JP3548327B2 - 電子写真用光受容部材 - Google Patents

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    • G03G5/08221Silicon-based comprising one or two silicon based layers

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光等(ここでは広義の光であって紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線などを意味する。)の電磁波に対して感受性のある電子写真用光受容部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
像形成分野において、電子写真用光受容部材の光受容層を形成する光導電材料は、高感度で、SN比が高く、照射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクトル特性を有すること、光応答性が速く、所望の暗抵抗値を有すること、使用時において人体に対して無公害であること等の諸特性が要求される。こうした要求を満たす光導電材料にアモルファスシリコン(以後、A−Siと表記する)があり、例えば、特開昭54−86341号公報には電子写真用光受容部材としてその応用が記載されている。
【0003】
また、特開昭57−11556号公報には、A−Si堆積膜で構成された光導電層を有する光導電部材の、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、光学的、光導電的特性及び耐湿性等の使用環境特性、さらには経時的安定性について改善を図るため、シリコン原子を母体としたアモルファス材料で構成された光導電層上に、シリコン原子及び炭素原子を含む非光導電性のアモルファス材料で構成された表面障壁層を設ける技術が記載されている。
【0004】
更に、特開昭60−67951号公報には、アモルファスシリコン、炭素、酸素及び弗素を含有してなる透光絶縁性オーバーコート層を積層する感光体についての技術が記載されている。また、特開昭62−168161号公報には、表面層として、シリコン原子と炭素原子と41〜70原子%の水素原子を構成要素として含む非晶質材料を用いる技術が記載されている。特開昭59−102239号公報には、フリーデルクラフツ触媒でアモルファスシリコン系感光体の表面を処理する技術が開示されている。また、特開昭59−102240号公報には、アモルファスシリコン系感光体の表面を有機金属化合物で処理する技術が開示されている。
【0005】
特開昭60−28658号公報には、金属原子及び/又は金属イオンが含有されているアモルファスシリコン系の表面保護層が開示されており、金属としては周期律表第IIIb(13)族、第IVb(14)族、第Vb(15)族、第VIb(16)族、第VIIb(17)族、第VIII(18)族、第Ib(11)族または第IIb(12)族に属する遷移金属及びフリーデルクラフツ触媒を構成する金属が挙げられている。特開昭61−231558号公報には電子写真感光体表面と固相反応を生じる金属を接触させて生じる固相反応生成物の少なくとも一部を機械的に除去することにより画像流れ特性を著しく向上させる技術が開示されている。更に、特開平1−246120号公報にはマグネシウムやカルシウムのような2価の金属元素を含有するアモルファスシリコン膜が開示されている。
【0006】
これらの技術によれば、電子写真用光受容部材の電気的、光学的、光導電的特性及び使用環境特性、耐久性を向上させ、更に、画像品位の向上もある程度可能である。
【0007】
ところで近年、電子写真装置の高機能化が非常に進んできている。例えば、フルカラーコピー機の普及が挙げられる。フルカラーコピー機による形成画像は近年ますます高画質化しており、更なる高画質化を求められている。フルカラーコピー機では、濃度の濃い画像の諧調性や再現性は良好であるが、例えば人間の肌や、青い空といった淡い色の再現性においては諧調性が十分でない場合があり、画像ががさついてしまうことがあった。カラー複写機の諧調性を決める要素としては3原色の濃度を決定するビット数だけではなく、電子写真用光受容部材側の特性である、紙などの被記録材へのトナーの転写効率も密接に関連している。すなわち、淡い色を再現する場合は現像により電子写真用光受容部材上に付着されているトナーの量も少ないので、該部材上のトナーを紙に転写するときにわずかでも転写量が変化すると濃度的には大きく変化する。この変化は画質的には濃度のガサツキとして現れる。このため、より高画質のフルカラー複写機を開発していくうえで電子写真用光受容部材自身の転写効率特性を更に向上することが求められている。
【0008】
更に、現在の複写機システムでは紙などの被記録材に転写した後に電子写真用光受容部材の表面に残留するトナー、いわゆる排トナーを回収して排トナー回収箱や感光ドラム内部の空間にためておき、適宜廃却していた。しかしながら、近年の環境保全、省資源の観点から、また、トナーの使用効率の向上の観点からこの排トナーに関してもできるだけ減らしていく必要が高まりつつある。このような状況から、従来の電子写真用光受容部材にもトナーの転写効率の向上のような改良すべき余地が存在するのが実情である。
【0009】
また、画像流れの元凶であるオゾンは、画像形成装置周囲の人や生物への健康に影響を与えることもあり、従来からオゾン除去フィルターで分解無害化して排出していた。特にパーソナルユースの場合、排出オゾン量は極力低減しなければならない。このように経済面からも帯電時の発生オゾン量を大幅に低減する方式が求められている。
このオゾン発生による弊害を解決する一つの手段として、接触帯電装置が提案されいる。
特開昭63−208878号公報に記載されているような接触帯電装置は電圧を印加した帯電部材を感光体等の被帯電体に当接させて被帯電面を所用の電位に帯電するものである。
接触帯電器の形態としては、例えば、感光体表面に電圧を印加したブラシを接触させて帯電する方法(特開昭56−104348号、同57−67951号)や、導電性ゴムローラーに電圧を印加し、感光体表面と接触しながら帯電する方法、更には、磁性体と磁性粉体(あるいは粒子)からなる磁気ブラシ状の接触帯電部材を感光体に接触させてこれを帯電する方法(特開昭59−133569号)などの方式が提案されている。
【0010】
これらの接触帯電装置の場合、前述のコロナ帯電器に比べて、第1に被帯電面に所望の電位を得るのに必要とされる印加電圧の低電圧化が図れること、第2に帯電過程で発生するオゾン量が皆無、ないし極微量であり、オゾン除去フィルターを装着する必要性がなくなること、第3に帯電過程において発生したオゾン及びオゾン生成物が被帯電面である像担持体、例えば感光体表面に付着し、コロナ生成物の影響で感光体表面が湿度に敏感となり、水分を吸着しやすくなることによる表面の低抵抗化による画像流れを防止するため、終日行われている加熱ヒーターによる除湿の必要性がなくなること、そのため夜間通電等の電力消費の大幅な低減が図れること、等の多くの長所を有している。
また、この接触帯電装置は小型化が容易であるので、パーソナルユースの複写機や、コンピューター用プリンターに多用されているカートリッジ式のレーザービームプリンタに最適であり、この点から、従来の大径の光受容部材のみならず、小径の光受容部材の帯電方式の第一候補として期待されるものである。
以上数々のメリットから、電子写真用光受容部材としてもこの接触帯電方式と相性のよい特性をもった、改良された光受容部材が望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のごとき、A−Siで構成された従来の光受容層を有する電子写真用光受容部材における諸問題を解決することを目的とするものである。
また、本発明の目的は、光受容部材の表面に付与されたトナーの被記録材への転写効率を向上させることができる電子写真用光受容部材を提供することである。
更に本発明の目的は、光受容部材表面のトナーの転写効率の向上により、階調性に富んだ、特に、フルカラー複写機において諧調性豊かなカラー再現性を実現し、特に人間の肌の色や青空といった淡い色のガサツキのない、画像記録を行うことができる電子写真用光受容部材を提供することにある。
また、本発明の目的は、排トナーの発生を減少させ、省資源、省エネルギーを達成し得、環境保全に優れ、電気的、光学的、光導電的特性に優れ、画像品質が良好な、シリコン原子を母体とした非単結晶材料で構成された光受容層を有する電子写真用光受容部材を提供することにある。
【0012】
更に、本発明の目的は、上記画像再現性、特に階調再現性に優れた画像記録を行うことのできる電子写真装置を提供することである。
更に、本発明の目的は、画像再現性、特に階調再現性に優れた画像記録を行うことができ、また排トナー収容部を小さくすることが可能で総合的なスペース効率に優れた電子写真装置を提供することである。
また本発明の目的は、優れた電子写真特性を長期間にわたって維持することができる耐久性に優れた電子写真用光受容部材を提供することである。
本発明は更に、接触帯電方式の帯電装置と相性のよい電子写真用光受容部材を供することにより、オゾンの発生を抑えた、省エネルギーの電子写真装置を可能にし、直径の小さい光受容部材を使わざるを得ない小型の電子写真装置において大型のコロナ帯電器を不要にし、効率的な帯電を可能にし、帯電ムラ、ハーフトーンムラのない、鮮明で濃度の濃い、優れた特性の電子写真用光受容部材を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、少なくとも最表面部が非単結晶材料を有する電子写真用光受容部材であって、周期律表第13族、第14族、第15族、第16族から選ばれる少なくとも1種の金属原子を有する領域と、該金属原子を実質的に有しない領域とが、該電子写真用光受容部材の最表面において2次元的に分布する電子写真用光受容部材及び該光受容部材と露光手段、帯電手段および現像手段を少なくとも有する電子写真装置により達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を必要に応じて図面を用いて説明する。
【0015】
本発明者は、上記の問題点を解決するために電子写真用光受容部材とトナーの転写効率の相関について検討した。A−Siを用いた光受容部材を実用的な堆積速度で製造すると、物性的にあるパターンのくり返しを示すことがある。たとえば、その断面が柱状のパターンを示すことがある。この現象は堆積膜が厚くなるほど顕著なものとなる。特に電子写真用光受容部材の光導電層として一般的に用いられる、20〜50μm程度の厚さになると、その柱状のパターンは著しいものとなることがあり、光受容部材の表面もその影響でカリフラワー状の凹凸を持つ場合がある。A−Siを用いた光受容部材のトナーのコピー用紙への転写が難しい1つの原因は、表面にこのような物性の違いや微細な凹凸の存在のために、異なる物性の部分やへこみ部分に付着したトナーがコピー用紙に密着せず、光受容部材側に残留してしまうためであると考えるに至った。
【0016】
柱状パターンが堆積膜の膜厚に依存して成長するメカニズムとしては、本発明者は以下のように考えている。プラズマCVD法で、堆積膜を形成する場合、原料ガスはプラズマにより分解され、堆積膜成長の原料となる活性種(イオン、ラジカル)が生成する。この活性種は、プラズマ中でランダムな方向から堆積膜表面に飛来し、付着し、堆積膜を成長させていくが、堆積膜表面に凹凸の構造があった場合、その凹凸自身が活性種にとって障害物となる。即ち、堆積膜の凹凸の山頂に活性種が飛来する確率に比べ、凹凸の影となる堆積膜の谷の部分に活性種が飛来する確率はより小さなものとなる。その結果、堆積膜の物性の違いや凹凸の程度は増長されることとなる。
【0017】
本発明者は、このような柱状構造に起因する堆積膜表面の凹凸の構造を低減させるための検討を行った。
凹凸の構造を低減させる方法としては、1つには凹凸の凹部を埋める方法、別には構造的に凹凸構造を解消させる方法が考えられる。
アモルファス物質の凹凸構造を低減させる方法として、以下の方法がある。1番目は、堆積膜に対し、アルゴンなどで、イオンボンバード処理を施し、ノックオンプロセスにより、堆積膜中の構造を無くす方法である。この方法は、堆積膜中の構造を抑えるためには非常に効果的であるが、イオンボンバードによる堆積膜のダメージが大きく、ダングリングボンドが増加してしまうことと、アルゴンなどの原子の堆積膜中への有害な挿入が多いため、電子写真特性が非常に低いものしか得ることができない。
【0018】
2番目は、Seなどのようなガラス的な性質の物質の堆積膜を、ガラス転移点に近い基体温度で形成する方法である。この条件では、成長過程で堆積膜は基体上で液体小滴のごとく振る舞い成長していく。その結果、非常に平滑な表面を得ることができる。本発明者は、このガラス的な振る舞いをアモルファスシリコンにも導入できないかと考え検討したところ、堆積膜中に特定の金属元素(即ち、周期律表第13族、第14族、第15族、第16族に属する元素)を比較的大量に導入した場合、堆積膜は、ガラス的な挙動を示し、表面の平滑性が大きく変化することを確認した。
【0019】
本発明者は、さらに、トナーの転写効率の最適点を探すため、金属原子の含有量を細かく変化させたが、当初の目的を達成するまで充分転写効率が向上するほど金属を含有させると、次のような新たな問題点が発生することを発見した。1つは、光受容部材の分光感度の変化である。光受容部材の表面に含有した金属原子のため特定の波長(または波長範囲)の光が、吸収されるため、電子写真用光受容部材の色感度がさまざまに変化してしまう現象である。これにより、モノカラーコピーにおいては、赤の印字や、青の印字を含む原稿のコピー画像上で、画像濃度が充分得られない現象が起こる場合があった。カラーコピーにおいては、赤、青、緑の三原色に対する光受容部材の感度がずれるためにカラーバランスが崩れ、コピー画像上の色の再現性が悪くなるのである。2つめは、光劣化による残像の発生である。光受容部材表面に含有された金属原子に、光キャリアがトラップされ、場合によっては周りのA−Siを構成する原子同士の結合状態が変化することによりエネルギー空間に局在準位を形成し、光受容部材に比較的強い露光を当てた場合、長期間にわたる残像を残す現象である。この残像とは、前回複写した画像が光受容部材上にメモリーとして残り、次回の複写の際にハーフトーン領域などに浮き出してしまう現象である。
【0020】
本発明者は、金属原子を光受容部材表面近傍に含有させ、且つ、金属原子の分布状態を改良することにより前述のような問題点を解決し得ないかという点に注目して鋭意検討した結果、金属原子を含有した領域と、実質的に金属原子を含有しない領域が表面上で2次元的に分布する構成をとる電子写真用光受容部材を用いることにより目的を達成できるという知見を得た。特に金属原子として周期律表第13〜16族に属する原子を、光受容部材表面に2次元的な分布を持つように局所的に含有させることにより、副作用がなく、上記のような相反する2つの条件を同時に満たすことが可能となることがわかった。
【0021】
またA−Si光受容部材の転写効率を改善する方法としては、上述したようにこの堆積膜表面の凹凸を平坦にする方法が考えられる。この方法の場合、うまくA−Siの凹凸に選択的に付着する材料を選択しなければならない。本発明者が検討した結果、表面の凹凸が減少するにつれて確かに転写効率は上がるが、凹凸を埋める材料の材質によっては、今度はクリーニング不良が発生するという副作用があることが判明した。この理由は、光受容部材のクリーニングを行っているクリーニングブレードと光受容部材表面の凹凸を埋める材料との摩擦係数に依存していると考えられ、この摩擦係数が高いと滑り性が悪化してブレードのビビリが発生し、トナーがクリーニングブレードの隙間からすり抜けてしまうためと考えられる。このため、表面の凹凸を平坦にして転写効率を改善する場合は、転写効率とクリーニング性の両立する最適点に合わせて表面の凹凸を埋める材料を選択することが重要である。
【0022】
本発明者は、この問題を解決するために、A−Si光受容部材表面の凹凸のへこみ部分に選択的に付着し、かつクリーニングブレードに対して潤滑作用のある材料を鋭意検討した。その結果、当初候補として考えられた樹脂類は、その濡れ性の関係からうまくへこみ部分のみに付着せず、また同様に樹脂でできているクリーニングブレードの材質との相性がなかなか合わず、ビビリを抑えることが難しかった。更に、A−Si材料に比べて硬度が低すぎ、摩耗して効果が薄れるという問題もあった。
【0023】
さらにいろいろな材料を検討した結果、通常、電子写真用光受容部材の表面に適用することは考えも及ばない金属原子が選択的に表面のくぼみに付着し、かつ適当な潤滑性を持っていることを発見した。また、クリーニングブレードに対して特異的に潤滑性が高く、本発明の目的に最適であることを発見した。
【0024】
特に金属原子の中でも周期律表第13族、第14族、第15族、第16族に属する金属原子は、くぼみに付着する選択性が高いことが判明した。この理由としては、不明な点が多いが、現在、本発明者は次のように考えている。すなわち、堆積速度を比較的高速にして行うことの多い電子写真用光受容部材の製造条件では堆積表面で構造緩和が充分に起こる前に膜堆積が進み、歪みが発生することがある。この歪みを打ち消すために柱状構造をとるようになり、柱と柱の間はくぼみとなる。この柱状構造の間には歪みを緩和するためにSiとSiの結合の切れたいわゆるダングリングボンドが多数存在しているものと思われる。このように局在準位密度が高く、ダングリングボンドが多数露出した電子写真用光受容部材の最表面に、周期律表第13族、第14族、第15族、第16族に属する金属元素を充分なエネルギーを持たせた状態で供給すると、金属原子はサーフェースモビリティが高いために自由に表面を動き回り、これらの金属原子に固有な、A−Siとの好ましい濡れ性と金属自体の最適な表面張力と相まって、ダングリングボンドが多く集まっていてエネルギー的に安定な凹み部に移動すると考えられる。この結果、最表面に存在する金属原子を選択的に凹み部に詰めることができると推測される。また、金属原子の供給量をコントロールすれば金属原子は凹み部を完全に埋め、平坦な表面性が得られると考えられる。同時にこれらの金属原子の表面には逆にダングリングボンドなどの構造欠陥がないため、クリーニングブレードの樹脂との親和性が乏しく、滑り性を発揮するのではないかと推測している。
【0025】
周期律表第13族、第14族、第15族、第16族金属原子の表面における存在形態は表面の柱状構造の柱と柱の間の凹み部に2次元的に局在させることが望ましい。光受容部材の表面に均一に存在させても上記の効果は得られるが、金属の存在量によっては金属原子自身の低抵抗性で帯電電荷の横流れが発生して画像流れの原因となり、逆に電子写真用光受容部材としての画像特性を悪化させる。このため、本発明における金属の存在形態は、金属原子が存在しない領域中に金属原子が島状に存在することが望ましい。
【0026】
このように従来考慮されていなかった金属原子の2次元的な分布状態を考慮することにより従来到底不可能であった多量の金属原子を、諸物性値を損なわずに光受容部材表面に存在せしめることができるようになる。
即ち、本発明では、金属原子を含有した領域と、実質的に金属原子を含有しない領域とを分布させることにより、電子写真特性を損なわずに転写効率の向上に大きな効果のある電子写真用光受容部材とすることができる。
【0027】
このように金属原子を2次元的に分布して含有することにより、本発明の効果を充分に発現することができる濃度まで金属原子の濃度を局所的に高めることが可能となる。また、金属原子を2次元的に分布して含有することにより、均一に含有させてしまう場合できなかった深さまで、金属原子を含有させることが可能となり、本発明の効果を半永久的(電子写真装置などの本体寿命と同等まで)に伸ばすことが可能となる。
【0028】
本発明の効果は金属が2次元的に含有されてさえいれば得ることができ、例えば金属が含有されていない光受容部材の中に島状に金属含有領域があっても良く、また金属含有領域の中に池状に金属が含有されていない領域が存在しても良い。
また凹凸を埋めるように金属原子を有する場合、金属原子は光受容部材の表面の凹み部に存在するため、通紙やクリーニングブレードの摩擦によって容易には脱落せず、本発明の効果は半永久的(電子写真装置などの本体寿命と同等まで)に発揮される。
本発明における光受容層の表面は光導電層上に形成された表面層の表面であってもよい。
【0029】
本発明において表面層をSiCにすることはさらに有効である。表面材質をSiCにすることにより、SiCが本来もっている硬さ、耐摩耗性、耐湿性により耐久性を飛躍的に伸ばすことが可能となったことと同時に、本発明の作用が有効に発現し、効果もいっそう顕著に得ることができるようになる。
【0030】
以下、図面に従って本発明の光受容部材の好適な一例について詳細に説明する。図1から図10は、夫々本発明の電子写真用光受容部材の構成の一例を説明するための模式的説明図で各図(a)は電子写真用光受容部材の一部の模式的断面図、各図(b)は組となる各図(a)の電子写真用光受容部材の一部の模式的平面図である。
【0031】
図1〜図10において、100は電子写真用光受容部材、101は支持体、102は光受容層、103は光導電層、104は表面層、105は金属原子を有する領域、106は金属原子を有さない領域である。尚、図1〜図5は表面側に金属原子が含有される場合、図6〜図10は表面の凹部に金属原子を有する場合の例である。
図1は支持体101上にシリコン原子を母体とする非晶質材料の光導電層103で構成された光受容層102を有する場合である。ここでは光導電層103は支持体と反対側の最表面を含む表面側に存在する柱状パターンの柱と柱の間に金属原子を有する領域105と、それ以外の部分で、実質的に金属原子を有さない領域106が2次元的に分布している例が示されている。
【0032】
図2は、支持体101上に光受容層102が設けられている層構成であることは、図1に示すものと同じであるが、図1と異なる形状で金属原子が表面に存在する例である。
【0033】
図3と図4は、支持体101上に光受容層102が設けられている層構成であることは図1,図2に示すものと同じであるが、図1,図2に示すものと異なり、柱状パターンのダングリングボンドをターミネートするのに必要な金属原子量より更に多量に金属原子を付着させた例である。領域105と領域106との関係は図1及び図2の場合と夫々逆転の関係とされている。つまりこの場合、上からみると金属原子を有する領域105の海の中に、実質的に金属原子を有さない領域106が島状に2次元的に分布している。
【0034】
図5は、本発明の電子写真用光受容部材の他の層構成を説明するための模式的説明図である。図5に示す電子写真用光受容部材100は、光受容部材用としての支持体101の上に、光受容層102が設けられているのは図1〜図4と同じであるが、ここでは該光受容層102は光導電性を有する光導電層103の上に表面層104を有している例である。表面層104は、表面に金属原子を有する領域105と、実質的に金属原子を有さない領域106が2次元的に分布している。図5の場合も、図2〜図4に示した形状で金属原子が光受容部材の表面に存在していて良いのはいうまでもない。
【0035】
図6は図1と同様の層構成の光受容層102を有する光受容部材100の例である。
ここでは、支持体101と反対側の光受容層102の表面側にある凹凸の凹部を埋めるように金属原子がある場合の例が示されている。
図7は平面的に図6の場合とは異なる形状で金属原子を有する領域105が表面に表れている場合の例である。
図8及び図9は夫々図6及び図7に示される電子写真用光受容部材より更に多量に金属原子を付着させた例である。この場合も図3及び図4と同様に、金属原子を有する領域105の中に、実質的に金属原子を有さない領域106を2次元的に配置されている。
【0036】
図10は、本発明の電子写真用光受容部材の他の層構成を説明するための模式的説明図である。図10に示す電子写真用光受容部材100は、光受容部材用としての支持体101の上に、光受容層102が設けられているのは同様であるが、光導電性を有する光導電層103上に表面層104を有している。表面層104は、表面に金属原子を有する領域105と、実質的に金属原子を有さない領域106が分布しているのは他の例と同様である。図10の場合も、図7〜図9に示した形状で金属原子が光受容部材の表面に存在していて良いのはいうまでもない。
また図示はしていないが、光受容層102は支持体101側に支持体101側からの電荷の注入を防ぐ障壁層を有していて良い。
【0037】
【表面金属原子】
本発明においては、少なくとも最表面部がシリコン原子を含む非単結晶材料よりなる電子写真用光受容部材の最表面に金属原子を有する領域と、実質的に金属原子を有さない領域が2次元的に分布した構成をしている。図1、図2、図5、図6、図7及び図10に示すように実質的に金属を有さない領域中に金属を有している領域が島状に点在する構成はもとより、更に付着量を多くし、図3、図4、図8及び図9に示すように金属を有する領域中に実質的に金属を有さない領域が島状に点在する構成としてもよく、モザイク状に金属を有する領域と実質的に金属原子を有さない領域が混在する構成などのように、2次元的に分布していればよい。中でも、実質的に金属を有さない領域中に、金属を有している領域が島状に点在する構成とすることが望ましい。
【0038】
本発明において表面に含有されるあるいは凹部に存在する金属原子としては、広い意味での金属原子であれば、何れでも可能であるが、特に周期律表第13族、第14族、第15族及び第16族から選ばれる少なくとも1種の元素の場合その効果が顕著である。周期律表第13族元素としては、具体的には、アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),タリウム(Tl)を挙げることができる。周期律表第14族元素としては、具体的には、錫(Sn),鉛(Pb)を挙げることができる。周期律表第15族元素としては、具体的には、砒素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi)を挙げることができる。周期律表第16族元素としては、具体的には、セレン(Se),テルル(Te)などを挙げることができる。中でも、セレンおよびテルルを用いることは好ましい。
また、前記の原子以外に微量(1原子%以下)であれば他の原子を含有することも可能である。
【0039】
本発明者は、この金属原子を有する領域の割合、金属原子を有する領域の直径、間隔は後述する実験1乃至10の結果から決定した。すなわち、本発明における金属原子を有する領域と、実質的に金属原子を有さない領域との割合としては、最表面部分で金属原子を有する領域が、好ましくは5%以上60%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下の範囲とすることが望ましい。
【0040】
実質的に金属原子を有さない領域中に、金属原子を有している領域が島状に点在する構成をとり、好ましい金属原子を有している領域の大きさは、円または楕円に近似した場合、直径または長径が200Å以上5000Å以下、さらに好ましくは500Å以上2000Å以下とすることが望ましい。
【0041】
また、金属原子が存在している領域中に池状に金属原子が存在しない構成をとる場合、金属原子が存在していない領域の大きさは2000Å以上8000Å以下、さらに好ましくは、3000Å以上5000Å以下である。
表面側に金属原子を含有する場合は、金属原子を含有する領域での金属原子の濃度としては、表面近傍で、好ましくは10原子ppm以上10000原子ppm以下、さらに好ましくは50原子ppm以上2000原子ppm以下とするのが好ましい。
【0042】
本発明で、光受容部材表面に金属原子を含有させる場合には、イオンインプラ、CVD、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、塗布、プラズマ溶射などにより直接堆積膜中に含有させる、または予め金属原子を膜状に形成しておき、その後、熱などをかけ堆積膜中に分散させる方法を好適に用いることができる。予め金属原子を膜状に形成しておき、その後、堆積膜中に分散させる場合、必要に応じて表面の金属薄膜を後で除去することが好ましい。
【0043】
金属原子を含有する領域と、実質的に金属原子を含有しない領域との分布を形成する方法は真空蒸着などで、支持体温度、圧力、蒸着時間などを制御し、2次元的な分布を得る方法、予め金属原子に充分なサーフェイスモビリティを得るだけのエネルギーを与えておき、金属原子を、光受容部材の表面の欠陥準位などの特異点に移動させ、そこで局在的に堆積させる方法、堆積とエッチングを同時または交互に行い局在的な堆積を助長する方法、予め均一に表面に堆積しておき、イオンビームなどで局所的に除去する方法、マスクを用い局所的に金属膜を堆積する方法、またはマスクなどを用いて局所的に金属イオンの打ち込みをする方法などが挙げられる。
【0044】
特に、蒸着などにより薄膜を形成する際に、堆積膜が形成の初期は、堆積膜が均一に形成せずに、基板上の特異点(基板上を移動する活性種に対して引力が強い点)に局所的に形成される性質を利用して、島状の分布を容易に得ることができる。更に、高濃度の金属原子の分布を得たい場合は、前記のようにして得た島状の分布を核にして、その後、堆積膜形成と、エッチングまたはスパッタリングなどを、交互または同時に行い、核の部分にだけ選択的に金属膜を形成する方法が、比較的大量の金属を島状に分布させる際に、良好な結果が得られた。例えば、比較的エッチングされにくい金属原子を島状に高濃度で得たい場合、通常の蒸着などで核となる金属原子の島を堆積膜表面に形成後、島自身の3次元的の構造を利用して、斜めの方向からの金属原子の導入による膜形成と、垂直方向からのスパッタによる膜の除去を同時に行うことにより、効果的に、局在的な分布を残したまま、島を成長させることが可能である。
【0045】
光受容部材表面に、金属原子を含有した領域が、2次元的に分布を持つように金属膜を形成するには、たとえば図11に示す金属蒸着装置により行うことができる。図11に示す真空蒸着装置を用いて金属薄膜を形成するには以下のようにして行うことができる。
図11において、901は真空容器、902はるつぼ、903は金属原料、904は金属蒸気流、905は支持体、906はヒーター、907は回転軸、908は排気管である。
図11に示されるように、金属蒸着装置は排気管908を通じて不図示の真空ポンプにより真空容器901内の気体を排気可能とされ、金属原料903を収容するるつぼ902が真空容器901内に配置される。金属原料903はるつぼ902中にて不図示のヒーターなどにより加熱溶融可能とされている。回転軸907は支持体を回動可能に軸支しており、図中円筒状の支持体の内部空間中にヒーター906が挿入可能とされている。
【0046】
このような蒸着装置を用いて金属原子を含有した領域を形成する一方法について説明する。
まず真空ポンプ(図示せず)により排気管908を介して、真空容器901を排気し、真空容器901内の圧力を1×10−7Torr以下に調整する。そこで金属原料903の入ったるつぼ902を加熱し、金属蒸気流904を発生する。金属薄膜の形成中、必要に応じてヒーター906により、支持体905の温度を所定の温度に加熱保持する。また、円筒状支持体の場合など回転軸907を回転させることにより支持体905の表面全面にわたって金属薄膜を蒸着することが可能である。この時、支持体温度、圧力、蒸着速度、蒸着時間などを制御し、蒸着された金属膜が2次元的な分布を持つようにする。
【0047】
次にこの光受容部材を加熱することによって、光受容部材の最表面において金属原子を含有する領域と、実質的に金属原子を含有しない領域が2次元的な分布を持つようにできる、あるいは2次元的分布を持つように光受容部材中に金属原子を拡散させる。
【0048】
さらに必要に応じて、図17の研磨装置にて、金属の薄膜だけを除去するように光受容部材表面の研磨を行う。
【0049】
研磨装置の一例を図17に示す。図17に示す研磨装置は、電子写真用光受容部材をシャフトに取り付けてこれを回転させ、回転する電子写真用光受容部材の表面に研磨テープを圧着させて研磨を行う形態のものである。研磨は以下のようにして行う。まず、研磨装置1001中の研磨ユニット1002を上方に上げ、クランプ1003により固定した後、電子写真用光受容部材1005を支持台1004と組み合わせ、シャフト1006に固定する。次いでクランプ1003を緩め、研磨ユニット1002を下方に降ろし、圧接ローラ1007により研磨テープ1008を電子写真用光受容部材1005に圧着する。次いで、回転数が可変のモーター1010及び1011を回転し、研磨を行う。
【0050】
本発明で、光受容部材表面に金属原子を付着させる方法は、金属原子が表面の凹凸の凹み部に凝縮しやすいように慎重に条件を選ぶことが望ましい。例えばプラズマCVD法や、スパッタリングなどの条件を厳密に調整することにより、あらかじめ金属原子が充分なサーフェイスモビリティを得られるだけのエネルギーを付与し、金属原子が光受容部材の表面に達した時、凹み部に移動し易くして、そこで局在的に堆積させる方法がある。また、プラズマCVD法や、スパッタリング、CVD、真空蒸着、塗布などにより予め光受容部材の表面に金属原子の薄膜を膜状に形成しておき、その後に熱アニールを行い、膜表面で島状に凝縮させる方法がある。また、プラズマCVD法や、スパッタリング、CVD、真空蒸着、塗布などを行う時にあらかじめ基体温度を充分に高めておき、基体温度、圧力、蒸着時間などを制御し、蒸着と同時に凝縮させる方法も適している。この場合、あまり長時間基体を熱すると光導電層から水素やハロゲンといったターミネーターが脱離し、特性を悪化させる場合があるので蒸着時間は可能な限り短時間で行うことが望ましい。
【0051】
他の方法としては堆積とエッチングを同時または交互に行い局在的な堆積を助長する方法などが挙げられる。また、光受容部材の前面に金属原子を付着させ、その後に凸部に付着した金属原子を前述したような研磨装置により研磨で削り落としてもよい。
【0052】
特に、蒸着などにより薄膜を形成する際に、堆積膜が形成の初期は、堆積膜が均一に形成せずに、基板上の特異点(基板上を移動する活性種に対して引力が強い点)に局所的に形成される性質を利用して、島状の分布を容易に得ることができる。更に、高濃度の金属原子の分布を得たい場合は、前記のようにして得た島状の分布を核にして、その後、堆積膜形成と、エッチングまたはスパッタリングなどを、同時または交互に行い、核の部分にだけ選択的に金属膜を形成する方法が、比較的大量の金属を島状に分布させる際に良好な結果が得られた。例えば、比較的エッチングされにくい金属原子を島状に高濃度で得たい場合、通常の蒸着などで核となる金属原子の島を堆積膜表面に形成後、島自身の3次元的の構造を利用して、斜め方向からの金属原子の導入による膜形成と、垂直方向からのスパッタによる膜の除去を同時に行うことにより、効果的に、局在的な分布を残したまま、島を成長させることが可能である。
【0053】
【支持体】
本発明において使用される支持体としては、導電性でも電気絶縁性であってもよい。導電性支持体としては、Al,Cr,Mo,Au,In,Nb,Te,V,Ti,Pt,Pd,Feなどの金属、およびこれらの合金、例えばステンレスなどが挙げられる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミドなどの合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミックなどの電気絶縁性支持体の少なくとも光受容層を形成する側の表面を導電処理した支持体も用いることができる。
【0054】
本発明において使用される支持体101の形状は平滑表面あるいは凹凸表面の円筒状または板状無端ベルト状であることができる。また、その厚さは、所望通りの電子写真用光受容部材100を形成し得るように適宜決定できるが、電子写真用光受容部材100としての可撓性が要求される場合には、支持体101としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。しかしながら、支持体101は製造上および取り扱い上、機械的強度などの点から通常は10μm以上とされる。
【0055】
特にレーザー光などの可干渉性光を用いて像記録を行う場合には、可視画像において現われる、いわゆる干渉縞模様による画像不良をより効果的に解消するために、支持体101の表面に凹凸を設けてもよい。支持体101表面の凹凸は、特開昭60−168156号公報、同60−178457号公報、同60−225854号公報などに記載された公知の方法により作製される。
【0056】
また、レーザー光などの可干渉光を用いた場合の干渉縞模様による画像不良をより効果的に解消する別の方法として、支持体101の表面に複数の球状痕跡窪みによる凹凸形状を設けてもよい。即ち、支持体101の表面が電子写真用光受容部材100に要求される解像力よりも微少な凹凸を有し、しかも該凹凸は、複数の球状痕跡窪みによるものである。支持体101表面の複数の球状痕跡窪みによる凹凸は、特開昭61−231561号公報に記載された公知の方法により作製される。
【0057】
【光導電層】
本発明において、その目的を効果的に達成するために支持体101上に形成され、光受容層102の一部を構成する光導電層103は、真空堆積膜形成方法によって、所望特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件が設定されて作製される。具体的には、例えばグロー放電法(低周波CVD法、高周波CVD法またはマイクロ波CVD法などの交流放電CVD法、あるいは直流放電CVD法など)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法などの数々の薄膜堆積法によって形成することができる。これらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷程度、製造規模、作製される電子写真用光受容部材に所望される特性などの要因によって適宜選択されて採用されるが、所望の特性を有する電子写真用光受容部材を製造するに当たっての条件の制御が比較的容易であることからしてグロー放電法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が好適である。そしてこれらの方法を同一装置系内で併用して形成してもよい。
【0058】
本発明において使用されるSi供給用ガスとなり得る物質としては、SiH,Si,Si,Si10などのガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さなどの点でSiH,Siが好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH,He,Ar,Neなどのガスにより希釈して使用してもよい。
【0059】
また、本発明において光導電層103中に水素原子または/及びハロゲン原子が含有されることが必要であるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させるために必須不可欠であるからである。そして水素原子またはハロゲン原子の含有量、または水素原子とハロゲン原子の和の量はシリコン原子と水素原子または/及びハロゲン原子の和に対して1〜40原子%、より好ましくは3〜35原子%、最適には5〜30原子%とされるのが望ましい。
【0060】
光導電層103中に含有される水素原子または/及びハロゲン原子の量を制御するには、例えば支持体101の温度、水素原子または/及びハロゲン原子を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電電力などを制御すればよい。形成される光導電層103中に導入される水素原子の導入割合の制御を一層容易にするために、これらのガスに更に水素ガスまたは水素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成することが好ましい。また、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えないものである。
【0061】
水素原子を光導電層103中に構造的に導入するには、上記の他にH、あるいはSiH,Si,Si,Si10などの水素化珪素とSiを供給するためのシリコンまたはシリコン化合物とを反応容器中に共存させて放電を生起させることでも行うことができる。
【0062】
また本発明において有効に使用されるハロゲン原子供給用の原料ガスとしては、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体などのガス状のまたはガス化し得るハロゲン化合物が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状のまたはガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げることができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗素ガス(F),BrF,ClF,ClF,BrF,BrF,IF,IFなどのハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、SiF,Siなどの弗化珪素を好ましいものとして挙げることができる。
【0063】
また光導電層に炭素原子及び/またはゲルマニウム原子及び/または酸素原子及び/または窒素原子を含有させることも有効である。炭素原子及び/またはゲルマニウム原子及び/または酸素原子/及びまたは窒素原子の含有量は、シリコン原子、炭素原子、ゲルマニウム原子、酸素原子及び窒素原子の和に対して好ましくは0.00001〜50原子%、より好ましくは0.01〜40原子%、最適には1〜30原子%が望ましい。炭素原子及び/またはゲルマニウム原子及び/または酸素原子及び/または窒素原子は、光導電層中に万遍なく均一に含有されても良いし、光導電層の層厚方向に含有量が変化するような不均一な分布をもたせた部分があっても良い。
【0064】
さらに本発明においては、光導電層103には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子は、光導電層103中に万遍なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。そして、光導電層103に含有される伝導性を制御する原子の含有量としては、好ましくは1×10−3〜5×10原子ppm、より好ましくは1×10−2〜1×10原子ppm、最適には1×10−1〜5×10原子ppmとされるのが望ましい。
但し、いずれの場合にあっても、光導電層の上に表面層を設けない場合には、該光導電層の最表面近傍には当該伝導性を制御する原子が含有されないようにすることが必要である。
【0065】
前記の伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期律表第13族に属する原子(以後「第13族原子」と略記する)またはn型伝導特性を与える周期律表第15族に属する原子(以後「第15族原子」と略記する)を用いることができる。第13族原子としては、具体的には、硼素(B),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),タリウム(Tl)などがあり、特にBが好適である。第15族原子としては、具体的には燐(P),砒素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi)などがあり、特にPが好適である。そして、これらの原子を構造的に導入するには、層形成の際に、第13族原子導入用の原料物質あるいは第15族原子導入用の原料物質をガス状態で反応容器中に、光導電層103を形成するための他のガスとともに導入してやればよい。
【0066】
第13族原子導入用の原料物質あるいは第15族原子導入用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状のまたは、少なくとも層形成条件下で容易にガス化し得るものが採用されるのが望ましい。そのような第13族原子導入用の原料物質として、本発明において有効に使用されるのは、硼素原子導入用としては、B,B10,B,B11,B10,B12,B14などの水素化硼素、BF,BCl,BBrなどのハロゲン化硼素などが挙げられる。
【0067】
第15族原子導入用の原料物質として本発明において、有効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH,Pなどの水素化燐、PHI,PF,PF,PCl,PCl,PBr,PBr,PIなどのハロゲン化燐が挙げられる。また、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH,He,Ar,Neなどのガスにより希釈して使用してもよい。
【0068】
本発明において、光導電層103の層厚は、所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果などの点から適宜所望にしたがって決定されるが、好ましくは3〜120μm、より好ましくは5〜100μm、最適には10〜80μmとされるのが望ましい。
【0069】
本発明の目的を達成し得る特性を有する光導電層103を形成するには、支持体101の温度、反応容器内のガス圧を所望にしたがって、適宜設定する必要がある。支持体101の温度(Ts)は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは20〜500℃、より好ましくは50〜480℃、最適には100〜450℃とするのが望ましい。また、反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは1×10−5〜100Torr、より好ましくは5×10−5〜30Torr、最適には1×10−4〜10Torrとするのが好ましい。そして、本発明においては、光導電層を形成するための支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0070】
本発明の光受容部材においては、光受容層102の前記支持体101側に、少なくともアルミニウム原子、シリコン原子、水素原子または/及びハロゲン原子が層厚方向に不均一な分布状態で含有する層領域を有することが望ましい。更に、本発明の電子写真用光受容部材においては、支持体101と光導電層103との間に密着性の一層の向上を図る目的で、例えば、Si,SiO,SiO,水素原子およびハロゲン原子の少なくとも一方と、窒素原子および酸素原子の少なくとも一方と、シリコン原子とを含む非晶質材料などで構成される密着層を設けてもよい。また、支持体からの電荷の注入を阻止する目的で電荷注入阻止層を設けてもよい。更に、光の干渉を防止するために光吸収層を設けてもよい。
【0071】
【表面層】
本発明においては、上記のようにして支持体101上に形成された光導電層103の更に上に、アモルファスシリコン系の表面層104を形成することも可能である。この表面層104は自由表面106を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性において本発明の目的を達成するために設けられる。また、本発明においては、光受容層102を構成する光導電層103と表面層104とを形成する非晶質材料の各々がシリコン原子という共通の構成要素を有しているので、積層界面において化学的な安定性の確保が十分成されている。
【0072】
本発明において、その目的を効果的に達成するために表面層104は真空堆積膜形成方法によって、所望特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件が設定されて作製される。具体的には、例えばグロー放電法(低周波CVD法、高周波CVD法またはマイクロ波CVD法などの交流放電CVD法、あるいは直流放電CVD法など)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法などの数々の薄膜堆積法によって形成することができる。これらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷程度、製造規模、作製される電子写真用光受容部材に所望される特性などの要因によって適宜選択されて採用されるが、光受容部材の生産性から光導電層と同等の堆積法によることが好ましい。例えば、グロー放電法によってSiCよりなる表面層104を形成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガスまたは/及びハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原料ガスを、内部が減圧にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置されてある所定の支持体101上にA−SiC(H,X)からなる層を形成すればよい。
本発明において、表面層104の作製方法、原料ガスなどは基本的に光導電層の作製方法、原料ガスがそのまま用いることができ、光受容部材の生産性から光導電層と同等の堆積法によることは好ましい。
【0073】
本発明において用いる表面層の材質としてはシリコンを含有するアモルファス材料ならば何れでも良いが、炭素、窒素、酸素より選ばれた元素を少なくとも1つ含むシリコン原子との化合物が好ましく、特にSiCを主成分としたものが好ましい。SiCの場合、炭素の量は、シリコン原子と炭素原子の和に対して30%から90%の範囲が好ましい。また、本発明において表面層104中に水素原子または/及びハロゲン原子が含有されることが必要であるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に電荷保持特性を向上させるために必須不可欠であるからである。そして水素原子またはハロゲン原子の含有量、または水素原子とハロゲン原子の和の量はシリコン原子と水素原子または/及びハロゲン原子の和に対して41原子%以上、71原子%以下とされるのが望ましい。
【0074】
即ち、表面層内に存在する欠陥(主にシリコン原子や炭素原子のダングリングボンド)は電子写真用光受容部材としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば自由表面から電荷の注入による帯電特性の劣化、使用環境、例えば高い湿度のもとで表面構造が変化することによる帯電特性の変動、更にコロナ帯電時や光照射時に光導電層により表面層に電荷が注入され、前記表面層内の欠陥に電荷がトラップされることにより繰り返し使用時の残像現象の発生などがこの悪影響として挙げられる。
【0075】
しかしながら表面層内の水素含有量を41原子%以上に制御することで表面層内の欠陥が大幅に減少し、その結果、前記問題点はすべて解消し、従来に比べて電気的特性面および高速連続使用性において飛躍的な向上を図ることができる。一方、前記表面層中の水素含有量が71原子%以上になると表面層の硬度が低下するために、繰り返し使用に耐えられない場合がある。従って、表面層中の水素含有量を前記の範囲内に制御することが格段に優れた所望の電子写真特性を得る上で非常に重要な因子の1つである。表面層中の水素含有量は、Hガスの流量、支持体温度、放電パワー、ガス圧などによって制御し得る。
【0076】
本発明において、表面層の形成に使用されるシリコン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、SiH,Si,Si,Si10などのガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さなどの点でSiH,Siが好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH,He,Ar,Neなどのガスにより希釈して使用してもよい。
【0077】
本発明において使用される炭素供給用ガスとなり得る物質としては、CH,C,C,C10などのガス状態の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さなどの点でCH,Cが好ましいものとして挙げられる。また、これらのC供給用の原料ガスを必要に応じてH,He,Ar,Neなどのガスにより希釈して使用してもよい。
【0078】
本発明において使用される窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質としては、NH,NO,NO,NO,HO,O,CO,CO,Nなどのガス状態の、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。また、これらの窒素、酸素供給用の原料ガスを必要に応じてH,He,Ar,Neなどのガスにより希釈して使用してもよい。
【0079】
形成される表面層104中に導入される水素原子の導入割合の制御を一層容易になるように図るために、これらのガスに更に水素ガスまたは水素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成することが好ましい。また、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えないものである。水素原子を表面層104中に構造的に導入するには、上記の他にH、あるいはSiH,Si,Si,Si10などの水素化珪素とSiを供給するためのシリコンまたはシリコン化合物とを反応容器中に共存させて放電を生起させることでも行うことがてきる。
【0080】
また本発明において使用されるハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なのは、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体などのガス状のまたはガス化し得るハロゲン化合物が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状のまたはガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げることができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗素ガス(F),BrF,ClF,ClF,BrF,BrF,IF,IFなどのハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばSiF,Siなどの弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。
【0081】
表面層104中に含有される水素原子または/及びハロゲン原子の量を制御するには、例えば支持体101の温度、水素原子または/及びハロゲン原子を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電電力などを制御すればよい。
【0082】
炭素原子及び/または酸素原子及び/または窒素原子は、表面層中に万遍なく均一に含有されても良いし、表面層の層厚方向に含有量が変化するような不均一な分布をもたせた部分があっても良い。
【0083】
本発明における表面層104の層厚としては、通常20Å〜10μm、好適には100Å〜5μm、最適には500Å〜2μmとされるのが望ましいものである。即ち、20Åよりも薄いと本発明の効果が十分に得られず、更に光受容部材を使用中に摩耗などの理由により表面層が失われてしまう場合もある。また、層厚が10μmを越えると残留電位の増加などの電子写真特性の低下がみられる場合もある。
【0084】
本発明の目的を達成し得る特性を有する表面層104を形成するには、支持体101の温度、反応容器内のガス圧を所望にしたがって、適宜、設定する必要がある。支持体101の温度(Ts)は、層設計にしたがって、適宜、最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは20〜500℃、より好ましくは50〜480℃、最適には100〜450℃とするのが望ましい。また、反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって、適宜、最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは1×10−5〜100Torr、より好ましくは5×10−5〜30Torr、最適には1×10−4〜10Torrとするのが望ましい。そして、本発明においては、表面層を形成するための支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0085】
本発明においては、本発明の表面層104と光導電層103との間に炭素原子または/及び窒素原子の含有量が光導電層103に向かって減少するように変化する領域を設けてもよい。これにより表面層と光導電層の界面での反射光による干渉の影響をより少なくすることができる。
【0086】
本発明においては、光導電層と表面層の間に、窒素原子の含有量を減らしたSiC(H,X)などからなるもう1つのブロッキング層(下部表面層)を設けることも帯電能などの特性を更に向上させるために有効である。また本発明の表面層104と光導電層103との間に炭素原子または/及び窒素原子の含有量が光導電層103に向かって減少するように変化する領域を設けてもよい。これにより表面層と光導電層の界面での反射光による干渉の影響をより少なくすることができる。
【0087】
【製造方法】
以下、高周波プラズマCVD法およびマイクロ波プラズマCVD法によって堆積膜を形成するための装置及び形成方法の一例について詳述する。図12は高周波プラズマCVD(以下「RF−PCVD」と表記する)法による電子写真用光受容部材の製造装置の一例を示す模式的な説明図、図13はマイクロ波プラズマCVD(以下「μW−PCVD」と表記する)法によって電子写真用光受容部材用の堆積膜を形成するための堆積膜形成装置の一例を示す模式的な説明図である。
【0088】
図12に示すRF−PCVD法による製造装置を用いた堆積膜の形成は例えば次のように行う。この装置は大別すると、堆積装置6100、原料ガスの供給装置6200、反応容器6111内を減圧にするための排気装置(図示せず)から構成されている。
【0089】
まず、反応容器6111内に円筒状支持体6112を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器6111内を排気する。続いて、支持体加熱用ヒーター6113により円筒状支持体6112の温度を20℃〜500℃の所定の温度に制御する。
【0090】
堆積膜形成用の原料ガスを反応容器6111に流入させるには、ガスボンベのバルブ6231〜6236、反応容器のリークバルブ6117が閉じられていることを確認し、また、流入バルブ6241〜6246、流出バルブ6251〜6256、補助バルブ6260が開かれていることを確認して、まずメインバルブ6118を開いて反応容器6111およびガス配管内6116を排気する。次に真空計6119の読みが約5×10−6Torrになった時点で補助バルブ6260、流出バルブ6251〜6256を閉じる。その後、ガスボンベ6221〜6226より各ガスをバルブ6231〜6236を開いて導入し、圧力調整器6261〜6266により各ガス圧を2Kg/cmに調整する。次に、流入バルブ6241〜6246を徐々に開けて、各ガスをマスフローコントローラー6211〜6216内に導入する。以上のようにして成膜の準備が完了した後、円筒状支持体6112上に光導電層、表面層の各層の形成を行う。
【0091】
円筒状支持体6112が所定の温度になったところで流出バルブ6251〜6256のうちの必要なものおよび補助バルブ6260を徐々に開き、ガスボンベ6221〜6226から所定のガスをガス導入管6114を介して反応容器6111内に導入する。次にマスフローコントローラー6211〜6216によって各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器6111内の圧力が1Torr以下の所定の圧力になるように真空計6119を見ながらメインバルブ6118の開口を調整する。内圧が安定したところで、RF電源(図示せず)を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス6115を通じて反応容器6111内にRF電力を導入し、RFグロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器内に導入された原料ガスが分解され、円筒状支持体6112上に所定のシリコンを主成分とする堆積膜が形成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、RF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
【0092】
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。それぞれの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じられていることはいうまでもなく、また、それぞれのガスが反応容器6111内、流出バルブ6251〜6256から反応容器6111に至る配管内に残留することを避けるために、流出バルブ6251〜6256を閉じ、補助バルブ6260を開き、さらにメインバルブ6118を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
【0093】
また、膜形成の均一化を図る場合は、膜形成を行っている間は、円筒状支持体6112を駆動装置(図示せず)によって所定の速度で回転させる。上述のガス種およびバルブ操作は各々の層の作製条件にしたがって変更が加えられることはいうまでもない。
【0094】
次に、μW−PCVD法によって形成される電子写真用光受容部材の製造方法について説明する。図12に示した製造装置におけるRF−PCVD法による堆積装置6100を図13に示す堆積装置7100に交換して原料ガス供給装置6200と接続することによりμW−PCVD法による電子写真用光受容部材製造装置を得ることができる。
【0095】
まず、反応容器7111内に円筒状支持体7115を設置し、駆動装置7120によって支持体7115を回転し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器7111内を排気管7121を介して排気し、反応容器7111内の圧力を1×10−6Torr以下に調整する。続いて、支持体加熱用ヒーター7116により円筒状支持体7115の温度を20℃〜500℃の所定の温度に加熱保持する。
【0096】
堆積膜形成用の原料ガスを反応容器7111に流入させるには、ガスボンベのバルブ6231〜6236、反応容器のリークバルブ(図示せず)が閉じられていることを確認し、また流入バルブ6241〜6246、流出バルブ6251〜6256、補助バルブ6260が開かれていることを確認して、まずメインバルブ(図示せず)を開いて反応容器7111およびガス配管7122内を排気する。次に真空計(図示せず)の読みが約5×10−6Torrになった時点で補助バルブ6260、流出バルブ6251〜6256を閉じる。その後、ガスボンベ6221〜6226より各ガスをバルブ6231〜6236を開いて導入し、圧力調整器6261〜6266により各ガス圧を2Kg/cmに調整する。次に、流入バルブ6241〜6246を徐々に開けて、各ガスをマスフローコントローラー6211〜6216内に導入する。以上のようにして成膜の準備が完了した後、円筒状支持体7115上に光導電層、表面層の各層の形成を行う。
【0097】
円筒状支持体7115が所定の温度になったところで流出バルブ6251〜6256のうちの必要なものおよび補助バルブ6260を徐々に開き、ガスボンベ6221〜6226から所定のガスをガス導入管7117を介して反応容器7111内の放電空間7130に導入する。次にマスフローコントローラー6211〜6216によって各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、放電空間7130内の圧力が1Torr以下の所定の圧力になるように真空計(図示せず)を見ながらメインバルブ(図示せず)の開口を調整する。圧力が安定した後、マイクロ波電源(図示せず)により周波数500MHz以上の、好ましくは2.45GHzのマイクロ波を発生させ、マイクロ波電源(図示せず)を所望の電力に設定し、導波管7113、マイクロ波導入窓7112を介して放電空間7130にμWエネルギーを導入して、μWグロー放電を生起させる。それと同時併行的に、電源7119から電極7118に例えば直流などの電気バイアスを印加する。かくして支持体7115により取り囲まれた放電空間7130において、導入された原料ガスは、マイクロ波のエネルギーにより励起されて解離し、円筒状支持体7115上に所定の堆積膜が形成される。この時、層形成の均一化を図るため支持体回転用モーター7120によって、所望の回転速度で回転させる。
【0098】
所望の膜厚の形成が行われた後、μW電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0099】
それぞれの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じられていることはいうまでもなく、また、それぞれのガスが反応容器7111内、流出バルブ6251〜6256から反応容器7111に至る配管内に残留することを避けるために、流出バルブ6251〜6256を閉じ、補助バルブ6260を開き、さらにメインバルブ(図示せず)を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。また、上述のガス種およびバルブ操作は各々の層の作製条件にしたがって変更が加えられることはいうまでもない。
【0100】
【製造方法】
次にプラズマCVD法により形成される光導電部材の製造方法の他の一例について説明する。図14及び図15に円筒形支持体を用いマイクロ波プラズマCVD法による本発明の電子写真用光受容部材を製造するための製造装置の一例を示す。図において7111は反応容器であり、真空気密化構造を成している。また、7112は、マイクロ波電力を反応容器7111内に効率よく透過し、かつ真空気密を保持し得るような材料(例えば石英ガラス、アルミナセラミックスなど)で形成されたマイクロ波導入誘電体窓である。7113はマイクロ波電力の伝送を行う導波管であり、マイクロ波電源から反応容器近傍までの矩形の部分と、反応容器に挿入された円筒形の部分からなっている。導波管7113はスタブチューナー(図示せず)、アイソレーター(図示せず)とともにマイクロ波電源(図示せず)に接続されている。誘電体窓7112は反応容器内の雰囲気を保持するために導波管7113の円筒形の部分内壁に気密封止されている。7121は一端が反応容器7111に開口し、他端が排気装置(図示せず)に連通している排気管である。7130は支持体7115により囲まれた放電空間を示す。バイアス電極7118は放電空間中に電圧を印加するための電極であり、バイアス電源(図示せず)と電気的に接続されている。
【0101】
こうした電子写真用光受容部材の製造装置を使用した電子写真用光受容部材の製造は以下のようにして行う。まず真空ポンプ(図示せず)により排気管604を介して、反応容器7111を排気し、反応容器7111内の圧力を1×10−7Torr以下に調整する。ついでヒーター7116により、支持体7115の温度を所定の温度に加熱保持する。そこで光導電層の原料ガスを不図示のガス導入手段を介して導入する。即ち、A−Si(H,X)の原料ガスとしてシランガス、ドーピングガスとしてジボランガス、希釈ガスとしてヘリウムガスなどの原料ガスが反応容器7111内に導入される。それと同時併行的にマイクロ波電源(図示せず)により周波数2.45GHzのマイクロ波を発生させ、導波管7113を通じ、誘電体窓7112を介して反応容器7111内に導入される。更に放電空間7130中のバイアス電極7118に支持体7115に対して電圧を印加する。かくして支持体7115により囲まれた放電空間7130において、原料ガスはマイクロ波のエネルギーにより励起されて解離し、更にバイアス電極7118と支持体7115の間の電界により定常的に支持体7115上にイオン衝撃を受けながら、支持体7115表面に光導電層が形成される。この時、支持体7115が設置された回転軸7130をモーター7120により回転させ、支持体7115を支持体母線方向中心軸の回りに回転させることにより、支持体7115全周に渡って均一に堆積膜層が形成される。
【0102】
次に高周波放電法によって形成される電子写真用光受容部材の製造方法について説明する。図16に高周波法による堆積膜形成装置を示す。図において6001は反応容器であり、カソード電極を兼ねた壁6111、トッププレート6120、ベースプレート6121及び碍子6122,6123により真空気密化構造を成している。支持体6112は反応容器の中央部に設置され、アノード電極も兼ねている。壁(カソード電極)6002は、マッチングボックス6124を介して高周波電源6125に電気的に接続されている。
【0103】
こうした電子写真用光受容部材の製造装置を使用した電子写真用光受容部材の製造は以下のようにして行う。まず、原料ガス流入バルブ6260を閉じ、排気バルブ6118を開け真空ポンプ(図示せず)により排気管6126を介して、反応容器6001を排気する。真空計6119の読みが約5×10−6Torr以下に調整する。
【0104】
ついでヒーター6113により、支持体6112の温度を所定の温度に加熱保持する。そこで光導電層の原料ガスを原料ガス導入手段6114を介して導入する。即ち、A−Si(H,X)の原料ガスとしてシランガス、ドーピングガスとしてジボランガス、希釈ガスとしてヘリウムガスなどの原料ガスが反応容器6001内に導入される。そして支持体6112の表面温度が加熱ヒーター6113により所定の温度に設定されていることを確認した後、高周波電源6125を所望の電力に設定して反応容器6001内にグロー放電を生起させる。かくして壁6111と支持体6112により囲まれた放電空間6002において、原料ガスは高周波電力のエネルギーにより励起されて解離し、支持体6112表面に光導電層が形成される。
【0105】
【電子写真装置】
次に本発明の電子写真用光受容部材が好適に用いられる電子写真装置の概略を示す。
図18は電子写真装置の画像形成プロセスの一例を示す概略図であって、電子写真感光体1101は面状ヒーター1123によって温度コントロールされ、矢印方向Xに回転する。電子写真感光体1101の周辺には、主帯電器1102、静電潜像形成部位1103、現像器1104、転写紙供給系1105、転写帯電器1106(a)、分離帯電器1106(b)、クリーナー1107、搬送系1108、除電光源1109等が配設されている。
以下、さらに具体的に画像形成プロセスを説明すると、電子写真感光体1101は+6〜8kVの高電圧を印加した主帯電器1102により一様に帯電され、これに静電潜像部位、即ちランプ1110から発した光が原稿台ガラス1111上に置かれた原稿1112に反射し、ミラー1113,1114,1115を経由し、レンズユニット1117のレンズ1118によって結像され、ミラー1116を経由し、導かれ投影された静電潜像が形成される。この潜像に現像器1104からネガ極性トナーが供給されてトナー像が形成される。
【0106】
一方、転写紙供給系1105を通って、レジストローラー1122によって先端タイミングを調整され、電子写真感光体1101方向に供給される転写材Pは+7〜8kVの高電圧を印加した転写帯電器1106(a)と電子写真感光体1101の間隙において背面から、トナーとは逆極性の正電界を与えられ、これによって電子写真感光体表面のネガ極性のトナー像は転写材Pに転写する。次いで、12〜14kVp−p,300〜600Hの高圧AC電圧を印加した分離帯電器1106(b)により、転写材Pは転写搬送系1108を通って定着装置1124に至り、トナー像が定着されて装置外に搬出される。
電子写真感光体1101上に残留するトナーはクリーニングユニット1107のマグネットローラー1107及び、クリーニングブレード1121によって回収され、残留する静電潜像は除電光源1109によって消去される。
以上の説明はコロナ帯電器1102を用いた電子写真装置であるが、本発明の電子写真用光受容部材はこのコロナ帯電器1102に置き換えて接触帯電装置も好適に用いることができる。その概略図を図19に示した。図19の電子写真装置ではローラー型をした接触帯電装置1212が設置されており、そしてヒーター(面状ヒーター)を用いていない。それ以外の部分は基本的に図18の説明と同様である。
【0107】
接触帯電装置1212の詳細な模式図を図20に示す。
図20(a)は導電性ローラー接触式の接触帯電器であり、いわゆるローラー帯電器と呼ばれるものである。SUS製などの金属芯金1202を軸棒にしてその外周に導電性弾性材層1201を外装したローラー1200を感光体1101の表面1203に対して所定の加圧力をもって常時圧接した状態にしてある。該導電性ローラー1200には電源から直流電圧、交流電圧、或いは直流+交流電圧を印加されており、感光体の回転に伴い従動回転するようにしてもよいし、該ローラー1200と感光体表面1203を圧接を保たせて駆動源により積極的に所定の周速度で感光体表面1203の回転方向に順方向にまたは逆方向に回転駆動させるようにしてもよいし、回転する感光体表面1203に対して非回転に加圧接触させてもよい。
導電性ローラー1200による接触帯電は感光体表面1203とローラー1200との曲率差による連続の任意のギャップにおいて放電を開始し、印加電圧により一定のギャップ領域が安定的に放電を維持するといった特徴がある。
【0108】
図20(b)は弾性ローラーをワイヤブラシ1210に置き換えた概略図であり、いわゆるワイヤーブラシ帯電器と呼ばれるものである。接触子をロール状ワイヤブラシ1210とし、該ブラシに直流電圧、交流電圧、或いは直流+交流電圧を印加し、ブラシを感光体表面1203と同一または異なる周速度で接触回転させる。
図20(c)は磁性体と磁性粉体(或いは粒子)からなる磁気ブラシ状の接触帯電部材1230を感光体1203に接触させてこれを帯電する方式であり、いわゆる磁気ブラシ帯電器と呼ばれるものである。
磁気ブラシ帯電器は多極磁性体1232とその帯電面(表面)に担持された磁性粉体からなる磁気ブラシ層1231とによって構成されており、該磁気ブラシ層1231に直流電圧、交流電圧、或いは直流+交流電圧を直接接続し、磁気ブラシ層1231を感光体1203と同一または異なる周速度で接触回転させる。磁気ブラシ層1231には、磁性酸化鉄(フェライト)粉、マグネタイト粉、周知の磁性トナー材が一般的に用いられる。
【0109】
図21は実験用に改造したレーザービームプリンターの模式的断面図である。図中、1400はレーザービームプリンター本体、1401は円筒形の光受容部材1420、帯電装置1411、クリーナー1412、廃トナー容器1413が一体となったプロセスカートリッジである。1414は現像器である。
なお、前記光受容部材は直径が30mmのものである。本模式図の帯電装置1411は図20(c)に示した磁気ブラシ帯電器を用いている。また、光受容部材内部には、加熱ヒーターを設けておらず、温度はほぼ室温に保たれる。
【0110】
以下に、本発明に至った実験の内容を説明する。
【0111】
【実験A1】
図14及び図15に示す後述のマイクロ波プラズマCVD法による製造装置を用い、鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に次の手順で電子写真用光受容部材を形成した。
【0112】
まず真空ポンプ(図示せず)により排気管7113を介して、反応容器7111を排気し、反応容器7111内の圧力を1×10−7Torr以下に調整する。ついでヒーター7116により、支持体7115の温度を所定の温度に加熱保持する。そこで表1に示す作製条件に従って光導電層の原料ガスをガス導入手段(図示せず)を介して導入する。即ち、A−Si(H,X)の原料ガスとしてシランガス、ドーピングガスとしてジボランガス、希釈ガスとしてヘリウムガスなどの原料ガスが反応容器7111内に導入される。それと同時併行的にマイクロ波電源(図示せず)により周波数2.45GHzのマイクロ波を発生させ、導波管7113を通じ、誘電体窓7112を介して反応容器7111内に導入される。更に放電空間7130中のバイアス電極7118に支持体7115に対して電圧を印加する。かくして支持体7115により囲まれた放電空間7130において、原料ガスはマイクロ波のエネルギーにより励起されて解離し、更にバイアス電極7118と支持体7115の間の電界により定常的に支持体7115上にイオン衝撃を受けながら、支持体7115表面に光導電層が形成される。この時、支持体7115が設置された回転軸7131をモーター7120により回転させ、支持体7115を支持体母線方向中心軸の回りに回転させることにより、支持体7115全周に渡って均一に堆積膜層が形成される。なお、ジボランガスについては、その流量を成膜中に徐々に0ppmになるように減少させて、堆積膜の表面近傍には含有されないようにした。
【0113】
上記のように形成された光受容部材表面に、金属原子を含有した領域が、2次元的に分布を持つように、図11に示す金属蒸着装置により2次元的に分布を持った金属膜を堆積膜表面に形成する。本実験では金属原子としてセレン(Se)を用いた。まず真空ポンプ(図示せず)により排気管908を介して、真空容器901を排気し、真空容器901内の圧力を1×10−7Torr以下に調整する。そこで金属原料903の入ったるつぼ902を加熱し、金属蒸気流904を発生する。金属薄膜の形成中、必要に応じてヒーター906により、支持体905の温度を所定の温度に加熱保持する。また、円筒状基体の場合など回転軸907を回転させることにより支持体905の表面全面に渡って金属薄膜を蒸着することが可能である。この時、基体温度、圧力、蒸着速度、蒸着時間などを制御し、蒸着された金属膜が2次元的な分布を持つようにする。
【0114】
本実験では、蒸着時に局在している金属薄膜の分布を変えることにより、金属原子を含有した領域の光受容部材表面における比率を変化させた。各島の大きさはおおよそ直径約2000Å程度を維持しつつ含有面積(被覆率)を変えるためにドラムの加熱温度と蒸着量を変化させた。金属の種類によって傾向は大幅に異なるが、おおよそドラム温度を上げると島の直径が小さくなり、逆に蒸着量を多くすると島の大きさ及び被覆率が大きくなる傾向があるので本実験ではSeについての最適条件を選択した。
【0115】
さらに図17に示す研磨装置にて、金属の薄膜だけを除去するように光受容部材表面の研磨を行った。金属の島の大きさ、含有面積、含有量はX線マイクロ分析による面分析によって決定したが、オージェ電子分光分析による面分析や、ESCA分析、更に金属原子の付着量が少ない場合にはSIMSによる面分析によっても同様の情報が得られる。
【0116】
このようにして作製した電子写真用光受容部材(実験A1)は、電子写真装置(キヤノン社製NP5060を本テスト用に改造したもの)にセットし、また、比較のために上記と同様にして、表1に示す作製条件で光受容部材を形成後、金属原子を付着しない(被覆率0%)のもの(比較実験A1)を同様に電子写真装置にセットして、以下の項目について評価を行った。
【0117】
画像のガサツキ…ハーフトーンチャートをコピーし、得られたハーフトーン画像を詳細に観察し、限度見本と比較し、評価した。
◎…ガサツキが全く見られず、非常に良好である
○…ややガサツキがわずかに見られるが良好である
△…ガサツキがやや多いが、従来レベルである
×…ガサツキが多く、実用上問題のある場合あり
【0118】
トナー転写効率…通常の帯電、現像処理によりトナーを光受容部材表面に付着させ、コピー用紙に転写した時点でプロセスを停止し、光受容部材上に残留しているトナー濃度を濃度計(Macbeth RD914)で測定し、以下のように評価した。
◎…ほとんど転写され、光受容部材上にトナーが全く認められない
○…光受容部材上にトナーが僅かに認められる
△…光受容部材上にトナーが認められるが、従来レベルである
×…光受容部材上にトナーが多量に残り、実用上支障ある場合あり
【0119】
色再現性…濃度0.3の黒、濃度0.4の赤、濃度0.4の青の印字が混在する原稿を原稿台に置き、コピー画像上で黒の印字の画像が0.6となるように電子写真装置を調整し、画像を形成した。但し、画像濃度の測定は、画像濃度計:Macbeth RD914を用いて行った。
◎…コピー画像上、赤及び青の印字に対応する画像の濃度が高く、判読が容易であった
○…コピー画像上、赤及び青の印字に対応する画像の濃度はやや低いが、判読に支障はなかった
△…コピー画像上、赤及び青の印字に対応する画像の濃度は低く、判読に困難であった
×…コピー画像上、赤及び青の印字に対応する画像の濃度は低く、判読が非常に困難であった
【0120】
残像…画像露光を最高の出力として、全面文字の原稿をコピーした後、一定時間休止し、続いて全面ハーフトーンの原稿をコピーする。全面ハーフトーンのコピー画像を観察し、全面文字の原稿の残像が観察されないか評価を行う。
◎…長時間に渡る残像が画像上全く観察されない
○…長時間に渡る残像が画像上わずかに認められたが、全く問題とならない
△…長時間に渡る残像が画像上認められたが、実用上支障なし
×…長時間に渡る残像が画像上認められ、実用上問題がある場合がある
【0121】
評価結果を表2に示す。尚、表中の記号はそれぞれ上記の評価項目のところに示すとおりである。表中、金属原子を含有する領域の面積比が0%とは、堆積膜形成後に金属薄膜を形成せずに、加熱、研磨処理を行い、表面の全領域が、実質的に金属原子を含有しない領域である光受容部材を示す。また、金属原子を含有する領域の面積比が100%とは、光受容部材に金属薄膜を全面に均一に形成し、加熱/研磨することにより、最表面の全領域が金属原子を含む領域である光受容部材を示す。
【0122】
表2によれば、最表面における、金属原子を含有する領域の占める面積比が、最表面全領域に対して、5%以上60%以下の範囲である電子写真用光受容部材において、画像のガサツキ、トナーの転写効率について著しい優位性が認められた。
【0123】
【実験A2】
図14及び図15に示す製造装置を用い、実験A1と同様の手順で表1に示す作製条件で電子写真用光受容部材を形成した。このようにして作製した光受容部材表面に、図11で示す蒸着装置により蒸着条件、時間を制御することにより2次元的な分布を持つように金属薄膜を形成した。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の金属原子を膜中に分散させ、金属原子の含有する領域を形成した。さらに表面を研磨し、残った金属薄膜だけ除去した。本実験例では、金属薄膜の形成条件と、加熱の温度、時間を変えることにより、金属を含有する領域の分布の状態を変化させた。
【0124】
サンプルA1は図1に示したほぼ円形の島状形状とした。サンプルA2は図2に示したように、やや変形した島状形状とした。サンプルA3は図3に示したように、金属被膜中にほぼ円形の池状に付着していない形状とした。サンプルA4は図4に示したように、金属被膜中にやや変形した池状に付着していない形状とした。サンプルA1及びA4の場合、島の形状はほぼ円または楕円状であり、直径(長径)は平均1000Åである。サンプルA1からA4のいずれも、最表面の40%が、金属原子を含有する領域である。本実験においてはいずれのサンプルも、含有する金属原子としてはテルル(Te)を用いた。
【0125】
これらの光受容部材を実験A1と同様の評価・分析を行った。結果を表3に示す。この結果より、金属原子を含有する領域が実質的に金属原子を含有しない領域中に島状に点在している分布状態の電子写真用光受容部材の効果が最も顕著であり、特に転写効率改善について著しい効果が認められた。
【0126】
【実験A3】
図14及び図15に示す製造装置を用い、実験A1と同様の手順で表1に示す作製条件で電子写真用光受容部材を形成した。このようにして作製した光受容部材表面に、図11で示す蒸着装置により、選択的に島状にアルミニウム(Al)よりなる金属薄膜を形成した。本実験では、光受容部材の加熱温度、蒸着量などの蒸着条件を制御することにより被覆率をおおよそ30%程度に維持しつつ、島の大きさを変化させた。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の金属原子を膜中に分散させ、金属原子の含有する領域を島状に形成した。さらに表面を研磨し、残った金属薄膜だけ除去した。
【0127】
これらの光受容部材を実験A1と同様の評価・分析を行った。結果を表4に示す。この結果より、金属原子を含有する領域が島状の電子写真用光受容部材の場合、直径200Å以上5000Å以下の場合、本発明の効果が最も顕著であった。
【0128】
【実験A4】
図14及び図15に示す製造装置を用い、実験A1と同様の手順で表1に示す作製条件で電子写真用光受容部材を形成した。このようにして作製した光受容部材表面に、図11の蒸着装置または、必要に応じて、電子ビーム蒸着装置により選択的に島状に薄膜を形成した。本実験では、薄膜を形成する元素の種類を変えた。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の元素を膜中に分散させ、元素の含有する領域を島状に形成した。さらに表面を研磨し、残った薄膜だけ除去した。いずれの試料も、元素を含有する領域の形状は円または楕円に近似した形状とし、大きさは直径(長径)1500Å、被覆率30%とした。
【0129】
これらの光受容部材を実験A1と同様の評価・分析を行った。結果を表5に示す。この結果より、島状の領域に含有されている元素が、周期律表第13族、第14族、第15族、および第16族より選ばれる少なくとも1種の金属原子である電子写真用光受容部材に、画像のガサツキ、転写効率について著しい効果が認められた。
【0130】
【実験A5】
図14及び図15に示す製造装置を用い、実験A1と同様の手順で表1に示す作製条件で電子写真用光受容部材を形成した。このようにして作製した光受容部材表面に、図11に示す蒸着装置により蒸着条件、時間を制御することにより選択的に島状にビスマス(Bi)よりなる金属薄膜を形成した。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の金属原子を膜中に分散させ、金属原子の含有する領域を直径約4000Åで、島状かつ、被覆率40%に形成した。さらに表面を研磨し、残った金属薄膜だけ除去した。本実験では、金属薄膜の厚みと、加熱の温度、時間を変えることにより、金属原子を含有する領域における堆積膜中の金属原子の濃度を変化させた。
【0131】
これらの光受容部材を実験A1と同様の評価・分析を行った。結果を表6に示す。但し、表中記載の濃度とは、表面から深さ方向にエッチングしながら、SIMS分析を行った際、表面近傍で得られた濃度のピーク値を示している。この結果より、金属原子の濃度が、10原子ppm以上10000原子ppm以下の範囲の電子写真用光受容部材に、画像のガサツキ、転写効率について著しい効果が認められた。
【0132】
さらに、実験A4で効果があった、他の金属についても同様の実験を行ったところ、同様の濃度範囲において同様の結果が得られた。
【0133】
【実験B1】
図12に示す高周波プラズマCVD(以下「RF−PCVD」と表記する)法による堆積膜形成装置を用いて次のように電子写真用感光ドラムの成膜を行った。まず、反応容器6111内に鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(円筒状支持体)6112を設置し、必要に応じて膜形成の均一化を図るために、円筒状支持体6112を駆動装置(図示せず)によって所定の速度で回転させる。次に不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器6111内を排気した。続いて、支持体加熱用ヒーター6113により円筒状支持体6112の温度を20℃〜500℃の所定の温度に制御した。
【0134】
堆積膜形成用の原料ガスを反応容器6111に流入させるために、ガスボンベのバルブ6231〜6236、反応容器のリークバルブ6117が閉じられていることを確認し、また、流入バルブ6241〜6246、流出バルブ6251〜6256、補助バルブ6260が開かれていることを確認して、まずメインバルブ6118を開いて反応容器6111およびガス配管6116内を排気した。次に真空計6119の読みが約5×10−6Torrになった時点で補助バルブ6260、流出バルブ6251〜6256を閉じた。その後、成膜に必要なガスボンベ6221〜6226より各ガスをバルブ6231〜6236を開いて導入し、圧力調整器6261〜6266により各ガス圧を2Kg/cmに調整した。次に、流入バルブ6241〜6246を徐々に開けて、各ガスをマスフローコントローラー6211〜6216内に導入した。
【0135】
以上のようにして成膜の準備が完了した後、円筒状支持体6112上に表19に示す作製条件に従って光導電層の形成を行った。
【0136】
円筒状支持体6112が所定の温度になったところで流出バルブ6251〜6256のうちの必要なものおよび補助バルブ6260を徐々に開き、ガスボンベ6221〜6226から所定のガスをガス導入管6114を介して反応容器6111内に導入する。次にマスフローコントローラー6211〜6216によって各原料ガスが所定の流量になるように調整した。その際、反応容器6111内の圧力が1Torr以下の所定の圧力になるように真空計6119を見ながらメインバルブ6118の開口を調整した。内圧が安定したところで、RF電源(図示せず)を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス6115を通じて反応容器6111内にRF電力を導入し、RFグロー放電を生起させた。この放電エネルギーによって反応容器内に導入された原料ガスが分解され、円筒状支持体6112上に所定のシリコンを主成分とする堆積膜が形成されるところとなる。なお成膜中、ジボランガスについては、その流量を徐々に0ppmになるように減少させて、堆積膜の表面近傍には含有されないようにした。所望の膜厚の形成が行われた後、RF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終えた。
【0137】
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層を形成した。それぞれの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じ、また、それぞれのガスが反応容器6111内、流出バルブ6251〜6256から反応容器6111に至る配管内に残留することを避けるために、流出バルブ6251〜6256を閉じ、補助バルブ6260を開き、さらにメインバルブ6118を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を行った。
【0138】
上記のように形成された光受容層に、金属原子を含有した領域が2次元的に分布を持つように、図11に示す金属蒸着装置によりアルミニウム(Al)の金属膜を表面に形成した。まず真空ポンプ(図示せず)により排気管908を介して、真空容器901を排気し、真空容器901内の圧力を1×10−7Torr以下に調整した。そこでAlの入ったるつぼ902を加熱し、金属蒸気流904を発生させた。金属薄膜の形成中、Al原子が光受容層表面の柱状構造の間のダングリングボンドに容易に移動するようにヒーター906により、所定の温度に円筒状支持体905を加熱保持した。また、同時に回転軸907を回転させることにより支持体905の表面全面にわたって金属薄膜を蒸着した。この時、前述した基体温度はもとより、圧力、蒸着速度、蒸着時間などを最適に制御し、蒸着された金属膜が2次元的な分布を持つようにした。
【0139】
本実験では、各島の大きさはおおよそ直径約3000Å程度を維持しつつ被覆面積を変えるためにドラムの加熱温度と蒸着量を変化させた。金属の種類によって傾向は大幅に異なるが、おおよそドラム温度を上げると島の直径が小さくなり、逆に蒸着量を多くすると島の大きさ及び被覆率が大きくなる傾向があるので本実験ではAlについての最適条件を選択した。
【0140】
本実験では金属の島の大きさ、被覆率はX線マイクロ分析による面分析によって決定したが、オージェ電子分光分析による面分析や、金属原子の付着量が少ない場合にはSIMSによる面分析によっても同様の情報が得られる。
【0141】
このようにして金属の被覆率を変化させた電子写真用光受容部材は、電子写真装置(キヤノン社製NP6060を本テスト用に改造したもの)にセットして、種々の条件の元に、画像のガサツキ、転写効率、クリーナー滑り性に加え、画像流れなどの電子写真特性を次のように評価した。
【0142】
画像のガサツキ…ハーフトーンチャートをコピーし、得られたハーフトーン画像を詳細に観察し、限度見本と比較し、評価した。
◎…ガサツキが全く見られず、非常に良好である
○…ややガサツキがわずかに見られるが良好である
△…ガサツキがやや多いが、従来レベルである
×…ガサツキが多く、実用上問題がある場合あり
【0143】
トナー転写効率…通常の帯電、現像処理によりトナーを光受容部材表面に付着させ、コピー用紙に転写した時点でプロセスを停止し、光受容部材上に残留しているトナー濃度を濃度計(マクベス濃度計)で測定し、以下のように評価した。
◎…ほとんど転写され、光受容部材上にトナーが全く認められない
○…光受容部材上にトナーが僅かに認められるが、良好である
△…光受容部材上にトナーが認められるが、従来レベルである
×…光受容部材上にトナーが多量に残り、実用上問題がある場合がある
【0144】
クリーナー滑り性…シリコンゴムよりなるクリーニングブレードを、10N/cmの圧力で光受容部材表面に接触させ、横方向に移動させた。
◎…滑らかに移動が可能であった
○…移動にやや力が必要であったが、良好である
△…移動にかなり力が必要であるが従来レベルである
×…移動するときにブレードめくれが発生する場合がある
【0145】
画像流れ…高湿環境(気温:40℃、湿度:80%)下で、白地に全面文字よりなるキヤノン製テストチャート(部品番号:FY9−9058)を原稿台に置き通常の露光量で照射しコピーをとる。得られたコピー画像を観察し、画像上の細線がぼけていないか評価した。但しこの時画像上でむらがある時は、全画像領域で評価し一番悪い部分の結果を示した。評価区分は次の通り。
◎…全くぼけが見られず、非常に良好
○…文字のエッジがわずかに鈍るが、良好である
△…一部ぼけはあるが文字として認識でき、実用上問題ない
×…認識不可能の文字があり、実用上問題のある場合あり
【0146】
上記の評価結果を表20に示す。本実験より、金属原子が存在する領域を表面の5%〜60%の範囲にすることによって電子写真用感光ドラムとしての特性が著しく向上することが認められた。
【0147】
【実験B2】
実験B1と同様の製造装置、製造方法で表19に示す作製条件で電子写真用光受容部材を形成した。但し、本実験では金属元素はインジウム(In)とし、感光ドラムの加熱温度や蒸着スピード、及び蒸着量を適宜変えることにより金属薄膜の島の分布形状を変化させた。サンプル1は図6に示したほぼ円形の島状形状とした。サンプル2は図7に示したように、やや変形した島状形状とした。サンプル3は図8に示したように、金属被膜中にほぼ円形の池状に付着していない形状とした。サンプル4は図9に示したように、金属被膜中にやや変形した池状に付着していない形状とした。いずれのサンプルも、被覆率はほぼ50%となるように調整し、実験B1と同様にして電子写真特性を評価した。結果を表21に示す。この結果より、電子写真用光受容部材は初期の状態ではいずれの形状に付着しても顕著な効果が得られることが判明した。
【0148】
【実験B3】
実験B2で作製した電子写真用光受容部材を気温40℃、湿度85%の高湿環境下で、再生紙を用い10万枚の複写を行う耐久テストを行った後、初期と同様の評価を行った。評価結果を表22に示す。この結果から、光受容部材の表面の金属原子の付着形状は島状の方がより顕著な効果が得られることが判明した。
【0149】
【実験B4】
実験B1と同様の製造装置、製造方法で、鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に電子写真用光受容部材を形成した。この時、光導電層の作製条件は表19に示す通りとした。但し、金属原子はスズ(Sn)とし、今回は、感光ドラムの加熱温度、蒸着量などの蒸着条件を制御することにより被覆率をおおよそ30%程度に維持しつつ、島の直径を変化させた。このようにして作製した電子写真用光受容部材を、実験B1と同様にして電子写真特性を評価した。結果を表23に示す。この結果から島の直径は200Å〜5000Å程度が最も効果的であることが判明した。
【0150】
【実験B5】
実験B1と同様の製造装置、製造方法で表19に示す作製条件で電子写真用光受容部材を形成した。但し、今回は種々の金属原子を使用して選択的に2次元構造の金属薄膜を形成した。いずれの試料も金属元素の存在する領域の形状は円、または楕円に近似した形状とし、大きさは直径(長径)5000Å、被覆率は40%程度となるように調整した。
【0151】
これらの光受容部材を実験B1と同様の評価を行った。結果を表24に示す。この結果より、電子写真用光受容部材は、表面に存在する金属原子の種類が周期律表第13族、第14族、第15族、第16族から選ばれる少なくとも1種の元素であることにより著しい効果が認められた。
【0152】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0153】
【実施例A1】
鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)を、図14及び図15に示す製造装置内に投入し、電子写真用光受容部材を形成した。この時、光導電層の作製条件は表1に示す通りとした。このようにして作製した光受容部材表面にバイアスを掛けたスパッタリング装置により選択的に島状に金属薄膜を形成した。金属としてはセレン(Se)を用いた。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の金属原子を膜中に分散させ、金属原子の含有する領域を直径約5000Å、含有面積約50%で島状に形成した。さらに表面を研磨し、残った金属薄膜だけ除去した。
【0154】
このようにして作製した電子写真用光受容部材を、電子写真装置(キヤノン社製NP5060を本テスト用に改造したもの)にセットして、種々の条件の元に、初期の帯電能、感度、クリーニング性などの電子写真特性を評価した。次に、このドラムを気温20℃、湿度10%の環境下で、再生紙を用いて10万枚の複写する耐久テストを行った後、初期と同様の評価を行った。更に、必要に応じて表面層の原子の含有量と結合の状態の分析をオージェ,SIMS,ESCA,XMAにより行った。
【0155】
上記の評価結果を表7に示す。但し、表中の記号は実験A1で前述したとおりである。
【0156】
【比較例A1】
図14及び図15に示す製造装置を用い、表1に示す作製条件による光導電層を持つ電子写真用光受容部材を実施例A1と同様にして形成した。このようにして作製した光受容部材を何も処理せず、従来の電子写真用光受容部材として、実施例A1と同様の評価を行った。その結果を実施例A1の結果と共に表7に示す。表7で明らかなように、本発明の電子写真用光受容部材はいずれの特性においても、従来の電子写真用光受容部材に対し同等以上の性能を示した。特に、ガサツキ、転写効率においては、本発明の電子写真用光受容部材は、従来の電子写真用光受容部材に対し顕著な優位性を示した。
【0157】
更に、Seの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、実施例A1の光受容部材においてはSeは2次元的に局在していることが観察された。
【0158】
【比較例A2】
比較例A1で作製した光受容部材を、特開昭61−231558号公報に開示されている方法に従って、研磨処理剤としてセレン(Se)を用い研磨処理を行うことにより、光受容部材表面と処理剤の固相反応により生成した反応生成物の少なくとも一部を機械的に除去した。この処理の後に、実施例A1と同様な評価を行った。その結果を同様に表7に示す。表面処理を行っても本発明ほどにはガサツキは改善されなかった。更に、Seの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Seは光受容部材表面に均一に分布しており、本発明のように2次元的に局在する様子は見られなかった。
【0159】
【実施例A2】
図14及び図15に示す製造装置を用い、光導電層及び表面層を持つ電子写真用光受容部材を実施例A1と同様にして形成した。光導電層及び表面層の作製条件は表8に示す通りとした。このようにして作製した光受容部材表面にバイアスを掛けたスパッタリング装置により選択的に島状に金属薄膜を形成した。金属としてはアルミニウム(Al)を用いた。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の金属原子を膜中に分散させ、金属原子の含有する領域を直径3000Å、含有面積20%の島状に形成した。さらに表面を研磨し、残った金属薄膜だけ除去した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例A1と同様の評価したところ、実施例A1と同様の良好な結果が得られた。
【0160】
【比較例A3】
実施例A2と同様の装置、手順で表9に示す作製条件に従い、光受容部材を形成した。本比較例では特開昭60−28658号公報に開示されている技術と同様に、成膜終了間際にミクロンオーダーに粉砕したアルミニウム(Al)をArをキャリアガスとして導入することにより膜中にAl金属を導入した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例A1と同様に評価したが比較例A2と同様にガサツキは改善されなかった。更に、Alの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Alは光受容部材表面に均一に分布しており、本発明のように2次元状態に局在する様子は見られなかった。
【0161】
【比較例A4】
実施例A2と同様の装置、手順で表10に示す作製条件に従い、光受容部材を形成した。本比較例では成膜終了間際にBを100ppm導入することにより膜中にB原子を導入した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例A1と同様に評価したが比較例A2と同様にガサツキは改善されなかった。更に、Bの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Bは光受容部材表面に均一に分布しており、本発明のように2次元状態に局在する様子はみられなかった。
【0162】
【比較例A5】
実施例A2と同様の装置、手順で表11に示す作製条件に従い、光受容部材を形成した。本比較例では成膜終了間際にPHを100ppm導入することにより膜中にP原子を導入した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例A1と同様に評価したが比較例A1,A2と同様にガサツキは改善されなかった。更に、Pの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Pは光受容部材表面に均一に分布しており、本発明のように表面で2次元的に局在する様子はみられなかった。
【0163】
【実施例A3】
図14及び図15に示す製造装置を用い、電荷注入阻止層、光導電層及びSiCよりなる表面層を持つ電子写真用光受容部材を実施例A1と同様にして形成した。電荷注入阻止層、光導電層及び表面層の作製条件は表12に示す通りとした。このようにして作製した光受容部材表面にバイアスを掛けたスパッタリング装置により選択的に島状に金属薄膜を形成した。金属としてはアルミニウム(Al)を用い、直径約2000Å、被覆率40%とした。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の金属原子を膜中に分散させ、金属原子の含有する領域を島状に形成した。さらに表面を研磨し、残った金属薄膜だけ除去した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例A1と同様の評価をしたところ、実施例A1と同様の良好な結果が得られた。
【0164】
【実施例A4】
図14及び図15に示す製造装置を用い、電荷発生層と電荷輸送層を持つ機能分離型の電子写真用光受容部材を実施例A1と同様にして形成した。各層の作製条件は表13に示す通りとした。このようにして作製した光受容部材表面にバイアスを掛けたスパッタリング装置により選択的に島状に金属薄膜を形成した。金属としては鉛(Pb)を用い、直径3500Å、被覆率30%とした。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の金属原子を膜中に分散させ、金属原子の含有する領域を島状に形成した。さらに表面を研磨し、残った金属薄膜だけ除去した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例A1と同様の評価をしたところ、実施例A1と同様の良好な結果が得られた。
【0165】
【実施例A5】
図16に示す高周波法による堆積膜形成装置を用い、以下に示す手順で表14に示す作製条件により光導電層及び表面層を形成した。まず、原料ガス流入バルブ6260を閉じ、排気バルブ6118を開け真空ポンプ(図示せず)により排気管6126を介して、反応容器6001を排気する。真空計6119の読みが約5×10−6Torr以下に調整する。
【0166】
ついでヒーター6113により、支持体6112の温度を所定の温度に加熱保持する。そこで光導電層の原料ガスを原料ガス導入手段6114を介して導入する。即ち、A−Si(H,X)の原料ガスとしてシランガス、ドーピングガスとしてジボランガス、希釈ガスとしてヘリウムガスなどの原料ガスが反応容器6001内に導入される。そして支持体6112の表面温度が加熱ヒーター6113により所定の温度に設定されていることを確認した後、高周波電源6125を所望の電力に設定して反応容器6001内にグロー放電を生起させる。かくして壁6111と支持体6112により囲まれた放電空間6002において、原料ガスは高周波電力のエネルギーにより励起されて解離し、支持体6112表面に光導電層が形成される。
【0167】
上記のようにして形成された光導電層上に表面層を形成するには、光導電層形成時とは原料ガス組成を変え、例えばシランガス、メタンガス及び必要に応じてヘリウムガスなどの希釈ガスを反応容器6001内に導入し、光導電層形成時と同様にして放電を開始することによって成される。
【0168】
このようにして作製した光受容部材表面に図11に示す蒸着装置により蒸着条件、蒸着時間などを制御することにより選択的に島状に金属薄膜を形成した。金属としては本実施例ではインジウム(In)を用い、直径約1500Å、被覆率10%とした。その後、この電子写真用光受容部材を加熱し、表面の金属原子を膜中に分散させ、金属原子の含有する領域を島状に形成した。さらに表面を研磨し、残った金属薄膜だけ除去した。
【0169】
この電子写真用光受容部材を実施例A1と同様に評価したところ、実施例A1と同様良好な結果が得られた。このことより、光受容層の作製方法によらず本発明の範囲内の電子写真用光受容部材は、本発明の範囲外の電子写真用光受容部材に比べ著しい優位性が認められることが確認できた。
【0170】
【実施例A6】
実施例A1と同様の製造装置、製造方法で表1に示す作製条件で電子写真用光受容部材を形成した。但し、今回は周期律表第13族、第14族、第15族、第16族金属原子を複数組み合わせて使用して選択的に2次元構造の金属薄膜を形成した。金属はあらかじめ溶解して合金を作製した後に図11の蒸着器で薄膜を蒸着した。いずれの試料も、金属元素の存在する領域の形状は円、または楕円に近似した形状とし、大きさは直径(長径)1000Å、被覆率約20%になるように選択的に島状に金属薄膜を形成した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例A1と同様に評価した。結果を表15に示す。表15より、本発明による光受容部材は、画像流れは良好であり、表面に存在する金属原子が複数の元素であっても同様の効果があることが認められた。
【0171】
【実施例A7】
実施例A1で作製した電子写真用光受容部材を図19に示した構成の電子写真装置にセットして種々の評価を行った。本実施例では電子写真装置の帯電装置を図20(a)のローラー帯電器としてあり、ローラーの回転方向は順方向、光受容部材と等速度(光受容部材との相対速度は0%)で回転させた。印加電圧はDC1.5KVとした。
評価は実施例A1と同様の内容につけ加えて、帯電能の周ムラ、ハーフトーンムラを評価した。評価方法は下記のように行った。
【0172】
▲1▼帯電能の周ムラ
電子写真用光受容部材を実験用電子写真装置に設置し、光を当てない状態でローラー帯電器に電圧を印加し、周方向の電位を表面電位計で連続に読み取る。読み取った電圧はレコーダーに記録し、その記録の最大値と最小値の差を平均した表面電位で割ることにより帯電能の周ムラを評価した。
【0173】
▲2▼ハーフトーンムラ
原稿台に白紙を置いて、まず暗状態で電子写真感光体を一定の暗部表面電位(例えば400V)に帯電させる。そして直ちにフィルターを用いて600nm以上の波長域の光を除いたハロゲンランプ光を照射し、電子写真感光体の明部表面電位が50Vの値になるように光量を調整する。次にハーフトーンチャートを原稿台に置いて1/2光量を電子写真感光体に当てる。この時の表面電位を表面電位計で連続に読み取る。読み取った電圧はレコーダーに記録し、その記録の最大値と最小値の差を平均した電位で割ることによりハーフトーンの周ムラを評価した。
帯電能の周ムラとハーフトーン電位の周ムラの評価基準は次のようにした。
◎…周ムラがほとんど観察されない
○…周ムラはあるがコロナ帯電の場合より改善される
△…コロナ帯電の場合と同レベル
×…コロナ帯電の場合より悪化する場合がある
【0174】
評価結果を表16に示す。本発明の電子写真用光受容部材は、ローラー帯電器を用いた電子写真複写機に応用しても同様の効果が得られるばかりか、周方向の電位ムラも防止されることが判明した。また、実際に画像を複写したところ、非常に鮮明で濃度の濃い、良好な画像が得られた。
【0175】
【実施例A8】
実施例A2で作製した電子写真用光受容部材を図19に示した電子写真装置にセットして種々の評価を行った。本実施例では電子写真装置の帯電装置を図20(b)のワイヤーブラシ帯電器としてあり、ワイヤーブラシの回転方向は光受容部材の回転方向と逆方向、回転速度は電子写真感光体と同速度(光受容部材との相対速度は200%)とした。ワイヤーブラシに印加する電圧はDC800Vに設定した。
評価は実施例A7と同様の評価を行った。結果は表16に示したが、実施例A7と同様に周ムラが改善しており、良好な結果が得られた。また、実際の画像も非常に鮮明で濃度の濃い、良好な画像が得られた。
【0176】
【実施例A9】
実施例A4で作製した電子写真用光受容部材を図19に示した電子写真装置にセットして種々の評価を行った。本実施例では電子写真装置の帯電装置を図20(c)の磁気ブラシ帯電器としてあり、磁気ブラシの回転方向は光受容部材の回転方向と逆方向、回転速度は電子写真感光体の回転速度の半分(光受容部材との相対速度は150%)とした。磁気ブラシに印加する電圧はDC800Vに設定した。
評価は実施例A7と同様の評価を行った。結果は表16に示したが、実施例A7と同様に周ムラが改善しており、良好な結果が得られた。また、実際の画像も非常に鮮明で濃度の濃い、良好な画像が得られた。
【0177】
【実施例A10】
実施例A1、A2、A3、A4、A5、A6で作製した電子写真用光受容部材(合計6本)をフルカラー電子写真装置に夫々セットして画像を評価した。
ハーフトーンが比較的多い、人物写真、風景写真を各々複写し、人肌の微妙な質感の再現性、髪の毛1本1本の鮮明さ、青空部分のガサツキなどを詳しく評価した。評価の基準はおおよそ次のように設定した。
◎…非常に良好
○…良好
△…実用上問題なし
×…実用上問題ある場合がある
結果を表17に示したが、いずれの電子写真用光受容部材においても従来の光受容部材に比べて格段に表現力が増しており、鮮明でガサツキのない、質感の豊かな画像が再現できた。
【0178】
【実施例A11】
実施例A1、A2、A3、A4、A5、A6で作製した電子写真用光受容部材(合計6本)をフルカラー電子写真装置にセットして10万枚の耐久試験を行い、画像を評価した。
評価方法は実施例A10と同様の方法で行った。結果を表18に示したが、いずれの電子写真用光受容部材においても従来の光受容部材に比べて格段に表現力が増しており、鮮明でガサツキのない、質感の豊かな画像が再現できていた。しかし、耐久性に関しては表面に保護層がある光受容部材の方が更に優れていることが判明した。
【0179】
【実施例A12】
実施例A2と同様にμW−PCVD法で作製した電子写真用光受容部材を図21に示した実験用に改造したレーザービームプリンター1400に適用した。図中、1401は光受容部材1420、帯電装置1411、クリーナー1412、廃トナー容器1413が一体となったプロセスカートリッジであり、画像形成装置に対して着脱自在となっている。1414は現像器である。
ここで光受容部材は実施例A6で用いたものと同処方で、基体の直径がφ30の小径の光受容部材である。本実施例の帯電装置1411は図20(c)に示した磁気ブラシ帯電器を用いている。この実施例では、光受容部材内部に加熱ヒーターを設けておらず、温度はほぼ室温に保たれている。
このレーザービームプリンターで実際に画像を出しチェックしたところ、ガサツキのない、濃度の濃い、濃度ムラのない鮮明な画像が得られた。
次に、30℃/80%の高温、高湿環境にレーザービームプリンターを設置し、連続通紙1万枚の耐久試験を行った。1万枚耐久後の画像を同様にチェックしたところ、初期の画像と同様の鮮明でムラのない良好な画像が得られた。このことから、接触帯電装置を用いた場合、光受容部材を加熱するヒーターを設けなくても画像流れが発生しないことが確認された。
本発明の電子写真用光受容部材と接触帯電装置を組み合わせることによって画像が鮮明で、オゾンの発生の少なく、消費電力の少ない、非常に小型のプリンターあるいは複写装置に適用できることが明らかとなった。
【0180】
【実施例B1】
図12に示すRF−PCVD法による製造装置を用い、鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に電子写真用光受容部材を形成した。この時、光導電層の作製条件は表25に示す通りとした。このようにして作製した光受容部材表面に図11に示す蒸着装置により蒸着の際の支持体温度、蒸着量などの蒸着条件および蒸着時間を制御することにより大きさは直径約5000Å、被覆率約20%になるように選択的に島状に金属薄膜を形成した。金属としてはアルミニウム(Al)を用いた。
【0181】
このようにして作製した電子写真用光受容部材は、電子写真装置(キヤノン社製NP6060を本テスト用に改造したもの)にセットして、種々の条件の元に、画像のガサツキ、トナー転写効率、クリーナー滑り性、画像流れなどの電子写真特性を前述の実験B1で説明した評価基準で測定した。結果を表26に示す。
【0182】
【比較例B1】
実施例B1と同様にして表25に示す作製条件で光受容部材を形成後、金属原子を付着させずに(被覆率0%)、実施例B1と同様な評価を行った。その結果を同じく表26に示す。以上の実施例B1、比較例B1の結果から、本発明による光受容部材は本発明の範囲外の光受容部材に対して著しい優位性が認められた。更に、本発明の光受容部材におけるAlの表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Alは本発明の特徴であるように、光受容部材表面の柱状構造の間のへこみ部分に2次元的に分布している様子がみられた。
【0183】
【比較例B2】
比較例B1で作製した光受容部材を、特開昭61−231558号公報に開示されている方法に従って、研磨処理剤としてAlを用い研磨処理を行うことにより、光受容部材表面と処理剤の固相反応により生成した反応生成物の少なくとも一部を機械的に除去した。この処理の後に、実施例B1と同様な評価を行った。その結果を同じく表26に示す。表面処理を行っても本発明ほどには帯電能、暗減衰は改善されなかった。更に、Alの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Alは光受容部材表面に均一に分布しており、本発明のように柱状構造の間のへこみ部分に、2次元的に局在する様子は見られなかった。
【0184】
【実施例B2】
図12に示すRF−PCVD法による製造装置を用い、鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(支持体)上に電子写真用光受容部材を形成した。この時、光導電層の作製条件は表27に示す通りとした。このようにして作製した光受容部材表面に図11に示す蒸着装置により蒸着の際の支持体温度、蒸着量などの蒸着条件および蒸着時間を制御することにより大きさは直径約3000Å、被覆率約25%になるように選択的に島状に金属薄膜を形成した。金属としてはセレン(Se)を用いた。このようにして作製した電子写真用光受容部材を、実施例B1と同様に評価した。その結果を表28に示す。ガサツキの少ない、コントラストの良好な光受容部材が得られた。
【0185】
【比較例B3】
実施例B2と同様の装置、手順で表29に示す作製条件に従い、光受容部材を形成した。本比較例では特開昭60−28658号公報に開示されている技術と同様に、成膜終了間際にミクロンオーダーに粉砕したセレン(Se)をキャリアガスとして導入することにより膜中にSe金属を導入した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例B1と同様に評価した。結果を同じく表28に示す。ガサツキ、転写効率は改善されなかった。更に、Seの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Seは光受容部材表面に均一に分布しており、本発明のように2次元状態に局在する様子は見られなかった。
【0186】
【比較例B4】
実施例B2と同様の装置、手順で表30に示す作製条件に従い、光受容部材を形成した。本比較例では成膜終了間際にBをSiHに対して100ppm導入することにより膜中にB原子を導入した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例B1と同様に評価した。結果を同じく表28に示す。ガサツキ、転写効率は改善されなかった。更に、Bの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Bは光受容部材表面に均一に分布しており、本発明のように表面のへこみ部分に局在する様子は見られなかった。
【0187】
【比較例B5】
実施例B2と同様の装置、手順で表31に示す作製条件に従い、光受容部材を形成した。本比較例では成膜終了間際にPHを100ppm導入することにより膜中にP原子を導入した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例B1と同様に評価した。結果を同じく表28に示す。帯電能、暗減衰は改善されなかった。更に、Pの光受容部材表面での分布状態をX線マイクロ分析の2次元マッピングによって分析したところ、Pは光受容部材表面に均一に分布しており、本発明のように表面の柱状構造の間のへこみ部分に局在する様子は見られなかった。
【0188】
【実施例B3】
実施例B1と同様の製造装置、製造方法により表32に示す作製条件で電子写真用光受容部材を形成した。但し、今回は第13族、第14族、第15族、第16族金属原子を複数組み合わせて使用して選択的に2次元構造の金属薄膜を形成した。金属はあらかじめ溶解して合金を作製した後に図11に示す蒸着器で薄膜を蒸着した。いずれの試料も、金属元素の存在する領域の形状は円、または楕円に近似した形状とし、大きさは直径(長径)4000Å、被覆率約50%になるように選択的に島状に金属薄膜を形成した。このようにして作製した電子写真用光受容部材を実施例B1と同様に評価した。結果を表33に示す。帯電能、暗減衰、残留電位は良好であった。この結果より、本発明による光受容部材は、表面に存在する金属原子が複数の元素であっても同様の効果があることが認められた。
【0189】
【実施例B4】
図12に示すRF−PCVD法による製造装置を用い、実施例B1と同様にして電子写真用光受容部材を形成した。この時、光導電層の作製条件は表34に示す通りとし、光導電層の上に更にSiCによる表面保護層を設けた。このようにして作製した光受容部材表面に電子ビーム蒸着装置により選択的に島状に金属薄膜を形成した。金属としては鉛(Pb)を用い、金属元素の存在する領域の形状は円、または楕円に近似した形状とし、大きさは直径(長径)約2500Å、被覆率を60%とした。このようにして作製した電子写真用光受容部材を、実施例B1と同様に電子写真特性の評価を行った。評価結果を表35に示す。本発明は、表面層のある光受容部材に適用しても全く同様の効果が得られることが判明した。
【0190】
【実施例B5】
実施例B4で作製した電子写真用光受容部材を気温40℃、湿度85%の高湿環境下で再生紙を用い10万枚の複写を行う耐久テストを行った。その後実施例B1と同様の評価を行った。結果を同じく表35に示す。良好な結果が得られた。
【0191】
【実施例B6】
図13に示すμW−PCVD法による堆積膜形成装置を用い、鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー上に、表36に示す作製条件により光導電層およびSiCからなる表面層を形成した。このようにして作製した光受容部材表面にイオンビーム蒸着装置により蒸着条件、蒸着時間などを制御することにより選択的に島状に金属薄膜を形成した。島の大きさは約1500Å、被覆率10%、金属としては硫黄(S)を用いた。この光受容部材を実施例B1と同様に評価した。結果を同じく表35に示す。良好な結果が得られた。このことより、光受容層、及び表面層の作製方法によらず、本発明の電子写真用光受容部材は本発明の範囲外の電子写真用光受容部材に比べ著しい優位性が認められることが確認できた。
【0192】
【実施例B7】
実施例B6で作製した電子写真用光受容部材を気温40℃、湿度85%の高湿環境下で、再生紙を用い10万枚の複写を行う耐久テストを行った後、初期と同様の評価を行った。結果を表35に示す。
【0193】
【実施例B8】
図13に示すμW−PCVD法による堆積膜形成装置を用い、表37に示す作製条件により電荷輸送層、電荷発生層、及び表面層からなる機能分離型の光受容部材を形成した。このようにして作製した光受容部材表面にイオンビーム蒸着装置により蒸着条件、蒸着時間などを制御することにより選択的に島状に金属薄膜を形成した。島の大きさは約2000Å、被覆率30%、金属としてはスズ(Sn)と鉛(Pb)の合金を1対1で作製し、これを用いた。この光受容部材を実施例B1と同様の評価を行った。結果を表35に示す。このことより、光受容部材の層構成によらず、本発明の電子写真用光受容部材は著しく優れた特性を有することが認められた。
【0194】
【実施例B9】
実施例B1で作製した電子写真用光受容部材を図19に示した電子写真装置にセットして種々の評価を行った。本実施例では電子写真装置の帯電装置を図20(a)のローラー帯電器としてあり、ローラーの回転方向は順方向、光受容部材と等速度(光受容部材との相対速度は0%)で回転させた。印加電圧はDC1.5KVとした。
評価は実施例B1と同様の内容につけ加えて、実施例A7と同様帯電能の周ムラ、ハーフトーンムラを評価した。評価方法は実施例A7と同様に行った。
評価結果を表38に示す。本発明の電子写真用光受容部材は、ローラー帯電器を用いた電子写真複写機に応用しても同様の効果が得られるばかりか、周方向の電位ムラも防止されることが判明した。また、実際に画像を複写したところ、非常に鮮明で濃度の濃い、良好な画像が得られた。
【0195】
【実施例B10】
実施例B4で作製した電子写真用光受容部材を図19に示した電子写真装置にセットして種々の評価を行った。本実施例では電子写真装置の帯電装置を図20(b)のワイヤーブラシ帯電器としてあり、ワイヤーブラシの回転方向は光受容部材の回転方向と逆方向、回転速度は電子写真感光体と同速度(光受容部材との相対速度は200%)とした。ワイヤーブラシに印加する電圧はDC800Vに設定した。
評価は実施例B9と同様の評価を行った。結果は表38に示したが実施例B9と同様に周ムラが改善しており、良好な結果が得られた。また、実際の画像も非常に鮮明で濃度の濃い、良好な画像が得られた。
【0196】
【実施例B11】
実施例B8で作製した電子写真用光受容部材を図19に示した電子写真装置にセットして種々の評価を行った。本実施例では電子写真装置の帯電装置を図20(c)の磁気ブラシ帯電器に改造してあり、磁気ブラシの回転方向は光受容部材の回転方向と逆方向、回転速度は電子写真感光体の回転速度の半分(光受容部材との相対速度は150%)とした。磁気ブラシに印加する電圧はDC800Vに設定した。
評価は実施例B9と同様の評価を行った。結果は表38に示したが実施例B9と同様に周ムラが改善しており、良好な結果が得られた。また、実際の画像も非常に鮮明で濃度の濃い、良好な画像が得られた。
【0197】
【実施例B12】
実施例B1、B2、B3、B4、B6、B8、B9、B10、B11で作製した電子写真用光受容部材(合計9本)をフルカラー電子写真装置(キヤノン製CLC500を本テスト用に改造したもの)にセットして画像を評価した。
ハーフトーンが比較的多い、人物写真、風景写真を各々複写し、人肌の微妙な質感の再現性、髪の毛1本1本の鮮明さ、青空部分のガサツキなどを詳しく評価した。評価の基準は実施例A10と同様とした。
結果を表39に示したが、いずれの電子写真用光受容部材においても従来の光受容部材に比べて格段に表現力が増しており、鮮明でガサツキのない、質感の豊かな画像が再現できた。
【0198】
【実施例B13】
実施例B1、B2、B3、B4、B6、B7、B8で作製した電子写真用光受容部材(合計7本)をフルカラー電子写真装置(キヤノン製CLC200を本テスト用に改造したもの)にセットして10万枚の耐久試験を行い、画像を評価した。
評価方法は実施例B12と同様の方法で行った。結果を表40に示したが、いずれの電子写真用光受容部材においても従来の光受容部材に比べて格段に表現力が増しており、鮮明でガサツキのない、質感の豊かな画像が再現できていた。しかし、耐久性に関しては表面に保護層がある光受容部材の方が更に優れていることが判明した。
【0199】
【実施例B14】
実施例B6と同様にμW−PCVD法で作製した電子写真用光受容部材を図21に示した実験用に改造したレーザービームプリンタに適用した。
なおここで光受容部材は実施例B6で用いたものと同処方で、基体の直径がφ30の小径の光受容部材である。本実施例の帯電装置は図20(c)に示した磁気ブラシ帯電器を用いている。
このレーザービームプリンタで実際に画像を出しチェックしたところ、ガサツキのない、濃度の濃い、濃度ムラのない鮮明な画像が得られた。
次に、30℃/80%の高温、高湿環境にレーザービームプリンタを設置し、連続通紙1万枚の耐久試験を行った。1万枚耐久後の画像を同様にチェックしたところ、初期の画像と同様の鮮明でムラのない良好な画像が得られた。このことから、接触帯電装置を用いた場合、光受容部材を加熱するヒーターを設けなくても画像流れが発生しないことが確認された。
本発明の電子写真用光受容部材と接触帯電装置を組み合わせることによって画像が鮮明で、オゾンの発生の少なく、消費電力の少ない、非常に小型のプリンタあるいは複写装置に適用できることが明らかとなった。
【0200】
【表1】
Figure 0003548327
【0201】
【表2】
Figure 0003548327
【0202】
【表3】
Figure 0003548327
【0203】
【表4】
Figure 0003548327
【0204】
【表5】
Figure 0003548327
【0205】
【表6】
Figure 0003548327
【0206】
【表7】
Figure 0003548327
【0207】
【表8】
Figure 0003548327
【0208】
【表9】
Figure 0003548327
【0209】
【表10】
Figure 0003548327
【0210】
【表11】
Figure 0003548327
【0211】
【表12】
Figure 0003548327
【0212】
【表13】
Figure 0003548327
【0213】
【表14】
Figure 0003548327
【0214】
【表15】
Figure 0003548327
【0215】
【表16】
Figure 0003548327
【0216】
【表17】
Figure 0003548327
【0217】
【表18】
Figure 0003548327
【0218】
【表19】
Figure 0003548327
【0219】
【表20】
Figure 0003548327
【0220】
【表21】
(耐久前の評価)
Figure 0003548327
【0221】
【表22】
(耐久後の評価)
Figure 0003548327
【0222】
【表23】
Figure 0003548327
【0223】
【表24】
Figure 0003548327
【0224】
【表25】
Figure 0003548327
【0225】
【表26】
Figure 0003548327
【0226】
【表27】
Figure 0003548327
【0227】
【表28】
Figure 0003548327
【0228】
【表29】
Figure 0003548327
【0229】
【表30】
Figure 0003548327
【0230】
【表31】
Figure 0003548327
【0231】
【表32】
Figure 0003548327
【0232】
【表33】
Figure 0003548327
【0233】
【表34】
Figure 0003548327
【0234】
【表35】
Figure 0003548327
【0235】
【表36】
Figure 0003548327
【0236】
【表37】
Figure 0003548327
【0237】
【表38】
Figure 0003548327
【0238】
【表39】
Figure 0003548327
【0239】
【表40】
Figure 0003548327
【0240】
【発明の効果】
上記したように本発明によれば耐久性に優れ高画質の電子写真用光受容部材を得ることが可能となった。本発明による電子写真用光受容部材は、特にハーフトーン画像におけるガサツキにおいて従来の電子写真用光受容部材に比べ顕著な優位性が認められ、特にフルカラー複写機において淡い色の再現性に優れている。更に、転写効率が大幅に改善されているため、排トナーの発生量が少なくなり、省資源、環境保全の観点からも優位性がある。
【0241】
また本発明によればカラー複写機や白黒複写機における、ハーフトーン部のガサツキを抑えることにより諧調性の高い電子写真用光受容部材を得ることが可能となった。本発明による電子写真用光受容部材は最表面のくぼみ部分に第13族、第14族、第15族、第16族の金属原子を2次元的に分布をもって存在させることにより表面が平坦でトーナーの転写効率が高い光受容部材が得られ、かつ、良好な滑り性を合わせ持つため、クリーナーのびびりなどの副作用がなく、また長期にわたってその効果が維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図2】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図3】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図4】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図5】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図6】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図7】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図8】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図9】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図10】本発明の電子写真用光受容部材の一例を説明するための模式的説明図である。
【図11】本発明の光受容部材の作製に適用可能な蒸着装置の一例を説明するための模式的構成図である。
【図12】本発明の光受容部材の作製に使用可能な成膜装置の一例を説明するための模式的構成図である。
【図13】本発明の光受容部材の作製に使用可能な成膜装置の一例を説明するための模式的構成図である。
【図14】本発明の光受容部材の作製に使用可能な成膜装置の一例を説明するための模式的構成図である。
【図15】図14に示した成膜装置の模式的横断面図である。
【図16】本発明の光受容部材の作製に使用可能な成膜装置の一例を説明するための模式的構成図である。
【図17】本発明の光受容部材表面の研磨を行う研磨装置の一例を説明するための模式的構成図である。
【図18】本発明の光受容部材が適用可能な電子写真装置の一例を説明するための模式的構成図である。
【図19】本発明の光受容部材が適用可能な電子写真装置の一例を説明するための模式的構成図である。
【図20】本発明の電子写真装置の帯電手段の一例を説明するための模式的構成図である。
【図21】本発明の光受容部材が適用可能な電子写真装置の一例を説明するための模式的構成図である。

Claims (20)

  1. 少なくとも最表面部がシリコン原子を含有する非単結晶質材料を有する電子写真用光受容部材であって、前記光受容部材の最表面部において、周期律表第13族、14族、15族、及び16族に属する金属原子の中から選ばれる少なくとも1種の金属原子を有する領域と、該金属原子を実質的に有しない領域と2次元的に分布し、且つ前記金属原子を有する領域の面積が前記最表面部の面積の5%以上60%以下であることを特徴とする電子写真用光受容部材。
  2. 前記金属原子を有する領域において、前記金属原子は前記光受容部材の表面に存在する請求項1に記載の電子写真用光受容部材。
  3. 前記光受容部材は、支持体と、該支持体上に配されたシリコン原子を母体とする非単結晶材料を有し、該非単結晶材料光導電性を示す請求項1または2に記載の電子写真用光受容部材。
  4. 前記光受容部材の最表部は光導電性を有する非単結晶材料の層上に設けられた表面保護層の最表部である請求項1または2に記載の電子写真用光受容部材。
  5. 前記表面保護層は、炭素、窒素、及び酸素の中から選ばれる少なくとも 1 種の元素を含有する請求項に記載の電子写真用光受容部材。
  6. 前記光受容部材の最表面において、前記金属原子を有する領域、前記実質的に金属原子を有しない領域中に島状に分布して存在する請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真用光受容部材。
  7. 前記金属原子が島状に存在する領域が、円形に近似していて、該円形領域が直径200Å以上、5000Å以下である請求項に記載の電子写真用光受容部材。
  8. 前記金属原子が島状に存在する領域が、楕円形に近似していて、該楕円形領域が、長径が200Å以上、5000Å以下である請求項に記載の電子写真用光受容部材。
  9. 前記シリコン原子を含有する非単結晶材料よりなる最表面部が凹凸を有し、凹凸のくぼみに前記金属原子を付着することで、金属原子が存在する領域と該金属原子が実質的に存在しない領域とが前記最表面において2次元的に分布している請求項1に記載の電子写真用光受容部材。
  10. 少なくとも電子写真用光受容部材、露光手段、帯電手段、及び現像手段を有する電子写真装置において、前記光受容部材は少なくともシリコン原子を含有する非単結晶質材料を有する最表面部を有し、該最表面部において、周期律表第13族、14族、15族、及び16族に属する金属原子の中から選ばれる少なくとも1種の金属原子を有する領域と、該金属原子を実質的に有しない領域と2次元的に分布し、且つ前記金属原子を有する領域の面積が前記最表面部の面積の5%以上60%以下であることを特徴とする電子写真装置。
  11. 前記光受容部材の金属原子を有する領域において、前記金属原子は前記光受容部材の最表面に存在する請求項10に記載の電子写真装置。
  12. 前記光受容部材は、支持体と、該支持体上に配されたシリコン原子を母体とする非単結晶材料を有し、該非単結晶材料は光導電性を示す請求項10または11に記載の電子写真装置。
  13. 前記光受容部材の最表部は光導電性を有する非単結晶材料の層上に設けられた表面保護層の最表部である請求項10または11に記載の電子写真装置。
  14. 前記表面保護層は、炭素、窒素、及び酸素の中から選ばれる少なくとも 1 種の元素を含有する請求項13に記載の電子写真装置。
  15. 前記光受容部材の最表面において、前記金属原子を有する領域、前記実質的に金属原子を有しない領域中に島状に分布して存在する請求項10乃至12のいずれかに記載の電子写真装置。
  16. 前記金属原子が島状に存在する領域が、円形に近似していて、該円形領域が直径200Å以上、5000Å以下である請求項15に記載の電子写真装置。
  17. 前記金属原子が島状に存在する領域が、楕円形に近似していて、該楕円形領域が、長径が200Å以上、5000Å以下である請求項15に記載の電子写真装置。
  18. 前記シリコン原子を含有する非単結晶材料よりなる最表面部が凹凸を有し、凹凸のくぼみに前記金属原子を付着することで、金属原子が存在する領域と該金属原子が実質的に存在しない領域とが前記最表面において2次元的に分布している請求項10に記載の電子写真装置。
  19. 前記帯電手段は、前記光受容部材と接触する部材を有する請求項10に記載の電子写真装置。
  20. 前記帯電手段は、前記光受容部材に非接触である請求項10に記載の電子写真装置。
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