JPH11242349A - 電子写真感光体 - Google Patents

電子写真感光体

Info

Publication number
JPH11242349A
JPH11242349A JP36321698A JP36321698A JPH11242349A JP H11242349 A JPH11242349 A JP H11242349A JP 36321698 A JP36321698 A JP 36321698A JP 36321698 A JP36321698 A JP 36321698A JP H11242349 A JPH11242349 A JP H11242349A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
atoms
surface layer
photosensitive member
electrophotographic photosensitive
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP36321698A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4086391B2 (ja
Inventor
Junichiro Hashizume
淳一郎 橋爪
Shigenori Ueda
重教 植田
Makoto Aoki
誠 青木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP36321698A priority Critical patent/JP4086391B2/ja
Publication of JPH11242349A publication Critical patent/JPH11242349A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4086391B2 publication Critical patent/JP4086391B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Photoreceptors In Electrophotography (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期間の使用において剥がれや傷、摩耗の発
生することがない、電気特性の良好な、高画質の電子写
真感光体を提供する。 【解決手段】 導電性基体上にシリコン原子を母体とす
る非単結晶材料で構成された光導電層を有し、少なくと
も水素を含む非単結晶炭素からなる表面層が形成された
電子写真感光体において、表面層は、基準長さを5μm
とした場合の表面粗さRzが500オングストローム以
上、2000オングストローム以下であり、かつ表面層
中に少なくとも酸素、窒素、フッ素、硼素原子を全て同
時に含有し、これら原子の含有量が、この表面層の接す
る層中の含有量よりも多い層構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子写真感光体、さ
らに詳しくはいかなる電子写真プロセルにおいても傷や
摩耗の発生がなく、耐刷性に優れ、長寿命で、電位特性
の変動が少なく、高感度で残像現象の少ない電子写真感
光体に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真感光体に用いる素子部材の材料
としては、セレン、硫化カドミニウム、酸化亜鉛、フタ
ロシアニン、アモルファスシリコン(以下、「a−S
i」と記す)等、各種のものが提案されている。中でも
a−Siに代表される珪素原子を主成分として含む非単
結晶質堆積膜、例えば水素および/またはハロゲン(例
えばフッ素、塩素等)で補償されたa−Si等のアモル
ファス堆積膜は高性能、高耐久、無公害な感光体として
提案され、その幾つかは実用化されている。このような
堆積膜の形成法として従来、スパッタリング法、熱によ
り原料ガスを分解する方法(熱CVD法)、光により原
料ガスを分解する方法(光CVD法)、プラズマにより
原料ガスを分解する方法(プラズマCVD法)等、多数
知られている。中でもプラズマCVD法、すなわち原料
ガスを直流または高周波、(RF,VHF)、マイクロ
波、等のグロー放電等によって分解し、ガラス、石英、
耐熱性合成樹脂フィルム、ステンレス、アルミニウム等
の導電性基体上に薄膜状の堆積膜を形成する方法は、電
子写真用a−Si堆積膜の形成方法等において現在、実
用化が非常に進んでおり、そのための装置も各種提案さ
れている。
【0003】例えば特開昭57−115551号公報に
は、シリコン原子を主体とし、水素原子またはハロゲン
原子の少なくともいずれか一方を含むアモルファス材料
で構成されている光導電層の上にシリコン原子および炭
素原子を母体とし、水素原子を含む非光導電性のアモル
ファス材料で構成された表面障壁層を設けた光導電部材
の例が開示されている。特開昭61−219961号公
報には、a−Si系の感光層の上に形成された表面保護
層として、10〜40原子%の水素原子を含有するa−
C:Hで構成された電子写真感光体の例が開示されてい
る。特開平6−317920号公報には20MHz以上
の周波数の高周波を用い、シリコン原子を母体とする非
単結晶シリコン系材料からなる光導電層と、水素原子含
有量8〜45原子%のa−C:H表面保護層から構成さ
れる電子写真感光体の製造方法が開示されている。特開
昭60−186849号公報には、原料ガスの分解源と
して、マイクロ波(例えば周波数2.45GHz)を用
いたマイクロ波プラズマCVD法による頂部阻止層をも
った電子写真デバイスの形成方法および装置が開示され
ている。
【0004】これらの技術により、電子写真感光体は電
気的、光学的、光導電率的特性および使用環境特性、耐
久性が向上し、さらに画像品位の向上も可能になってい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
電子写真装置はさらに高速化と同時に高画質化を求めら
れている。電子写真装置において高速化を図ろうとする
とき、帯電、露光、現像、転写、除電のサイクルを早め
ることで複写用紙の送りスピードを速めなければならな
い。この場合、電子写真感光体が複写用紙、クリーニン
グメカニズム等と接触する単位時間当たりの回数、時間
は飛躍的に増加していく。また、高速プロセスになれば
なるほど完全なクリーニングが難しくなるため、クリー
ニングブレードのビビリやトナーのすり抜けを防止する
ために電子写真感光体に対して摺擦力を増加させる傾向
にある。このためプロセススピードが上がれば上がるほ
ど相対的にドラム自体が摺擦される力が増加するために
擦り傷がつく、あるいはこれまでのプロセスでは全く摩
耗しなかった表面層であっても摩耗が発生する、という
物理的な損傷が顕著になりつつある。
【0006】このため、どのような高速プロセスにおい
ても感光体削れの心配のない電子写真感光体が望まれて
いた。このような削れの問題は、特に電子写真装置の小
型化を目指して電子写真感光体のサイズを小さくしてい
く場合にはさらに顕著になるという問題であった。これ
らの対策としては電子写真感光体の最表面をより硬くし
たり、より滑りやすくして傷、摩耗を防ぐという手法が
取られる。
【0007】この目的に適う材料として近年、注目を集
めているものに水素を含有したアモルファス炭素膜(以
下、a−C:H膜と呼ぶ)がある。このa−C:H膜は
別名ダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれる
ように非常に硬度が高く、また、特異な潤滑性をもって
いるので上記の目的に使うためには最適の材料と考えら
れる。しかし、硬度が非常に高い反面、膜中の内部応力
が大きく、剥がれやすいという欠点をも併せもってい
る。このため、必要な膜厚を剥がれることなく堆積する
ことが従来困難であった。さらに、電子写真感光体に用
いるという観点でその膜質を見た場合、半導体膜として
不充分な点がある。すなわち、a−C:H膜を電子写真
感光体の表面に用いると、感度が低下したり、残像現象
が悪化したり、さらには残留電位が増加する、というよ
うな副作用が見られることがしばしばあった。
【0008】他方で高速化のためにプロセススピードを
増加させると帯電にかける時間が短くなるために帯電能
が下がるという問題がある。帯電能が下がるとそれに応
じて帯電電荷を増やさなければ所望の帯電電位が得られ
るなくなり、したがって、その帯電電荷を打ち消すため
に必要とされる光キャリアの総量も増加する。つまり、
一般に高速プロセスになればなるほど帯電能は下がり、
かつ感度も低下するという傾向にある。このため、さら
なる帯電能の向上、感度の向上が従来にも増して要求さ
れることが多くなりつつある。
【0009】さらに、高画質化に関しては、従来の高速
の電子写真装置には生産性が主に求められ、画質につい
てはそれほど高い要求がない場合が多かったが、近年で
は高速化と共に高画質化も強く求められつつある。特に
a−Siを用いた電子写真感光体では前回複写した画像
が次の画像の中間濃度の部分に薄く転写されるという残
像現象が出やすい傾向にある。しかし、上記のように高
画質を求められる近年においては要求がさらに厳しくな
りつつある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は次のよ
うである。 (1)高速化、長寿命化された近年の電子写真装置にお
いて、いかなる電子写真装置本体の装置構成であっても
長期間の使用において傷や摩耗の発生することのない、
耐久性に富んだ優れた電子写真感光体を提供すること。 (2)どのような条件下においても膜剥がれ等の問題が
発生しない表面層を提供すること。 (3)高速の電子写真プロセスにおいても、充分な帯電
能が得られ、感度が高く、残留電位が充分に低い、使い
やすく電子写真装置に最適な電子写真感光体を提供する
こと。 (4)近年の電子写真装置における高画質化に充分対応
し得る電子写真感光体、すなわち、残像現象が少なく、
均一な濃度のハーフトーン画像が得られ、高解像度で鮮
明な画像を長期間にわたって安定して出力できる電子写
真感光体を提供すること。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明は次のようである。
【0012】1.導電性基体上にシリコン原子を母体と
する非単結晶材料で構成された光導電層を有し、少なく
とも水素を含む非単結晶炭素から成る表面層が形成され
た電子写真感光体において、該表面層は、基準長さを5
μmとした場合の表面粗さRzが500オングストロー
ム以上、2000オングストローム以下であり、かつ該
表面層中に少なくとも酸素、窒素、フッ素、硼素原子を
全て同時に含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0013】2.前記表面層の酸素、窒素、フッ素、硼
素原子の含有量が該表面層の接する層よりも多いことを
特徴とする上記1に記載の電子写真感光体。
【0014】3.前記光導電層と前記表面層の間に、さ
らにバッファ層を設けたことを特徴とする上記1または
2に記載の電子写真感光体。
【0015】4.前記バッファ層がシリコン原子を母体
とし、さらに炭素原子を含有する非単結晶材料で構成さ
れたことを特徴とする上記3に記載の電子写真感光体。
【0016】5.前記バッファ層がさらに酸素、窒素、
フッ素、硼素原子を全て同時に含有し、各原子の含有量
が、該バッファ層の接する光導電層の含有量よりも多い
ことを特徴とする上記3または4に記載の電子写真感光
体。
【0017】6.前記表面層に含まれる酸素、窒素、フ
ッ素、硼素原子の含有量の和が、0.001原子%〜5
原子%であることを特徴とする上記1乃至5に記載の電
子写真感光体。
【0018】本発明者らは、従来技術の種々の問題点を
解決する方法として、非単結晶炭素膜(以下、a−C:
H膜と呼ぶ)を表面保護層に用いることに注目した。a
−C:H膜は別名DLC(ダイヤモンドライクカーボ
ン)と呼ばれるように非常に硬度が高く、従来の電子写
真感光体にa−C:H膜の表面保護層を用いると感光体
の削れや傷に対して著しい効果が得られることが判明し
た。しかし、このように削れに非常に強いa−C:H膜
は同時に内部応力が強く、非常に剥がれやすいという性
質も併せもっているため、所望の膜厚で再現性よく堆積
することが難しく、効果的に電子写真感光体の表面層と
して用いることが困難であった。
【0019】この剥がれやすさを詳細に検討した結果、
a−C:H表面層の表面粗さと相関があることが明らか
となった。すなわち、表面層の表面粗さを基準長さを5
μmとした場合のRzを500オングストローム以上と
する場合に良好な結果が得られた。a−C:H表面層の
表面粗さが大きいということはすなわち、表面層と光導
電層の界面が粗れていることを示しており、この結果、
接触面積が増加することにより接着性が向上したのであ
ろうと考えている。しかし、その一方で表面粗さがR
z:2000オングストロームを越えた場合、感度の低
下が見られることが判明した。この理由についての詳細
は現時点で不明であるが、表面が粗れることによる光の
散乱効果が関係しているのではないかと想像している。
この剥がれにくさはa−C:H表面層自体の表面粗さを
Rz=500オングストローム以上2000オングスト
ローム以下とすることにより充分にその効果を得ること
ができ、光導電層の表面粗さを直接規定する必要は見ら
れなかった。
【0020】さらに、本発明の要点は前記a−C:H表
面層にN,O,F,B原子を同時に含有させ、さらにa
−C:H表面層が接している層に対して、より多く含有
させることにある。これらの原子を全て同時に含有させ
る場合、表面層の密着性がさらに改善されることが判明
した。表面粗さを上記の範囲に制御しても時折発生する
原因不明の剥がれによる不良の発生を、これらの原子を
含有させることで皆無にまで改善することができる。
【0021】N,O,F,B原子の含有の効果は密着性
に対してのみならず、電子写真感光体の帯電能を向上さ
せ、光感度を改善し、残像現象の低減をもたらすことが
判明した。これはN,O,F,Bといった原子がa−
C:H膜の構造緩和を促すことにより構造欠陥を取り除
くと共に、さらにターミネーターとして有効に働いてい
るためではないかと想像している。a−C:H膜の半導
体としての特性はまだ研究途上であり、必ずしも完成さ
れたものではなく、改善すべき余地があるが、このa−
C:H膜とN,O,F,B原子の相性が特異的によく、
膜中に存在する構造欠陥から発生する局在準位密度を効
果的に減少させるものと想像している。このため、表面
層中の構造欠陥を介して帯電キャリアが注入するのを防
止し、帯電能改善に寄与する。また、光キャリアが局在
準位にトラップされるのを防止するので、光感度の向
上、残像現象の低減に結びつく。
【0022】このN,O,F,B各原子の含有量の和は
0.001原子%〜5原子%が望ましい。ここでいう原
子%とは、全元素の原子数に対する該当原子数の割合で
ある。含有量が0.001原子%よりも少ない場合、上
記の効果が得られない。また、5原子%を越えて含有す
る場合、a−C:H膜のバンドギャップが低下し、逆に
光感度の悪化につながる。また、各々の原子の含有量は
少なくとも0.0001原子%以上含有されている必要
がある。
【0023】上記の効果は、N,O,F,B原子が同時
に含有されている場合のみ得られた。これらの原子のう
ち、一つでも欠けた場合には帯電能、感度、残像現象の
改善が見られないことから、これらの特定の原子の組み
合わせが非常に大切で本発明の特徴の一つである。
【0024】
【発明の実施の形態】以下に図面を用いて本発明を具体
的に説明する。図1は本発明による電子写真感光体を説
明する模式図である。図1は光導電層を機能分離してい
ない単層型と呼んでいる感光体で、導電性基体101の
上に少なくとも水素を含むa−Siからなる光導電層1
02、非単結晶炭素からなる表面層103が積層された
感光体である。表面層103にはN,O,F,B原子を
光導電層102に対してより多く含有しており、かつ、
その表面の凹凸は基準長さ5μmにおけるRzが500
オングストローム以上2000オングストローム以下に
制御されている。
【0025】図2は図1に示した本発明の電子写真感光
体の表面層203と光導電層202の間に、さらにバッ
ファ層204を設けた場合の模式図である。表面層20
3にはN,O,F,B原子を少なくともバッファ層20
4よりも多く含有している。かつ、その表面の凹凸は基
準長さ5μmにおけるRzが500オングストローム以
上2000オングストローム以下に制御されている。こ
の場合、バッファ層204のN,O,F,B原子の含有
量を光導電層202より増やしてもよい。
【0026】図3は図1に示した本発明の電子写真感光
体の光導電層302と導電性基体301の間に、さらに
下部阻止層305を設けた場合の模式図である。
【0027】図4には光導電層を電荷発生層と電荷輸送
層の2つに機能分離しているため、機能分離型と呼んで
いる感光体を示したいる。導電性基体401の上に必要
に応じて下部阻止層405を設け、その上に電荷輸送層
406、電荷発生層402’の機能分離された、少なく
とも水素を含むa−Siからなる層が堆積され、その上
に非単結晶炭素からなる表面層403が積層されてい
る。ここで電荷輸送層406と電荷発生層402’の順
序は、本模式図に示した順序だけではなく、任意であっ
てもよい。また、機能分離を組成変化で行う場合に、そ
の組成変化を連続的に行ってもよい。
【0028】図5は導電性基体501、下部阻止層50
5、光導電層502、バッファ層504、表面層503
を設けた場合の模式図である。
【0029】図1〜5に挙げた感光体において、それぞ
れの層は連続的な組成変化を伴ってもよく、明確な界面
をもたなくてもよい。
【0030】本発明において使用される導電性基体10
1,201,301,401または501は、使用目的
に応じた材質や形状等を有するものである。例えば形状
に関しては、電子写真用感光体に供する場合には円筒状
が望ましいが、必要に応じて、平板状や板状無端ベルト
状、その他の形状であってもよい。その厚さは、所望通
りの電子写真感光体を形成し得るように適宜決定する
が、可撓性が要求される場合には、支持体としての機能
が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることがで
きる。しかしながら、支持体は製造上および取り扱い
上、機械的強度等の点から通常は10μm以上とされ
る。材質は銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッ
ケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ス
テンレス、およびこれらの材料の中の2種以上の複合材
料、さらにはポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボ
ネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ
塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ガラ
ス、セラミックス、紙等の絶縁材料に導電性材料を被覆
したもの等が使用できる。
【0031】本発明の電子写真感光体における下部阻止
層305,405,505は、電子写真感光体が一定極
性の帯電処理をその自由表面に受けた際、導電性支持体
側より光導電層側に電荷が注入されるのを阻止する機能
を有し、逆に極性の帯電処理を受けた際にはそのような
機能は発揮されない、いわゆる極性依存性を有してい
る。そのような機能を付与するために、下部阻止層30
5,405,505には伝導性を制御する原子を光導電
層に比べ比較的多く含有させる。下部阻止層305,4
05,505に含有される伝導性を制御する原子として
は、第3b族原子または第5b族原子を用いることがで
きる。本発明において下部阻止層305,405,50
5中に含有される伝導性を制御する原子の含有量として
は、本発明の目的が効果的に達成できるように所望にし
たがって適宜決定されるが、好ましくは10〜1×10
4 原子ppm、より好適には50〜5×103 原子pp
m、最適には1×102 〜1×103 原子ppmであ
る。
【0032】下部阻止層305,405,505には、
炭素原子、窒素原子および酸素原子の少なくとも一種を
含有させることによって、この下部阻止層に直接接触し
て設けられる他の層との間の密着性の向上をよりいっそ
う図ることができる。下部阻止層の全層領域に含有され
る炭素原子および/または窒素原子および/または酸素
原子の含有量は、一種の場合はその量として、二種以上
の場合はその総和として、好ましくは1×10-3〜50
原子%、より好適には5×10-3〜30原子%、最適に
は1×10-2〜10原子%である。
【0033】下部阻止層に含有される水素原子および/
またはハロゲン原子は層内に存在する未結合手を補償し
膜質の向上に効果を奏する。下部阻止層中の水素原子ま
たはハロゲン原子あるいは水素原子とハロゲン原子の和
の合計量は、好適には1〜50原子%、より好適には5
〜40原子%、最適には10〜30原子%である。
【0034】下部阻止層の層厚は所望の電子写真特性が
得られること、および経済的高感度の点から好ましくは
0.1〜5μm、最適には1〜4μmである。
【0035】本発明の電子写真感光体における光導電層
102,202,302,402または502は膜中に
水素原子または/およびハロゲン原子が含有されること
が必要である。これはシリコン原子の未結合手を補償
し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を
向上させるために必須不可欠であるからである。水素原
子またはハロゲン原子の含有量、または水素原子とハロ
ゲン原子の和の量はシリコン原子と水素原子または/お
よびハロゲン原子の和に対して10〜30原子%、より
好ましくは15〜25原子%とするのが望ましい。光導
電層中に含有される水素原子または/およびハロゲン原
子の量を制御するには、層形成時に例えば支持体の温
度、水素原子または/およびハロゲン原子を含有させる
ために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、
放電電力等を制御すればよい。
【0036】光導電層102,202,302,402
または502には必要に応じて伝導性を制御する原子を
含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子とし
ては下部阻止層と同様の原子を用いることができる。光
導電層に含有される伝導性を制御する原子の含有量とし
ては、好ましくは1×10-2〜1×104 原子ppm、
より好ましくは5×10-2〜5×103 原子ppm、最
適には1×10-1〜1×103 原子ppmである。
【0037】光導電層に炭素原子および/または酸素原
子および/または窒素原子を含有させることも有効であ
る。これら原子の含有量はシリコン原子、炭素原子、酸
素原子および窒素原子の和に対して好ましくは1×10
-5〜10原子%、より好ましくは1×10-4〜8原子
%、最適には1×10-3〜5原子%が望ましい。炭素原
子および/または酸素原子および/または窒素原子は必
ずしも全層にわたって含有される必要はなく、一部分の
み、あるいは膜厚方向で濃度に濃淡があるように分布し
ていてもよい。
【0038】光導電層の層厚は所望の電子写真特性が得
られることおよび経済的効果等の点から適宜決定され、
好ましくは10〜50μm、より好ましくは20〜45
μm、最適には25〜40μmとするのが望ましい。
【0039】バッファ層204,504は、光導電層2
02,502と表面層203,503の機械的、電気的
整合を図るために必要に応じて設けられる。この場合、
材料としては光導電層202,502と表面層203,
503との整合性の観点から中間の組成を有するSiC
層を用いることが望ましい。バッファ層204,504
は一定組成の均一な層としてもよいし、組成を連続的に
変化させてもよい。バッファ層には必要に応じてN,
O,F,B原子を含有させることができる。この場合、
含有量は光導電層よりも多くすることにより密着性を改
善することができる。
【0040】バッファ層204,504には下部阻止層
305,505と同様に伝導性を制御する原子を含有さ
せてもよい。バッファ層に含有される伝導性を制御する
原子としては、第3b族原子または第5b族原子を用い
ることができる。本発明においてバッファ層中に含有さ
れる伝導性を制御する原子の含有量としては、本発明の
目的が効果的に達成できるように適宜決定されるが、好
ましくは10〜1×104 原子ppm、より好適には5
0〜5×103 原子ppm、最適には1×10 2 〜1×
103 原子ppmとするのが望ましい。
【0041】バッファ層の膜厚はその目的に応じて適宜
最適な値に設定されるが、一般に0.01μm〜10μ
m、好ましくは0.05μm〜5μm、最適には0.1
μm〜1μmである。
【0042】本発明の表面層103,203,303,
404,503は非単結晶質の炭素からなる。ここでい
う非単結晶炭素とは、黒鉛(グラファイト)とダイヤモ
ンドとの中間的な性質をもつアモルファス状の炭素を主
に表しているが、微結晶や多結晶を部分的に含んでいて
もよい。この表面層は自由表面を有し、剥がれや残留電
位、残像現象の増加なしに、主に長期間の使用における
傷や摩耗の防止、帯電能、感度の改善といった本発明の
目的を達成するために設けられる。
【0043】本発明の表面層は原料ガスとしては常温常
圧でガス状の炭化水素を用い、プラズマCVD法、スパ
ッタリング法、イオンプレーティング法等によって作成
可能であるが、プラズマCVD法を用いて作成した膜は
透明度、硬度共に高く、電子写真感光体の表面層として
用いるには好ましい。表面層を作成する際のプラズマC
VD法に用いる放電周波数としてはいかなる周波数も用
いることができる。工業的にはRF周波数帯と呼ばれる
1〜450MHz、特に13.56MHzの高周波が好
適に用いることができる。また、特に50〜450MH
zのVHFと呼ばれる周波数帯の高周波を用いた場合に
は、透明度、硬度共にさらに高くできるので、表面層形
成時の使用により好ましい。
【0044】本発明の表面層103,203,303,
403,503は表面粗さが、基準長さ5μm当たりR
zが500オングストローム以上2000オングストロ
ーム以下である必要がある。この粗さ範囲に表面層を制
御するには、例えば導電性基体の切削条件を最適化し
て、微細な凹凸を作成してもよい。また、光導電層10
2,202,302,402,502の製造上の様々な
パラメータを調整することによっても粗さを制御するこ
とができる。一般に、放電励起パワーが大きいほど、バ
イアスが大きいほど、表面の粗れは大きくなる傾向があ
る。また、光導電層あるいはバッファ層まで堆積後にフ
ッ素含有ガスあるいは水素ガスでプラズマ放電を立て、
エッチングすることにより表面を粗らして調整してもよ
い。
【0045】本発明の目的を達成するためには、さらに
表面層中にN,O,F,B原子を全て含有している必要
がある。これらの原子の共存はa−C:H膜との特有の
相乗効果で効果的に膜中の構造欠陥が補償され、局在準
位密度を低減させると考えられる。この結果、膜の透明
性が改善され、表面層中では好ましくない不要の光吸収
が抑えられることによって光感度が劇的に改善される。
また、表面層が緻密化するために帯電キャリアの注入が
抑えられ、帯電特性が改善される。同時にN,O,F,
B原子は膜の密着性を改善する効果を示すため、内部応
力の大きいa−C:Hのような材料であっても膜剥がれ
せずに用いることが可能となる。
【0046】このN,O,F,B原子の含有量の和は
0.001原子%〜5原子%が望ましい。含有量が0.
001原子%よりも少ない場合、上記の効果が低下す
る。また、5原子%を越えてて含有する場合、a−C:
H膜のバンドギャップが低下し、逆に光感度の悪化につ
ながる。また、各々の原子の含有量は少なくとも0.0
001原子%以上含有されていることが望ましい。
【0047】本発明の表面層に用いられるa−C膜中に
は水素原子を適宜含有していることが必要である。a−
C:H膜中に含まれる水素原子の含有量はH/(C+
H)で10原子%〜60原子%、さらに好適には20原
子%〜40原子%である。水素量が10原子%未満であ
ると光学的バンドギャップが狭くなり、感度の面で適さ
なくなる。また、60原子%を越えると硬度が低下し、
削れが発生しやすくなる。光学的バンドギャップは一般
には1.2eV〜2.2eV程度の値であれば好適に用
いることができ、感度の点からは1.6eV以上とする
ことがさらに望ましい。屈折率は1.8〜2.8程度で
あれば好適に用いられる。膜厚は50オングストローム
から10000オングストローム、好ましくは100オ
ングストオロームから2000オングストロームであ
る。50オングストロームより薄くなると機械的強度に
問題を生じ、10000オングストロームを越えると光
感度の点で問題が発生する。
【0048】さらに本発明においては、表面層には必要
に応じて伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝
導性を制御する原子としては、半導体分野におけるいわ
ゆる不純物を挙げることができ、p型電導特性を与える
周期律表第3b族に属する原子(以後「第3b族原子」
と略記する)またはn型伝導特性を与える周期律表第5
b族に属する原子(以後「第5族原子」と略記する)を
用いることができる。伝導性を制御する原子の含有量と
しては、所望にしたがって適宜決定されるが、好ましく
は10〜1×104 原子ppm、より好適には50〜5
×103 原子ppm、最適には1×102 〜1×103
原子ppmである。
【0049】また、本発明のa−C:Hからなる表面層
には、必要に応じてハロゲン原子が含まれていてもよ
い。
【0050】表面層の層厚としては、通常0.01〜3
μm、好適には0.1〜2μm、最適には0.5〜1μ
mとするのが望ましいものである。層厚が0.01μm
よりも薄いと電子写真感光体を使用中に摩耗等の理由に
より表面層が失われてしまい、3μmを越えると残留電
位の増加等の電子写真特性の低下がみられる。
【0051】層形成時の基板温度は室温から350℃ま
でに調整されるが、あまり基板温度が高すぎるとバンド
ギャップが低下して透明度が低下するため低めの温度設
定が好ましい。高周波電力については、できるだけ高い
方が炭化水素の分解が充分に進むため好ましく、具体的
には炭化水素の原料ガスに対して5W/cc以上が好ま
しいが、あまり高くなると異常放電が発生してしまい、
電子写真感光体の特性を劣化させるので、異常放電が発
生しない程度の電力に抑える必要がある。放電空間の圧
力については、炭化水素のように分解されにくい原料ガ
スで成膜する場合には気相中での分解種同士の衝突があ
るとポリマーが発生し易いため、比較的高真空が望まし
い。通常のRF(代表的には13.56MHz)電力を
用いる場合には13.3Pa〜1330Pa、VHF帯
(代表的には50〜450MHz)を用いる場合には1
3.3mPa〜13.3Pa程度に保たれる。
【0052】本発明で用いられる伝導性を制御する原
子、例えば、第3b族原子としては、具体的には、B
(ほう素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウ
ム)、In(インジウム)、Ta(タリウム)等があ
り、特にB,Al,Gaが好適である。第5b族原子と
しては、具体的にはP(リン)、As(砒素),Sb
(アンチモン)、Bi(ビスマス)等があり、特にP,
Asが好適である。
【0053】第3b族原子あるいは第5b族原子を構造
的に導入するには、層形成の際に、第3b族原子導入用
の原料物質あるいは第5b族原子導入用の原料物質をガ
ス状態で反応容器中に他のガスと共に導入すればよい。
第3b族原子導入用の原料物質あるいは第5b族原子導
入用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガ
ス状のまたは、少なくとも層形成条件下で容易にガス化
し得るものが採用されるのが望ましい。そのような第3
b族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子
導入用としては、B26 ,B410,B59 ,B5
11,B610,B612,B614等の水素化硼素、
BF3 、BCl3 ,BBr3 等のハロゲン化硼素等が挙
げられる。この他、AlCl3 ,GaCl3 ,Gd(C
33,InCl3 ,TiCl3 等も挙げることがで
きる。第5b族原子導入用の原料物質として有効に使用
されるのは、燐原子導入用としては、PH3 ,P24
等の水素化燐、PH4 I,PF3 ,PF5 ,PCl3
PCl5 ,PBr3 .PBr5 ,PI3 等のハロゲン化
燐が挙げられる。この他、AsH3 ,AsF3 ,AsC
3 ,AsBr3 ,AsF5 ,SbH3 ,SbF3 ,S
bF5 ,SbCl3,SbCl5 ,BiH3 ,BiCl3
,BiBr3 等も第5b族原子導入用の出発物質の有
効なものとして挙げることができる。これらの伝導性を
制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH2 およ
び/またはHeにより希釈して使用してもよい。
【0054】本発明において使用されるSi供給用ガス
となり得る物質としては、SiH4,Si26 ,Si3
8 ,Si410等のガス状態の、またはガス化し得
る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとし
て挙げられ、さらに層作成時の取り扱い易さ、Si供給
効率のよさ等の点でSiH4 ,Si26 が好ましいも
のとして挙げられる。
【0055】そして、形成される各層中に水素原子を構
造的に導入し、水素原子の導入割合の制御をいっそう容
易になるようにはかり、本発明の目的を達成する膜特性
を得るために、これらのガスにさらにH2 および/また
はHeあるいは水素原子を含む珪素化合物のガスも所望
量混合して層形成することもできる。また、各ガスは単
独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支
えないものである。
【0056】希釈ガスとして使用するH2 および/また
はHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選
択されるが、Si供給用ガスに対してH2 および/また
はHeを、通常の場合3〜20倍、好ましくは4〜15
倍、最適には5〜10倍の範囲に制御することが望まし
い。
【0057】また本発明において使用されるハロゲン原
子供給用の原料ガスとして有効なのは、例えばハロゲン
ガス、ハロゲン化物、ハロゲン間化合物、ハロゲンで置
換されたシラン誘導体等のガス状のまたはガス化し得る
ハロゲン化合物が好ましく挙げられる。また、さらには
シリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状
のまたはガス化し得るハロゲン原子を含む水素化珪素化
合物も有用なものとして挙げることができる。本発明に
おいて好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体
的には弗素ガス(F2 )、BrF,ClF,ClF3
BrF3 ,BrF5 ,IF3 ,IF7 等のハロゲン間化
合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化
合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体
としては、具体的には、例えばSiF4 ,Si26
の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。
【0058】炭素供給ガスとなり得る物質としては、C
4 ,C26 ,C38 ,C4 10等のガス状態の、
またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものと
して挙げられ、さらに層作成時の取り扱い易さ、Si供
給効率のよさ等の点でCH4,C26 が好ましいもの
として挙げられる。
【0059】窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質
としては、NH3 ,NO,N2 O,NO2 ,O2 ,C
O,CO2 ,N2 等のガス状態の、またはガス化し得る
化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。
【0060】各層に含有される原子は、該層中に万遍な
く均一に分布されてもよいし、あるいは層厚方向には万
遍なく含有されているが、不均一に分布する状態で含有
している部分があってもよい。しかしながら、いずれの
場合にも支持体の表面と平行面内方向においては、均一
な分布で万遍なく含有されることが面内方向における特
性の均一化を図る点からも必要である。
【0061】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合13.
3mPa〜133Pa、好ましくは66.5mPa〜6
65Pa.最適には133mPa〜133Paである。
【0062】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量
に対する放電電力を、通常の場合2〜7倍、好ましくは
2.5〜6倍、最適には3〜5倍の範囲に設定すること
が望ましい。
【0063】支持体の温度は、層設計にしたがって適宜
最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは50
〜500℃、より好ましくは200〜350℃とする。
【0064】本発明においては、各層を形成するための
原料ガスの混合比、ガス圧、支持体温度、放電電力の望
ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条
件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所
望の特性を有する堆積膜を形成すべく相互的かつ有機的
関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0065】以下、高周波プラズマCVD法によって堆
積膜を形成するための装置および形成方法について詳述
する。
【0066】図6は高周波プラズマCVD(以下「RF
−PCVD」と表記する)法による電子写真感光体の製
造装置の一例を示す模式的な構成図である。図6に示す
RF−PCVD法による堆積膜の製造装置の構成は以下
の通りである。この装置は大別すると、堆積装置510
0、原料ガスの供給装置5200、反応容器5111内
を減圧するための排気装置5117から構成されてい
る。堆積装置5100中の反応容器5111内には、導
電性支持体5112、基体加熱用ヒータ5113、原料
ガス導入管5114が設置され、さらに高周波マッチン
グボックス5115が接続されている。
【0067】原料ガス供給装置5200は、SiH4
2 ,CH4 ,NO,B26 ,GeH4 等の原料ガス
のボンベ5221〜5226とバルブ5231〜523
6、5241〜5246,5251〜5256およびマ
スフローコントローラ5211〜5216から構成さ
れ、各原料ガスのボンベはバルブ5260を介して反応
容器5111内のガス導入管5114に接続されてい
る。
【0068】この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば
以下のように行うことができる。まず、導電性基体51
12を反応容器5111に設置する。導電性基体511
2は電子写真感光体の場合、円筒状が望ましい。設置
後、排気装置(5117、例えば真空ポンプ)により反
応容器5111内を排気する。続いて、支持体加熱用ヒ
ーター5113をONし、導電性支持体5112の温度
を250℃〜500℃の所定の温度に制御する。
【0069】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器511
1に流入させるには、ガスボンベのバルブ5231〜5
236、反応容器のリークバルブ5123が閉じられて
いることを確認し、また、流入バルブ5251〜525
6、流出バルブ5241〜5246、補助バルブ526
0が開かれていることを確認して、まずメインバルブ5
118を開いて反応容器5111およびガス配管内を排
気する。次に真空計5124の読みが約6.65×10
-4Paになった時点で補助バルブ5260、流出バルブ
52451〜5256を閉じる。
【0070】その後、ガスボンベ5221〜5226よ
り各ガスをバルブ5231〜5236を開いて導入し、
圧力調整器5261〜5266により各ガス圧を(たと
えば200KPa)調整する。次に、流入バルブ524
1〜5246を徐々に開けて、各ガスをマスフローコン
トローラー5211〜5216内に導入する。
【0071】導電性支持体5122が所定の温度になっ
たところで流出バルブ5251〜5256のうちの必要
なものおよび補助バルブを徐々に開き、ガスボンベ52
21〜5226から所定のガスをガス導入管5114を
介して反応容器5111内に導入する。次にマスフロー
コントローラー5211〜5216によって各原料ガス
が所定の流量になるように調整する。その際、反応容器
5111内の圧力が133Pa以下の所定の圧力になる
ように真空計5124を見ながらメインバルブ5118
の開口を調整する。内圧が安定したところで、RF電源
(図示せず)を所望の電力に設定して、高周波マッチン
グボックス5115を通じて反応容器5111内にRF
電力を導入し、RFグロー放電を生起させる。この放電
エネルギーによって反応容器内に導入された原料ガスが
分解され、導電性支持体5112上に所定の堆積膜が形
成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた
後、RF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容
器へのガスの流入を止め下引き層の形成を終える。同様
の操作を複数回繰り返すことによって、たとえば下部阻
止層、光導電層、表面保護層等の多層構造の電子写真感
光体が形成される。
【0072】それぞれの層を形成する際には必要なガス
以外の流出バルブは全て閉じられていることはいうまで
もなく、また、それぞれのガスが反応容器5111内、
流出バルブ5251〜5256から反応容器5111に
至る配管内に残留することを避けるために、流出バルブ
5251〜5256を閉じ、補助バルブ5260を開
き、さらにメインバルブ5118を全開にして系内を一
旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。また、膜
形成の均一化を図る場合は、膜形成を行っている間は、
導電性支持体5112を駆動装置(図示せず)によって
所定の速度で回転させる。上述のガス種およびバルブ操
作は各々の層の作成条件にしたがって変更が加えられる
ことはいうまでもない。
【0073】次に、VHF体の周波数を用いた高周波プ
ラズマCVD(以後「VHF−PCVD」と略記する)
法によって形成される電子写真用電子写真感光体の製造
方法について説明する。図6に示した製造装置における
RF−PCVD法による堆積装置5100を、図7に示
す堆積装置6100に交換して原料ガス供給装置520
0と接続することにより、VHF−PCVD法による電
子写真用電子写真感光体製造装置を得ることができる。
【0074】この装置は大別すると、真空気密化構造と
した減圧にし得る反応容器6111、原料ガスの供給装
置5200、および反応容器内を減圧にするための排気
装置(不図示)から構成されている。反応容器6111
内には導電性支持体6112、支持体加熱用ヒーター6
113、原料ガス導入管(不図示)、電極6115が設
置され、電極にはさらに高周波マッチングボックス61
16が接続されている。また、反応容器6111内は排
気管6121を通じて不図示の拡散ポンプに接続されて
いる。
【0075】原料ガス供給装置5200は前述のよう
に、SiH4 ,GeH4 ,H2 ,CH 4 ,B26 ,P
3 等の原料ガスのボンベ5221〜5226とバルブ
5231〜5236,5241〜5246,5251〜
5256およびマスフローコントローラー5211〜5
216から構成され、各原料ガスのボンベはバルブ52
60を介して反応容器6111内のガス導入管(不図
示)に接続されている。また、導電性支持体6112に
よって取り囲まれた空間6130が放電空間を形成して
いる。
【0076】VHF−PCVD法によるこの装置での堆
積膜の形成は、以下のように行うことができる。まず、
反応容器6111内に導電性支持体6112を設置し、
駆動装置6120によって支持体6112を回転し、不
図示の排気装置(たとえば拡散ポンプ)により反応容器
6111内を排気管6121を介して排気し、反応容器
6111内の圧力を1.33×10-5Pa以下に調整す
る。続いて、支持体加熱用ヒーター6113により導電
性支持体6112の温度を50℃乃至500℃の所定の
温度に加熱保持する。
【0077】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器611
1に流入させるには、ガスボンベのバルブ5231〜5
236、反応容器のリークバルブ(不図示)が閉じられ
ていることを確認し、また、流入バルブ5241〜52
46、流出バルブ5251〜5256、補助バルブ52
60が開かれていることを確認して、まずメインバルブ
(不図示)を開いて反応容器6111およびガス配管内
を排気する。
【0078】次に真空計(不図示)の読みが約6.65
×10-4Paになった時点で補助バルブ5260、流出
バルブ5251〜5256を閉じる。その後、ガスボン
ベ5221〜5226より各ガスをバルブ5231〜5
236を開いて導入し、圧力調整器5261〜5266
により各ガス圧を2×105 Paに調整する。次に、流
入バルブ5241〜5246を徐々に開けて、各ガスを
マスフローコントローラー5211〜5216内に導入
する。以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下
のようにして導電性支持体6112上に堆積膜の形成を
行う。
【0079】導電性支持体6112が所定の温度になっ
たところで流出バルブ5251〜5256のうちの必要
なものおよび補助バルブ5260を徐々に開き、ガスボ
ンベ5211〜5226から所定のガスをガス導入管
(不図示)を介して反応容器6111内の放電空間61
30に導入する。次に、マスフローコントローラー52
11〜5216によって各原料ガスが所定の流量になる
ように調整する。その際、放電空間3130内の圧力が
133Pa以下の所定の圧力になるように真空計(不図
示)を見ながらメインバルブ(不図示)の開口を調整す
る。
【0080】圧力が安定したところで、例えば周波数5
00MHzのVHF電源(不図示)を所望の電力に設定
して、マッチングボックス6116を通じて放電空間6
130にVHF電力を導入し、グロー放電を生起させ
る。かくして支持体6112により取り囲まれた放電空
間において、導入された原料ガスは、放電エネルギーに
より励起された解離し、支持体6112上に所定の堆積
膜が形成される。このときVHF電力導入と同時に、支
持体加熱用ヒーター6113の出力を調整し導電性支持
体の温度を所定の値で変化させる。このとき、層形成の
均一化を図るため支持体回転用モーター6120によっ
て、所望の回転速度で回転させる。所望の膜厚の形成が
行われた後、VHF電力の供給を止め、流出バルブを閉
じて反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜を形成を終
える。同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望
の多層構造の電子写真感光体が形成される。
【0081】それぞれの層を形成する際には必要なガス
以外の流出バルブは全て閉じられていることはいうまで
もなく、また、それぞれのガスが反応容器6111内、
流出バルブ5251〜5256から反応容器6111に
至る配管内に残留することを避けるために、流出バルブ
5251〜5256を閉じ、補助バルブ5260を開
き、さらにメインバルブ(不図示)を全開にして系内を
一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。上述の
ガス種およびバルブ操作は各々の層の作成条件にしたが
って変更が加えられることはいうまでもない。
【0082】導電性支持体5112,6112の加熱方
法は、真空仕様である発熱体であればよく、より具体的
にはシース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒータ
ー、セラミックヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲン
ランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体、
気体等を温媒とし熱交換手段による発熱体等が挙げられ
る。加熱手段の表面材質は、ステンレス、ニッケル、ア
ルミニウム、銅等の金属類、セラミックス、耐熱性高分
子樹脂等を使用することができる。また、それ以外に
も、反応容器5111,6111以外に加熱専用の容器
を設け、導電性支持体5112,6112を加熱した
後、反応容器5111,6111内に真空中で導電性支
持体5112,6112を搬送する等の方法が用いられ
る。
【0083】また、特にVHF−PCVD法における放
電空間の圧力として、好ましくは0.133Pa以上6
6.5Pa以下、より好ましくは0.1333Pa以上
40Pa以下、最も好ましくは0.133Pa以上1
3.3Pa以下に設定することが望ましい。
【0084】VHF−PCVD法において放電空間に設
けられる電極6115の大きさおよび形状は、放電を乱
さないならばいずれのものでもよいが、実用上は直径1
mm以上10cm以下の円筒状が好ましい。このとき、
電極6115の長さも、導電性支持体6112に電界が
均一にかかる長さであれば任意に設定できる。
【0085】電極6115の材質としては、表面が導電
性となるものならばいずれのものでもよく、例えば、ス
テンレス、Al,Cr,Mo,Au,In,Nb,T
e,V,Ti,Pt,Pb,Fe等の金属、これらの合
金または表面を導電処理したガラス、セラミック等が通
常使用される。
【0086】本発明の方法で製造された電子写真感光体
は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービ
ームプリンタ、CRTプリンター、LEDプリンター、
液晶プリンター、レーザー製版機等の電子写真応用分野
にも広く用いることができる。
【0087】
【実施例】以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明
するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではな
い。
【0088】実施例1 図6に示したプラズマCVD装置を用いて表1に示した
条件により円筒形のAl基体に下部阻止層、光導電層を
順次積層した。次に表2に示した条件で表面をエッチン
グし、表面の凹凸を変化させた。その後表3に示す表面
層を積層し、電子写真感光体を完成させた。本実施例で
はエッチングの条件を変化させて7本(No.1〜N
o.7)の感光体を作成した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】作成した電子写真感光体の表面層中のN,
O,F,Bの含有量(原子%)をSIMS分析によって
測定したところ、各々0.5%、0.8%、0.12
%、2.5%であり、表面層が接している光導電層中の
含有量は各々0.005%、0.007%、0.003
5%、0.0012%であった。また、得られた電子写
真感光体の表面粗さはAFM(原子間力顕微鏡)によっ
て測定した。
【0093】このように作成した電子写真感光体を次の
ように評価した。
【0094】密着性試験…作成した電子写真感光体の表
面に鋭利な針を用いて1cm間隔にクロスハッチ状に筋
傷を付けた。これを1週間水に浸した後に取り出し、傷
を付けた部分から膜剥がれが生じていないかを目視にて
点検した。
【0095】 ◎ 剥がれは発生せず、非常に良好 △ 筋傷からごく一部分に剥がれが広がった × 広範囲に剥がれが発生した 耐久試験…電子写真感光体をキヤノン製複写機NP−5
060改造機に搭載し、A4コピー用紙を通紙しながら
10万枚の耐久を行った。耐久中の画像、および耐久後
の感光体表面を目視点検し、表面層の剥がれが発生して
いないかどうかを確認した。
【0096】 ◎ 剥がれは発生せず、非常に良好 △ ごく一部分に剥がれが発生した × 広範囲に剥がれが発生し、実用上問題あり 強制ジャム試験…電子写真装置に設置し、通紙している
際に強制的に紙詰まり状態を発生させた。この作業を1
0回繰り返し、感光体に剥がれが発生しないかを画像上
でチェックした。
【0097】 ◎ 傷はつかず、非常に良好 △ 感光体にはかすかに傷が付いたが画像には出ず、
実用上問題なし × 画像に出る傷が付き、実用上問題あり 帯電能…電子写真感光体を電子写真装置に設置し、帯電
器に+6kVの高電圧を印加しコロナ帯電を行い、表面
電位計により電子写真感光体の暗部表面電位を現像位置
で測定した。
【0098】感度…電子写真感光体を、一定の暗部表面
電位に帯電させる。そして直ちにフィルターを用いて5
50nm以上の波長域の光を除いたハロゲンランプ光を
照射し、電子写真感光体の明部表面電位が所定の値にな
るように光量を調整する。このときに必要な光量をハロ
ゲンランプ光源の点灯電圧から換算する。この光量から
感度を評価した。
【0099】残留電位…電子写真用光受容部材を、一定
の暗部表面電位に帯電させる。そして直ちに一定光量の
比較的強い光(例えば2L.s)を照射する。光像はハ
ロゲンランプ光源を用い、フィルターを用いて550n
m以上の波長域の光を除いた光を照射した。このとき表
面電位計により電子写真用光受容部材の明部表面電位を
測定した。
【0100】ゴースト…キヤノン製ゴーストテストチャ
ート(部品番号:FY9−9040)に反射濃度1.
1、φ5mmの黒丸を貼り付けたものを原稿台の画像先
端部に置き、その上にキヤノン製中間調チャート(部品
番号:FY9−9042)を重ねて置いた際のコピー画
像において、中間コピー上に認められるゴーストチャー
トのφ5mmの反射濃度と中間調部分の反射濃度の差を
測定し、評価した。
【0101】以上、帯電能、感度、残留電位、ゴース
ト、それぞれについて、次のようなランク付けを行っ
た。
【0102】 ◎ 非常に良好 ○ 良好 △ 従来レベルであり、実用上問題なし × 実用上問題あり 評価結果を表4に示す。実施例1から本発明の効果は表
面粗さを500オングストローム〜2000オングスト
ロームに制御し、かつ、N,O,F,Bを0.001%
〜5%含有した場合、特に顕著な効果があることが判明
した。
【0103】
【表4】
【0104】実施例2 図6に示したプラズマCVD装置を用いて表1に示した
条件により円筒形のAl基体に下部阻止層、光導電層を
順次積層した。次に表2に示した条件で表面をエッチン
グし、表面の凹凸を約800オングストロームに制御し
た。その後表5に示す表面層を積層し、電子写真感光体
を完成させた。本実施例では表面層に含まれるN,O,
F,Bの含有量を変化させた電子写真感光体を8本(N
o.1〜No.8)作成した。作成した電子写真感光体
の表面層中のN,O,F,Bの含有量(原子%)をSI
MS分析によって測定した。また、表面層が接している
光導電層中の含有量は各々0.005%、0.007
%、0.0035%、0.0001%であった。
【0105】
【表5】
【0106】このように作成した電子写真感光体を実施
例1と同様に評価した。
【0107】実施例2の結果を表6に示す。実施例2か
ら本発明の効果は表面粗さを500オングストローム〜
2000オングストロームに制御し、かつN,O,F,
Bを0.001%〜5%含有した場合、特に顕著な効果
があることが判明した。
【0108】
【表6】
【0109】比較例1 図6に記載のプラズマCVD装置を用いて表1に示した
条件により円筒形のAl基体に下部阻止層、光導電層を
順次積層した。次に表2に示した条件で表面をエッチン
グし、表面の凹凸を制御した。その後表7に示す表面層
を積層し、電子写真感光体を完成させた。
【0110】
【表7】
【0111】作成した電子写真感光体の表面層および表
面層が接している光導電層中のN,O,F,Bの含有量
をSIMS分析によって測定したところ、両者に大きな
濃度差は見られなかった。また、得られた電子写真感光
体の表面粗さをAFM(原子間力顕微鏡)によって測定
したところ、Rzは約1500オングストロームであっ
た。
【0112】このように作成した電子写真感光体を実施
例1と同様に評価した。比較例1の結果を表8に示す。
比較例1の結果からは表面粗さを500オングストロー
ム〜2000オングストロームに制御しても、表面層が
接する層に比べてN,O,F,Bが同時に多く含有され
ていない場合には、本発明のような結果が得られないこ
とがわかる。
【0113】
【表8】
【0114】実施例3 図6に記載のプラズマCVD装置を用いて表1に示した
条件により円筒形のAl基体に下部阻止層、光導電層を
成膜し、さらに引き続いて表9に示したa−SiCバッ
ファ層を各々積層した電子写真感光体を作成した。
【0115】
【表9】
【0116】次に表2に示した条件で表面をエッチング
し、表面の凹凸を制御した。その後表3に示す表面層を
積層し、電子写真感光体を完成させた。
【0117】作成した電子写真感光体の表面層中のN,
O,F,Bの含有量(原子%)をSIMS分析によって
測定したところ、各々0.5%、0.8%、0.12
%、2.5%であり、表面層が接しているa−SiCバ
ッファ層中の含有量は各々0.0045%、0.008
5%、0.0025%、0.0003%、a−SiCバ
ッファ層が接している光導電層中の含有量は、各々0.
0025%、0.0045%、0.0015%、0.0
001%であった。また、得られた電子写真感光体の表
面粗さをAFM(原子力間顕微鏡)によって測定したと
ころ、Rzは約1000オングストロームであった。
【0118】このように作成した電子写真感光体を実施
例1と同様に評価した結果を表10に示す。実施例3か
ら本発明の効果は光導電層と表面層の間にa−SiCと
いったようなバッファ層があっても同様に得られること
が判明した。
【0119】
【表10】
【0120】実施例4 図6に示したプラズマCVD装置を用いて表1に示した
条件により円筒形のAl基体に下部阻止層、光導電層を
成膜し、さらに引き続いて表9に示したa−SiCバッ
ファ層を積層した電子写真感光体を作成した。本実施例
では表面の凹凸の制御は一切せずに表3に示す表面層を
積層し、電子写真感光体を完成させた。
【0121】作成した電子写真感光体の表面層中のN,
O,F,Bの含有量(原子%)をSIMS分析によって
測定したところ、各々0.5%、0.8%、0.12
%、2.5%であり、表面層が接しているa−SiCバ
ッファ層中の含有量は各々0.0045%、0.008
5%、0.0025%、0.0003%、a−SiCバ
ッファ層が接している光導電層中の含有量は、各々0.
0025%、0.0045%、0.0015%、0.0
001%であった。また、得られた電子写真感光体の表
面粗さをAFM(原子力間顕微鏡)によって測定したと
ころ、Rzは約2000オングストロームであった。
【0122】このように作成した電子写真感光体を実施
例1と同様に評価した結果、実施例3と同様に非常に良
好な結果が得られた。このことから、表面の凹凸は本件
の範囲内にあれば、敢えてエッチング等で制御する必要
はなく、本件の効果が得られることが判明した。
【0123】実施例5 図6に示したプラズマCVD装置を用いて表1に示した
条件により円筒形のAl基体に下部阻止層、光導電層を
成膜し、さらに引き続いて表11に示したa−SiCバ
ッファ層を積層した電子写真感光体を作成した。
【0124】本実施例のa−SiCバッファ層は全層変
化型とし、光導電層から表面層に向かって滑らかに組成
が変化するように作成した。したがって表面層の凹凸の
制御は一切せずに、さらに表11に示す表面層を積層
し、電子写真感光体を完成させた。
【0125】
【表11】
【0126】作成した電子写真感光体の表面層中のN,
O,F,Bの含有量(原子%)をSIMS分析によって
測定したところ、各々0.5%、0.8%、0.12
%、2.5%であり、表面層が接しているa−SiCバ
ッファ層中の膜厚方向の中央位置での含有量は各々0.
0040%、0.008%、0.0030%、0.00
02%、a−SiCバッファ層が接している光導電層中
の含有量は、各々0.0015%、0.0040%、
0.0010%、0.0001%であった。また、得ら
れた電子写真感光体の表面粗さをAFM(原子力間顕微
鏡)によって測定したところ、Rzは約1800オング
ストロームであった。
【0127】このように作成した電子写真感光体を実施
例1と同様に評価した結果、実施例3と同様な非常に良
好な結果が得られた。このことから、バッファ層の組成
は膜厚方向で変化していても同様には本発明の効果が得
られることが判明した。
【0128】実施例6 図6に示したプラズマCVD装置の代わりに図7に示し
たVHFプラズマCVD法を用いた量産型の装置を用い
て表12に示した条件により円筒形のAl基体に下部阻
止層、光導電層、a−SiCバッファ層、表面層を積層
した電子写真感光体を作成した。表面層の凹凸の制御は
一切せずに電子写真感光体を完成させた。
【0129】
【表12】
【0130】作成した電子写真感光体の表面層中のN,
O,F,Bの含有量(原子%)をSIMS分析によって
測定したところ、各々0.5%、0.8%、0.12
%、2.5%であり、表面層が接しているa−SiCバ
ッファ層中の含有量は各々0.0035%、0.075
%、0.0015%、0.0004%、a−SiCバッ
ファ層が接している光導電層中の含有量は、各々0.0
025%、0.0045%、0.0010%、0.00
02%であった。また、得られた電子写真感光体の表面
粗さをAFM(原子力間顕微鏡)によって測定したとこ
ろ、Rzは約1800オングストロームであった。
【0131】このように作成した電子写真感光体を実施
例1と同様に評価した結果、実施例4と同様な非常に良
好な結果が得られた。このことから、成膜方法はいかな
る方法であっても、本件の効果が得られることが判明し
た。
【0132】
【発明の効果】本発明によれば、導電性基体上にシリコ
ン原子を母体とする非単結晶材料で構成された光導電層
を有し、少なくとも水素を含む非単結晶炭素からなる表
面層が形成された電子写真感光体において、この表面層
は、基準長さを5μmとした場合の表面粗さRzが50
0オングストローム以上、2000オングストローム以
下であり、かつこの表面層中に少なくとも酸素、窒素、
フッ素、硼素原子を全て同時に含有し、これらの含有量
が、表面層の接する層よりも多い層構成とすることによ
り、長期間の使用において剥がれや傷、摩耗の発生する
ことがない、電気特性の良好な、高画質の電子写真感光
体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の一例の単層型の模式
的断面図である。
【図2】図1にバッファ層を加えた模式的断面図であ
る。
【図3】図1に下部阻止層を加えた模式的断面図であ
る。
【図4】本発明の電子写真感光体の一例の機能分離型の
模式的断面図である。
【図5】図2にさらに下部阻止層を加えた模式的断面図
である。
【図6】本発明による電子写真感光体を形成するための
装置の一例のRFグロー放電法による製造装置の模式的
説明図である。
【図7】本発明における電子写真用感光体を形成するた
めの装置の一例のVHFグロー放電法による量産型の製
造装置の模式的説明図である。
【符号の説明】
101,201,301,401,501 導電性基
体 102,202,302,502 光導電層 103,203,303,403,503 表面層 204,504 バッファ層 305,405,505 下部阻止層 402’ 電荷発生層 406 電荷輸送層 5100,6100 堆積装置 5111,6111 反応容器 5112,6112 導電性支持体 5113,6113 支持体加熱用ヒーター 5114 原料ガス導入管 5115,6115 マッチングボックス 5116 原料ガス配管 5117 反応容器リークバルブ 5118 メイン排気バルブ 5119 真空計 5200 原料ガス供給装置 5211〜5216 マスフローコントローラ 5221〜5226 原料ガスボンベ 5231〜5236 原料ガスボンベバルブ 5241〜5246 ガス流入バルブ 5251〜5256 ガス流出バルブ 5261〜5266 圧力調整器 6115 電極 6120 支持体回転用モーター 6121 排気管 6130 放電空間

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基体上にシリコン原子を母体とす
    る非単結晶材料で構成された光導電層を有し、少なくと
    も水素を含む非単結晶炭素から成る表面層が形成された
    電子写真感光体において、該表面層は、基準長さを5μ
    mとした場合の表面粗さRzが500オングストローム
    以上、2000オングストローム以下であり、かつ該表
    面層中に少なくとも酸素、窒素、フッ素、硼素原子を全
    て同時に含有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 前記表面層の酸素、窒素、フッ素、硼素
    原子の含有量が該表面層の接する層よりも多いことを特
    徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記光導電層と前記表面層の間に、さら
    にバッファ層を設けたことを特徴とする請求項1または
    2に記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 前記バッファ層がシリコン原子を母体と
    し、さらに炭素原子を含有する非単結晶材料で構成され
    たことを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】 前記バッファ層がさらに酸素、窒素、フ
    ッ素、硼素原子を全て同時に含有し、各原子の含有量
    が、該バッファ層の接する光導電層の含有量よりも多い
    ことを特徴とする請求項3または4に記載の電子写真感
    光体。
  6. 【請求項6】 前記表面層に含まれる酸素、窒素、フッ
    素、硼素原子の含有量の和が、0.001原子%〜5原
    子%であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の電
    子写真感光体。
JP36321698A 1997-12-25 1998-12-21 電子写真感光体 Expired - Fee Related JP4086391B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP36321698A JP4086391B2 (ja) 1997-12-25 1998-12-21 電子写真感光体

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-358265 1997-12-25
JP35826597 1997-12-25
JP36321698A JP4086391B2 (ja) 1997-12-25 1998-12-21 電子写真感光体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11242349A true JPH11242349A (ja) 1999-09-07
JP4086391B2 JP4086391B2 (ja) 2008-05-14

Family

ID=26580755

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP36321698A Expired - Fee Related JP4086391B2 (ja) 1997-12-25 1998-12-21 電子写真感光体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4086391B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7211357B2 (en) 2003-07-31 2007-05-01 Canon Kabushiki Kaisha Electrophotographic photosensitive member
US7618759B2 (en) 2006-03-30 2009-11-17 Kyocera Corporation Electrophotographic photosensitive member, and image forming apparatus using same

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7211357B2 (en) 2003-07-31 2007-05-01 Canon Kabushiki Kaisha Electrophotographic photosensitive member
US7618759B2 (en) 2006-03-30 2009-11-17 Kyocera Corporation Electrophotographic photosensitive member, and image forming apparatus using same

Also Published As

Publication number Publication date
JP4086391B2 (ja) 2008-05-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3155413B2 (ja) 光受容部材の形成方法、該方法による光受容部材および堆積膜の形成装置
EP0926560B1 (en) Electrophotographic photosensitive member
JPH1083091A (ja) 電子写真感光体及びその製造方法
JP2962851B2 (ja) 光受容部材
JP4086391B2 (ja) 電子写真感光体
JPH06317920A (ja) 電子写真用光受容部材の形成方法
JP2001312085A (ja) 電子写真感光体及びその製造方法
JP2902509B2 (ja) 電子写真用光受容部材の形成方法
JP3154259B2 (ja) 光受容部材
JPH10288852A (ja) 電子写真感光体
JP4110053B2 (ja) 電子写真用感光体製造方法、及び電子写真感光体、並びにそれを用いた電子写真装置
JP3535664B2 (ja) 電子写真装置
JP2895286B2 (ja) 電子写真用光受容部材の形成方法
JP3289011B2 (ja) 堆積膜形成装置の洗浄方法
JP2006189822A (ja) 電子写真感光体
JP3459700B2 (ja) 光受容部材および光受容部材の製造方法
JP2960609B2 (ja) 光受容部材
JP4143491B2 (ja) 電子写真感光体の製造方法
JP3929037B2 (ja) 感光体製造方法、および電子写真感光体、およびそれを用いた電子写真装置
JP2006163219A (ja) 電子写真感光体
JP2010102131A (ja) 画像形成方法
JP2004133396A (ja) 電子写真感光体製造方法、及び電子写真感光体、及びそれを用いた電子写真装置
JP2006133524A (ja) 電子写真感光体および電子写真装置
JP2019020503A (ja) 負帯電用電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
JPH06301225A (ja) 光受容部材

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050207

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050309

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050509

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20050509

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20050509

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20051116

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060118

RD13 Notification of appointment of power of sub attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7433

Effective date: 20060118

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20060118

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080115

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080219

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110228

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120229

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140228

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees