JP3083891B2 - 磁気記録媒体用磁性粉およびその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体用磁性粉およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は六方晶系フェライトから
なる磁気記録媒体用磁性粉およびその製造方法に係り、
さらに詳しくは、アルカリ土類元素の溶出性を低くして
特性の低下を防止した六方晶系フェライトからなる磁気
記録媒体用磁性粉およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、オ−ディオ、ビデオ、
コンピュ−タなどの広い分野で、多くの情報を記録する
記録媒体として使用されている。近年、ワードプロセッ
サやパーソナルコンピュータなどに用いられるフロッピ
ーディスクの汎用化に伴い、それら磁気記録媒体が使用
される各種環境条件下において、特性の安定性が厳しく
求められるようになってきている。
【0003】従来より、このような磁気記録媒体に用い
られる磁性粉としては、ガラス結晶化法により製造され
た六方晶系のフェライト磁性粉が多用されている。
【0004】ガラス結晶化法は、六方晶系フェライト基
本成分と、保磁力低減化のための置換成分と、ガラス形
成成分とを含む原料混合物を加熱溶融し、得られた溶融
物を急速冷却して非晶質体を作製し、次いでこの非晶質
体に熱処理を施して六方晶系フェライトを析出させ、そ
してこの非晶質体のガラス成分を酢酸水溶液で溶解して
六方晶系フェライト粉体を分離する工程からなってい
る。
【0005】このガラス結晶化法においては、通常、出
発原料としてFe 2 3 、Ba O、B2 3 の組み合わ
せが使用され、これら各成分は六方晶系フェライトが形
成される成分範囲で配合される。また、六方晶系フェラ
イトは保磁力が非常に大きいため、保磁力を通常の磁気
記録ヘッドで磁気記録媒体の記録、消去を可能とするた
めFe 原子の一部を他の原子で置換して保磁力を200
〜2000Oe まで低減させることが行われている。
【0006】さらに、六方晶系フェライト磁性粉の粒径
と板状比とを共に大きくすることにより、保磁力の経時
変化量を低減し得ることが判明しており、六方晶系フェ
ライト磁性粉の板状比を増大させるために、ガラス成分
であるBa OとB2 3 との組成比を、化学量論比より
もBa O過剰に配合することも行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
六方晶系フェライト磁性粉を塗布型磁気記録媒体とする
場合には有機性バインダーと混合されるが、このときア
ルカリ土類成分がバインダー中に溶出し易い傾向があ
り、この有機性バインダー中に溶出したアルカリ土類成
分が大気中の亜硫酸ガス等と反応して記録媒体の信頼性
を低下させるという問題があった。
【0008】そこで本発明はこのような従来の磁気記録
媒体用磁性粉の欠点を解消すべくなされたもので、有機
性バインダーへのアルカリ土類成分の溶出をなくした磁
気記録媒体用磁性粉およびその製造方法を提供すること
を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体用
磁性粉は、一般式 AFe(12−X)19 (式中、Aは、Ba,SrおよびCaから選ばれたいず
れか1種の元素を表し、MはIn,Al,Ti,V,C
r,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Nb,Sbおよび
Taから選ばれた1種以上の元素を表し、Xは1〜2.
5の数を表す。以下同じ)で表される六方晶系フェライ
ト粉体からなり、前記六方晶系フェライト粉体の表面に
Ba,SrまたはCaの硫酸塩が形成されていることを
特徴としており、また、その製造方法は、Fe
M、AOおよびBを含む出発原料を、AOの比率
が六方晶系フェライトを化学量論的に析出させる比率よ
り過剰となるよう配合して加熱溶融する工程と、得られ
た溶融物を急速冷却して非晶質体を形成する工程と、こ
の非晶質体に熱処理を施して置換六方晶系フェライトを
析出させる工程と、前記非晶質体のガラス成分のみを溶
解して前記置換六方晶系フェライトを徴粒子として分離
する工程と、前記六方晶系フェライトを稀硫酸または硫
酸塩水溶液で処理して前記六方晶系フェライトの表面に
Ba,SrまたはCaの硫酸塩を形成する工程とを含む
ことを特徴としている。
【0010】本発明においてMで示される置換原子の平
均の価数は、置換されるFe 原子の価数3と一致させる
ことが望ましい。すなわち、例えば3価の金属であるI
n は単独で置換させてもよいが、2価の金属であるCo
,Zn 等は4価の金属であるTi ,Ge 等や5価の金
属であるNb ,V等と組合わせて価数を調整して使用す
ることが望ましい。2価の金属と4価の金属の組合せで
置換を行う場合には、Fe 原子1原子あたり例えば両金
属を1/2:1/2の原子比で使用すればよく、また2
価の金属と5価の金属の組合せで置換する場合には、そ
れぞれ1/2:2/5もしくは1:1/5の原子比で使
用すればよい。
【0011】本発明の磁気記録媒体用磁性粉においてX
の値を1〜2.5の範囲としたのは、1未満では保磁力
低減効果が不十分であり、2.5を越えると、原子の
保磁力が低くなり過ぎ媒体として必要な所用の保磁力
を得るのが難しくなるためである。
【0012】また本発明の磁気記録媒体用磁性粉の好ま
しい平均粒径は、目的とする記録波長に依存するため一
該には決められないが、0.01〜0.3μm の範囲に
あることが望ましい。0.01μm 未満では、所定の強
磁性を呈しなくなり、0.3μm を越えると単一の結晶
中に多数の磁区が存在するようになってSN比が悪化す
るようになる。
【0013】本発明の磁気記録媒体用磁性粉は次のよう
な方法で製造される。
【0014】まず、AO、M、B、Fe
らなる成分を化学量論比よりAO成分が過剰となるよう
に配合する。次ぎに、これらの成分を加熱溶融し次いで
冷却ロールを通過させる等の方法により急速冷却して非
晶質体を形成し、700〜800℃の温度で4〜10時
間程度熱処理して六方晶系フェライト微粒子を析出させ
る。この後、酢酸水溶液で処理してガラス質を溶出除去
した後水洗し、10 −5 〜10−1N稀硫酸または硫酸
アンモニウムのような可溶性の硫酸塩溶液で処理して六
方晶系フェライト徴粒子の表面のアルカリ土類成分を硫
酸イオンと反応させて不溶性の硫酸塩を形成させる。
【0015】しかる後、水洗乾燥して六方晶系フェライ
トの磁気記録媒体用磁性粉を得る。
【0016】
【作用】本発明の磁気記録媒体用磁性粉は、六方晶系フ
ェライトの表面に不溶性のアルカリ土類成分の硫酸塩が
形成されているので、塗布型磁気記録媒体とするため
に、有機性バインダーと混合しても、アルカリ土類成分
がバインダー中に溶出するようなことがなくなる。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0018】実施例1 まず、フェライト成分のFe 2 3 と、保磁力低減ため
のTi O2 、Co Oと、ガラス形成成分のBa Oと、B
2 3 とを、重量百分率でFe 2 3 33.26%、
TiO2 5.12%、Co O 5.12%、Ba O 3
2%、B2 3 24.5%の組成比となるようにH3
3 、Ba CO3 、Fe 2 3 、TiO2 、Co Oの各原
料を秤量し、これらを十分に混合して1350℃にて加熱溶
融後、この溶融物を直径120cmの水冷双ロールに回転
数500rpm 、線圧5ton で注いで急冷し、非晶質体を
製作した。
【0019】この非晶質体を所定の容器に充填し、電気
炉内に収容して800℃で5時間熱処理して結晶化させ
た。
【0020】生成した焼結体を100メッシュ程度にま
で微粉砕した後、ボールミルを用いて湿式で微粉砕し1
0%酢酸水溶液で処理してBa O、B2 3 等のガラス
成分を溶解除去した。その後、水洗を繰返しpH6以上
となったところで終了した。
【0021】このようにして得られた六方晶系バリウム
フェライト微粉末を1/100N硫酸で処理しさらに水
洗処理を行った後、乾燥させた。
【0022】得られた六方晶系フェライトのバリウム成
分の溶出性を評価するため、JIS−K5101により
水溶分を測定した。結果は以下の通りであった。
【0023】なお、下記の比較例は1/100N稀硫酸
による処理とその後の水洗処理を行わなかった点を除い
て、実施例と同じ条件で製造した六方晶系フェライトで
あって本発明との比較のために示したものである。
【0024】 実施例2 実施例1の出発原料のBa Oを、Sr Oに代えた以外
は、実施例1と同じ方法で六方晶系ストロンチウムフェ
ライトを製造し、実施例1と同じ試験法によりSr 2+
溶出を測定したところ、稀硫酸処理によりSr 2+の溶出
が低減したことが認められた。
【0025】実施例3 実施例1の出発原料のBa Oを、Ca Oに代えた以外
は、実施例1と同じ方法で六方晶系ストロンチウムフェ
ライトを製造し、実施例1と同じ試験法によりCa 2+
溶出を測定したところ、稀硫酸処理によりCa 2+の溶出
が低減したことが認められた。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明の磁気記録媒
体用磁性粉は、六方晶系フェライトの表面に不溶性のア
ルカリ土類成分の硫酸塩が形成されているので、塗布型
磁気記録媒体とするために有機性バインダーと混合して
もアルカリ土類成分がバインダー中に溶出するようなこ
とがなくなり、使用中に有機性バインダー中に溶出した
アルカリ土類成分が大気中の亜硫酸ガス等と反応して記
録媒体の信頼性を低下させるようなことがなくなる。
【0027】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 49/00 H01F 1/11 G11B 5/706

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 AFe(12−X)19 (式中、Aは、Ba,Sr およびCaから選ばれたい
    ずれか1種の元素を表し、MはIn,Al,Ti,V,
    Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Nb,Sbよび
    Taから選ばれた1種以上の元素を表し、Xは1〜2.
    5の数を表す。以下同じ)で表される六方晶系フェライ
    ト粉体からなり、前記六方晶系フェライト粉体の表面に
    Ba,SrまたはCaの硫酸塩が形成されていることを
    特徴とする磁気記録媒体用磁性粉。
  2. 【請求項2】 Fe 2 3 、M、AOおよびB2 3
    含む出発原料を、AOの比率が六方晶系フェライトを化
    学量論的に析出させる比率より過剰となるよう配合して
    加熱溶融する工程と、得られた溶融物を急速冷却して非
    晶質体を形成する工程と、この非晶質体に熱処理を施し
    て置換六方晶系フェライトを析出させる工程と、前記非
    晶質体のガラス成分のみを溶解して前記置換六方晶系フ
    ェライトを微粒子として分離する工程と、前記六方晶系
    フェライトを稀硫酸または硫酸塩水溶液で処理して前記
    六方晶系フェライトの表面にBa ,Sr またはCa の硫
    酸塩を形成する工程とを含むことを特徴とする磁気記録
    媒体用磁性粉の製造方法。
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JP5712594B2 (ja) * 2010-12-15 2015-05-07 戸田工業株式会社 磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末
JP2021125661A (ja) * 2020-02-10 2021-08-30 Dowaエレクトロニクス株式会社 マグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法
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