JP4596662B2 - タイヤ加硫金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建設車両、土木車両用等の重荷重車両に用いるタイヤの加硫金型に関し、とくに、タイヤ幅の拡幅による負荷能力の増大を可能とするものである。
【0002】
【従来の技術】
タイヤの負荷能力の増大を図る従来技術としては、加硫金型の全体を新たに製造することおよび、現存する加硫金型の上下型間にディスタンスピースを介装してタイヤ最大幅を大きくすること等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、加硫金型の全体を新たに製造する場合には、トレッドパターンの設計が自由であるという利点はあるものの、製造時間および金型コストが嵩むという問題があり、この一方で、ディスタンスピースを適用する場合には、上述の場合に比して、製造時間および金型コストの増加は抑制できるも、とくに、主溝深さが20mm以上のタイヤにおいては、ディスタンスピースの追加分に対応するだけゴム量が増加するにもかかわらず、トレッドパターンの設計の自由度が低いため、タイヤの使用時におけるトレッドの放熱性が低く、トレッドゴムの早期の熱劣化が余儀なくされていた。
【0004】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、それの目的とするところは、時間およびコストの上で有利なディスタンスピースを用いてなお、トレッドの高い放熱性を確保することができるタイヤ加硫金型を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明のタイヤ加硫金型は、上型および下型を具え、上下のそれぞれの型間に、金型キャビティ内へ突出する、少なくとも一本の突条を設けたディスタンスピースを配設したものであって、突条の突出基部幅の、ディスタンスピースの上下幅に対する比を0.75〜0.90の範囲としてなるものである。
【0006】
これによれば、タイヤを、所期した通りに加硫成形することができる。
すなわち、トレッドの放熱性は、概してトレッドゴム量に依存するところが大きいので、ディスタンスピースを用いる場合にあっても、ゴム量の増加を極力抑えることが有効である。
そこでここでは、ディスタンスピースの適用によって、トレッド幅方向の中央部分に形成されて周方向に連続する陸部列に、これも周方向に連続する少なくとも一本の副溝を設けることで、ゴム量の増加を抑制してトレッドの放熱性を高め、併せて、トレッド表面積の増加の下に放熱効率を高める。
ここにおいて、上記の比が0.75未満では、タイヤ使用時のトレッドの放熱性が確保しにくい。いいかえれば、放熱性確保のためには、副溝深さが深くなり、モールド抜けが悪くなる。
一方、その比が0.90を越えると、ディスタンスピースの加工が困難になり、製造コストがかさむことになる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1は、この発明に係るタイヤ用加硫金型で加硫できるタイヤを示す要部横断面図であり、図中1はトレッドを、2は、トレッド1に形成した、主溝としてのラグ溝をそれぞれ示し、このラグ溝2は20mm以上の最大深さを有する。
【0008】
ここでは、トレッド1の幅方向中央部分に、周方向に直線状もしくはジグザグ状に連続する陸部列3を設け、そして、この陸部列3に、これも周方向に直線状もしくはジグザグ状に連続するたとえば一本の副溝4を形成する。
【0009】
またここでは、このような副溝4の溝幅W2をトレッド接地幅TWの4〜8%の範囲とし、それの溝深さDを、主溝深さMDの10〜50%の範囲とすることが好ましい。
【0010】
なお、図2に拡大断面図で示すように、副溝4の溝側壁4aの、陸部列表面に立てた法線に対する傾き角度θは、
θ>−4.2×(W2/D)+27
とすることが好ましく、その溝側壁4aと溝底壁4bとの交差部の曲率半径Rは、
取りうる最大径>R>0.319×D+1.8
とすること、より具体的には5〜10mmの範囲とすることが好ましい。
【0011】
このように構成されるタイヤでは、それを、ディスタンスピースを用いた加硫金型で加硫成形した場合であっても、とくには副溝4の作用下で、タイヤ使用時のトレッドの放熱性を有利に向上させることができ、その放熱性を、ディスタンスピースを適用しないタイヤ、いいかえれば、ディスタンスピースに対応する分だけトレッドゴム量が少ないタイヤと同等もしくはそれ以上とすることができる。
【0012】
ところで、以上のようなタイヤは、たとえば図3に誇張して示すように、上型11および下型12を具える加硫金型の、上下型間にディスタンスピース13を配設し、このディスタンスピース13の、たとえば、幅方向の中央部分に一本の突条14を設けた、この発明の実施形態の加硫金型によって加硫成形することができる。ここで、同図中の矢印は、加硫金型の開放方向を示す。
そしてまた、突条14の突出基部幅、いいかえれば副溝幅W2の、ディスタンスピース13の上下幅W1に対する比を0.75〜0.90の範囲とする。
【0013】
【実施例】
ディスタンスピース(D.P.)の適用前後のそれぞれのタイヤの寸法諸元を表1に示すものとしてドラム走行試験を行い、トレッドの最高温度を測定したところ表2に指数をもって示す通りとなった。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
なお、表2中の指数値は温度が低いほど小さい値とした。
表2の試験結果によれば、実施例タイヤでは、最高温度を、ディスタンスピースを適用前のタイヤのそれよりも低下させ得ることが明らかである。
【0017】
【発明の効果】
そもそも、フルモールドにディスタンスピースを適用した場合には、タイヤトレッドのゴム量がそのディスタンスピースに対応するだけ増加することになり、それ故に、トレッドの放熱性はディスタンスピースを適用する前と比較して悪くなるところ、この発明によれば、トレッド中央部分に設けた副溝の作用によってトレッドの放熱性を大きく向上させて、それを、ディスタンスピースを適用前のタイヤの放熱性と同等以上とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係るタイヤ加硫金型で加硫できるタイヤを示す要部横断面図である。
【図2】 副溝の拡大断面図である。
【図3】 この発明に係る加硫金型の実施形態を示す要部横断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド
2 ラグ溝
3 陸部列
4 副溝
4a 溝側壁
4b 溝底壁
11 上型
12 下型
13 ディスタンスピース
14 突条
W1 上下幅
W2 溝幅
TW トレッド接地幅
D 溝深さ
MD 主溝深さ
θ 傾き角度
R 曲率半径
Claims (1)
- 上型および下型を具え、上下のそれぞれの型間に、金型キャビティ内へ突出する、少なくとも一本の突条を設けたディスタンスピースを配設してなる加硫金型であって、前記突条の突出基部幅の、ディスタンスピースの上下幅に対する比を0.75〜0.90の範囲としてなるタイヤ加硫金型。
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