JP4640890B2 - 再剥離性圧着記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明の再剥離性圧着記録用紙は、インクジェット方式による記録、並びに水性インクを用いる他のペンプロッター等の記録、印刷、筆記に用いることができ、プロセスインキ、UVインキなどによるオフセット印刷も可能であり、更に、これら各種の方法を印刷・印字等の用途に於いて兼用可能な圧着記録用紙に関するものである。ここで圧着記録用紙とは、通常状態では粘着性、接着性ともに示さず加圧時に接着性を示し、加圧接着後に剥離可能な感圧接着層を有する記録用紙のことである。
【0002】
【従来の技術】
従来、官庁、自治体等の公的及び準公的機関や銀行、生命保険会社、証券会社等の金融機関、更には学校等からの成績通知や受験(検)合否通知書等の個人的プライバシーに係わる親展情報の郵送には、発送者の判断により、葉書又は封書が使われていた。しかし、個人情報の隠蔽化の点から葉書に比べ、高価な封書の使用が多く、発送者に多額の郵便費用が掛かる問題があった。
【0003】
近年、郵便法の改正に伴い、封書よりも郵便料金が安く、封書と同様に情報の機密保持ができる親展性葉書として2つ折り、3つ折りの記録用紙を重ね合わせ、葉書状に圧着する所謂「圧着葉書」が開発され、普及し始めている。
【0004】
これらの圧着用紙は感圧接着面側となる支持体に通常状態では粘着性、接着性ともに示さず、加圧時に接着性を示す感圧接着層を形成させ、親展情報を印字後に用紙を折り畳み、感圧接着層同士を合わせた状態で加圧接着するものであり、受取人は接着された感圧接着面を剥離して親展情報を読み取ることができ、剥離後は通常の方法では再接着できないことで情報の親展性を確保する記録用紙のことである。
【0005】
情報システムの発展はめざましく、それにともない各情報システムに適合した記録方式が種々開発されている。コピー・印字スピードの高速化のみならずカラー化に代表される高画質化が進み、これらの実現に大きく寄与する為に複写・印字方式である電子写真記録方式、インクジェット記録方式、感熱記録媒体を使用するサーマルヘッド記録方式が広く採用されている。
【0006】
インクジェット記録方式には種々の原理によりインクの微小液滴を飛ばして画像・文字などを記録するが、高速、低騒音、多色化が容易、現像−定着が不要などの特徴があり、記録装置として種々の用途において普及している。更に多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷と遜色ないものを得ることが可能である。また、コストが安価であることから、作製部数が少なくて済むフルカラー画像記録分野にまで用途範囲が広がってきている。
【0007】
ところでインクジェット記録用紙への種々の要求性能の中にインクの耐水性がある。インクジェット方式で印字された文字や画像などの記録部分のインクが水に濡れるなどにより溶出、滲みが発生しないことが要求され、この問題を解決する方法としてアニオン性インクジェット記録用インクを記録層にカチオン性の染料定着剤や耐水化剤を併用することで耐水性を付与する技術が多数提案されている。この一例として、記録画像を形成するための受像層に感圧接着剤を含有させ、この塗工層の上にカチオン性樹脂をオーバー塗工させた印刷用シート(特開平9−119094号公報)がある。しかし、オーバー塗工されただけのカチオン性樹脂では、表面での定着性が余り得られず、プロセスインキ、UVインキなどによるオフセット印刷の際に、湿し水に溶出して印刷用版に転移して印刷画像を汚すという印刷適性上の問題がある。
【0008】
また、圧着記録用紙をプロセスインキ、UVインキなどによるオフセット印刷した場合、インキ乾燥に用いるドライヤーの熱やUV照射により、感圧接着層の劣化により接着力が低下する問題がある。
【0009】
圧着記録用紙では、感圧接着層の上に印字して用紙を折り畳み、感圧接着層同士を合わせた状態で加圧接着後、再剥離して親展内容を確認する為に印字した内容が対向面に転写するという、「インク写り」が発生し、判読を困難にしてしまう問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、各々の印刷・印字等の方法に於いてそれらの要求特性が多々混在する中で、インクジェット方式でのインクジェット用インクの耐水性、インク写り抑制性、プロセスインキやUVインキなどのオフセット印刷適性及び熱やUV照射による感圧接着層の劣化に伴う接着力の低下抑制性に優れ、しかも各種プリンターの記録性と走行性に優れ、経済性を満足させることのできる再剥離性圧着記録用紙を提供することにある。また、水性インクを用いる他のペンプロッター等の記録、印刷、筆記に用いることができ、鉛筆やボールペン等を用いた筆記も可能である再剥離性圧着記録用紙を提供することも目的とする。
【0011】
本発明の第二の目的は、例えば使用形態として3つ折り用の再剥離性圧着記録用紙を提供することにある。また、面塗布を行うことにより、感圧接着面を片面のみ塗工する場合に生じ易い乾燥縮みによるカールの発生を防止し、更にブロッキングを抑制し、印刷・印字適性がさらに改良された再剥離性圧着記録用紙を提供することである。
【0012】
本発明の第三の目的は、天然ゴム系エマルジョン(A)とスチレン−ブタジエン系エマルジョン(B)との配合比(B)/(A)を規定することにより、上記の耐水性、インク写り抑制性、オフセット印刷適性等の諸物性が特にバランスの取れた再剥離性圧着記録用紙を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る再剥離性圧着記録用紙は、支持体の片面に、通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、接着後に剥離可能である感圧接着層を形成し、もう一方の面には顔料及び水性樹脂を主成分とする顔料層を形成した記録紙において、該感圧接着層は、沈降法合成シリカ、スチレン・ブタジエン系エマルジョン(ただし、両性イオンラテックスを除く。)、カチオン性樹脂及び天然ゴム系エマルジョン(ただし、カチオン変性天然ゴムを除く。)を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る再剥離性圧着記録用紙は、支持体の両面に、通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、接着後に剥離可能である感圧接着層を形成した記録紙において、該感圧接着層は、沈降法合成シリカ、スチレン・ブタジエン系エマルジョン(ただし、両性イオンラテックスを除く。)、カチオン性樹脂及び天然ゴム系エマルジョン(ただし、カチオン変性天然ゴムを除く。)を含有することを特徴とする。なお、本明細書において、これ以降、スチレン・ブタジエン系エマルジョンと表記する場合には、両性イオンラテックスを除き、天然ゴム系エマルジョンと表記する場合には、カチオン変性天然ゴムを除くものとする。
【0015】
本発明に係る再剥離性圧着記録用紙では、前記感圧接着層は、主成分として、前記天然ゴム系エマルジョン(A)と前記スチレン−ブタジエン系エマルジョン(B)とを混合した接着剤を含有し、かつ前記天然ゴム系エマルジョン(A)と前記スチレン−ブタジエン系エマルジョン(B)との配合比(B)/(A)は、0.05以上0.30未満であることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
まず、本発明に係る二つ折り用の再剥離性圧着記録用紙を作製する方法を説明する。支持体として、従来公知のフォーム用紙(非塗工紙)の他に、上質紙、中質紙(非塗工紙)、各種バインダーで含浸された含浸紙及び各種顔料で塗工された塗工紙、アート紙などを原紙として使用できる。先ずオフセット印刷可能な顔料塗工液を基材となる原紙に塗工し、オフセット印刷可能なインクジェット用インク受理層を形成し、次に顔料層とは反対となる面にオフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着層を形成する順序が望ましいが、この逆の順序でも良く、又2ステージのコーターヘッドで一度に表裏両面塗工しても良い。
【0018】
次に本発明に係る三つ折り用の再剥離性圧着記録用紙、すなわちZ状に折り込まれて圧着される三つ折りタイプの再剥離性圧着記録用紙を作製する場合には、支持体の表裏両面に、オフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着層を形成させる事で得られる。
【0019】
本発明の再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤塗工液で形成するオフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着層においてインクジェット方式による発色性、滲み、且つ耐水性並びにプロセスインキ、UVインキなどによるオフセット印刷適性並びに再剥離性を満たすには、主成分となる薬品の選択が重要である。本発明では上記の諸特性を満足させるために、主成分となる薬品として、沈降法合成シリカ、天然ゴム系エマルジョン、スチレン・ブタジエン系エマルジョン、カチオン性樹脂を組合わせたものを用いる。
【0020】
これらの顔料塗工液及び感圧接着剤塗工液には各種添加剤を含有しても良く、塗工時の作業向上の為、レベリング剤や消泡剤・抑泡剤、後加工性を向上させるためにワックス類、視感による白色度向上のため蛍光染料、導電性を付与させるため界面活性剤や無機塩類からなるいわゆる帯電防止剤などを含有させることができる。その他、必要に応じて分散剤、印刷適性向上剤、潤滑剤、撥水剤、浸透剤、増粘剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、染料、染料定着剤、サイズ剤、紙力増強剤、保水剤、消臭剤、防腐剤、防黴剤等の添加剤なども目的に応じて併用することが出来る。
【0021】
さらに、印刷強度(表面強度)を向上させる目的において酸化澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、大豆蛋白、合成蛋白、カゼインなどを並びに酢酸ビニル系、メチルメタクリレート・ブタジェン系エマルジョン、スチレン・ブタジエン系エマルジョン、アクリル・ブタジエン系エマルジョンなどを必要に応じ含有させることができる。
【0022】
上記オフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な顔料塗工液の塗工は、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗工されるが、塗工量は乾燥重量で3〜15g/m2 の範囲で調整されるのが望ましい。塗工量を上記範囲に限定した理由は、3g/m2未満ではインクジェット用インク受理層且つオフセットインキ受理層として、インクの受容量が低下し、印字品位や印刷上がりなどの視感的な面で劣り、更にインクジェット用インクの耐水定着性が低下し、好ましくないためである。また、塗工量が15g/m2 を超えると、印字品位や印刷上がりなどの視感的な見栄えは向上するが、経済的な面から実用性が劣り、筆記性が乏しく、紙粉が発生しやすく、好ましくない。
【0023】
上記オフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着剤塗工液の塗工は、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗工されるが、塗工量は乾燥重量で3〜15g/m2 の範囲で調整されるのが望ましい。塗工量を上記範囲に限定した理由は、3g/m2 未満ではインクジェット用インク受理層且つオフセットインキ受理層として、インクの受容量が低下し、印字品位や印刷上がりなどの視感的な面で劣り、更にインクジェット用インクの耐水定着性や感圧接着剤層としての接着力が低下し、好ましくないためである。また、塗工量が15g/m2を超えると、印字品位や印刷上がりなどの視感的な見栄えは向上するが、経済的な面から実用性が劣り、筆記性が乏しく、紙粉が発生しやすく、感圧接着層としての接着力が強すぎて印字面の紙表面破壊を起こし、好ましくない。
【0024】
天然ゴム系エマルジョンとスチレン・ブタジエン系エマルジョンとの混合物に沈降法合成シリカ100重量部に対し、カチオン性樹脂を5〜80重量部の範囲となるように添加し、塗工乾燥することにより、インクジェット用インクの発色、滲み、耐水性が十分に満たされる。
【0025】
沈降法合成シリカを使用するのは、沈降法合成シリカが超微粉シリカの二次凝集粒子であるので圧着時のクッション性に優れるため、再剥離強度を向上させることができるからである。一方、ゲル法合成シリカの二次凝集粒子は緻密である為に硬く、クッション性が悪く、不向きである。沈降法合成シリカを使用すると再剥離強度が向上するので、ゲル法シリカを含有した感圧接着層と同じ再剥離強度を得る場合においても、圧着ローラーのクリアランスを広げて加圧を減少させることができるので、対向面へのインク写りが起こらない再剥離性圧着記録用紙を得ることができる。ここで、沈降法合成シリカの平均粒径が2〜10μmのもの使用することが出来るが、平均粒径3〜4μmの物を使用し、二次凝集粒子の細孔にインクジェット用インクを取り込むものが最も好ましい。
【0026】
また、他の塗工用顔料、例えば酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、プラスチックピグメント、硫酸バリウム、水酸化アルミなどを適宜併用しても良い。また平均粒径が20μm程度の小麦澱粉との併用は、感圧接着層の表面にピークの異なる二つの凹凸状態を形成し、再剥離強度を向上させながら、耐ブロッキング性を付与させることができるので最も好ましい。小麦澱粉以外の澱粉、例えば馬鈴薯、タピオカ、コーンなどを原料とした物、あるいはシリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンなどを併用することができる。
【0027】
天然ゴム系エマルジョンとしては、通常封筒用口糊などで用いられている感圧接着剤で良く、天然生ゴム、天然加硫ゴム、メタクリル酸メチル(MMA)やスチレンモノマーなどのグラフト共重合天然ゴムエマルジョンなどやこれらの混合物を例示することができる。さらに天然ゴム系エマルジョンに対し、スチレン・ブタジェン系(SBR)やブタジェン(BR)などの合成ゴムエマルジョン並びにアクリル酸エステル、スチレン・アクリルなどのアクリル共重合系エマルジョンなどを適宜併用しても良い。この中で、MMAのグラフト共重合天然ゴムエマルジョンにスチレン・ブタジエン共重合エマルジョンを併用したものが、印刷インキ受理性、表面強度、耐刷力、耐ブロッキング性、耐熱性、顔料の固着性などを向上させるのでより好ましい。
【0028】
カチオン性樹脂は直接染料、酸性染料あるいは反応染料を紙に定着させる染料定着剤として用いているが、シリカ系顔料をそのカチオン性によりカチオン活性させ、アニオン性を有するインクジェット用インクをイオン結合により定着させるのに効果があり、水性インクの耐水性を付与させる為に含有させる。本発明でいうカチオン性樹脂としてはポリアミン、ポリアルキルアミン及び変性ポリアミン系などのポリアミン系樹脂、ポリアミド・エポキシ樹脂、アミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂などを使用できる。特にアミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂を使用することが望ましい。印刷シートの単位面積当たりの塗工層に含まれるカチオン性樹脂は0.1〜4.0g/m2とするのが好ましい。カチオン性樹脂が0.1g/m2を下回る場合は、水性インクの耐水性の効果が不充分であり、4.0g/m2を上回る場合は、対向面への水性インクの転写が顕著になるからである。
【0029】
以上のようにして構成されたオフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な層を設けることにより、感圧接着面のインク耐水性向上、インク写り抑制を図りながら、十分な接着力を持たせることができる。また、水性インクを用いる他のペンプロッター等の記録、印刷、筆記に用いることができ、鉛筆やボールペン等を用いた筆記が可能である。インクジェット記録用紙として発色性、耐水性が良く、滲みが少なく、且つプロセスインキ、UVインキなどによるオフセット印刷で画像の鮮明で印刷作業性の良好であるという特徴を持つ再剥離性圧着記録用紙が得られる。さらに併せて両面塗布を行うことにより、感圧接着面のみの塗工時の乾燥縮みにより発生するカールの矯正が行え、更にブロッキングを抑制し、印刷・印字適性の改良がなされた再剥離性圧着記録用紙が得られる。
【0030】
【実施例】
本発明を以下の実施例、比較例により説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例の重量部数はすべて固形分換算での数値で示すものとする。
【0031】
(実施例1)
原紙に、以下の組成の顔料塗工液を乾燥塗工量が7g/m2となるように塗工、乾燥させた後、上記顔料塗工層の反対面に下記の感圧接着剤塗工液を乾燥塗工量が6g/m2となるように塗工、乾燥させて再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを実施例1とした。
【0032】
(実施例2)
実施例1の感圧接着剤塗工液1で天然ゴム系エマルジョン(A)とスチレン・ブタジエン系エマルジョン(B)を、配合比(B)/(A)を0.10に変更した以外は、実施例1と同様にして、再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを実施例2とした。
【0033】
(実施例3)
実施例1の感圧接着剤塗工液1で天然ゴム系エマルジョン(A)とスチレン・ブタジエン系エマルジョン(B)を、配合比(B)/(A)を0.05に変更した以外は、実施例1と同様にして、再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを実施例3とした。
【0034】
(比較例1)
実施例1の感圧接着剤塗工液1でスチレン・ブタジエン系エマルジョンをスチレン・アクリル系エマルジョンに変更した以外は、実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを比較例1した。
【0035】
(比較例2)
実施例1の感圧接着剤塗工液1で沈降法合成シリカ(水沢化学工業社製、ミズカシルP−526)をゲル法合成シリカ(水沢化学工業社製、ミズカシルP−78A)に変更した以外は、実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを比較例2とした。
【0036】
(比較例3〜5)
実施例1の感圧接着塗工液1で天然ゴム系エマルジョン(A)とスチレン・ブタジエン系エマルジョン(B)を、配合比(B)/(A)を0.00、0.30、0.40に変更した以外は、実施例1と同様にして、再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを比較例3〜5とした。
【0037】
上記実施例及び各比較例に従って製作した再剥離性圧着記録用紙の顔料塗工面側となるオフセット印刷可能なインクジェット用インク受理層(以下、単に宛名面と称する)及び、感圧接着面側となるオフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着層(以下、単に圧着面と称する)について、インクの印字品位、圧着後の剥離強度、耐水性、インクの転写、オフセット印刷適性の各性能試験を行なった。表1に各実施例及び各比較例の各性能試験の結果を示す。以下各性能試験の方法とその評価の仕方を示す。
【0038】
(1)インクの印字品位
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製HP DeskJet560J)のインクカートリッジにサイテックス1040黒インクを注射器で注入し、圧着面にテスト印字パターン(文字、線、ベタ)を印字し、視感で評価した。鮮明な画像、印字が得られたものから◎、○、△、×とした。
【0039】
(2)耐水性(流水法)
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製HP DeskJet560J)のインクカートリッジにサイテックス1040黒インクを注射器で注入し、宛名面、圧着面にベタ印字を行う。次に水をはった容器に水を注ぎながら、テスト印字パターン(ベタ部)を印字面が水に接するように浮かべ、5分間後のインク濃度及び滲みを視感で評価した。画像、印字に滲み、インクの溶出の全くないものから◎、○、△、×とした。
【0040】
(3)耐水性(泣き出し法)
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製HP DeskJet560J)のインクカートリッジにサイテックス1040黒インクを注射器で注入し、宛名面、圧着面にベタ印字を行う。次に濾紙を水に漬けた後、余分な水分を別紙に取らせ、この濾紙を印字面に当てて丸型プレス機で2kg/cm2を5秒間かけた後、濾紙に転写されたインク濃度及び滲みを視感で評価した。画像、印字に滲み、インクの溶出の全くないものから◎、○、△、×とした。
【0041】
(4)再剥離強度
再剥離性圧着記録用紙を葉書の大きさにカットし、圧着面を内側に折り込み、ロール加圧により圧着し、その圧着力を測定する。また、圧着面にUV照射(オゾン発生水銀ランプ 型GS HI−20N 2000W、UVランプと紙との距離27cm、照射時間0.57秒)後、葉書の大きさにカットし、圧着面を内側に折り込み、ロール加圧により圧着し、その圧着力を測定する。ロール加圧には、ドライシーラーPRESSLE econo(トッパン・フォームズ株式会社製)を使用した。ロール加圧は、幅10cmの試料をロールシーラーのギャップ約130μmの条件でローラー処理を行う。各実施例及び各比較例の再剥離性圧着記録用紙は上記の条件でロール圧着を行う。本作業は迅速に行い、試料はポリ袋に密封保存するため、試料は実機製造時の水分を維持しているものとする。次に23℃、50%R.H.の環境下でストログラフM−1型(東洋精機製作所製)で速度300mm/分、剥離角90度(T型剥離)で剥離し、その抵抗値を測定する。試料は幅10cmの中央部を25mm巾に断裁して測定し、数値を平均して圧着力gf/25mmを求める。剥離可能な圧着力とは、望ましくはUV照射後、60〜120gf/25mmである。これより高いと剥離する場合に紙面が破れるなどのトラブルが発生しやすく、低いと配達中などに剥離してしまうなどのトラブルが発生しやすい。
【0042】
(5)再剥離後のインクの転写
圧着面にUV照射(オゾン発生水銀ランプ 型GS HI−20N 2000W、UVランプと紙との距離27cm、照射時間0.57秒)後、インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製HP DeskJet560J)のインクカートリッジにサイテックス1040黒インクを注射器で注入し、圧着面にテスト印字パターン(文字)を試料の左半面に印字する。圧着面を内側に折り込み、剥離強度が30〜50gf/25mmとなるような条件を設定し、ドライシーラードライシーラーPRESSLE econo(トッパン・フォームズ株式会社製)を使用してロール加圧を行い、手で再剥離させ、圧着面の右半面に転写したインクの濃度を視感で評価した。インク写りが全くなくて、対向面がきれいなままなものを◎、かすかにインク写りするものを○、インク写りするが対向面の情報の判読に支障のないものを△、インク写りがひどく、対向面の情報の判読が困難なものを×とした。
【0043】
(6)オフセット印刷適性
RI−3型印刷適性試験機(明製作所製)を使用して耐刷力を評価した。インクはプロセスインク(東洋インキ製造社製、PRINTING INK、墨、SMX、TV−15)とし、0.4cc、印刷速度:60rpm、印圧:8.5mm、4回刷りとした。視感で評価し、インキによる塗工層剥け、紙剥けなどが全くないものから◎、○、△、×とした。
【0044】
上記の方法により試験を行い、その評価結果を下記表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から明らかのように、実施例において得られた再剥離性圧着記録用紙はインクジェット記録におけるの印字性、耐水性、圧着性に優れ、且つ再剥離後の対向面へのインク写りがなく、優れた再剥離性圧着記録用紙を与えるものであった。実施例1、2、3は沈降法合成シリカ、スチレン・ブタジエン系エマルジョンを使用した例であり、インクの耐水性、再剥離強度は向上し、インク写りは抑制され、物性のバランスのとれたものとなっている。
【0047】
これに対して、比較例において得られた再剥離性圧着記録用紙は実施例で得られたものに比べ、物性のバランスのとれたものとなっていない。特に、アクリル・ブタジエン系エマルジョンを使用した比較例1及び天然ゴム系エマルジョンに対する配合比が0.00、0.30、0.40である比較例3、4、5は再剥離時でのインクの対向面への写りが発生する。また、比較例4、5は塗工層表面にスチレン・ブタジエン系エマルジョン被膜が形成されることでインクジェットインクの塗工層内部への浸透が阻害され、品位及びインク耐水性に低下が生じる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の再剥離性圧着記録用紙は各種情報を親展面にインクジェットプリンターで印字後、親展面を圧着しても、印字の転写が抑制され、インクの定着性が良く、耐水性に優れ、高速インクジェットの水溶性インクに対する印字適性に最適なものである。
【0049】
すなわち、請求項1記載の再剥離性圧着記録用紙は、各々の印刷・印字等の方法に於いてそれらの要求特性が多々混在する中で、インクジェット方式でのインクジェット用インクの耐水性、インク写り抑制性、プロセスインキやUVインキなどのオフセット印刷適性及び熱やUV照射による感圧接着層の劣化に伴う接着力の低下抑制性に優れ、しかも各種プリンターの記録性と走行性に優れ、経済性を満足させることができた。また、水性インクを用いる他のペンプロッター等の記録、印刷、筆記に用いることができ、鉛筆やボールペン等を用いた筆記も可能であった。
【0050】
請求項2記載の再剥離性圧着記録用紙は、例えば使用形態として二つ折りのみならず、3つ折り用としても使用することができた。また、面塗布を行うことにより、感圧接着面を片面のみ塗工する場合に生じ易い乾燥縮みによるカールの発生を防止し、更にブロッキングを抑制し、印刷・印字適性がさらに改良することができた。
【0051】
請求項3記載の再剥離性圧着記録用紙は、天然ゴム系エマルジョン(A)とスチレン−ブタジエン系エマルジョン(B)との配合比(B)/(A)を規定することにより、耐水性、インク写り抑制性、オフセット印刷適性等の諸物性のバランスを特に良好とすることができた。
Claims (3)
- 支持体の片面に、通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、接着後に剥離可能である感圧接着層を形成し、もう一方の面には顔料及び水性樹脂を主成分とする顔料層を形成した記録紙において、該感圧接着層は、沈降法合成シリカ、スチレン・ブタジエン系エマルジョン(ただし、両性イオンラテックスを除く。)、カチオン性樹脂及び天然ゴム系エマルジョン(ただし、カチオン変性天然ゴムを除く。)を含有することを特徴とする再剥離性圧着記録用紙。
- 支持体の両面に、通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、接着後に剥離可能である感圧接着層を形成した記録紙において、該感圧接着層は、沈降法合成シリカ、スチレン・ブタジエン系エマルジョン(ただし、両性イオンラテックスを除く。)、カチオン性樹脂及び天然ゴム系エマルジョン(ただし、カチオン変性天然ゴムを除く。)を含有することを特徴とする再剥離性圧着記録用紙。
- 前記感圧接着層は、主成分として、前記天然ゴム系エマルジョン(A)と前記スチレン−ブタジエン系エマルジョン(B)とを混合した接着剤を含有し、かつ前記天然ゴム系エマルジョン(A)と前記スチレン−ブタジエン系エマルジョン(B)との配合比(B)/(A)は、0.05以上0.30未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の再剥離性圧着記録用紙。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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