JP4677062B2 - 数値制御旋盤及びこの数値制御旋盤によるワークの加工方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、対向する二つの主軸台と、この二つの主軸台にそれぞれ支持された主軸と、前記各主軸に把持されたワークを加工するための工具を装着した刃物台とを有する数値制御旋盤及びこの数値制御旋盤によるワークの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対向する二つの主軸台と刃物台とを有し、前記刃物台に装着した工具で、前記二つの主軸台の主軸に装着した二つのワークを同時に加工できるようにした数値制御旋盤(以下、NC旋盤という)が、例えば特表平10−501758号公報等で知られている。
第12図は、特表平10−501758号公報で開示されたNC旋盤の概略構成を説明する平面図である。
【0003】
NC旋盤200のベッド210には、第1の主軸台220及び第2の主軸台230が対向して配置されている。第1の主軸台220及び第2の主軸台230は、それぞれ、NC旋盤200のZ軸と平行な主軸221,231を回転自在に支持している。これら主軸221,231は、X軸方向に位置をずらして配置されている。各主軸221,231の先端には、図示しないチャックが設けられていて、このチャックによってワークW1,W2が把持される。
【0004】
第1の主軸台220は、ベッド210に固定されている。ベッド210には、NC旋盤200のZ軸と平行な方向に延びるガイドレール240が設けられる。このガイドレール240にはサドル250が載置され、このサドル250は、図示しないサーボモータ等の駆動体の駆動により、ガイドレール240に案内されながらZ軸と平行なZ1軸方向に移動する。
【0005】
サドル250の上には、NC旋盤200のX軸と平行な方向にガイドレール270が設けられている。このガイドレール270には、ガイドレール270に沿って往復移動する往復台255が載置されている。第2の主軸台230及び第1の刃物台260はこの往復台255の上に載置される。第2の主軸台230及び第1の刃物台260は、図示しないサーボモータ等の駆動体の駆動により、ガイドレール270に案内されながら、一体になって、X軸と平行なX1軸方向に移動する。
【0006】
第1の刃物台260は、一側に割り出し回転自在なタレット面板261を備えている。このタレット面板261には、第1の主軸台220の主軸221に把持されたワークW1を加工するための工具T1が複数装着される。そして、サドル250のZ1軸方向の移動及び第1の刃物台260のX1軸方向の移動の組み合わせにより、工具T1がワークW1に対して位置決めされるとともに移動しながら、ワークW1を加工する。
【0007】
第2の主軸台230の主軸231に対向して、第2の刃物台280が設けられる。この第2の刃物台280の一側には、割り出し回転自在なタレット面板281が設けられている。このタレット面板281には、第2の主軸台230の主軸231に把持されたワークW2を加工するための工具T2が複数装着される。第2の刃物台280は、NC旋盤200のX軸と平行なX2軸方向に設けられたガイドレール282に沿って、ベッド210上をX軸と平行なX2軸方向に移動自在である。
【0008】
このようなNC旋盤200では、第1の刃物台260と第2の主軸台230が共通のサドル250及び往復台255の上に設けられているので、ワークW1に対する工具T1のZ1軸方向の送りが、ワークW2に対する工具T2の送りとなり、同一の孔明け加工等を二つのワークW1,W2について同時に行うことが可能である。
【0009】
また、工具T1のX1軸方向の送りに同期させて工具T2をX2軸方向に送りながら、工具T2にX2軸方向の独自の送り速度を加えることで、ワークW1,W2について異なる加工を同時に行うことが可能である。
上記したようなNC旋盤200は、複数のワークW1,W2について同時に同一又は異なる加工を行うことができるものの、以下のような不都合が存在する。
すなわち、工具T1のZ軸方向の送り速度は、サドル250のZ1軸方向の移動速度によって決定されるため、同時加工することのできるワークW1,W2の加工形態が制限される。
【0010】
また、二つのワークW1,W2を加工するために二つの刃物台260,280が必要になって、NC旋盤200が複雑、大型化し、コストも高くなる。
本発明の目的は、第1の主軸側のワークと第2の主軸側のワークとで多種多様の加工を同時に行うことが可能なNC旋盤及びその制御方法を提供すること、及び、多種多様の加工を少なくとも一つの刃物台で行うことができるようにして構成を簡素化したNC旋盤及びその制御方法を提供するところにある。
【発明の開示】
【0011】
本発明の数値制御旋盤は、対向して配置された第1の主軸及び第2の主軸と、前記第1の主軸に把持されたワークを加工するための第1の工具及び前記第2の主軸に把持されたワークを加工するための第2の工具を備え、前記第1の主軸の主軸軸線と平行なZ軸方向及びこれに直交するX軸方向に移動自在な刃物台とを有する数値制御旋盤において、 前記第2の主軸を、前記刃物台とX軸方向で対向させて配置し、前記X軸方向及びZ軸方向に移動自在に設け、数値制御装置が、各主軸に把持された各ワークを同時に加工するように、前記第2の主軸と前記刃物台とのX軸方向同士及びZ軸方向同士の移動の重畳を指令し、前記第1の工具の刃先と前記第2の工具の刃先の前記X軸方向の距離が、前記第1の工具によって前記ワークを加工する際の前記刃物台のX軸方向の移動距離の最大値よりも大きくなり、かつ、前記第1の工具の刃先をX軸方向のワークの加工開始位置に位置させたときに前記第2の工具の刃先がX軸方向のワークの加工開始位置に位置するようにするとともに、前記第2の工具の刃先位置を前記第1の工具の刃先位置より前記刃物台から離間させて、前記第一の工具と前記第二の工具を前記刃物台に装着した構成としてある。
前記刃物台に装着された前記第1の工具と前記第2の工具との組み合わせのうちの少なくとも一つが、X軸と同方向を差し向く第1の工具と第2の工具の組み合わせである場合に、前記第1の工具の刃先と前記第2の工具の刃先の前記Z軸方向の距離が、前記第1の工具によって前記ワークを加工する際のZ軸方向の移動距離の最大値と前記第2の工具によって前記ワークを加工する際のZ軸方向の移動距離の最大値の和よりも大きくなるように、前記第一の工具と前記第二の工具を前記刃物台に装着してもよい。
また、前記数値制御装置は、前記刃物台の前記X軸方向の移動及び前記Z軸方向の移動を制御する第1の制御系と、前記第2の主軸の前記X軸方向の移動及び前記Z2軸方向の移動を制御する第2の制御系とを有するように構成してもよい。
【0012】
この構成によれば、刃物台がX軸方向及びZ軸方向に移動しながら、第1の工具で第1の主軸のワークを加工する。第2の主軸は、刃物台と同じ方向であるX軸方向及びZ軸方向に移動が可能であるので、第2の主軸を前記刃物台の移動に同期させることで、前記刃物台に装着した第2の工具と第2の主軸のワークとの相対速度を0にすることができる。
そして、前記刃物台のX軸方向の移動に、第2の工具によるワークの加工に必要な第2の主軸のX軸方向の移動を重畳させ、かつ、前記刃物台のZ軸方向の移動に、第2の工具によるワークの加工に必要な第2の主軸のZ軸方向の移動を重畳させることで、第2の主軸の最終的な移動を決定することができる。
これにより、第1の工具による第1の主軸のワークの加工と、第2の工具による第2の主軸のワークの加工を同時に行うことができる。しかも、このワークの加工は、第1の主軸側のワークと第2の主軸側のワークとで異なるものであってもよい。
【0013】
また、本発明では、干渉を防止するための主軸台の小型化を最小限に抑制することができ、主軸の出力不足や回転ムラや脈動の発生を防止し、加工可能なワークの最大径を小さくするということがない。また、刃物台の逃げ部を大きくとる必要がないので、刃物台の機械剛性を高く維持することができ、加工時における工具の振動や刃先位置の変動を招いて、加工精度を低下させるようなことも防止できる。さらに、刃物台に追随させて第2の主軸を移動させ、さらに第2の主軸に把持されたワークを加工するために刃物台の移動に第2の主軸の移動を重畳させても、刃物台と第2の主軸、第1の主軸に把持されたワークと第2の主軸に把持されたワークが干渉することも防止できる。
【0014】
また、本発明の数値制御旋盤によるワークの加工方法は、対向して配置された第1の主軸及び第2の主軸と、前記第1の主軸に把持されたワークを加工するための第1の工具及び前記第2の主軸に把持されたワークを加工するための第2の工具を備え前記第1の主軸の主軸軸線と平行なZ軸方向及びこれに直交するX軸方向に移動自在な刃物台とを有し、前記第2の主軸が、前記刃物台とX軸方向で対向させて配置されるとともに前記X軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられた数値制御旋盤におけるワークの加工方法において、前記第1の工具の刃先と前記第2の工具の刃先の前記X軸方向の距離が、前記第1の工具によって前記ワークを加工する際の前記刃物台のX軸方向の移動距離の最大値よりも大きくなり、かつ、前記第1の工具の刃先をX軸方向のワークの加工開始位置に位置させたときに前記第2の工具の刃先がX軸方向のワークの加工開始位置に位置するようにするとともに、前記第2の工具の刃先位置を前記第1の工具の刃先位置より前記刃物台から離間させて、前記第一の工具と前記第二の工具を前記刃物台に装着し、前記第2の主軸と前記刃物台のX軸方向同士及びZ軸方向同士の移動の重畳により前記第2の主軸を前記X軸方向及び前記Z軸方向に移動させて、前記第1の工具による前記第1の主軸のワークの加工と、前記第2の工具による前記第2の主軸のワークの加工を同時に行う方法としてある。
また、前記刃物台に装着された前記第1の工具と前記第2の工具との組み合わせのうちの少なくとも一つが、X軸と同方向を差し向く第1の工具と第2の工具との組み合わせである場合に、前記第1の工具の刃先と前記第2の工具の刃先の前記Z軸方向の距離が、前記第1の工具によって前記ワークを加工する際のZ軸方向の移動距離の最大値と前記第2の工具によって前記ワークを加工する際のZ軸方向の移動距離の最大値の和よりも大きくなるように、前記第1の工具と前記第2の工具を前記刃物台に装着してもよい。
【0015】
この方法によれば、前記刃物台のX軸方向の移動に、第2の工具によるワークの加工に必要な第2の主軸のX軸方向の移動を重畳させ、かつ、前記刃物台のZ軸方向の移動に、第2の工具によるワークの加工に必要な第2の主軸のZ軸方向の移動を重畳させることが可能で、第1の工具による第1の主軸のワークの加工と、第2の工具による第2の主軸のワークの加工を同時に行うことができる。
好ましくは、重畳を行う前記X軸及び前記Z軸のうち、いずれか一方の軸におけるワークと工具の相対位置を予め設定された第1の位置に位置決めし、前記一方の軸の重畳を行なった後に、重畳を完了した前記一方の軸における前記ワークと前記工具を前記第1の位置に位置決めした状態で、他方の軸におけるワークと工具の相対位置を予め設定された第2の位置に位置決めして、前記他方の軸の重畳を行うようにするとよい。
【0016】
このようにすることで、加工プログラムを作成するプログラマーが、工具とワークの位置関係を把握しやすくなるという利点がある。また、X軸の加工領域及びその周辺でのみ重畳させることにより、刃物台の工具交換時の退避用のストローク等を含む長いストロークを持つX軸に対して短いストロークですみ、NC旋盤の小型化を図ることができるという利点がある。
さらに好ましくは、前記X軸の重畳又は前記Z軸の重畳を行う手順を予め定義してマクロプログラム化し、前記X軸の重畳又は前記Z軸の重畳を行う指令が入力されたときに、前記マクロプログラムを実行して重畳を行うようにするとよい。このようにすることで、加工プログラムの簡素化を図ることができる。
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、第1図及び第2図にしたがって、本発明のNC旋盤の概略構成を説明する。
第1図は本発明のNC旋盤の第1の実施形態にかかり、その概略構成を説明する平面図、第2図は、刃物台と対向する二つの主軸台との位置関係を説明する第1図の部分拡大図である。
NC旋盤100のベッド110には、第1の主軸台120及び第2の主軸台130が対向して配置されている。第1の主軸台120は第1の主軸121を回転自在に支持し、第2の主軸台130は第2の主軸131を回転自在に支持している。第1の主軸121及び第2の主軸131の先端には、図示しないチャックがそれぞれ設けられていて、このチャックでワークW1,W2を把持できるようになっている。
【0018】
この実施形態において、第1の主軸台120は、ベッド110に固定されている。ベッド110には、Z軸と平行な方向にガイドレール140が設けられている。このガイドレール140には、サドル150が載置されている。このサドル150は、駆動体である図示しないモータの駆動によって、ガイドレール140に案内されながら、Z軸と平行なZ2軸方向に移動する。
サドル150の上には、Z軸と直交するX軸と平行な方向にガイドレール170が設けられている。第2の主軸台130は、このガイドレール170に載置され、図示しない駆動体の駆動によって、ガイドレール170に案内されながらX軸と平行なX2軸方向に移動する。
【0019】
ベッド110には、ガイドレール140と平行にガイドレール145が設けられている。このガイドレール145には、サドル155が載置されている。このサドル155は、駆動体である図示しないサーボモータによって、ガイドレール145に案内されながらZ軸と平行なZ1軸方向に移動する。
サドル155の上面には、X軸と平行な方向にガイドレール175が設けられている。刃物台160はこのガイドレール175に載置され、駆動体である図示しないサーボモータの駆動によって、ガイドレール175に案内されながらX1軸方向に移動する。
【0020】
刃物台160は、一側に割り出し回転自在なタレット面板161を備えている。このタレット面板161には、第1の主軸121に把持されたワークW1を加工するための工具T1が複数装着される。なお、複数の工具T1のうちの少なくとも一つは、図示するように、X1軸と同方向を差し向くようにタレット面板161に装着された切削工具又は回転工具である。刃物台160のX1軸方向の移動及びサドル155のZ1軸方向の移動により、工具T1がワークW1に対して所定の位置に位置決めされるとともにワークW1に対して移動しながら、ワークW1を加工する。
【0021】
また、タレット面板161には、第1の工具である工具T1の取付位置と同じ位置(同じステーション)に、第2の主軸131に把持されたワークW2を加工するための第2の工具である工具T2が装着される。なお、図示の例で工具T2は、図示するようにX2軸と同方向を差し向くようにタレット面板161に装着された切削工具である。
工具T2は、刃物台160のX1軸方向の送り速度にワークW2を加工するためのX軸方向の送り速度を重畳した第2の主軸台130のX2軸方向の送り、及び、刃物台160のZ1軸方向の送り速度にワークW2を加工するためのZ軸方向の送り速度を重畳した第2の主軸台130のZ2軸方向の送りにより、ワークW2に対して位置決めされるとともに移動して、ワークW2を加工する。
【0022】
第2図に刃物台160の主要部の拡大図を示す。
工具T1及び工具T2は、工具ホルダ165を介してタレット面板161に装着される。工具ホルダ165は、タレット面板161にボルト等で固定されるホルダ本体165aと、このホルダ本体165aの第1の主軸台120側の面に取り付けられたホルダ165bと、ホルダ本体165aの第2の主軸台130側の面に取り付けられたホルダ165cとから構成される。そして、ホルダ165bに工具T1が装着され、ホルダ165cに工具T2が装着される。
【0023】
ホルダ165bとホルダ165cとは、工具T1によるワークW1の加工と工具T2によるワークW2の加工とを同時に行う際に、一方のワーク(例えばワークW1)が他方のワーク(例えばワークW2)、他方の工具(例えば、工具T2)、ホルダ(例えば、ホルダ165c)又はホルダ本体165aと干渉しないように各部の寸法が決定される。
【0024】
第2図に示す工具ホルダ165では、工具T1の刃先とホルダ本体165aの面までのZ軸方向の距離L3が、ワークW1の加工長さl1よりも大きくなるように決定される。
また、刃物台160には、第2の主軸台130と刃物台160とが干渉することなく、刃物台160のX1軸方向のストローク及び第2の主軸台130のX2軸方向のストロークを可能な限り大きくとることができるように、逃げ部167が形成されている。
【0025】
工具T1と工具T2の位置関係は、図示するように、工具T2の先端工具T1の先端よりも刃物台160から離れた位置に位置させるのが好ましい。
より好ましくは、工具T1と工具T2の刃先のX軸方向の距離H1が、工具T1がワークW1を加工する際のX1軸方向の最大の追込み量h1よりも大きくなるようにするとよい。
【0026】
この工具1と工具2の刃先のX軸方向の距離の分だけ、刃物台160の逃げ部167の逃げ量を大きくする必要がなくなり、第2の主軸台130の刃物台160側の幅を大きくして、第2の主軸台130の剛性を高く維持することができる。また、刃物台160についても、逃げ部167の逃げ量によって剛性が影響を受けるため、このような工具1と工具2の刃先のX軸方向の距離によって、刃物台160の剛性も高く維持することができる。
【0027】
このようにすると、第2の主軸台130を小型にしたり刃物台160の逃げ部167を大きくする必要なく、NC旋盤の小型化を図ることができる。
工具1と工具2の刃先のZ軸方向の距離L1+L2は、工具T1がワークW1を加工する際のZ1軸方向の最大の移動量l1+s1と工具T2がワークW2を加工する際のZ2軸方向の最大の移動量l2+s2を加えた距離より大きくするとよい。
このようにすると、重畳加工を行うワークW1とワークW2の干渉を防ぐことができる。
【0028】
この構成のNC旋盤では、第1の主軸121に把持されたワークW1の正面側の加工終了後に、第2の主軸131にワークW1を受け渡し、背面側を加工する加工方法が多く用いられる。このため、第2の主軸131の軸線を第1の主軸121の軸線に一致させる必要があるが、刃物台160に向かう第2の主軸131のX軸方向のストロークは、少なくとも第1の主軸121の軸線と同心にできる位置まで持たせるとよい。
【0029】
[制御装置の説明]
第3図は、このNC旋盤100における制御装置の制御ブロック図である。
制御装置190は、中央処理部(CPU)191と、このCPU191からの指令によって刃物台160のZ1軸方向及びX1軸方向の移動を制御する第1の演算処理回路192aと、この第1の演算処理回路192aからの出力信号に基づいてX1軸方向及びZ1軸方向の速度信号を出力する速度処理回路192b,192cと、この速度処理回路192b,192cからの出力信号に基づいて、刃物台160をX1軸方向及びZ1軸方向に所定の速度で移動させるようにサーボモータ163,162を駆動させるサーボ処理回路192d、192eとを有している。
【0030】
同様に、CPU191からの指令によって第2の主軸台130のZ2軸方向及びX2軸方向の移動を制御する第2の演算処理回路193aと、この第2の演算処理回路193aからの出力信号に基づいてX2軸方向及びZ2軸方向の速度信号を出力する速度処理回路193b,193cと、この速度処理回路193b,193cからの出力信号に基づいて、第2の主軸台130をX2軸方向及びZ2軸方向に所定の速度で移動させるようにサーボモータ133,134を駆動させるサーボ処理回路193d、193eとを有している。
CPU191は、Z1軸方向及びX1軸方向の移動指令に、ワークW2の加工に必要なZ軸方向及びX軸方向の移動指令を加算して、Z2軸方向及びX2軸方向の移動の指令を行い、刃物台160の移動に第2の主軸台130の移動速度を重畳させる。
【0031】
上記したような重畳は、他の構成の制御装置によっても可能である。
第4図は、このNC旋盤100における制御装置の他の実施形態にかかり、その制御ブロック図である。
第4図において、第3図の制御装置と同一部位には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
制御装置190′は、中央処理部(CPU)191′と、このCPU191′からの指令によって刃物台160のZ1軸方向及びX1軸方向の移動を制御する第1の制御系192と、CPU191からの指令によって第2の主軸台130のZ2軸方向及びX2軸方向の移動を制御する第2の制御系193とを有する。
第1の制御系192は、第1の演算処理回路192aと、速度処理回路192b,192cと、サーボ処理回路192d、192eとを有している。
【0032】
同様に、第2の制御系193は、第1の演算処理回路193a、速度処理回路193b,193c及びサーボ処理回路193d,193eを有している。
第2の制御系193には、速度処理回路193b,193cとサーボ処理回路193d,193eとの間に、重畳回路195,196がさらに設けられる。
重畳回路195は、ワークW2を工具T2で加工するための第2の主軸台130のX2軸方向の送り指令(ワークW2と工具T2の相対的な送り指令)を、刃物台160のX1軸方向の送り指令に加算し、その結果を第2の主軸台130のX2軸方向の送り指令として、サーボ処理回路193dに出力する。
【0033】
重畳回路196は、ワークW2を工具T2で加工するための第2の主軸台130のZ1軸方向の送り指令(ワークW2と工具T2の相対的な移動指令)を、刃物台160のZ1軸方向の送り指令に加算し、その結果を第2の主軸台130のZ2軸方向の送り指令として、サーボ処理回路193eに出力する。
上記制御装置190′によれば、ワークW1を加工するための工具T1のX1軸方向及びZ1軸方向の送り指令がCPU191′から第1の制御系192に出力され、ワークW2を加工するための工具T2のX1軸方向及びZ1軸方向の送り指令(ワークW2と工具T2の相対的な移動指令)がCPU191から第2の制御系193に出力される。
【0034】
第1の制御系192は、CPU191′からの出力に基づいて刃物台160とともに工具T1を移動させる。第2の制御系193は、CPU191′からの送り指令に、刃物台160の送り指令を加算して、移動速度を重畳させ、第2の主軸台130を移動させる。
【0035】
次に、第1図〜第5図を参照しながら、上記構成のNC旋盤100の作用を説明する。
第5図(a)は、加工開始前の初期状態における各工具と各ワークとの位置関係を示す図、第5図(b)は、加工中における各工具と各ワークの位置関係を示す図である。
第2図に示すように、待機状態では、タレット面板161の割り出し回転時に工具T1,T2とワークW1,W2が干渉しないように、刃物台160は第1の主軸台120及び第2の主軸台130から離れた位置にある。
【0036】
また、第1の主軸台120及び第2の主軸台130は、ワークW1の加工原点O1及びワークW2の加工原点O2が所定位置に位置するように位置決めされている。この実施形態では、ワークW2の加工原点O2が、ワークW1の加工原点O1(第1の主軸121の主軸軸線上にある)よりも刃物台160から離れた位置に位置するように、第2の主軸台130の位置が決定される。
【0037】
工具T1でワークW1の加工を行うために、第2図の待機位置から刃物台160がX1軸方向及びZ1軸方向に移動し、第5図(a)に示す初期位置までくると、刃物台160のX1軸方向の送り速度及びZ1軸方向の送り速度に等しい移動指令が、第1の制御系192から第2の制御系193に出力される。この移動指令は、刃物台160の送り速度と同速度で、かつ、刃物台160の移動方向と同方向に、第2の主軸台130を移動可能にする。これにより、工具T1でワークW1を加工するために刃物台160が移動する際に、工具T2とワークW2と位置関係を一定に保つことができる。
【0038】
重畳回路195では、刃物台160のX1軸方向の送り指令に、工具T2によってワークW2を加工する際の、工具T2に対するワークW2のX1軸方向の移動指令(工具T2とワークW2の相対的な移動指令)が加算される。また、重畳回路196では、刃物台160のZ1軸方向の移動指令に、工具T2に対するワークW2のZ1軸方向の移動指令(工具T2とワークW2の相対的な移動指令)が加算される。そして、この結果が、モータ133及びモータ134に出力される。
したがって、第5図(b)に示すように、工具T1によってワークW1の加工を行いながら、工具T2によって、ワークW1の加工とは全く異なる加工を、ワークW2に対して行うことができる。
【0039】
第2図及び第5図で示した加工例は、第1の工具である工具T1及び第2の工具である工具T2はともに切削用のバイトである。
本発明によれば、第1の工具又は第2の工具として切削用のバイト以外の工具を用いて、ワークW1又はワークW2に切削以外の加工を施すことが可能である。
【0040】
[他の加工例]
本発明のNC旋盤を用いた他の加工の例を以下に説明する。
第6図に示す加工例では、バイトT13でワークW1に外周面の切削加工を施し、ドリルT23でワークW2の端面に孔明け加工を施す。
この場合は、バイトT13の切込み量及び送り量に応じて、第2の主軸台130のZ2軸方向及びX2軸方向の送りを重畳させる必要がある。
加工の際には、バイトT13をワークW1の外周面に移動させ、刃物台160をZ1軸方向及びX1軸方向に送って、ワークW1の外周面を切削する。同時に、刃物台160のZ1軸方向の送り速度に、ドリルT23によるワークW2の加工のためのZ1軸方向の送り速度を重畳させた送り速度及びX1軸方向の送り速度にX2軸方向の送り速度を重畳させた送り速度で、第2の主軸台130をZ2軸方向及びX2軸方向に送って、ワークW2の端面に孔明け加工を施す。
【0041】
[第2の実施形態]
以下に説明する第2の実施形態では、X1軸とX2軸及びZ1軸とZ2軸の重畳の他に、Z0軸とZ1軸の重畳を加えている。
第7図に、本発明の第2の実施形態にかかるNC旋盤の概略構成を説明する平面図を、第8図に、このNC旋盤における制御装置の制御ブロック図を示す。
なお、第7図及び第8図では、第1の実施形態と同一の部位、同一の部材には第1図及び第3図と同一の符号を付し、当該部位及び部材の詳しい説明は省略する。
第2の実施形態のNC旋盤100′の第1の主軸台120′は、Z軸と平行なZ0軸方向に移動自在である。第1の主軸台120′のZ0軸方向の移動は、駆動体である図示しないモータの駆動によって行われる。
【0042】
刃物台160に対向して第2の刃物台180が設けられる。この第2の刃物台180は、ベッド110上に設けられたガイドレール182に沿って、X軸と平行なX3軸方向に移動自在である。第2の刃物台180は、駆動体である図示しないモータの駆動によって、X3軸方向に移動する。
第2の刃物台180のタレット面板181には、ワークW1を加工するための第3の工具T3が装着されている。工具T3は、第2の刃物台180のX3軸方向の移動と、第1の主軸台120′のZ0軸方向の移動とによって、ワークW1に対して位置決めされるとともに移動して、ワークW1の加工を行う。
【0043】
このNC旋盤100′の制御装置190″は、第1の主軸台120′をZ0軸方向に移動させるための第3の制御系197と、第2の刃物台180をX3方向に移動させるための第4の制御系198をさらに有している。
第3の制御系197及び第4の制御系198は、それぞれ、第1の演算処理回路197a,198a、速度処理回路197b,198b及びサーボ処理回路197d,198dを有している。
【0044】
この実施形態の第1の制御系192″には、Z1軸方向の速度処理回路192cとZ1軸方向のサーボ処理回路192eの間に、重畳回路199が設けられる。そして、この重畳回路199に、第3の制御系197の速度処理回路197bから出力されたZ0軸方向の送り速度が入力され、さらに、重畳回路199から出力されたZ1軸方向の送り速度が、重畳回路196に入力される。
これにより、第1の主軸台120′のZ0軸方向の送り速度に刃物台160のZ1軸方向の送り速度が重畳され、主軸台120′のZ0軸方向の送り速度に、刃物台160のZ1軸方向の送り速度と第2の主軸台130のZ2軸方向の送り速度が重畳される。
【0045】
以上により、Z0軸とZ1軸、Z1軸とZ2軸及びX1軸とX2軸の3組の重畳が行われ、3つの工具T1,T2,T3で、ワークW1及びワークW2に異なる加工を施すことが可能になる。
以上の説明では、速度の重畳のみについて述べてきたが、第2の主軸台130や刃物台160,第2の刃物台180等の移動は位置と速度と加速度とで制御される。したがって、これらの移動を重畳するためには、位置や加速度についても同様に重畳する。
【0046】
[重畳の手順]
本発明のNC旋盤では、所定の手順にしたがって重畳が行われる。以下、その手順を、第1図〜第3図及び第9図〜第11図を参照しながら説明する。
第9図は、本発明のNC旋盤及び加工方法における制御の手順を説明するフローチャートである。
CPU191は、ワークW1及びワークW2を加工するためのNC加工プログラムの中から重畳の必要性があるかどうかを判断する(ステップS1)。重畳させる必要がない場合には、NC加工プログラムにしたがって、工具T1によるワークW1の加工と工具T2によるワークW2の加工を順次行う(ステップS8)。
重畳させる必要がある場合には、重畳させる軸がZ軸であるかX軸であるかを判断する(ステップS2及びステップS5)。
【0047】
重畳させる軸がZ軸(Z1軸とZ2軸)である場合には、Z1軸及びZ2軸の位置決めを行った後に(ステップS4)、Z1軸とZ2軸の重畳を行う(ステップS5)。
重畳させる軸がX軸(X1軸とX2軸)である場合には、X1軸及びX2軸の位置決めを行った後に(ステップS6)、X1軸とX2軸の重畳を行う(ステップS7)。
このように、一方の軸の重畳を行う際に重畳する軸を位置決めするのは、加工プログラムを作成するプログラマーに、工具とワークの位置関係を把握しやすくするためである。
【0048】
これら重畳が完了すれば、NC加工プログラムにしたがって、工具T1によるワークW1の加工と、工具T2によるワークW2の加工とを同時に行う(ステップS8)。
加工が終了すれば(ステップS9)、重畳を解除し(ステップS10)、次の加工まで待機する。
なお、重畳の有無をステップS1、ステップS2,ステップS5で確認するものとして説明したが、この確認は省略することもできる。
次に、第10図及び第11図のフローチャートにしたがって、Z1軸とZ2軸及びX1軸とX2軸の重畳の具体的な手順を説明する。
以下の説明では、Z1軸とZ2軸及びX1軸とX2軸の2組の重畳を行うものとし、Z1軸とZ2軸の重畳を完了させた後に、X1軸とX2軸の重畳を行うものとして説明する。
【0049】
[Z軸重畳]
NC加工プログラムの中にZ軸重畳指令があると(ステップS200)、Z1軸とZ2軸のプログラムの実行開始タイミングを待ち合わせる(ステップS201,S221)。
第1の制御系(第10図のフローチャートの左側の系)では、X1軸,Z1軸,C1軸(Z1軸周りの回転軸)を使用しているかどうかを判断する(ステップS202)。X1軸,Z1軸,C1軸のいずれか又は全部が使用中の場合には、準備作業を所定時間中断して待機し(ステップS203)、X1軸,Z1軸,C1軸が使用されなくなるまで待つ。
【0050】
X1軸,Z1軸,C1軸のいずれも使用されていなければ、第1の制御系に加工のための新たな軸X1,Z1,C1を設定する(ステップS204)。
この後、X1軸,Z1軸,C1軸を他の制御系で使用することを禁止し(ステップS205)、刃物台160をX1軸上で指定された後退位置まで移動させて(ステップS206)、第2の制御系と待ち合わせる(ステップS207)。
【0051】
第2の制御系(第10図のフローチャートの右側の系)では、NC加工プログラムの実行開始のタイミング合わせ(ステップS221)を行った後、X2軸及びZ2軸に指令されている重畳を解除する(ステップS222)。次いで、X2軸,Z2軸,C2軸(Z2軸周りの回転軸)を使用しているかどうかを判断する(ステップS223)。X2軸,Z2軸,C2軸のいずれか又は全部が使用中の場合には、所定時間中断して待機し(ステップS224)、X2軸,Z2軸,C2軸が使用されなくなるまで待つ。
【0052】
X2軸,Z2軸,C2軸がいずれも使用されていなければ、第2の制御系に新たな軸X2,Z2,C2を設定する(ステップS225)。
以上の処理が完了すれば、第1の制御系と待ち合わせる(ステップS226)。
待ち合わせ(ステップS207,S226)完了後に、第1の制御系は工具T1とワークW1との距離が予め設定された距離(位置関係)になるまで、刃物台160をX1軸方向及びZ1軸方向に移動させる(ステップS208)。
この後、X1軸,Z1軸,C1軸の他の制御系での使用禁止を解除し(ステップS209)、第2の制御系と待ち合わせる(ステップS210)。
【0053】
第2の制御系では、待ち合わせ(ステップS207,S226)完了後に、X2,Z2,C2軸の他の制御系での使用を禁止する(ステップS228)。そして、第2の主軸台130をZ2軸方向及びX2軸方向に移動させて、工具T2とワークW2との距離が予め決定された距離(位置関係)になるようにする(ステップS229)。そして、この位置のX2軸上におけるワークW2の座標系を設定し(ステップS230)、第2の制御系に新たな軸Z2,C2を設定する(ステップS231)。これにより、X2軸に対する指令を無効にし、ワークW2のX2軸方向の位置を固定する。
【0054】
この後、第1の制御系と待ち合わせる(ステップS232)。
待ち合わせ(ステップS210,232)完了後に、Z2軸の重畳を開始し(ステップS233)、Z2軸におけるワークW2の座標系を設定する(ステップS234)。X2軸,Z2軸,C2軸の他の制御系での使用の禁止を解除し(ステップS235)、第1の制御系と待ち合わせる(S236)。
待ち合わせ(ステップS211,S236)が完了すれば、Z1軸とZ2軸の重畳が完了する。
【0055】
[X軸重畳]
X軸の重畳指令があると(ステップS300)、第1の制御系と第2の制御系とでプログラムの実行タイミングを合わせる(ステップS301,S321)。
第1の制御系では、X1軸、Z1軸、C1軸を使用しているかどうかを判断し(ステップS302)、使用中の場合には所定時間待機し(ステップS303)、X1軸、Z1軸、C1軸が使用されなくなるまで待つ。
【0056】
使用していなければ、第1の制御系に新たな軸X1,Z1,C1を設定する(ステップS304)。そして、他の制御系での使用を禁止し(ステップS305)、第2の制御系と待ち合わせる(ステップS306)。
第2の制御系では、プログラムの実行開始タイミング合わせ(ステップS321)を行った後、X2軸,Z2軸,C2軸を使用しているかどうかを判断し(ステップS322)、使用中の場合には所定時間待機し(ステップS323)、X2軸、Z2軸、C2軸が使用されなくなるまで待つ。
使用していなければ、第2の制御系にX2,Z2,C2の新たな軸を設定し(ステップS324)、これらの軸の他の制御系での使用を禁止する(ステップS325)。
【0057】
この後、第2の制御系では、工具T1の刃先と工具T2の刃先の座標位置をメモリに格納するとともに、この座標位置のX2軸方向の距離H1をメモリに格納する(ステップS326)。これらの処理が終了すれば、第1の制御系と待ち合わせる(ステップS327)。
【0058】
待ち合わせ(ステップS306,S327)完了後に、ワークW1の加工原点点O1の座標を求め(ステップS329)、この座標位置から第2の主軸台130の位置が重畳するのに適切な位置かどうかを判断する(ステップS330)。
重畳させるのに適切かどうかの判断の基準としては、例えば、工具T2の刃先が第1のワークW1の加工原点O1よりも、X1軸方向に刃物台160から離れているかどうか(第2図の例では、加工原点O1を通る、第1の主軸121の軸線よりも下方にあるかどうか)で判断することができる。
【0059】
具体的には、工具T2の刃先が第1の主軸121の主軸軸線よりも上にあるときは、第2の主軸台130のX2軸の可動範囲外であるとして、重畳するには不適切であると判断する。
したがって、このような場合には、アラーム状態とする(ステップS331)。
重畳可能であれば、第2の主軸台130の初期位置を決定する。この実施形態では、第2の主軸台130の初期位置として、ワークW2の加工原点O2(第2の主軸131の主軸軸線上にある)が、第1の主軸台120側のワークW1の加工原点O1よりも、X2軸方向に距離H1だけ刃物台160から離れた位置にある第1の位置、ワークW1,W2や加工の形態にかかわらず予め決定された第2の位置、作業者が任意に設定することのできる第3の位置が準備されている。
これら第1の位置、第2の位置及び第3の位置の中からどの位置を選択するかは、例えば、NCプログラムに付される引数によって決定することができる。前記NCプログラムのX引数の有無を判断して(ステップS332)、第3の位置を選択し、D引数の有無を判断して(S333)、第1の位置(ステップS334)又は第2の位置(ステップS335)のいずれかを選択するようにすることができる。
【0060】
第1の位置、第2の位置又は第3の位置の中から適当な位置を選択した後に、X2軸の重畳を開始し(ステップS337)、X2軸のワーク軸を設定する(ステップS338)。
以上の処理が終了すれば、第1の制御系と待ち合わせる(ステップS307,S339)。
待ち合わせ完了後に、各軸の他の制御系での使用禁止を解除し(ステップS308,S340)、互いに待ち合わせて(ステップS309,S341)、X1軸とX2軸の重畳を完了する。
【0061】
上記したZ軸の重畳とX軸の重畳は、いずれか一方を先に行ってから他方を行うように設定してもよいが、同時に行うように設定してもよい。
また、好ましくは、Z軸重畳の手順及びX軸重畳の手順をマクロプログラム化するとよい。マクロプログラム化することで、加工プログラムが簡素化し、重畳作業も容易に行えるようになる。
【0062】
本発明の好適な実施形態を説明してきたが、本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。
例えば、刃物台160,180に装着したドリル等の回転工具に対するワークの相対回転は、第1の主軸121又は第2の主軸131を回転させることによって行うものとして説明したが、刃物台160,180に工具を回転させるための回転駆動機構を設けて、刃物台160,180に装着したドリルやエンドミル等の回転工具を回転させることができるようにすることも可能である。このように構成すれば、刃物台160,180にドリルやエンドミル等の回転工具を装着して、ワークW1,W2の外周面に、孔明けやキー溝切削等の加工を施すことが可能になり、本発明のNC旋盤及び加工方法による加工の汎用性をさらに向上させることができる。
【0063】
本発明によれば、X1軸とX2軸及びZ1軸とZ2軸のように、平行関係にはない少なくとも2軸以上の軸の移動の重畳を行うことが可能になり、少なくとも一つの刃物台に装着した複数の工具によって、複数の主軸に把持させた複数のワークに、複数種類の異なる加工を同時に施すことが可能になる。これにより加工時間の短縮を図ることができるほか、数値制御旋盤の構成を簡素かつコンパクトなものにして、小型で低廉な価格の数値制御旋盤を得ることができる。
さらに、二つの主軸に把持させたワークに対して、これまで以上に多種多様の加工を同時に行うことが可能であるので、加工時間の短縮を図ることができるほか、数値制御旋盤の価格及び数値制御旋盤によるワークの加工コストを大幅に低下させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、二つの主軸台と、少なくとも一つの刃物台を有する数値制御旋盤に限らず、二つ以上の刃物台を備えた数値制御旋盤にも適用が可能である。また、切削加工や孔明け加工に限らず、刃物台に回転工具を取り付けることで、エンドミルによる溝切り加工や、タップによるねじ切り加工にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】 本発明のNC旋盤の概略構成を説明する平面図である。
【図2】図1のNC旋盤における刃物台の工具と対向する二つの主軸に装着されたワークとの位置関係を説明する図である。
【図3】本発明の数値制御旋盤の制御装置の制御ブロック図である。
【図4】本発明の数値制御旋盤の他の制御装置の例にかかり、その制御ブロック図である。
【図5】本発明のNC旋盤の作用の説明図で、(a)は加工開始前の初期状態を、(b)は二つの主軸に装着したワークの同時加工状態を示す概略図である。
【図6】本発明の数値制御旋盤によるワークの加工形態のさらに他の例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかるNC旋盤の概略構成を説明する平面図である。
【図8】図7のNC旋盤における制御装置の制御ブロック図である。
【図9】本発明の加工方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】Z1軸及びZ2軸の重畳の手順を説明するフローチャートである。
【図11】X1軸及びX2軸の重畳の手順を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の従来例にかかるNC旋盤の概略構成を説明する平面図である。
Claims (8)
- 対向して配置された第1の主軸及び第2の主軸と、前記第1の主軸に把持されたワークを加工するための第1の工具及び前記第2の主軸に把持されたワークを加工するための第2の工具を備え、前記第1の主軸の主軸軸線と平行なZ軸方向及びこれに直交するX軸方向に移動自在な刃物台とを有する数値制御旋盤において、
前記第2の主軸を、前記刃物台とX軸方向で対向させて配置し、前記X軸方向及びZ軸方向に移動自在に設け、
数値制御装置が、各主軸に把持された各ワークを同時に加工するように、前記第2の主軸と前記刃物台とのX軸方向同士及びZ軸方向同士の移動の重畳を指令し、
前記第1の工具の刃先と前記第2の工具の刃先の前記X軸方向の距離が、前記第1の工具によって前記ワークを加工する際の前記刃物台のX軸方向の移動距離の最大値よりも大きくなり、かつ、前記第1の工具の刃先をX軸方向のワークの加工開始位置に位置させたときに前記第2の工具の刃先がX軸方向のワークの加工開始位置に位置するようにするとともに、前記第2の工具の刃先位置を前記第1の工具の刃先位置より前記刃物台から離間させて、前記第一の工具と前記第二の工具を前記刃物台に装着したこと、
を特徴とする数値制御旋盤。 - 前記刃物台に装着された前記第1の工具と前記第2の工具との組み合わせのうちの少なくとも一つが、X軸と同方向を差し向く第1の工具と第2の工具の組み合わせである場合に、前記第1の工具の刃先と前記第2の工具の刃先の前記Z軸方向の距離が、前記第1の工具によって前記ワークを加工する際のZ軸方向の移動距離の最大値と前記第2の工具によって前記ワークを加工する際のZ軸方向の移動距離の最大値の和よりも大きくなるように、前記第一の工具と前記第二の工具を前記刃物台に装着したことを特徴とする請求項1に記載の数値制御旋盤。
- 前記数値制御装置は、前記刃物台の前記X軸方向の移動及び前記Z軸方向の移動を制御する第1の制御系と、前記第2の主軸の前記X軸方向の移動及び前記Z軸方向の移動を制御する第2の制御系とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の数値制御旋盤。
- 前記第1の主軸に把持された前記ワークを加工するための第3の工具を備えた第2の刃物台を有し、前記第1の主軸を、少なくとも前記第1の主軸の主軸軸線に沿ったZ軸方向に移動可能にし、前記第1の制御系は、少なくとも、前記第1の主軸に把持させた前記ワークを前記第1の工具で加工するのに必要な前記Z軸方向の移動を、前記第1の主軸の前記Z軸方向の移動に重畳可能であることを特徴とする請求項3に記載の数値制御旋盤。
- 対向して配置された第1の主軸及び第2の主軸と、前記第1の主軸に把持されたワークを加工するための第1の工具及び前記第2の主軸に把持されたワークを加工するための第2の工具を備え前記第1の主軸の主軸軸線と平行なZ軸方向及びこれに直交するX軸方向に移動自在な刃物台とを有し、前記第2の主軸が、前記刃物台とX軸方向で対向させて配置されるとともに前記X軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられた数値制御旋盤におけるワークの加工方法において、
前記第1の工具の刃先と前記第2の工具の刃先の前記X軸方向の距離が、前記第1の工具によって前記ワークを加工する際の前記刃物台のX軸方向の移動距離の最大値よりも大きくなり、かつ、前記第1の工具の刃先をX軸方向のワークの加工開始位置に位置させたときに前記第2の工具の刃先がX軸方向のワークの加工開始位置に位置するようにするとともに、前記第2の工具の刃先位置を前記第1の工具の刃先位置より前記刃物台から離間させて、前記第一の工具と前記第二の工具を前記刃物台に装着し、
前記第2の主軸と前記刃物台のX軸方向同士及びZ軸方向同士の移動の重畳により前記第2の主軸を前記X軸方向及び前記Z軸方向に移動させて、前記第1の工具による前記第1の主軸のワークの加工と、前記第2の工具による前記第2の主軸のワークの加工を同時に行うこと、
を特徴とする数値制御旋盤におけるワークの加工方法。 - 前記刃物台に装着された前記第1の工具と前記第2の工具との組み合わせのうちの少なくとも一つが、X軸と同方向を差し向く第1の工具と第2の工具との組み合わせである場合に、前記第1の工具の刃先と前記第2の工具の刃先の前記Z軸方向の距離が、前記第1の工具によって前記ワークを加工する際のZ軸方向の移動距離の最大値と前記第2の工具によって前記ワークを加工する際のZ軸方向の移動距離の最大値の和よりも大きくなるように、前記第1の工具と前記第2の工具を前記刃物台に装着したことを特徴とする請求項5に記載のワークの加工方法。
- 重畳を行う前記X軸及び前記Z軸のうち、いずれか一方の軸の位置を予め設定された第1の位置に位置決めして、前記一方の軸の重畳を行い、重畳を完了した前記一方の軸を前記第1の位置に位置決めした状態で、他方の軸の位置を予め設定された第2の位置に位置決めして、前記他方の軸の重畳を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の数値制御旋盤におけるワークの加工方法。
- 前記X軸の重畳又は前記Z軸の重畳を行う手順を予め定義してマクロプログラム化し、前記X軸の重畳又は前記Z軸の重畳を行う指令が入力されたときに、前記マクロプログラムを実行して重畳を行うようにしたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の数値制御旋盤におけるワークの加工方法。
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