JP3909748B2 - 再剥離性圧着記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明の再剥離性圧着記録用紙は、インクジェット方式及びノンインパクト方式による記録、並びに水性インクを用いる他のペンプロッター等の記録、印刷、筆記に用いることができ、プロセスインキ、UVインキなどによるオフセット印刷も可能であり、更に、これら各種の方法を印刷、印字等の用途において兼用可能な圧着記録用紙に関するものである。ここで圧着記録用紙とは、通常状態では粘着性、接着性ともに示さず加圧時に接着性を示し、加圧接着後に剥離可能な感圧接着層を有する記録用紙のことである。
【0002】
【従来の技術】
従来、官庁、自治体等の公的及び準公的機関や銀行、生命保険会社、証券会社等の金融機関、さらには学校等からの成績通知や受験(検)合格通知等の個人的プライバシーに係わる親展情報の郵送には、発送者の判断により葉書又は封書が使われていた。しかし、個人情報の隠蔽化の点から葉書に比べ、高価な封書の使用が多く、発送者に多額の郵便費用がかかる問題があった。
【0003】
近年、郵便法の改正に伴い、封書よりも郵便料金が安く、封書と同様に情報の機密保持ができる親展性葉書として二つ折り、三つ折りの記録用紙を重ね合わせ、葉書状に圧着する所謂「圧着葉書」が開発され、普及し始めている。
【0004】
通常、親展葉書用紙は葉書として定形事項を印刷して、更に個人情報などの秘密情報を圧着層面に、又宛先等を圧着層面の裏面にプリンター等で印字した後、ドライシーラー等で秘密情報を外部に見えないように加圧積層して親展葉書となる。親展葉書は受取人が該圧着層より剥離することにより、情報を得ることができ、いったん剥離すると該圧着面は通常の状態では接着性がないため、剥離前の状態にはならない葉書である。
【0005】
情報システムの発展はめざましく、それに伴い、各情報システムに適合した記録方式が開発されている。コピー・印字スピードの高速化のみならずカラー化に代表される高画質化が進み、これらの実現に大きく寄与するために複写・印字方式である電子写真記録方式、インクジェット記録方式、感熱記録媒体を使用するサーマルヘッド記録方式が広く採用されている。
【0006】
インクジェット記録方式には種々の原理によりインクの微小液滴を飛ばして画像・文字などを記録するが、高速、低騒音、多色化が容易、現像−定着が不要などの特徴があり、記録装置として種々の用途において普及している。更に多色インクジェット方式により形成される画像は製版方式による多色印刷と遜色ないものを得ることが可能である。またコストが安価なことから、作製部数が少なくて済むフルカラー画像記録分野にまで用途範囲が広がってきている。
【0007】
親展葉書のシート同士の圧着はシーラー中に配置された二本の金属ロール間で圧力を与えることで行う。具体的には、折り重ねられた感圧圧着シートの厚みより狭いロール間隙でシートを通過させることで、圧力が圧着層面に掛かり、感圧圧着シート同士が接着する。圧着強度は、シーラー間隙により制御可能である。
【0008】
ところで、圧着された親展葉書は受取人に配達され、剥離されるまで1週間から10日間かかるとされている。一般に圧着された親展葉書は温度や湿度の環境変化によって経時で剥離強度が大きくなるという傾向があるため、受取人の手に渡り、剥離したときに親展情報の内容が紙破れ等で読み取れなくなる可能性がある。
【0009】
感圧圧着シートでは、この圧着強度の増加幅が大きいという問題が指摘されている。この場合、前記したように受取人の手に渡ったときに親展情報の内容が紙破れ等で読み取れなくなる。またそれに対処するために圧着強度が小さく設定すると郵便番号自動選別などによる機械区分の曲げに耐えられず剥がれたり、配達途中で容易に剥がれてしまい親展性が失われたりする可能性がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、〔前記感圧接着層の圧着10日後の再剥離強度(B)/該感圧接着層の圧着直後の再剥離強度(A)〕により定義される再剥離強度の経時変化を規定することにより、受取人に渡るまでの通常の取り扱いでは容易に剥がれることがなく、受取人が意図的に剥す場合には均一で緻密な剥離感が得られ、スムーズに剥すことができる再剥離性圧着記録用紙を提供することである。このとき、再剥離強度の経時変化を規定範囲に調整しやすい感圧接着層とすることを目的とする。さらに感圧接着層に沈降法合成シリカを含有させることで、圧着されたシートの経時的な再剥離強度変化を小さく制御するとともに、インク写り抑制性と優れた発色性を有する再剥離性圧着記録用紙を提供することである。また感圧接着面を片面のみ塗工する場合に生じやすい乾燥縮みによるカールの発生を防止し、更にブロッキングを抑制し、印刷・印字適正を更に改良した再剥離性圧着記録用紙を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる再剥離性圧着記録用紙は、支持体の片面又は両面に、常温、常圧の通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に剥離可能である感圧接着層を形成した記録紙において、前記感圧接着層は、天然ゴム系エマルジョン、合成ゴム系エマルジョン又はアクリル共重合系エマルジョン等の少なくとも一種のエマルジョンとカチオン性樹脂と沈降法合成シリカを含有し、ゲル法合成シリカを実質的に含有せず、かつ、前記感圧接着層の塗工量は、乾燥重量で3〜15g/m 2 であり、かつ、前記カチオン性樹脂は、前記沈降法合成シリカ100重量部に対し、カチオン性樹脂が5〜80重量部の範囲となるように添加されており、かつ、前記沈降法合成シリカの含有量によって、〔前記感圧接着層の圧着10日後の再剥離強度(B)/該感圧接着層の圧着直後の再剥離強度(A)〕により定義される再剥離強度の経時変化を1.2〜1.7としたことを特徴とする。
【0015】
更に本発明に係わる再剥離性圧着記録用紙では、前記カチオン性樹脂は、アミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂であることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明に係る二つ折り用の再剥離性圧着記録用紙を作製する方法としては、支持体として、従来公知のフォーム用紙(非塗工紙)の他に、上質紙、中質紙(非塗工紙)、各種バインダーで含浸された含浸紙及び各種顔料で塗工された塗工紙、アート紙などを原紙として使用できる。先ずオフセット印刷可能な顔料塗工液を基材となる原紙に塗工し、オフセット印刷可能なインクジェット用インク受理層を形成し、次に顔料層とは反対となる面に感圧接着剤塗工液を塗工して、オフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着層を形成する順序が望ましいが、この逆の順序でも良く、又2ステージのコーターヘッドで一度に表裏両面塗工しても良い。
【0018】
次に本発明に係わる三つ折り用の再剥離性圧着記録用紙、すなわちZ状に折り込まれて圧着される三つ折タイプの再剥離性圧着記録用紙を作製する場合には、支持体の表裏両面に、オフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着層を形成させることで得られる。
【0019】
本発明の再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤塗工液で形成するオフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着層において、インクジェット方式による発色性、滲み、且つ耐水性並びにプロセスインキ、UVインキなどによるオフセット印刷適性並びに再剥離性を満たすには、主成分となる薬品の選択が重要であり、天然ゴム系エマルジョン、合成ゴム系エマルジョン又はアクリル共重合系エマルジョン等の少なくとも一種のエマルジョンとカチオン性樹脂と合成シリカを組合わせることがそれらの条件を満たすものである。
【0020】
天然ゴム系エマルジョンとしては、通常封筒用口糊などで用いられている感圧接着剤で良く、天然生ゴム、天然加硫ゴム、メタクリル酸メチル(MMA)やスチレンモノマーなどのグラフト共重合天然ゴムエマルジョンなどがあり、これらを混合して用いても良い。合成ゴムエマルジョンとしては、スチレン・ブタジェン系(SBR)やブタジェン(BR)などがある。アクリル共重合系エマルジョンとしては、アクリル酸エステル、スチレン・アクリルなどのアクリル共重合系エマルジョンなどがある。本発明ではこれらのエマルジョンを適宜併用しても良い。この中で、MMAのグラフト共重合天然ゴムエマルジョンにスチレン・ブタジエン共重合エマルジョンを併用したものが、印刷インキ受理性、表面強度、耐刷力、耐ブロッキング性、耐熱性、顔料の固着性などを向上させるのでより好ましい。
【0021】
カチオン性樹脂は、直接染料、酸性染料あるいは反応染料を紙に定着させる染料定着剤として用いており、シリカ系顔料をそのカチオン性によりカチオン活性させ、アニオン性を有するインクジェット用インクをイオン結合により定着させるのに効果があり、水性インクの耐水性を付与させるために含有させる。本発明でいうカチオン性樹脂としてはポリアミン、ポリアルキルアミン及び変性ポリアミン系などのポリアミン系樹脂、ポリアミド・エポキシ樹脂、アミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂などが使用できる。特にアミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂を使用することが望ましい。印刷シートの単位面積当たりの塗工層に含まれるカチオン性樹脂は0.1〜4.0g/m2とするのが好ましい。カチオン性樹脂が0.1g/m2を下回る場合は、水性インクの耐水性の効果が不充分であり、4.0g/m2を上回る場合は、対向面への水性インクの転写が顕著になるからである。
【0022】
合成シリカとしては沈降法合成シリカ又はゲル法合成シリカを使用できるが、再剥離強度を向上させる目的において、合成シリカは圧着時のクッション性に優れる超微粉シリカの二次凝集粒子である沈降法合成シリカを使用することが好ましい。ゲル法合成シリカの二次凝集粒子は緻密であるために硬く、クッション性が沈降法合成シリカと比較して劣るためである。沈降法合成シリカを用いることで再剥離強度が向上するので、ゲル法シリカを含有した感圧接着層と同じ再剥離強度を得る場合、圧着ローラーのクリアランスを広げて加圧を減少させることができるので、対向面へのインク写りが起こらない再剥離性圧着記録用紙を得ることができる。沈降法合成シリカは、その平均粒径が3〜4μmのものが更に好ましい。二次凝集粒子の細孔にインクジェット用インクを取り込むからである。
【0023】
なお本発明において、クッション性又はインクジェット用インクの吸収性を調整するために、ゲル法合成シリカを沈降法合成シリカに混合して使用しても良い。
【0024】
エマルジョン、例えば天然ゴム系エマルジョンとスチレン・ブタジエン系エマルジョンとの混合物に沈降法合成シリカ100重量部に対し、カチオン性樹脂を5〜80重量部の範囲となるように、沈降法合成シリカ及びカチオン性樹脂を添加し、塗工乾燥することにより、インクジェット用インクの発色、滲み、耐水性が十分に満たされる。
【0025】
また、他の塗工用顔料、例えば酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、プラスチックピグメント、硫酸バリウム、水酸化アルミなどを適宜併用しても良い。また平均粒径が20μm程度の小麦澱粉との併用は、感圧接着層の表面に二つのピークの異なる凹凸状態を形成し、再剥離強度を向上させながら、耐ブロッキング性を付与させるので最も好ましいが、これ以外の澱粉、例えば馬鈴薯、タピオカ、コーンなどを原料としたもの、あるいはシリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンなどを併用することができる。
【0026】
オフセット印刷可能なインクジェット用インク受理層を形成するための顔料塗工液は、合成シリカ、少なくとも1種類以上のカチオン性樹脂、及び少なくとも1種類以上の水系バインダーにより製造する。
【0027】
ここでカチオン性樹脂は、上述したものと同様のものを用いることができ、水系バインダーは、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合物、スチレン・ブタジエン系エマルジョン共重合物、アクリル・ブタジエン系エマルジョン共重合物等を用いることができる。
【0028】
これらの顔料塗工液及び感圧接着剤塗工液には各種添加剤を含有しても良く、塗工時の作業向上のため、レベリング剤や消泡剤・抑泡剤、後加工性を向上させるためにワックス類、視感による白色度向上のため蛍光染料、導電性を付与させるため界面活性剤や無機塩類からなるいわゆる帯電防止剤などを含有させることができる。その他、必要に応じて分散剤、印刷適性向上剤、潤滑剤、撥水剤、浸透剤、増粘剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、染料、染料定着剤、サイズ剤、紙力増強剤、保水剤、消臭剤、防腐剤、防黴剤等の添加剤なども目的に応じて併用することができる。
【0029】
更に、印刷強度(表面強度)を向上させる目的において、酸化澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、大豆蛋白、合成蛋白、カゼインなどを並びに酢酸ビニル系、メチルメタクリレート・ブタジェン系エマルジョン、スチレン・ブタジエン系エマルジョン、アクリル・ブタジエン系エマルジョンなどを必要に応じて含有させることができる。
【0030】
上記オフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な顔料塗工液の塗工は、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗工されるが、塗工量は乾燥重量で3〜15g/m2 の範囲で調整されるのが望ましい。塗工量を上記範囲に限定した理由は、3g/m2 未満ではインクジェット用インク受理層且つオフセットインキ受理層として、インクの受容量が低下し、印字品位や印刷上がりなどの視感的な面で劣り、更にインクジェット用インクの耐水定着性が低下し、好ましくないためである。また、塗工量が15g/m2を超えると、印字品位や印刷上がりなどの視感的な見栄えは向上するが、経済的な面から実用性が劣り、筆記性が乏しく、紙粉が発生しやすく、好ましくない。
【0031】
上記オフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着剤塗工液の塗工は、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗工されるが、塗工量は乾燥重量で3〜15g/m2 の範囲で調整されるのが望ましい。塗工量を上記範囲に限定した理由は、3g/m2 未満ではインクジェット用インク受理層且つオフセットインキ受理層として、インクの受容量が低下し、印字品位や印刷上がりなどの視感的な面で劣り、更にインクジェット用インクの耐水定着性や感圧接着剤層としての接着力が低下し、好ましくないためである。また、塗工量が15g/m2 を超えると、印字品位や印刷上がりなどの視感的な見栄えは向上するが、経済的な面から実用性が劣り、筆記性が乏しく、紙粉が発生しやすく、感圧接着層としての接着力が強すぎて印字面の紙表面破壊を起こし、好ましくない。
【0032】
本発明においては、〔前記感圧接着層の圧着10日後の再剥離強度(B)/該感圧接着層の圧着直後の再剥離強度(A)〕により定義される再剥離強度の経時変化は、0.9〜1.7であることが好ましく、1.2〜1.5であることがより好ましい。再剥離強度の経時変化(B)/(A)が0.9未満の場合、親展葉書では郵便番号自動選別による機械区分の曲げに耐えられず剥がれてしまうなど、後工程上好ましくなく、配達途中で容易に剥がれてしまい親展性が失われることとなる。一方、再剥離強度の経時変化(B)/(A)が1.7を超える場合は、受取人の手に渡ったときも高い再剥離強度を持ち合わせているのでインク写りおよびカールが発生するので好ましくなく、また親展部分の内容が紙破れ等で読み取れなくなる。再剥離強度の経時変化(B)/(A)は、感圧接着層中の沈降法合成シリカの含有量により制御することが可能である。また、感圧接着層中のシリカの種類を制御すること、例えば沈降法合成シリカとゲル法合成シリカの混合割合や前記シリカの平均粒径により、再剥離強度の経時変化(B)/(A)を制御することも可能である。
【0033】
以上のようにして構成されたオフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な層を設けることにより、感圧接着面のインク耐水性向上、インク写り抑制を図りながら、十分な接着力を持たせることができる。また、感圧接着面を片面のみ塗工する場合に生じやすい乾燥縮みによるカールの発生を防止し、更にブロッキングを抑制し、印刷・印字適正を改良することができる。更に両面塗布を行うことにより、感圧接着面のみの塗工時の乾燥縮みにより発生するカールの矯正が行うことができる。
【0034】
【実施例】
本発明を以下の実施例、比較例により説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例の重量部数はすべて固形分換算での数値で示すものとする。
【0035】
(実施例1)
原紙に、下記の組成の顔料塗工液を乾燥塗工量が7g/m2となるように塗工、乾燥させた後、上記顔料塗工層の反対面に下記の感圧接着塗工液を乾燥塗工量が6g/m2となるように塗工、乾燥させて再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを実施例1とした。
<顔料塗工液>
合成シリカ 100部
ポリビニルアルコール 15部
カチオン性樹脂 15部
<感圧接着塗工液1>
沈降法合成シリカ(水沢化学工業社製、ミズカシルP-526) 100部
天然ゴム系エマルジョン 70部
スチレン・ブタジエン系エマルジョン 50部
澱粉粒子 100部
アミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂 35部
【0036】
(比較例1)
実施例1の感圧接着塗工液1で沈降法合成シリカ(水沢化学工業社製、ミズカシルP−526)をゲル法合成シリカ(水沢化学工業社製、ミズカシルP−78A)に変更した以外は、実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例1とした。
【0037】
(比較例2)
実施例1の感圧接着塗工液1の沈降法合成シリカ100部を60部に変更した以外は、同様にして再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを比較例2とした。
【0038】
上記実施例及び各比較例に従って製作した再剥離性圧着記録用紙の顔料塗工面側となるオフセット印刷可能なインクジェット用インク受理層(以下、単に宛名面と称する)及び、感圧接着面側となるオフセット印刷可能でインクジェット用インク受理可能な感圧接着層(以下、単に圧着面と称する)について、シーラー圧着後、10日経てからインクの印字品位、剥離強度、耐水性、インクの転写、オフセット印刷適性の各性能試験を行った。表1に各実施例及び各比較例の各性能試験の結果を示す。以下各性能試験の方法とその評価の仕方を示す。
(1)インクの印字品位
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製HP DeskJet560J)のインクカートリッジにサイテックス1040黒インクを注射器で注入し、圧着面にテスト印字パターン(文字、線、ベタ)を印字し、視感で評価した。鮮明な画像、印字が得られたものから◎、○、△、×とした。
(2)耐水性(流水法)
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製HP DeskJet560J)のインクカートリッジにサイテックス1040黒インクを注射器で注入し、宛名面、圧着面にベタ印字を行う。次に水をはった容器に水を注ぎながら、テスト印字パターン(ベタ部)を印字面が水に接するように浮かべ、5分間後のインク濃度及び滲みを視感で評価した。画像、印字に滲み、インクの溶出の全くないものから◎、○、△、×とした。
(3)耐水性(泣き出し法)
インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製HP DeskJet560J)のインクカートリッジにサイテックス1040黒インクを注射器で注入し、宛名面、圧着面にベタ印字を行う。次に濾紙を水に漬けた後、余分な水分を別紙に取らせ、この濾紙を印字面に当てて丸型プレス機で2kg/cm2 を5秒間かけた後、濾紙に転写されたインク濃度及び滲みを視感で評価した。画像、印字に滲み、インクの溶出の全くないものから◎、○、△、×とした。
(4)再剥離強度
再剥離性圧着記録用紙を葉書の大きさにカットし、圧着面を内側に折り込み、ロール加圧により圧着し、その圧着力を測定する。また、圧着面にUV照射(オゾン発生水銀ランプ 型GS HI−20N 2000W、UVランプと紙との距離27cm、照射時間0.57秒)後、葉書の大きさにカットし、圧着面を内側に折り込み、ロール加圧により圧着し、その圧着力を測定する。ロール加圧には、ドライシーラーPRESSLE econo(トッパン・フォームズ株式会社製)を使用した。ロール加圧は、幅10cmの試料をロールシーラーのギャップ約130μmの条件でローラー処理を行う。各実施例及び各比較例の再剥離性圧着記録用紙は上記の条件でロール圧着を行う。本作業は迅速に行い、試料はポリ袋に密封保存するため、試料は実機製造時の水分を維持しているものとする。次に23℃、65%R.H.の環境下でストログラフM−1型(東洋精機製作製)で速度300mm/分、剥離角90度(T型剥離)で剥離し、その抵抗値を測定する。試料は幅10cmの中央部を25mm巾に断裁して測定し、数値を平均して圧着力gf/25mmを求める。この圧着力gf/25mmを圧着直後の再剥離強度(A)とした。剥離可能な圧着力とは、望ましくはUV照射後、60〜120gf/25mmである。これより高いと剥離する場合に紙面が破れるなどのトラブルが発生しやすく、低いと配達中などに剥離してしまうなどのトラブルが発生しやすい。次に同様の方法で、上記サンプルを10日間放置した後、圧着力gf/25mmを測定してこれを再剥離強度(B)とした。〔前記感圧接着層の圧着10日後の再剥離強度(B)/該感圧接着層の圧着直後の再剥離強度(A)〕により定義される再剥離強度の経時変化は、圧着直後の再剥離強度(A)に対する10日間放置後での再剥離強度(B)として算出した。
(5)再剥離後のインクの転写
圧着面にUV照射(オゾン発生水銀ランプ 型GS HI−20N 2000W、UVランプと紙との距離27cm、照射時間0.57秒)後、インクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製HP DeskJet560J)のインクカートリッジにサイテックス1040黒インクを注射器で注入し、圧着面にテスト印字パターン(文字)を試料の左半面に印字する。圧着面を内側に折り込み、剥離強度が30〜50gf/25mmとなるような条件を設定し、ドライシーラードライシーラーPRESSLE econo(トッパン・フォームズ株式会社製)を使用してロール加圧を行い、10日経てから、手で再剥離させ、圧着面の右半面に転写したインクの濃度を視感で評価した。インク写りが全くなくて、対向面がきれいなままなものを◎、かすかにインク写りするものを○、インク写りするが対向面の情報の判読に支障のないものを△、インク写りがひどく、対向面の情報の判読が困難なものを×とした。
(6)オフセット印刷適性
RI−3型印刷適性試験機(明製作所製)を使用して耐刷力を評価した。インクはプロセスインク(東洋インキ製造社製、PRINTING INK、墨、SMX、TV−15)を0.4cc、印刷速度:60rpm、印圧:8.5mm、4回刷りとした。視感で評価し、インキによる塗工層剥け、紙剥けなどが全くないものから◎、○、△、×とした。
【0039】
上記の方法により試験を行い、その評価結果を表1に示した。なお、宛名面は実施例、比較例とも同一処方とした。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、再剥離強度の経時変化(B)/(A)が0.9〜1.7の範囲内のある実施例1はオフセット印刷及びインクジェット印刷用記録紙としての機能をすべて満足し、バランスの取れたものとなっている。
【0042】
これに対して、比較例1はインクジェット品位、インク耐水性は満たしているが、再剥離強度が高く、インク写りが劣っており、インクジェットインク用の再剥離性圧着記録用紙としての物性のバランスが取れていない。比較例2はUV照射後の再剥離強度(B)が下がっており、郵便局ガイドラインによる圧着葉書の剥離強度の参考値46gf/25mmを満たしておらず、郵便番号自動選別などによる機械区分の曲げに耐えられず剥がれてしまう可能性がある。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る再剥離性圧着記録用紙では、再剥離強度の経時変化(B)/(A)を1.2〜1.7となるように形成したので、各種情報を親展面にインクジェットプリンターで印字後、圧着されたシートが経時的に再剥離強度増大を起こさない。従って、受取人に渡るまでの通常の取り扱いでは容易に剥がれることがなく、受取人が意図的に剥す場合には均一で緻密な剥離感が得られ、スムーズに剥すことができる再剥離性圧着記録用紙を提供することができた。また、対向面へのインク写りが抑制され、圧着面前面にわたって読みやすく、インクの定着性が良く、耐水性に優れ、高速インクジェットの水溶性インクに対する印字適正も有する。更に水溶性インクを用いる他のペンプロッター等の記録、印刷、筆記に用いることができ、鉛筆やボールペン等を用いた筆記が可能である。また、インクジェット記録用紙として発色性、耐水性が良く、滲みが少なく、且つプロセスインキ、UVインキなどによるオフセット印刷で、画像が鮮明で印刷作業性を良好とすることができた。記録した文字及び画像が接着する対向面に転写することなく、普及している各種プリンターで良好に印刷することができた。
【0045】
本発明に係る再剥離性圧着記録用紙では、感圧接着層に沈降法合成シリカを含有させることで、圧着されたシートの経時的な再剥離強度変化を小さく制御するとともに、インク写り抑制性と優れた発色性を有する再剥離性圧着記録用紙を提供することができた。例えば二つ折り用の再剥離性圧着記録用において、感圧接着層に沈降法合成シリカを含有させることで圧着されたシートが経時的に再剥離強度が大きく増加せず、そのためにインク写りが抑制され、更に沈降法合成シリカの高インク吸収性により滲みが少なく優れた発色性を有することができた。更に、感圧接着面を片面のみ塗工する場合に生じやすい乾燥縮みによるカールの発生を防止し、更にブロッキングを抑制し、印刷・印字適正を更に改良することができる。
Claims (2)
- 支持体の片面又は両面に、常温、常圧の通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に剥離可能である感圧接着層を形成した記録紙において、
前記感圧接着層は、天然ゴム系エマルジョン、合成ゴム系エマルジョン又はアクリル共重合系エマルジョン等の少なくとも一種のエマルジョンとカチオン性樹脂と沈降法合成シリカを含有し、ゲル法合成シリカを実質的に含有せず、かつ、
前記感圧接着層の塗工量は、乾燥重量で3〜15g/m 2 であり、かつ、
前記カチオン性樹脂は、前記沈降法合成シリカ100重量部に対し、カチオン性樹脂が5〜80重量部の範囲となるように添加されており、かつ、
前記沈降法合成シリカの含有量によって、〔前記感圧接着層の圧着10日後の再剥離強度(B)/該感圧接着層の圧着直後の再剥離強度(A)〕により定義される再剥離強度の経時変化を1.2〜1.7としたことを特徴とする再剥離性圧着記録用紙。 - 前記カチオン性樹脂は、アミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の再剥離性圧着記録用紙。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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