JP2717735B2 - 磁気記録媒体用磁性粉の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体用磁性粉の製造方法

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JP2717735B2
JP2717735B2 JP3101309A JP10130991A JP2717735B2 JP 2717735 B2 JP2717735 B2 JP 2717735B2 JP 3101309 A JP3101309 A JP 3101309A JP 10130991 A JP10130991 A JP 10130991A JP 2717735 B2 JP2717735 B2 JP 2717735B2
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裕之 田中
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の目的】
【0002】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体に適する磁
性粉の製造方法に関し、さらに詳しくは、保磁力の安定
性にすぐれた磁性粉をガラス結晶化法により製造する方
法に関する。
【0003】
【従来の技術】磁気記録媒体は、オ−ディオ、ビデオ、
コンピュ−タなどの広い分野で、多くの情報を記録する
記録媒体として使用されている。近年、ワードプロセッ
サやパーソナルコンピュータなどに用いられるフロッピ
ーディスクの汎用化に伴い、それら磁気記録媒体が使用
される各種環境条件下において、磁性材料の主要特性で
ある保磁力の安定性が厳しく求められている。
【0004】従来より、このような磁気記録媒体用磁性
粉としては、たとえばバリウムフェライトなどの六方晶
系フェライト磁性粉が多用されている。そして、その製
造方法の一つにガラス結晶化法があげられる。このガラ
ス結晶化法は、六方晶系フェライト基本成分と、保磁力
低減化のための置換成分と、ガラス形成成分とを含む原
料混合物を加熱溶融し、得られた溶融物を急速冷却して
非晶質体を作製し、次いでこの非晶質体に熱処理を施し
て六方晶系フェライトを析出させ、そしてこれを抽出す
るという工程からなっている。
【0005】このガラス結晶化法においては、ガラス形
成成分として、たとえばBaOとB2 3 との組み合わせ
などが使用されるが、上記フェライトとこれらガラス形
成成分の配合量は、図4に示す一例を示す組成図に基づ
き決定される。同図にはバリウムフェライト析出時の3
成分(Fe2 3 、BaO、B2 3 )の化学量論的な比率
(モル%)を表す線が示されている。
【0006】上記したガラス結晶化法により製造される
六方晶系フェライト磁性粉は、平均粒径50〜70 nm 、板
状比(粒子径/粒子厚) 3〜5 程度の板状の非常に凝集
しやすい粒子である。バリウムフェライトやストロンチ
ウムフェライトなどの六方晶系フェライトは、一軸性の
六方晶系フェライト結晶の構成元素であるFe原子の一部
を、5価金属であるNbと、たとえばCo、Zn、Ni、Cu、M
g、などの2価金属とで置換したものや、さらに1化学
式あたり0.05〜 0.5個程度の4価金属のSn原子で置換し
たものが好適であり、これらの元素の全置換量は、保磁
力を 500〜 3000Oe の範囲にする量が望ましい。この
ような六方晶系フェライト置換体の組成はたとえば次に
示す一般式で表される。
【0007】Ma O・n(Fe1-x Mb x ) 2 3 (式中、Ma は Ba,Sr,Ca,Pbのいずれか1種の元素を表
し、Mb はCo,Zn,Ni,Cu,Mg,Mn,In,Ti,Sn,Nb などの群か
ら選ばれた少なくとも2種の元素を表す。n は、5.4 〜
6.0の数を表す。)そして、バリウムフェライトの場
合、その保磁力(Hc)は温度変化に対して約6 Oe /℃
の正の変化量を持つことが知られている。以下文中で
は、環境の温度変化による保磁力(Hc)の変化量が大き
いことを、保磁力(Hc)の温度依存性が大きいと表現す
る。一方、高温多湿の環境下で長期間保管される場合に
は、環境温度に変化がなくとも、保磁力(Hc)が正の経
時変化を示すことも知られている。以下、長期間の保管
による保磁力(Hc)の経時変化量が大きいことを環境安
定性が小さいと表現する。
【0008】そして、このような六方晶系フェライト磁
性粉においては、フェライト成分中のFeの一部に置換さ
れる置換元素の一つとしてSnを導入することにより、保
磁力(Hc)の温度依存性が改善され、保磁力(Hc)の変
化量がこの置換により3 Oe/℃へとほぼ半減すること
がこれまでにも判明している。
【0009】一方、環境安定性に関しては、フェライト
磁性粉の粒径と板状比とを共に大きくすることにより、
保磁力の経時変化量を低減し得ることが判明している。
さらに、ガラス結晶化法によって六方晶系フェライト磁
性粉を製造する場合に得られるフェライト磁性粉の板状
比を増大させるためには、ガラス成分であるBaOとB2
3 との組成比を、図4中に矢印で示したように、化学
量論線よりも相対的にBaO過剰側に変化させればよいこ
とが知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、六方晶系フ
ェライト磁性粉の保磁力(Hc)の温度依存性を小さくす
るためにフェライト成分中のFeの一部をSnで置換した場
合には、粒子形状が微粒子化する傾向にあった。そし
て、そのような微粒子化を防止するためには、ガラス成
分であるBaOとB2 3 との組成を図4に示す化学量論
線よりもB2 3 過剰側に相対置換すればよいことが知
られている。そこで、従来は保磁力(Hc)の温度依存性
を改善するためには、フェライト成分中のFeの一部をSn
で置換するとともに、ガラス成分であるBaOとB2 3
との組成比をB2 3 過剰側に相対置換して微粒子化を
ふせぎ粒子径の増大を図っていた。
【0011】しかしながら、このようにBaOとB2 3
との組成をB2 3 過剰側に相対置換することは、六方
晶系フェライト粉の保磁力(Hc)の環境安定性向上のた
めの手段として上述した、ガラス成分のBaO過剰側への
相対置換と相反することになる。すなわち、保磁力(H
c)の温度依存性改善の目的でSnの導入とともにB2
3 過剰側への相対置換をする場合には、保磁力(Hc)の
環境安定性が損なわれてしまう。このようなことから、
原料組成を単に改変しただけでは、保磁力の温度依存性
および環境安定性をともに改善した磁性粉を得ることが
困難であることが理解されよう。
【0012】そこで本発明はこのような従来のガラス結
晶化法の難点を解消すべくなされたものであり、単なる
原料組成の改変によらずに、保磁力(Hc)の温度依存性
が小さく環境安定性が大きくかつ分散性にもすぐれた六
方晶系フェライト磁性粉の製造方法を提供することを、
その目的とする。
【0013】
【発明の構成】
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガラス結晶化
法により磁気記録媒体用磁性粉を製造するにあたり、 (A)BaO、B、Fe、および、置換成
分として少なくともSnを含む出発原料を溶融したのち
急速冷却を施して非晶質フレークとし、この非晶質体フ
レークを熱処理して六方晶系フェライト結晶を析出さ
せ、しかるのちに乾式粉砕して得られる磁性粉と、 (B)BaO、B、Fe、および、Snを
除く置換成分を含む出発原料を、BaOとBとの
比率がバリウムフェライトを化学量論的に析出させる比
率よりBaO過剰側にあるように配合し、溶融したのち
急速冷却を施して非晶質フレークとし、この非晶質体フ
レークを熱処理して六方晶系フェライト結晶を析出さ
せ、しかるのちに乾式粉砕して得られる磁性粉とを、 前記磁性粉(A)25〜75重量%、前記磁性粉(B)
75〜25重量%の比率で混合したのち湿式微粉砕し、
得られた混合粉砕物に酸処理を施してガラス成分を除去
するようにしたことを特徴とする。
【0015】本発明において、(A)、(B)両磁性粉
混合時に、磁性粉(A)の混合比率が75重量%を越える
場合には保磁力の温度依存性の改善効果は大になるもの
の、環境安定性改善効果が不十分になるため好ましくな
い。一方、磁性粉(B)の混合比率が75重量%を越える
場合には、保磁力の環境安定性は向上するが、温度依存
性の改善効果が不十分になるため好ましくない。したが
って、2種の磁性粉の混合比率が上記したように本発明
の比率の範囲内にある場合に、保磁力の温度依存性およ
び環境安定性ともに改善効果が十分にあがる。
【0016】
【作用】このように構成された本発明の磁気記録媒体用
磁性粉の製造方法においては、フェライト成分中のFeの
一部をSnで置換した原料混合物からガラス結晶化法によ
り、保磁力(Hc)の温度依存性を低減させた磁性粉
(A)を製造する。一方、ガラス成分であるBaOとB2
3との組成比をBaO過剰側に相対的に変化させた原料
混合物を用いてガラス結晶化法により、板状比を増大さ
せた磁性粉(B)を製造する。板状比を増大させたこと
により、磁性粉(B)の保磁力(Hc)の環境安定性は向
上される。
【0017】このように、磁性粉(A)と磁性粉(B)
の非晶質フレークを個別に製造して熱処理したのち、
所定の比率で両磁性粉を混合し湿式微粉砕し、次いで酸
処理を施してガラス成分を除去することにより、磁性粉
(A)と磁性粉(B)のそれぞれの特長が同時に発揮さ
れる磁性粉が得られる。したがって、保磁力(Hc)の
温度依存性が小さく環境安定性が大きい、すぐれた六方
晶系フェライト磁性粉が得られる。
【0018】
【実施例】以下、本発明を、六方晶系フェライトたとえ
ばマグネトプランバイト型バリウムフェライトに対して
実施した具体例にしたがって説明する。
【0019】実施例1〜3 まず、磁性粉(A)の製造のため、BaCO3 、Fe
2 3 、TiO2 、Co3 4 、H3 BO3 、およびSnO2
を、次の表1の配合となるように所定量秤量混合した。
同様に、磁性粉(B)の製造のため、BaCO3 、Fe2
3 、TiO2 、Co3 4 、およびH3 BO3 を、同様に次
表の配合となるように所定量秤量混合した。
【0020】
【表1】
【0021】なお、磁性粉(B)の成分組成は、図4中
の矢印に示すように、ガラス結晶化法においてバリウム
フェライトが化学量論的に析出する組成ラインよりBaO
過剰側(あるいはB2 3 不足側)に相対置換されたも
のである。
【0022】上記のようにして調製された混合物を原料
として、それぞれ以下に示す方法でガラス結晶化を行な
い、磁性粉(A)および磁性粉(B)を製造した。ま
ず、各混合物をそれぞれプラチナルツボに収容し、高周
波誘電加熱により約1350℃に加熱して原料を均質溶融し
た。その後、得られた溶融物を水冷高速回転双ロールに
より圧延急冷して、厚さ40〜50μm の非晶質フレークを
成形した。そして、得られた非晶質フレークを均一に篩
分(10メッシュパス)した後、熱処理を施してフレーク
を固化させた。熱処理の条件は、 800℃までは50℃/hr
で一定昇温加熱し、 800℃において 6時間加熱するとい
うものである。そして、熱処理により固化した非晶質フ
レークを、ブラウンクラッシャなどの乾式粉砕機を用い
て 100〜 300μm 程度の粉砕粒度に粉砕し、磁性粉
(A)および磁性粉(B)を得た。なおここまでの段階
は2種の混合組成物それぞれ別個に実施した。
【0023】次に、上記のようにして得られた2種の磁
性粉(A)と(B)とを各種混合比率で均一に混合した
混合物1〜3を、ボールミルによる湿式粉砕を行って混
合粉砕物1〜3を得た。粉砕条件は、15 rpm、10時間で
あった。得られた各混合粉砕物に、10%酢酸溶液による
酸処理を施し、その後 pH5.5以上になるまで水洗いを繰
り返した。そして、これを乾燥させて本発明の方法によ
り得られた磁性粉実施例1〜3とした。
【0024】比較例1,2 また、従来方法との比較のため、磁性粉(B)および磁
性粉(A)それぞれの単独使用による磁性粉も調製し、
これにより得られた磁性粉を従来方法により得られた磁
性粉比較例1、2とした。
【0025】次の表2には、各実施例および比較例にお
ける磁性粉(A)と(B)との混合比率を示す。
【0026】
【表2】
【0027】なお、これら実施例および比較例のバリウ
ムフェライト磁性粉を評価するにあたって、下記の要領
でこれら磁性粉(AB)を使用して磁気記録媒体試料を
作製し、各媒体の保磁力(Hc)の温度変化と経時変化と
を測定した。なお、磁性粉の試料番号とその磁性粉を使
用して試作した磁気記録媒体の試料番号とは対応してい
る。
【0028】磁気記録媒体を試作するにあたり、まず磁
性粉100 g をメチルエチルケトン−トルエン混合溶剤
(1:1) 200 g に懸濁させ、これにレシチン3 gを加えサ
ンドグラインダを用いて4時間分散させた。次にポリウ
レタン樹脂の酢酸メチル35%溶液50 gを加え、さらに2
時間分散させた後、ガラスビーズを濾別して磁性塗料分
散溶液を得た。次いで、この分散溶液を厚さ25μm のポ
リエステルフィルム上にロールコーター法にて塗布し、
その後 100℃の乾燥トンネル炉にて乾燥処理を施して、
膜厚10μm の磁性記録層をもつ磁気記録媒体試料、実施
例1〜3,および比較例1、2を製造した。なお、この
ようにして得られた各媒体試料の保磁力(Hc)は700 O
e であった。
【0029】次に、これら媒体の温度依存性と環境変化
を評価するにあたって以下の測定を行った。まず、保磁
力(Hc)の温度依存性を評価するために、精密温風供給
装置を備えた試料振動型磁力計を使用し、各温度におけ
る各媒体の保磁力(Hc)を測定した。そして、その測定
結果から1℃あたりの保磁力の変化量(ΔHc)を算出
し、値を比較した。
【0030】次の図1に示した測定結果からも明らかな
ように、本発明の実施例1、2、および3の磁気記録媒
体のΔHcは約3 Oe /℃より小さく、磁性粉(B)の単
独使用である比較例1に比べ温度依存性改善効果は十分
に見られた。
【0031】一方、保磁力(Hc)の環境安定性を評価す
るためには、60℃、90%の高温多湿槽に各媒体試料を設
置保管し、保管日数18日経過後の保磁力(Hc)を測定し
た。次の図2に示したその測定結果からも明らかなよう
に、本発明の実施例1、2、および3の磁気記録媒体の
18日経過後の保磁力(Hc)の変化量は 20 Oe 以下であ
り、磁性粉(A)の単独使用である比較例2に比べて環
境安定性改善効果が十分に見られた。
【0032】さらに実施例2(磁性粉(A)50重量%、
磁性粉(B)50重量%)、および実施例3(磁性粉
(A)75重量%、磁性粉(B)25重量%)の媒体につい
ては上記の測定と同じ環境条件下で保管を行い、保管開
始時、6日経過後、および30日経過後の保磁力(Hc)の
経時変化を調べた。そして、この測定により得られた2
媒体の保磁力(Hc)の経時変化を次の図3に示した。図
3からも明らかなように、実施例2および3の媒体は保
管期間中安定した保磁力(Hc)を示していた。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、保
磁力(Hc)の温度依存性を改善した磁性粉と環境安定
性を改善した磁性粉とを個別にガラス結晶化法により製
造した後、両者を所定の割合で混合して湿式微粉砕し、
次いで酸処理を行っているので、保磁力(Hc)の温度
依存性が小さく環境安定性がすぐれ、かつ分散性も優秀
な六方晶系フェライト磁性粉が製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁性粉(A)および(B)の混合比率と、磁気
記録媒体の保磁力温度変化量ΔHcとの関係を示す図
【図2】磁性粉(A)および(B)の混合比率と、磁気
記録媒体の高温多湿環境下での保磁力変化量との関係を
示す図
【図3】実施例2および3の磁気記録媒体の、高温多湿
環境下における保磁力の経時変化を示す図
【図4】 ガラス結晶化法によるバリウムフェライト析
出の組成図

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス結晶化法により磁気記録媒体用磁性
    粉を製造するにあたり、 (A)BaO、B、Fe、および、置換成
    分として少なくともSnを含む出発原料を溶融したのち
    急速冷却を施して非晶質フレークとし、この非晶質体フ
    レークを熱処理して六方晶系フェライト結晶を析出さ
    せ、しかるのちに乾式粉砕して得られる磁性粉と、 (B)BaO、B、Fe、および、Snを
    除く置換成分を含む出発原料を、BaOとBとの
    比率がバリウムフェライトを化学量論的に析出させる比
    率よりBaO過剰側にあるように配合し、溶融したのち
    急速冷却を施して非晶質フレークとし、この非晶質体フ
    レークを熱処理して六方晶系フェライト結晶を析出さ
    せ、しかるのちに乾式粉砕して得られる磁性粉とを、 前記磁性粉(A)25〜75重量%、前記磁性粉(B)
    75〜25重量%の比率で混合したのち湿式微粉砕し、
    得られた混合粉砕物に酸処理を施してガラス成分を除去
    するようにしたことを特徴とする磁気記録媒体用磁性粉
    の製造方法。
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