JP2015007746A - 電子写真感光体および電子写真装置 - Google Patents

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高典 上野
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弘憲 大脇
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智仁 小澤
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純 大平
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Abstract

【課題】 電子写真感光体の感度特性および耐高湿流れ性を向上させ、画像解像力の高さと画像メモリーの抑制とを両立させること。【解決手段】 光導電層と、光導電層の上の水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された表面層とを有する電子写真感光体において、表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))を0.50以上0.65以下とし、表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和を6.60?1022原子/cm3以上とし、表面層の電子スピン共鳴測定によって求められる欠陥密度が9.0?1018spins/cm3以上2.2?1019spins/cm3以下とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された表面層を有する電子写真感光体および前記電子写真感光体を有する電子写真装置に関する。
無機材料の電子写真感光体として、光導電層に水素化アモルファスシリコンなどのアモルファスシリコンを用いたアモルファスシリコン感光体が知られている。なお、アモルファスシリコンを、以下「a−Si」とも表記する。また、電子写真感光体を単に「感光体」とも表記する。
a−Si感光体の構成例として、基体上に下部電荷注入阻止層、光導電層および表面層を順に積層した構成が挙げられる。その中でも、表面層の材料として水素化アモルファスシリコンカーバイドを適用したa−Si感光体が知られている。なお、水素化アモルファスシリコンカーバイドを、以下「a−SiC」とも表記する。a−SiC表面層は耐摩耗性に優れていることから、主にプロセススピードの速い電子写真装置で用いられている。
従来、a−SiC表面層は、耐摩耗性を優先して設計されることが多い。耐摩耗性を向上する手段として、a−SiC表面層を構成しているケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比率(C/(Si+C))が高い組成が選択される場合が多い。これは、ケイ素原子と炭素原子の結合力に比べ、炭素原子同士の結合力が高いことから、(C/(Si+C))が高くなるほど炭素原子同士の結合が増え、a−SiCの結合力が向上できるからである。一方、(C/(Si+C))が高くなると、炭素原子間の二重結合も増える傾向がある。
炭素原子間の二重結合が増えると、a−SiC表面層は光透過の観点では不利となり、光導電層へ到達する光が減少して感光体の感度低下を生じる。また、a−SiC表面層の光透過が低い場合には、a−SiC表面層の摩耗量に対する感度変動が大きくなることから、a−SiC表面層の摩耗むらが発生した場合、感光体の感度むらが生じて画像濃度むらの原因にもなる。
別の課題として、a−SiC表面層は、絶対湿度の高い環境下で使用した場合に、文字がぼけたり、文字が印字されずに白抜けが生じたりする場合があった。これらの現象を、以下「高湿流れ」とも表記する。高湿流れとは、絶対湿度の高い環境下に設置された電子写真装置を用いて画像を出力し、しばらく時間をあけた後、再び画像を出力すると、出力画像において、文字がぼけたり、文字が印字されずに白抜けが生じたりするという画像不良のことである。
高湿流れは、感光体の表面に水分が吸着することによって表面の抵抗が低下し、電荷が横流れを起こすために発生すると考えられている。電子写真装置が設置されている環境の絶対湿度が高い場合や、a−Si感光体の近傍に設ける感光体ヒーターを使用しない場合に、より発生しやすくなる。
特許文献1によれば、以下の要件を満たすことで、耐高湿流れ性(高湿流れ抑制効果)と耐摩耗性の両立が図られている。
表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))を0.61以上0.75以下とし、
表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和を6.60×1022(原子/cm)以上とする。
また、これまでa−Si感光体は主にジャンピング現像を採用した白黒の電子写真装置に搭載されてきた。今後、フルカラー化や高画質化に対応してくためには、a−Si感光体を二成分現像などの現像システムにもさらに適応していくことが望まれている。
特開2010−49241号公報
近年、電子写真装置の高速化およびフルカラー化が着実に進んでおり、従来に比べて感光体に掛かる物理的ストレスは大きくなる傾向にある。特に、POD市場のように出力画像が商品として扱われる分野では、今まで以上に高画質な画像を安定して出力できる電子写真装置が求められている。つまり、感光体の高い画像解像力とともに高い耐久性が求められている。
特許文献1に開示された技術を用いることによって、感光体のa−SiC表面層の耐摩耗性を向上することができる。しかし、POD(プリントオンデマンド)市場ではオフィス市場に比べて数倍から十数倍の耐久性が求められており、耐摩耗性を向上させるだけの手法には限界があった。したがって、耐摩耗性を向上しつつ、厚く積層することによって、表面層の摩耗の許容範囲を増やし、感光体の耐久性を向上させることができる。
しかし、従来の技術を用いて、a−SiC表面層を単に厚く積層した場合、a−SiC表面層による光吸収が無視できなくなり、感度特性の低下や、摩耗むらに起因する感度むらが課題となる。また、特許文献1に開示された技術を用いた場合には、積層されたa−SiC表面層の残留応力によって膜剥がれが発生する場合もあった。
さらに、a−SiC表面層による光透過を改善する目的で、(C/(Si+C))を比較的低く設定し、特許文献1に開示された技術を用いて耐摩耗性を向上させた場合、a−SiC表面層の欠陥密度が多くなる場合があった。
また、a−Si感光体をフルカラー化や高画質化に対応してくためには、二成分現像などの現像システムに適応していくことが望まれる。例えば、a−SiC表面層の欠陥密度が多いa−Si感光体を二成分現像の電子写真装置に適用した場合、現像工程において現像スリーブから感光体へ磁性キャリア粒子を介して電荷注入が発生し、画像ボケが生じる場合があった。
本発明の目的は、感度特性および耐高湿流れ性に優れ、画像解像力の高さと画像メモリーの抑制とを両立した電子写真感光体、および、該電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することにある。
本発明は、光導電層と、前記光導電層の上の水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された表面層とを有する電子写真感光体において、
前記表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.50以上0.65以下であり、
前記表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和が、6.60×1022原子/cm以上であり、
前記表面層の電子スピン共鳴測定によって求められる欠陥密度が、9.0×1018spins/cm以上2.2×1019spins/cm以下である
ことを特徴とする電子写真感光体である。
本発明によれば、a−SiC表面層の光透過性が向上することで感度特性が向上する。また、a−SiC表面層のケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和を高く設定することで耐高湿流れ性が向上する。a−SiC表面層の欠陥密度を適正化することで、画像解像力の高さと画像メモリーの抑制とを両立した電子写真感光体、および、該電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することができる。
本発明の電子写真感光体の模式断面図 本発明の電子写真装置の模式断面図 本発明の電子写真感光体を作製できる成膜装置 画像メモリーの評価に用いたチャートの模式図
本発明者らは、電子写真感光体の長寿命化を目的として水素化アモルファスシリコンカーバイド(a−SiC)表面層の膜厚を厚く積層した構成でも、感度特性および耐高湿流れ性に優れ、画像解像力が高く、画像メモリーが抑えられた電子写真感光体を実現するために鋭意検討を行った。検討の結果、これらの性能は、主に表面層の特性を制御することが重要であることがわかった。
以下、ケイ素原子の原子密度を「Si原子密度」とも表記する。また、炭素原子の原子密度を「C原子密度」とも表記する。また、ケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和を「Si+C原子密度」とも表記する。
(本発明の電子写真感光体)
まず、本発明の電子写真感光体の層構成について説明する。
図1(A)は、a−Si感光体の層構成を示す模式図である。基体101上に下部電荷注入阻止層102、光導電層103、表面層104が順次積層されている。この層構成は主に正帯電用のa−Si感光体に適用される。
図1(B)は、光導電層103、表面層104の間に中間層105を設けたa−Si感光体の層構成を示す模式図である。中間層105に電荷注入阻止能を付与することによって負帯電用のa−Si感光体にも適用できる。
図1(C)は、光導電層103、表面層104の間に複数の中間層106を設けたa−Si感光体の層構成の模式図である。この構成も複数の中間層106のいずれかに電荷注入阻止能を付与することによって負帯電用のa−Si感光体にも適用できる。
図1(D)は、光導電層103、表面層104の間に変化層107を設けたa−Si感光体の層構成の模式図である。この構成も変化層107の一部分に電荷注入阻止能を付与することによって負帯電用のa−Si感光体にも適用できる。
次に、前述した層構成の感光体を構成する各層および基体について説明する。
(表面層)
表面層は、以下の要件を満たすことで、上記効果を得ることができる。
a−SiC表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))を0.50以上0.65以下とし、
前記表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和を6.60×1022原子/cm以上とし、
前記表面層の電子スピン共鳴測定によって求められる欠陥密度を9.0×1018spins/cm以上2.2×1019spins/cm以下とする。
まず、感光体の感度特性を向上させるためには、a−SiC表面層の光透過率を高くして光導電層に到達する光量を増やすことが重要である。そのためには、表面層を構成しているa−SiCのC/(Si+C)を0.50以上0.65以下の範囲にすることによって、a−SiC表面層の光学的バンドギャップが広くなり、光透過率を向上させることができる。特に、C/(Si+C)を0.55以上0.63以下の範囲にすることがより好ましい。
次に、a−SiC表面層は、画像出力の際に繰り返し帯電されることによって、最表面が酸化されて極性基が生成される。極性基が生成されると、表面自由エネルギーが増大するため、水分の吸着量が増大する。表面に吸着した水分は、表面抵抗を低抵抗化するため、高湿性流れが発生する。つまり、耐高湿流れ性を向上させるためには、a−SiC表面層の酸化を抑制することが有効である。
a−SiC表面層の酸化を抑制するためには、a−SiC表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和が6.60×1022原子/cm以上となるようにする。このようにすることによって、a−SiC表面層の骨格を形成するケイ素原子と炭素原子の結合力が強まり、耐酸化性が向上する。
また、a−SiC表面層の欠陥密度に応じてa−SiC表面層の抵抗率が変化して画像解像度に影響を及ぼす。a−SiC表面層の欠陥密度が多くなると抵抗率が小さくなる。極端に抵抗率が低くなると、潜像を形成している電荷が横流れを引き起こして、画像ボケの原因になる。一方、a−SiC表面層の欠陥密度が少なくなり過ぎると、抵抗率が大きくなる。極端に抵抗率が大きくなると、表面層の膜厚を厚膜化した場合には表面層の抵抗が顕著に増大するため、画像メモリーの原因になる。つまり、画像解像度の高さと画像メモリーの抑制とを両立するためには、欠陥密度を適正な範囲に設定する必要がある。
さらに、a−SiC表面層の感光体を、二成分現像方式を採用した電子写真装置に適用した場合、a−SiC表面層の欠陥密度は、単に表面層の抵抗率へ影響を及ぼすだけでなく、現像工程において電荷注入を発生させる原因にもなる。a−SiC表面層の欠陥密度が多くなるほど、現像スリーブから感光体に磁性キャリア粒子を介した電荷注入が増大し、画像ボケの原因となる。この現象は、磁性キャリア粒子を用いた二成分現像方式だけではなく、液体のキャリア液を用いる液体現像方式などでも同様の効果が見込まれる。
本発明者らの検討の結果、a−SiC表面層の電子スピン共鳴測定によって求められる欠陥密度を9.0×1018spins/cm以上2.2×1019spins/cm以下に制御することによって上記課題を解決できることがわかった。特に、1.1×1019spins/cm以上1.8×1019spins/cm以下がより好ましい範囲であった。
また、耐高湿流れ性の観点から、a−SiC表面層における赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aは0.52以下がより好ましい範囲であった。赤外線吸収スペクトルにおける波数2960cm−1の吸収は、sp−CHによる吸収に起因したピークであり、波数2890cm−1の吸収は、sp−CHによる吸収に起因したピークである。つまり、a/aが高くなるほど、a−SiC表面層中にメチル基が多く含まれることを意味する。
Si+C原子密度の低いa−SiC表面層では、CH鎖やメチル基が増える傾向がある。ただ、同じSi+C原子密度のa−SiC表面層であっても、CH鎖やメチル基の密度は異なる場合がある。
特に、a−SiC表面層中のメチル基が多くなるということは、局所的にケイ素原子と炭素原子のネットワークが途切れることを意味する。そこで、Si+C原子密度を6.60×1022原子/cm以上にしたうえで、a/aを低く制御する。そうすることで、a−SiC表面層中のケイ素原子と炭素原子のネットワーク中に局所的に弱い部分が形成されにくくなる。その結果、a−SiCの骨格がさらに強靭になり、耐高湿流れ性が向上すると考えられる。もちろん、ケイ素原子と水素原子の結合状態もa−SiCの骨格に影響する。
しかし、C−H結合とSi−H結合のエネルギーは、それぞれ98.8(kcal/mol)、70.4(kcal/mol)であることから、実際にはSi−H結合よりもC−H結合の方が多くなる傾向がある。つまり、水素原子のa−SiC表面層への取りこまれ方の変化は、C−H結合に顕著に表れる。よって、本発明では、炭素原子と結合している水素原子の状態に着目し、赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aを0.52以下がより好ましい範囲であった。
(中間層)
a−SiC表面層の光透過率を向上させた本発明では、a−SiC表面層と光導電層の間にa−SiCで構成された中間層を設けることが好ましい。
本発明では、光透過率を向上するために、C/(Si+C)を0.50以上0.65以下の範囲とし、a−SiC表面層の光学的バンドギャップを広く設定している。すなわち、光導電層のバンドギャップを変更しない限り、表面層と光導電層の光学的バンドギャップの差が大きくなる。光学的バンドギャップの差が大きくなると、バンドの不整合が大きくなり、表面層と光導電層の層間で電荷の移動がスムーズではなくなる。
例えば、露光により光導電層で発生した光キャリアが表面層と光導電層の界面の光導電層側にトラップされた場合、光導電層の抵抗が低いため、光キャリアが横流れして画像ボケが生じる場合が考えられる。
そのような場合、a−SiCの組成を適正化した中間層を設けることによって、露光により発生した光キャリアを表面層まで移動しやすくできる。そうすることで、前述の課題を解消できる。そのためには、a−SiC中間層の(C/(Si+C))をa−SiC表面層の(C/(Si+C))よりも低く設定する。
もちろん、a−SiC中間層に(C/(Si+C))を段階的に変化させた複数の層を設けたり、a−SiC中間層の(C/(Si+C))を連続的に変化させたりしてもよい。この場合、光導電層からa−SiC表面層までa−SiC中間層の(C/(Si+C))が単調増加するように構成することが好ましい。単調増加とは、(C/(Si+C))が光導電層から表面層に向かって実質的に下がっている領域を有さないことである。
また、負帯電用の感光体の場合、中間層に電荷注入阻止能を付与することが帯電特性を得るために有効である。電荷注入阻止能を向上させるためには、a−SiC中間層に周期表第13族を含有させることが有効である。周期表13族に属する原子の中でも、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましい。なお、電荷注入阻止能を付与した中間層を、以下「上部阻止層」とも表記する。
(光導電層)
本発明において、光導電層は、電子写真特性上の性能を満足できる光導電特性を有するものであればいずれのものであってもよいが、耐久性、安定性の観点から、a−Si光導電層が好ましい。
本発明において、光導電層としてa−Siで構成された光導電層を用いる場合は、a−Si中の未結合手を補償するため、水素原子に加えて、ハロゲン原子を含有させることができる。
水素原子(H)およびハロゲン原子(X)の含有量の合計(H+X)は、ケイ素原子(Si)と水素原子(H)とハロゲン原子(X)との和(Si+H+X)に対して10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であることがより好ましい。一方、30原子%以下であることが好ましく、25原子%以下であることがより好ましい。
本発明において、光導電層には、必要に応じて、伝導性を制御するための原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御するための原子は、光導電層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、また、膜厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
伝導性を制御するための原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができる。すなわち、p型伝導性を与える周期表13族に属する原子またはn型伝導性を与える周期表15族に属する原子を用いることができる。周期表13族に属する原子の中でも、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましい。周期表15族に属する原子の中でも、リン原子、ヒ素原子が好ましい。
光導電層に含有される伝導性を制御するための原子の含有量は、ケイ素原子(Si)に対して1×10−2原子ppm以上であることが好ましい。一方、1×10原子ppm以下であることが好ましい。
本発明において、光導電層の膜厚は、電子写真特性やコストなどの点から、15μm以上60μm以下であることが好ましい。光導電層の膜厚が15μm以上であれば、帯電部材への通過電流量が増大しにくく、劣化しにくくなる。
光導電層の膜厚が60μm以下であれば、a−Siの異常成長部位(例えば、水平方向で50μm以上150μm以下、高さ方向で5μm以上20μm以下の部位。)が大きくなりにくく、表面を摺擦する部材へのダメージが抑えられ、画像欠陥の発生が抑えられる。
なお、光導電層は、単一の層で構成されてもよいし、複数の層(例えば、電荷発生層および電荷輸送層)で構成されてもよい。
(下部電荷注入阻止層)
本発明においては、基体と光導電層との間に、基体側からの電荷の注入を阻止する働きを有する電荷注入阻止層を設けることが好ましい。なお、下部電荷注入阻止層を、以下「下部阻止層」とも表記する。下部阻止層は、感光体の表面が一定極性の帯電処理を受けた際、基体から光導電層への電荷の注入を阻止する機能を有する層である。このような機能を付与するために、下部阻止層は、光導電層を構成する材料をベースとしたうえで、伝導性を制御するための原子を光導電層に比べて比較的多く含有させる。
伝導性を制御するために下部阻止層に含有させる原子は、下部阻止層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、また、膜厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。分布濃度が不均一な場合には、基体側に多く分布するように含有させるのが好適である。いずれの場合においても、伝導性を制御するための原子が基体の表面に対して平行面内方向に均一な分布で下部阻止層に含有されることが、特性の均一化を図るうえからも好ましい。
伝導性を制御するために下部阻止層に含有させる原子としては、帯電極性に応じて周期表13族または15族に属する原子を用いることができる。
さらに、下部阻止層には、炭素原子、窒素原子および酸素原子のうち、少なくとも1種の原子を含有させることにより、下部阻止層を基体との間の密着性を向上させることができる。
下部阻止層に含有される炭素原子、窒素原子および酸素原子のうちの少なくとも1種の原子は、下部阻止層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていてもよい。また、膜厚方向には均一に含有されてはいるが、不均一に分布する状態で含有している部分があってもよい。いずれの場合にも、伝導性を制御するための原子が基体の表面に対して平行面内方向に均一な分布で電荷注入阻止層に含有されることが、特性の均一化を図る上からも好ましい。
下部阻止層の膜厚は、電子写真特性やコストの点から、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがより好ましい。膜厚を0.1μm以上にすることにより、基体からの電荷注入阻止能を十分に有することができ、好ましい帯電能を得ることができる。一方、5μm以下にすることにより、下部阻止層の形成時間の延長に起因する製造コストの増加を抑えることができる。
(基体)
基体は、導電性を有するもの(導電性基体)が好ましく、表面に形成される光導電層および表面層を保持しうるものが好ましい。基体の材質としては、例えば、アルミニウム、鉄などの金属や、これらの合金などが挙げられる。なお、導電性を有する基体(導電性の基体)を、以下「導電性基体」とも表記する。
(本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置)
図2を用いてa−Si感光体を有する電子写真装置による画像形成方法を説明する。
まず、感光体201を回転させ、感光体201の表面を主帯電器(帯電手段)202により均一に帯電させる。その後、静電潜像形成手段(露光手段)203により感光体201の表面に画像露光光を照射し、感光体201の表面に静電潜像を形成した後、現像器(現像手段)204より供給されるトナーを用いて現像を行う。この結果、感光体201の表面にトナー像が形成される。
そして、このトナー像を転写手段の一例である中間転写体205に転写し、中間転写体205から紙などの転写材(不図示)に2次転写して、定着手段(不図示)によりトナー像を転写材に定着させる。
一方、トナー像が転写された感光体201の表面に残留するトナーをクリーナー(クリーニング手段)206により除去し、その後、感光体201の表面を前露光器207により露光する。このようにすることにより感光体201中の静電潜像時の残キャリアを除電する。この一連のプロセスを繰り返すことで連続して画像形成が行われる。
(本発明の電子写真感光体を製造するための製造装置および製造方法)
本発明の電子写真感光体の製造方法は、前述した規定を満足する層を形成できるものであればいずれの方法であってもよい。具体的には、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。これらの中でも、原料供給の容易さなどの点で、プラズマCVD法が好ましい。
以下に、プラズマCVD法を用いた製造装置および製造方法について説明する。
図3は、本発明のa−Si感光体を作製するための高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図である。
この堆積装置は、大別すると、反応容器3110を有する堆積装置3100、原料ガス供給装置3200、および、反応容器3110内を減圧するための排気装置(図示せず)から構成されている。
堆積装置3100中の反応容器3110内にはアースに接続された基体3112、基体加熱用ヒーター3113、および、原料ガス導入管3114が設置されている。さらにカソード電極3111には高周波マッチングボックス3115を介して高周波電源3120が接続されている。
原料ガス供給装置3200は、原料ガスボンベ3221〜3225、バルブ3231〜3235、圧力調整器3261〜3265、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255およびマスフローコントローラー3211〜3215から構成されている。各原料ガスを封入したガスのボンベは、補助バルブ3260を介して反応容器3110内の原料ガス導入管3114に接続されている。3116はガス配管であり、3117はリークバルブであり、3121は絶縁材料である。
次に、この装置を使った堆積膜の形成方法について説明する。まず、あらかじめ脱脂洗浄した基体3112を反応容器3110に受け台3123を介して設置する。次に、排気装置(図示せず)を運転し、反応容器3110内を排気する。真空計3119の表示を見ながら、反応容器3110内の圧力が例えば1Pa以下の所定の圧力になったところで、基体加熱用ヒーター3113に電力を供給し、基体3112を例えば50℃以上350℃以下の所定の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置3200より、Ar、Heなどの不活性ガスを反応容器3110に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。
次に、ガス供給装置3200より堆積膜形成に用いるガスを反応容器3110に供給する。すなわち、必要に応じてバルブ3231〜3235、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255を開き、マスフローコントローラー3211〜3215に流量設定を行う。各マスフローコントローラーの流量が安定したところで、真空計3119の表示を見ながらメインバルブ3118を操作し、反応容器3110内の圧力が所望の圧力になるように調整する。
所望の圧力が得られたところで高周波電源3120より高周波電力を印加すると同時に高周波マッチングボックス3115を操作し、反応容器3110内にプラズマ放電を生起する。その後、速やかに高周波電力を所望の電力に調整し、堆積膜の形成を行う。
所定の堆積膜の形成が終わったところで、高周波電力の印加を停止し、バルブ3231〜3235、流入バルブ3241〜3245、流出バルブ3251〜3255、および、補助バルブ3260を閉じ、原料ガスの供給を終える。同時に、メインバルブ3118を全開にし、反応容器3110内を例えば1Pa以下の圧力まで排気する。
以上で、堆積膜の形成を終えるが、複数の堆積膜を形成する場合、再び上記の手順を繰り返してそれぞれの層を形成すればよい。原料ガスの流量や、圧力などを光導電層形成時の条件に向けて一定の時間で変化させて、接合領域の形成を行うこともできる。
すべての堆積膜形成が終わった後、メインバルブ3118を閉じ、反応容器3110内に不活性ガスを導入し、大気圧に戻した後、基体3112を取り出す。
a−SiC表面層の形成は、ケイ素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH)、ジシラン(Si)などのシラン類が好適に使用できる。また、炭素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、メタン(CH)、アセチレン(C)などのガスが好適に使用できる。それらの原料ガスの混合比を調整することによって、a−SiCの(C/(Si+C))を調整できる。
なお、本発明のa−SiC表面層を形成において、Si+C原子密度と欠陥密度を調整するために、水素(H)希釈が有用な方法であった。原料ガスを水素で希釈することによって、形成されるa−SiC表面層に含有される水素原子の量は一旦大きく減少し、その後微増に転じる。a−SiC表面層に含有される水素原子の量が減少する領域では、a−SiC表面層に含有される水素原子の量の減少に応じてSi+C原子密度が増大する。
さらに、水素原子による希釈量(以下「水素希釈量」とも表記する。)を増大させてa−SiC表面層に含有される水素原子の量が微増する領域では、a−SiC表面層に含有される水素原子の量の微増に伴って、欠陥密度が減少する。つまり、水素希釈量を最適化することによって、Si+C原子密度と欠陥密度の制御が可能になる。
なお、他のパラメーターとして、原料ガスの流量を少なくすること、高周波電力を高くすること、または、基体の温度を高くすることなどが、Si+C原子密度を高くすることができる。一方、反応容器内の圧力(以下「反応圧力」とも表記する。)を高くすることによって、欠陥密度を下げることができる。これらの条件を適宜組み合わせて、設定すればよい。
中間層の形成は、表面層を形成する場合と同様の方法を採用することができる。そして、反応容器に供給する原料ガスなどの量、高周波電力、反応圧力、基体の温度などの条件を、必要に応じて設定することで形成される。なお、中間層に電荷注入阻止能を付与するには、帯電極性に応じて周期表13族または15族に属する原子を含有する原料ガスを添加して中間層を形成すればよい。周期表13族または15族に属する原子を含有する原料ガスとしては、ホスフィン(PH)、ジボラン(B)などが挙げられる。
光導電層の形成は、ケイ素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH)、ジシラン(Si)などのシラン類が好適に使用できる。また、水素原子供給用の原料ガスとしては、上記シラン類に加えて、例えば、水素(H)も好適に使用できる。
また、上述のハロゲン原子、伝導性を制御するための原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子など光導電層を含有させる場合には、それぞれの原子を含むガス状または容易にガス化しうる物質を材料として適宜使用すればよい。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
(実施例1および比較例1)
図3のプラズマ処理装置を用いて、下記表1に示す条件で、円筒状基体の上に下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を作製した。円筒状基体として、直径84mm、長さ371mm、厚さ3mmの鏡面加工を施した円筒状のアルミニウム製の導電性基体を使用した。
なお、表面層形成時の原料ガスの流量、反応圧力、高周波電力および基体の温度(基体温度)を下記表2に示す条件とした。感光体の作製本数は、各成膜条件(層形成条件)で2本ずつ作製した。また、表1の下部阻止層、光導電層および上部阻止層のみを形成したリファレンス感光体を1本作製した。
実施例1および比較例1で作製した各成膜条件の1本の感光体を用いて、Si原子密度、C原子密度、Si+C原子密度、(C/(Si+C))および欠陥密度を、後述の分析方法により求めた。また、赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aを、後述の分析方法により求めた。
一方、各成膜条件の残りの1本の感光体を用い、後述の評価条件にて感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を後述の方法により行った。実施例1および比較例1の評価結果を表3に示す。
(表面層の膜厚の測定)
まず、リファレンス感光体の任意の周方向における長手方向の中央部を15mm四方の正方形で切り出し、リファレンス試料を作製した。
次に、下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を形成した感光体を同様に切り出し、測定用試料を作製した。
リファレンス試料と測定用試料を分光エリプソメトリー(J.A.Woollam社製:高速分光エリプソメトリー M−2000)により測定し、表面層の膜厚を求めた。
分光エリプソメトリーの具体的な測定条件は、入射角:60°、65°、70°、測定波長:195nmから700nm、ビーム径:1mm×2mmである。
まず、リファレンス試料を分光エリプソメトリーにより各入射角で波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を求めた。
次に、リファレンス試料の測定結果をリファレンスとして、測定用試料をリファレンス試料と同様に分光エリプソメトリーにより各入射角で波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を求めた。
さらに、下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成した。そして、最表面に表面層と空気層が共存する粗さ層を有する層構成を計算モデルとして用いて、解析ソフトにより粗さ層の表面層と空気層の体積比を変化させて、各入射角における波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係を計算により求めた。そして、各入射角における上記計算により求めた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係と測定用試料を測定して求めた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係の平均二乗誤差が最小となるときの計算モデルを選択した。
この選択した計算モデルにより表面層の膜厚を算出し、得られた値を表面層の膜厚とした。なお、解析ソフトはJ.A.Woollam社製のWVASE32を用いた。また、粗さ層の表面層と空気層の体積比に関しては、表面層:空気層を10:0から1:9まで粗さ層における空気層の比率を1ずつ変化させて計算をした。
本実施例の各成膜条件で作製されたプラス帯電用a−Si感光体においては、粗さ層の表面層と空気層の体積比が8:2のときに
計算によって求められた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係と
測定によって求められた波長と振幅比Ψおよび位相差Δの関係の
平均二乗誤差が最小となった。
((C/(Si+C))およびSi+C原子密度の測定)
分光エリプソメトリーによる測定が終了した後、上記測定用試料について下記の装置を用いてRBS(ラザフォード後方散乱法)により、RBSの測定面積における表面層中のケイ素原子および炭素原子の原子数を測定した。
後方散乱測定装置:AN−2500 日新ハイボルテージ(株)製
測定したケイ素原子および炭素原子の原子数から、(C/(Si+C))を求めた。次に、RBSの測定面積から求めたケイ素原子および炭素原子に対し、分光エリプソメトリーにより求めた表面層の膜厚を用いて、Si原子密度、C原子密度およびSi+C原子密度を求めた。
なお、中間層の(C/(Si+C))は、RBSの測定結果をシミュレーション解析によって、深さ方向の分析を行った。
RBSの具体的な測定条件は、入射イオン:He、入射エネルギー:2.3MeV、入射角:75°、試料電流:35nA、入射ビーム経:1mmである。また、RBSの検出器は、散乱角:160°、アパーチャ径:8mm、HFSの検出器は、反跳角:30°、アパーチャ径:8mm+Slitで測定を行った。
(欠陥密度の測定)
a−SiC表面層の欠陥密度は、電子スピン共鳴(ESR)法により、以下の装置を用いて測定した。
本体:BRUKER社製 Elexsys E580、
ガウスメーター:BRUKER社製 ER036TM、
クライオスタット:OXFORD社製 ESR900。
測定用試料は感光体の任意の周方向における長手方向の中央部を短冊状(20mm×3mm)に切り出し、以下の条件でESR測定を行った。
リファレンス感光体からも同様にリファレンス試料を切り出した。リファレンス試料についても同様にESR測定を行い、測定用試料とリファレンス試料との差分から表面層に起因する欠陥数を算出した。なお、a−SiC表面層の欠陥密度(スピン密度)は、主にC上のダングリングボンドに起因すると考えられる信号(g値=2.0020〜2.0030付近)から算出した。ESRの測定面積から求めた欠陥数に対し、分光エリプソメトリーにより求めた表面層の膜厚を用いて、欠陥密度を求めた。
ESR法の具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定温度:30K、中心磁場:3369G、磁場掃引範囲:200G、
変調:100kHz,20G、マイクロ波:9.43GHz,2μW、
掃引時間:83.886s×10times、時定数:163.84ms、
データポイント数:1024points、キャビティ:TE011,円筒型。
(FT−IR−ATR法)
a−SiC表面層の官能基についてFT−IR−ATR(フーリエ変換赤外分光−減衰全反射)法により、以下の装置を用いて測定した。
Bio−Rad Digilab製:FT−IR装置 FTS−55A
測定サンプルは感光体の任意の周方向における長手方向の中央部を15mm四方の正方形で切り出し、以下の条件でFT−IR−ATR測定を行った。
FT−IR−ATR法の具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
光源:特殊セラミックス、検出器:HgCdTe、分解能:4cm−1
積算回数:256回、IRE:Ge、入射角:60度、
アタッチメント:一回反射ATR用アタッチメント(シーガル)。
なお、上記条件でa−SiC表面層の屈折率を1.9〜2.5とした場合、ATR法の測定深度は2000cm−1で、最大0.2μmである。よって、a−SiC表面層を0.3μm以上積層することで、a−SiC表面層よりも下層の影響を無視できる。
測定波形のベースライン補正を行い、波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aを求めた。
(感度特性)
感度特性の評価は、キヤノン(株)製のデジタル電子写真装置「image RUNNER ADVANCE C7065」(商品名)の改造機を用いた。改造機は、一次帯電および現像バイアスを外部電源から印加する構成とした。
作製した感光体をデジタル電子写真装置「image RUNNER ADVANCE C7065」のBkステーションに搭載した。一次帯電の一次電流とグリット電圧をワイヤーおよびグリットを調整して感光体の暗部表面電位が500Vになるように設定した。次に、先に設定した帯電条件で帯電させた状態で画像露光光を照射し、その照射エネルギーを調整することにより、現像器位置の電位を150Vとした。
評価結果は比較例4−3の感光体を搭載した場合の照射エネルギーを1.00とした相対比較で示した。
A…比較例4−3で作製した感光体での照射エネルギーに対する照射エネルギーの比が0.90未満。
B…比較例4−3で作製した感光体での照射エネルギーに対する照射エネルギーの比が0.90以上0.95未満。
C…比較例4−3で作製した感光体での照射エネルギーに対する照射エネルギーの比が0.95以上。
(耐高湿流れ性)
耐高湿流れ性の評価は、耐久試験を行ったうえでの画像流れ(耐久流れ)の評価である。
耐高湿流れ性の評価は、キヤノン(株)製のデジタル電子写真装置「image RUNNER ADVANCE 8105 Pro」(商品名)の改造機を用いた。改造機は、一次帯電および現像バイアスを外部電源から印加する構成とし、一次帯電および現像バイアスの直流成分を負帯電に変更した。また、感光体への露光部を反転させて、感光体の露光部にトナーを現像する反転現像プロセスに変更した。
上記電子写真装置に作製した感光体を設置し、温度25℃、相対湿度75%(容積絶対湿度17.3g/cm3)の高湿環境下で連続通紙試験前のA3文字チャート(4pt、印字率4%)の画像を出力した。このとき、感光体ヒーターをONにする条件で実施した。
連続通紙試験前の画像出力後、連続通紙試験を実施した。連続通紙試験時は、電子写真装置を稼働して連続通紙試験を実施している間および電子写真装置を停止している間を通じて常に感光体ヒーターをOFFにする条件で実施した。
具体的には、印字率1%のA4テストパターンを用いて、1日当たり2.5万枚の連続通紙試験を10日間実施して25万枚まで行った。連続通紙試験終了後、温度25℃、相対湿度75%の環境下で15時間静置した。
15時間後、感光体ヒーターをOFFのまま立ち上げ、A3文字チャート(4pt、印字率4%)の画像を出力した。連続通紙試験前に出力した画像と、連続通紙試験後に出力した画像を、それぞれ下記のデジタル電子写真装置を用いて、モノクロ300dpiの2値の条件でPDFファイルに電子化した。
デジタル電子写真装置:キヤノン(株)製 「image RUNNER ADVANCE 8105 Pro」(商品名)
電子化した画像をAdobe製の画像編集ソフト「Adobe Photoshop」(商品名)を用いて、感光体1周分の画像領域(251.3mm×273mm)の黒比率を測定した。次に、連続通紙試験前に出力した画像に対する連続通紙試験後に出力した画像の黒比率の比率を求め、耐久流れの評価を行った。
高湿流れが発生した場合、画像全体で文字がぼける、または、文字が印字されずに白抜けするため、連続通紙試験前の正常な画像と比較した場合、出力された画像における黒比率が低下する。よって、連続通紙試験前の正常な画像に対する連続通紙試験後に出力された画像の黒比率の比率が100%に近いほど高湿流れが良好となる。
A…連続通紙試験前の画像に対する連続通紙試験後に出力した画像の黒比率が90%以上110%以下。
B…連続通紙試験前の画像に対する連続通紙試験後に出力した画像の黒比率が80%以上90%未満。
C…連続通紙試験前の画像に対する連続通紙試験後に出力した画像の黒比率が80%未満。
(画像解像力1)
画像解像力1の評価は、キヤノン(株)製のデジタル電子写真装置「image RUNNER ADVANCE C7065」(商品名)の改造機を用いた。改造機は、一次帯電および現像バイアスを外部電源から印加できる構成とした。
また、画像データは、プリンタードライバーを介さずに直接出力可能な構成とし、画像露光光による45度212lpi(1インチあたり212線)の線密度で面積階調ドットスクリーンの面積階調画像(すなわち画像露光を行うドット部分の面積階調)を出力した。面積階調画像は、17段階に均等配分した階調データを用いた。このとき、最も濃い階調を17、最も薄い階調を0として各階調に番号を割り当て、階調段階とした。
次に、上記の改造した電子写真装置に作製した感光体を設置し、上記階調データを用いて、テキストモードを用いてA3用紙に出力した。高湿流れの影響を除外するために、温度22℃、相対湿度50%の環境下で、感光体ヒーターをONにして、感光体の表面を約40℃に保った条件で画像を出力した。
得られた画像を各階調ごとに反射濃度計(X−Rite Inc製:504 分光濃度計)により画像濃度を測定した。なお、反射濃度測定では各々の階調ごとに3枚の画像を出力し、それらの濃度の平均値を評価値とした。
こうして得られた評価値と階調段階との相関係数を算出し、各階調の反射濃度が完全に直線的に変化する階調表現が得られた場合である相関係数=1.00からの差分を求めた。そして、比較例3−3で作製した感光体の相関係数から算出される差分に対する各成膜条件にて作製された感光体の相関係数から算出される差分の比を画像解像力の指標として評価した。この評価において、数値が小さいほど画像解像力が優れていることを示している。
A…比較例3−3で作製した感光体の相関係数から算出される相関係数=1.00からの差分に対する各成膜条件にて作製された感光体から算出される相関係数=1.00からの差分の比が1.50以下。
B…比較例3−3で作製した感光体の相関係数から算出される相関係数=1.00からの差分に対する各成膜条件にて作製された感光体から算出される相関係数=1.00からの差分の比が1.50より大きく、2.00以下。
C…比較例3−3で作製した感光体の相関係数から算出される相関係数=1.00からの差分に対する各成膜条件にて作製された感光体から算出される相関係数=1.00からの差分の比が2.00より大きい。
(画像メモリー)
画像メモリーの評価は、キヤノン(株)製のデジタル電子写真装置「image RUNNER ADVANCE C7065」(商品名)の改造機を用いた。改造機は、一次帯電および現像バイアスを外部電源から印加できる構成とした。
また、画像データは、プリンタードライバーを介さずに直接出力可能な構成とし、図4示すA3のテストチャートを出力して行った。このテストチャートは、画像の先端側にベタ白とベタ黒の繰り返しパターンがあり、その後、600dpiの1ドット1スペースの面積比率25%のハーフトーンで形成されている。感光体の1サイクル目でベタ白ベタ黒の画像を形成した感光体部の2周目にあたる部分が、2周目でハーフトーンを出力した部分における濃度差を反射濃度計(X−Rite Inc製:504 分光濃度計)により画像濃度を測定した。
この評価において、濃度差から以下の基準で評価を行った。
A…濃度差が0.01未満
B…濃度差が0.01以上0.02未満
C…濃度差が0.02以上
(総合評価)
総合評価は、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの各評価項目のうち、最も低い評価値を用いた。なお、総合評価がB以上で本発明の効果が得られていると判断した。
本実施例および比較例の評価結果から、原料ガスのSiHとCHの比率を変えることによって、a−SiC表面層の(C/(Si+C))を制御できることがわかる。
(C/(Si+C))を0.50以上に設定すると高湿流れ性が向上している。一方、(C/(Si+C))を0.65以下に設定すると、感度特性が向上している。
(C/(Si+C))を高く設定した方が、Si+C原子密度を高く制御しやすい。これは、ケイ素原子同士の結合間距離が0.235nm、ケイ素原子と炭素原子の結合距離が0.188nmであり、炭素原子同士の結合距離が0.154nmであるためと推測できる。
もちろん、(C/(Si+C))が0.60を超える範囲では、炭素原子同士の結合状態、すなわち、単結合、二重結合および三重結合についても考慮する必要があるため、単純ではない。しかし、(C/(Si+C))が0.60以下の範囲では、(C/(Si+C))を0.50以上に設定することによって、Si+C原子密度は高くなる。また、SiC表面層の光学的バンドギャップも広くなり、光透過率が高く感度特性が向上する。
一方、(C/(Si+C))が0.60を超える範囲では、(C/(Si+C))の増大に伴って、炭素原子同士の結合確率が急激に増えるため、炭素原子間の二重結合も増える。つまり、(C/(Si+C))を0.65以下にすることで炭素原子間の二重結合を減らすことができるので、SiC表面層の光透過率が高くでき、感度特性が向上する。
なお、SiC表面層を透過する光量は、SiC表面層の膜厚に対して指数関数的に低下する。したがって、SiC表面層が厚いほど、感度特性への影響は大きくなる。実際にはSiC表面層が1μmを超えるような構成で課題となりやすい。すなわち、(C/(Si+C))を0.50以上0.65以下に設定することによって本発明の効果が得られる。その中でも、0.55以上0.63以下がより好ましい範囲であった。
(実施例2および比較例2)
実施例1と同様に上記表1に示す条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を作製した。
ただし、表面層形成時の原料ガスの流量、反応圧力、高周波電力および基体温度を下記表4に示す条件とした。また、感光体の作製本数は、各成膜条件(層形成条件)で2本ずつ作製した。
実施例2および比較例2で作製した各成膜条件の1本の感光体を用い。そして、実施例1と同様の方法で、Si原子密度、C原子密度、Si+C原子密度、(C/(Si+C))、欠陥密度および赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aを求めた。
一方、各成膜条件の残りの1本の感光体を用い、実施例1および比較例1と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。さらに、画像解像力2の評価を後述の方法により行った。また、総合評価は感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1、画像解像力2および画像メモリーの各評価項目のうち、最も低い評価値を用いた。なお、総合評価がB以上で本発明の効果が得られていると判断した。実施例2、比較例2および実施例1−3の評価結果を、表5に示す。
(画像解像力2)
画像解像力2の評価は、キヤノン(株)製のデジタル電子写真装置「image RUNNER ADVANCE 8105 Pro」(商品名)の改造機を用いた。改造機は、外部電源を使用して一次帯電および現像バイアスの直流成分を負帯電に変更した。また、感光体への露光部を反転させて、感光体の露光部にトナーを現像する反転現像プロセスに変更した。画像解像力2では、現像装置としてジャンピング現像を用いることで、現像工程における電荷注入の影響を分離することを目的としている。
また、出力画像データを、プリンタードライバーを介さずに直接出力可能な構成とした。そして、画像露光光による45度212lpi(1インチあたり212線)の線密度で面積階調ドットスクリーンの面積階調画像(すなわち画像露光を行うドット部分における面積階調)を出力する構成とした。面積階調画像は17段階に均等配分した階調データを用いた。このとき、最も濃い階調を17、最も薄い階調を0として各階調に番号を割り当て、階調段階とした。
次に、上記の改造した電子写真装置に作製した感光体を設置し、上記階調データを用いて、テキストモードを用いてA3用紙に出力した。高湿流れの影響を除外するために、温度22℃、相対湿度50%の環境下で、感光体ヒーターをONにして、感光体の表面を約40℃に保った条件で画像を出力した。
得られた画像を各階調ごとに反射濃度計(X−Rite Inc製:504 分光濃度計)により画像濃度を測定した。なお、反射濃度測定では各々の階調ごとに3枚の画像を出力し、それらの濃度の平均値を評価値とした。
こうして得られた評価値と階調段階との相関係数を算出し、各階調の反射濃度が完全に直線的に変化する階調表現が得られた場合である相関係数=1.00からの差分を求めた。そして、比較例3−3で作製した感光体の相関係数から算出される差分に対する各成膜条件にて作製された感光体の相関係数から算出される差分の比を画像解像力の指標として評価した。この評価において、数値が小さいほど画像解像力が優れていることを示している。
A…比較例3−3で作製した感光体の相関係数から算出される相関係数=1.00からの差分に対する各成膜条件にて作製された感光体から算出される相関係数=1.00からの差分の比が1.50以下。
B…比較例3−3で作製した感光体の相関係数から算出される相関係数=1.00からの差分に対する各成膜条件にて作製された感光体から算出される相関係数=1.00からの差分の比が1.50より大きく、2.00以下。
C…比較例3−3で作製した感光体の相関係数から算出される相関係数=1.00からの差分に対する各成膜条件にて作製された感光体から算出される相関係数=1.00からの差分の比が2.00より大きい。
本実施例、本比較例および実施例1−3のa−SiC表面層では、水素希釈量に対して原料ガスの混合比を適正したので、a−SiC表面層の(C/(Si+C))は0.60以上0.61以下に制御でき、十分な感度特性が得られた。
本実施例、本比較例および実施例1−3のa−SiC表面層では、Si+C原子密度が6.60×1022原子/cm以上であり、十分な耐高湿流れ性が得られた。
本実施例および本比較例のa−SiC表面層を作製する際の水素希釈量の範囲では、水素希釈量の増加に伴って、a−SiC表面層の欠陥密度が減少していることがわかる。
評価の結果、a−SiC表面層の欠陥密度を2.2×1019spins/cm以下に制御することによって画像解像度が向上している。画像解像度は、画像解像度1の評価の方が画像解像度2の評価よりも変化が大きく、本発明の感光体は、二成分現像のように現像工程で電荷注入しやすいシステムにも適していることがわかる。一方、a−SiC表面層の欠陥密度を9.0×1018spins/cm以上に制御することによって、画像メモリーの抑制効果が向上している。
すなわち、a−SiC表面層の欠陥密度を9.0×1018spins/cm以上2.2×1019spins/cm以下に制御することによって、画像解像度の高さと画像メモリーの抑制とが両立し、本発明の効果が得られる。その中でも、a−SiC表面層の欠陥密度は、1.1×1019spins/cm以上1.8×1019spins/cm以下がより好ましい範囲であった。
(実施例3)
実施例1と同様に上記表1に示す条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を作製した。
ただし、表面層形成時の原料ガスの流量、反応圧力、高周波電力および基体温度を下記表6に示す条件とした。また、感光体の作製本数は、各成膜条件(層形成条件)で2本ずつ作製した。
実施例3で作製した各成膜条件の1本の感光体を用いた。そして、実施例1と同様の方法で、Si原子密度、C原子密度、Si+C原子密度、(C/(Si+C))、欠陥密度および赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aを求めた。
一方、各成膜条件の残りの1本の感光体を用い、実施例1と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。実施例3、実施例1−3、比較例3および比較例4の評価結果をまとめて表9に示す。
(比較例3)
実施例1と同様に上記表1に示す条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を作製した。
ただし、表面層形成時の原料ガスの流量、反応圧力、高周波電力および基体温度は、下記表7に示す条件とした。また、感光体の作製本数は、各成膜条件(層形成条件)で2本ずつ作製した。
比較例3で作製した各成膜条件の1本の感光体を用いた。そして、実施例1と同様の方法で、Si原子密度、C原子密度、Si+C原子密度、(C/(Si+C))、欠陥密度および赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aを求めた。
一方、各成膜条件の残りの1本の感光体を用い、実施例1と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。評価結果を表9に示す。
(比較例4)
実施例1と同様に上記表1に示す条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を作製した。
ただし、表面層形成時の原料ガスの流量、反応圧力、高周波電力および基体温度は、下記表8に示す条件とした。また、感光体の作製本数は、各成膜条件(層形成条件)で2本ずつ作製した。
比較例4で作製した各成膜条件の1本の感光体を用いた。そして、実施例1と同様の方法で、Si原子密度、C原子密度、Si+C原子密度、(C/(Si+C))、欠陥密度および赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aを求めた。
一方、各成膜条件の残りの1本の感光体を用い、実施例1と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。評価結果を表9に示す。
実施例3で作製したa−SiC表面層は、(C/(Si+C))、Si+C原子密度、欠陥密度が最適化されているので、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーのすべての項目で良い結果が得られ、本発明の効果が得られている。
実施例3に対して、a−SiC表面層を形成する際に水素希釈を行わずに作製した比較例3の感光体では、(C/(Si+C))と欠陥密度は適正な範囲であるが、Si+C原子密度が適正な範囲よりも低いため、耐高湿流れ性が劣る結果となった。
実施例3に対して、a−SiC表面層を形成する際に水素希釈を行わず、高周波電力と基板温度を高く設定して作製した比較例4の感光体では、(C/(Si+C))とSi+C原子密度は適正な範囲であるが、欠陥密度が適正な範囲よりも高い。このため、画像解像力1が劣る結果となった。
(実施例4および比較例5)
実施例1と同様に上記表1に示す条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を作製した。
ただし、表面層形成時の原料ガスの流量、反応圧力、高周波電力および基体温度を下記表10に示す条件とした。また、感光体の作製本数は、各成膜条件(層形成条件)で2本ずつ作製した。
実施例4および比較例4で作製した各成膜条件の1本の感光体を用いた。そして、実施例1と同様の方法で、Si原子密度、C原子密度、Si+C原子密度、(C/(Si+C))、欠陥密度および赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aを求めた。
一方、各成膜条件の残りの1本の感光体を用い、実施例1と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。実施例4、比較例5および比較例2−1の評価結果を表11に示す。
評価の結果、a−SiC表面層形成時に反応圧力を低く設定することによって、Si+C原子密度が向上する傾向があり、耐高湿流れ性は向上している。Si+C原子密度が十分な領域でも、a/aが高くなりすぎると耐高湿流れ性は低下している。よって、耐高湿流れ性の観点から、a/aを0.52以下に制御することがより好ましいと言える。
(実施例5)
実施例1と同様に下記表12に示す条件で下部阻止層、光導電層および表面層を順次形成し、正帯電用のa−Si感光体を1本作製した。
実施例5で作製した感光体を用いた。そして、実施例1と同様の方法で、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。ただし、本実施例では正帯電用のa−Si感光体を作製したので、評価機も正帯電用プロセスに変更した。正帯電用のプロセスとは一次帯電および現像バイアスの直流成分を正帯電に変更し、感光体の帯電部にトナーを現像する正現像プロセスにすることである。
また、表面層の膜厚の測定に使用するリファレンス試料は、下部阻止層および光導電層のみを積層したものを使用した。実施例5の評価結果を表17に示す。
(実施例6)
実施例1と同様に下記表13に示す条件で下部阻止層、光導電層、中間層および表面層を順次形成し、正帯電用のa−Si感光体を1本作製した。
実施例6で作製した感光体を用いた。そして、実施例5と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。実施例6の評価結果を表17に示す。
(実施例7)
実施例1と同様に下記表14に示す条件で下部阻止層、光導電層、中間層1、中間層2、中間層3、表面層を順次形成し、正帯電用のa−Si感光体を1本作製した。
実施例6で作製した感光体を用いた。そして、実施例5と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。実施例7の評価結果を表17に示す。
(実施例8)
実施例1と同様に下記表15に示す条件で下部阻止層、光導電層、中間層(変化層)、表面層を順次形成し、正帯電用のa−Si感光体を作製した。
実施例6で作製した感光体を用いた。そして、実施例5と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。実施例8の評価結果を表17に示す。
(比較例6)
実施例1と同様に下記表16に示す条件で下部阻止層、光導電層および表面層を順次形成し、正帯電用のa−Si感光体を作製した。
比較例6で作製した感光体を用いた。そして、実施例5と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。比較例6の評価結果を表17に示す。
評価の結果、実施例5および比較例6の比較から、本発明のa−SiC表面層を用いることで、正帯電用でも負帯電用と同様に画像解像力が向上し、本発明の効果が得られた。
次に、実施例5および6の比較から、光導電層と表面層の間に中間層を設けることで、露光により光導電層で発生した光キャリアが、光導電層から表面層へスムーズに移動できるようになり、画像解像力が向上したと考えられる。
さらに、実施例6〜8の比較から、光導電層と表面層の間の中間層を複数層構成もしくは変化層にすることによって、露光により光導電層で発生した光キャリアが、光導電層から表面層へよりスムーズに移動できるようになったと考えられる。その結果、画像メモリーの抑制効果が向上したと考えられる。
つまり、光導電層と表面層と間に中間層を設ける構成が本発明のより好ましい構成であり、中間層を複数層構成もしくは変化層にすることがさらに好ましい構成である。
(実施例9)
実施例1と同様に下記表18に示す条件で下部阻止層、光導電層、中間層1、中間層2、中間層3および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を1本作製した。
実施例9で作製した感光体を用いた。そして、実施例1と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。実施例9と実施例1−3の評価結果を表19に示す。
評価の結果、実施例9の感光体は実施例1−3の感光体と同等以上の特性が得られた。評価基準では差は見られていないが、画像解像力1および画像メモリーは若干ではあるが、実施例9の感光体の方が良い結果が得られた。
(実施例10)
実施例1と同様に下記表20に示す条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を作製した。なお、表面層の膜厚を1.5μm、2.0μm、2.5μmの3水準とした。
実施例10および実施例1−3で作製した感光体について実施例1と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価を行った。さらに、膜密着性について以下の基準で評価した。実施例10、実施例1−3、比較例7および比較例4−2の評価結果を表22にまとめて示す。
A…膜剥がれが発生していない
B…感光体の表面積の10%未満で膜剥がれが発生した。
C…感光体の表面積の10%以上で膜剥がれが発生した。
(比較例7)
実施例1と同様に下記表21に示す条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を順次形成し、負帯電用のa−Si感光体を作製した。なお、表面層の膜厚を1.5μm、2.0μm、2.5μmの3水準とした。
比較例7および比較例4−2で作製した感光体について実施例1と同様の方法で、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリー、膜密着性について評価した。実施例10、実施例1−3、比較例7および比較例4−2の評価結果を表22に示す。
評価の結果、実施例10で作製した感光体では膜剥がれは発生せず、密着性が優れていることがわかった。一方、比較例7で作製した感光体は表面層の膜厚が1.5μm以上で膜剥がれが発生した。表9に示す比較例4−2の評価結果から、比較例の感光体は欠陥密度が多いことがわかっている。欠陥密度が多いということは、膜が堆積される過程で残留応力が十分に緩和されずに堆積していることが考えられる。よって、膜厚に応じて感光体に掛かる残留応力が増大し、膜剥がれが発生したものと推察される。
よって、欠陥密度を適正な範囲とする本発明によれば、a−SiC表面層を厚く積層しても膜剥がれが発生しなかったと考えられる。
なお、膜剥がれが発生した比較例7の感光体では、感度特性、耐高湿流れ性、画像解像力1および画像メモリーの評価は実施していない。
また、実施例10で作製した感光体の評価結果から、SiC表面層の膜厚が薄い方が画像メモリーは良化することがわかる。これは、膜厚が厚くなるほどSiC表面層の膜厚方向の抵抗が大きくなることに起因していると考えられる。
以上のことから、感光体の耐摩耗性の観点からは、表面層の膜厚を厚く積層した方が好ましいが、画像メモリーの観点からは、2.0μm以下に設定した方が好ましいと考えられる。
201…感光体、202…主帯電器(帯電手段)、203…静電潜像形成手段(露光手段)、204…現像器(現像手段)、205…中間転写体(転写手段)、206…クリーナー(クリーニング手段)、207…前露光器

Claims (10)

  1. 光導電層と、前記光導電層の上の水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された表面層とを有する電子写真感光体において、
    前記表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.50以上0.65以下であり、
    前記表面層におけるケイ素原子の原子密度と炭素原子の原子密度との和が、6.60×1022原子/cm以上であり、
    前記表面層の電子スピン共鳴測定によって求められる欠陥密度が、9.0×1018spins/cm以上2.2×1019spins/cm以下である
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、0.55以上0.63以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記表面層の電子スピン共鳴測定によって求められる欠陥密度が、1.1×1019spins/cm以上1.8×1019spins/cm以下である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記表面層における赤外線吸収スペクトルにおける波数2890cm−1の吸光度aに対する波数2960cm−1の吸光度aの比a/aが、0.52以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記電子写真感光体が、前記光導電層と前記表面層との間に中間層をさらに有し、
    前記中間層が、水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された層であり、
    前記中間層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))が、前記表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比(C/(Si+C))よりも小さい
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記中間層が、段階的に前記(C/(Si+C))が変化する複数の層からなる水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された層であり、
    前記光導電層から前記表面層に向かって、前記(C/(Si+C))が単調増加する
    請求項5に記載の電子写真感光体。
  7. 前記中間層が、連続的に前記(C/(Si+C))が変化する水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成された層であり、
    前記光導電層から前記表面層に向かって、前記(C/(Si+C))が単調増加する
    請求項5に記載の電子写真感光体。
  8. 前記表面層の膜厚が、1.5μm以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段とを有することを特徴とする電子写真装置。
  10. 前記現像手段が二成分現像方式を用いた現像手段である請求項9に記載の電子写真装置。
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