜58nmの範囲であった。次いで、作製した感光体表面の加工を行った。表面の加工は、実施例1と同様の手法で行った。その結果、表面の10μm×10μm視野で算術平均粗さRaが3nmであった。次いで、加工後の基体を図8に示した水洗浄装置により基体を洗浄した。その後、図5で示したRFプラズマa−Si感光体成膜炉に戻し、表10に示した条件でプラズマエッチングを行った後、第2の層である中間層と上部阻止層と表面保護層を堆積した。
【0149】
【表10】
Figure 0003929037
【0150】
以上の手順で得られた負帯電用感光体は実施例1と同様の手順で評価した。
【0151】
実施例4の結果を表11に示す。実施例4の結果から明らかなように、画像欠陥レベルが非常に良好でクリーニング性についても非常に良好であった。更に、干渉縞の発生は見られず良好な画像が得られた。また、実施例4においては、第2の層を堆積する前に水洗浄装置により洗浄を行い、更には第2の層の堆積前にプラズマエッチングを行うことで密着性が向上し、特にヒートショック試験および振動試験で優れた結果が得られた。また、第1の層をVHFプラズマa−Si感光体成膜炉で作製することで、堆積膜速度の高速化により成膜時間の短縮が可能となり、さらには一回の成膜で6本作製可能なことから非常に生産性に優れ、コストダウンを得ることが出来る。
【0152】
【表11】
Figure 0003929037
【0153】
【発明の効果】
以上述べたように、第1ステップとして、排気手段と原料ガス供給手段を備えた真空気密可能な成膜炉内に導電性の表面を有する円筒状基体を設置し、少なくとも原料ガスを高周波電力により分解し、該基体上に少なくとも非単結晶材料からなる第1の層を堆積した基体を製造する工程と、第2ステップとして、該第1の層を堆積した基体を一旦成膜炉から取り出す工程と、第3ステップとして、該第1の層を堆積した基体最表面を10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下にまで加工を施す工程と、第4ステップとして、排気手段と原料ガス供給手段を備えた真空気密可能な成膜炉内で少なくとも原料ガスを高周波電力により分解し、該第1の層上に少なくとも非単結晶材料からなる第2の層を再び堆積させる工程を行うことにより、感光体表面に存在する球状突起が画像上に現れなくなる。その結果、画像欠陥を大幅に改善させることができる電子写真感光体製造方法を提供することが可能となった。更に、電子写真装置においては、感光体表面の粗さや上述した球状突起に起因したクリーニングブレードの損傷や、トナーのすり抜け等のクリーニング不良の発生を抑制できる。また、可干渉光を用いたシステムであっても表面状態に起因した反射の影響を防止することが可能となり、干渉縞の発生を抑制することが可能となる。
【0154】
さらに第3ステップと第4ステップの間に感光体を水と接触さらにはプラズマエッチング処理を行うとさらに良い。具体的には、水洗浄を行い、その後第2の層を堆積する前にプラズマエッチング処理を行うことで密着性が向上し、膜ハガレに対するラチチュードが非常に広くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子写真感光体の球状突起の一例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の球状突起の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の一例を示す模式的断面図である。
【図4】感光体表面が加工される様子を説明する為の模式的断面図である。
【図5】RFプラズマa−Si感光体成膜装置の模式的断面図である。
【図6】VHFプラズマa−Si感光体成膜装置の模式的断面図である。
【図7】本発明に用いた表面研磨装置の模式的断面図である。
【図8】本発明に用いた水洗浄装置の模式的断面図である。
【図9】本発明の電子写真装置の一例の模式的断面図である。
【符号の説明】
101、201、301 導電性の表面を有する基体
102、202、302、402 第1の層
103、203、308、403 球状突起
104、204、404 ダスト
105、205、306 上部阻止層
106、206 球状突起正常堆積部分の境界
303 第2の層
304 下部阻止層
307 表面保護層
401 クリーニングブレード
5100、6100 成膜装置
5110、6110 反応容器、成膜炉
5111、6111 カソード電極
5112、6112 導電性の表面を有する基体
5113、6113 基体加熱用ヒーター
5114、6114 ガス導入管
5115、6115 高周波マッチングボックス
5116、6116 ガス配管
5117 リークバルブ
5118、6118 メインバルブ
5119、6119 真空計
5120、6120 高周波電源
5121 絶縁材料
5123 受け台
5200 ガス供給装置
5211〜5216 マスフローコントローラー
5221〜5226 ボンベ
5231〜5236 バルブ
5241〜5246 流入バルブ
5251〜5256 流出バルブ
5260,6260 補助バルブ
5261〜5266 圧力調整器
6120 回転モーター
6130 放電空間
700 基体
720 弾性支持機構
730 加圧弾性ローラ
731 研磨テープ
732 送り出しロール
733 巻き取りロール
734 定量送り出しロール
735 キャプスタンローラ
801 導電性の表面を有する基体
802 処理部
803 被処理部材搬送機構
811 被処理部材投入台
821 被処理部材洗浄槽
822 洗浄液
831 純水接触槽
832 ノズル
841 乾燥槽
842 ノズル
851 被処理部材搬出台
861 搬送アーム
862 移動機構
863 チャッキング機構
864 エアーシリンダー
865 搬送レール
904 電子写真感光体
905 一次帯電器
906 現像器
906a 現像剤(トナー)
907 転写帯電器
908 クリーナー
908−1 弾性ローラー
908−2 クリーニングブレード
910 除電ランプ
913 転写材
914 送りローラー
A 画像露光(アナログ光、或いはデジタル光)

Claims (10)

  1. 非単結晶材料からなる層を含む電子写真感光体の製造方法において、
    第1ステップとして、排気手段と原料ガス供給手段を備えた真空気密可能な成膜炉内に導電性の表面を有する円筒状基体を設置し、少なくとも原料ガスを高周波電力により分解し、該基体上に少なくとも、非単結晶材料からなる第1の層を堆積する工程と、
    第2ステップとして、該第1の層を堆積した基体を、一旦成膜炉から取り出す工程と、
    第3ステップとして、該第1の層を堆積した基体最表面を、10μm×10μmの視野で測定される算術平均粗さ(Ra)が25nm以下になるように研磨加工を施す工程と、
    第4ステップとして、排気手段と原料ガス供給手段を備えた真空気密可能な成膜炉内で少なくとも原料ガスを高周波電力により分解し、該第1の層上に非単結晶材料を含む第2の層を再び堆積させる工程と
    を有し、
    前記第1の層の少なくとも最表面が、少なくともシリコン原子と炭素原子を母材とし、さらに水素原子及び/またはハロゲン原子を含有する非結晶質材料からなる層を有し、かつ
    前記第2の層は、少なくともシリコン原子と炭素原子を母材とし、水素原子および/またはハロゲン原子を含有する非単結晶材料からなる表面保護層を有する
    ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記第1の層は、少なくともシリコン原子を母材とし、水素原子及び/またはハロゲン原子を含有する非結晶質材料であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記第2の層は、少なくともシリコン原子を母材とし、更に炭素原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含有する非単結晶材料からなる上部阻止層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記第1ステップで使用する成膜炉は、高周波にVHF帯を採用したプラズマCVD方式であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記第4ステップで使用する成膜炉は、高周波にRF帯を採用したプラズマCVD方式であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記研磨加工は、前記第1ステップにおいて堆積された前記第1の層の最表面に研磨テープを弾性ゴムローラを用いて当接させ、前記円筒状基体とともに回転される前記第1の層表面の回転移動速度と、前記研磨テープを当接させる弾性ゴムローラの回転移動速度との間に、相対的な速度差を設けることによりなされることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造方法。
  7. 前記第3ステップにおいて、前記第4ステップに進む前に加工を施した第1の層表面を水と接触させ、洗浄する処理が施されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造方法。
  8. 前記第4ステップにおいて、あらかじめ前記第1の層の最表面をプラズマエッチングした後に、第2の層を堆積させることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により製造された電子写真感光体。
  10. 請求項の電子写真感光体を用いた電子写真装置。
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