JP4602596B2 - 気化器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料系統が単一であって主に汎用エンジンに燃料を供給するための気化器に関し、詳しくはエンジン起動から絞り弁全開とするまでの間の燃料流量を増量補正する機能をもった気化器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2サイクルまたは4サイクルの汎用エンジンに燃料を供給するための気化器として、エンジン要求燃料流量が少ないことや通路機構が簡単であることなどの理由で燃料系統を単一としたものが多く用いられており、このものは絞り弁の開閉動作に連動して燃料流量を調整する手段を具えている。
【0003】
特開昭58−101253号公報にはその一つが記載されている。この公報に記載されている気化器は吸気路を横断した円柱形の絞り弁と、絞り弁に設けた計量針と、絞り弁の弁孔内に突出した燃料ノズルとを具えており、絞り弁がアクセル操作に応じて回転しながら自身の軸線方向へ移動することにより、弁孔の吸気路との重なり度合いおよび計量針の燃料ノズルへの挿入深さが変化して空気流量と燃料流量とを同時に制御するものである。
【0004】
このような気化器によって燃料供給を受けるエンジンを起動させるとき、絞り弁がアイドル位置に置かれ従って計量針が燃料ノズルの燃料出口であるノズル口の開口面積を最小としている状態では起動が著しく困難であるので、起動に際してノズル口の開口面積を大きくするリフトアップ機構が広く採用されている。このリフトアップ機構は絞り弁と計量針とを一体にリフトアップするものであるため、絞り弁を開いた状態で起動を行なうこととなって起動に必要な高濃混合気を得にくいことから、起動性を重要視する気化器においてはチョーク機構を併用するのが一般的である。リフトアップ機構とチョーク機構とは、それぞれ単独に操作される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のリフトアップ機構とチョーク機構とを具えた気化器によってエンジンを起動させる場合、ノズル口の開口面積を大きくする操作とチョーク弁を閉弁する操作とを個別に行なう必要があって操作手順が面倒である。また、一方の機構のみを操作してもう一方の機構の操作を忘れることがあると起動不能となりやすく、確実に起動させるには或る程度の熟練を必要とする。
【0006】
本発明はリフトアップ機構とチョーク機構とを具えた気化器がもっている、操作手順が面倒である、取扱いに熟練を要する、という前記課題を解決するためになされたものであって、単一操作で両機構に起動態勢をとらせ、且つチョーク機能を解除してもリフトアップ機能が維持され、起動およびそれに続く暖機などを失敗なく確実に行わせることができるものとすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はチョーク弁レバーに連動して吸気路を開閉するチョーク弁を有するチョーク機構と、絞り弁レバーに連動して吸気路を開閉する絞り弁と、吸気路の横断方向に配置されて燃料ノズルに挿入された計量針とを具え、燃料系統が燃料ノズルを含む単一である気化器について、次に述べるような機構を具えさせることによって前記課題を解決することとした。
【0008】
即ち、チョーク機構のチョーク弁閉弁操作に連動して計量針の燃料ノズルへの挿入深さをアイドル位置から起動位置に変えるリフトアップ機構および絞り弁をアイドル位置から起動開度に開くファスト・アイドル機構と、チョーク弁を閉弁位置から開弁位置に戻したとき計量針および絞り弁を起動位置および起動開度に保持するように二つの機構を固定するが絞り弁を起動開度から全開方向へ動作させたとき二つの機構の固定を解除するロック機構とを具えさせたものである。
【0009】
エンジン起動にあたって、チョーク弁を閉弁させるとういうチョーク機構の単一操作で計量針および絞り弁がそれぞれ起動位置および起動開度にセットされ、起動後はチョーク弁を開弁しても絞り弁を全開方向へ動作させる通常のアクセル操作を行なうまではセット状態が保持される。従って、操作が熟練を要しないきわめて簡単なものとなり、また起動後の暖機運転を安定よく行わせることができる。
【0010】
ここで、絞り弁が円柱形の回転絞り弁であって計量針を装備している気化器に本発明を実施する場合は、リフトアップ機構とファスト・アイドル機構とを単一機構で構成し、ロック機構をこの単一機構と絞り弁レバーとの係合により計量針および絞り弁を起動位置および起動開度にそれぞれ保持するものとすることが好適である。
【0011】
また、絞り弁が蝶形であって燃料ノズルを絞り弁の下流側に設置した気化器に本発明を実施する場合は、リフトアップ機構をチョーク機構に連動して計量針を起動位置とするものであるとともに、ファスト・アイドル機構を計量針の起動位置への動作に連動して絞り弁を起動開度とするものであり、ロック機構をリフトアップ機構と計量針との係合により計量針および絞り弁を起動位置および起動開度にそれぞれ保持するものである、とすることが好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1,図2および図3,図4は回転絞り弁式気化器に本発明を適用した第一および第二の実施の形態を示すものであって、これらの気化器本体1に貫通形成されている横向き吸気路2と直交して縦方向に形成された下端閉止の嵌入孔3に円柱形の絞り弁4が回転可能且つ自身の中心軸線方向へ移動可能に嵌装されている。
【0013】
絞り弁4はその中心軸線に直交して吸気路2とほぼ同一径の弁孔5を有しているとともに、中心軸線上に位置させて上端から上方へ延び嵌入孔3のカバー体18を貫通して外部に突出した中空の絞り弁軸6を有しており、絞り弁軸6の軸端には運転者のアクセル操作によって旋回する絞り弁レバー7が固着されているとともに、絞り弁4とカバー体18との間には両端をこれらに固定したねじりコイルばねからなる閉弁ばね8が絞り弁軸6を囲んで装入されている。また、絞り弁4は絞り弁軸6側の端部にフランジを有しており、その吸気路2へ向かう下面にカム9が形成されていて、気化器本体1に支持させたローラ10がカム9に接触している。
【0014】
絞り弁軸6には計量針11の基端部が差込まれて絞り弁軸6にねじ込んだ調節ねじ12に押しばね13のばね力で押し付けられている。この計量針11の先端部は弁孔5に上方から突出して下方から突出している燃料ノズル14に差込まれ、ノズル口15の有効開口面積を調節する。燃料ノズル14は図示しないダイヤフラム式の定燃料室から延びる燃料通路16に接続されており、これらは単一の燃料系統Fを構成している。
【0015】
アクセル操作を行なって絞り弁レバー7を旋回させると、絞り弁4が一体に回転して弁孔5の吸気路2との重なり度合いが変わることによって空気流量が制御される。これと同時に、ローラ10に乗っているカム9に従って絞り弁4が自身の中心軸線方向へ移動して計量針11の燃料ノズル14への挿入深さが変わることによって燃料流量が制御される。この絞り弁4、計量針11の動作は従来のものと同じである。
【0016】
図1,図2に示した第一の実施の形態におけるチョーク機構Cは、吸気路2を横断して絞り弁4と平行な方向へ延びるチョーク弁軸21と、このチョーク弁軸21に取付けた円板形のチョーク弁22と、軸端に固着したチョーク弁レバー23とからなり、運転者の手動操作でチョーク弁レバー23を旋回させることによりチョーク弁22が吸気路2の入口部分を開閉する。
【0017】
チョーク弁レバー23は気化器本体1のカバー体18側の外部に絞り弁レバー7と並んで配置されており、チョーク弁軸21のカバー体18側の突出部分にカム部材25が一体形成により設けられている。このカム部材25は円柱状であって、直径上で切欠き形成された平面からなる第一カム面25と、これに連続した外側周面で形成された円弧面からなる第二カム面25とを有している。
【0018】
絞り弁軸6とチョーク弁軸21との間にはカバー体18に設けた案内26に直線往復動可能に嵌め込み支持された角棒状の作動部材27が配備されており、この作動部材27は案内26とフランジ27aとの間に装入した圧縮コイルばねからなる戻しばね28によって第一、第二カム面25,25のいずれかに基端を押し付ける力を付勢されている。また、この作動部材27の先端部上面は先端に向かって低くなる傾斜面29とされているとともに、傾斜面29の高い部分に突起30を有している。
【0019】
一方、絞り弁レバー7は絞り弁4の中心軸線を中心とする円弧形の外側周縁31aを有する円弧状の突縁31を有しており、この突縁31のカバー体18と向かい合った下面の外側周縁31aに接近した個所に円弧状の係止溝32が設けられている。
【0020】
図1および図2(A)はエンジンを起動させる前の状態を示しており、チョーク弁22は全開位置に置かれているとともに、作動部材27は第一カム面25に接して後退位置に置かれ、絞り弁4と計量針11とはアイドル位置に置かれている。このとき、作動部材27の先端は突縁31の下面に少し進入し、傾斜面29の低い部分が外側周縁31aの下端にほぼ接触した状態となっている。
【0021】
エンジン起動に際してチョーク弁レバー23を手動で図2反時計方向へ旋回させると、第一カム面25が作動部材27を押して傾斜面29を突縁31の下面に深く進入させ、絞り弁レバー7を傾斜面29の傾斜に応じて持ち上げる。これにより、絞り弁4と計量針11とが一体に持ち上げられながらカム9とローラ10とによって回転させられる。チョーク弁レバー23を約90度旋回させたとき、図2(B)に示したように第二カム面25が作動部材27に接触して最大前進位置とし、またこのとき突起30が係止溝32に嵌入係合するとともに、チョーク弁22は吸気路2の入口部分を閉じる。
【0022】
図2(B)に示した状態となったとき、絞り弁4と計量針11とは絞り弁軸6、絞り弁レバー7と一体に少し持ち上げられているとともに絞り弁4は図2時計方向へ少し回転させられており、計量針11はノズル口15の有効開口面積をアイドル開度よりも少し大きい開度とする起動位置に置かれるとともに、絞り弁4は弁孔5の吸気路2との重なり度合いをアイドル位置よりも少し大きくする起動開度に置かれる。
【0023】
この状態でエンジンを起動するとき、絞り弁4が開かれているにもかかわらずチョーク弁22が閉じて空気流量を制限していることと、計量針11が持ち上げられて燃料流量を増大させていることとによって、高濃度混合気がエンジンに供給され、低温時であっても確実な起動を行なうことができる。
【0024】
エンジンが起動した後にチョーク弁レバー23を前記と反対方向へ手動で旋回させチョーク弁22を全開位置に戻したとき、作動部材27は突起30が係止溝32に嵌入係合しているため最大前進位置に固定され、また絞り弁レバー7は突起30が係止溝32の終端部で係合しているためアイドル位置方向へ戻ることを阻止されて計量針11および絞り弁4を起動位置および起動開度にそれぞれ保持する。このときの状態は図2(C)に示されており、チョーク弁22を全閉または半開とした暖機運転や全開としたアイドリングが安定よく行われる。
【0025】
エンジン回転速度を上昇させるため絞り弁レバー7を図2時計方向へ旋回させると、絞り弁4は弁孔5と吸気路2との重なり度合いを増大しながらカム9に従って持ち上げられ、計量針11はノズル口15の有効開口面積を増大する。突起30は係止溝32が旋回しながら上昇することによって絞り弁4が全開するまでの間に係止溝32から離脱し、作動部材27は戻しばね28のばね力によって第一カム面25に押し付けられた位置に後退する。このときの状態は図2(D)に示されており、作動部材27が絞り弁レバー7の動作領域外に待避しているので、以後の絞り弁4開閉操作を従来と全く同様に行なうことができる。
【0026】
以上の説明から判るように、図1,図2に示した実施の形態によると、カム部材25,作動部材27,戻しばね28,傾斜面29,突縁31が計量針11の燃料ノズル14への挿入深さをアイドル位置から起動位置に変えるリフトアップ機構L、および絞り弁4をアイドル位置から起動開度に開くファスト・アイドル機構Mを構成し、そして傾斜面29,突起30,係止溝32が計量針11および絞り弁4を起動位置および起動開度にそれぞれ保持するロック機構Nを構成している。
【0027】
次に、図3,図4に示した第二の実施の形態は吸気路2に連通する補助吸気路37を有する取付台36が気化器本体1に図示しないボルトによって結合されている。この取付台36はフィルタ38とカバー部材39とを保持してエアクリーナ35を構成しているものである。
【0028】
本実施の形態におけるチョーク機構Cは、エアクリーナ35の内部に配置されて補助吸気路36の入口を開閉するシャッタ形のチョーク弁41と、取付台36の背面に沿って旋回させられるチョーク弁レバー42と、作動軸43とを具えている。チョーク弁41の基端に形成したボス41aの角形内側面とチョーク弁レバー42の基端に形成したボス42aの角形外側面とが互いに嵌まり合うことによってこれらは実質的に一体化され、且つこれらのボス41a,42aは取付台36に設けた吸気路2と平行な方向へ延びる支持孔44に回転可能に嵌込まれている。
【0029】
また、作動軸43はボス42aに回転可能に挿通支持されており、エアクリーナ35の内部に突出した基端に放射方向へ突設したアーム44の先端に設けたビン状の突起45が、チョーク弁41に形成した作動軸43の中心軸線を中心とする円弧状の係合溝46に嵌入係合している。作動軸43の先端は絞り弁軸6の近くまで達しており、この先端部には直径上で切欠き形成された平面からなる第一カム面47とこれに連続した外側周面で形成された円弧面からなる第二カム面47とを有するカム体47が設けられている。更に、ねじりコイルばねからなる戻しばね48が両端をチョーク弁レバー42および作動軸43に係合させ且つ作動軸43を囲んで設けられている。
【0030】
一方、絞り弁レバー7は外側周縁部の一部分に下方へ突出した台片49を一体に有している。この台片49の下面には上方または下方から見てほぼV形の浅い溝50が設けられており、外側周面に向かって拡がる溝50の両側端は第一係止縁51および第二係止縁51を形成している。
【0031】
図3および図4(A)はエンジンを起動させる前の状態を示しており、チョーク弁41は全開位置に置かれているとともに、カム体47は戻しばね48によって第一カム面47がアイドル位置の台片49の下面にほぼ接した位置に置かれ、第一係止溝51が作動軸43のほぼ中心軸線上に位置している。尚、絞り弁4と計量針11とはアイドル位置に置かれていることは言うまでもない。
【0032】
エンジン起動に際してチョーク弁レバー42を手動で図4時計方向へ旋回させると、チョーク弁41が一体に旋回するとともに、係合溝46に嵌入している突起45が押されることによって作動軸43も図4時計方向へ回転させられる。これにより、第一カム面47が第一係止縁51に当って絞り弁レバー7を持ち上げ、絞り弁4と計量針11とは一体に持ち上げられながらカム9とローラ10とによって回転させられるようになる。続いて、カム体47の第一カム面47と第二カム面47との間のかど部分47が溝50に嵌入して絞り弁レバー7の持ち上げを継続する。チョーク弁レバー42を約90度旋回させたとき、第4(B)に示したように第一カム面47が鉛直状態となり、第二カム面47が第二係止縁51に当ってかど部分47が絞り弁レバー7を持ち上げた状態となるとともに、チョーク弁41は補助吸気路36の入口を閉じる。
【0033】
図2(B)に示した状態となったとき、絞り弁4は図2反時計方向へ少し回転させられて弁孔5の吸気路2との重なり度合いをアイドル位置よりも少し大きくする起動開度に置かれ、計量針11は少し持ち上げられてノズル口15の有効開口面積をアイドル開度よりも少し大きい開度とする起動位置に置かれる。
【0034】
この状態でエンジンを起動するとき、絞り弁4が開かれているにもかかわらずチョーク弁41が閉じて吸気流量を制限していることと、計量針11が持ち上げられて燃料流量を増大させていることによって、低温時でも確実な起動ができることは第一の実施の形態と同じである。
【0035】
エンジンが起動した後にチョーク弁レバー42を前記と反対方向へ手動で旋回させチョーク弁41を全開位置に戻したとき、絞り弁レバー7と作動軸43とはカム体47のかど部分47が第二係止縁51に係合していることによって互いに固定されて計量針11および絞り弁4を起動位置および起動開度にそれぞれ保持する。このときの状態は図4(C)に示されており、チョーク弁41を全閉または半開とした暖機運転や全開としたアイドリングが安定よく行われることは第一の実施の形態と同じである。
【0036】
エンジン回転速度を上昇させるため絞り弁レバー7を図4反時計方向へ旋回させると、絞り弁4は弁孔5と吸気路2との重なり度合いを増大しながらカム9に従って持ち上げられ。計量針11はノズル口15の有効開度面積を増大する。この動作の初期に、かど部分47を第二係止縁51が押すことによって作動軸43は図4(B),(C)の状態から少し時計方向へ回転させられるが、第二係止縁51が通過すると作動軸43はカム体47が解放されることによって戻しばね48のばね力により起動前の位置に戻る。このときの状態は図4(D)に示されており、カム体47が絞り弁レバー7の殊に台片49の動作領域外に位置するので、以後の絞り弁4開閉操作を従来と全く同様に行なうことができる。
【0037】
以上の説明から判るように、図3,図4に示した実施の形態によると、作動軸43,突起45,係合溝46,カム体47,戻しばね48,第一および第二係止縁51,51が計量針11の燃料ノズル14への挿入深さをアイドル位置から起動位置に変えるリフトアップ機構L、および絞り弁4をアイドル位置から起動開度に開くファスト・アイドル機構Mを構成し、そしてカム体47,第一および第二係止縁51,51が計量針11および絞り弁4を起動位置および起動開度にそれぞれ保持するロック機構Nを構成している。
【0038】
また、本実施の形態によると、チョーク弁41をシャッタ形としてエアクリーナ35に内蔵させたので、リフトアップ機構Lとファスト・アイドル機構Mとを単一機構とし且つロック機構Nをその一部で構成したことと相俟って、全体を大形で複雑なものとすることなくコンパクトなものとすることができる。
【0039】
図5,図6は絞り弁が蝶形の気化器に本発明を適用した第三の実施の形態を示すものであって、気化器本体61に貫通形成されている横向き吸気路62を横断して延びる絞り弁軸63に円板形の絞り弁64が取付けられているとともに、この絞り弁軸63の気化器本体61から突出した軸端には運転者のアクセル操作によって旋回する絞り弁レバー65が固着されている。また、絞り弁64を閉弁方向へ動作させる図示しない絞り弁ばねを具えている。
【0040】
吸気路62の絞り弁64下流側には、絞り弁軸63と平行の燃料ノズル66が下方から突出しており、上方から突出させた計量針69が燃料ノズル66に差込まれてノズル口67の有効開口面積を調節する。この燃料ノズル66は図示しないダイヤフラム式の定燃料室から延びる燃料通路68に接続されており、これらは単一の燃料系統Fを構成している。また、計量針69は気化器本体61に中心軸線方向可動に保持させた中空の取付軸70に基端をねじ込み固定して保持されており、ねじ込み位置を調節することによってアイドル位置の微調整を行なうことができるとともに、計量針69をアイドル位置に保持し且つ取付軸70を所定の位相に保持するように働くねじり圧縮コイルばねからなる押しばね71が気化器本体61に重ねたばね押え61aと取付軸70のフランジ70aとの間に装入されている。
【0041】
取付軸70の気化器本体61から突出した軸端部にはカム部片73が固着されており、このカム部片73は絞り弁軸63と向かい合った側の下面に傾斜したカム面74を有するとともに、その最も高い方の端部に係合縁75を有している。また、絞り弁レバー65はカム部片73へ向かって延びるアーム76を有しており、このアーム76の先端部はカム面74に重なっている。
【0042】
一方、本実施の形態におけるチョーク機構Cは、吸気路62の入口部分を中心から偏心した位置で横断して絞り弁軸63と平行な方向へ延びるチョーク弁軸78と、このチョーク弁軸78に取付けた矩形板状のチョーク弁79と、軸端に取り付けたチョーク弁レバー80とからなり、運転者の手動操作でチョーク弁レバー80を旋回させることによりチョーク弁79が吸気路62の入口部分を開閉する。
【0043】
チョーク弁レバー80は絞り弁レバー65と並んで気化器本体61の表面に沿って配置されており、チョーク弁軸78の突出部分にカム部材82が一体形成により設けられている。このカム部材82は第一の実施の形態におけるカム部材25と同様の円柱状であって、直径上で切欠き形成された平面からなる第一カム面82と、これに連続した外側周面で形成された円弧面からなる第二カム面82とを有している。
【0044】
チョーク弁軸78と取付軸70との間には、気化器本体61に設けた案内83に直線往復動可能に嵌め込み支持された角棒状の作動部材84が配備されており、この作動部材84はそのフランジ84aと案内83との間に装入した圧縮コイルばねからなる戻しばね85によって第一、第二カム面82,82のいずれかに基端を押し付ける力を付勢されている。また、この作動部材84の先端部上面は先端に向かって低くなる傾斜面86とされているとともに、この傾斜面86上に突起87を有している。
【0045】
更に、カム部片73の下に受台88が取付軸70の側方へ突出して設けられており、この受台88の下面に係止溝89が設けられている。
【0046】
図5および図6(A)はエンジンを起動させる前の状態を示しており、チョーク弁79は全開位置に置かれているとともに、アーム76の先端部はカム面74の最も高い部分に重なって係合縁75に接触し、また作動部材84は第一カム面82に接して後退位置に置かれ、絞り弁64と計量針69とはアイドル位置に置かれている。このとき、作動部材84の先端は受台88の下面に少し進入し、傾斜面86の低い部分が外側周縁88aの下端にほぼ接触した状態となっている。
【0047】
エンジン起動に際してチョーク弁レバー80を手動で図6反時計方向へ旋回させると、第一カム面82が作動部材84を押して傾斜面86を受台88の下面に深く進入させるように働く。このとき、カム部片73の係合縁75に接触しているアーム76が絞り弁ばねによる抵抗力をカム部片73、受台88に加えているので、傾斜面86は受台88を押して図6反時計方向へ回動させながらその下面に進入し持ち上げる。チョーク弁レバー80を約90度旋回させたとき、図6(B)に示したように第二カム面82が作動部材84に接して最大前進位置とし、このとき突起87が係止溝89に嵌入係合するとともに、チョーク弁79は吸気路62の入口部分を閉じる。
【0048】
図6(B)に示した状態となったとき、受台88と一体回動するカム部片73の係合縁75に押されてアーム76が旋回することによって絞り弁64はアイドル位置より少し開いた起動開度とされ、また受台88が傾斜面86により持ち上げられることによって計量針69はノズル口67の有効開口面積をアイドル開度よりも少し大きい開度とする起動位置に置かれる。
【0049】
この状態でエンジンを起動するとき、絞り弁64が開かれているにもかかわらずチョーク弁79が閉じて空気流量を制限していることと、計量針69が持ち上げられて燃料流量を増大させていることとによって、低温時でも確実な起動ができることは第一、第二の実施の形態と同じである。
【0050】
エンジンが起動した後にチョーク弁レバー80を前記と反対方向へ旋回させチョーク弁79を全開位置に戻したとき、計量針69を挟んだ両側方で突起87が係止溝89に嵌入係合しているとともにアーム76が係合縁75に接しており、これらは戻しばね85および絞り弁ばねによって受台88およびカム部片73に互いに反対方向の回転力を発生させる。一般には戻しばね85よりも絞り弁ばねの方が強大であるので、作動部材84を最大前進位置に固定して計量針69および絞り弁64は起動位置および起動開度にそれぞれ保持される。このときの状態は図6(C)に示されており、チョーク弁79を全閉または半開とした暖機運転や全開としたアイドリングが安定よく行われる。
【0051】
エンジン回転速度を上昇させるため絞り弁レバー65を図6時計方向へ旋回させると、絞り弁64が全開方向へ回動するとともに、アーム76がカム部片73のカム面74に沿って旋回し、その傾斜に従ってカム部片73,受台88,取付軸70,計量針69を一体に持ち上げてノズル口67の有効開口面積を増大する。突起87は受台88が上昇することによって絞り弁64が全開するまでの間に係止溝89から離脱し、作動部材84は戻しばね85のばね力によって第一カム面82に押し付けられた位置に後退する。また、カム部片73は押しばね71のねじ戻り力によって取付軸70、受台88と一体に回動して最初の位置に戻る。このときの状態は図6(D)に示されており、作動部材84が計量針69の動作領域外に待避しているので、以後の絞り弁64開閉操作とアーム76,カム面74による計量針69の追従動作とを支障なく行なうことができる。尚、アーム76の旋回に伴ってカム部片73が図6反時計方向へ押されながら回動しようとするが、この回動は押しばね71によって阻止される。
【0052】
以上の説明から判るように、図5,図6に示した実施の形態によると、カム部材82,作動部材84,戻しばね85,傾斜面86,受台88が計量針69の燃料ノズル66への挿入深さをアイドル位置から起動位置に変えるリフトアップ機構L、カム部片73の係合縁75,絞り弁レバー65のアーム76が計量針69の起動位置への動作に連動して絞り弁64をアイドル開度から起動開度に動作させるファスト・アイドル機構Mをそれぞれ構成し、作動部材84の傾斜面86および突起87,受台88の係止溝89,アーム76,係合縁75が計量針69および絞り弁64を起動位置および起動開度にそれぞれ保持するロック機構Nを構成している。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、絞り弁と計量針とが連動して空気流量と燃料流量とを調整するとともにチョーク機構を用いて起動に必要な高濃混合気を得るようにした気化器について、チョーク機構の単一操作で絞り弁および計量針を起動開度および起動位置に移動させ且つチョーク機能を解除してもその位置を保持させることにより、熟練を要しない簡単な操作でエンジンの起動およびそれに続く暖機運転を確実且つ安定よく行わせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す縦断面図。
【図2】第一の実施の形態における(A)は起動前、(B)は起動時、(C)は起動後、(D)は絞り弁全開の状態を示す図1のX方向に見た図および縦断面部分図。
【図3】本発明の第二の実施の形態を示す縦断面図。
【図4】図3のX方向、Y方向、Z方向に見た(A)は起動前、(B)は起動時、(C)は起動後、(D)は絞り弁全開の状態を示す図。
【図5】本発明の第三の実施の形態を示す縦断面図。
【図6】図5のX方向、Y方向に見た(A)は起動前、(B)は起動時、(C)は起動後、(D)は絞り弁全開の状態を示す図。
【符号の説明】
2,62 吸気路, 4,64 絞り弁, 7,65 絞り弁レバー,
11,69 計量針, 14,66 燃料ノズル, 22,79 チョーク弁, 23,80 チョーク弁, C チョーク機構, F 燃料系統,
L リフトアップ機構, M ファスト・アイドル機構, N ロック機構,

Claims (3)

  1. チョーク弁レバーに連動して吸気路を開閉するチョーク弁を有するチョーク機構と、絞り弁レバーに連動して前記吸気路を開閉する絞り弁と、前記吸気路の横断方向に配置されて燃料ノズルに挿入された計量針とを具え、燃料系統が前記燃料ノズルを含む単一である気化器において、
    前記チョーク機構のチョーク弁閉弁操作に連動して前記計量針の前記燃料ノズルへの挿入深さをアイドル位置から起動位置に変えるリフトアップ機構および前記絞り弁をアイドル位置から起動開度に開くファスト・アイドル機構と、
    前記チョーク弁を閉弁位置から開弁位置に戻したとき前記計量針および絞り弁を起動位置および起動開度にそれぞれ保持するように前記二つの機構を固定するが前記絞り弁を起動開度から全開方向へ動作させたとき前記二つの機構の固定を解除するロック機構と、
    を具えたことを特徴とする気化器。
  2. 前記絞り弁が円柱形の回転絞り弁であって前記計量針を装備しており、前記リフトアップ機構とファスト・アイドル機構とが単一機構で構成されているとともに、前記ロック機構が前記単一機構と絞り弁レバーとの係合により前記計量針および絞り弁を起動位置および起動開度にそれぞれ保持するものとされている請求項1に記載した気化器。
  3. 前記絞り弁が蝶形であって前記燃料ノズルが前記絞り弁の下流側に設置されており、前記リフトアップ機構が前記チョーク機構に連動して前記計量針を起動位置とするものであるとともに、前記ファスト・アイドル機構が前記計量針の起動位置への動作に連動して前記絞り弁を起動開度とするものであり、前記ロック機構が前記リフトアップ機構と計量針との係合により前記計量針および絞り弁を起動位置および起動開度にそれぞれ保持するものとされている請求項1に記載した気化器。
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