JP4675500B2 - 高純度エポキシ樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高純度のエポキシ樹脂の製造方法に関するものであり、とりわけ塗料、電気、電子用途に有用な高純度エポキシ樹脂の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
エポキシ樹脂は、その優れた物理的、化学的特性により塗料、電気・電子、土木・建築、接着剤、難燃剤等の広範な用途で使用されている。近年、各用途に応じて要求される性能はますます高度化してきている。 例えば電気・電子分野では電子部品封止剤、積層板の材料として使用されるエポキシ樹脂は、その硬化物の耐熱性、耐湿性等の信頼性に悪影響を及ぼす加水分解性塩素分やα−ジオール含有量の少ない高純度なエポキシ樹脂が求められている。
また、塗料分野においても、塗膜の高可とう性、高耐衝撃性、高耐薬品性を得るために、架橋密度を高めることの必要性から加水分解性塩素分やα−ジオール成分量の少ない高純度のエポキシ樹脂が求められている。
【0003】
エポキシ樹脂中の加水分解性塩素分やα−ジオール含有量を低減する方法については種々の方法が提案されている。 例えば、特開昭54−90400号公報には、多価フェノール類とエピクロルヒドリンを四級アンモニウム塩の存在下に反応させ、その生成物に40乃至60重量%のイソプロピルアルコール及び任意の水で希釈して、アルカリ金属水酸化物水溶液と接触させて反応させる方法が開示されている。 また、特開昭63−54417号公報には、多価フェノール類とエピクロルヒドリンをアルカリ金属水酸化物水溶液の存在下で反応させるに際し、4つの工程を経る方法が提案されており、特に重要となる主反応工程では、特定温度、特定圧力下でアルカリ金属水酸化物水溶液を供給しながら系内水分を1乃至2重量%内に保って反応する方法が開示されている。
しかしながら、前者の方法では実施例中、α−ジオール含有量は2乃至4meq/100g程度までしか低下していなく、不十分であり、また、高価な四級アンモニウム塩、水溶性のイソプロピルアルコールを使用するため、工業的に不利となる。 また、後者の方法でも、実施例中、α−ジオール含有量は2meq/100g程度までしか低下していなく、不十分である。
【0004】
一方、特開平5−17463号、特開平5−155978号では多価フェノール類とエピクロルヒドリンを固形アルカリ金属水酸化物を使用し、高純度エポキシ樹脂を製造する方法が開示されている。しかしながら、これらはいずれも、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の非プロトン性極性溶媒を反応助溶媒として使用する事が必須となっている。これらの非プロトン性極性溶媒は、いずれも高価であるばかりでなく、基本的に親水性であり、廃水中への移行は避けられず、また、難生分解性である事から工業的に著しく不利になるという問題があった。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは加水分解性塩素分やα−ジオール成分量の少ない高純度のエポキシ樹脂を得るべく種々鋭意検討した結果、次のような知見を得て本発明を完成するに至った。
即ち、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの基本反応は、(1)付加反応、(2)脱塩酸反応および(3)付加重合反応の三つからなっている。
【0006】
【化1】
【0007】
先ず、付加反応によりクロルヒドリンエーテルが生成し、生成したクロルヒドリンエーテルがアルカリによって閉環しグリシジルエーテルを生成する。この反応は脱塩酸反応と呼ばれている。更に生成したグリシジルエーテルとビスフェノールAが反応する付加重合反応が起こり、この三つの反応が繰り返されることによってエポキシ樹脂が生成される。そして、エポキシ樹脂反応生成過程において、ハロヒドリン基数、フェノール性水酸基数、およびエポキシ基数の3者の合計に対するハロヒドリン基数の占める割合(これをハロヒドリンエーテル基の純度という)を特定の値にすることによって高純度のエポキシ樹脂が得られるとの知見を見出し、本発明を完成したのであって、本発明の目的は工業的に有利な方法で高純度エポキシ樹脂を製造する方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、フェノールA又はビスフェノールFとエピハロヒドリンをアルカリ金属水酸化物の存在下に反応させてビスフェノール型エポキシ樹脂を製造するに際し、少なくとも下記の第一工程と第二工程の2つの工程を経ることを特徴とするものであり、エポキシ当量が156乃至2000g/eq、α−ジオール含有量が2meq/100g以下である高純度のビスフェノール型エポキシ樹脂を提供するものである。
(第一工程)フェノールA又はビスフェノールFを該ビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量当たり0.3乃至10モルのエピハロヒドリンに溶解し、ついで該ビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量当たり0.005乃至0.5モルの固形水酸化カリウムを一括又は間欠又は連続的に供給し、40乃至100℃の温度を保ちながら、必要に応じて反応系にある水とエピハロヒドリンとを共沸させ、水を反応系外に除去する事により反応系内水分量を1重量%以下に保持しながら、下記式(1)で表わされるハロヒドリンエーテル基純度を20乃至50%の範囲まで反応させる工程。
【0009】
【数2】
【0010】
(第二工程)第一工程で得られた反応混合物に常圧又は減圧下で、該ビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量当たり0.4乃至1.295モルのアルカリ金属水酸化物水溶液を連続して供給し、水とエピハロヒドリンとを共沸させて、水を反応系外に除去する事により、反応系内水分量を1重量%以下に保持しながら40乃至100℃の温度で反応を行う工程を経て高純度エポキシ樹脂を製造するものである。
【0011】
本発明の製造方法の重要な要件は、少なくとも2つの段階の反応工程を経て高純度のビスフェノール型エポキシ樹脂を製造する事である。更に詳しくは、第一工程ではビスフェノール類とエピハロヒドリンの付加反応を、固形水酸化カリウムを使用して、ハロヒドリンエーテル基純度を20乃至50%の範囲にすることを目的とし、後続する第二工程では、アルカリ金属水酸化物水溶液によるグリシジルエーテルを与えるための該ハロヒドリンエーテルの脱ハロゲン化水素反応を優先して進行させることによって目的を達成する。
通常、形式的にはこの様な2つの段階の反応工程を経る方法が多く提案されているものの、必ずしもそれぞれの目的とする反応が選択的に進行しているものではなかった。特に、第一工程の反応では、ハロヒドリンエーテル基純度を高めるために例えば四級アンモニウム塩の如くイオン化可能なハロゲン化物を触媒とする方法、アルコール類等のプロトン性極性溶媒を使用する方法、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の非プロトン性極性溶媒を使用する方法、系内水分を高める方法及びこれらを併用する方法が提案されている。
【0012】
しかしながらこれらの方法は、ハロヒドリンエーテル化基純度を高める効果は得られるが、生成したハロヒドリンエーテルとエピハロヒドリンとの副反応の増大、プロトン性有機溶媒とエピハロヒドリンとの付加副生物の生成、非プロトン性極性溶媒の廃水中への移行、エピハロヒドリンの加水分解の増大による収率の低下、廃水処理負荷の増大等、それぞれ根本的な欠陥を有しており工業的に著しく不利な方法であった。
また一方、ハロヒドリンエーテル化反応及び脱ハロゲン化水素反応時の系内水分量を低くする事で、エピハロヒドリンの加水分解を制御し、高純度のビスフェノール型エポキシ樹脂を製造する方法は公知である。しかしながら、従来の技術では系内水分量は1乃至2重量%が限度であり、これ以上系内水分量を低くすると、ハロヒドリンエーテル化反応及び引き続く脱ハロゲン化水素反応が速やかに進行せず、残存しているフェノール性水酸基と生成したエポキシ基との付加反応が優先して、その付加反応により生成したアルコール性水酸基とエポキシ基の付加反応に及んだ場合には、好ましくない枝分かれ反応や架橋反応が起こり、極端な場合にはゲル化するという現象が起こる。
【0013】
本発明者らは、四級アンモニウム塩等の触媒やプロトン性或いは非プロトン性極性溶媒等の助溶媒を使用することなく、系内水分量が極力低い領域で、固形水酸化カリウムをハロヒドリンエーテル化触媒とすることで、ハロヒドリンエーテル基純度を高め、ビスフェノール型高純度エポキシ樹脂を得るという従来技術にない工業的有利な製造方法を本発明により可能となった。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるビスフェノール類はビスフェノールA又はビスフェノールFである。本発明に用いられるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、メチルエピクロルヒドリン、メチルエピブロモヒドリン、メチルエピヨードヒドリン等が挙げられるが、好ましくはエピクロルヒドリンである。本発明に係わる第一工程はビスフェノールA又はビスフェノールF(以下、これらのビスフェノールを単にビスフェノール類という)をフェノール性水酸基1当量当たり、0.3乃至10モルのエピハロヒドリンに溶解し、ついで該ビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量当たり0.005乃至0.5モルの固形水酸化カリウムを一括又は間欠又は連続して供給し、40乃至100℃の温度を保ちながら、必要に応じて反応系にある水とエピハロヒドリンとを共沸させ水を反応系外に除去する事により反応系内水分量を1重量%以下に保持しながら、下記式(1)で表わされるハロヒドリンエーテル基純度を20乃至50%以上まで反応させる。
【0015】
【数3】
【0016】
この工程の第一の特徴は、ハロヒドリンエーテル化の触媒として、固形水酸化カリウムを使用し、必要に応じて反応系にある水とエピハロヒドリンを共沸させ水を反応系外に除去する事により反応系内水分量を1重量%以下に保持する事である。反応系内水分が1重量%より高いと、エピハロヒドリンの加水分解が進行し、この加水分解物がハロヒドリンエーテルと副反応を起こし、得られた樹脂の純度が低くなるので好ましくない。
また、この工程の第二の特徴は、式(1)で表されるハロヒドリンエーテル基純度を20乃至50%の範囲まで反応させる事である。式(1)中のハロヒドリン基数、エポキシ基数、フェノール性水酸基数はそれぞれ、反応物中の水酸化カリウムによる加水分解性ハロゲンの定量、過塩素酸滴定法によるエポキシ基の定量、UV吸収法による残存フェノール性水酸基の定量等公知の方法で測定し、樹脂単位重量当たりの当量数で定義される。ハロヒドリンエーテル基純度が20%に到達しないと、次の第二工程で好ましくない重合反応、或いはゲル化が起こる。また、必要以上に反応温度、反応時間を要してハロヒドリンエーテル基純度を50%以上に高めても、この間、わずかな量の系内水分により、エピハロヒドリンの加水分解反応が進行し、高純度エポキシ樹脂を得るという観点から不利となるからである。
【0017】
第一工程でのエピハロヒドリンの使用量は、製造しようとする樹脂の目標とするエポキシ当量にもよるが、ビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量当たり0.6乃至10モルの範囲が好ましく、更に好ましくは1.5乃至10モルの範囲である。本発明で使用する固形水酸化カリウムは通常、純度85乃至97重量%程度で顆粒状或いはフレーク状で市販されており、これら純度、形状に限定されるものではないが純度85重量%以上のものが好ましい。また、形状については一例としてフレーク状、粒状等があげられる。固形水酸化カリウムの使用量はビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量当たり0.005乃至0.5モルの範囲が好ましい。0.005モル以下では目標とするハロヒドリンエーテル基純度の到達までに長時間を有するからであり、0.5モル以上では、固形水酸化カリウム中の水分及び、副生する水分が多くなり、系内水分を1重量%以下に保つことが困難となるから好ましくない。反応温度は40乃至100℃の範囲が好ましく、更に好ましくは50乃至70℃の範囲である。反応時間は使用する固形水酸化カリウム量及び反応時間により、目標とするハロヒドリンエーテル基純度が20乃至50%に達する時間で十分であり、0.5乃至5時間が好ましい。
【0018】
本発明に係わる第二工程は、第一工程で得られた反応混合物に常圧又は減圧下で、第一工程で使用したビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量あたり0.4乃至1.295モルのアルカリ金属水酸化物水溶液を連続して供給し、反応系内の水とエピハロヒドリンとを共沸させて、水を反応系外に除去することにより、反応系内水分量を1重量%に保ちながら40乃至100℃の温度で反応を行う。
この工程で使用されるアルカリ金属水酸化物水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムの水溶液が挙げられ、40乃至50重量%のものが好ましい。この第二工程での要件は、アルカリ金属水酸化物水溶液を連続的に供給しながら、反応系にある水とエピハロヒドリンとを共沸により蒸発させて、水を反応系外に除去する事により系内水分量を1重量%以下に制御する事である。反応系内の水分が1重量%を越えると、目標とする高純度のビスフェノール型エポキシ樹脂が得られないためである。この工程での反応温度は40乃至100℃の範囲が好ましく、更には50乃至70℃が好ましい。反応は常圧又は減圧下で実施できる。反応時間は1乃至8時間で十分である。
また、反応の際に、反応系の粘度を下げる目的で、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の不活性溶媒を使用することも本発明の範囲を越えるものではない。この場合、非水溶性溶媒が好ましい事はいうまでもない。
【0019】
第二工程の終了後、必要によっては、エポキシ樹脂を含む溶液から、常圧又は減圧下でエピハロヒドリンを蒸留等により除去することにより、残留樹脂と副生アルカリ塩を含んだ粗製エポキシ樹脂として得られる。
このようにして得られた粗製エポキシ樹脂に、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を加え、エポキシ樹脂を溶解する。
次に、必要に応じて、エポキシ樹脂中に残留する微量の加水分解性ハロゲン量を下げる目的で、アルカリ金属水酸化物を添加して、好ましくは50乃至80℃の温度で1乃至5時間処理することができる。
この際用いられるアルカリ金属水酸化物は水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられ、固形または水溶液の状態で添加することができ、その使用量は、加水分解性ハロゲン1当量に対して1乃至20モルの範囲が好ましい。
このようにしてアルカリ金属水酸化物で処理した後、必要により濾過等によって、副生アルカリ塩を除去した後、水洗により副生アルカリ塩及び/又は過剰のアルカリ金属水酸化物を除去する。この水洗は、分離した水相のpHが中性になるまで行われるが、この際、燐酸等の酸を補助的に使用してもかまわない。その後、有機溶媒を常圧又は減圧下で蒸留により除去する事によって本発明の高純度エポキシ樹脂を得ることが出来る。
【0020】
【実施例】
以下に実施例、比較例をもって本発明を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。尚、本文中「部」とあるのは重量部を意味する。
実施例1
攪拌機、温度計、窒素導入管、滴下装置及び冷却管を合わせ持つ油水分離装置を備えたセパラブルフラスコに、ビスフェノールA200部、エピクロルヒドリン460部を仕込み、窒素雰囲気下、60℃まで加熱して溶解した。次にこの溶液に96%の固形水酸化カリウム10部を添加して60℃で2時間反応を行った(第一工程)。第一工程の系内水分は、0.8%であった。この第一工程後のハロヒドリンエーテル基純度は35%であった。次に、反応系内の温度を60℃に維持しながら徐々に減圧してエピクロルヒドリンと水とを共沸させ、油水分離装置を経由して上層の水を除去、下層のエピクロルヒドリン層を系内に戻し還流させた。この状態を維持しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液132部を4時間かけて滴下して第二工程を進めた。この間、系内は60乃至62℃、100乃至120mmHg、水分0.7乃至0.8%に維持した(第二工程)。滴下終了後、60℃、100mmHgの還流下で30分間維持した。その後、還流したエピクロルヒドリンを系外に除去しながら、系内の温度、減圧度を徐々に高めて、最終的に150℃、5mmHgになるまでエピクロルヒドリンを蒸発回収した。その後、系を常圧に戻し、トルエン300部を加え、粗製樹脂を溶解した。この溶液に20%水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、80℃で3時間処理した後、水500部を加え副生食塩を分離、除去した。その後、水300部で数回洗浄を行い、洗浄水が中性になるまで繰り返した。この溶液から、5mmHgの減圧下、150℃に加熱してトルエンを除去し、液状のエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂は、エポキシ当量184g/eq、α−ジオール含有量0.5meq/100g、加水分解性塩素0.012%、粘度11,200mPa・s(25℃)であった。
【0021】
実施例2
実施例1と同様の装置にビスフェノールA200部、エピクロルヒドリン500部を仕込み、窒素雰囲気下、60℃まで加熱して溶解した。この溶液に96%固形水酸化カリウム5部を添加して60℃で4時間反応を行った。第一工程の反応系内水分0.9%であった。この第一工程後のハロヒドリンエーテル基純度は28%であった。次に、反応系内の温度を60℃に維持しながら徐々に減圧してエピクロルヒドリンと水とを共沸させ、油水分離装置を経由して上層の水を除去、下層のエピクロルヒドリン層を系内に戻し還流させた(第一工程)。この状態を維持しながら、48%水酸化カリウム水溶液206部を5時間かけて滴下した。この第二工程での系内は59乃至61℃、90乃至110mmHg、水分0.6乃至0.7%に維持した(第二工程)。その後、実施例1と同様の処理を行い、液状のエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂は、エポキシ当量182g/eq、α−ジオール含有量0.4meq/100g、加水分解性塩素0.013%、粘度10,300mPa・s(25℃)であった。
【0022】
実施例3
ビスフェノールAの代わりにビスフェノールF175部とした以外は実施例1と同様の反応を行った。第一工程の反応系内水分0.5%であった。第一工程終了時のハロヒドリンエーテル基純度は38%であった。第二工程の反応時の系内は61乃至63℃、110乃至130mmHg、水分0.7乃至0.8%に維持した。得られた樹脂は、エポキシ当量165g/eq、α−ジオール含有量0.7meq/100g、加水分解性塩素0.003%、粘度2,900mPa・s(25℃)であった。
【0023】
実施例4
実施例1と同様の装置にビスフェノールA200部、エピクロルヒドリン460部を仕込み、窒素雰囲気下、60℃まで加熱して溶解した。この溶液に96%固形水酸化カリウム10部を添加して、60℃で3時間反応を行った。第一工程の反応系内水分0.7%であった。この第一工程後のハロヒドリンエーテル基純度は42%であった。次に、反応系内の温度を60℃に維持しながら徐々に減圧してエピクロルヒドリンと水とを共沸させ、油水分離装置を経由して上層の水を除去、下層のエピクロルヒドリン層を系内に戻し還流させた。この状態を維持しながら、48%水酸化カリウム水溶液189部を5時間かけて滴下した。この第二工程での系内は60乃至62℃、100乃至120mmHg、水分0.7乃至0.8%に維持した。その後、実施例1と同様の処理を行い、エポキシ当量183g/eq、α−ジオール含有量0.5meq/100g、加水分解性塩素0.011%、粘度10,800mPa・s(25℃)の樹脂を得た。
【0024】
実施例5
実施例1と同様の装置にビスフェノールA200部、エピクロルヒドリン114部及びトルエン300部を仕込み、窒素雰囲気下、60℃まで加熱して溶解した。この溶液に96%固形水酸化カリウム10部を仕込み80℃で2時間反応させた。第一工程の反応系内水分0.7%であった。この第一工程後のハロヒドリンエーテル基純度は32%であった。次に、常圧下、85乃至86℃で49%水酸化ナトリウム水溶液129部を3時間かけて滴下した。この時、トルエンと水との共沸混合物が還流し、油水分離槽で下層の水を系外から除去、上層のトルエンを系内に戻した。この間、系内の水分は0.4乃至0.5%であった。この第二工程終了後、86℃の還流状態で30分間保持した。その後、トルエン400部を及び水500部を加え、副生食塩を分離、除去した。この溶液を、水300部で数回洗浄して、洗浄水が中性になるまで繰り返した。この溶液から、5mmHgの減圧下、150℃に加熱してトルエンを除去し、エポキシ当量480g/eq、加水分解性塩素0.04%、α−ジオール含有量1.2meq/100g、軟化点68℃の固形エポキシ樹脂を得た。
【0025】
比較例1
実施例1と同様の装置にビスフェノールA200部、エピクロルヒドリン500部を仕込み、窒素雰囲気下、60℃まで加熱して溶解した。この溶液に固形水酸化カリウムの代わりに96%固形水酸化ナトリウム10部を添加して60℃で4時間反応を行った。この時点でのハロヒドリンエーテル基純度は12%であった。次に、反応系内の温度を60℃に維持しながら徐々に減圧してエピクロルヒドリンと水を共沸させ、油水分離装置を経由して上層の水を除去、下層のエピクロルヒドリン層を系内に戻し還流させた。59乃至61℃、90乃至110mmHg、水分0.6乃至0.7%に維持しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液132部を4時間かけて滴下しようとしたところ、滴下3時間目に反応物がゲル化した。
【0026】
比較例2
実施例1と同様の装置にビスフェノールA200部、エピクロルヒドリン500部を仕込み、窒素雰囲気下、60℃まで加熱して溶解した。この溶液に固形水酸化カリウムの代わりに49%水酸化ナトリウム水溶液14部を添加して60℃で4時間反応を行った。この時点でのハロヒドリンエーテル基純度は32%であった。次に、反応系内の温度を60℃に維持しながら徐々に減圧してエピクロルヒドリンと水を共沸させ、油水分離装置を経由して上層の水を除去、下層のエピクロルヒドリン層を系内に戻し還流させた。この状態を維持しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液132部を4時間かけて滴下した。この間系内は、60乃至62℃、140乃至180mmHg、水分1.1乃至1.4%に維持した。その後、実施例1と同様の処理を行い、エポキシ当量186g/eq、α−ジオール含有量3.2meq/100g、加水分解性塩素0.023%、粘度12,800mPa・s(25℃)の樹脂を得た。
【0027】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂の製造法によれば、確実に高純度のエポキシ樹脂が得られ、しかも工業的塗料、電気・電子、土木・建築、接着剤、難燃剤用途等、幅広い用途に有用であり、極めて価値のあるものである。
Claims (3)
- フェノールA又はビスフェノールFとエピハロヒドリンをアルカリ金属水酸化物の存在下に反応させてビスフェノール型エポキシ樹脂を製造するに際し、少なくとも下記の2つの工程を経ることを特徴とする高純度エポキシ樹脂の製造方法。
(第一工程)フェノールA又はビスフェノールFを該ビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量当たり0.3乃至10モルのエピハロヒドリンに溶解し、ついで該ビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量当たり0.005乃至0.5モルの固形水酸化カリウムを一括又は間欠又は連続して供給し、40乃至100℃の温度を保ちながら、必要に応じて水とエピハロヒドリンとを共沸させ、水を反応系外に除去する事により反応系内水分量を1重量%以下に保持しながら、下記式(1)で表わされるハロヒドリンエーテル基純度を20乃至50%の範囲まで反応させる工程。
- エポキシ当量が156乃至2,000g/eq、α−ジオール含有量が2meq/100g以下である請求項1記載の高純度エポキシ樹脂の製造方法。
- 第一工程でのエピハロヒドリンの使用量がフェノールA又はビスフェノールFのフェノール性水酸基1当量当たり1.5乃至10モルであり、第二工程でのアルカリ金属水酸化物水溶液の使用量がビスフェノール類のフェノール性水酸基1当量あたり0.45乃至0.945モルであることを特徴とする請求項1〜請求項2の何れかの項記載の高純度エポキシ樹脂の製造方法。
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