JP4644535B2 - 六方晶フェライト磁性粉末の製造方法および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

六方晶フェライト磁性粉末の製造方法および磁気記録媒体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、六方晶フェライト磁性粉末、その製造方法および磁気記録媒体に関するものである。さらに詳しくは本発明は、σsを低下させることなく低ノイズ化を可能とし、MRヘッド、GMRヘッド等の高感度ヘッドで再生される高密度記録用磁気記録媒体に適した六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法に関するものである。また本発明は、該六方晶フェライト磁性粉末を磁性層に有する磁気記録媒体に関するものである。
磁気記録分野において、電磁誘導を動作原理とする磁気ヘッド(誘導型磁気ヘッド)が用いられ普及している。しかし、誘導型磁気ヘッドは、現在求められている高密度記録再生領域で使用するには限界が見え始めている。すなわち、大きな再生出力を得るために再生ヘッドのコイル巻数を多くすると、インダクタンスが増加し、高周波での抵抗が増加し、結果として再生出力が低下する問題がある。そこで近年、MR(磁気抵抗)を動作原理とする再生ヘッドが提案され、ハードディスク等で使用されている。MRヘッドは誘導型磁気ヘッドに比較して数倍の再生出力が得られ、かつ誘導コイルを用いないため、インピーダンスノイズ等の機器ノイズが大幅に低下する。したがって、大きなSN比を得ることが可能となる。
一方、高密度記録特性を向上するには、従来機器ノイズに隠れていた磁気記録媒体ノイズを小さくすることによっても達成される。
このような目的を達成するため、例えば、非磁性支持体上に、六方晶フェライト磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録媒体が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
また、六方晶フェライト磁性粉末の改良としては、下記特許文献2〜4に開示されている。
しかしながら、前記の従来技術では、σsを低下させることなく低ノイズ化を達成することはできず、現在要求されている高密度記録用の磁気記録媒体を得ることはできなかった。
磁気記録媒体の低ノイズ化には磁性粉末を微粒子にすることが考えられるが、一般に磁性粉末を微粒子にするとσsが小さくなる。六方晶フェライトでも同様に微粒子化に伴いσsの低下が見られる。また、高いSN比を得るためには低ノイズと高出力が必要であるが、磁性粉末のσsが低下すると出力が低くなる。一方、高密度記録用の磁気記録媒体は厚み損を小さくすることとPW50を小さくするために磁性層厚みを薄くする必要がある。しかし、薄層磁性層と磁性粉末のσsが低いことが合わさって、出力は更に小さくなるため十分な性能を得ることができなかった。また、磁気記録媒体としては、高密度記録する上で、低ノイズ、高出力が求められている。
特開平10−312525号公報 特開昭56−169128号公報 特開昭58−169902号公報 特開平10−92620号公報
本発明の目的は、σsを低下させることなく低ノイズ化を可能とし、MRヘッド、GMRヘッド等の高感度ヘッドで再生される高密度記録用磁気記録媒体に適した六方晶フェライト磁性粉末、その製造方法および磁気記録媒体を提供することである。
本発明は、以下のとおりである
(1平均板径が15〜30nmであり、Hcが2000〜5000Oe(160〜400kA/m)であり、かつσsが[平均板径(nm)×0.37+45]A・m /kg以上である六方晶フェライト磁性粉末を製造する方法において、AO(式中、AはBa、Sr、CaおよびPbから選択された少なくとも1種を表す)、B23、Fe23を頂点とする三角相図において、下記のa,b,c,dの4点で囲まれる組成領域内にある原料を含むものを溶融し、急冷して非晶質体を得る工程と、次いで前記非晶質体を610℃〜740℃で熱処理して六方晶フェライトを析出させる工程とを有することを特徴とする六方晶フェライト磁性粉末を製造する方法。
(a)B23=50,AO=40,Fe23=10モル%
(b)B23=45,AO=45,Fe23=10モル%
(c)B23=25,AO=25,Fe23=50モル%
(d)B23=30,AO=20,Fe23=50モル%
前記(1)に記載の製造方法により六方晶フェライト磁性粉末を製造し、該六方晶フェライト磁性粉末を結合剤中に分散して磁性層用塗布液を調製し、該磁性層用塗布液を非磁性支持体上に塗布して磁性層を設けることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
)前記非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉体を結合剤中に分散した非磁性層を設けることを特徴とする前記()に記載の磁気記録媒体の製造方法
本発明によれば、σsを低下させることなく低ノイズ化を可能とし、MRヘッド、GMRヘッド等の高感度ヘッドで再生される高密度記録用磁気記録媒体に適した六方晶フェライト磁性粉末、その製造方法および磁気記録媒体が提供される。
なお、前記の特許文献2および3には、AO、B23、Fe23を頂点とする三角相図を用い、特定のa,b,c,dの4点で囲まれる組成領域を開示しているが、本発明で使用する原料とは組成が異なる。
以下、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、上記段落0006に記載の発明であるが、本明細書には、参考のためにその他の事項も記載する。
本発明の六方晶フェライト磁性粉末は、平均板径15〜30nm、好ましくは18〜28nmであり、保磁力Hcが2000〜5000 Oe(160〜400kA/m)、好ましくは2100〜4200 Oe(168〜336kA/m)であり、かつ飽和磁化σsが[平均板径(nm)×0.37+45]A・m/kg以上、好ましくは[平均板径(nm)×0.40+45]A・m/kg以上であることを特徴としている。平均板径が15nm未満では十分な磁気特性が得られず、30nmを超えるとノイズが大きくなり、高密度記録用の磁気記録媒体に必要なSN比が確保できない。Hcが2000Oe未満では線記録密度を上げられない。また平均板径15〜30nmの範囲において、5000Oeを超えるHcを有する磁性粉末の製造は困難である。さらに本発明の六方晶フェライト磁性粉末のσsは、[平均板径(nm)×0.37+45]A・m/kg以上である。このような高いσsであることによって、MRヘッド、GMRヘッド等の高感度ヘッドで再生される高密度記録用磁気記録媒体に適した六方晶フェライト磁性粉末となる。
本発明において、上記平均板径、Hc、及びσsの関係を満たす六方晶フェライト磁性粉末を見出した根拠は、以下の通りである。
上述したように高密度記録をする上で、低ノイズ、高出力が求められる。
ノイズを低くするためには使用する磁性体の粒子サイズを上記平均板径のように小さくすることが必要である。
磁性体粒子サイズを小さくすると、磁性体の飽和磁化量σsが低下することが知られている。この理由は粒子サイズの減少に伴い粒子の比表面積が大きくなり、強磁性体の粒子表面は非磁性あるいは磁化量が小さいことによる。
σsが小さいと高出力が得られ難くなり、微粒子化による低ノイズの効果を充分に発揮することが難しかったが、微粒子化と高σsの両立を上記のように規定したことにより、従来にない高密度記録を達成できた。
従来、高密度記録に優れる六方晶フェライトとしてCo−Zn−Nbを添加したBaフェライトが知られている(特開平10−92620号公報)。この方法で得られたBaフェライトのサンプル1〜16(ただし、サンプル14は同公報の実施例データである)のHc、σs、及び平均板径との関係を特開平10−92620の実施例データと合わせたものを表1及びそれをプロットした図2に示す。最も高いσsを結ぶ関係線として[平均板径(nm)×0.37+45]A・m/kgが得られる。
本願は、特に平均板径とσsを高いレベルで両立して高密度記録が可能な磁性体を開発したものである。
Figure 0004644535
前記の六方晶フェライト磁性粉末は、次のような製造方法により得ることができる。
すなわち、AO(式中、AはBa、Sr、CaおよびPbから選択された少なくとも1種を表す)、B23、Fe23を頂点とする、図1に示す三角相図において、下記のa,b,c,dの4点で囲まれる組成領域内(斜線部(1))にある原料を含むものを溶融し、急冷して非晶質体を得、次いで前記非晶質体を熱処理して六方晶フェライトを析出させることにより、本発明の六方晶フェライト磁性粉末が得られる。
(a)B23=50,AO=40,Fe23=10モル%
(b)B23=45,AO=45,Fe23=10モル%
(c)B23=25,AO=25,Fe23=50モル%
(d)B23=30,AO=20,Fe23=50モル%
図1に示されるAO−B23−Fe23の相関において、a,b,c,dの4点で囲まれる組成領域内にある原料を用いることによって、Hcが2000〜5000 Oeであり、かつσsが[平均板径(nm)×0.37+45]A・m/kg以上である六方晶フェライト磁性粉末を得ることができる。なお、参考までに前記特許文献2および特許文献3に開示されているAO、B23、Fe23を頂点とする三角相図における特定の組成領域を、斜線部(2)および(3)としてそれぞれ併記する。
また、本発明における六方晶フェライトは、Feの一部を金属元素によって置換してもよい。置換元素としてはCo−Zn−Nb、Co−Ti、CO−Ti−Sn、Co−Sn−Nb、Co−Zn−Sn−Nb、Co−Zn−Zr−Nb、Co−Zn−Mn−Nb等が挙げられる。なお、これらの金属元素の選択、配合比率、導入量は、必要とされるHcやσsにあわせて、適宜決定すればよい。
前記原料の溶融工程は、例えば温度1250〜1450℃、好ましくは1300〜1400℃で行う。急冷工程は、公知の方法、例えば高速回転させた水冷双ローラー上に溶融物を注いで圧延急冷すればよい。また、得られた非晶質体の熱処理工程は、その条件として、例えば温度600〜700℃、好ましくは620〜680℃、保持時間2〜12時間、好ましくは3〜6時間が挙げられる。その後、加熱下酸処理することにより、余分なガラス成分を除去し、水洗し、乾燥することにより、本発明の六方晶フェライト磁性粉末が得られる。
なお、前記特許文献2では、図1に示す三角相図のa,b,c,dの4点で囲まれる組成領域内にある原料を用いて磁性粉末を得た場合は、α−ヘマタイトが混在する旨、記載しているが、Feの一部を金属元素で置換したり、熱処理温度を適宜設定(例えば低めに設定する)ことにより、これを避けることができる。また、本発明の六方晶フェライト磁性粉末が高いσsを示す理由は明確ではないが、例えば特許文献2に比べてAO量がFe量に対して少ないため、AO・6Fe結晶格子の一部分でAが欠損していて格子歪みを起こし、それを起点として磁気歪みを生じることで、σsが変化すると推定している。
本発明の六方晶フェライト磁性粉末の比表面積はBET法による値で45〜80m2 /gの範囲にあることが望ましい。また、磁性粉末の板状比は、媒体中の充填性、配向性を勘案すると2.0〜4.9の範囲内であることが望ましく、さらに好ましくは2.5〜4.2の範囲である。板状比が大きくなるにしたがい、配向性の向上や磁化反転分布(SFD)の急峻化が見られるが、充填性は逆に低下する。再生出力を増大させるには充填性、配向性の向上,SFDの急峻化のバランスを取ることが重要であり、それらを勘案した結果上記範囲が好ましいとされるに至った。
本発明の六方晶フェライト磁性粉末は、必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物あるいは水酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は磁性粉末に対し0.1〜10質量%であるのがよい。
また本発明は、非磁性支持体上に磁性層を設け、前記磁性層が、本発明の六方晶フェライト磁性粉末を結合剤中に分散してなる六方晶フェライト磁性粉末である磁気記録媒体を提供するものである。以下、本発明の磁気記録媒体について説明する。
[非磁性支持体]
本発明に用いられる支持体では可撓性支持体が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリオレフイン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミドなどの芳香族ポリアミドなどの公知のフィルムが使用できる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなってもよい。本発明の目的を達成するには、支持体として中心線平均表面粗さが通常、0.03μm以下、好ましくは0.02μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下のものを使用することが好ましい。また、これらの支持体は単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。さらに表面の粗さ形状は、必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末が挙げられる。
[磁性層]
本発明の磁性層に用いられる結合剤は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物である。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂を挙げることができる。
また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等を挙げることができる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び反応型樹脂については、いずれも朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。
また、電子線硬化型樹脂を磁性層に使用すると、塗膜強度が向上し耐久性が改善されるだけでなく、表面が平滑され電磁変換特性もさらに向上する。これらの例とその製造方法については、特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。
以上の樹脂は単独又はこれらを組み合わせた態様で使用することができる。中でもポリウレタン樹脂を使用することが好ましく、さらには水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド付加物などの環状構造体と、アルキレンオキサイド鎖を有する分子量500〜5000のポリオールと、鎖延長剤として環状構造を有する分子量200〜500のポリオールと、有機ジイソシアネートとを反応させ、かつ極性基を導入したポリウレタン樹脂、又はコハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族二塩基酸と、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のアルキル分岐側鎖を有する環状構造を持たない脂肪族ジオールからなるポリエステルポリオールと、鎖延長剤として2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数が3以上の分岐アルキル側鎖をもつ脂肪族ジオールと、有機ジイソシアネート化合物とを反応させ、かつ極性基を導入したポリウレタン樹脂、又はダイマージオール等の環状構造体と、長鎖アルキル鎖を有するポリオール化合物と、有機ジイソシアネートとを反応させ、かつ極性基を導入したポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。
本発明で使用される極性基含有ポリウレタン系樹脂の平均分子量は、5,000〜100,000であることが好ましく、さらには10,000〜50,000であることが好ましい。平均分子量が5,000以上であれば、得られる磁性塗膜が脆い等といった物理的強度の低下もなく、磁気記録媒体の耐久性に影響を与えることはないため好ましい。また、分子量が100,000以下であれば、溶剤への溶解性が低下することもないため、分散性も良好である。また、所定濃度における塗料粘度も高くなることはないので、作業性が良好で取り扱いも容易となる。
上記ポリウレタン系樹脂に含まれる極性基としては、例えば、−COOM、−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)(以上につき、Mは水素原子又はアルカリ金属塩基)、−OH、−NR、−N(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CNなどが挙げられ、これらの極性基の少なくとも1つ以上を共重合又は付加反応で導入したものを用いることができる。また、この極性基含有ポリウレタン系樹脂がOH基を有する場合、分岐OH基を有することが硬化性、耐久性の面から好ましく、1分子当たり2〜40個の分岐OH基を有することが好ましく、1分子当たり3〜20個有することがさらに好ましい。また、このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
結合剤の具体例としては、例えば、ユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などを挙げることができる。
本発明の磁性層に用いられる結合剤の添加量は、磁性粉末の質量に対して5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲である。ポリウレタン樹脂合を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネートは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合には、ポリウレタンのみ又はポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。その他の樹脂として塩化ビニル系樹脂を用いる場合には5〜30質量%の範囲であることが好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm)、降伏点は0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm)が好ましい。
本発明で用いる磁気記録媒体は、例えばフロッピーディスクである場合、支持体の両面に2層以上から構成できる。したがって、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性層、各磁性層とで変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
本発明で使用可能なポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を挙げることができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMRミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製デスモジュールL,デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり、これらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組み合せで各層とも用いることができる。
本発明における磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、又はステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良い1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良いアルコキシアルコールまたはアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基およびF、Cl、Br、CF、CCl、CBr等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又はリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
上記潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
また、本発明における磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。磁性層で使用可能なカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5〜300mμ、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN150、50、40、15、RAVEN−MT−P、日本EC社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用したりしてもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独又は組み合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、磁性粉末の質量に対して0.1〜30質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層及び非磁性層でその種類、量、組み合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは、例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
本発明で用いられる有機溶剤は公知のものが使用できる。本発明で用いられる有機溶媒は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
本発明で使用されるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は、磁性層、さらに後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じて使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着又は結合する性質を有しており、磁性層では主に六方晶フェライト磁性粉末の表面に、また非磁性層では主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着又は結合し、例えば、一度吸着した有機リン化合物は、金属又は金属化合物等の表面から脱着し難いと推察される。したがって、本発明の六方晶フェライト磁性粉末表面又は非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、該六方晶フェライト磁性粉末又は非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに六方晶フェライト磁性粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い、表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性層又は非磁性層用の塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
[非磁性層]
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明の磁気記録媒体は、支持体上に結合剤及び非磁性粉末を含む非磁性層を有することができる。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO、SiO、Cr、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO、CaCO、BaCO、SrCO、BaSO、炭化珪素、炭化チタンなどが単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜1μmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
非磁性粉末の比表面積は、1〜100m/gであり、好ましくは5〜70m/gであり、さらに好ましくは10〜65m/gである。比表面積が1〜100m/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下又は脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。非磁性粉末の含水率は、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。含水量が0.1〜5質量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。強熱減量は、20質量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
また、非磁性粉末が無機粉体である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、1〜20μmol/mであり、さらに好ましくは2〜15μmol/mである。非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、200〜600erg/cm(200〜600mJ/m)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。これらの非磁性粉末の表面には表面処理が施されることによりAl、SiO、TiO、ZrO、SnO、Sb、ZnOが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl、SiO、TiO、ZrOであるが、さらに好ましいのはAl、SiO、ZrOである。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
本発明の非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HDなどが挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
非磁性層には非磁性粉末と共に、カーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。非磁性層のマイクロビッカース硬度は、通常25〜60kg/mm(245〜588MPa)、好ましくはヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm(294〜490MPa)であり、薄膜硬度計(日本電気製HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
本発明の非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は100〜500m/g、好ましくは150〜400m/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明の非磁性層に用いることができるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機粉末に対して50質量%を越えない範囲、非磁性層総質量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組み合せで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
また非磁性層には目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。このような有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
非磁性層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
また、本発明の磁気記録媒体は、下塗り層を設けてもよい。下塗り層を設けることによって支持体と磁性層又は非磁性層との接着力を向上させることができる。下塗り層としては、溶剤への可溶性のポリエステル樹脂が使用される。
[層構成]
本発明で用いられる磁気記録媒体の厚み構成は、支持体の好ましい厚みが3〜80μmである。また、支持体と非磁性層又は磁性層の間に下塗り層を設けた場合、下塗り層の厚みは、0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には10〜150nmであり、好ましくは20〜80nmであり、さらに好ましくは30〜80nmである。また、磁性層の厚み変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±40%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
本発明の非磁性層の厚みは、0.5〜2.0μmであり、0.8〜1.5μmであることが好ましく、0.8〜1.2μmであることが更に好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT以下又は抗磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
[製造方法]
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる六方晶フェライト磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液及び非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法では、例えば、走行下にある支持体の表面に磁性塗布液を所定の膜厚となるようにして磁性層を塗布して形成する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次又は同時に重層塗布してもよく、非磁性層塗布液と磁性層塗布液とを逐次又は同時に重層塗布してもよい。上記磁性塗布液又は非磁性層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる六方晶フェライト磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは六方晶フェライト磁性粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶系フェライトの場合は一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向することもできる。
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
乾燥された後、通常、塗布層に表面平滑化処理が施される。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の六方晶フェライト磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心面平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の六方晶フェライト磁性粉末と結合剤とを選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体が磁気テープの場合、Hc(長手方向)は、好ましくは167〜350kA/m(更に好ましくは180〜340kA/m、特に好ましくは200〜320kA/m)であり、SQ(角型比)は、好ましくは0.50〜0.80(更に好ましくは0.60〜0.80、特に好ましくは0.65〜0.80)であり、Bm(最大磁束密度)は、好ましくは1000〜2000mT(更に好ましくは1200〜2000mT、特に好ましくは1500〜2000mT)である。
本発明の磁気記録媒体が磁気ディスクの場合、Hc(面内)は、好ましくは160〜350kA/m(更に好ましくは180〜340kA/m、特に好ましくは200〜320kA/m)であり、SQ(角型比)は、好ましくは0.40〜0.60(更に好ましくは0.45〜0.60、特に好ましくは0.50〜0.60)であり、Bm(最大磁束密度)は、好ましくは1000〜2000mT(更に好ましくは1200〜2000mT、特に好ましくは1500〜2000mT)である。
得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。裁断機としては、特に制限はないが、回転する上刃(雄刃)と下刃(雌刃)の組が複数設けられたものが好ましく、適宜、スリット速度、噛み合い深さ、上刃(雄刃)と下刃(雌刃)の周速比(上刃周速/下刃周速)、スリット刃の連続使用時間等が選定される。
[物理特性]
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において0.5以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、好ましくは磁性面10〜1012Ω/sq、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×10〜8×10Pa(1×10〜8×10dyne/cm)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m以下、さらに好ましくは10mg/m以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールやカレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体として非磁性層と磁性層で構成した場合、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができる。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くすることができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
実施例1〜11、比較例1〜8
<六方晶フェライト磁性粉末の作成>
表2の各組成成分割合に示すBaO−Bからなるガラス母相成分と組成式BaO・Fe12-3(x+y)/2Cox Zn Nb(x+y)/218で表されるBaフェライト成分を秤量し十分に混合した。白金ルツボに混合原料を投入し高周波加熱装置を用いて1350℃で加熱溶融した。全ての原料を溶融したのち、均質化するため1時間攪拌し、均質化した熔融物を高速回転させた水冷双ローラー上に注いで圧延急冷し、非晶質体を作製した。得られた非晶質体を表2の結晶化温度で5時間保持して結晶化させた。その後、結晶化物を粉砕したのち、10%の酢酸溶液中で、溶液温度を80℃以上に制御しながら、4時間攪拌し酸処理を行なった。酸により非晶質から溶解した余分なガラス成分は、水洗を繰り返し十分に除去した。最後に、スラリーを乾燥させ、磁性粉末を得た。得られた磁性粉末の特性を表2に組成成分と共に示す。なお板径は、透過型電子顕微鏡で40万倍の粒子写真を測定し、粒子側面が見える粒子300ヶの板径を測定し平均値を求めた。磁気特性(Hc、δs)は、振動試料型磁束計(東栄工業社製)を用い、23℃で印加磁界10KOeで測定した。
Figure 0004644535
<テープ用塗料の作成>
磁性層形成用塗料
バリウムフェライト磁性粉末 100部
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α−アルミナ
HIT60(住友化学社製) 8部
カ−ボンブラック(粒子サイズ0.015μm)
#55(旭カーボン社製) 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
非磁性層形成用塗料
非磁性粉体 α酸化鉄 100部
平均長軸長0.09μm、BET法による比表面積 50m/g
pH 7
DBP吸油量27〜38ml/100g、
表面処理層Al 8質量%
カ−ボンブラック 25部
コンダクテックスSC−U(コロンビアンカーボン社製)
塩化ビニル共重合体
MR104(日本ゼオン社製) 13部
ポリウレタン樹脂
UR8200(東洋紡社製) 5部
フェニルホスホン酸 3.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 205部
シクロヘキサノン 135部
<磁気テープの製法>
上記の塗料のそれぞれについて、各成分をニ−ダで混練した。1.0mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルに、塗布液をポンプで通液し、2000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)、分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ−トを非磁性層の塗料には5.0部、磁性層の塗料には2.5部を加え、さらにメチルエチルケトン3部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調整した。
得られた非磁性層形成用塗布液を、4μmポリエチレンテレフタレートベース上に乾燥後の厚さが1.5μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層形成用塗布液を磁性層の厚さが70nmになるように逐次重層塗布をおこない、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに6000G(600mT)の磁力を持つコバルト磁石と6000Gの磁力を持つソレノイドにより配向させ乾燥させた。次いで7段のカレンダで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にて処理を行った。その後、厚み0.5μmのバック層(カ−ボンブラック 平均粒子サイズ:17nm 100部、炭酸カルシウム 平均粒子サイズ:40nm 80部、αアルミナ 平均粒子サイズ:200nm 5部をニトロセルロ−ス樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネ−トに分散)を塗布した。3.8mmの幅にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレ−ドが磁性面に押し当たるように取り付け、テ−プクリ−ニング装置で磁性層の表面のクリ−ニングを行い、磁気テープ媒体を得た。
得られた磁気テープ媒体について、前記のようにして各種磁気特性を調べた。また、出力およびノイズについて調べた。これらは、記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm、1.8T)と再生用AMRヘッドをドラムテスターに取り付けて測定した。ヘッド−媒体相対速度は15m/secとし、ノイズは変調ノイズを測定した。SNは、比較例2を0dBとして表した。
結果を表3に示す。なお表3において実施例および比較例番号は、表2に示した磁性粉末の実施例および比較例番号に対応している。
Figure 0004644535
<磁気テープ媒体評価結果>
表2および3の結果から、図1に示す三角相図のa,b,c,dの4点で囲まれる組成領域内にある原料を用いて製造された磁性粉末は、板径が小さくても高いσsを示すことが分かる。しかし、前記組成領域の範囲外にある原料を用いて製造された磁性粉末は、σsが低いことが分かる。また図1に示す三角相図のa,b,c,dの4点で囲まれる組成領域内にある原料を用いて製造された磁性粉末を磁性層に含む磁気テープ媒体は、薄層磁性層でも高いSN比を示し、範囲外での磁性体を用いるとSN比が低いことが分かる。
次に、本発明の六方晶フェライト磁性粉末を磁性層に含む磁気ディスク媒体を製造した。
<ディスク用塗料の作成>
磁性層形成用塗料
バリウムフェライト磁性粉末 100部
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
ダイアモンド微粒子
平均粒径0.10μm 2部
カ−ボンブラック(粒子サイズ0.015μm)
#55(旭カーボン社製) 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 230部
シクロヘキサノン 150部
非磁性層形成用塗料
非磁性粉体 α酸化鉄 100部
平均長軸長0.09μm、BET法による比表面積 50m/g
pH 7
DBP吸油量27〜38ml/100g、
表面処理層Al 8質量%
カ−ボンブラック 25部
コンダクテックスSC−U(コロンビアンカーボン社製)
塩化ビニル共重合体
MR104(日本ゼオン社製) 13部
ポリウレタン樹脂
UR8200(東洋紡社製) 5部
フェニルホスホン酸 3.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 205部
シクロヘキサノン 135部
<磁気ディスク媒体の製法>
上記の塗料のそれぞれについて、各成分をニ−ダで混練した。1.0mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルに、塗布液をポンプで通液し、2000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)、分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ−トを非磁性層の塗料には6.5部、磁性層の塗料には2.5部を加え、さらにメチルエチルケトン7部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調整した。
得られた非磁性層形成用塗布液を、62μmポリエチレンテレフタレートベース上に乾燥後の厚さが1.5μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層形成用塗布液を磁性層の厚さが0.10μmになるように逐次重層塗布をおこない、乾燥後、7段のカレンダで温度90℃、線圧300kg/cmにて処理を行った。これらの操作を非磁性支持体の両面に施した。3.5吋に打ち抜き、表面研磨処理を施して磁気ディスク媒体を得た。
得られた磁気ディスク媒体について、磁気テープ媒体と同様に磁気特性およびノイズを測定した。なお、出力およびノイズについては、記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm、1.8T)と再生用GMRヘッドをスピンスタンドに取り付けて測定した。媒体回転数4000rpm、記録波長0.20μmとし、ノイズは変調ノイズを測定した。SNは、比較例2を0dBとして表した。
結果を表4に示す。なお表4において実施例および比較例番号は、表2に示した磁性粉末の実施例および比較例番号に対応している。
Figure 0004644535
<磁気ディスク媒体評価結果>
表4の結果から、図1に示す三角相図のa,b,c,dの4点で囲まれる組成領域内にある原料を用いて製造された磁性粉末を磁性層に含む磁気ディスク媒体は、良好な出力、ノイズ特性を有することが分かる。
本発明に係るAO、B23、Fe23を頂点とする三角相図である。 表1をプロットしたもので、関係線[平均板径(nm)×0.37+45]A・m/kgを合わせて示したものである。

Claims (3)

  1. 平均板径が15〜30nmであり、Hcが2000〜5000Oe(160〜400kA/m)であり、かつσsが[平均板径(nm)×0.37+45]A・m /kg以上である六方晶フェライト磁性粉末を製造する方法において、AO(式中、AはBa、Sr、CaおよびPbから選択された少なくとも1種を表す)、B23、Fe23を頂点とする三角相図において、下記のa,b,c,dの4点で囲まれる組成領域内にある原料を含むものを溶融し、急冷して非晶質体を得る工程と、次いで前記非晶質体を610℃〜740℃で熱処理して六方晶フェライトを析出させる工程とを有することを特徴とする六方晶フェライト磁性粉末を製造する方法。
    (a)B23=50,AO=40,Fe23=10モル%
    (b)B23=45,AO=45,Fe23=10モル%
    (c)B23=25,AO=25,Fe23=50モル%
    (d)B23=30,AO=20,Fe23=50モル%
  2. 請求項1に記載の製造方法により六方晶フェライト磁性粉末を製造し、該六方晶フェライト磁性粉末を結合剤中に分散して磁性層用塗布液を調製し、該磁性層用塗布液を非磁性支持体上に塗布して磁性層を設けることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  3. 前記非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉体を結合剤中に分散した非磁性層を設けることを特徴とする請求項に記載の磁気記録媒体の製造方法
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