JP2006277838A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 支持体上に、少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けた磁気記録媒体において、該磁気記録媒体を23℃、50%RH環境下で、AlFeSil角柱と接触させて走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅をa、該磁気記録媒体を23℃、10%RH環境下で、該走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅をbとしたとき、摩耗幅の比率b/aが0.3以上1.0以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【選択図】 なし
Description
これらの化合物のうち高級脂肪酸は酸性の極性基であるカルボキシル基を有しており、このカルボキシル基が磁性体や無機粉体の塩基性点に吸着し、比較的低速の摺動性確保に大きく寄与している。また、磁性体や無機粉体の表面を被覆して粉体の分散性向上に役立っている。
しかし、磁性体や無機粉体あるいは配合した他の素材中に微量の無機陽イオンが存在すると、長期の経時や高温高湿雰囲気下に試料を保存した場合、配合された高級脂肪酸と無機陽イオンは徐々に反応して脂肪酸金属塩を生成する場合がある。たとえば、脂肪酸のカルシウム塩が磁性層表面に生成すると表面に突起を形成してスペーシングにより電磁変換特性を低下し、また走行によりヘッドに付着し、あるいはドロップアウトやエラーレート劣化の原因となり、走行耐久性、電磁変換特性を悪化させる。また微量の鉄イオンと脂肪酸が反応した脂肪酸鉄塩はやや粘着性を有するため摩擦係数を上昇させ、テープ表面でデブリを生じ、さらにヘッド汚れやヘッド目詰まりを引き起こし、著しく走行耐久性を悪化させる。
高級脂肪酸エステルは比較的高速の摩擦係数を低下させるが、高温高湿等の悪条件が重なると加水分解により脂肪酸を生成し、生成した脂肪酸は前記のようにして微量の無機陽イオンと反応して金属塩を生成する場合もある。
また、ノイズの低減という観点からは、磁性金属粉末からなる磁性体よりもBaフェライト磁性体の方が好ましく用いられる。しかし、微粒子化が進むと磁性体に由来するバリウムと脂肪酸が反応し易くなり、生じた脂肪酸バリウム塩が、ヘッドの目詰まりを引き起こすという問題点がある。
しかしながら、低湿度環境下では、磁気記録媒体表面の摩擦係数が低下し、このクリーニング効果が抑制され、ヘッドへの付着物を十分に除去できないという問題点がある。
以上より、高信頼性を求められる磁気記録媒体の開発においては、低湿度環境下であっても、とくにエラーレートの上昇を抑制する手段が求めたれていた。
なお、下記特許文献3では、磁気記録媒体の研磨性を維持し、エラーレートの上昇を抑制する目的で、磁気記録媒体を特定走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の磨耗幅の磨耗幅をa、その走行後、磁気記録媒体の同一走行個所を同条件にて新たなAlFeSil角柱に対して接触走行させたときの当該AlFeSil角柱の磨耗幅をbとしたとき、磨耗幅の変化率b/aが0.6以上1.0以下である磁気記録媒体を開示している。しかし、この特許文献3に開示された磁気記録媒体では、いまだに低湿度環境下でのエラーレートの上昇の抑制が不十分であった。
1)支持体上に、少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けた磁気記録媒体において、
該磁気記録媒体を23℃、50%RH環境下で、下記走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅をa、該磁気記録媒体を23℃、10%RH環境下で、下記走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅をbとしたとき、摩耗幅の比率b/aが0.3以上1.0以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
<走行条件>:
該磁気記録媒体の磁性層の表面を、AlFeSil角柱(ECMA−288/AnnexH/H2に規定されている角柱)の長手方向と直交するように、AlFeSil角柱の一稜辺にラップ角12度で接触させ、その状態で長さ580mの該磁気記録媒体を1.0Nの張力下において3m/秒の速さで50往復させる。ただし、磨耗幅aの測定と磨耗幅bの測定は、それぞれ別の該AlFeSil角柱を用いる。
2)前記支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けるとともに、前記非磁性層が、下記で定義される高級脂肪酸エステルを含み、かつ前記高級脂肪酸エステルの含有量が、前記非磁性層中の非磁性粉末100質量部に対し、1.1〜3.0質量部であることを特徴とする上記1)に記載の磁気記録媒体。
高級脂肪酸エステル:炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の一価または二価以上のアルコールとからなる脂肪酸エステル。
3)前記支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けるとともに、前記非磁性層が、アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールを含み、かつ前記アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールの含有量が、前記非磁性層中の非磁性粉末100質量部に対し、0.2〜3.0質量部であることを特徴とする上記1)または2)に記載の磁気記録媒体。
本発明は、磁気記録媒体を23℃、50%RH環境下で、下記走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅をa、磁気記録媒体を23℃、10%RH環境下で、下記走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅をbとしたとき、摩耗幅の比率b/aが0.3以上1.0以下であることを特徴としている。摩耗幅の比率b/aがこの範囲内であることにより、低湿度環境下での例えば脂肪酸金属塩に対する高いクリーニング効果が得られ、エラーレート上昇を抑制することができる。
<走行条件>:
該磁気記録媒体の磁性層の表面を、AlFeSil角柱(ECMA−288/AnnexH/H2に規定されている角柱)の長手方向と直交するように、AlFeSil角柱の一稜辺にラップ角12度で接触させ、その状態で長さ580mの該磁気記録媒体を1.0Nの張力下において3m/秒の速さで50往復させる。ただし、磨耗幅aの測定と磨耗幅bの測定は、それぞれ別の該AlFeSil角柱を用いる。
まず、23℃、50%RH環境下で、磁気テープ(磁気記録媒体)3における磁性層の表面(磁性層側3a)をAlFeSil角柱10の長手方向と直交するように、角柱10の一稜辺にラップ角12°で接触させ(図1の(i)および(ii))、その状態で長さ580mのテープを1.0Nの張力下において3m/秒の速さで50往復させたときの角柱10の磨耗幅aを測定する。(図1の(iii)。これとは別に、新たなAlFeSil角柱を準備し、23℃、10%RH環境下で、前記と同様にして磨耗幅bを測定する(図1の(iv))。試験終了後、角柱10を取り出し、顕微鏡写真を撮影し、これから磨耗幅aおよびbを測定する。
本発明でさらに好ましい磨耗幅の比率b/aは、0.4以上1.0以下であり、とくに好ましくは0.5以上1.0以下である。
[支持体]
本発明における支持体は、通常、非磁性支持体であり、ポリエステル支持体(以下、単にポリエステルという)が好ましい。このようなポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどジカルボン酸およびジオールからなるポリエステルである。
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸及び/または2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコール及び/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。特に好ましくはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルである。
なお、本発明に用いられるポリエステルは、二軸延伸されていてもよいし、2層以上の積層体であってもよい。
また、ポリエステルは、さらに他の共重合成分が共重合されていても良いし、他のポリエステルが混合されていても良い。これらの例としては、先に挙げたジカルボン酸成分やジオール成分、またはそれらから成るポリエステルを挙げることができる。
本発明に用いられるポリエステルには、フィルム時におけるデラミネーションを起こし難くするため、スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、ポリオキシアルキレン基を有するジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、ポリオキシアルキレン基を有するジオールなどを共重合してもよい。
中でもポリエステルの重合反応性やフィルムの透明性の点で、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸およびこれらのナトリウムを他の金属(例えばカリウム、リチウムなど)やアンモニウム塩、ホスホニウム塩などで置換した化合物またはそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体およびこれらの両端のヒドロキシ基を酸化するなどしてカルボキシル基とした化合物などが好ましい。この目的で共重合される割合としては、ポリエステルを構成するジカルボン酸を基準として、0.1〜10モル%が好ましい。
また、耐熱性を向上する目的では、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環またはシクロヘキサン環を有する化合物を共重合することができる。これらの共重合割合としては、ポリエステルを構成するジカルボン酸を基準として、1〜20モル%が好ましい。
また、合成時の各過程で着色防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、消泡透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料、反応停止剤などの各種添加剤の1種又は2種以上を添加させてもよい。
磁性層に含まれる強磁性粉末として、その体積が(0.1〜8)×10−18mlであることが好ましく、(0.5〜5)×10−18mlであることが更に好ましい。この範囲とすることにより、熱揺らぎにより磁気特性の低下を有効に抑えることができると共に低ノイズを維持したまま良好なC/N(S/N)を得ることができる。強磁性粉末としては、特に制限はないが、強磁性金属粉末または六方晶系フェライト粉末が好ましい。
針状粉末の体積は、形状を円柱と想定して長軸長、短軸長から求める。
板状粉末の場合は、形状を角柱(六方晶系フェライト粉末の場合は6角柱)と想定して板径、軸長(板厚)から体積を求める。
磁性体のサイズは、磁性層を適当量剥ぎ取る。剥ぎ取った磁性層30〜70mgにn−ブチルアミンを加え、ガラス管中に封かんし熱分解装置にセットして140℃で約1日加熱する。冷却後にガラス管から内容物を取り出し、遠心分離し、液と固形分を分離する。分離した固形分をアセトンで洗浄し、TEM用の粉末試料を得る。この試料を日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びkontron製画像解析装置KS−400デジタイザー上に載せ、粉体の輪郭をトレースしてそれぞれの粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定し、測定値を平均して平均サイズとする。
本発明の磁気記録媒体における磁性層に用いられる強磁性金属粉末としては、Feを主成分とするもの(合金も含む)であれば、特に限定されないが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つがα−Fe以外に含まれるものが好ましく、特に、Co,Al,Yが含まれるのが好ましい。さらに具体的には、CoがFeに対して10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが1〜15原子%含まれるのが好ましい。
六方晶フェライト粉末には、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、それらのCo等の置換体等がある。より具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部にスピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般には、Co−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用できる。また原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。好ましいその他の原子およびその含有率は、前記の強磁性金属粉末の場合と同様である。
平均板状比{(板径/板厚)の平均}は1〜15であり、さらに1〜7であることが好ましい。平均板状比が1〜15であれば、磁性層で高充填性を保持しながら充分な配向性が得られ、かつ、粒子間のスタッキングによりノイズ増大を抑えることができる。また、上記粒子サイズの範囲内におけるBET法による比表面積(SBET)は、40m2/g以上が好ましく、40〜200m2/gであることがさらに好ましく、60〜100m2/gであることが最も好ましい。
本発明の磁性層に用いられる結合剤(バインダー)は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物である。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂を挙げることができる。
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明の磁気記録媒体は、支持体上に結合剤及び非磁性粉末を含む非磁性層を有することができる。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
高級脂肪酸エステル:炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の一価または二価以上のアルコールとからなる脂肪酸エステル。
炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸は、不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない。また炭素数2〜22の一価または二価以上のアルコールとしては、一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール等が挙げられ、不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない。したがって、本発明における高級脂肪酸エステルは、モノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル等が挙げられる。具体的には、ブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル等が挙げられる。中でも好ましくは、ブチルステアレートである。
前記アルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールにおいて、アルキレン部分としてはエチレン、プロピレン、テトラメチレン等が挙げられ、とくに好ましくはエチレングリコール、ポリエチレングリコールである。ポリアルキレングリコールにおける質量平均分子量は、200〜10000、好ましくは200〜1000である。
なお、アルキレングリコールとポリアルキレングリコールは併用してもよく、その場合の両者の合計添加量は、上記範囲内、すなわち非磁性粉末100質量部に対し、0.2〜3.0質量部であることが好ましい。
本発明で用いられる磁気記録媒体の厚み構成は、支持体の好ましい厚みが3〜80μmである。また、支持体と非磁性層又は磁性層の間に下塗り層を設けた場合、下塗り層の厚みは、0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。
本発明の磁気記録媒体には、支持体の他方の面にバック層を設けるのが好ましい。バック層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方が適用される。バック層の厚みは、0.1〜1.0μmが好ましく、0.4〜0.6μmが更に好ましい。
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性金属粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液及び非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心面平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性金属粉末と結合剤とを選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は100〜300mTが好ましい。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143.3〜318.4kA/m(1800〜4000Oe)が好ましく、159.2〜278.6kA/m(2000〜3500Oe)が更に好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFD及びSFDrは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
なお実施例中の「部」の表示は「質量部」を示す。
磁性層塗布液の調製1.磁性層塗布液の調製
強磁性針状金属粉末 100部
組成:Fe/Co/Al/Y=67/20/8/5(原子%)
表面処理層:Al2O3,Y2O3
抗磁力(Hc):183kA/m
結晶子サイズ:12.5nm
平均長軸長:45nm
平均針状比:6
BET比表面積(SBET):60m2/g
飽和磁化(σs):140A・m2/kg(140emu/g)
塩化ビニル共重合体 12部
ポリウレタン樹脂 8部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタン
ジイソシアネート系、
親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(平均粒子サイズ0.06μm) 2部
カーボンブラック(平均粒子サイズ 20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
非磁性無機質粉末 85部
α−酸化鉄
表面処理層:Al2O3,SiO2
平均長軸径:0.15μm
タップ密度:0.8g/ml
平均針状比:7
BET比表面積(SBET):52m2/g
pH8
DBP吸油量:33ml/100g
カーボンブラック 20部
DBP吸油量:120ml/100g
pH:8
BET比表面積(SBET):250m2/g
揮発分:1.5%
塩化ビニル共重合体 10部
ポリウレタン樹脂 8部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタン
ジイソシアネート系、
親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(平均粒径0.2μm) 1部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
高級脂肪酸エステル(sec−ブチルステアレート) 1.5部
ステアリン酸 1部
混練物1
カーボンブラックA 平均粒径 40nm 100部
ニトロセルロース RS1/2 50部
ポリウレタン樹脂 40部
(ガラス転移温度: 50℃)
分散剤 オレイン酸銅 5部
銅フタロシアニン 5部
沈降性硫酸バリウム 5部
メチルエチルケトン 500部
トルエン 500部
カーボンブラックB 100部
平均粒径 270nm、SBET 8.5m2/g
DBP吸油量 36ml/100g、pH10
ニトロセルロース RS1/2 40部
ポリウレタン樹脂 10部
メチルエチルケトン 300部
トルエン 300部
ポリイソシアネート 5部
得られた磁性層塗布液、非磁性層塗布液を、ポリエチレンナフタレート(PEN)支持体(厚さ:6μm、長さ(MD)方向のヤング率7.84GPa(800kg/mm2)、幅(TD)方向のヤング率7.35GPa(750kg/mm2)、磁性層塗布面の中心線平均表面粗さRa:2nm(カットオフ値:0.25mm))上に、非磁性層、磁性層の順に乾燥後の厚みがそれぞれ1.5μm、0.1μmとなるように同時重層塗布した。次いで、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに、300mT(3000ガウス)の磁束密度を持つコバルト磁石と150mT(1500ガウス)の磁束密度を持つソレノイドを用いて配向処理を行った。その後、乾燥させることにより磁性層を形成した。その後、支持体の他方の側(磁性層とは反対側)に、上記バック層塗布液を乾燥後の厚さが、0.5μmとなるように塗布し、乾燥してバック層を形成した。支持体の一方の面に磁性層そして他方の面にバック層がそれぞれ設けられた磁気記録積層体ロールを得た。上記ロールを金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで294kN/m(300kg/cm)、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃で48時間加熱処理を行い、1/2インチ幅にスリットした。その後カートリッジに巻き込み、本発明に従う磁気テープを作製し、以下の評価を行った。
磁気テープを23℃、50%RH環境下で、下記走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅a、該磁気テープを23℃、10%RH環境下で、下記走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅bを求め、摩耗幅の比率b/aを算出した。
<走行条件>:
該磁気テープの磁性層の表面を、AlFeSil角柱(ECMA−288/AnnexH/H2に規定されている角柱)の長手方向と直交するように、AlFeSil角柱の一稜辺にラップ角12度で接触させ、その状態で長さ580mの該磁気テープを1.0Nの張力下において3m/秒の速さで50往復させる。ただし、磨耗幅aの測定と磨耗幅bの測定は、それぞれ別の該AlFeSil角柱を用いる。
磁気テープをLTOリールに巻き込み、ランダム信号を8/9(0,4)EPR4コードを用いて書き込み、23℃、10%RH環境下、それを再生した場合のエラーレートを測定した。初期エラーレートと、300パス走行後のエラーレートをそれぞれ測定した。
評価結果を表1に示す。
実施例1の非磁性層塗布液の調製において、高級脂肪酸エステル量を3.0質量部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例1の非磁性層塗布液の調製において、高級脂肪酸エステル量を1.1質量部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例1の非磁性層塗布液の調製において、高級脂肪酸エステル量を1.0質量部に変更し、さらにエチレングリコールを1.0質量部使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例1の非磁性層塗布液の調製において、高級脂肪酸エステル量を1.0質量部に変更し、さらに質量平均分子量600のポリエチレングリコールを1.0質量部使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例1の非磁性層塗布液の調製において、高級脂肪酸エステル量を0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例1の非磁性層塗布液の調製において、高級脂肪酸エステルを使用せずに、その替わりにエチレングリコールを0.1質量部使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例1の非磁性層塗布液の調製において、高級脂肪酸エステルを使用せずに、その替わりにポリエチレングリコールを0.1質量部使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。
実施例1の非磁性層塗布液の調製において、高級脂肪酸エステルを使用しなかったこと以外は、実施例1を繰り返した。
評価結果を表1に示す。なお、評価の○、×は、以下のとおりである。
○:300パス後のエラーレートが10−6台以下
×:300パス後のエラーレートが10−5台以上
3a 磁性層側
10 AlFeSil角柱
Claims (3)
- 支持体上に、少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けた磁気記録媒体において、
該磁気記録媒体を23℃、50%RH環境下で、下記走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅をa、該磁気記録媒体を23℃、10%RH環境下で、下記走行条件で走行させたときのAlFeSil角柱の摩耗幅をbとしたとき、摩耗幅の比率b/aが0.3以上1.0以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
<走行条件>:
該磁気記録媒体の磁性層の表面を、AlFeSil角柱(ECMA−288/AnnexH/H2に規定されている角柱)の長手方向と直交するように、AlFeSil角柱の一稜辺にラップ角12度で接触させ、その状態で長さ580mの該磁気記録媒体を1.0Nの張力下において3m/秒の速さで50往復させる。ただし、磨耗幅aの測定と磨耗幅bの測定は、それぞれ別の該AlFeSil角柱を用いる。 - 前記支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けるとともに、前記非磁性層が、下記で定義される高級脂肪酸エステルを含み、かつ前記高級脂肪酸エステルの含有量が、前記非磁性層中の非磁性粉末100質量部に対し、1.1〜3.0質量部であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
高級脂肪酸エステル:炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の一価または二価以上のアルコールとからなる脂肪酸エステル。 - 前記支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けるとともに、前記非磁性層が、アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールを含み、かつ前記アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールの含有量が、前記非磁性層中の非磁性粉末100質量部に対し、0.2〜3.0質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
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2005
- 2005-03-29 JP JP2005095762A patent/JP2006277838A/ja active Pending
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