JP4655992B2 - エンジン制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両のエンジンを制御する装置に関し、特に、オートスタート(自動始動)制御を行うエンジン制御装置に関するものである。
従来より、車両に搭載された多気筒エンジンを制御するエンジン制御装置では、クランク軸の回転に応じてクランクセンサから出力されるクランク信号と、カム軸の回転に応じてカムセンサから出力されるカム信号との組み合わせによって気筒判別を行い、その気筒判別結果に基づいて各気筒に対する燃料噴射及び点火を実施することで、エンジンを作動させている(例えば、特許文献1,2参照)。尚、気筒判別とは、エンジンの1サイクル(720°CA)におけるクランク軸の回転位置を特定するという意味である。
また、センサ信号線の断線又は特定電位へのショートによって、クランク信号とカム信号との何れかがレベル変化しなくなる異常が発生した場合には、クランク信号とカム信号とのうち正常な方の信号のみを用いて気筒判別を行うことにより、エンジンを運転可能にする技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、近年、この種のエンジン制御装置では、例えば、押しボタン式のスタータスイッチがオンされ、且つ、車両の使用者に携帯される携帯機との通信による認証の結果が合格である(即ち、使用者が正当な使用者であると判定した)、といった始動実施条件が成立すると、エンジンが運転状態(完爆状態)になったと判定するまでスタータモータを自動的に駆動してエンジンをクランキングさせる、といったオートスタート(自動始動)制御を行うものが提案或いは実用化されている(例えば、特許文献3参照)。
そして、この種のオートスタート制御を実施するシステムによれば、使用者がスタータスイッチをオンしている期間中スタータモータを駆動する、というマニュアル式始動システムと比較すると、使用者はエンジンが完爆状態になるまで始動用の操作を続ける必要が無いため、車両の商品性を向上させることができるという利点や、スタータモータを走行中等の不要な場合に駆動してしまうことがないという利点がある。
また、この種のオートスタート制御を行うエンジン制御装置では、スタータモータの駆動継続時間に制限時間(スタータモータの駆動可能時間)を設けるようにしている(例えば、特許文献3参照)。つまり、スタータモータの駆動継続時間が制限時間に達したら、たとえエンジンが運転状態に至ってなくても、スタータモータの駆動を禁止する制限機能が備えられている。入力条件などの何らかの異常によってスタータモータが不要に駆動し続けられてしまうことを防止し、また、スタータモータの長時間の駆動によってバッテリ上がりやバッテリ劣化が発生するのを防止するためである。
特開2003−254147号公報 特開2003−49696号公報 特開2002−221132号公報
ところで、エンジン制御装置において、クランク信号とカム信号との何れかに異常が生じ、正常な信号のみを用いて気筒判別を行う場合には、全ての信号が正常な場合よりも気筒判別のための情報が少なくなるため、スタータモータの駆動によりクランキングが開始されてから気筒判別が完了するまでの最大時間が長くなる。よって、クランク信号とカム信号との何れかが正常に入力されない状況でエンジンを始動させる際には、スタータモータの駆動が開始されてからエンジンが運転状態になるまでの最大時間が正常時よりも長くなる。
このため、オートスタート制御を行うエンジン制御装置において、クランク信号とカム信号との何れかが異常になっている場合には、スタータモータの駆動を開始してからエンジンが運転状態になる前に、スタータモータの駆動継続時間が制限時間に達して、スタータモータの駆動が禁止され、エンジンを始動することができなくなってしまう可能性が生じる。特に、極低温環境下では、バッテリ電圧の低下やエンジンオイルの粘度が高くなることにより、スタータモータによるクランキング速度が低下するため、スタータモータの駆動開始時から気筒判別が完了するまでの時間が一層長くなり、始動不可になる可能性が一層高くなる。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、オートスタート制御を行うエンジン制御装置において、クランク信号及びカム信号のうちの何れかが正常に入力されない異常が発生した場合でも、エンジンを確実に始動させることができるようにすることを目的としている。
上記目的を達成するためになされた請求項1のエンジン制御装置では、第1の気筒判別手段が、車両に搭載された多気筒エンジンのクランク軸の回転に応じてクランクセンサから出力されるクランク信号と、エンジンのカム軸の回転に応じてカムセンサから出力されるカム信号とに基づいて、気筒判別を行う。
また、異常検出手段が、クランク信号及びカム信号の異常をそれぞれ検出する。
そして、異常検出手段によりクランク信号及びカム信号のうちの何れかの異常が検出された場合には、第1の気筒判別手段に代わって、第2の気筒判別手段が、クランク信号及びカム信号のうち、異常が検出されていない信号に基づき気筒判別を行う。
そして、このエンジン制御装置は、第1の気筒判別手段と第2の気筒判別手段との何れかによる気筒判別結果に基づいてエンジンの各気筒に対する燃料噴射及び点火を実施することにより、エンジンを作動させる。
更に、このエンジン制御装置には、自動始動制御手段と駆動時間制限手段とが備えられている。そして、自動始動制御手段は、特定の始動実施条件が成立したと判定すると、エンジンが運転状態になったと判定するまで始動装置を駆動してエンジンをクランキングさせる。また、駆動時間制限手段は、自動始動制御手段が始動装置を駆動している継続時間を計測し、その継続時間が制限時間に達したと判定すると、自動始動制御手段が始動装置を駆動するのを禁止する。
このため、クランク信号及びカム信号が正常に入力され得る正常時に、始動実施条件が成立して、自動始動制御手段により始動装置が駆動されてクランキングが開始されると、第1の気筒判別手段により、クランク信号とカム信号とに基づいて気筒判別が行われる。そして、始動装置の駆動が開始されてから制限時間が経過する前に、気筒判別が完了し、且つ、その気筒判別結果に基づく燃料噴射及び点火の実施によりエンジンが運転状態(完爆状態)になると、自動始動制御手段による始動装置の駆動が停止される。
また、クランク信号及びカム信号のうちの何れかが正常に入力されない異常が発生している場合に、始動実施条件が成立して、自動始動制御手段により始動装置が駆動された場合には、エンジンがクランキングされてもクランク信号及びカム信号のうちの何れかが正常に入力されないため、その異常が異常検出手段によって検出される。
そして、この場合には、第2の気筒判別手段により、クランク信号及びカム信号のうち、異常が検出されていない信号に基づいて気筒判別が行われ、その気筒判別結果に基づき燃料噴射及び点火が実施されることとなるが、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたように、クランク信号又はカム信号の異常時には、気筒判別のための情報が少なくなるため、始動装置の駆動開始時から気筒判別が完了するまでの最大時間が正常時よりも長くなり、延いては、エンジンが運転状態になるまでの最大時間が長くなる。このため、始動装置の駆動開始時からエンジンが運転状態になる前に、始動装置の駆動継続時間が駆動時間制限手段で判定される制限時間に達して、始動装置の駆動が強制的に禁止されてしまう懸念が生じる。
そこで特に、請求項1のエンジン制御装置では、異常検出手段によりクランク信号及びカム信号のうちの何れかの異常が検出された場合に、制限時間設定手段が、制限時間を正常時の設定時間よりも長い時間に設定するようになっている。
このため、請求項1のエンジン制御装置によれば、上記懸念を払拭することができる。つまり、クランク信号及びカム信号のうちの何れかが正常に入力されない異常が発生している場合に、エンジンが運転状態になる前に始動装置の駆動が駆動時間制限手段によって強制的に禁止されてしまうことを確実に回避して、エンジンを確実に始動させることができるようになる。
尚、こうしたことから、異常検出手段によりクランク信号及びカム信号のうちの何れかの異常が検出された場合に制限時間設定手段が設定する制限時間の値は、請求項2に記載のように、下記のTsよりも長い時間とすれば良い。
即ち、Tsとは、クランク信号及びカム信号のうちの何れかが異常である場合に、始動装置の駆動が開始されてから第2の気筒判別手段による気筒判別が完了して、その気筒判別結果に基づく燃料噴射及び点火の実施によりエンジンが運転状態になるまでの時間であり、制限時間は、そのTsよりも長い時間に設定すれば良い。
そして更に、請求項のエンジン制御装置おいて、制限時間設定手段は、第1の気筒判別手段と第2の気筒判別手段との何れかによる気筒判別が完了するまでは、前記制限時間を、予め定められた初期値に設定しておき、第1の気筒判別手段と第2の気筒判別手段との何れかによる気筒判別が完了した時点で、異常検出手段により異常が検出されていなければ、前記制限時間を前記初期値よりも短い正常時の設定時間に設定し直し、また、異常検出手段により異常が検出されていたならば、前記制限時間を前記初期値よりも短く且つ前記正常時の設定時間よりも長い時間に設定し直す。
つまり、この構成では、始動装置を駆動する制限時間を、気筒判別が完了するまでは、十分に長い初期値に設定しておき、気筒判別が完了した時点で、初期値よりも短い必要に応じた時間に設定し直すようにしている。
そして、この構成によれば、クランク信号及びカム信号が正常な場合と、クランク信号及びカム信号のうちの何れかが異常な場合とでの、制限時間の切り替え設定を、確実に実施することができる。気筒判別が完了した時点では、異常検出手段の検出結果が確定しており、その時点で、制限時間の切り替え設定を行うからである。
ところで、請求項に記載のように、制限時間設定手段は、異常検出手段によりクランク信号及びカム信号のうちの何れかの異常が検出された場合には、前記制限時間を、正常時の設定時間に所定値を加えた時間か、或いは、正常時の設定時間を所定割合だけ長くした時間に設定するように構成することができる。
また、請求項に記載のように、制限時間設定手段は、車両に関する情報のうち、エンジンの始動性に関係する特定の情報を検出して、前記制限時間を、前記情報の検出値に応じて、その検出値がエンジンの始動性が低い(つまり、エンジンが始動し難い)ことを示す値の場合ほど、長い時間に設定するように構成することができる。そして、このように構成すれば、制限時間を常に最適な値(長すぎず短すぎない値)に設定することができるようになる。
尚、エンジンの始動性に関係する特定の情報としては、例えば請求項に記載のように、車両のバッテリ電圧と、車両周囲の温度と、エンジンの冷却水の温度と、エンジンの潤滑油(エンジンオイル)の温度とのうちの1つ以上が考えられる。また、車両周囲の温度としては、車両において外気に曝される部分に設けられた温度センサ(いわゆる外気温センサ)によって検出することが考えられるが、例えば、エンジンへの吸入空気の温度を車両周囲の温度として検出するようにしても良い。
そして、特定の情報がバッテリ電圧であるならば、制限時間は、バッテリ電圧が低い場合ほど、長い時間に設定すれば良い。また、特定の情報が、車両周囲の温度と、冷却水の温度と、潤滑油の温度とのうちの少なくとも1つであるならば、制限時間は、それらの温度が低い場合ほど、長い時間に設定すれば良い。
以下に、本発明が適用された実施形態のエンジン制御装置(以下、エンジンECU、或いは単にECUという)について、図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
まず図1は、実施形態のエンジンECU1とそれの周辺装置を表す構成図である。尚、本実施形態のエンジンECU1は、車両に搭載された多気筒エンジン(本実施形態では、6気筒エンジン)を制御するものであり、各気筒に対する燃料噴射や点火を実施する制御に加え、ワンタッチ操作によってエンジンを始動させるオートスタート制御も行う。
図1に示すように、まず、ECU1の外部において、エンジンを始動のためにクランキングさせるスタータモータ3のプラス側端子は、車載バッテリ5のプラス端子に常時接続されており、スタータモータ3のマイナス側端子は、スタータリレー7の接点を介して、バッテリ5のマイナス端子とつながる0Vのグランドラインに接続されるようになっている。そして、スタータリレー7のコイル9の各端は、ECU1に接続されている。
一方、ECU1には、エンジンを制御するための各種処理を実行するマイコン11と、マイコン11からのスタータリレー駆動信号に応じてコイル9に通電することにより、スタータリレー7をオンさせるスタータリレー駆動回路13とが備えられている。
スタータリレー駆動回路13は、ECU1内において、バッテリ5のプラス端子の電圧(バッテリ電圧)が供給される電源ライン15にソースが接続されたPチャネルMOSFETからなるハイサイドトランジスタTr1と、そのハイサイドトランジスタTr1のドレインにアノードが接続され、カソードがコイル9の一端に接続された電流回り込み防止用のダイオード17と、コイル9の他端にドレインが接続され、ソースがグランドラインに接続されたNチャネルMOSFETからなるローサイドトランジスタTr2とを備えている。
そして、スタータリレー駆動回路13では、マイコン11からのスタータリレー駆動信号がアクティブレベルになると、2つのトランジスタTr1,Tr2がオンして、スタータリレー7のコイル9に電流を流す。すると、スタータリレー7がオンして(即ち、スタータリレー7の接点が短絡して)、スタータモータ3にバッテリ5からの電力が供給され、その結果、スタータモータ3が動作して、エンジンがクランキングされる。
また、ECU1には、エンジンを制御するための外部からの各種信号をマイコン11に入力させる入力回路19が備えられている。
具体的には、マイコン11には、車両のイグニッションスイッチ(IGSW)31のオン/オフ状態を表すイグニッションスイッチ信号、エンジンを始動させるためのスタータスイッチ(STASW)33のオン/オフ状態を表すスタータスイッチ信号、エンジンのクランク軸の回転に応じてクランクセンサ35から出力されるクランク信号、エンジンのバルブを作動させるカム軸の回転に応じてカムセンサ37から出力されるカム信号、エンジンの冷却水温(冷却水の温度)を検出する水温センサ41からの信号、エンジンの吸気経路に設けられた吸気量センサ43からの信号、運転者によって操作されるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサ45からの信号、自動変速機のギア位置(シフト位置)を検出するシフトポジションセンサ47からの信号、及び車速センサ48からの信号などが、入力回路19を介して入力される。
尚、図1では、入力回路19を1つにまとめて記載しているが、入力回路19は、実際には、マイコン11に入力させる入力信号毎に存在しており、その各入力信号の種類に応じた信号処理を行う。例えば、入力信号が、クランク信号、カム信号や、スイッチ信号であれば、その信号を二値の矩形波に波形整形してマイコン11に入力させ、水温センサ41や吸気量センサ43からの信号といったアナログ信号であれば、その信号から高周波ノイズを除去してマイコン11のA/D変換器用の入力ポートに入力させる。
ここで、本実施形態において、クランクセンサ35及びクランク信号と、カムセンサ37及びカム信号との各々は、特許文献1に記載されているものと同じであるが、それらについて説明しておく。
まず、クランク軸には、その同軸上に円板状のクランクパルサが固定されており、そのクランクパルサの外周には、クランク軸の所定回転角度毎(本実施形態では15°CA毎)に複数の突起が形成されている。そして、その複数の突起のうち、特定気筒、例えば第1気筒(#1)及び第6気筒(#6)の上死点(TDC)付近においては1個分の突起が削除されており、その部分が、いわゆる欠歯部となっている。従って、クランクパルサには、合計23個の突起が形成されていることになる。
また、クランクパルサの外周近傍には電磁ピックアップコイルが配設されており、その電磁ピックアップコイルは上記突起が通過する度にパルス信号を発生する。そして、これらクランクパルサ及び電磁ピックアップコイルにより、クランクセンサ35が構成されている。
一方、カム軸は、クランク軸の回転に同期して、クランク軸の2回転に1回転の割合で回転する。そして、カム軸には、その同軸上に円板状のカムパルサが固定されており、そのカムパルサの外周には、気筒数分の突起が等角度間隔で形成されている。本実施形態では6気筒エンジンを対象としており、カムパルサの外周に60度毎(クランク角では120°CA毎)に突起が設けられている。また、その突起は、例えば各気筒のTDC前45°CAの位置に形成されている。更に、カムパルサの外周には、第1気筒のTDCに対応する突起の直前に(本実施形態では、第1気筒のTDC前75°CAの位置に)余分歯が形成されている。
また、カムパルサの外周近傍には電磁ピックアップコイルが配設されており、その電磁ピックアップコイルは上記突起及び余分歯が通過する度にパルス信号を発生する。そして、これらカムパルサ及び電磁ピックアップコイルにより、カムセンサ37が構成されている。
次に、図2は、波形整形後のクランク信号及びカム信号の信号形態を示すタイムチャートである。
図2に示すように、各気筒の燃焼順序は1→5→3→6→2→4であり、このうち第1気筒のTDC(#1TDC)と第6気筒のTDC(#6TDC)とは、360°CA離れた表裏の関係にある。
そして、クランク信号は、15°CA間隔のパルス列にて構成され、#1TDCの直前と#6TDCの直前とにおいては、クランクパルサの欠歯部によりパルスが1つ欠落して、有効エッジ(本実施形態では立ち上がりエッジ)の間隔が2倍となる。このパルスが欠落した信号の部分は、欠歯と呼ばれ、更に、#1TDCに対応する欠歯を「表欠歯」とすると、#6TDCに対応する欠歯は「裏欠歯」と呼ばれる。
また、一般に、こうしたクランク信号における欠歯を検出することは、欠歯検出と呼ばれ、例えば以下の手順で行われる。
即ち、欠歯検出の手法としては、クランク信号に有効エッジが生じる毎に、その有効エッジの間隔を計測し、今回の計測値が前回の計測値の所定数(>1)倍よりも大きければ、今回の有効エッジが欠歯の終了を示す有効エッジ(欠歯の終了エッジであり、図2におけるNE0)であると判断する。
尚、本実施形態では、#1TDCの22.5°CA前と、#6TDCの22.5°CA前との各タイミングで、欠歯の終了エッジNE0が発生する。
一方、カム信号は120°CA間隔のパルス列にて構成され、その途中に前述の余分歯に対応する余分歯パルスが発生する。この例では、#1TDCに対応するカムパルス(図2におけるG0)の直前に余分歯パルスが発生する。この余分歯パルスの発生は720°CAに1回である。
尚、本実施形態では、各気筒のTDC前30°CAのタイミングで、120°CA間隔のパルスの有効エッジ(本実施形態では立ち上がりエッジ)が発生する。そして、#1TDC前60°CAのタイミングで、余分歯パルスの有効エッジが発生する。
このため、クランク信号における欠歯を検出した際(図2におけるNE0を検出した際)に、その直前の所定クランク角度分の区間(例えば、図2におけるNE0より前の60°CA分の区間)で余分歯パルスが発生したか否かを判別することにより、今回の欠歯が#1TDCの欠歯(表欠歯)か#6TDCの欠歯(裏欠歯)かを特定することができる。つまり、気筒判別を行うことができる。
具体的な気筒判別手法としては、クランク信号における欠歯の終了エッジNE0を検出した際に、その直前の所定クランク角度分の区間において、カム信号に有効エッジが2回発生していたならば、今回の欠歯が#1TDCの欠歯(表欠歯)あると判別することができ、現在のクランク軸の回転位置(以下、クランク位置という)は#1TDCの22.5°CA前であると特定することができる。また、クランク信号における欠歯の終了エッジNE0を検出した際に、その直前の所定クランク角度分の区間において、カム信号に有効エッジが1回のみ発生していたならば、今回の欠歯が#6TDCの欠歯(裏欠歯)であると判別することができ、現在のクランク位置は#6TDCの22.5°CA前であると特定することができる。
一方、本実施形態において、スタータスイッチ33は、押しているときにだけオンするプッシュボタン式のスイッチである。
また更に、ECU1には、マイコン11からの信号に従って、スタータリレー7以外のインジェクタ(燃料噴射弁)や点火装置などの各種アクチュエータを作動させる駆動回路21と、後述するメインリレー49を介してECU1に供給されるバッテリ電圧からマイコン11が動作するための一定の電源電圧(例えば5V)を生成して出力する電源回路23と、マイコン11が車両内に配設されたLAN用の通信線51を介して他の車載ECUと通信するための通信回路25とが備えられている。
尚、図示は省略しているが、インジェクタと点火装置はエンジンの各気筒毎に設けられている。そして、駆動回路21は、実際には各アクチュエータ毎に存在している。また、本実施形態において、通信線51を介して行われる車載ECU間の通信のプロトコルはCANであるが、それに限るものではない。
次に、ECU1の外部には、給電用のメインリレー49が設けられており、イグニッションスイッチ31がオンされると、そのメインリレー49がオンして、ECU1の電源回路23にバッテリ電圧が供給されるようになっている。そして、ECU1では、そのメインリレー49からのバッテリ電圧をもとにして、電源回路23がマイコン11へ電源電圧を供給する。更に、メインリレー49は、マイコン11が駆動回路21を介してオン/オフさせることもできるようになっている。そして、マイコン11は、イグニッションスイッチ31のオンに伴いメインリレー49がオンして動作を開始すると、自らもメインリレー49をオンさせることで、その後、イグニッションスイッチ31がオフされても動作を継続し、必要な処理を全て終了したならば、メインリレー49をオフさせて、動作を停止するようになっている。
また、ECU1において、メインリレー49からのバッテリ電圧は、入力回路19を介してマイコン11のA/D変換器用の入力ポートに入力されるようになっている。よって、マイコン11は、その入力ポートへの入力電圧をA/D変換することで、バッテリ電圧を検出することができる。
一方、車両内の通信線51には、ECU1以外のECUとして、車両の使用者に携帯される携帯機としての電子キー52と無線通信を行うイモビライザECU53、自動変速機を制御するトランスミッションECU55、及びブレーキを制御するブレーキECU57などが接続されている。そして、通信線51に接続された各ECU1,53,55,57は、互いに通信を行って、各自の制御対象を制御するための情報をやり取りする。
尚、ブレーキペダルセンサ45からの信号や、シフトポジションセンサ47からの信号や、車速センサ48からの信号は、ECU1以外のECU(例えば、トランスミッションECU55やブレーキECU57)にも入力されている。そして、ECU1は、ブレーキペダルが操作されているか否か及びブレーキペダルの操作量や、自動変速機のギア位置や、車速などの情報は、通信線51に接続された他のECUからも入手可能となっている。
また、イモビライザECU53は、例えば車両のドアロックが解除されて運転席ドアが閉→開→閉と変化したこと等、運転席に人が乗り込んだと考えられる条件が成立すると、車室内における運転席付近の領域に、電子キー52へIDを要求するための要求信号を送信する。そして、運転席に座った人(即ち、車両を運転しようとしている人であり、車両の使用者)に所持されている電子キー52が上記要求信号を受信してIDを送信すると、イモビライザECU53は、その電子キー52からのIDを受信して、その受信したIDと自装置が記憶しているID(即ち、自車両のID)とを比較し、両IDが一致してれいば認証合格と判断する。
そして、ECU1のマイコン11は、動作を開始すると、イモビライザECU53と通信線51を介して認証用通信としての暗号通信を行うことにより、電子キー52との認証が合格であるか否か(即ち、電子キー52からのIDと自車両のIDとが一致したか否かであり、運転席の使用者が正当な使用者であるか否か)を判定する。
例えば、イモビライザECU53は、認証合格となった場合には、ECU1からの特定のコードに対して、予め定められた規則の処理を施した結果のコードを返送するようになっている。そして、ECU1のマイコン11は、イモビライザECU53へ特定のコードを送信し、そのコードに対して期待通りのコードが返送されて来る、といったやり取りからなる認証用通信が成功したならば、認証が合格である(使用者が正当な使用者である)と判定する。
次に、ECU1のマイコン11が実行する処理について、図3〜図7を用い説明する。
まず図3は、マイコン11が一定時間毎に実行するスタータ駆動リクエスト制御処理を表すフローチャートである。尚、このスタータ駆動リクエスト制御処理は、オートスタートを行うか否かを判断するための処理である。
図2に示すように、マイコン11がスタータ駆動リクエスト制御処理の実行を開始すると、まずS110にて、イグニッションスイッチ31がオンされているか否かを、イグニッションスイッチ信号のレベルに基づき判定し、イグニッションスイッチ31がオンされていれば(S110:YES)、次のS120にて、スタータスイッチ信号のレベルに基づきスタータスイッチ33がオンされたか否かを判定する。尚、このS120では、スタータスイッチ信号のレベルが所定時間以上、オンを示す方のレベル(本実施形態ではハイ)であったならば、スタータスイッチ33がオンされたと判定する。ノイズによる誤検出を防止するためである。また、他の手法として、例えば、スタータスイッチ信号のレベルを一定時間毎に読み取った結果が、2以上の所定回連続してハイならば、スタータスイッチ33がオンされたと判定するようにしても良い。
上記S120にてスタータスイッチ33がオンされたと判定しなかった場合には(S120:NO)、そのまま当該スタータ駆動リクエスト制御処理を終了するが、スタータスイッチ33がオンされたと判定した場合には(S120:YES)、S130に進み、「スタータスイッチ33がオンされた」という条件以外の他の始動実施条件が成立しているか否かを判定する。例えば、自動変速機のギア位置がN(ニュートラル)又はP(パーキング)の位置であり、ブレーキペダルが踏まれており、車速が所定値(例えば0)以下である、といった条件が成立しているか否かを判定する。尚、ギア位置とブレーキペダルの操作状態と車速との各々は、シフトポジションセンサ47、ブレーキペダルセンサ45、及び車速センサ48からの各信号に基づいて検出することができる。また、それらの情報は、他のECUから通信線51を介して取得することもできる。
そして、このS130にて、他の始動実施条件が成立していると判定した場合には、S140に進み、後述する図4の処理に対してスタータリレー7の駆動(延いては、スタータモータ3の駆動)を要求するスタートリクエストフラグを、要求側の1に設定し、その後、当該スタータ駆動リクエスト制御処理を終了する。尚、スタートリクエストフラグの初期値は非要求側の0である。
一方、上記S110でイグニッションスイッチ31がオンされていないと判定するか(S110:NO)、上記S130で他の始動実施条件が成立していないと判定した(S130:NO)場合には、S150へ移行して、スタートリクエストフラグを、非要求側の0に設定し、その後、当該スタータ駆動リクエスト制御処理を終了する。
次に図4は、マイコン11が図3の処理と並行して一定時間毎に実行するスタータリレー駆動制御処理を表すフローチャートである。尚、このスタータリレー駆動制御処理は、スタータモータ3の駆動の要否を判断してスタータリレー7を制御する処理である。
図4に示すように、マイコン11がスタータリレー駆動制御処理の実行を開始すると、まずS210にて、イグニッションスイッチ31がオンされているか否かを判定し、イグニッションスイッチ31がオンされていると肯定判定したならば、S212に進む。
S212では、後述するS280でスタータリレー7のオンを開始してから(つまり、エンジンのクランキングを開始してから)気筒判別が完了しているか否かを判定する。
ここで、マイコン11が気筒判別のために実行する処理について図5及び図6を用い説明する。
図5に示すように、マイコン11は、スタータリレー7をオンさせてエンジンをクランキングさせると、そのクランキングに伴い図2の如くレベル変化するクランク信号とカム信号との両方に基づき気筒判別を行う処理(以下、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理という)を実行する(S310)。
尚、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理の内容は、図2を用いて既述した通りである。つまり、クランク信号について欠歯検出を行うと共に、クランク信号における欠歯の終了エッジNE0を検出した際に、その直前の所定クランク角度分(例えば60°CA分)の区間において、カム信号に有効エッジが2回発生していたならば、現在のクランク位置が#1TDCの22.5°CA前であると特定し、また、欠歯の終了エッジNE0を検出した際に、その直前の所定クランク角度分の区間において、カム信号に有効エッジが1回のみ発生していたならば、現在のクランク位置が#6TDCの22.5°CA前であると特定する。
また、マイコン11は、図6に示す異常検出処理を一定時間毎に実行しており、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理による気筒判別(即ち、クランク信号の欠歯位置でのクランク位置特定)が未だ完了していない場合に(S320:NO)、その異常検出処理の判定結果を参照することにより、クランク信号が正常に入力されているか否かを判定すると共に(S340)、カム信号が正常に入力されているか否かを判定する(S350)。
尚、図6に示すように、異常検出処理では、クランク信号の有効エッジ(以下、クランクエッジともいう)が発生しない継続時間を計測し、その継続時間が所定値以上でなければ(S410:NO)、クランク信号は正常であると判定するが(S420)、クランクエッジの発生しない継続時間が所定値以上になれば(S410:YES)、クランク信号は異常である(即ち、クランク信号が正常に入力されていない)と判定する(S430)。同様に、カム信号の有効エッジ(以下、カムエッジともいう)が発生しない継続時間を計測し、その継続時間が所定値以上でなければ(S440:NO)、カム信号は正常であると判定するが(S450)、カムエッジの発生しない継続時間が所定値以上になれば(S440:YES)、カム信号は異常である(即ち、カム信号が正常に入力されていない)と判定する(S460)。また、こうした異常検出処理は、例えば特許文献1の図5にも記載されている。
図5に戻り、マイコン11は、クランク信号とカム信号が正常に入力されていると判定している場合には(S340:NO,S350:NO)、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理を引き続き実行する(S310)。
そして、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理による気筒判別が完了したならば(S320:YES)、気筒判別完了フラグを1に設定する(S330)。
尚、マイコン11は、カウント値が現在のクランク位置を表すクランクカウンタを備えており、クランク位置が特定できたならば、クランクカウンタの値を、その特定したクランク位置に該当する値に設定する。そして、その後は、例えば、クランクエッジが発生する毎にクランクカウンタの値を15°CA分ずつ更新していくといった手法や、クランクエッジの最新の時間間隔を「1/n」した時間(nは整数)毎にクランクカウンタの値を「15/n」°CA分ずつ更新していくといった手法により、最新のクランク位置を把握する。更に、そのクランクカウンタの値に基づいて、各気筒に対する燃料噴射及び点火を実施する。
一方、マイコン11は、クランク信号とカム信号とのうち、クランク信号が正常に入力されていない(異常である)と判定した場合には(S340:YES)、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理に代えて、カム信号のみに基づき気筒判別を行う処理(以下、カム信号のみに基づく気筒判別処理という)を実行する(S360)。
カム信号のみに基づく気筒判別処理は、以下の手順で行われる。
まず、カム信号に有効エッジ(カムエッジ)が生じる毎に、そのカムエッジの間隔を計測する。そして、今回の計測値が前回の計測値の所定数(<1)倍よりも小さければ、今回のカムエッジが余分歯パルスの直後のカムエッジ(図2におけるG0)であると判断し、現在のクランク位置は#1TDCの30°CA前であると特定する。
そして、このようなカム信号のみに基づく気筒判別処理によってクランク位置が特定できたなら(S370:YES)、気筒判別完了フラグを1に設定する(S330)。
尚、こうしたカム信号のみに基づく気筒判別の手法は、例えば特許文献1の図4に記載されている。また、マイコン11は、カム信号のみに基づく気筒判別処理によってクランク位置を特定した場合、例えば、最新のカムエッジの時間間隔を「1/m」した時間(mは整数)毎にクランクカウンタの値を「120/m」°CA分ずつ更新していくといった手法により、最新のクランク位置を把握し、そのクランクカウンタの値に基づいて、各気筒に対する燃料噴射及び点火を実施する。この場合、クランク信号は正常に入力されないからである。
また、マイコン11は、クランク信号とカム信号とのうち、カム信号が正常に入力されておらず異常であると判定した場合には(S350:YES)、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理に代えて、クランク信号のみに基づき気筒判別を行う処理(以下、クランク信号のみに基づく気筒判別処理という)を実行する(S380)。
クランク信号のみに基づく気筒判別処理は、以下の手順で行われる。
まず、クランク信号について欠歯検出を行う。そして、クランク信号における欠歯の終了エッジNE0を検出した際に、現在のクランク位置が、#1TDCの22.5°CA前と、#6TDCの22.5°CA前とのうち、例えば#1TDCの22.5°CA前であると仮の特定をする。そして、マイコン11は、その仮特定の結果に基づいて、各気筒に対する燃料噴射と点火を実施する。
より具体的には、クランク信号における欠歯の終了エッジNE0を検出した際に、クランクカウンタの値を、#1TDCの22.5°CA前に相当する値に仮設定する。そして、その後は、正常時と同様に、クランクエッジが発生する毎や、クランクエッジの最新の時間間隔を「1/n」した時間毎にクランクカウンタの値を更新していくと共に、そのクランクカウンタの値に基づいて各気筒に対する燃料噴射及び点火を実施する。
そして更に、気筒判別結果検証用の一定時間後(例えば2秒後)にエンジン回転数が所定回転数(例えば400rpm)を越えたか否かを判定する。ここで、エンジン回転数が所定回転数を超えたならば、上記仮特定が正しかったということから、その仮特定の結果に基づき現在把握しているクランク位置(即ち、現在のクランクカウンタの値)は真の値であるとし、この時点で気筒判別が完了する。また、エンジン回転数が所定回転数を超えなかったならば、上記仮特定が正しくなかった(即ち、表裏が逆であった)ということから、その仮特定の結果に基づき現在把握しているクランク位置を360°CAだけずらし(即ち、現在のクランクカウンタの値を360°CA分だけずらした値に変更し)、この時点で気筒判別が完了する。尚、この場合、エンジン回転数は、クランクエッジの発生間隔から算出する。また、こうしたクランク信号のみに基づく気筒判別の手法は、例えば特許文献1の図3に記載されている。
そして、このようなクランク信号のみに基づく気筒判別処理によってクランク位置が特定できたなら(S390:YES)、気筒判別完了フラグを1に設定する(S330)。
以上のことから、図4のS212では、気筒判別完了フラグを参照して、その気筒判別完了フラグが1であれば、気筒判別が完了していると判定する。
図4に戻り、上記S212にて、気筒判別が完了していないと判定した場合には、S214に進み、スタータリレー7をオンさせる継続時間(以下、スタータリレーオン時間という)の最大値であって、後述するS230の判定で用いられる制限時間Tmaxを、デフォルト値に設定し、その後、S230へ進む。尚、このデフォルト値は、クランク信号とカム信号との何れかが正常に入力されずに、カム信号のみに基づく気筒判別処理とクランク信号のみに基づく気筒判別処理との何れかによって気筒判別が行われる場合でも、エンジンを確実に始動させる(運転状態へと移行させる)ことが可能なスタータリレーオン時間よりも十分長い時間に設定されており、後述するS222とS224との各々で設定される制限時間Tmaxの値よりも長い時間である。
また、上記S212にて、気筒判別が完了していると判定した場合には、S220に移行して、前述した図6の異常検出処理によりクランク信号とカム信号との何れかの異常が検出されているか否かを判定する。
そして、異常検出処理により異常が検出されていない場合には(S220:NO)、S222に進んで、エンジンの冷却水温を検出すると共に、その検出値に対応する制限時間Tmaxを信号正常時用のデータテーブルに基づき算出し、その算出値を、後述するS230の判定で用いられる制限時間Tmaxとして設定する。そして、その後、S230へ進む。
ここで、信号正常時用のデータテーブルは、図7の一点鎖線で示すように、冷却水温と制限時間Tmaxとを対応付けて記録したものであり、マイコン11内のROM等の不揮発性メモリに予め記憶されている。よって、マイコン11は、冷却水温の検出値を信号正常時用のデータテーブルに当てはめることで、制限時間Tmaxを算出することができる。また、信号正常時用のデータテーブルは、冷却水温が低いほど、制限時間Tmaxが長い時間に算出されるように設定されている。これは、冷却水温が低い場合ほど、エンジンが始動し難い(エンジンの始動性が低い)と考えられるからである。更に、信号正常時用のデータテーブルは、信号正常時の始動所要時間よりも、制限時間Tmaxが長い時間に算出されるように設定されている。尚、信号正常時の始動所要時間とは、スタータリレー7(スタータモータ3)の駆動開始時から、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理により気筒判別が完了して、その気筒判別結果に基づく燃料噴射及び点火の実施によりエンジンが運転状態になるまでの、理論上又は実験上の最大時間である。
また、上記S220にて、異常検出処理によりクランク信号とカム信号との何れかの異常が検出されていると判定した場合には(S220:YES)、S224に移行して、エンジンの冷却水温を検出すると共に、その検出値に対応する制限時間Tmaxを、信号異常時用のデータテーブルに基づき算出し、その算出値を、後述するS230の判定で用いられる制限時間Tmaxとして設定する。そして、その後、S230へ進む。
ここで、信号異常時用のデータテーブルも、図7の二点鎖線で示すように、冷却水温と制限時間Tmaxとを対応付けて記録したものであり、マイコン11内のROM等の不揮発性メモリに予め記憶されている。また、信号異常時用のデータテーブルも、冷却水温が低いほど、制限時間Tmaxが長い時間に算出されるように設定されている。
但し、信号異常時用のデータテーブルは、信号正常時用のデータテーブルよりも、冷却水温が同じであれば、制限時間Tmaxが長い時間に算出されるように設定されている。
より詳しく説明すると、図7における実線は、クランク信号とカム信号との何れかが異常である場合において、スタータリレー7(スタータモータ3)の駆動開始時から、カム信号のみに基づく気筒判別処理とクランク信号のみに基づく気筒判別処理との何れかによって気筒判別が完了して、その気筒判別結果に基づく燃料噴射及び点火の実施によりエンジンが運転状態になるまでの理論上又は実験上の最大時間(以下、信号異常時の始動所要時間という)Tsを示している。そして、信号正常時用のデータテーブルは、信号異常時の始動所要時間Tsよりも制限時間Tmaxが短い時間に算出されるように設定されているが、信号異常時用のデータテーブルは、信号異常時の始動所要時間Tsよりも制限時間Tmaxが長い時間に算出されるように設定されている。
尚、この例では、冷却水温に応じて制限時間Tmaxを算出するようにしているが、図7における横軸下の()内に示すように、冷却水温に代えて、例えば、油温(エンジンオイルの温度)と、車両の外気温と、エンジンの吸気温(吸入空気の温度)と、バッテリ電圧との、何れかの検出値に応じて、制限時間Tmaxを算出するようにしても良い。この場合、信号正常時用のデータテーブルと信号異常時用のデータテーブルは、上記各温度又はバッテリ電圧の値が低い場合ほど、制限時間Tmaxが長い時間に算出されるように設定すれば良い。また、冷却水温、油温、外気温、吸気温、及びバッテリ電圧のうちの2つ以上に応じて、制限時間Tmaxを算出するようにしても良い。
次に、S230では、現在のスタータリレーオン時間(スタータリレー7をオンさせている継続時間)が、S214とS222とS224との何れかで設定された制限時間Tmax未満であるか否かを判定する。尚、スタータリレーオン時間は、後述するS280でスタータリレー7のオンを開始した際に起動されるタイマの値によって把握される。
そして、このS230にて、スタータリレーオン時間が制限時間Tmax未満であると肯定判定したならば、次のS240にて、エンジン回転数が、エンジンが完爆状態になったと考えられる所定回転数(例えば、700rpm)未満であるか否かを判定し、エンジン回転数が所定回転数未満であると肯定判定したならば、S245に進む。尚、図6の異常検出処理によりクランク信号が正常と判定されている場合には、エンジン回転数は、クランクエッジの発生間隔から算出するが、図6の異常検出処理によりクランク信号が異常と判定されている場合には、エンジン回転数は、カムエッジの発生間隔から算出する。
S245では、前述したイモビライザECU53との認証用通信により認証が合格であると判定したか否か(即ち、イモビライザECU53との認証用通信が成功したか否か)を判定し、認証が合格であると肯定判定したならば、S250に進む。尚、認証が合格であることは、始動実施条件の1つである。
S250では、自動変速機のギア位置がN(ニュートラル)又はP(パーキング)の位置であるか否かを判定する。
そして、上記S250にて、ギア位置がN又はPの位置であると肯定判定したならば、次のS260にて、車速が所定値(例えば0)以下であるか否かを判定し、車速が所定値以下であると肯定判定したならば、S270へ進む。
S270では、スタートリクエストフラグが1であるか否かを判定し、スタートリクエストフラグが1であれば、S280に進んで、スタータリレー駆動回路13へのスタータリレー駆動信号をアクティブレベルにすることによりスタータリレー7をオンさせる。また、このS280にて、スタータリレー7を最初にオンさせたとき(オフからオンに変化させたとき)には、スタータリレーオン時間を計測するためのタイマを起動する。そして、その後、当該スタータリレー駆動制御処理を終了する。
また、上記S270にて、スタートリクエストフラグが1ではないと判定した場合には、S290へ移行して、上記スタータリレー駆動信号を非アクティブレベルにすることによりスタータリレー7をオフさせると共に、スタータリレーオン時間を計測するためのタイマをリセット状態で停止させる。そして、その後、当該スタータリレー駆動制御処理を終了する。
一方、上記S210,S230〜S260の何れかで“NO”と否定判定した場合には、S285へ移行して、スタートリクエストフラグを0に初期化する処理を行い、その後、上記S290の処理を行った後、当該スタータリレー駆動制御処理を終了する。
尚、S230で“NO”と否定判定した場合(即ち、スタータリレーオン時間が制限時間Tmaxに達したと判定した場合に)、S285及びS290の処理を行うようにしているのは、スタータリレーオン時間が制限時間Tmaxに達したならば、たとえエンジンが運転状態に至ってなくてもスタータモータ3の駆動を強制的に禁止するためであり、入力条件などの何らかの異常によってスタータモータ3が不要に駆動し続けられてしまうことを防止すると共に、スタータモータ3の長時間の駆動によってバッテリ上がりやバッテリ劣化が発生するのを防止するためである。
次に、以上のようなECU1の作用及び効果について、図8,図9のタイムチャートを用い説明する。尚、図8は、クランク信号とカム信号とが正常に入力される場合を示し、図9は、クランク信号とカム信号との何れかが正常に入力されない場合を示している。
まず、図8に示すように、イグニッションスイッチ31がオンされると、ECU1にてマイコン11が動作を開始し、その後、スタータスイッチ33がオンされて、そのスタータスイッチ33のオンを検知した場合に(S120:YES)、図3のS130で判定される条件が更に成立していれば、スタートリクエストフラグが1に設定される(S140)。そして更に、図4のS240〜S260で判定される各条件が全て“YES”側に成立していれば、スタータリレー7がオンされ(S280)、スタータモータ3が作動してエンジンのクランキングが開始される。また、このとき、スタータリレーオン時間を計測するためのタイマが起動される(S280)。尚、スタータリレー7がオンされる前の段階において、図4のS230の判定で用いられる制限時間Tmaxは、図4のS214により前述のデフォルト値に設定されているため、図4のS230では必ず“YES”側に肯定判定されることとなる。
ここで、クランク信号とカム信号とが正常に入力可能な正常時において、エンジンのクランキングが開始されると、マイコン11は、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理(S310)によって気筒判別を行い、気筒判別が完了したならば(クランク位置が特定できたならば)、エンジンの各気筒に対する燃料噴射及び点火を開始する。
そして、その後、エンジン回転数が所定回転数以上になると(S240:NO)、マイコン11は、エンジンが運転状態(完爆状態)になったと判断して、スタートリクエストフラグを0に初期化すると共に、スタータリレー7をオフしてスタータモータ3を停止させることとなる(S285,S290)。
また、気筒判別が完了すると、この場合には、クランク信号とカム信号とが正常に入力されているため、図4のS222により、制限時間Tmaxが、それまでのデフォルト値から、信号正常時用のデータテーブルに基づき算出される値(<デフォルト値)に変更されるが、その変更される値は、信号正常時の始動所要時間よりも長いため、エンジンが運転状態となる前に(図4のS240で“NO”と否定判定される前に)、図4のS230で“NO”と判定されてスタータリレー7が強制的にオフされてしまうことはない。
一方、クランク信号とカム信号との何れかが正常に入力されない異常が発生している場合には、エンジンのクランキングが開始されると、マイコン11は、カム信号のみに基づく気筒判別処理とクランク信号のみに基づく気筒判別処理との何れかによって気筒判別を行うこととなるが、その場合には、気筒判別のための情報が少なくなるため、スタータリレー7のオン開始時から気筒判別が完了するまでの最大時間が正常時よりも長くなる。
具体的には、正常時におけるクランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理では、クランク信号に欠歯が現れた時点で気筒判別ができるため、クランキングの開始時から気筒判別の完了までが、最大でも360°CA分の時間となるのに対して、カム信号のみに基づく気筒判別処理では、気筒判別の完了までに最大で720°CA分の時間がかかり、また、クランク信号のみに基づく気筒判別処理では、気筒判別の完了までに最大で「360°CA分の時間+気筒判別結果検証用の一定時間」だけかかる。
このため、クランク信号とカム信号との何れかが正常に入力されない場合には、スタータモータ3の駆動開始時からエンジンが運転状態になるまでの最大時間が、正常時より長くなる。
よって、もし、図4のS230の判定で用いられる制限時間Tmaxを、正常時の値(クランク信号とカム信号とが正常に入力される場合の値)と同じ値に設定したとすると、スタータモータ3の駆動開始時からエンジンが運転状態になる前に、図4のS230で“NO”と判定されてスタータモータ3の駆動が強制的に禁止されてしまう懸念が生じる。
そこで、本実施形態のECU1では、クランク信号とカム信号との何れかが異常であると判定した場合には(S220:YES)、図4のS230の判定で用いられる制限時間Tmaxを、信号異常時用のデータテーブルに基づき算出することにより、正常時の値よりも長く、更に信号異常時の始動所要時間Tsよりも長い時間に設定するようになっている(S224)。
このため、図9に示すように、クランク信号とカム信号との何れかが正常に入力されない異常が発生して、スタータモータ3の駆動開始時からエンジンが運転状態になるまでの時間が長くなっても、図4のS240で“NO”と否定判定される前に、スタータリレーオン時間が制限時間Tmaxに達してしまうことを回避することができる。よって、エンジンが運転状態となる前に、図4のS230で“NO”と判定されてスタータモータ3の駆動が強制的に禁止されてしまうことがなく、エンジンを確実に始動させることができるようになる。尚、図9における点線は、図8に示した正常時の状態を参考のために示したものである。
また、本実施形態のECU1では、気筒判別が完了するまでは、制限時間Tmaxを、予め定められた初期値であるデフォルト値に設定しておき(S212:NO,S214)、気筒判別が完了した時点で(S212:YES)、クランク信号とカム信号との異常を検出していなければ(つまり、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理によって気筒判別をした場合には)、制限時間Tmaxをデフォルト値よりも短い正常時の設定時間に設定し直し(S220:NO,S222)、また、クランク信号とカム信号との何れかの異常を検出していたならば(つまり、カム信号のみに基づく気筒判別処理とクランク信号のみに基づく気筒判別処理との何れかによって気筒判別をした場合には)、制限時間Tmaxをデフォルト値よりも短く且つ正常時の設定時間よりも長い時間に設定し直す(S220:YES,S224)ようにしている。つまり、制限時間Tmaxを、気筒判別が完了するまでは、十分に長いデフォルト値に設定しておき、気筒判別が完了した時点で、そのデフォルト値よりも短い必要に応じた時間に設定し直すようにしている。
このため、クランク信号及びカム信号が正常な場合と、クランク信号及びカム信号のうちの何れかが異常な場合とでの、制限時間Tmaxの切り替え設定を、確実に実施することができる。気筒判別が完了した時点では、異常検出結果(異常検出処理の判定結果)が確定しており、その時点で、制限時間Tmaxの切り替え設定を行うからである。
また更に、本実施形態のECU1では、図7に示したように、制限時間Tmaxを、エンジンの始動性に関係する情報(冷却水温や油温や外気温や吸気温やバッテリ電圧)の検出値に応じて設定するようにしているため、その制限時間Tmaxを常に最適な値にすることができる。
尚、上記第1実施形態では、図5・S310のクランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理が第1の気筒判別手段に相当し、図6の異常検出処理が異常検出手段に相当し、図5・S360のカム信号のみに基づく気筒判別処理と図5・S380のクランク信号のみに基づく気筒判別処理とが第2の気筒判別手段に相当している。また、図3のスタータ駆動リクエスト制御処理と図4・S210,S240〜S290の処理とが自動始動制御手段に相当し、図4・S280でタイマを起動する処理と図4・S230の処理とが駆動時間制限手段に相当している。そして、図4・S212〜S224の処理が制限時間設定手段に相当している。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のエンジンECUについて説明する。尚、第2実施形態のエンジンECUは、第1実施形態のエンジンECU1とハードウェア構成は同じであるため、以下の説明において、構成要素の符号は第1実施形態と同じものを用いる。また、このことは、後述する他の実施形態についても同様である。
第2実施形態のECU1は、第1実施形態と比較すると、マイコン11の不揮発性メモリに信号異常時用のデータテーブルが記憶されていない点と、マイコン11が、図4の処理に代えて、図10のスタータリレー駆動制御処理を実行する点とが異なっている。
そして、図10のスタータリレー駆動制御処理は、図4の処理と比較すると、S224の代わりに、S226とS228の処理を行う点が異なっている。
即ち、第2実施形態のスタータリレー駆動制御処理では、S220にて、異常検出処理によりクランク信号とカム信号との何れかの異常が検出されていると判定した場合には、S226に移行する。そして、S226では、S222と同様に、エンジンの冷却水温を検出すると共に、その検出値に対応する制限時間Tmaxを信号正常時用のデータテーブルに基づき算出する。次に、S228にて、上記S226で算出した制限時間Tmaxの値に所定値a(>0)を加え、その加算後の値を、S230の判定で用いられる制限時間Tmaxとして設定する。そして、その後、S230へ進む。
尚、上記所定値aは、上記加算後の値が、図7に示した信号異常時の始動所要時間Tsよりも長くなる値に設定されている。また、本第2実施形態では、図10・S212〜S228の処理が制限時間設定手段に相当している。
そして、以上のような第2実施形態のエンジンECU1によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
ところで、S228では、上記S226で算出した制限時間Tmaxの値に1よりも大きい所定値bを乗じ、その乗算後の値(即ち、S226での算出値を所定割合だけ長くした値)を、S230の判定で用いられる制限時間Tmaxとして設定するようにしても良い。そして、この場合にも、上記所定値bは、上記乗算後の値が信号異常時の始動所要時間Tsよりも長くなる値に設定しておけば良い。
一方、第1実施形態でも述べたように、S226では、冷却水温に代えて、例えば、油温と外気温と吸気温とバッテリ電圧との何れかの検出値に応じて、制限時間Tmaxを算出するようにしても良く、また、冷却水温、油温、外気温、吸気温、及びバッテリ電圧のうちの2つ以上に応じて制限時間Tmaxを算出するようにしても良い。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のエンジンECUについて説明する。
第3実施形態のECU1では、第1実施形態と比較すると、マイコン11の不揮発性メモリに、信号異常時用のデータテーブルが記憶されておらず、その代わりに、信号異常時の始動所要時間Tsを算出するためのデータテーブル(以下、異常時始動所要時間算出用データテーブルという)が記憶されている。尚、その異常時始動所要時間算出用データテーブルは、図7における実線のように、冷却水温と信号異常時の始動所要時間Tsとを対応付けて記録したものである。
また、第3実施形態のECU1では、マイコン11が、図4の処理に代えて、図11のスタータリレー駆動制御処理を実行する。
そして、図11のスタータリレー駆動制御処理は、図4の処理と比較すると、S220〜S224の処理が削除されている点と、S214の代わりに、S215〜S218の処理を行う点とが異なっている。
即ち、第3実施形態のスタータリレー駆動制御処理では、S212にて、気筒判別が完了していないと判定した場合には、S215に進む。
そして、S215では、図4のS222と同様に、エンジンの冷却水温を検出すると共に、その検出値に対応する制限時間Tmaxを信号正常時用のデータテーブルに基づき算出する。
次に、S216にて、冷却水温の検出値に対応する信号異常時の始動所要時間Tsを、異常時始動所要時間算出用データテーブルに基づき算出する。
そして、続くS217にて、S215で算出した制限時間Tmaxが、S216で算出した信号異常時の始動所要時間Tsよりも大きいか否かを判定し、「Tmax>Ts」ならば(S217:YES)、S215で算出した制限時間Tmaxを、S230の判定で用いられる制限時間Tmaxとしてそのまま設定する。そして、その後、S230へ移行する。
一方、上記S217にて、「Tmax>Ts」ではないと判定した場合には、S218に進み、S216で算出した信号異常時の始動所要時間Tsに所定値c(>0)を加算し、その加算後の値を、S230の判定で用いられる制限時間Tmaxとして設定する。そして、その後、S230に進む。
また、S212にて気筒判別が完了していると判定した場合には、そのままS230へ移行する。そして、気筒判別が完了してからのS230では、上記S215〜S218の処理によって最終的に設定された制限時間Tmaxを判定に用いることとなる。
つまり、第3実施形態のスタータリレー駆動制御処理では、冷却水温に基づき算出した正常時用の制限時間Tmaxと、同じく冷却水温に基づき算出した信号異常時の始動所要時間Tsとを大小比較して、「Tmax>Ts」でなければ、算出した制限時間Tmaxに代えて、算出した信号異常時の始動所要時間Tsよりも長い時間(=Ts+c)を、S230の判定で用いられる制限時間Tmaxとして設定するようにしている。よって、S230の判定で用いられる制限時間Tmaxは、信号異常時の始動所要時間Tsよりも常に長い時間に設定されることとなる。
このため、本第3実施形態のECU1によっても、クランク信号とカム信号との何れかが正常に入力されない異常が発生している場合に、エンジンが運転状態となる前にS230で“NO”と判定されてスタータモータ3の駆動が強制停止されてしまうことを確実に回避することができる。
また、本第3実施形態によれば、S215の処理を設けた構成に対して、S216〜S218の処理を加えるだけで、「S230の判定で用いられる制限時間Tmax>信号異常時の始動所要時間Ts」という条件を満たすようにすることができる。
尚、S215とS216との各々では、制限時間Tmaxと信号異常時の始動所要時間Tsとを、図7における横軸下の()内に示すように、冷却水温に代えて、例えば、油温と外気温と吸気温とバッテリ電圧との何れかの検出値に応じて、算出するようにしても良い。また、冷却水温、油温、外気温、吸気温、及びバッテリ電圧のうちの2つ以上に応じて、制限時間Tmaxと信号異常時の始動所要時間Tsとを算出するようにしても良い。
一方、本第3実施形態では、S215の処理が制限時間算出手段に相当し、S216の処理が異常時始動所要時間算出手段に相当し、S217及びS218の処理が設定手段に相当している。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
一例を挙げると、クランク信号とカム信号との信号形態は、図2に示したものに限らず、例えば特許文献2に記載されているようなものでも良い。
また、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理と、カム信号のみに基づく気筒判別処理と、クランク信号のみに基づく気筒判別処理との各内容についても、クランク信号とカム信号の信号形態に応じて適宜設計すれば良い。
例えば、クランク信号及びカム信号に基づく気筒判別処理としては、カム信号のレベルがハイ又はローである期間に発生したクランクエッジの数からクランク位置を特定する、といった処理でも良い。また、エンジンが5気筒エンジンである場合、クランク信号のみに基づく気筒判別処理としては、欠歯を検出したタイミングの前後におけるエンジン回転変動の違いを識別してクランク位置を特定する、といった処理でも良い。
また、カムセンサ及びカム信号は1つに限らず、エンジンの形態によっては2つ以上あっても良い。そして、カム信号が複数ある構成の場合、正常時には、クランク信号と複数のカム信号とを組み合わせて気筒判別を行い、カム信号の何れかが正常に入力されない場合には、クランク信号と正常な残りのカム信号とを組み合わせて気筒判別を行い、クランク信号が正常に入力されない場合には、正常な複数のカム信号を組み合わせて気筒判別を行う、といった構成を採ることができる。
実施形態のエンジンECUとそれの周辺装置を表す構成図である。 波形整形後のクランク信号及びカム信号の信号形態を示すタイムチャートである。 スタータ駆動リクエスト制御処理を表すフローチャートである。 第1実施形態のスタータリレー駆動制御処理を表すフローチャートである。 気筒判別のための処理の流れを表すフローチャートである。 クランク信号とカム信号についての異常検出処理を表すフローチャートである。 データテーブルを説明する説明図である。 第1実施形態のエンジンECUの作用を表す第1のタイムチャートである。 第1実施形態のエンジンECUの作用を表す第2のタイムチャートである。 第2実施形態のスタータリレー駆動制御処理を表すフローチャートである。 第3実施形態のスタータリレー駆動制御処理を表すフローチャートである。
符号の説明
1…エンジンECU、3…スタータモータ、5…車載バッテリ、7…スタータリレー、11…マイコン、13…スタータリレー駆動回路、15…電源ライン、19…入力回路、21…駆動回路、23…電源回路、25…通信回路、31…イグニッションスイッチ、33…スタータスイッチ、35…クランクセンサ、37…カムセンサ、41…水温センサ、43…吸気量センサ、45…ブレーキペダルセンサ、47…シフトポジションセンサ、48…車速センサ、49…メインリレー、51…通信線、52…電子キー(携帯機)、53…イモビライザECU、55…トランスミッションECU、57…ブレーキECU

Claims (5)

  1. 車両に搭載された多気筒エンジンのクランク軸の回転に応じてクランクセンサから出力されるクランク信号と、前記エンジンのカム軸の回転に応じてカムセンサから出力されるカム信号とに基づいて、気筒判別を行う第1の気筒判別手段と、
    前記クランク信号及び前記カム信号の異常をそれぞれ検出する異常検出手段と、
    前記異常検出手段により前記クランク信号及び前記カム信号のうちの何れかの異常が検出された場合に、前記第1の気筒判別手段に代わって、前記クランク信号及び前記カム信号のうち異常が検出されていない信号に基づき気筒判別を行う第2の気筒判別手段と、
    を備え、前記第1の気筒判別手段と前記第2の気筒判別手段との何れかによる気筒判別結果に基づいて前記エンジンの各気筒に対する燃料噴射及び点火を実施するように構成され、
    更に、特定の始動実施条件が成立したと判定すると、前記エンジンが運転状態になったと判定するまで始動装置を駆動して前記エンジンをクランキングさせる自動始動制御手段と、
    前記自動始動制御手段が前記始動装置を駆動している継続時間を計測し、その継続時間が制限時間に達したと判定すると、前記自動始動制御手段が前記始動装置を駆動するのを禁止する駆動時間制限手段と、
    を備えたエンジン制御装置において、
    前記異常検出手段により前記クランク信号及び前記カム信号のうちの何れかの異常が検出された場合に、前記制限時間を、正常時の設定時間よりも長い時間に設定する制限時間設定手段を備え
    更に、前記制限時間設定手段は、前記第1の気筒判別手段と前記第2の気筒判別手段との何れかによる気筒判別が完了するまでは、前記制限時間を、予め定められた初期値に設定しておき、前記第1の気筒判別手段と前記第2の気筒判別手段との何れかによる気筒判別が完了した時点で、前記制限時間を、前記異常検出手段により異常が検出されていなければ前記初期値よりも短い正常時の設定時間に設定し直し、前記異常検出手段により異常が検出されていたならば前記初期値よりも短く且つ前記正常時の設定時間よりも長い時間に設定し直すこと、
    を特徴とするエンジン制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジン制御装置において、
    前記クランク信号及び前記カム信号のうちの何れかが異常である場合に、前記始動装置の駆動が開始されてから前記第2の気筒判別手段による気筒判別が完了して、その気筒判別結果に基づく前記燃料噴射及び点火の実施により前記エンジンが運転状態になるまでの時間をTsとすると、
    前記制限時間設定手段は、前記異常検出手段により前記クランク信号及び前記カム信号のうちの何れかの異常が検出された場合には、前記制限時間を、前記Tsよりも長い時間に設定すること、
    を特徴とするエンジン制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御装置において、
    前記制限時間設定手段は、前記異常検出手段により前記クランク信号及び前記カム信号のうちの何れかの異常が検出された場合には、前記制限時間を、正常時の設定時間に所定値を加えた時間か、或いは、正常時の設定時間を所定割合だけ長くした時間に設定すること、
    を特徴とするエンジン制御装置。
  4. 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のエンジン制御装置において、
    前記制限時間設定手段は、前記車両に関する情報のうち、前記エンジンの始動性に関係する特定の情報を検出し、前記制限時間を、前記情報の検出値に応じて、その検出値が前記エンジンの始動性が低いことを示す値の場合ほど、長い時間に設定すること、
    を特徴とするエンジン制御装置。
  5. 請求項に記載のエンジン制御装置において、
    前記特定の情報は、前記車両のバッテリ電圧と、前記車両周囲の温度と、前記エンジンの冷却水の温度と、前記エンジンの潤滑油の温度とのうちの1つ以上であること、
    を特徴とするエンジン制御装置
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