JP2691790B2 - 磁気記録媒体用磁性粉末の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体用磁性粉末の製造方法

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【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は主に高密度垂直記録媒体の構成に用いられる
磁性粉末の製造方法に係わり、特に粒度分布が狭くか
つ、分散性にすぐれた磁気記録媒体用磁性粉末を製造す
る方法に関する。
(従来の技術) 従来から、基体と垂直な方向の磁化を用いる垂直記録
方式に適した高密度垂直記録媒体として、垂直方向に磁
化容易軸を配向し易いBaフェライトのような六方晶系フ
ェライトを用いたものが知られている。すなわち、Baフ
ェライトの微粉末を、樹脂バインダ、溶剤および各種添
加剤と共に混合して磁性塗料を調製し、この磁性塗料を
非磁性基体上に塗布したものが知られている。
ところで、一般にBaフェライトにおいては、フェライ
トの構成原子の一部を、特定の金属元素で置換すること
により、その保磁力を磁気記録に適した値まで低減させ
ている。また、Baフェライトでは他の磁性粉末と比べ
て、媒体出力に影響を及ぼす飽和磁化が低いという欠点
があるため、ZnOやNb2O5を添加することによって、前記
特性を改善している。
そして、このような磁気記録媒体用の六方晶系フェラ
イト磁性粉末を製造する方法としては、たとえば、六方
晶系フェライトの基本成分と、保磁力低減用の置換成分
と、飽和磁化向上など特性改善用の添加成分およびガラ
ス形成成分を混合して加熱溶融させ、この溶融物を急速
に冷却して非晶質化(ガラス化)し、得られた非晶質体
に熱処理を施して六方晶系フェライトの結晶粒子を析出
させた後、これを粉砕し、得られた微粉末をリン酸や酢
酸などの希酸で洗浄処理し、ガラス形成成分を溶解除去
することによって、所望の六方晶系フェライト磁性粉末
を分離抽出するという、ガラス結晶化法が採られてい
る。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、このような従来の製造方法では、得ら
れる磁性粉末の粒外径が増大し、しかも粒度分布が広が
ってしまう。このため磁性粉末を塗料化する工程で、樹
脂バインダに分散させにくく、また構成した磁気記録媒
体のS/N比(出力信号とノイズレベルとの比)が低くな
るという問題があった。つまり、高密度磁気記録媒体用
として期待されながら、十分に所要の機能を果し得ない
という不都合があった。
本発明はこのような問題を解決するためになされたも
ので、高い記録密度と大きな再生出力を有する磁気記録
媒体を得ることができるような、粒度分布が狭くて分散
性が良好な六方晶系フェライト磁性粉末の製造方法の提
供を目的とする。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 本発明の磁気記録媒体用磁性粉末の製造方法は、一般
式 AO・n{(Fe1-XMX)2O3} (但し、AはBa、Sr、Ca、およびPbの中から選ばれた少
なくとも1種の元素、MはCo、Ti、In、Ni、Cu、Zn、N
b、Zr、V、Ta、Al、Cr、Sb、Hf、Mo、W、Ir、Sn、お
よびMgの中から選ばれた少なくとも1種の元素、5.0≦
n≦6.5、0.02≦x≦0.24)で示される六方晶系フェラ
イトが形成される組成分と、B2O3を含むガラス形成成分
とを混合して加熱溶融させ、この溶融物を急速冷却して
非晶質体とし、この非晶質体に熱処理を施して六方晶系
フェライトの結晶を析出させ、析出した結晶を粉砕した
後、ガラス形成成分を溶解除去して六方晶系フェライト
粉末を抽出する磁気記録媒体用磁性粉末の製造方法にお
いて、前記非晶質体中に、K2Oを1〜5mol%の割合で、
かつK2OとB2O3とのmol数の比が1.00:31.23〜5.00:31.23
の範囲内にあるように含有させることを特徴としてい
る。
ここで元素Mは、形成される六方晶系フェライトの保
磁力を制御するための置換成分である。しかして、この
置換元素の置換量xが0.02より小さいと保磁力が大きく
なりすぎ、反対にxが0.24を超えると保磁力が小さくな
りすぎて好ましくない。
また、上記六方晶系フェライト形成成分とともに非晶
質体中に含有される酸化カリウムK2O成分は、得られる
磁性粉末の粒度分布を狭小化する役割をなすもので、そ
の比率が他の成分全体の5mol%を超えると、非晶質体が
水分や炭酸ガスを吸収し易くなり、安定に六方晶系フェ
ライトを製造することが難しくなる。また非晶質体が水
分や炭酸ガスを吸収しないようにしても、非晶質体の融
点が低下するため、焼結を起こさずに所要の元素の置換
および結晶化を充分に行うことが困難である。したがっ
て酸化カリウムの含有比率は、5mol%以下であることが
必要である。
また、酸化カリウムの比率が1mol%より小さいと、粒
度分布の狭小化が効果的になされず好ましくない。
(作用) 本発明の磁気記録媒体用磁性粉末の製造方法において
は、六方晶系フェライトが形成されるような成分を主体
とする組成分を、加熱溶融させた後急冷して非晶質化す
るにあたり、酸化カリウムK2Oが非晶質体中に1〜5mol
%の比率で含有され、かつK2OとB2O3とのmol数の比が1.
00:31.23〜5.00:31.23の範囲内にあるように含有される
ように、原料成分の種類および組成比を選択したことに
より理由は明確でないが、粒度分布が狭くすぐれた磁気
特性および分散性を有する磁性粉末を、容易にかつ再現
性良く得ることができる。
つまり、本発明方法は高い記録密度と大きな再生出力
を有する磁気記録媒体の構成に適する磁性粉末の提供を
可能とする。
(実施例) 以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1〜3 先ず、フェライトの基本成分Fe2O3と、保磁力低減の
ための置換成分CoOと、飽和磁化向上のための添加成分Z
nOおよびNb2O5と、ガラス形成成分BaO、B2O3、および酸
化カリウムK2Oとを、表−1に示す組成比(mol%)をな
すように、弁柄、酸化コバルト、炭酸バリウム、ほう
酸、酸化カリウムの各原料を秤取した。
次いで、前記秤取した各原料を充分混合した後、白金
るつぼ内に収容し、高周波加熱ヒーターを用いて1350℃
の温度で加熱溶融した。しかる後、前記溶融物を回転数
500rpm、加圧力5ton/cm2の水冷双ロール上に注いで急冷
し、厚さ50μmのフレーク状の非晶質体を得た。
上記で得た各非晶質体を、それぞれ800℃の温度で5
時間加熱処理し、Baフェライトの結晶を析出させた後、
得られた結晶化物を粉砕し、次いでこの結晶粉末を酢酸
溶液(10%)中に投入し、12時間超音波による凝集塊分
解を行いながら、ガラス成分の溶解、除去処理を行っ
た。
しかる後、80℃以上の温水を用いて洗浄を繰返し、ガ
ラス形成成分などを完全に除去してから、脱水乾燥処理
を行い3種類の六方晶系フェライト粉末を得た。
また比較例として、表−1に示す組成比になるように
各原料成分を秤取し、実施例と同様にして六方晶系フェ
ライト粉末を製造した。
上記によってそれぞれ得た磁性粉末について、平均粒
径D(nm)、保磁力Hc(Oe)、飽和磁化σg(emu/g)
および比表面積Ss(m2/g)の諸特性をそれぞれ測定した
ところ表−2に示すごとくであった。
また実施例1、実施例3、および比較例で得られた磁
性粉末の粒度分布を第1図に示す。第1図において、曲
線aは実施例1の場合を、曲線bは実施例3の場合を、
曲線cは比較例の場合をそれぞれ示す。
なお、保磁力Hcおよび飽和磁化σgについては、VSM
によって測定し、比表面積Ssについては、BET測定器に
よって測定した。また、平均粒径Dは、透過型電子顕微
鏡写真によって測定した。
次に、上記実施例および比較例でそれぞれ得た六方晶
系フェライト磁性粉末を、それぞれ100g秤取し、これを
メチルエチルケトン−トルエン混合溶剤(1:1)200gに
懸濁させた後、これに分散剤としてレシチン3gを加え、
サンドグラインダー(ボールミル)を用い4時間かけて
分散させた。次いでこれに、バインダーとしてポリウレ
タン樹脂N−3022の酢酸メチル35%溶液50gを加え、さ
らに2時間分散させた後、ガラスビースをろ別して磁性
塗料を得た。
しかる後、前記によって得た磁性塗料を、厚さ25μm
のポリエステルフィルム上にロールコーターを用いてそ
れぞれ塗布し、トンネル型乾燥炉によって100℃で乾燥
処理を行った後、常法によってカレンダー処理、スリッ
ト処理を行い、膜厚10μmの磁性層を有するテープ状の
磁気記録媒体を得た。
次いで得られた磁気記録媒体について、媒体角型比、
塗膜光沢度、媒体のS/N比(dB)をそれぞれ測定した結
果を、表−3および第2図にそれぞれ示す。
なお、媒体角型比はVSMによる測定値であり、塗膜光
沢度はJISZ8741「光沢度測定方法」による測定値であ
る。また媒体のS/N比(dB)は、酸化カリウムK2Oを添加
しないで製造された磁性粉末(比較例)から得られた磁
気記録媒体のS/N比を、基準(0dB)とした値である。
以上の実施例から明らかなように、酸化カリウムK2O
が非晶質体中に適当な割合で含有されるように、調製さ
れガラス結晶化法で製造された実施例の磁性粉末は、平
均粒径が小さく、粒度分布も狭くシャープになってい
る。
したがって、前記本発明に係る磁性粉末を塗料化する
場合には、樹脂バインダに対して良好な分散性を呈し、
また構成さた磁気記録媒体も媒体角型比、塗膜光沢度、
媒体のS/N比などすぐれた特性を保持発揮する。
[発明の効果] 以上の説明からも明らかなように、本発明の製造方法
によれば、粒度分布が狭く塗料化の際の分散性の良い磁
性粉末を、再現性良く得ることができる。そして得られ
た磁性粉末を使用することによって、高い記録密度と再
生出力を備えた磁気記録媒体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法および従来の方法でそれぞれ製造し
た磁性粉末の粒度分布を比較して示す曲線図、第2図は
本発明方法および従来の方法でそれぞれ製造した磁性粉
末を用いて構成した磁気記録媒体のS/N比を比較して示
す特性図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 AO・n{(Fe1-XMX)2O3} (但し、AはBa、Sr、Ca、およびPbの中から選ばれた少
    なくとも1種の元素、MはCo、Ti、In、Ni、Cu、Zn、N
    b、Zr、V、Ta、Al、Cr、Sb、Hf、Mo、W、Ir、Sn、お
    よびMgの中から選ばれた少なくとも1種の元素、5.0≦
    n≦6.5、0.02≦x≦0.24) で示される六方晶系フェライトが形成される組成分と、
    B2O3を含むガラス形成成分とを混合して加熱溶融させ、
    この溶融物を急速冷却して非晶質体とし、この非晶質体
    に熱処理を施して六方晶系フェライトの結晶を析出さ
    せ、析出した結晶を粉砕した後、ガラス形成成分を溶解
    除去して六方晶系フェライト粉末を抽出する磁気記録媒
    体用磁性粉末の製造方法において、 前記非晶質体中に、K2Oを1〜5mol%の割合で、かつK2O
    とB2O3とのmol数の比が1.00:31.23〜5.00:31.23の範囲
    内にあるように含有させることを特徴とする磁気記録媒
    体用磁性粉末の製造方法。
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