JP2004323470A - 炭酸ジアルキルの製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルから炭酸ジアルキルを製造する方法において、亜硝酸アルキル再生用反応塔の底部から硝酸及びアルコールを含有する塔底液を抜き出して硝酸変換用反応器に導入すると共に、該反応器に一酸化窒素を供給して、該導入塔底液と該一酸化窒素を接触させて亜硝酸アルキルを生成させ、得られる亜硝酸アルキル含有ガスを前記亜硝酸アルキル再生用反応塔に供給することを特徴とする炭酸ジアルキルの製造方法に関する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒存在下で反応させて炭酸ジアルキルを生成させる炭酸ジアルキルの製造法において、亜硝酸アルキル源である窒素成分の損失を抑えて効率的に炭酸ジアルキルを製造する方法に関する。炭酸ジアルキルは、ポリカーボネートや各種化学品の製造原料として、また、溶剤として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
従来、次式のように、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒存在下で反応させて炭酸ジアルキルを生成させ(特許文献1)、次いで、その反応で生成する一酸化窒素を酸素及びアルコールと反応させて亜硝酸アルキルを生成させ(再生し)、その亜硝酸アルキルを炭酸ジアルキル生成反応で再使用しながら、連続的に炭酸ジアルキルを製造する方法が知られている。
【0003】
CO+2RONO→CO(OR)2+2NO
2NO+2ROH+1/2O2→2RONO+H2O
(式中、Rはアルキル基を表す。)
【0004】
このように亜硝酸アルキルを再生・再使用しながら連続的に炭酸ジアルキルを製造する方法は、特許文献2などに開示されている。また、一酸化窒素と酸素とアルコールから亜硝酸アルキルを製造する方法は、その他に、特許文献3及び4などに開示されている。
【0005】
しかしながら、前記方法においては、炭酸ジアルキルを製造する際に、循環ガスのパージ等による窒素成分(亜硝酸アルキル及び一酸化窒素)の損失が避けられず、また、一酸化窒素と酸素とアルコールから亜硝酸アルキルを製造する際には、次式のように硝酸が副生して窒素成分の更なる損失を招いていた。このため、反応系に亜硝酸アルキル源となる窒素成分(一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素等の窒素酸化物)を補給する必要があった。
【0006】
2NO+O2→2NO2
NO+NO2→N2O3
N2O3+ROH→RONO+HNO2
HNO2+ROH→RONO+H2O
N2O3+H2O→2HNO3
2NO2→N2O4
N2O4+H2O→HNO2+HNO3
(式中、Rはアルキル基を表す。)
【0007】
特許文献2では、一酸化窒素を酸素及びメタノールと反応させて亜硝酸メチルに再生する際、窒素成分として硝酸をガスに同伴させて補給することも開示されているが、この方法は硝酸の熱分解で二酸化窒素などの窒素酸化物を発生させることを目的とするもので、分解反応が効率的ではなく適用温度範囲も限られるものであった。この場合、硝酸と一酸化窒素とメタノールの接触も起り得るが、一酸化窒素と酸素とメタノールから亜硝酸メチルを生成させる系では、酸素の供給によりガス中の酸素及び二酸化窒素の濃度が高くなるため、硝酸と一酸化窒素とメタノールから亜硝酸メチルを効率よく生成させるのは非常に困難であることが、本発明者の研究の過程で判明した。
【0008】
また、特許文献3では、亜硝酸アルキル再生用反応塔の塔底液(硝酸を含有する)を抜き出して該反応塔に冷却・循環しながら亜硝酸アルキルを製造する方法が開示されていて、その際、硝酸と一酸化窒素とメタノールの接触も起っているが、前記と同様に、酸素の供給によりガス中の酸素及び二酸化窒素の濃度が高くなっているため、硝酸と一酸化窒素とメタノールから亜硝酸メチルを効率よく生成させるのは非常に困難であることが、本発明者の研究の過程で判明した。
【0009】
一方、二酸化窒素を生成させる方法として、下記反応式(1)のように硝酸と一酸化窒素を反応させる方法が知られているが(非特許文献1)、この方法では最初に下記反応(2)が起る。
【0010】
NO+2HNO3→3NO3+H2O (1)
NO+HNO3→NO2+HNO2 (2)
【0011】
しかし、反応(2)は平衡反応でその平衡が原系に大きく偏っているため、二酸化窒素及び亜硝酸を高濃度で生成させることが困難である。更に、平衡を生成系にずらそうとしても、二酸化窒素の水への溶解度が比較的大きく、しかも水溶液中では二酸化窒素と硝酸が平衡関係にあることから、二酸化窒素が高濃度になるほど或いは圧力が高くなるほど硝酸が生成し、結果として二酸化窒素を高濃度で生成させることが困難になるという問題がある。このように、この方法は、硝酸から二酸化窒素及び亜硝酸を生成させる方法として工業的に好適なものでないことが、本発明者の研究の過程でわかった。
【0012】
また、一酸化窒素を製造する方法として、ビスマス、銅、鉛、水銀などの金属、又は、酸化鉄(II)、三酸化二砒素で硝酸を還元する方法が知られているが(非特許文献2)、この方法は量論反応を利用するもので、上記金属や酸化物を大量に必要とすることから、工業的な方法としては好ましくなかった。
【0013】
【特許文献1】
特開平3−141243号公報
【特許文献2】
特開平6−25104号公報
【特許文献3】
特開平11−189570号公報
【特許文献4】
特開平6−298706号公報
【非特許文献1】
CHEMISTRY LETTERS,1029(1976)
【非特許文献2】
化学大辞典1縮刷版第32刷,665頁
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒存在下で反応させて炭酸ジアルキルを生成させる炭酸ジアルキルの製造法において、亜硝酸アルキル源となる窒素成分の損失、特に一酸化窒素から亜硝酸アルキルを再生する際の硝酸の副生による窒素成分の損失を抑制して、効率的に炭酸ジアルキルを製造する方法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、(1)第1工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを炭酸ジアルキル製造用反応器へ供給して触媒存在下で反応させ、炭酸ジアルキルと一酸化窒素を生成させて、(2)第2工程で、第1工程の反応ガスを炭酸ジアルキル吸収塔へ供給して炭酸ジアルキル吸収用吸収液と接触させ、炭酸ジアルキルを含有する凝縮液と一酸化窒素を含有する非凝縮ガスを得て、(3)第3工程で、第2工程の非凝縮ガスと分子状酸素を亜硝酸アルキル再生用反応塔の下部に供給すると共に、アルコールを亜硝酸アルキル再生用反応塔の上部に供給して該反応塔の上部から下部に流下させながら、一酸化窒素と酸素とアルコールを反応させて亜硝酸アルキルを生成させ、そして、得られる亜硝酸アルキル含有ガスを第1工程に循環すると共に、(4)第4工程で、第2工程の凝縮液を蒸留分離して炭酸ジアルキルを得る、炭酸ジアルキルの製造法において、
【0016】
(5)第3工程の亜硝酸アルキル再生用反応塔の底部から硝酸及びアルコールを含有する塔底液を抜き出して硝酸変換用反応器に導入すると共に、該反応器に一酸化窒素を供給して、該導入塔底液と該一酸化窒素を接触させて亜硝酸アルキルを生成させ、そして、得られる亜硝酸アルキル含有ガスを前記亜硝酸アルキル再生用反応塔に供給することを特徴とする炭酸ジアルキルの製造法に関する。
【0017】
本発明の好ましい態様としては、(1)硝酸変換用反応器に供給する一酸化窒素が第2工程で得られる非凝縮ガスである、前記の炭酸ジアルキルの製造法、(2)硝酸変換用反応器に供給する一酸化窒素がその中に分子状酸素が存在することにより生成する窒素酸化物を実質的に含有していない、前記いずれかの炭酸ジアルキルの製造法、(3)硝酸変換用反応器で得られる亜硝酸アルキル含有ガスを、亜硝酸アルキル再生用反応塔のアルコールが流下している区域に供給するか、又は、第2工程で得られる非凝縮ガスに混合して亜硝酸アルキル再生用反応塔の下部に供給する、前記いずれかの炭酸ジアルキルの製造法などがある。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面も参考にしながら説明する。図1は、本発明により炭酸ジアルキルを製造する工程を例示する概略のプロセス図である。
本発明の第1工程は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルをCO供給ライン11を介して炭酸ジアルキル製造用反応器1(以下、主反応器1とも称する)に供給して触媒存在下で反応(気相接触反応)させ、炭酸ジアルキルと一酸化窒素を生成させる工程である(以下、この反応を主反応とも称する)。このとき、反応器には、単管式又は多管式の熱交換器型反応器が有効である。
【0019】
前記亜硝酸アルキルとしては、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸n−プロピル、亜硝酸i−プロピル等の炭素数1〜3の亜硝酸アルキルが好ましく挙げられるが、その中でも亜硝酸メチルが特に好ましい。また、一酸化炭素は純ガスであっても、窒素等の不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0020】
第1工程において、触媒としては、白金族金属系触媒、特に白金族金属の化合物が担体に担持されている固体触媒が好ましく挙げられる(特許文献1など)。このとき、白金族金属化合物の担持量は担体に対して0.1〜10重量%、更には0.5〜2重量%程度であることが好ましい。担体としては、活性炭、アルミナ(特にγ−アルミナ)、スピネル(特にリチウムアルミネートスピネル)、ゼオライト、モレキュラーシーブ等の不活性担体が挙げられるが、中でも、活性炭、アルミナ(特にγ−アルミナ)、スピネル(特にリチウムアルミネートスピネル)が好ましい。
【0021】
前記白金族金属の化合物としては、パラジウム化合物が好ましい。その中でも、パラジウムのハロゲン化物(塩化パラジウム、臭化パラジウム等)やハロゲン含有錯化合物(テトラクロロパラジウム酸リチウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム等)が好ましいが、パラジウムの塩化物や塩素含有錯化合物が更に好ましく、中でも塩化パラジウムが特に好ましい。また、反応系内でパラジウムのハロゲン化物(特に塩化物)やハロゲン(特に塩素)含有錯化合物に変換し得るパラジウム化合物、例えば、パラジウムの無機酸塩(硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、リン酸パラジウム等)、パラジウムの有機酸塩(酢酸パラジウム等)、パラジウムのハロゲン非含有錯化合物なども使用することができる。
【0022】
また、前記触媒には、白金族金属の化合物以外に、銅、鉄、ビスマスなどの金属の化合物、好ましくはその塩化物(塩化第二銅、塩化第二鉄、塩化ビスマス等)が助触媒として担持されていることが好ましい。このとき、その担持量は、白金族金属化合物に対して1〜50倍モル、更には1〜10倍モル程度であることが好ましい。なお、前記触媒の調製法は特に限定されず、例えば、白金族金属化合物(特にパラジウム化合物)を公知の方法(含浸法、蒸発乾固法など)により担体に担持させ、次いで、その担体を乾燥する方法を挙げることができる。
【0023】
第1工程の反応は、例えば、図1に示すように、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを含有する原料ガスを、CO供給ライン11を介して、炭酸ジアルキル製造用反応器1の上部から導入して前記白金族金属系触媒と接触させる方法によって行われる。連続的には、ガス循環ライン22により、亜硝酸アルキル再生用反応塔3から抜き出される亜硝酸アルキル含有ガス(循環ガス;一酸化炭素と亜硝酸アルキルを含有する)が原料ガスとして循環供給され、反応による消費や循環ガスのパージによる損失を補う程度の一酸化炭素がCO供給ライン11により供給される。
【0024】
原料ガス中の一酸化炭素濃度は1〜50容量%、更には5〜30容量%であることが好ましく、亜硝酸アルキル濃度は2〜35容量%であることが好ましい。原料ガスの残部には、通常は窒素や炭酸ガス等の不活性ガスが含まれるが、その他に少量の一酸化窒素やアルコール(蒸気)が含まれていても差し支えない。また、長期間にわたって連続的に反応を行う場合は、原料ガス中に塩化水素やクロロギ酸エステルを容量基準で10〜200ppm、更には20〜100ppm程度添加することが好ましい。
【0025】
第1工程において、反応温度は50〜200℃、更には80〜150℃であることが好ましく、圧力は常圧から10kg/cm2G(約1MPaG)、更には1〜6kg/cm2G(約0.1〜約0.6MPaG)の範囲であることが好ましい(G:ゲージ圧)。また、原料ガスと白金族金属触媒との接触時間は0.2〜10秒、更には0.2〜5秒程度であることが好ましい。
【0026】
本発明の第2工程は、第1工程の反応ガス(炭酸ジアルキルと一酸化窒素を含有する)を主反応器1の下部から主反応ガス抜き出しライン12により抜き出して吸収塔2の下部に供給すると共に、炭酸ジアルキル吸収用吸収液(以下、吸収液と略す)を吸収液供給ライン13により吸収塔2の上部に供給して吸収塔の上部から下部に流下させながら、主反応ガスと吸収液を気液接触させて該反応ガス中の炭酸ジアルキルを吸収液に凝縮・溶解させて吸収し、炭酸ジアルキルを含有する凝縮液と一酸化窒素を含有する非凝縮ガスを得る工程である。そして、凝縮液は吸収塔2の底部から凝縮液抜き出しライン14により抜き出され、非凝縮ガスは吸収塔2の頂部から非凝縮ガス抜き出しライン15により抜き出される。
【0027】
前記吸収液としては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジプロピル等の炭素数1〜3のアルキル基を有するシュウ酸ジアルキルが好ましく、中でもシュウ酸ジメチルが特に好ましい。また、吸収塔は気液接触が可能なものであればよく、例えば、シーブトレイ、泡鐘トレイ、バルブトレイ等の棚段式、或いは、ポールリング、ラシッヒリング等の充填材が充填されている充填塔式の吸収塔であればよい。
【0028】
吸収塔2において、操作温度は、主反応ガス中の炭酸ジアルキルを効率よく吸収できる程度の低い温度であって、吸収液のシュウ酸ジアルキル(特にシュウ酸ジメチル)の固化が起らない温度、例えば、0〜100℃、更には30〜80℃であることが好ましく、操作圧力は常圧から10kg/cm2G(約1MPaG)、更には1〜6kg/cm2G(約0.1〜約0.6MPaG)の範囲であることが好ましい。吸収液の供給量は第1工程で生成した炭酸ジアルキルに対して3〜10重量倍、更には4〜6重量倍程度であることが好ましい。
【0029】
前記非凝縮ガスには、少量の炭酸ジアルキルやシュウ酸ジアルキルが同伴するため、吸収塔2では、吸収液供給ライン13の連結部の上部(非凝縮ライン15の連結部の下方;図示せず)から液状のアルコールを供給して、非凝縮ガス中の炭酸ジアルキルやシュウ酸ジアルキルを回収することが好ましい。このとき、アルコールの供給量は主反応ガス中の炭酸ジアルキルに対して5〜30重量%、更には10〜20重量%であることが好ましく、アルコールとしては、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール(特にメタノール)が好ましく挙げられるが、第1工程で用いる亜硝酸アルキルと同一のアルキル基を有するアルコールが好ましい。
【0030】
本発明の第3工程は、亜硝酸アルキル再生用反応塔3(以下、再生塔3と称する)に、第2工程の非凝縮ガス(一酸化窒素を含む)と分子状酸素を供給すると共にアルコールを供給して、一酸化窒素と酸素とアルコールを反応させて亜硝酸アルキルを生成させる(一酸化窒素を亜硝酸アルキルに再生する)工程である(以下、この反応を再生反応、その生成物を再生亜硝酸アルキルとも称する)。
【0031】
即ち、第3工程では、第2工程で得られる非凝縮ガス(一酸化窒素を含有する)が分子状酸素(O2供給ライン16により供給される)と共に非凝縮ガス抜き出しライン15により再生塔3の下部(下部域▲2▼と底部の間;以下同様)に供給され、それと共に、液状のアルコールがアルコール供給ライン19により再生塔3の上部(上部域▲1▼と頂部の間;以下同様)に供給される。そして、非凝縮ガスと分子状酸素の混合ガスと、再生塔3の上部から下部に流下する液状のアルコールとの気液接触により亜硝酸アルキルが生成し、得られる亜硝酸アルキル含有ガス(再生亜硝酸アルキル含有ガス)が、循環ガスとして、ガス循環ライン22により再生塔3の頂部から抜き出されて主反応器1に循環供給される。
【0032】
なお、分子状酸素は、別途、再生塔3の下部に直接供給することもできる。また、必要に応じて、パージライン23からの循環ガスのパージ等による窒素成分(亜硝酸アルキル、一酸化窒素)のロスを補うため、窒素酸化物(一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素等)を、NOx供給ライン17により、非凝縮ガス抜き出しライン15(好ましくはO2供給ライン16の連結部の上流であってNO供給ライン18の分岐部の下流)に補給してもよく、再生塔3の下部に直接補給してもよい。
【0033】
再生塔3の上部に供給するアルコールとしては、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール(特にメタノール)が好ましく挙げられるが、第1工程で用いる亜硝酸アルキルと同一のアルキル基を有するアルコールが好ましい。分子状酸素は、純ガスであっても窒素等の不活性ガスで希釈されていてもよく、また、空気として供給されてもよい。
【0034】
第3工程において、再生反応は、再生塔3から抜き出されるガス(再生亜硝酸アルキル含有ガス)中の一酸化窒素が2〜7容量%の範囲になるように制御される。即ち、分子状酸素は、前記非凝縮ガス中の一酸化窒素1モルに対して0.08〜0.2モルの割合で供給することが好ましく、アルコールは、−15〜50℃、更には−10〜30℃で(必要であれば冷却して)、前記非凝縮ガス中の一酸化窒素1モルに対して0.2〜3モル、更には0.3〜2モルの割合で再生塔3の上部へ供給することが好ましい。但し、この場合の一酸化窒素は、酸素混合前の非凝縮ガスに含有される一酸化窒素の量を意味する。
【0035】
また、第3工程において、反応温度は、そのときの圧力におけるアルコールの沸点以下(特に0℃からアルコールの沸点まで;例えば、メタノールであれば、0〜60℃、更には5〜60℃、特に10〜60℃)であることが好ましく、反応圧力は、常圧から10kg/cm2G(約1MPaG)、更には常圧から5kg/cm2G(約0.5MPaG)、特に2〜5kg/cm2G(約0.2〜約0.5MPaG)の範囲であることが好ましい。気液接触時間は0.5〜20秒程度であることが好ましい。
【0036】
そして、第3工程においては、一酸化窒素と酸素とアルコールを反応させる際、再生塔3の塔底液をポンプ等の液輸送手段(図示せず)を介して塔底液抜き出しライン20により抜き出し、「その塔底液(導出塔底液)の大部分を塔底液抜き出しライン20の途中から分岐する塔底液循環ライン21により取り出して冷却器5に導いて冷却すると共に、冷却した塔底液(冷却塔底液)を再生塔3の中間部(上部域▲1▼と下部域▲2▼の間であって好ましくは後述の変換ガス抜き出しライン25の連結部より下方)に循環供給して、再生塔3の中間部から下部に流下させる」塔底液循環操作を下記の条件下で行うことが更に好ましい。この塔底液循環操作は、再生塔3へ非凝縮ガスと分子状酸素とアルコールを供給して再生反応させる操作と同時かつ連続的に行うことが好ましい。
【0037】
塔底液循環操作では、(a)塔底液の循環供給量(即ち、再生塔3の中間部への冷却塔底液の供給量)を、再生塔3へのアルコール供給量の50〜300重量倍、更には60〜180重量倍、特に70〜160重量倍とすると共に、(b)再生塔3へのアルコール供給量と再生塔3の中間部に循環供給される塔底液(即ち、冷却塔底液)中のアルコール量との合計を、再生塔3への窒素酸化物供給量の20〜150倍モル、更には30〜120倍モルとし、(c)更に、塔底液中のアルコール濃度を15〜60重量%、更には20〜55重量%とすることが好ましい。また、塔底液循環操作では、導出塔底液を、0〜60℃程度の範囲であって、再生塔3の底部における塔底液の温度より1〜20℃(特に3〜10℃)低い温度に冷却することが好ましい。本発明では、特に(a)〜(c)の条件下で塔底液循環操作を行うことにより、再生塔3の下部で生じる反応熱を効果的に除去できると共に、副生する硝酸も低レベルに抑えることができ、前記再生反応を効率よく行うことができる。
【0038】
前記の再生塔3へのアルコール供給量は、外部から再生塔3に新たに供給される液状及び蒸気状(及び/又はミスト状)のアルコールの全量であり、例えば、図1では、アルコール供給ライン19により再生塔3の上部に供給される液状のアルコールと、非凝縮ガス抜き出しライン15により再生塔3の下部に供給される非凝縮ガスに含まれる蒸気状(及び/又はミスト状)のアルコールの合計量である。塔底液循環ライン21により再生塔3の中間部に循環供給される塔底液(冷却塔底液)中の液状のアルコール、変換ガス抜き出しライン25により再生塔3の中間部に供給される変換亜硝酸アルキル(後述)に同伴する蒸気状(及び/又はミスト状)のアルコールは、この再生塔3へのアルコール供給量に含まれない。但し、硝酸変換用反応器4(後述)に供給される一酸化窒素に蒸気状(及び/又はミスト状)のアルコールが同伴する場合は、その同伴分のアルコールは再生塔3へのアルコール供給量に含まれる。
【0039】
また、前記の再生塔3への窒素酸化物供給量は、外部から再生塔3に新たに供給される窒素酸化物の全量であり、非凝縮ライン15により供給される非凝縮ガス中の一酸化窒素、該一酸化窒素とO2供給ライン16により供給される酸素から生成する窒素酸化物、NOx供給ライン17により補給される窒素酸化物、更に変換ガス抜き出しライン25により硝酸変換用反応器4から再生塔3に導入される変換亜硝酸アルキル含有ガス中の一酸化窒素が含まれる。
【0040】
再生塔3は、前記再生反応で生成する水を除去するためなどの吸収を行うことができる上部域▲1▼と、この再生反応を行うことができる下部域▲2▼を有しているものであればよいが、上部域▲1▼と下部域▲2▼は、前記のように再生塔3の塔底液を冷却・循環できる構造となっていることが好ましい。
【0041】
上部域▲1▼は、アルコールを流下させることができると共に、そのアルコールにより上昇流中の水分を吸収できる機能を有していれば、どのような形式であってもよく、例えば、シーブトレイ、バブルトレイ等の棚段を複数有する多段蒸留塔形式の構造、或いは、ラシッヒリング、ポールリング等の充填材が充填されている充填塔形式の構造を有していればよい。また、下部域▲2▼は、前記再生反応を効果的に行うことができる機能を有していれば、どのような形式のものであってもよく、例えば、上部域▲1▼と同様の多段蒸留塔形式或いは充填塔形式の構造を有していればよい。即ち、再生塔3としては、例えば、図1及び2に示すように、再生塔3の上部域▲1▼が多段蒸留塔形式又は充填塔形式の構造を有し、下部域▲2▼が充填塔形式の構造を有していて、更に上部域▲1▼と下部域▲2▼が適当な間隔をおいて(即ち、中間部を設けて)一体に連続して接続している構造のものが好ましく挙げられる。
【0042】
また、再生塔3には、図1及び2に示すように、吸収塔2から非凝縮ガスを供給するための非凝縮ガス抜き出しライン15が下部(下部域▲2▼と底部の間であって塔底液の上方)に、アルコールを供給するためのアルコール供給ライン19が上部(上部域▲1▼と頂部の間)に、そして、再生亜硝酸アルキル含有ガスを抜き出して循環ガスとして主反応器1に供給するためのガス循環ライン22が頂部にそれぞれ連結されていることが好ましい。非凝縮ガス抜き出しライン15には、分子状酸素を供給するためのO2供給ライン16が連結されていることが好ましく、更に、O2供給ライン16の連結部とNO供給ライン18の分岐部の間にNOx供給ライン17が連結されていてもよい。ガス循環ライン22には、循環ガスの一部をパージするためのパージライン23が連結されていることが好ましい。
【0043】
更に、再生塔3には、図1及び2に示すように、塔底液を抜き出して硝酸変換用反応器4に導入するための塔底液抜き出しライン20、変換亜硝酸アルキル含有ガス(後述)を抜き出して再生塔3(中でもアルコールが流下している区域、特に再生塔3の中間部)に供給する変換ガス抜き出しライン25、及び、塔底液抜き出しライン20の途中から分岐して塔底液を再生塔3の中間部(好ましくは前記ライン25の連結部より下方)に循環供給する塔底液循環ライン21がそれぞれ連結されていることが好ましい。該ライン25は、反応器4から非凝縮ガス抜き出しライン15(好ましくはO2供給ライン16の連結部とNO供給ライン17の分岐部の間;但し、NOx供給ライン17の連結部の前方でも後方でもよい)に連結されていてもよい。塔底液抜き出しライン20には循環ポンプ等の液輸送手段(図示せず)が塔底液循環ライン21の分岐部と再生塔3の間に設置されていて、該ライン21には冷却器5が設置されていることが好ましい。
【0044】
本発明の第4工程は、第2工程の凝縮液(シュウ酸ジアルキルを含む)を吸収塔5から凝縮液抜き出しライン14により抜き出し、蒸留装置(図示せず)で蒸留分離して炭酸ジアルキルを得るものである。この蒸留分離は、例えば、炭酸ジメチルであれば、シュウ酸ジメチルを用いる抽出蒸留によりメタノールなどを分離した後、更に減圧蒸留により炭酸ジメチルを分離する方法によって行うことができる。
【0045】
本発明は、前記の第1〜第4工程によって炭酸ジアルキルを製造する際、再生塔3の底部から硝酸及びアルコールを含有する塔底液を塔底液抜き出しライン20により抜き出して、その塔底液(導出塔底液)の一部を硝酸変換用反応器4(以下、反応器4とも称する)に導入すると共に、一酸化窒素をNO供給ライン18により反応器4に供給して、該導入塔底液と該一酸化窒素を接触させて(即ち、硝酸を一酸化窒素及びアルコールと反応させて)、第3工程の再生反応で副生した硝酸を亜硝酸アルキルに変換し(以下、この反応を変換反応、生成する亜硝酸アルキルを変換亜硝酸アルキルとも称する)、得られる亜硝酸アルキル含有ガス(変換亜硝酸アルキル含有ガス)を変換ガス抜き出しライン25により反応器4から抜き出して再生塔3に供給する(即ち、硝酸を亜硝酸アルキルに変換して回収する)ことを特徴とするものである。
【0046】
前記導出塔底液の反応器4への導入量(導入塔底液の量)は、再生塔3の塔底液のレベルが一定となる範囲で、そして、再生塔3の塔底液循環操作を前記条件下で行うことができる範囲で調節することが好ましい。また、導入塔底液において、アルコールの濃度は、再生塔3の塔底液のアルコール濃度が好ましくは前記のように制御されることから、15〜60重量%、更には20〜55重量%であることが好ましい。硝酸の濃度は、再生反応自体からは特に制限されるものではない(例えば60重量%以下であればよい)が、再生塔3で前記のように再生反応や塔底液循環操作などが制御されることから、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜15重量%程度となる。その他、塔底液には、前記再生反応で副生する水や少量の亜硝酸エステルも含まれている。
【0047】
変換反応で用いる一酸化窒素はそのままでも或いは不活性ガス(窒素等)で希釈して供給するものであってもよく、反応に関与しない成分を含んでいてもよいが、その中に分子状酸素が存在することにより生成する窒素酸化物を実質的に含有していないことが好ましく、例えば、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素、及び、分子状酸素を実質的に含有していないことが好ましい。該一酸化窒素は系外から別途供給してもよいが、再生塔3の下部に供給される非凝縮ガスを非凝縮ガス供給ライン15(特にO2供給ライン16の連結部の上流;NOx供給ライン17が該ライン16の連結部の上流に連結している場合は該ライン17の連結部の上流)からNO供給ライン18により抜き出して用いることが特に好ましい。
【0048】
変換反応において、一酸化窒素の供給量は、導入塔底液中の硝酸1モルに対して等モル以上であればよいが、再生塔3の下部に供給される非凝縮ガスを反応器4に大量に導入する場合には、更に、再生塔3における一酸化窒素と酸素とアルコールの反応、反応器4における一酸化窒素と硝酸及びアルコールとの反応、及び、主反応器1での炭酸ジアルキル生成反応を妨げない範囲内に制御することが好ましい。一酸化窒素の供給量は、導入塔底液中の硝酸1モルに対して1〜50モル、更には1.5〜20モル、特に2〜10モルであることが好ましい。
【0049】
変換反応において、反応温度は0〜200℃、更には20〜100℃であることが好ましい。反応圧力は常圧から200atm(約20MPa)、更には常圧から30atm(約3MPa)、特に2〜10atm(約0.2〜約1MPa)の範囲であることが好ましい。なお、変換反応は液相で行なわれ、バッチ式でも連続式でも可能である。
【0050】
変換反応は、例えば、塔底液抜き出しライン20により再生塔3の塔底液を連続的に抜き出してその一部を連続的又は間欠的に反応器4に導入し、液中に一酸化窒素を流通させながら常圧又は加圧下でその溶液を攪拌するか、或いは、一酸化窒素を反応器4に導入して加圧下でその溶液を攪拌することにより行われる。このとき、一酸化窒素にはその中に分子状酸素が存在することにより生成する窒素酸化物が実質的に含まれていないことが好ましく、反応器4への導入塔底液にも窒素酸化物が実質的に含まれていないことが更に好ましい。この反応系には、窒素酸化物が実質的に供給されないことが特に好ましい。
【0051】
また、変換反応では、8族金属(白金族金属を除く)又は1B金属の硝酸塩を触媒として存在させてもよい。8族金属(白金族金属を除く)の硝酸塩としては、硝酸第二鉄、硝酸ニッケル、硝酸コバルトが好ましく挙げられ、1B金属の硝酸塩としては、硝酸第二銅が好ましく挙げられる。触媒は、導入塔底液に対して、金属換算で20重量%以下、更には10重量%以下、特に0.1〜10重量%で存在させればよい。
【0052】
変換反応により生成した亜硝酸アルキル(変換亜硝酸アルキル)は、一酸化窒素に同伴させて(変換亜硝酸アルキル含有ガスとして)、変換ガス抜き出しライン25により再生塔3、好ましくは再生塔3のアルコールが流下している区域、更に好ましくは再生塔3の中間部から下部に至る区域(中間部、下部域▲1▼、又は下部)に供給すればよい。このとき、反応器4に一酸化窒素を大量に導入しない場合は、再生塔3の中間部でも下部域▲1▼でも差し支えないが、特に再生塔3の中間部、中でも該中間部であって塔底液循環ライン21の連結部(再生塔3の中間部に位置する)より上方に変換亜硝酸アルキルを供給することが好ましい(図1)。また、反応器4に一酸化窒素を大量に導入する場合は、変換亜硝酸アルキルを再生塔1の下部に直接供給するか、或いは、非凝縮ガス抜き出しライン15(特にNO供給ライン18の連結部の下流であってO2供給ライン16の連結部の上流;但し、NOx供給ライン17の連結部の前方でも後方でもよい)へ戻して非凝縮ガスに混合して再生塔3の下部に供給することが好ましい(図2)。変換反応後、その反応液は廃液抜き出しライン24により反応器4の底部から抜き出される。
【0053】
なお、反応器4は前記変換反応を行うことができるものであれば制限されず、攪拌槽や、充填塔、シーブトレイ塔の多段塔形式のものなどが使用でき、複数でもよく多槽式のものであってもよい。反応器4での反応が一酸化窒素との気液接触反応になるため、攪拌槽型反応器を用いる場合は、高攪拌及び高ガス分散が可能な羽根形状及び回転装置などを有する気液接触効率の高い攪拌装置を用いることが好ましく、多段塔形式の反応器では、気液接触効率のよい充填材を用いることが好ましい。そして、反応器4には、前記のように、NO供給ライン18、塔底液抜き出しライン20、変換ガス抜き出しライン25が連結されていて、更に廃液抜き出しライン24が底部に連結されていることが好ましい。
【0054】
なお、反応器4では、前記の循環ガスのパージ等による窒素成分(亜硝酸アルキル、一酸化窒素)のロスを補うための窒素酸化物の補給に代えて、その補給分に相当する量の硝酸(好ましくは水溶液)を硝酸供給ライン(図示せず)により別途供給して、導入塔底液中の硝酸と共に同様の条件で変換反応させることができる。この結果、再生塔3で副生する硝酸を亜硝酸アルキルとして効率よく変換及び回収して炭酸ジアルキルの製造に再利用することができるだけでなく、塔底液のパージによる窒素成分(硝酸)のロスや循環ガスのパージによる窒素成分(亜硝酸アルキル、一酸化窒素)のロスを補う手段として硝酸の補給という簡便な方法を用いることができるようになり、窒素成分の補給量も減少させることができる。
【0055】
【実施例】
次に、図1に例示する製造プロセスによって本発明を実施した実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、硝酸はイオンクロマトグラフィー及び滴定により、水分はカールフィッシャー水分計により、その他はガスクロマトグラフィーによりそれぞれ分析した。
【0056】
比較例1
〔第1工程〕
内径27mmのチューブ6本よりなるステンレス製多管式反応器のチューブ内に、塩化パラジウムと塩化第二銅が活性炭に担持された固体触媒(4mmφ×6mm)1.71L(リットル)を充填した。この反応器の上部から、ダイアフラム式ガス圧縮循環機で4.02kg/cm2Gに加圧した原料ガス(6.80Nm3/h)を熱交換器(図示せず)で約90℃に予熱して触媒層に供給すると共に、反応器のシェル側に熱水を通すことにより触媒層の温度を110〜120℃に保持して、一酸化炭素と亜硝酸メチルを反応させた。なお、原料ガスの組成は、一酸化炭素20.0容量%、亜硝酸メチル10.0容量%、一酸化窒素4.0容量%、メタノール7.0容量%、二酸化炭素1.0容量%、窒素58.0容量%であった。
【0057】
〔第2工程〕
第1工程の反応器から抜き出された反応ガスを、内径100mm、高さ1300mmのラシヒリング充填式気液接触凝縮器(吸収塔)の塔底に導いて、塔頂部からメタノール(0.18L/h)を導入すると共に、その200mm下の所からシュウ酸ジメチル(2.50kg/h)を導入しながら、塔頂温度35℃、塔底温度55℃で気液を向流接触させた。そして、吸収塔の塔底から吸収液(3.28kg/h)を、吸収塔の塔頂からは非凝縮ガス(6.64Nm3/h)をそれぞれ抜き出した。吸収液の組成は、シュウ酸ジメチル78.1重量%、炭酸ジメチル16.8重量%、ギ酸メチル0.1重量%、メタノール4.2重量%で、非凝縮ガスの組成は、一酸化炭素18.1容量%、亜硝酸メチル5.7容量%、一酸化窒素8.6容量%、メタノール7.2容量%、二酸化炭素1.03容量%、窒素59.4容量%であった。
【0058】
〔第3工程〕
内径158mm、高さ1400mmの充填塔(再生塔;塔頂の50mm下から10mmラシヒリング充填層800mmを有し、更にこの充填層の30mm下から10mmラシヒリング充填層400mmを有する)の下部に、第2工程で得られた非凝縮ガス(6.64Nm3/h)を非凝縮ガス抜き出しラインにより供給すると共に、酸素供給ラインにより酸素(0.078Nm3/h)を、更に窒素酸化物供給ラインにより一酸化窒素26.8容量%を含む窒素ガス(0.078Nm3/h)を、非凝縮ガス抜き出しラインを通して供給した。また、再生塔上部のアルコール供給ラインからは20℃のメタノール液(0.8L/h)を供給した。また、塔底液(360L/h)を、塔底液循環ラインにより循環ポンプ及び冷却器を経由して再生塔の上部域と下部域の間に循環供給した。
【0059】
再生塔の状態が安定した時点で各部の組成を測定したところ、再生塔の頂部からガス循環ラインにより抜き出される再生亜硝酸アルキル含有ガス(循環ガス;6.66Nm3/h)の組成は、一酸化炭素17.9容量%、亜硝酸メチル10.4容量%、一酸化窒素4.1容量%、メタノール7.1容量%、二酸化炭素1.03容量%、窒素59.5容量%であり、ガス中の水分は0.05容量%以下であった。この循環ガスは、一部(097Nm3/h)をパージして、残りをガス圧縮循環機で4.02kg/cm2Gまで昇圧した後、一酸化炭素(0.16Nm3/h)を加えて第1工程の反応器に循環供給した。また、再生塔の底部から抜き出される塔底液の一部(0.30L/h)は循環ポンプの吐出口から抜き出した。塔底液の組成は、メタノール54.6重量%、水38.0重量%、硝酸7.0重量%、亜硝酸メチル0.2重量%であった。この比較例では、再生塔に供給された非凝縮ガス(酸素混合前)中の一酸化窒素1モルに対して、硝酸が0.013モル(消費された一酸化窒素に対して2.3モル%)生成していた。
【0060】
〔第4工程〕
第2工程の吸収塔から抜き出された吸収液(3.28kg/h)を、内径50mm、高さ3mの蒸留塔(充填塔)に導入し、塔頂温度を64.5℃、塔底温度を166℃として蒸留を行なって、蒸留塔の塔頂から留出液(0.14kg/h)を、塔底から缶液(3.14kg/h)を抜き出した。留出液の組成は、メタノール97.0重量%、炭酸ジメチル0.7重量%、ギ酸メチル2.3重量%で、缶液の組成は、シュウ酸ジメチル82.4重量%、炭酸ジメチル17.5重%であった。そして、この缶液を同様の蒸留塔で蒸留して、塔頂から純度99.9重量%の炭酸ジメチル(0.55kg/h)を得た。
【0061】
実施例1
第3工程で次の硝酸変換工程を設けたほかは、比較例1と同様にして炭酸ジメチルの製造を行なった。
〔硝酸変換工程〕
攪拌機、ガス供給ノズル、液供給ノズル、ガス抜き出しノズル、液抜き出しノズルを備えた5L容SUS316製オートクレーブ(硝酸変換用反応器;ディスクタービン2段付き、液面計付き)に、前記の再生塔塔底液(0.3L)を仕込んで窒素パージした後、窒素で3kg/cm2まで加圧した。次いで、この圧力を維持するようにガス抜き出しノズルからガスを抜き出しながら、第3工程の非凝縮ガスの一部(約0.35Nm3/h)をガス供給ノズルから供給して攪拌下(600rpm)で60℃まで昇温した。同時に、液供給ノズルから再生塔の塔底液(0.33L/h)を導入しながら、オートクレーブ内の液面が一定(約4L)になるように液抜き出しノズルから液(約0.3L/h)を抜き出した。
【0062】
反応開始から全体が安定した時点で、この抜出液の組成を測定したところ、メタノール52.2重量%、水45.4重量%、硝酸2.2重量%、亜硝酸メチル0.2重量%であった。また、オートクレーブからの抜出ガス(変換亜硝酸アルキル含有ガス;0.36Nm3/h)の組成は、一酸化炭素17.4容量%、亜硝酸メチル9.9容量%、一酸化窒素5.3容量%、メタノール6.9容量%、水2.2容量%、二酸化炭素1.0容量%、窒素57.3容量%であった。また、硝酸の転化率は約71%であった。更に、この硝酸変換工程を加えたことにより、再生塔から抜き出される亜硝酸アルキル含有ガスの組成を一定に維持するように第2工程の吸収塔から抜き出される非凝縮ガスに加えていた一酸化窒素26.8容量%を含む窒素ガスの供給量を調整して、0.078Nm3/hから0.019Nm3/hに低減することができた。なお、炭酸ジメチルの製造量に変化は見られなかった。
【0063】
【発明の効果】
本発明により、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを触媒存在下で反応させて炭酸ジアルキルを生成させる炭酸ジアルキルの製造方法において、亜硝酸アルキル源となる窒素成分の損失、特に一酸化窒素から亜硝酸アルキルを再生する際の硝酸の副生による窒素成分の損失を抑制して(結果的に亜硝酸アルキルの生成割合を高めて)、炭酸ジアルキルを高空時収量及び高選択率で連続的に効率よく製造する方法を提供することができる。
即ち、従来、再生塔で一酸化窒素から亜硝酸アルキルを再生する際に相当量の硝酸が生成するため、窒素成分のロスとなって亜硝酸アルキルの生成割合を低下させていたが、本発明によれば、この硝酸を効率よく亜硝酸アルキルに変換して炭酸ジアルキルの製造に再利用することができるので、窒素成分のロスを抑えた、非常に効率的な炭酸ジアルキルの製造プロセスを構成できるようになる。
また、本発明により、炭酸ジアルキルの製造において、窒素成分のロスを抑えることができる(硝酸を亜硝酸アルキルに変換して再利用できる)ので、窒素成分の補給量も減少させることができ、更に、必要に応じて、循環ガスのパージ等による窒素成分(亜硝酸アルキル、一酸化窒素)のロスを補う手段として、硝酸の補給という簡便な方法を用いることもできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭酸ジアルキル製造工程を例示する概略のプロセス図である。
【図2】炭酸ジアルキル製造工程のうちの亜硝酸アルキル再生用反応器(再生塔)と硝酸変換用反応器を含む工程を例示する概略のプロセス図である。
【符号の説明】
1:炭酸ジアルキル製造用反応器
2:吸収塔
3:亜硝酸アルキル再生用反応塔(再生塔)
▲1▼:上部域
▲2▼:下部域
4:硝酸変換用反応器
5:冷却器
11:CO供給ライン
12:主反応ガス抜き出しライン
13:吸収液供給ライン
14:凝縮液抜き出しライン
15:非凝縮ガス抜き出しライン
16:O2供給ライン
17:NOx供給ライン
18:NO供給ライン
19:アルコール供給ライン
20:塔底液抜き出しライン
21:塔底液循環ライン
22:ガス循環ライン
23:パージライン
24:廃液抜き出しライン
25:変換ガス抜き出しライン
Claims (6)
- (1)第1工程で、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを炭酸ジアルキル製造用反応器へ供給して触媒存在下で反応させ、炭酸ジアルキルと一酸化窒素を生成させて、(2)第2工程で、第1工程の反応ガスを炭酸ジアルキル吸収塔へ供給して炭酸ジアルキル吸収用吸収液と接触させ、炭酸ジアルキルを含有する凝縮液と一酸化窒素を含有する非凝縮ガスを得て、(3)第3工程で、第2工程の非凝縮ガスと分子状酸素を亜硝酸アルキル再生用反応塔の下部に供給すると共に、アルコールを亜硝酸アルキル再生用反応塔の上部に供給して該反応塔の上部から下部に流下させながら、一酸化窒素と酸素とアルコールを反応させて亜硝酸アルキルを生成させ、そして、得られる亜硝酸アルキル含有ガスを第1工程に循環すると共に、(4)第4工程で、第2工程の凝縮液を蒸留分離して炭酸ジアルキルを得る、炭酸ジアルキルの製造法において、
(5)第3工程の亜硝酸アルキル再生用反応塔の底部から硝酸及びアルコールを含有する塔底液を抜き出して硝酸変換用反応器に導入すると共に、該反応器に一酸化窒素を供給して、該導入塔底液と該一酸化窒素を接触させて亜硝酸アルキルを生成させ、そして、得られる亜硝酸アルキル含有ガスを前記亜硝酸アルキル再生用反応塔に供給することを特徴とする炭酸ジアルキルの製造法。 - 硝酸変換用反応器に供給する一酸化窒素が第2工程で得られる非凝縮ガスである、請求項1記載の炭酸ジアルキルの製造法。
- 硝酸変換用反応器に供給する一酸化窒素がその中に分子状酸素が存在することによる窒素酸化物を実質的に含有していない、請求項1又は2記載の炭酸ジアルキルの製造法。
- 硝酸変換用反応器で得られる亜硝酸アルキル含有ガスを、亜硝酸アルキル再生用反応塔のアルコールが流下している区域に供給する、請求項1〜3のいずれか記載の炭酸ジアルキルの製造法。
- 硝酸変換用反応器で得られる亜硝酸アルキル含有ガスを、第2工程で得られる非凝縮ガスに混合して亜硝酸アルキル再生用反応塔の下部に供給する、請求項1〜3のいずれか記載の炭酸ジアルキルの製造法。
- 第3工程で、亜硝酸アルキル再生用反応塔の底部から抜き出した塔底液を冷却器に導いて冷却すると共に、冷却した塔底液を該反応塔の中間部に循環供給する塔底液循環操作を、(a)塔底液の循環供給量を該反応塔へのアルコール供給量の50〜300重量倍とし、(b)該反応塔へのアルコール供給量と該反応塔の中間部に循環供給される塔底液中のアルコール量との合計を該反応塔への窒素酸化物供給量の20〜150倍モルとし、(c)塔底液のアルコール濃度を15〜60重量%とする条件下で行いながら、一酸化窒素と酸素とアルコールを反応させる、請求項1記載の炭酸ジアルキルの製造法。
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