以下、本発明について説明する。
本発明者らは、画像流れを防止するためには、感光体表面の平滑性を高めることで、窒素酸化物等の高湿流れ起因物質が表面の凹凸の深いところまで入り込むのを防ぎ、クリーニング工程における摺擦で容易に除去できる状況を構築することが必要であるとの知見を得た。その一方で、感光体表面の平滑性を高めたときに発生しがちなトナー付着の問題をいかに防ぐかを鋭意検討した。その結果、a−Si感光体で従来から問題となっている球状突起が多い感光体を用いて、その球状突起の頭頂部を研磨したものについて耐久試験を行ったところ、高湿流れが発生しにくいのみならず、トナー付着の発生率も低い傾向があることが分かってきた。
球状突起とは、感光体の製造工程で発生する堆積膜の異常成長のことであり、詳しくは次のようなものである。
a−Si膜は堆積膜表面に数μmオーダーのダストが付着していた場合、成膜中にそのダストを核として異常成長、いわゆる“球状突起”が成長してしまうという性質を持っている。
図2は、a−Si感光体の一例を示す模式的断面図である。
導電性支持体201上にa−Si光導電層202が堆積され、a−Si光導電層202には、球状突起203が形成されている。球状突起203は、a−Si光導電層202の途中から形成され、円錐を逆転させた形状で、感光体表面から見ると半球状の突起形状をしている。
球状突起203は、a−Si光導電層202を成長中に、原料ガスの分解種と堆積表面のぬれ性が低く、a−Si膜を形成する堆積表面に付着したダストを覆い隠すように堆積することができないことによる。このため、ダストと堆積表面の境界を埋めることができず、ダスト上に堆積する膜と堆積膜表面に堆積する膜がそれぞれ独立して成長し、結果として球状突起を形成することになる。
この球状突起部分と正常堆積部分との界面では局在準位が非常に多いために低抵抗化しており、帯電電荷が界面を通って支持体側に抜けてしまう。このため、球状突起が存在する部分は、画像上ではべた黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はべた白画像に黒い点となって現れる)、いわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥を形成してしまう。このため、従来は、成膜時のダストの発生を極力抑えることで球状突起の発生個数を減らす努力を続けてきた。
しかし、本発明者らは、意識的にこの球状突起を発生させ、その上で、球状突起の頭頂部のみを研磨することで平らにした感光体を用いて高湿環境での耐久試験を行った。その結果、球状突起の個数が多い感光体ほど高湿流れが発生しにくかった。また、これらの感光体を常温、低湿環境で更に耐久試験を行ってもトナー付着は一切見られず、高湿流れとトナー付着の改善が絶妙なバランスで保たれていることが判明した。
もちろん、ベタ黒画像には、白ポチが全面に生じており、実使用に耐えないものであった。そこで、本発明者らは、球状突起の発生方法に工夫を凝らし、球状突起のサイズを画像に出ない程度以下に小さくすることを思いついた。具体的には、感光体の成膜後半で意識的にダストを発生させることにより、そのダストを起点として球状突起が成長しても成膜終了時点で直径が10μm以下となるように調整した。すると、ベタ黒画像には白ポチは見られず良好な画像が得られ、かつ、高湿流れについても前述の実験と同様の改善効果が見られた。更に、トナー付着も発生しにくい状況が維持されていた。
このような結果が得られた理由については、詳細は明確になっていないが、現在、次のように考えている。すなわち、a−Si感光体は、鏡面研磨された支持体上に堆積されるが、実用上、その膜厚は10μm〜50μmと非常に厚く堆積される。このため、その堆積膜表面は図2に示したように、カリフラワーのようにでこぼこしているのが通常の状態である。このような凹凸の多い表面に、窒素酸化物等の高湿流れ起因物質が付着すると、窪み部分が多いためにクリーナー等による摺察によって取り除きにくくなる。このようなカリフラワー状の感光体に、10μm以下の画像上に現れない球状突起を多数発生させ、かつ、その頭頂部を研磨すると、球状突起部分は平らなために高湿流れ起因物質は容易に取り除くことができ、結果として表面に存在する高湿流れ物質の濃度が低下し、高湿流れが発生しにくくなったものと考えられる。その一方で、球状突起以外の部分は、従来通りカリフラワー状に凹凸があるためにトナーとの接触面積が少なく、トナー付着しにくい状況が維持できたものと考えられる。
また、頭頂部が研磨された球状突起部分は平らな面をしているため、トナーとの接触面積が増えるが、直径が10μm以下であるため、たとえトナー付着が発生しても画像上で認識することができなかったものと考えている。すなわち、本発明に開示されているように、膜堆積中の異常成長によって形成された直径5μm以上、10μm以下の球状突起を70個/cm2以上、300個/cm2以下に調整し、かつ、該球状突起の頭頂部を研磨したことで、感光体表面の平らな面と凹凸の面の割合が絶妙に調整され、高湿流れとトナー付着を共に防止する条件が実現できたものと考えている。球状突起が楕円形の場合、その長径を直径とみなすことができる。以下、本命明細書中で直径といった場合、球状突起が円形の場合はその直径を、楕円あるいは楕円形状の場合はその最大の径を直径と称する。
なお、本発明の電子写真感光体を用いた電子写真装置は、トナーの転写効率の向上が見られた。これは予期せぬ効果であったが、明らかに直径5μm以上、10μm以下の球状突起数と相関を持って効果が現れていることから、本発明の電子写真感光体が何らかの良き影響を及ぼしていることは間違いないものと考えられる。
本発明は、以上の知見に基づいて完成されたものである。
以下に図面を用いて本発明を具体的に説明する。
図1は本発明による電子写真感光体の模式的な断面図であり、導電性支持体101上にa−Si光導電層102が堆積され、a−Si光導電層102には、球状突起103が形成されている。
本発明では、球状突起103のうち、感光体表面から見た直径(球状突起が真円でない場合は長径の長さ)が5μm〜10μmの密度が70個/cm2以上、300個/cm2以下である。何れの球状突起も、その頭頂部は研磨によって平らになっており、球状突起以外のa−Si光導電層102の表面(以下、マトリックス部分と称す)は、カリフラワー状に凹凸が成長していることが分かる。
球状突起103の大きさを5μm〜10μmとする理由は、5μm以上のサイズから高湿流れの改善効果が見られるようになるためであり、10μm以下とするのは、画像品質に対してポチの悪化やざらつきなどの弊害が発生しにくいからである。また、球状突起を70個/cm2以上、300個/cm2以下とするのは、70個/cm2以上で高湿流れを改善する効果が見られるようになり、300個/cm2以下とすることで、画像品質のざらつき、ガサツキといった均一性の低下を防止できるからである。更に本発明の効果を顕著に得るためには、120個/cm2以上、200個/cm2以下の範囲がより好ましいことが実験により判明した。
本発明においては、直径が5μm〜10μmの球状突起が70個/cm2以上、300個/cm2以下にする必要があるが、同時に、直径が10μmを越える球状突起は少なくする必要がある。これは、直径が10μmを越える球状突起の場合、プロセス条件や、環境条件によっては、画像上にポチとして現れる場合があるからである。従って、画像欠陥を防ぎ、良好な画質を保つためには、10μmを越える球状突起は15個/cm2以下に、更に好ましくは5個/cm2以下に抑える必要がある。従って、本発明の効果を得るためには、単に全体の球状突起数を増やすのではなく、直径5μm〜10μmの球状突起を選択的に増やすことがポイントとなる。
直径5μm〜10μmの球状突起を70個/cm2以上、300個/cm2以下に調整するには、感光体を成膜している途中でダストを発生させればよい。成膜の後半にダストを発生させるほど、形成される球状突起は小さいものとなる傾向があるが、製造条件によっても影響を受けるため、あらかじめダストを発生させるタイミングと形成される球状突起の大きさの相関を調べておくことで、任意の大きさの球状突起を形成することができる。
ダストの発生方法としては、一例として、成膜の途中で一旦放電を止め、成膜炉内のガスを一旦排気した後、HEPAフィルター等で濾過することにより希望のダスト量に調整された気体(例えばエアー(大気)、窒素、アルゴン、ヘリウム等)を成膜炉内に導入し、球状突起の核となるダストを成膜途中の感光体上に付着させる。その後真空に排気して再度成膜を続ければよい。
発生する球状突起の個数は、導入する気体のダスト量や圧力、導入から排気までの時間を調整することで制御可能である。導入する気体のダスト量は、一例として0.3μm〜2μmのサイズの粒子が100個/cf(feet3)(3530個/m2)〜10000個/cf(353000個/m2)程度のものが好適に用いられる。
尚、気体中のダスト量は、市販のパーティクルカウンター(例えばリオン(株)製パーティクルカウンター:KC−01Bなど)で容易に測定が可能である。
また、他の方法としては、成膜中の成膜炉に振動を与えてダストを発生させても良い。さらに成膜途中で原料ガスの流量を急激に変化させ、その変動によって成膜炉壁からダストを発生させても良い。また、原料ガス供給配管の途中にダスト発生源を設けておき、それを外部から振動させることにより、原料ガスにダストを混入させることも好ましい。この場合、成膜途中で放電を停止することなくダストの導入が行えるため、光導電層の密着性アップという意味では、より好ましい方法である。
本発明において、球状突起の頭頂部を研磨する方法としては、ラッピングテープなどの研磨テープによる方法や、バフ研磨による方法など、いかなる方法でも用いることができるが、何れの研磨方法を用いても、球状突起の頭頂部の高さは堆積面のマトリックス部分よりも高いため、選択的に研磨されることになる。このため、特別な手段を用いなくても球状突起の頭頂部が研磨されて平らになった時点ではマトリックス部分の凹凸は削れておらず、そのままの状態が維持される。
球状突起の頭頂部を研磨することによって、頭頂部の高さは1μm以下にされることが好ましい。1μm以下に研磨することで高湿流れを効果的に防止することが可能となる。本発明において、球状突起の頭頂部を研磨するとは、頭頂部の高さを研磨手段によって1μm以下にすることを意味している。
尚、頭頂部の高さとは、マトリックス部分から球状突起頭頂部までの鉛直方向の距離のことである。尚、球状突起の頭頂部は研磨しても高さを0μm以下にすることはできないことは言うまでもない。
球状突起の頭頂部を研磨する表面研磨装置の一例を図3に示す。
図3に示す表面研磨装置の構成は、a−Si膜が堆積された円筒状の支持体300は、弾性支持機構320に取り付けられる。図3に示す装置において、弾性支持機構320は、例えば、空気圧ホルダーが利用され、具体的には、ブリジストン社製空気圧式ホルダー(商品名:エアーピック、型番:PO45TCA*820)が用いられる。加圧弾性ローラ330は、研磨テープ331を加工対象物300のa−Si膜表面に押圧させる。研磨テープ331は、送り出しロール332から供給され、巻き取りロール333に回収される。その送り出し速度は、定量送り出しロール334とキャプスタンローラ335により調整され、また、その張力も調整されている。研磨テープ331には、通常ラッピングテープと呼ばれるものが好適に利用される。
a−Si等の非単結晶材料の光導電層等の表面を加工する際、研磨テープには、砥粒としてはSiC、Al2O3、Fe2O3などが用いられる。具体的には、富士フィルム社製ラッピングテープLT−C2000を用いた。加圧弾性ローラ330は、そのローラ部は、ネオプレンゴム、シリコンゴムなどの材質からなり、JISゴム硬度20〜80の範囲、より好ましくはJISゴム硬度30〜40の範囲とされている。また、ローラ部形状は、長手方向において、中央部の直径が両端部の直径より若干太いものが好ましく、例えば、両者の直径差が0.0〜0.6mmの範囲、より好ましくは、0.2〜0.4mmの範囲となる形状が好適である。加圧弾性ローラ330は、回転する加工対象物(円筒状支持体上の堆積膜表面)300に対して、加圧圧力0.05MPa〜0.2MPaの範囲で加圧しながら、研磨テープ331、例えば、上記のラッピングテープを送り堆積膜表面の研磨を行う。
前記研磨テープを利用する手段以外に、バフ研磨のような湿式研磨の手段を利用することも可能である。また、湿式研磨の手段を利用する際には、研磨加工後、研磨に利用する液の洗浄除去を施す工程を設けてもよい。
本発明において使用される導電性支持体101の材料としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属、及びこれらの合金、例えばステンレス等が挙げられる。
また、導電性支持体の材料として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミック等の電気絶縁性材料を用いて、導電性支持体の少なくとも光受容層を作製する側の表面を導電処理し、導電性支持体として用いることができる。
使用される導電性支持体の形状は平滑表面あるいは微小な凹凸表面を有する円筒型または無端ベルト型とすることができ、その厚さは、所望通りの電子写真感光体を形成し得るように適宜決定する。電子写真感光体としての可撓性が要求される場合には、導電性支持体としての機能が十分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。しかしながら、導電性支持体は、製造上及び取り扱い上、機械的強度等の点から、通常10μm以上とすることが好ましい。
光導電層102は、本発明ではシリコン原子を母体とし、更に水素原子及び/又はハロゲン原子を含む非晶質材料で構成される。
a−Si膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成可能であるが、プラズマCVD法を用いて形成した膜は特に高品質の膜が得られるため好ましい。原料としてはSiH4、Si2H6、Si3H8、Si4H10等のガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)を原料ガスとして用い、高周波電力によって分解することによって形成可能である。更に層形成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si2H6が好ましいものとして挙げられる。
このとき、支持体の温度は、200℃〜450℃、より好ましくは250℃〜350℃程度の温度に保つことが特性上好ましい。これは支持体表面での表面反応を促進させ、充分に構造緩和をさせるためである。また、これらのガスに更にH2あるいはハロゲン原子を含むガスを所望量混合して層形成することも特性向上の上で好ましい。ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なのは、弗素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF5、IF7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばSiF4、Si2F6等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。
本発明においては、光導電層には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子としては第13族原子または第15族原子を用いることができる。
光導電層に含有される伝導性を制御する原子の含有量としては、好ましくは1×10-2〜1×104原子ppm、最適には1×10-1〜1×103原子ppmとされるのが好ましい。
第13族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B2H6、B4H10、B5H9、B5H11、B6H10、B6H12、B6H14等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH3)3、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。中でもB2H6は取り扱いの面からも好ましい原料物質の一つである。
第15族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH3、P2H4等の水素化燐、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PI3等のハロゲン化燐、さらにPH4I等が挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等が第15族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げられる。
また、これらの伝導性制御用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
光導電層の層厚としては特に限定はないが、製造コストなどを考慮すると 10〜50μm程度が適当である。
更に、特性を向上させる為に光導電層を複数の層構成にしても良い。例えばよりバンドギャップの狭い層を表面側に、よりバンドギャップの広い層を基板側に配置することで光感度や帯電特性を同時に向上させることができる。特に、半導体レーザーの様に、比較的長波長であって且つ波長ばらつきのほとんどない光源に対しては、こうした層構成の工夫によって画期的な効果が現れる。
本発明では、図4に示すように、光導電層402の下層として、下部阻止層404、光導電層402の上層として表面保護層405を設けても良い。
下部阻止層404は、一般的にa−Si膜をベースとし、13族元素、15族元素などのドーパントを含有させることにより伝導型を制御し、支持体からのキャリアの注入阻止能を持たせることが可能である。この場合、必要に応じて、炭素、窒素、酸素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素を含有させることで応力を調整し、感光層の密着性向上の機能を持たせることができる。
下部阻止層のドーパントとして用いられる13族元素、15族元素としては前述したものが用いられる。
ドーパントの原子の含有量としては、好ましくは1×10-2〜1×104原子ppm、最適には5×10-2〜5×103原子ppmである。
また、炭素供給用ガスとなり得る物質としては、CH4、C2H2、C2H6、C3H8、C4H10等のガス状態の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、炭素供給効率の良さ等の点でCH4、C2H2、C2H6が好ましいものとして挙げられる。
窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質としては、NH3、NO、N2O、NO2、O2、CO、CO2、N2等のガス状態の、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。
表面保護層405の材質としてはa−Si系の材料を用いることが好ましい。この場合、光導電層402とシリコン原子という共通の構成要素を有するので、積層界面において化学的な安定性が十分に確保される。
表面保護層は、炭素、窒素、酸素より選ばれた元素を少なくとも1つ含むシリコン原子との化合物が好ましく、特にa−SiCを主成分としたものが好ましい。
表面保護層が炭素、窒素、酸素のいずれか一つ以上を含む場合、これらの原子の含有量はシリコン原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子の総和に対して40原子%から100原子%未満の範囲が好ましい。特に、高湿流れに対しては、これらの原子の含有量を95原子%以上とすることが特に効果的である。炭素、窒素、酸素の含有量を40原子%以上とすることで、充分な機械強度と、光透過性、電荷保持能力、撥水性を持たせることができる。また、100原子%未満とすることで、機械強度や光透過性の低下を防止することができる。
また、表面保護層中に水素原子および/またはハロゲン原子が含有されることが好ましいが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に電荷保持特性が向上するためである。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には40〜60原子%とするのが好ましい。また、弗素原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適には0.5〜5原子%とされるのが好ましい。
これらの水素および/または弗素含有量の範囲内で形成される感光体は、実際面において優れたものとして充分適用させ得るものである。すなわち、表面保護層内に存在する欠陥(主にシリコン原子や炭素原子のダングリングボンド)は、電子写真感光体としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば自由表面から電荷の注入による帯電特性の劣化、使用環境、例えば高い湿度のもとで表面構造が変化することによる帯電特性の変動、更にコロナ帯電時や光照射時に光導電層より表面保護層に電荷が注入され、表面保護層内の欠陥に電荷がトラップされることによる繰り返し使用時の残像現象の発生等が、この悪影響として挙げられる。
しかしながら、表面保護層内の水素含有量を30原子%以上に制御することで表面保護層内の欠陥が大幅に減少し、その結果、従来に比べて電気的特性面及び高速連続使用性において向上を図ることができる。一方、表面保護層中の水素含有量を70原子%以下とすることで、表面保護層の硬度低下などの弊害を防止できる。従って、水素含有量を前記の範囲内に制御することが優れた所望の電子写真特性を得る上で重要な因子の1つである。
さらに表面保護層には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子としては、前述の第13族原子、または第15族原子を用いることができる。
表面保護層の層厚としては、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μm、最適には0.1〜1μmとされるのが好ましいものである。層厚を0.01μm以上とすることで充分な機械強度が得られ、3μm以下とすることで残留電位の増加といった弊害を抑えることができる。
図5は、本発明の電子写真感光体を作成するために供される、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による堆積装置の一例を模式的に示した図である。
この装置は大別すると、反応容器501、反応容器内を減圧する為の排気装置508から構成されている。反応容器501内にはアースに接続された導電性の受け台507の上に円筒状の導電性支持体502が設置され、更に導電性支持体の支持体加熱ヒーター503、原料ガス導入管505が設置されている。又、カソード電極506は導電性材料からなり、絶縁碍子513によって絶縁されている。カソード電極はマッチングボックス511を介して13.56MHzの高周波電源512が接続されている。
不図示の原料ガス供給装置の各構成ガスのボンベは原料ガス導入バルブ509を介して反応容器501内のガス導入管505に接続されている。
以下、図5の装置を用いた、電子写真感光体の形成方法の一例について説明する。
例えば表面を旋盤を用いて鏡面加工を施した導電性支持体502を導電性受け台507に取りつけ、反応容器501内の支持体加熱ヒーター503を包含するように取りつける。
次に、ガス供給装置内の排気を兼ねて、原料ガス導入バルブ509を開き、メインバルブ515を開いて反応容器501及び原料ガス導入管505を排気する。真空計510の読みが0.67Pa以下になった時点で原料ガス導入バルブ509から加熱用の不活性ガス、一例としてアルゴンを原料ガス導入管505より反応容器501に導入し、反応容器501内が所望の圧力になるように加熱用ガスの流量および、メインバルブ515の開口あるいは排気装置508の排気速度を調整する。その後、不図示の温度コントローラーを作動させて導電性支持体502を支持体加熱ヒーター503により加熱し、導電性支持体502の温度を20℃〜500℃の所定の温度に制御する。導電性支持体502が所望の温度に加熱されたところで、不活性ガスを徐々に止めると同時に、成膜用の所定の原料ガス、例えばSiH4、Si2H6、CH4、C2H6などの材料ガスを、またB2H6、PH3などのドーピングガスを不図示のミキシングパネルにより混合した後に反応容器501内に徐々に導入する。次に、不図示のマスフローコントローラーによって、各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器501内が0.1Paから数100Paの圧力に維持するよう真空計510を見ながらメインバルブ515の開口あるいは排気装置508の排気速度を調整する。
以上の手順によって成膜準備を完了した後、導電性支持体502上に光導電層の形成を行なう。内圧が安定したのを確認後、高周波電源512を所望の電力に設定して高周波電力をカソード電極506に供給し高周波グロー放電を生起させる。このときマッチングボックス511を調整し、反射波が最小となるように調整し、高周波の入射電力から反射電力を差し引いた値を所望の値に調整する。この放電エネルギーによって反応容器501内に導入させた各原料ガスが分解され、導電性支持体502上に所定の堆積膜が形成される。なお、膜形成を行っている間は導電性支持体502を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させても良い。
本発明に従って、直径5μm〜10μmの球状突起を70個/cm2以上、300個/cm2以下に調整するには、光導電層を成膜している途中で一旦放電を止め、成膜炉内のガスを排気する。その後、HEPAフィルター等で濾過することにより0.3〜2μm程度の大きさのダストを100〜10000個/cf(3530〜353000個/m2)に調整した気体(例えばエアー、窒素、アルゴン、ヘリウム等)を成膜炉内に導入し、球状突起の核となるダストを成膜途中の感光体上に付着させる。付着させるダストの個数は、導入する気体のダスト量や圧力、導入から排気するまでの時間を調整することで所望の値とすることができる。その後、成膜炉を真空に排気して再度原料ガスを導入し、同様の手順で成膜を続ける。形成される球状突起の大きさは、ダストを導入する時期を変えることで調整可能である。ダストを導入する時期を成膜後半にするほど、形成される球状突起は小さいものとなる。従って、あらかじめダストを導入する時期と形成される球状突起の大きさの相関を調べておくことで、所望の大きさの球状突起を形成することができる。
所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器501への各原料ガスの流入を止めて反応容器内を一旦高真空に排気した後に層の形成を終える。上記のような操作を繰り返し行うことによって、感光体は形成される。
図6はVHFプラズマCVD法による電子写真感光体の形成装置(量産型)の一例の模式図である。
反応容器601は誘電体部材601(a)と上蓋601(b)から成る。反応容器601の下部には排気配管609が接続され、排気配管609の他端は不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)に接続されている。反応容器601の中心部を取り囲むように、堆積膜の形成される複数の導電性支持体605が互いに平行になるように同一円周上に配置されている。複数の導電性支持体605は支持体加熱ヒーター607を内蔵した導電性の受け台606によって各々保持されている。そして、反応容器601内にはSiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3、Ar、He等のガスボンベからなる不図示のガス供給装置に接続されたガス供給手段610があり、反応容器601の外にはカソード電極602が設置されている。カソード電極602には、高周波電源603がマッチングボックス604と高周波電力分岐手段612を介して接続されている。さらに、導電性支持体605は各々の回転機構608によって、回転可能になっている。
図6の装置を用いた、電子写真感光体の形成方法の手順はカソードと導電性支持体の配置が異なることと、常に導電性支持体が回転機構608によって駆動されていることを除いて、基本的に図5の装置の方法と同様である。
以上のようにして作製したa−Si感光体を用いた電子写真装置の一例を、図7に示す。
なお、本例の電子写真装置は、円筒状の電子写真感光体を用いる場合に好適なものであるが、本発明の電子写真装置は本例に限定されるものではなく、感光体形状は無端ベルト状等の所望のものであってよい。
図7において、矢印X方向に回転する感光体701の周辺には、主帯電器702、静電潜像形成部位703、現像器704、転写帯電器706a、分離帯電器706b、クリーナー707、搬送系708、除電光源709などが配設されている。
以下、さらに具体的に画像形成プロセスを説明すると、感光体701は+6〜8kVの高電圧を印加した主帯電器702により一様に帯電され、これに静電潜像形成部位703より発するレーザー露光Lにより静電潜像が形成される。この潜像に現像器704からトナーが供給されてトナー像となる。
一方、転写紙供給系より感光体方向に供給される転写材Pは+7〜8kVの高電圧を印加した転写帯電器706aと感光体701の間隙において背面から、トナーとは反対極性の電界を与えられ、これによって感光体表面のトナー像は転写材Pに転移する。12〜14kVp−p、300〜600Hzの高圧AC電圧を印加した分離帯電器706bにより、転写材Pは転写紙搬送系708を通って定着装置(不図示)に至り、トナー像は定着されて装置外に排出される。感光体701上に残留するトナーはクリーナーユニット707内に設置したクリーニングブレードにより掻き落とされ、残留する静電潜像は除電光源709によって消去される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図5に記載のプラズマCVD装置を用いて表1に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上にa−Siから成る電子写真感光体を成膜した。成膜の手順は前述した方法に従った。
本実施例では、光導電層を28μm堆積した時点で一旦放電を停止し、原料ガスを停止した後にHEPAフィルターで濾過することにより0.3〜1μmの粒子を5000個/cf(176500個/m2)に調整したエアーを500Torr成膜炉に導入し、5分間保持した後に再度、真空排気することで球状突起の核となるダストを成膜途中の感光体上に付着させた。尚、エアー中の粒子数は、リオン(株)製パーティクルカウンター(KC−01B)を用いて測定した。
ダストを付着させた後は、光導電層の成膜を再開し、表面保護層まで膜堆積を行った。このようにして、5〜10μmの球状突起が約180個/cm2の密度で存在する感光体を作製した。
次に、得られた感光体の球状突起の頭頂部分を図3の研磨装置を使って研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
(比較例1)
実施例1と同様に、図5に記載のプラズマCVD装置を用いて表1に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上にa−Siから成る電子写真感光体を成膜した。但し、本比較例では、途中でダストを付着させることなく成膜を連続して行い、電子写真感光体を完成させた。
得られた感光体は、図3の研磨装置を使って研磨し、球状突起の頭頂部分の高さを1μm以下にした。
(比較例2)
実施例1と同様の製法で、5〜10μmの球状突起が約180個/cm2の密度で存在するa−Si感光体を作製した。但し、本比較例では成膜後、球状突起の頭頂部分を研磨せず、そのままの状態とした。
(比較例3)
実施例1と同様に、図5に記載のプラズマCVD装置を用いて表1に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上にa−Siから成る電子写真感光体を成膜した。但し、本比較例では、光導電層を32μm堆積した時点で一旦放電を停止し、原料ガスを停止した後にHEPAフィルターで濾過することにより0.3〜0.5μmの粒子を5000個/cf(176500個/m2)に調整したエアーを500Torr成膜炉に導入し、5分間保持した後に再度、真空排気することで球状突起の核となるダストを成膜途中の感光体上に付着させた。ダストを付着させた後は、光導電層の成膜を再開し、表面保護層まで膜堆積を行った。このようにして、1μm以上、5μm未満の球状突起が約180個/cm2の密度で存在する感光体を作製した。
次に、得られた感光体の球状突起の頭頂部分を図3の研磨装置を使って研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
実施例1、比較例1〜3の感光体は、球状突起、白ポチ、高湿流れ、トナー付着、がさつきについて以下の手順に従って評価を行い、結果を表2に示した。
(球状突起)
得られた感光体の表面を光学顕微鏡で観察することにより球状突起数を数えた。感光体の上(感光体中央から13cm上方)、中、下(感光体中央から13cm下方)について、それぞれ10cm2観察し、平均を取った。球状突起サイズは、1μm以上、5μm未満のものと、5μm〜10μmのものと、10μmを越えるものを数え、1cm2当たりの個数に換算した。
(白ポチ)
作製した電子写真用感光体をキヤノン製複写機iR5000改造機に設置し、プロセススピード265mm/sec、前露光(波長660nmのLED)光量4lx・s、主帯電器の電流値1000μAの条件にて画像形成を行い、A3サイズの黒原稿を複写した。こうして得られた画像を観察し、直径0.2mm以上の白ポチの個数を数えた。
得られた結果は、比較例1での値を100%とした場合の相対比較でランク付けを行った。
◎… 比較例1より改善。
○… 比較例1と同等。
△… 比較例1より悪化したが、実用上問題なし。
×… 実用上問題が出る場合がある。
(高湿流れ)
電子写真感光体をキヤノン製複写機iR5000改造機に設置し、上記のプロセス条件で30℃/80%の高温・高湿環境にてA4コピー用紙を縦送りで通紙しながら1日2万枚、計10万枚の複写耐久を行なった。
夜間はその後、本体電源、および感光体の加温ヒーターをオフにし、夜間、12時間以上同一環境で放置した。そして、次の日、朝一番に電源を入れ、ウォームアップ完了と同時に画像出しを行い画像流れの評価を行った。
画像は白地に6ポイント以下の文字を全面に印字したテストチャートを原稿台に置き、通常の露光量でコピーをとった。得られたコピー画像を観察し、画像上の細線がぼけていないか評価した。更にハーフトーンチャートをコピーし、得られたコピー画像に白抜けがないかを目視で確認した。但し、この時画像上でムラがある時は、全画像領域で一番悪い部分の結果を示した。
◎… 10万枚耐久後も、文字、およびハーフトーン共に鮮明な複写画像が得られた。
○… 耐久中にハーフトーンに一部濃度の薄い部分が発生したが文字は鮮明で良好。
△… 10万枚耐久後、文字の一部がかすれているが、判読可能で問題なし
×… 耐久途中で、文字の一部が判読できなくなった。
(トナー付着)
加温手段により電子写真感光体の表面温度が50℃になるようにコントロールし、25℃、相対湿度10%の環境条件でA4版の連続通紙耐久を10万枚行い、トナー付着の加速試験を行った。但し、原稿は白地に1mm幅の黒ラインがたすき状に1本プリントされた1ラインチャートを使用することで、トナー供給が不足気味となるようにし、クリーニングブレードによる摺察でトナー付着しやすくなる環境を作り出した。
耐久2万枚経過ごとに、現像器位置に於ける暗部電位が400Vになるように主帯電器の帯電電流量を調整し、原稿台にベタ白の原稿を置き、明部電位が50Vになるように露光量を調整し、A3版のベタ白画像を作成した。この画像によってトナーの付着により発生する黒ポチを観察し、更に顕微鏡により感光体表面を観察した。
◎… 10万枚耐久後も画像に黒ポチはなく、感光体表面にトナー付着もなく良好。
○… トナー付着が発生・消滅を繰り返すが、それ以上成長せず、画像も問題なし。
△… 感光体表面にトナー付着が僅かに認められるが、画像レベルは規格内。
×… 画像に規格外の黒ポチが発生し、実用上問題となる場合がある。
(がさつき)。
上記の通紙耐久終了後、人物画像のサンプルチャートをコピーし、得られた複写画像を目視、10倍ルーペで点検した。そして、次の基準を設けて4段階に評価した。
◎… 10倍のルーペで観察してもガサツキはなく、非常に良好。
○… 10倍のルーペで僅かにガサツキが観察されるが、目視では見えず、良好。
△… 目視でかすかにガサツキが見られる部分もあるが、実用上、問題なし。
×… 目視でガサツキが見られ、複写画像によっては問題となる場合がある。
(転写効率)
上記の高湿流れ、トナー付着の評価で行った、合計20万枚の通紙耐久終了後、廃トナー容器にたまっている廃トナーの重量を測定した。同時に消費されたトナーの総重量を求め、転写効率を計算した。評価は比較例1の感光体を基準として以下のように行なった。
◎… 比較例1より30%以上改善。
○… 比較例1より10%以上改善。
△… 比較例1と同等。
×… 比較例1より悪化。
(実施例2)
図5に記載のプラズマCVD装置を用いて表1に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上にa−Siから成る電子写真感光体を成膜した。成膜の手順は前述した方法に従った。
光導電層を30μm堆積した時点で一旦放電を停止し、原料ガスを停止した後に0.3〜1μmの粒子の個数を様々に変化させたエアーを500Torr成膜炉に導入し、5分間保持した後に再度、真空排気することで球状突起の核となるダストを成膜途中の感光体上に付着させた。ダストを付着させた後は、成膜を再開し、表面保護層まで膜堆積を行った。このようにして、本実施例においては5〜10μmの球状突起の密度を70個/cm2〜300個/cm2の間で変化させた感光体2−1〜2−5を作製した。
次に、得られた感光体の球状突起の頭頂部分を図3の研磨装置を使って研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
(比較例3)
実施例2と同様の手順で、5〜10μmの球状突起の密度が61個/cm2の感光体H3−1と322個/cm2の感光体H3−2を作製した。
実施例2と比較例3の感光体は実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例3)
図5に記載のプラズマCVD装置を用いて表4に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上にa−Siから成る電子写真感光体を成膜した。成膜の手順は実施例1に従った。
但し、本実施例では、成膜を開始する前と光導電層を17μm堆積した後の2回、導電性支持体(感光体)を0.3〜2μmの粒子を2000個/cf(70600個/m2)含んだエアーに触れさせることで、5〜10μmの球状突起は約180個/cm2にコントロールしつつ、10μmを越える球状突起の個数を1〜20個/cm2に変化させた。こうして感光体3−1〜3−6を作製した。その後、感光体の球状突起の頭頂部分を図3の研磨装置を使って研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
実施例3の感光体は実施例1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。表5によれば、10μmを越える球状突起数を15個/cm2以下とすることで白ポチレベルを悪化させることなく本発明の効果が得られることがわかる。さらに、5個/cm2以下とすることで更に白ポチレベルが改善し、良好な画像が得られた。
(実施例4)
図5に記載のプラズマCVD装置を用いて表6に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上にa−Siから成る電子写真感光体を成膜した。成膜の手順は前述した方法に従った。光導電層を20μm堆積した時点で一旦放電を停止し、原料ガスを停止した後に0.3〜0.5μmの粒子を2000個/cf(70600個/m2)に調整したエアーを100Torr成膜炉に導入し、1分間保持した後に再度、真空排気することで球状突起の核となるダストを成膜途中の感光体上に付着させた。ダストを付着させた後は、成膜を再開し、表面保護層まで膜堆積を行った。このようにして、5〜10μmの球状突起が約80個/cm2の密度で存在する感光体を作製した。
本実施例では、表面保護層形成時にCH4流量を変化させることにより、膜中の炭素量を35原子%〜98原子%に変化させた感光体4−1〜4−8を作製した。
更に感光体の球状突起の頭頂部分を図3の研磨装置を使って研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
得られた感光体は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表7に示す。表7から分かるように、表面保護層の炭素量が40原子%〜100原子%未満において良好な結果が得られているが、特に95原子%〜100原子%未満では、高湿流れが良好であった。尚、炭素量が35原子%の感光体は、耐久終了後に感光体表面を観察すると、表面保護層に僅かにスジ削れが発生していた。
(実施例5)
図5に記載のプラズマCVD装置を用いて表8に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上に表面保護層がアモルファス窒化シリコンから成るa−Si電子写真感光体を成膜した。
光導電層を25μm堆積した時点で、成膜炉に外部から振動を与えることで球状突起の核となるダストを成膜途中の感光体上に付着させた。ダストを付着させた後は、引き続き表面保護層まで膜堆積を行った。このようにして、得られた感光体は5〜10μmの球状突起が約120個/cm2の密度で存在していた。
更に感光体の球状突起の頭頂部分を図3の研磨装置を使って研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
得られた感光体は実施例1と同様の評価を行った。その結果、実施例1と同様の非常に良好な結果が得られた。このことから、本発明の感光体は、アモルファス窒化シリコンから成る表面保護層を用いても、同様の効果が得られることが判明した。
(実施例6)
図5に記載のプラズマCVD装置を用いて表9に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上に表面保護層がアモルファス酸化シリコンから成るa−Si電子写真感光体を成膜した。
光導電層を25μm堆積した時点で、H2ラインのガスバルブを閉じ、1秒後に開ける、という動作を行うことでガスの流れに急激な変化を与えた。このようなガスの変動を与えることで成膜炉内にダストを発生させ、成膜途中の感光体上に付着させた。ダストを付着させた後は、引き続き表面保護層まで膜堆積を行った。このようにして得られた感光体は、5〜10μmの球状突起が約150個/cm2の密度で存在していた。
更に感光体の球状突起の頭頂部分を図3の研磨装置を使って研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
得られた感光体は実施例1と同様の評価を行った。その結果、実施例1と同様の非常に良好な結果が得られた。このことから、本発明の感光体は、アモルファス酸化シリコンから成る表面保護層を用いても、同様の効果が得られることが判明した。
(実施例7)
図6に記載のプラズマCVD装置を用いて表10に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上にa−Siから成る電子写真感光体を成膜した。成膜の手順は前述した方法に従った。
本実施例では、光導電層を30μm成膜した時点で、原料ガスを成膜炉に導入しているガス配管に振動を与えることでダストを発生させ、成膜途中の感光体上に付着させた。ダストを付着させた後は、引き続き表面保護層まで膜堆積を行った。
このようにして得られた感光体は、5〜10μmの球状突起が約200個/cm2の密度で存在していた。
次に、得られた感光体の球状突起の頭頂部分を図3の研磨装置を使って研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
得られた感光体は実施例1と同様の評価を行った。その結果、実施例1と同様の非常に良好な結果が得られた。このことから、本発明の感光体は、感光体の製造方法に依存しないことが明確となった。
(実施例8)
実施例5と同様の手順で、図6に記載のプラズマCVD装置を用いて表10に示した条件によりアルミニウムからなる導電性支持体上にa−Siから成る電子写真感光体を成膜した。
こうして得られた電子写真感光体に対して、本実施例では、バフ研磨を用いて感光体の球状突起の頭頂部分を研磨し、頭頂部分の高さを1μm以下にした。
感光体は実施例1と同様の評価を行った。その結果、実施例1と同様の非常に良好な結果が得られた。このことから、球状突起の頭頂部の研磨方法としてバフ研磨を用いても何ら支障はないことが明らかとなった。
本発明で得られた電子写真用の感光体を、背景技術で説明した電子写真装置に組み込むことにより、電子写真装置が大幅に改善することができることは言うまでもない。