JP4624056B2 - アルキレンカーボネートの連続的製造方法 - Google Patents
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Description
該反応副生成物としては、原料アルキレンオキサイドに対応するアルデヒド類、アルキレンオキサイドが水和して生成するグリコール、アルキレンオキサイドが重合して生成するポリアルキレングリコール、生成したアルキレンカーボネートが重合したポリアルキレンカーボネートなどが代表的である(特許文献6、7)。
ポリマー類は、アルキレンオキサイドやアルキレンカーボネートがグリコールと一緒に加熱されると生成し、触媒のリサイクルに伴って反応系内に蓄積されるのみならず、反応器、熱交換器、蒸留塔、配管壁面などに付着し、伝熱や流動を妨げ、熱量の増加や製品アルキレンカーボネートの熱分解などを誘発するため、適切に分離除去されなければならない(特許文献7)。
アルキレンオキサイドを安全に無害化処理するためには、後述するように特別な設備と充分な監視体制が必要であり、処理する未反応アルキレンオキサイドの量をなるべく少なくすることが、安全操業のための鉄則である。
アルデヒドやグリコールは、蒸留分離が可能ではあるが、蒸留塔を通せば通すほど、設備が重鈍で複雑になるだけでなく、生成物中での加熱時間が増え、アルデヒドは、それが重合したり紫外線吸収作用を持つ化合物に変化したりする割合を増やしてしまうことになり好ましくなく、グリコールは、上述したように、それ自身が基点となってアルキレンオキサイドやアルキレンカーボネートの重合を誘発するため、こちらも好ましくない。
このように、本反応のプロセス全体に渡って未反応原料や多岐にわたる副生成物を適切に処理することは、高いアルキレンオキサイド転化率、低いアルデヒド、グリコール、ポリマー類生成量というトレードオフの関係にある要件を同時に実現するだけでなく、これら未反応原料や多岐にわたる反応副生成物を、爆発の可能性を回避しつつ、簡便な設備で適切に処理するという、相反する高度な要求を満たさねばならなかった。
次に、グリコール類の分離と処理について検討した。製品アルキレンカーボネートと対応するグリコールは、一般に蒸留分離が可能な充分な沸点差を持っているので、当初、蒸留分離を検討したが、蒸留塔の加熱部分で、グリコールを基点にしてアルキレンオキサイドの重合が進行することが判り、蒸留工程に回す前に分離しなければならないことを見出し、上記アルデヒドを分離する工程で、一緒に分離することを検討した。
さらに、ガスとして排出された未反応アルキレンオキサイド、アルデヒド、グリコールの処理方法を検討した。これらガス状有機物の除去は、フレア等を用いた燃焼廃棄が一般的ではあるが、アルキレンオキサイドは空気に触れると爆発する可能性が高く、ここでは、アルキレンオキサイドを爆発させずに処理することを最優先して、水に吸収させる方法で、これらガスとして排出された化合物を爆発させずに製品アルキレンカーボネートと分離できることを見出した。
これら一つ一つの技術を組み合せた効果は驚くほど劇的であって、複雑に入り組んだ蒸留設備や理論段数を高く積み上げた蒸留塔を必要とせず、後述するように、簡便なフラッシュタンクと運転の容易な薄膜蒸留器を用いるだけで、未反応原料や多岐にわたる副生成物を、プロセス全体に渡って、爆発の可能性を回避しつつ、簡便な装置で適切に処理でき、さらには、高いアルキレンオキサイド転化率と高いアルキレンカーボネート選択率を達成するという、相反する高度な要求を全て同時に満足する顕著な効果を見出すに至り、本発明を完成させた。
1.エチレンオキサイドと二酸化炭素から触媒の存在下に反応させエチレンカーボネートを製造するプロセスにおいて、
完全混合型反応器を直列に用いた多段反応方式の反応器または完全混合型反応器とこの反応器出口に設けたピストンフロー型反応器とを有する反応器を用いて
a.反応器出口混合物中の対応する反応副生成物のアルデヒドを、該混合物中のエチレンカーボネートに対して1000ppm以下とし、
b.反応器出口混合物中の対応する反応副生成物のグリコールが、該混合物中のエチレンカーボネートに対して1000ppm以下とし、
該混合物をフラッシュタンクに供給してエチレンオキサイドとポリマー類を含む液体と未反応のエチレンオキサイド、二酸化炭素、アルデヒド及びグリコールを含むガスとに分離し、
c.前記分離されたガス中の未反応のエチレンオキサイド、アルデヒド、及びグリコールを、水に吸収させ
d.前記分離された液体を蒸留器に供給してエチレンカーボネートを蒸留分離し、ポリマー類を含む蒸留残液の全量または一部を系外に抜き出して、400℃〜1200℃の温度範囲で燃焼することを特徴とするエチレンカーボネートの連続的製造方法に係わる。
3.前記未反応のエチレンオキサイド、アルデヒド、及びグリコールを吸収させる水が、酸を含んでいることを特徴とすることを特徴とする上記1または2記載のアルキレンオキサイドの連続的製造方法に係わる。
本発明で使用されるアルキレンオキサイドは、化学式(1)で表される化合物である。
このようなアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ビニルエチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド及びスチレンオキサイド等が挙げられ、特にエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが入手の容易さなどの点で好ましい。これらのアルキレンオキサイドは、単独でも、また、複数種類を組み合せて用いても良い。
本発明により製造されるアルキレンカーボネートは、化学式(2)で表される化合物である。
本発明で用いられる二酸化炭素は、工業的に入手可能なものが好ましく、天然ガス、発酵ガス、石油精製の副生ガス、アンモニア合成工程の副生ガスなどから得られる二酸化炭素が例示される。荷姿は、ガス状炭酸ガス、液化炭酸ガス、ドライアイスから選ばれるが、なかでもガス状炭酸ガスおよび液化炭酸ガスが、取り扱いの容易さから好ましく用いられる場合が多い。
触媒濃度は、用いる触媒、反応条件、反応器の形状等により異なるため反応器中の濃度として、0.01〜5質量%に調整されるのが一般的である。
本発明を実施するに当り、アルキレンカーボネートを合成する反応の、反応温度は、通常、100〜200℃、好ましくは150〜190℃である。反応圧力は、通常、2〜15MPa、好ましくは4〜12MPaである。反応時間は、原料であるアルキレンオキサイドと二酸化炭素の組成比、アルキレンオキサイドの種類、使用触媒の種類と濃度、反応温度等によって異なり、例えば、エチレンオキサイドと二酸化炭素を、完全混合反応器を用いて合成する場合には、反応器の滞留液量と全供給液量から求められる平均滞留時間を反応時間と定義すると、通常、0.5〜10Hr、好ましくは1〜5Hrである。
本反応は、二酸化炭素の反応液への溶解が律速過程になる場合が圧倒的に多いため、溶解度を上げる目的で高圧反応が選ばれる場合が多い。二酸化炭素で高圧をかけることは、自己燃焼性(爆発性)のアルキレンオキサイドを、爆発限界を外して反応させる目的からも好ましい。
本反応は著しい発熱反応であり、反応熱の除去が重要である。種々の方式が提案されているが、一般的には、反応器の周りにジャケットを設けてオイルを流し、このオイルを熱交換器に通して除熱したり、反応器から反応混合物を一部抜き出し、熱交換器を通して冷ました反応混合物を再び反応器に戻して除熱したりする方式が用いられる場合が多い。
反応を完全混合槽反応器で行う場合には、反応液中に二酸化炭素が溶解し易いように、大流量の反応液をポンプで循環する方法も好ましい。通常、単位時間当たりの循環回数は10〜50回/Hrであり、好ましくは20〜40回/Hrである。反応液をポンプ循環する配管の途中に熱交換器を設けて、反応熱の除去を行う場合には、単位時間当たりの除熱速度を高める大流量の循環を行うと、熱交換器の冷却能力が上がるので好ましい。
反応器等のプロセス液が通る部位の材質は、プロセス液に対する耐蝕性があれば使用可能である。鉄錆があるとその触媒作用によりアルキレンオキサイドの重合物の生成原因となるので、ステンレス鋼を用いるのが好ましい。
本発明では、反応器出口混合物から、まず未反応のアルキレンオキサイド、未反応の二酸化炭素を除去するが、この工程で、アルデヒドは単独でガスとして除去し、グリコールは、アルキレンカーボネートと共沸混合物を形成させて、やはりガスとして除去する。この工程では、フラッシュタンクや段数の小さな簡便な蒸留塔などが用いられる場合が多く、本発明者らも、フラッシュタンクを用いて検討を行った。
アルデヒドは、反応器出口混合物中の濃度が、該混合物中のアルキレンカーボネートに対して1000ppm以下、好ましくは500ppm以下であり、少ないほど好ましい。
アルデヒドの量が1000ppmを越えると、フラッシュタンクでアルデヒドをガスとして除去しきれずに、アルキレンカーボネート側に分配されてしまうため好ましくない。
グリコールは、フラッシュタンクでガスとして除去するためには、アルキレンカーボネートとの共沸混合物を形成できる濃度範囲にある必要があり、具体的には、反応器出口混合物中の濃度が、該混合物中のアルキレンカーボネートに対して1000ppm以下、好ましくは500ppm以下であり、少ないほど好ましい。
次善の策として、除去したいグリコールと共沸混合物を形成し易い別のアルキレンカーボネートを少量添加してから、フラッシュタンクに供してもよい。
アルデヒドやグリコールの副生を抑える方法は種々あるため、そのうちのいくつかを例示する。
アルキレンカーボネート製造に選択性の優れた触媒を用いることは重要であり、本発明の実施例で用いたヨウ化カリウム、一般的によく用いられるテトラエチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられ、これらを組み合せて用いることも好ましい。
原料の純度も重要であって、用いるアルキレンオキサイド、用いる二酸化炭素は、精製したものであることが好ましい。アルキレンオキサイドには、一般に、対応するグリコール、対応するアルデヒド、対応するアルデヒドより炭素数の一つ少ないアルデヒドなどが含まれる。また、アルケンの酸化反応によってアルキレンオキサイドを製造する工程においては、反応ガスを水に接触させて水に吸収させる工程を用いる場合が多いため、水分を含む場合もある。二酸化炭素の不純物は、その供給元によって異なるため、一概には例示できないが、例えば、アンモニア製造工程で副生する二酸化炭素の場合、最も多く含まれる不純物は水分である。これら水分は、アルキレンオキサイドと速やかに反応して対応するグリコールを副生するため、できるだけ少ない原料を用いることが重要である。好ましくは0.2モル%以下、さらに好ましくは0.05モル%以下である。
一般に、これら反応副生ガス状化合物の処理は、フレアスタックなどで燃焼処理するのが一般的であるが、上記のような理由で、特にアルキレンオキサイドを爆発させずに分離廃棄するために、本発明では、フラッシュ工程のアルキレンオキサイドを含む排出ガスは、一旦水に吸収させることが必須である。
水に吸収させた後の処理方法としては、アルキレンオキサイドを希硫酸などで対応するグリコールに無害化したのち吸収水を苛性ソーダで中和して活性汚泥などで処理する方法、無害化したのち吸着剤などで除去する方法、水中に空気を吹き込みながら湿式燃焼で無害化する方法などが例示される。なかでも、アルキレンオキサイドを酸でグリコールに無害化したのち、活性汚泥処理する方法は好ましく例示される。この場合、吸収させる水として希硫酸を用いることも好ましい実施様態である。
アルキレンカーボネートを除去した後の釜残は、ハンドリングし難いポリマー類を含むため、全量系外に抜き出して処理してもよいし、触媒を含むため、その内の一部を反応器に戻して再利用してもよい。
燃焼温度は、400℃〜1200℃の範囲が好ましく、600℃〜1100℃の範囲がさらに好ましい。有機物の自然発火温度は一般に400℃と言われており、燃焼温度がこの温度よりも低い場合には、不完全燃焼で有機物が燃え残る可能性があり好ましくない。また、燃焼温度が1200℃を超えると、一般に燃焼炉を傷める可能性が高くなと言われており、装置側の制約から好ましくない。
このようにして得られたアルキレンカーボネートは、凝固点が25℃と同じくらいか25℃よりも高い場合が多いため、液体で貯蔵する場合は、該凝固点以上の温度で貯蔵すると良い。
このようにして得られたアルキレンカーボネートは、一般に安定で、毒性の無い、極性の大きな化合物であり、水や有機溶剤とよく混合し、高分子物質に対しても、一般に優れた溶解性を示す。そのため、有機溶剤として広範囲に用いられるのみならず、活性水素を有する化合物に対して、開環付加反応、開環縮合反応を行うため、有機合成原料としても有用である。また、二次電池用電解液としての用途にも好ましく用いることができる。
具体的な用途としては、有機溶剤、ポリマー溶剤、ヒドロキシアルキル化剤、リチウム二次電池用電解液、医薬品、アクリル繊維加工剤、土壌硬化剤などに用いられ、芳香族ポリカーボネート原料としての炭酸ジエステルを製造する原料としても、好適に用いられる。
図1はアルキレンカーボネート製造プロセスを示すフロー図である。
反応器11は、内径10cmΦ、直胴部長さ250cm、容量20Lで、反応器上部に二酸化炭素の吸収効率を高める液分散ノズルを持った、ステンレス製の縦型円塔槽である。
なお、配管14と16の分岐から調整弁までの間に、フィニッシャーを設けたが、記載は省略した。
原料として、約5℃に冷却されたエチレンオキサイドを、原料配管1からエチレンオキサイドポンプ4に供給し、そこで2500g/hをポンプで昇圧し、エチレンオキサイド供給配管8から反応器循環配管14に供給した。もう一方の原料である二酸化炭素として、液化二酸化炭素を原料配管3から二酸化炭素供給ポンプ6に供給した。そこで昇圧させ、温水浴型の二酸化炭素蒸発器7でガス化させ、約90℃の温度で二酸化炭素供給配管10から反応器上部の気相部に約9.5MPaの一定圧力となるよう調節して供給した。平均的な二酸化炭素供給量は2720g/hであった。
エチレンカーボネート精製工程で回収した触媒とフレッシュ触媒の割合は、それぞれ9部及び1部として、反応器循環液中の沃化カリウム濃度が0.23〜0.26wt%となるようにに設定した。
さらに、フラッシュタンク18の底部より、主にエチレンカーボネートを含む混合物を配管19を通して抜き出し、エチレンカーボネート回収塔21に導入した。エチレンカーボネート回収塔は、160℃、49Torrに制御された薄膜蒸留器である。エチレンカーボネートは蒸留器21より配管20を通して抜き出し、触媒、高沸物を含む混合物は蒸留塔より配管22を通して抜き出した。この一部を、配管23を通して系外に排出し、触媒を回収する工程に供給した。回収の方法は、特許第2539858号公報、および特許第2902235号公報記載の方法に拠ったが、回収方法による本願効果の違いは見られなかった。
各配管の流量と組成を表1にまとめた。エチレンオキサイド、エチレンカーボネート、二酸化炭素、ヨウ化カリウム、アセトアルデヒド、エチレングリコール、高沸物はそれぞれ、EO、EC、CO2、KI、AA、EG、HBと略記した。配管16の値は、フィニッシャー以降の混合物の分析結果である。
配管17から系外に排出されたガス、および、配管20から抜き出される製品エチレンカーボネートに若干含まれるエチレンオキサイドと二酸化炭素を、50℃に設定したスクラバーで、0.1モル/Lの希硫酸水溶液に吸収させて、エチレンオキサイドをエチレングリコールに無害化したのち、苛性ソーダで中和して活性汚泥処理した。希硫酸吸収塔出口ガス(配管28 図中記載省略)もエチレンオキサイド濃度計で常時モニターした。
上記条件で1500時間の連続運転を行った結果を表2に示す。
エチレングリコールを1%含むエチレンオキサイドを用いた以外は、実施例1と同様の反応を行った。
反応時間700時間付近から反応温度の上昇が始まったため、730時間で反応を停止し、開放点検した。熱交換器の伝面に薄茶色の付着物が全面に付着していた。HB収率は3.9%であった。
アセトアルデヒドを1%含むエチレンオキサイドを用いた以外は、実施例1と同様の反応を行った。
配管20からアセトアルデヒドを検出、エチレンカーボネート中の濃度は350ppmであった。
16、17、19、20、22、23、24、26 配管
4、5、6、13、25 ポンプ
7 熱交換器
11 反応器
18 フラッシュタンク
21 薄膜蒸留器
Claims (3)
- エチレンオキサイドと二酸化炭素から触媒の存在下に反応させエチレンカーボネートを製造するプロセスにおいて、
完全混合型反応器を直列に用いた多段反応方式の反応器または完全混合型反応器とこの反応器出口に設けたピストンフロー型反応器とを有する反応器を用いて
a.反応器出口混合物中の対応する反応副生成物のアルデヒドを、該混合物中のエチレンカーボネートに対して1000ppm以下とし、
b.反応器出口混合物中の対応する反応副生成物のグリコールが、該混合物中のエチレンカーボネートに対して1000ppm以下とし、
該混合物をフラッシュタンクに供給してエチレンオキサイドとポリマー類を含む液体と未反応のエチレンオキサイド、二酸化炭素、アルデヒド及びグリコールを含むガスとに分離し、
c.前記分離されたガス中の未反応のエチレンオキサイド、アルデヒド、及びグリコールを、水に吸収させ
d.前記分離された液体を蒸留器に供給してエチレンカーボネートを蒸留分離し、ポリマー類を含む蒸留残液の全量または一部を系外に抜き出して、400℃〜1200℃の温度範囲で燃焼することを特徴とするエチレンカーボネートの連続的製造方法。 - 前記エチレンオキサイド、アルデヒド、及びグリコールを水に吸収させた後に、酸を添加してエチレンオキサイドと反応させたのち、中和して活性汚泥処理することを特徴とする請求項1記載のエチレンカーボネートの連続的製造方法。
- 前記未反応のエチレンオキサイド、アルデヒド、及びグリコールを吸収させる水が、酸を含んでいることを特徴とする請求項1または2記載のエチレンオキサイドの連続的製造方法。
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