JP4660905B2 - ジルコニア微小球の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速攪拌ミル用の分散・粉砕メディアあるいは金属・電子・樹脂製品などの表面に噴射し、研掃、研削加工をする研磨材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層コンデンサやIC基板材など電子部品を代表とするセラミックス分野や食品、製紙、顔料・塗料、インキ、医薬品・化粧品、農薬、フェライトなど各種分野において、その性能を向上させる目的で、ジルコニアボールを粉砕・分散メディアとした高速攪拌ミルを用いて、素材を微粉砕している。
【0003】
また、乾式ブラストや液体ホーニングによる研掃、研削、ピーニング加工に使用される研磨材としても、ジルコニアボールが用いられている。
【0004】
いずれも平均球径が2000μm以下の小さいサイズのボールが主流として使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、素材を超微粉砕し、更に性能を向上させる目的で、高速攪拌ミルの粉砕・分散メディアとして用いられているジルコニアボールが更に微小化傾向にある。ジルコニアボールのサイズとしては、平均球径が100μmのボールが使用できる粉砕機も実用化され、更に小さいサイズの検討も行われている。
【0006】
また、研掃、研削などを目的とした噴射加工に用いられる研磨材についても、被処理材のサイズが複雑で微小化傾向にあるため、研磨材として用いられるジルコニアボールのサイズも小さくなる傾向にある。
【0007】
いずれの用途においても、圧壊強度や硬度など機械的特性に優れ、衝撃で破砕しにくく、耐摩耗性のあるボールがリサイクル面でよいとされている。微小サイズのボールの製法としては、転動造粒法、攪拌造粒法、液中造粒法などの造粒方法があるが、平均球径が300μm以下のジルコニアボールの製法としては、噴霧造粒法などにより得られた造粒体を核として、液中に分散し、核の周囲にジルコニアスラリーを被着させるなどの液中造粒法が主流である。
【0008】
しかし、噴霧造粒法や液中造粒法で得られた造粒体は、核も含めて、造粒時に圧密されにくいため、これを焼結しても、転動造粒法や攪拌造粒法と比べ、強度や硬度など機械的特性が若干劣るものとなる。
【0009】
このため、造粒に用いるスラリーの粉砕粒径を1μm以下したり、焼結温度を上げて緻密にしたり、冷間静水圧(CIP)処理により、造粒体を緻密にし焼結したり、一次焼結により得られた焼結体を熱間静水圧(HIP)処理することにより、焼結体を緻密にし、機械的特性を向上させなければならなかった。
【0010】
本発明は、これらの問題の解決された、すなわち、液中造粒時に用いるスラリーの粉砕粒径が0.4μm以下と小さいので、低い温度で焼結しても、耐摩耗性や耐久性があり、高速攪拌ミル用の分散・粉砕メディアや噴射加工用研磨材として用いても、破損あるいは摩耗しにくいので、リサイクル性があり、産業廃棄物が少なく、繰り返して使用しても、安定した粉砕効率が得られ、製品に対して一定の噴射加工を維持することができるジルコニア微小球の提供を目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1μm以上の粗粒が含まれる比率が5%以下、平均粒径0.4μm以下のジルコニアスラリーを噴霧造粒することにより得られた球状のジルコニア造粒体を得、当該ジルコニア造粒体を核としてpH8以上に調整された液中に攪拌分散させた後、該ジルコニアスラリーと同組成であり、かつ、1μm以上の粗粒が含まれる比率が5%以下、平均粒径0.4μm以下のジルコニアスラリーを添加することにより、該液中の核を被着成長させ、微小造粒球とし、その造粒球を乾燥後焼結することを特徴とする平均球径が300μm以下であり、平均対理論密度が97%以上であり、中心核部の平均マイクロビッカース硬度が900以上であり、かつ、平均結晶粒径が0.4μm以下である安定化剤を含む球状のジルコニア焼結体からなることを特徴とするジルコニア微小球の製造方法を要旨とするものである。
【0012】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0013】
(a)平均粒径
ジルコニア微小球の平均球径は、300μm以下でなければならない。
【0014】
平均球径が300μmを越えた場合、中心核部の平均マイクロビッカース硬度が900未満でも、核の大きさに対して、造粒層部が厚いため、高速攪拌ミルやブラスト処理に用いても、破砕されにくいジルコニア微小球となる。
【0015】
ジルコニア微小球の平均球径は、150μm未満の場合は、JIS Z 8801に規定されている試験篩を用いて、JIS R 1639−1に規定されているファインセラミックス顆粒特性の測定方法(顆粒径分布の測定)により分布を求め、その中間値とした。150μm以上の場合は、光学顕微鏡により、その画像写真を撮影し、その100個の最大直径を測定し、平均値とした。
【0016】
(b)平均対理論密度
ジルコニア微小球の平均対理論密度は、97%以上でなければならない。平均対理論密度が、97%より小さいと、耐摩耗性や硬度など機械的特性が劣り、高速攪拌ミル内で研磨されたり破砕し、異物として混入したり、対象となる製品表面に噴射された時に破砕し、繰り返し使用すると破砕した部分のエッジで、製品表面が傷つくことがある。
【0017】
ジルコニア微小球の密度は、JIS R 6125に規定されている人造研削材の比重の測定方法によって測定することができる。
【0018】
(c)マイクロビッカース硬度
ジルコニア微小球のマイクロビッカース硬度は、中心核部分も含めて900以上でなければならない。この値が、900より小さいと、耐摩耗性や耐久性が劣り、高速攪拌ミル内で研磨されたり破砕し、異物として混入したり、対象となる製品表面に噴射された時に破砕し、繰り返し使用すると破砕した部分のエッジで、製品表面が傷つくことがある。
【0019】
ジルコニア微小球のマイクロビッカース硬度は、JIS R 1610に規定されているファインセラミックスのビッカース硬さ試験方法によって測定することができる。
【0020】
(d)平均結晶粒径
ジルコニア微小球の平均結晶粒径は、0.4μm以下でなければならない。この値が大きくなると高速攪拌ミル用の分散・粉砕メディアとして用いた場合、耐摩耗性に劣るので、球径が小さくなるほど補充や交換を頻繁に行うことになる。ジルコニア微小球の平均結晶粒径は、走査型電子顕微鏡を用いたプラニメトリック法によって算出することができる。
【0021】
(e)スラリー粒径
噴霧造粒法により、核となる球状の造粒体を製造するためのジルコニアスラリーの平均粒径は、0.4μm以下であり、好ましくは、0.3μm以下、更に好ましくは、0.2μm以下がよい。また、1μm以上の粗粒が含まれる比率が、5%以下であり、好ましくは、3%以下、更に好ましくは、0%がよい。
【0022】
一方、噴霧造粒法で得られた球状の造粒体を核として、該核の周囲にスラリーを被着させ、造粒体を成長させる際に用いるスラリーの平均粒径は、0.4μm以下である。
【0023】
平均粒径が、0.4μm以下で、スラリー中に1μm以上の粗粒が含まれる比率が5%以下のスラリーを用いた場合、噴霧造粒法により、核となる造粒体を得る工程や該核を液中造粒により成長させる工程において、より緻密な造粒体を得ることができると共に、焼結時の温度を下げることができる。
【0025】
粉砕スラリーの平均粒径や分布の測定は、レーザー回折法による粒度分布測定装置を用いればよく、例えば、平均粒径が0.35μmまでは、日機装(株)製レーザー回折式粒度分析計マイクロトラックMKII SPA型、それ以下は、同社製マイクロトラックMKII UPA型で測定することができる。
【0026】
また、粉砕スラリー中に含まれる1μm以上の粗粒の比率を5%以下にするためには、ジルコニアスラリーを平均球径が800μmより大きいジルコニアボールで一次粉砕し、次に、平均球径が400μm以下のジルコニアボールで二次粉砕する方法を用いる。
【0027】
平均球径が400μmより大きいジルコニアボールで粉砕した場合、長時間粉砕しても、ジルコニアスラリー中に1μm以上の粗粒が含まれる比率が5%以上になるので、平均粒径が0.4μm以上となり、焼結時に緻密になりにくく、中心核部のマイクロビッカース硬度を900以上にすることができない。
【0028】
(f)微小球の組成
ジルコニア微小球は、ZrO2を主成分とし、安定化剤として、MgO、CaO、Y2O3、CeO2などの酸化物が用いられているが、正方晶系の結晶構造のジルコニア相を多く含む部分安定化ジルコニア焼結体であればよく、特に、安定化剤を限定する必要はなく、核となる造粒体と該核を液中造粒により成長させる際に用いるジルコニアスラリーの組成が同一であれば問題ない。
【0029】
例えば、Y2O3を安定化剤とした場合、Y2O3/ZrO2のモル比で1.5/98.5〜5/95の範囲内にあることが好ましい。1.5/98.5未満では、単斜晶系の結晶構造のジルコニア相が多くなり、強度や硬度が低下し、また、5/95を越えた場合も、強度が低下するので、分散・粉砕用メディアや研磨材として使用できない。
【0030】
ZrO2と安定化剤に用いた酸化物および不可避成分以外に焼結助剤などとして、安定化剤に用いた酸化物と異なるAl2O3、TiO2、SiO2などの酸化物やこれらの化合物、あるいは非酸化物の1種以上を加えて複合材とする場合、主成分の特性を損なうので、その添加量は、主成分に対して30wt%以下が好ましい。
【0031】
【発明の効果】
以上の如く、本発明のジルコニア微小球の製造方法で得られるジルコニア微小球は、造粒体が中心核を含めて緻密質であるため、耐摩耗性や耐久性に優れているので、リサイクル性に優れている。
【0032】
本発明のジルコニア微小球の製造方法で得られるジルコニア微小球は、セラミックス、食品、製紙、顔料・塗料、インキ、医薬品・化粧品、農薬、フェライトなど各種分野において用いられる高速攪拌ミル用の分散・粉砕メディア;電子関係部品を代表とするガラスやセラミックスあるいは金属部品や樹脂、木材、石材部品などの表面研掃によるクリーニングや梨地、研磨、研削加工を目的とした乾式ブラストや液体ホーニング用の研磨材として用いることができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び、比較例により具体的に説明する。
【0034】
実施例1
ZrO2換算値との合計に対してY2O3を3モル%含むZrO2濃度60g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を煮沸し、還流下で70時間加水分解して水酸化ジルコニウムスラリーを得、該スラリーのZrO2換算濃度が350g/lとなるまで加熱濃縮した後、ZrO2換算値とY2O3の合計値に対してAl2O3として0.25%になるように酸化アルミニウム粉末を加え、噴霧造粒機を用い、150℃の熱風下で乾燥し顆粒状の水酸化ジルコニウム粉末を得た。
【0035】
次に、該水酸化ジルコニウム粉末を900℃、保持2時間の条件で、大気雰囲気下で仮焼し、ジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末10kgを同量の水に分散させて50%スラリーとした後、該スラリーを平均球径が2000μmのジルコニアボールが80%充填された高速攪拌ミルを用いて流量0.5リットル/分、周速10m/秒の条件で、3時間循環粉砕し、スラリーの粒度分布(マイクロトラックSPA型)が、平均粒径0.57μm、1.01μm以上の粗粒の比率が、30.1%の粉砕スラリーを得た。
【0036】
更に該粉砕スラリーを平均球径が325μmのジルコニアボールが85%充填された高速攪拌ミルを用いて流量0.2リットル/分、周速10m/秒の条件で、1パス湿式粉砕し、粒度分布(マイクロトラックSPA型)が、平均粒径0.38μm、1.01μm以上の粗粒の比率が、0%のジルコニアスラリーを得た。
【0037】
次に、該スラリーに0.1%アンモニア水を加え、粘度1000cPに調整した後、熱風温度200℃、排風温度:120℃、アトマイザー回転数9000rpmの条件で噴霧乾燥し、球状の部分安定化ジルコニア造粒体(Y2O3:5.1%、Al2O3:0.245%、理論密度:6.10g/cm3)を得、該造粒体を目開き90μm〜53μmの篩で分級し、この範囲内の造粒体を2kg得た。
【0038】
次に、容量0.02m3のステンレス容器に水を2リットル入れ、水温を35℃に保ち、0.1%アンモニア水でpH9に調整した後、パドル型攪拌機の周速を1.5m/秒にし、該造粒体を投入し、周速を2.5m/秒に上昇させた後、スラリー濃度50%、平均粒径0.38μm、1.01μm以上の粗粒の比率が、0%の粉砕スラリー8kgをpH9にコントロールしながら、180分で連続的に添加し、微小造粒球体のスラリーを得、得られた微小造粒球体スラリーをオーブン乾燥機に入れ、120℃で乾燥した。
【0039】
次に、乾燥した微小造粒球体を目開き140μm〜90μmの篩で分級し、この範囲内の造粒体2kgを用いて、再び、容量0.02m3のステンレス容器を用いて同じ条件で液中造粒を行い、乾燥後、目開き198μm〜140μmの篩で分級し、もう一度同じ条件で液中造粒を行い、乾燥後、目開き278μm〜200μmの篩で分級し、微小造粒球体を得た。
【0040】
得られた微小造粒球体を大気雰囲気下で電気炉により、1300℃、保持4時間の条件で焼成し、平均球径が200μm、平均対理論密度が98.5%の球状ジルコニア焼結体を得た。
【0041】
得られた焼結体を樹脂に埋め込み半分に研削し、マイクロビッカース硬度を測定したところ、中心核部が970、液中造粒部が1150だった。
【0042】
また、目開き218μm〜212μm篩の範囲内にある焼結体を樹脂に埋め込み研削し、鏡面仕上げをした後1250℃でサーマルエッチングを行い、平均結晶粒径を測定したところ0.37μmであった。
【0043】
また、同じ範囲内にある焼結体の平均圧壊強度は、1010MPaであった。
【0044】
実施例2
実施例1と同じ平均粒径0.57μmの粉砕スラリー10リットルを更に、平均球径が212μmのジルコニアボールが30%充填された高速攪拌ミルを用いて流量4リットル/分、周速14m/秒の条件で、2時間湿式循環粉砕し、粒度分布(マイクロトラックSPA型)が、平均粒径0.30μm、1.01μm以上の粗粒の比率が、0%のジルコニアスラリーを得た。
【0045】
次に、このスラリーに0.1%アンモニア水を加え、粘度1200cPに調整した後、液中造粒に平均粒径0.30μm、1.01μm以上の粗粒の比率が、0%のジルコニアスラリーを使う以外は、実施例1と同じ条件で噴霧乾燥、分級、液中造粒焼成を行い、平均球径が195μm、平均対理論密度が98.7%の球状のジルコニア焼結体を得た。
【0046】
得られた焼結体を樹脂に埋め込み半分に研削し、マイクロビッカース硬度を測定したところ、中心核部が1040、液中造粒部が1140だった。
【0047】
また、目開き218μm〜212μm篩の範囲内にある焼結体を樹脂に埋め込み研削し、鏡面仕上げをした後1250℃でサーマルエッチングを行い、平均結晶粒径を測定したところ0.32μmであった。
【0048】
また、同じ範囲内にある焼結体の平均圧壊強度は、1000MPaであった。
【0049】
比較例1
液中造粒に、平均粒径0.57μm、1.01μm以上の粗粒の比率が、30.1%のジルコニアスラリーを使う以外は、実施例1と同じ条件で噴霧乾燥、分級、液中造粒、焼成を行い、平均球径が200μm、平均対理論密度が96.7%の球状のジルコニア焼結体を得た。
【0050】
得られた焼結体を樹脂に埋め込み半分に研削し、マイクロビッカース硬度を測定したところ、中心核部が760、液中造粒部が900だった。
【0051】
また、これを目開き218μm〜212μm篩の範囲内にある焼結体を樹脂に埋め込み研削し、鏡面仕上げをした後1250℃でサーマルエッチングを行い、平均結晶粒径を測定したところ0.48μmであった。
【0052】
また、同じ範囲内にある焼結体の平均圧壊強度は、830MPaであった。
【0053】
微小球のマイクロビッカース硬度の測定は、微小球を埋め込み樹脂と混ぜ合わせ、成形した後、鏡面研磨し、マイクロビッカース硬度計(Akashi製 MVK−E3)を用いて、荷重50g、荷重保持時間20秒の条件で、微小球10個の中心核部と液中造粒部のマイクロビッカース硬度を測定し、それぞれその平均値とした。
【0054】
微小球の圧壊強度の測定は、一定範囲内の篩で分級した焼結球体1個を抗折試験装置の治具を取り外し、ジルコニア焼結体を上下にセットした間に挟み、球体に荷重を加え、破壊した重量を読み取り、球体の直径(d)をその篩範囲の平均値とし、次式
σ=(2.8π/d2)9.80665
で求め、その10個の値を平均値とした。
Claims (2)
- 1μm以上の粗粒が含まれる比率が5%以下、平均粒径0.4μm以下のジルコニアスラリーを噴霧造粒することにより得られた球状のジルコニア造粒体を得、当該ジルコニア造粒体を核としてpH8以上に調整された液中に攪拌分散させた後、該ジルコニアスラリーと同組成であり、かつ、1μm以上の粗粒が含まれる比率が5%以下、平均粒径0.4μm以下のジルコニアスラリーを添加することにより、該液中の核を被着成長させ、微小造粒球とし、その造粒球を乾燥後焼結することを特徴とする平均球径が300μm以下であり、平均対理論密度が97%以上であり、中心核部の平均マイクロビッカース硬度が900以上であり、かつ、平均結晶粒径が0.4μm以下である安定化剤を含む球状のジルコニア焼結体からなるジルコニア微小球の製造方法。
- ジルコニアスラリーが、平均球径が800μmより大きいジルコニアボールで粉砕し、次に、平均球径が400μm以下のジルコニアボールで二次粉砕することにより得られることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア微小球の製造方法。
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