JP2007294086A - 磁気記録媒体、リニア磁気記録再生システムおよび磁気記録再生方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体。磁性層の残留磁化Mrと磁性層の厚さδの積であるMrδが2mT・μm以上12mT・μm以下であり、垂直方向の角型比が0.4以上0.7以下であり、かつ長手方向の角型比が0.3以上0.6未満である。
【選択図】なし
Description
上記の通り特許文献5および6には、再生ヘッドとしてGMRヘッドを使用することが提案されている。しかし、これらの技術は、ヘリカルスキャン磁気記録システムには適しているものの、順方向の記録再生と逆方向の記録再生の両走行方向において、十分なS/N比を得ることが重要となるリニア磁気記録再生システムでは、所望のS/N比を達成することができないという課題があった。また、上記特許文献1〜4には、得られた磁気記録媒体を再生ヘッドとしてGMRヘッドを用いるシステムに用いる開示はない。
まず本発明者らは、GMR素子の飽和を防ぐために、磁性層の残留磁化Mrと磁性層の厚さδの積であるMrδを従来の磁気記録媒体より低く抑えることとした。しかし、Mrδを小さくするために磁性層を薄くすると、従来の磁気記録媒体で実現されていた磁気特性では、リニア磁気記録再生システムにおいて両走行方向で十分なS/N比を得ることが困難であることが判明した。
本発明者らは以上の知見に基づき更に検討を重ね、Mrδを2mT・μm以上12mT・μmとした磁気記録媒体において、垂直方向の角型比および長手方向の角型比をそれぞれ所定範囲とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
磁性層の残留磁化Mrと磁性層の厚さδの積であるMrδが2mT・μm以上12mT・μm以下であり、垂直方向の角型比が0.4以上0.7以下であり、かつ長手方向の角型比が0.3以上0.6未満であることを特徴とする磁気記録媒体。
[2]磁性層の厚さは30nm以上130nm以下である[1]に記載の磁気記録媒体。
[3]強磁性粉末は六方晶フェライト粉末または窒化鉄粉末である[1]または[2]に記載の磁気記録媒体。
[4]Mrδは2mT・μm以上8mT・μm以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の磁気記録媒体。
[5]非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有する[1]〜[4]のいずれかに記載の磁気記録媒体。
[6]再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用するリニア磁気記録再生システムにおいて使用される[1]〜[5]のいずれかに記載の磁気記録媒体。
[7]巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドの再生トラック幅は、0.1〜2.5μmの範囲である[6]に記載の磁気記録媒体。
[8][1]〜[5]のいずれかに記載の磁気記録媒体および再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを含むリニア磁気記録再生システム。
[9]巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドの再生トラック幅は、0.1〜2.5μmの範囲である[8]に記載のリニア磁気記録再生システム。
[10]リニア磁気記録再生システムにおいて、[1]〜[5]のいずれかに記載の磁気記録媒体に磁気信号を記録し、該信号を巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いて再生する磁気記録再生方法。
[11]巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドの再生トラック幅は、0.1〜2.5μmの範囲である[10]に記載の磁気記録再生方法。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、磁性層の残留磁化Mrと磁性層の厚さδの積であるMrδが2mT・μm以上12mT・μm以下であり、垂直方向の角型比が0.4以上0.7以下であり、かつ長手方向の角型比が0.3以上0.6未満であるものである。
以下、本発明の磁気記録媒体について詳細に説明する。
粒度分布を制御するためには、磁性層塗布液をオープンニーダーで混練した後、ジルコニアビーズを用いたサンドミルで分散させ、分級処理することが有効である。分級処理は遠心分離機で行うことができる。
非磁性支持体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。また必要に応じ、磁性面と非磁性支持体面の表面粗さを変えるため特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などを行ってもよい。また支持体としてアルミまたはガラス基板を適用することも可能である。
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。
中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。特に好ましくはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルである。
中でもポリエステルの重合反応性やフィルムの透明性の点で、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸およびこれらのナトリウムを他の金属(例えばカリウム、リチウムなど)やアンモニウム塩、ホスホニウム塩などで置換した化合物またはそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体およびこれらの両端のヒドロキシ基を酸化するなどしてカルボキシル基とした化合物などが好ましい。この目的で共重合される割合としては、ポリエステルを構成するジカルボン酸を基準として、0.1〜10モル%が好ましい。
また、耐熱性を向上する目的では、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環またはシクロヘキサン環を有する化合物を共重合することができる。これらの共重合割合としては、ポリエステルを構成するジカルボン酸を基準として、1〜20モル%が好ましい。
また、合成時の各過程で着色防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、消泡透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料、反応停止剤などの各種添加剤の1種または2種以上を添加させてもよい。
また、支持体を高剛性化するために、これらの材料を高延伸したり、表面に金属や半金属または、これらの酸化物の層を設けることもできる。
また、非磁性支持体の長手方向および幅方向のヤング率は、6.0GPa以上が好ましく、7.0GPa以上がさらに好ましい。
磁性層に含まれる強磁性粉末として、その体積が1000〜20000nm3である、ものが好ましく、2000〜8000nm3であるものが更に好ましい。この範囲の体積を有する強磁性粉末を使用することにより、熱揺らぎにより磁気特性の低下を有効に抑えることができると共に低ノイズを維持したまま良好なC/N(S/N)を得ることができる。
六方晶フェライト粉末の体積は、形状を6角柱と想定して板径、軸長(板厚)から体積を求めることができる。
磁性体のサイズは、以下の方法によって求めることができる。
まず、磁性層を適当量剥ぎ取る。剥ぎ取った磁性層30〜70mgにn−ブチルアミンを加え、ガラス管中に封かんし熱分解装置にセットして140℃で約1日加熱する。冷却後にガラス管から内容物を取り出し、遠心分離し、液と固形分を分離する。分離した固形分をアセトンで洗浄し、TEM用の粉末試料を得る。この試料を日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びデジタイザ−で粉体の輪郭をトレースしカ−ルツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定し、測定値を平均して平均サイズとする。
強磁性六方晶フェライト粉末には、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、それらのCo等の置換体等がある。より具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部にスピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般には、Co−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用できる。また原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。好ましいその他の原子およびその含有率は、前記の強磁性金属粉末の場合と同様である。
抗磁力(Hc)は、粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
本発明における窒化鉄粉末とは、少なくともFe16N2相を含む磁性粉末を意味するが、Fe16N2相以外の窒化鉄の相を含まないことが好ましい。これは、窒化鉄(Fe4NやFe3N相)の結晶磁気異方性は1×105erg/cc(1×10-2J/cc)程度であるのに対し、Fe16N2相は2×106〜7×106erg/cc(2×10-1〜7×10-1J/cc)の高い結晶磁気異方性を有するからである。これにより、微粒子化した際にも高い保磁力を維持することができる。この高い結晶磁気異方性は、Fe16N2相の結晶構造に起因する。結晶構造は、N原子がFeの八面体格子間位置に規則的に入った体心正方晶であり、N原子が格子に入る際の歪が、高い結晶磁気異方性の発生原因と考えられる。Fe16N2相の磁化容易軸は窒化により伸びたC軸である。
磁性層に使用する強磁性金属粉末は、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末を用いることが好ましい。これらの強磁性金属粉末には、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。Coの含有量はFeに対して0原子%以上40原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは15原子%以上35原子%以下、より好ましくは20原子%以上35原子%以下である。Yの含有量は1.5原子%以上12原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、特に好ましくは4原子%以上9原子%以下である。Alは1.5原子%以上12原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。
本発明の磁気記録媒体の磁性層および非磁性層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は磁性層、非磁性層の公知技術が適用できる。特に、結合剤量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモ−ス硬度6以上の公知の材料が単独または組合せて使用することができる。また、これらの研磨剤同士の複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましく、特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/gが好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、板状のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。具体的には住友化学社製AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT−20、HIT−30、HIT−55、HIT−60、HIT−70、HIT−80、HIT−100、レイノルズ社製ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM、不二見研磨剤社製WA10000、上村工業社製UB20、日本化学工業社製G−5、クロメックスU2、クロメックスU1、戸田工業社製TF100、TF140、イビデン社製、ベータランダムウルトラファイン、昭和鉱業社製B−3などが挙げられる。これらの研磨剤は必要に応じ非磁性層に添加することもできる。非磁性層に添加することで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、非磁性層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有することができる。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の厚みが前述のように、好ましくは3〜80μm、より好ましくは3〜50μm、特に好ましくは3〜10μmである。また、非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に下塗り層を設ける場合、下塗り層の厚みは、例えば0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。
本発明の磁気記録媒体には、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面にバック層を設けることが好ましい。バック層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。バック層形成のための結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方を適用することができる。バック層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
磁性層、非磁性層、またはバック層を形成するための塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用塗料、非磁性層用塗料またはバック層用塗料を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
さらに高分散された磁性層塗布液中の磁性体を配向させる配向装置の印加磁場は、0〜1000mTが好ましく、より好ましくは0〜800mT、さらに好ましくは0〜500mTである。また、印加磁場を高くすると磁性体同士の凝集を誘発するため、所望の角型比を達成できる範囲で印加磁場を小さくすることが好ましい。
カレンダー処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。カレンダー処理によって、表面平滑性が向上するとともに、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理する工程は、塗布原反の表面の平滑性に応じて、カレンダー処理条件を変化させながら行うことが好ましい。
したがって、カレンダー処理工程で、カレンダー処理条件、例えばカレンダーロール圧力を変化させ、塗布原反の巻き取りによって生じた長手方向における平滑性の相違を相殺することが好ましい。具体的には、巻き取りロールから巻き出された塗布原反の芯側から外側に向かってカレンダーロールの圧力を低下させていくことが好ましい。本発明者らの検討によれば、カレンダーロールの圧力を下げると光沢値は低下する(平滑性が低下する)ことが見出されている。これにより、塗布原反の巻き取りによって生じた長手方向における平滑性の相違が相殺され、長手方向において品質にばらつきのない最終製品を得ることができる。
前述のように、本発明の磁気記録媒体の磁性層は、残留磁化Mrと磁性層厚δの積であるMrδが、2mT・μm〜14mT・μmである。好ましいMrδは、2mT・μm〜8mT・μmであり、さらに好ましいMrδは、3mT・μm〜7mT・μmである。
また、本発明の磁気記録媒体の磁性層は、垂直方向の角型比(SQ)が0.4以上0.7以下であり、かつ、長手方向の角型比(SQ)が0.3以上0.6未満である。好ましい垂直方向のSQは、0.4以上0.6以下であり、長手方向のSQは0.3以上0.5以下であり、さらに好ましい垂直方向のSQは、0.5以上0.6以下であり、長手方向のSQは0.4以上0.5以下である。
前記磁性層の前記MrδおよびSQの範囲を同時に満たさない場合は、再生トラック幅が狭トラック化した場合、S/N比が劣化するとともに、GMR素子が飽和する。なお上記の値は反磁界補正後の値である。
なお、リニア磁気記録システムとは、媒体が走行する方向に対して平行して信号の記録再生を行う方式であり、一般的に双方向の記録再生が要求される。代表なリニアテープシステムとしてはLTO(Linear Tape Open)やDLT(Digital Linear Tape)がある。
更に、本発明は、本発明の磁気記録媒体および再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを含むリニア磁気記録再生システム、ならびに、リニア磁気記録再生システムにおいて、本発明の磁気記録媒体に磁気信号を記録し、該信号を巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いて再生する磁気記録再生方法、に関する。本発明の磁気信号再生システムおよび磁気信号再生方法において使用される磁気記録媒体、再生ヘッド等の詳細は、先に説明した通りである。
前述のように、本発明の磁気記録媒体によれば、高密度記録領域で信号を記録するリニア磁気記録再生システムにおいて優れた記録再生特性を得ることができ、更にGMRヘッドよって高感度な読み出しが可能となる。かかる磁気記録媒体を使用する本発明の磁気信号再生システムおよび磁気信号再生方法によれば、高密度記録された信号を良好なSNRで再生することができる。
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100部
(酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1、Hc:1820 Oe(145kA/m)、平均板径:23nm、板状比:3.4、比表面積:67.2m2/g、σs:49.2A・m2/kg(49.2emu/g))
塩化ビニル共重合体 12部
(−SO3K=100eg/ton、重合度:300)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4部
(ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=0.9/2.6/1、−SO3Na=100eq/ton)
フェニルフォスフォン酸 3部
α-アルミナ(平均粒子径:0.15μm) 2部
カーボンブラック(平均粒子径:30nm) 5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 125部
シクロヘキサノン 125部
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100部
(酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1、 Hc:2500 Oe(200kA/m)、平均板径:20nm、板状比:3、σs :55A・m2/kg(55emu/g))
ポリウレタン樹脂 15部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系 −SO3Na=400eq/ton
カーボンブラック(平均粒子径:80nm) 0.5部
ダイヤモンド粉末(平均粒子径:80nm) 3部
シクロヘキサノン 150部
メチルエチルケトン 150部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
窒化鉄系磁性粉末(Fe16N2、平均粒径:15nm)
Hc:15.9kA/m(2000Oe)
BET比表面積:63m2/g
σs:100A・m2/kg(100emu/g)
100部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合樹脂 8部
(含有−SO3Na基:0.7×10-4当量/g)
ポリウレタン樹脂 25部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系
−SO3Na=400eq/ton
α−アルミナ(平均粒径:80nm) 5部
板状アルミナ粉末(平均粒径:50nm) 1部
ダイヤモンド粉末(平均粒径:80nm) 1部
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 1.5部
ミリスチン酸 1.5部
メチルエチルケトン 133部
トルエン 100部
ステアリン酸 1.5部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製コロネートL) 4部
シクロヘキサノン 133部
トルエン 33部
非磁性無機質粉末:α−酸化鉄 85部
平均長軸長:0.15μm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
表面処理:Al2O3、SiO2、
タップ密度:0.8、pH:8、
カーボンブラック 15部
平均粒子径:20nm
DBP吸油量:120ml/100g
pH:8
BET比表面積:250m2/g
塩化ビニル共重合体 13部
(−SO3K=100eg/ton、重合度:300)
ポリウレタン樹脂 6部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系 −SO3Na=120eq/ton
フェニルホスホン酸 3部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
非磁性無機質粉末:α−酸化鉄 80部
平均長軸長:0.15μm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック 20部
平均粒子径:20nm
カ−ボンブラック 3部
平均粒子径:100nm
塩化ビニル共重合体 13部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂 6部
フェニルホスホン酸 3部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ステアリン酸 3部
上記磁性層塗布液Aについて、磁性体、カーボンブラック、αアルミナ、ポリ塩化ビニル、フェニルフォスフォン酸と処方量の50質量%の各溶剤をオープンニーダで60分間混練した後、ポリウレタン樹脂と残りの成分を加えて、横型循環型タイプのピン型サンドミル分散機にジルコニアビーズ(1.0mm)をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が10m/秒で、分散滞留時間が30分によるように分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)を14部とシクロヘキサノン30部を加え、更に20分間撹拌混合したあと、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層塗布液を調製した。
また、上記非磁性層塗布液について、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、横型循環型タイプのピン型サンドミル分散機にジルコニアビーズ(1.0mm)をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が10m/秒で、分散滞留時間が30分によるように分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)6部とシクロヘキサノン30部を加え、更に20分間撹拌混合したあと、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層塗布液を調製した。
上記磁性層塗布液Bについて、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、横型循環型タイプのピン型サンドミル分散機にジルコニアビーズ(0.5mm)をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が10m/秒で、分散滞留時間が60分によるように分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)6部とシクロヘキサノン180部を加え、更に20分間撹拌混合したあと、日立ハイテク製 冷却遠心分離機 himac CR−21Dで別紙条件にて遠心分離処理を行い、凝集物を除去し、さらに0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層塗布液を調製した。
また、上記非磁性層塗布液について、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、横型循環型タイプのピン型サンドミル分散機にジルコニアビーズ(1.0mm)をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が10m/秒で、分散滞留時間が30分によるように分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)を6部加え、更に20分間撹拌混合したあと、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層塗布液を調製した。
厚さ6μmのポリエチレンナフタレート支持体上に、乾燥後の厚さが1.5μmになるように非磁性層塗布液を塗布し乾燥させた後、その上にMrδが4mT・μmになるように磁性層塗布液Bを塗布し磁性層を乾燥させた。その後、厚み0.5μmのバック層を塗布して巻き取った後、金属ロ−ルのみから構成されるカレンダーで速度100m/min、線圧300kg/cm(294kN/m)、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃dry環境で24時間熱処理を行った。熱処理後、1/2インチ幅にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性面に押し当たるように取り付けたテープクリ−ニング装置で磁性層の表面のクリ−ニングを行いテープ試料を得た。
磁性層厚および/または磁性層塗布後の配向条件を表1に示すように変更した以外は、サンプルM2と同様な方法でM3〜12を作製した。なお、配向装置Aは同極対向長手配向磁石、配向装置Bは異極対向垂直配向磁石、配向装置Cはソレノイド長手配向磁石であり、この順に設置されている。また、各水準における各磁石の表面磁束密度は表1に記載された条件に設定した。
使用した強磁性六方晶フェライト粉末の板状比を3.5に変更した以外は、サンプルM2と同様な方法でサンプルM17を作製した。
使用した強磁性六方晶フェライト粉末の板状比を3.5に変更した以外は、サンプルM14と同様な方法でサンプルM18を作製した。
磁性層塗布液調製において、遠心分離機による凝集物除去を実施しないこと以外は、サンプルM2と同様な方法でサンプルM19を作製した。
上記磁性層塗布液Cについて、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、横型循環型タイプのピン型サンドミル分散機にジルコニアビーズ(0.5mm)をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が10m/秒で、分散滞留時間が60分によるように分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)6部とシクロヘキサノン180部を加え、更に20分間撹拌混合したあと、日立ハイテク製 冷却遠心分離機 himac CR−21Dで別紙条件にて遠心分離処理を行い、凝集物を除去し、さらに0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層塗布液を調製した。
また、上記非磁性層塗布液について、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、横型循環型タイプのピン型サンドミル分散機にジルコニアビーズ(1.0mm)をビーズ充填率80%で詰めて、ピン先端周速が10m/秒で、分散滞留時間が30分によるように分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)を6部加え、更に20分間撹拌混合したあと、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層塗布液を調製した。
厚さ6μmのポリエチレンナフタレート支持体上に、乾燥後の厚さが1.5μmになるように非磁性層塗布液を塗布し乾燥させた後、その上にMrδが4mT・μmになるように磁性層塗布液Bを塗布し磁性層を乾燥させた。その後、厚み0.5μmのバック層を塗布して巻き取った後、金属ロールのみから構成されるカレンダーで速度100m/min、線圧300kg/cm(294kN/m)、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃dry環境で24時間熱処理を行った。熱処理後、1/2インチ幅にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレ−ドが磁性面に押し当たるように取り付けたテープクリーニング装置で磁性層の表面のクリ−ニングを行いテープ試料を得た。
磁性層厚および/または磁性層塗布後の配向条件を表1に示すように変更した以外は、サンプルM20と同様な方法でM21〜29を作製した。なお、配向装置Aは同極対向長手配向磁石、配向装置Bは異極対向垂直配向磁石、配向装置Cはソレノイド長手配向磁石であり、この順に設置されている。また、各水準における各磁石の表面磁束密度は表1に記載された条件に設定した。
ドラムテスターで1/4インチテープを相対速度2m/secで走行させヘッドを押し当て記録、再生を行った。巻きつけテンションは100gで行った。
記録ヘッドとしては、飽和磁化1.3T、ギャップ長0.2μm、トラック幅20μmのMIGヘッドを用いた。記録電流は、各テープの最適記録電流に設定した。
再生ヘッドとしては、表1中のNo.1ではトラック幅6.0μm、シールド間距離0.16μmのAMRヘッド、それ以外ではトラック幅1.5μm、シールド間距離0.16μmのGMRヘッドを用いた。
S/N比は、7.875MHz(200kfci)の記録再生信号の出力をS、0〜15.75MHz(0〜400kfci)の積分ノイズをNとし、その比を取った。積分ノイズNの積分範囲のうち、0〜1MHzの範囲は1MHzのノイズ値で代用し、7.375MHz〜8.375MHzの範囲は7.375MHzのノイズ値と8.375MHzのノイズ値の平均値で代用して計算した。
測定はローデシュワルツ社製スペクトラムアナライザFSEA30を用い、RBW:100kHz、VBW:1kHz、SWP:700ms、AVE:16times、の設定で測定を行った。
孤立波を記録し、再生信号をデジタルオシロスコープで捕捉し、プラス方向とマイナス方向の出力比をアシンメトリーとした。数値が小さいほど信号に歪みがなくMR抵抗値または再生出力の直線性が維持されていることを意味する。アシンメトリーが15%以下であれば、MRヘッド飽和に起因する信号歪みが少なく、良好な再生出力を得ることができる。
スライドガラス上に貼り付けたテープに対し、直径6.35mmのアルミナ球を荷重20gで押し当て、一定の位置を20往復摺動させた後のテープ側のダメージ状態を光学顕微鏡で観察し、磁性層が破壊されている場合を×、磁性層に弱いダメージが入っている場合を△、磁性層に何らダメージが確認されなかった場合を○と判断した。
D95:HORIBA製レーザー散乱粒度測定機LB500を用いて、上層磁性塗料の分級処理後の液0.5mgをメチルエチルケトン49.5mgで希釈して液で粒度分布を測定する。粒子径毎の存在比率分布を求めた時の累積体積の95%となる粒子径を求めた。
振動試料型磁束計(東英工業製)を用い、Hm1194kA/m(15kOe)で測定した。
表1に示すように、Mrδが2〜12mT・μmの範囲であり、垂直方向SQが0.4〜0.7の範囲であり、長手方向SQが0.3以上0.6未満のテープ試料に記録された信号をトラック幅1.5μmのGMRヘッドで再生することにより良好なS/N比を得ることができた。また試料の耐久性も良好であった(表1中、No.3〜5、7、8、12〜15、18、21〜23、25、26、29)。また、これら試料では、アシンメトリーが低く信号の直線性が良好に維持されていた。
Claims (11)
- 非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
磁性層の残留磁化Mrと磁性層の厚さδの積であるMrδが2mT・μm以上12mT・μm以下であり、垂直方向の角型比が0.4以上0.7以下であり、かつ長手方向の角型比が0.3以上0.6未満であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 磁性層の厚さは30nm以上130nm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 強磁性粉末は六方晶フェライト粉末または窒化鉄粉末である請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- Mrδは2mT・μm以上8mT・μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを使用するリニア磁気記録再生システムにおいて使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドの再生トラック幅は、0.1〜2.5μmの範囲である請求項6に記載の磁気記録媒体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体および再生ヘッドとして巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを含むリニア磁気記録再生システム。
- 巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドの再生トラック幅は、0.1〜2.5μmの範囲である請求項8に記載のリニア磁気記録再生システム。
- リニア磁気記録再生システムにおいて、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体に磁気信号を記録し、該信号を巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いて再生する磁気記録再生方法。
- 巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッドの再生トラック幅は、0.1〜2.5μmの範囲である請求項10に記載の磁気記録再生方法。
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