JP4593757B2 - エアバッグドア一体型インストルメントパネル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インジェクション工法により成形され材質として熱可塑性エラストマー以外の、例えば熱可塑性樹脂等を用いた、表皮・発泡層を持たないインストルメントパネルにおいて外観上ティアラインの見えないエアバッグドア一体型インストルメントパネルに関し、特に、助手席前方に形成されるエアバッグドア一体型インストルメントパネル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の助手席にもエアバッグ装置が設けられるようになった。このエアバッグ装置は、エアバッグと当該エアバッグが収納されるエアバッグケースとからなり、助手席の前方のインストルメントパネルの裏側に取り付けられる。エアバッグ装置が設けられたインストルメントパネルのエアバッグは、エアバッグの為の展開開口部を有し、この開口部は平時には前記インストルメントパネルと同種の外観をもったエアバッグドアによって覆われている。そして、一旦衝突などによって車両が大きな衝撃を受けた時には、前記エアバッグケース内に収納されているエアバッグが作動して膨張し、このエアバッグドアを内側から押し広げて開口させる。
【0003】
従来、かかるエアバッグ装置のカバーとして特開平10−81184号公報に記載のものが知られている。前記公報に記載のものは、図7に示すようにカバー本体62の内壁面に、その略中央部を横切るセンターティアライン61と、センターティアライン61の両端で交差部が略直交するように継続している第1側部ティアライン63及び第2側部ティアライン65とを形成してあり、カバー本体は、第1側部ティアライン63、センターティアライン61、及び第2側部ティアライン65で形成される一対のサイドパネル67,69とに区画され、センターティアライン61と第1側部ティアライン63及び第2側部ティアライン65との交差部の少なくともその周縁において、サイドパネル67,69をドアパネル71,73に対して背面側に折曲して形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この従来技術では、カバーは、合成樹脂製であり、特に熱可塑性エラストマーにより作成すればよいとあり、インストルメントパネルと異なる材質である為質感等が異なり、外観上問題がある。またエアバックカバーをインストルメントパネルと別体で形成し、後で組み付けるので組み付け後の各部品同士での段差・スキ等がある為やはり外観上問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、エアバッグドア一体インストルメントパネルにおいて、ティアラインに沿って破断が正確に起こり、エアバッグ膨出時にバリの発生、飛散及びエアバッグドアが割れることがなく、さらに材質として熱可塑性樹脂を用い、エアバッグドアとインストルメントパネルを同時に成形することによりインストルメントパネルとエアバッグドアの質感を同一にし、かつティアラインが外観上見えないエアバッグドア一体型インストルメントパネル及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決する為の手段】
係る目的を達成するため、本発明では請求項1は、エアバッグが膨出する開口部を閉成し、前記エアバッグ作動時の膨張圧力によって展開するエアバッグドアを一体に形成したエアバッグドア一体型インストルメントパネルであって、前記エアバッグドアとインストルメントパネルとが同じ熱可塑性樹脂からなり、前記エアバッグドアの内壁面には、その略中央部を横切るセンターティアラインと、センターティアラインの両端で交差部が略直角に交わるように継続している第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインとを形成しており、前記エアバッグドアの裏側に、前記エアバッグを収納するエアバッグケースが取付けられる取付部と、前記エアバッグドアに接合し、前記エアバッグドアを補強する補強部が一体に形成されたエアバッグブラケットが接合しており、エアバッグドア本体は、前記第1側部ティアライン、センターティアライン、及び第2側部ティアラインで形成される一対のドアパネルと、第1側部ティアライン並びに第2側部ティアラインで形成される一対のサイドパネルとに区画され、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも中央側に延出したことを特徴とするエアバッグドア一体型インストルメントパネルにある。
【0007】
請求項1に記載の発明によると、エアバッグが膨出する開口部を閉成し、前記エアバッグ作動時の膨張圧力によって展開するエアバッグドアを一体に形成したエアバッグドア一体型インストルメントパネルであって、前記エアバッグドアとインストルメントパネルとが同じ熱可塑性樹脂からなり、前記エアバッグドアの内壁面には、その略中央部を横切るセンターティアラインと、センターティアラインの両端で交差部が略直角に交わるように継続している第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインとを形成したエアバッグドア一体型インストルメントパネルとしたことから、剛性の高い熱可塑性樹脂を使用した場合においても、エアバッグ膨出時にエアバッグドアが割れず、さらにはエアバッグドアのバリの飛散がなくなった。
【0008】
請求項1に記載の発明によると、前記エアバッグドアの裏側に、前記エアバッグを収納するエアバッグケースが取付けられる取付部と、前記エアバッグドアに接合し、前記エアバッグドアを補強する補強部が一体に形成されたエアバッグブラケットが接合しており、エアバッグドア本体は、前記第1側部ティアライン、センターティアライン、及び第2側部ティアラインで形成される一対のドアパネルと、第1側部ティアライン並びに第2側部ティアラインで形成される一対のサイドパネルとに区画され、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも中央側に延出したエアバッグドア一体型インストルメントパネルとすることによって、エアバッグ膨出時の衝撃によるエアバッグドアの破損も発生せず、さらにエアバッグに傷もつかない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインの屈曲部のなす角度が95°から115°である請求項1に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネルにある。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、前記第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインの屈曲部のなす角度が95°から115°である請求項1に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネルであることから、エアバッグ展開時に応力の分散が行われ、ティアラインに沿った破断となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも1mmから4mm中央側に延出した請求項1又は2に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネルにある。
【0012】
請求項3に記載の発明によると、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも1mmから4mm中央側に延出した請求項1に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネルとすることによって、確実にティアラインのみで破断を起こし、エアバッグドアの割れ及びバリの発生やエアバッグの破損は全く生じない。
【0013】
請求項4に記載の発明は、エアバッグ作動時の膨張圧力によって展開するエアバッグドアのヒンジ部と開口予定部がそれぞれ形成されたインストルメントパネルの芯材において、前記エアバッグドアのエアバッグ側の面に補強板が裏打ちされたエアバッグドア一体型インストルメントパネルの製造方法であって、前記エアバッグドアの内壁面には、その略中央部を横切るセンターティアラインと、センターティアラインの両端で交差部が95°から115°の角度を成して交わるように継続している第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインとを形成して、エアバッグドア本体を前記第1側部ティアライン、センターティアライン、及び第2側部ティアラインで形成される一対のドアパネルと、第1側部ティアライン並びに第2側部ティアラインで形成される一対のサイドパネルとに区画し、前記エアバッグドアの裏側に、前記エアバッグを収納するエアバッグケースが取付けられる取付部と、前記エアバッグドアに接合し、前記エアバッグドアを補強する補強部が一体に形成されたエアバッグブラケットを補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも中央側に延出した状態に接合し、前記補強板を、前記芯材と裏打ち材によって挟持して、前記芯材に前記裏打ち材を振動溶着することによって固定するエアバッグドア一体型インストルメントパネルの製造方法にある。
【0014】
別部品である補強板を、インストルメントパネルの芯材と裏打ち材とで挟持して、これら芯材と裏打ち材とを振動溶着して補強板を固定する為強度を持たせることができて展開時の衝撃によりエアバッグドアが飛散せず、また、インストルメントパネル側に補強板を固定する為に別途、固定用の部分等を形成する必要がなくなる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記エアバッグドアとインストルメントパネルとを同じ熱可塑性樹脂で同時に成形した請求項4に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネルの製造方法にある。
【0016】
請求項5に記載の発明によると、前記エアバッグドアとインストルメントパネルとを同じ熱可塑性樹脂で同時に成形したことから、質感がエアバッグドアとインストルメントパネルとで統一され外観を損なわなく、さらにエアバッグドアとインストルメントパネルとの間に段差及び隙間がなくなり外観を損なうことがない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態例を説明する。図1は、本発明に係るエアバッグドア一体型インストルメントパネル1の構造を裏面から示した斜視図である。
【0018】
インストルメントパネル3の芯材は、ポリプロピレン樹脂をタルク、マイカ又はガラス等で補強したフィラー入りポリプロピレン樹脂(以下、PPC樹脂という。)、変性PPO樹脂、PC−ABSアロイ樹脂等の樹脂を基材として、射出成形等で、所定の形状に形成される。そして、その裏面側には、図示しないエアバッグの膨張によって展開するエアバッグドア2が形成されている。
【0019】
このエアバッグドア2は、適宜深さのノッチによって薄肉にされたセンターティアライン23を含め、開口予定部となりセンターティアライン23の端で継続して交差部が95°から115°の角度を成して交わっている第1側部ティアライン25と、前記ティアライン23の第1側部ティアライン25と反対側の端で継続して交差部が95°から115°の角度を成して交わっている第2側部ティアライン27、このセンターティアライン23、第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインが開裂してエアバッグドア2が展開した時に、回転軸となるヒンジ部29、31、39及び41とで形成されている。また、図示していないが、後述する裏打ち材5、7、9及び11の凸部と接する部分には各凸部に対応する凹部が形成されている。そして、このエアバッグドア2の裏面側には、エアバッグの膨張力によって、変形したり破損したりしないように、補強板13が固定される。
【0020】
エアバッグの展開時、センターティアライン23が先ず破断し、この破断に連続して第1側部ティアライン25及び第2側部ティアライン27が破断しやすくするために、センターティアライン23の溝深さを第1側部ティアライン25及び第2側部ティアライン27の溝深さよりも深く形成してもよい。
【0021】
第1側部ティアライン25の両端は、センターティアライン23と交差する交差部から95°から115°の角度をなして屈曲して形成してあり、図1に示すように、カバー背面側から見ると、扁平なくの字状を呈している。また、第2側部ティアライン27の両端は、センターティアライン23と交差する交差部から同じく95°から115°の角度をなして屈曲して形成してあり、図1に示すように、カバー背面側から見ると、扁平な逆くの字状を呈している。
【0022】
前記第1側部ティアライン25が屈曲する角度が95°より小さくなると、補強部位が強度不足となり、エアバッグ展開時の衝撃によってエアバッグドア2の割れが発生する。一方、前記第1側部ティアライン25が屈曲する角度が115°より大きくなると、バリの発生や飛散が起こる。つまり、前記ティアライン25の屈曲している箇所のなす角度が95°から115°の間になっていると、エアバッグ展開時に応力の分散が行なわれ、ティアラインに沿った破断となる。前記第2側部ティアライン27も同様に屈曲した箇所のなす角度が95°から115°の間になっていると、エアバッグ展開時に応力の分散が行なわれ、ティアラインに沿った破断となる。
【0023】
また、前記エアバッグドア2の裏側に、前記エアバッグを収納するエアバッグケースが取り付けられる取付部と、前記エアバッグドア2に接合し、前記エアバッグドア2を補強する補強部が一体に形成された図示しないエアバッグブラケットが接合しており、エアバッグドア2本体は、前記第1側部ティアライン25、センターティアライン23、及び第2側部ティアライン27で形成される一対のドアパネル15、17と、第1側部ティアライン並びに第2側部ティアラインで形成される一対のサイドパネル19、21とに区画され、前記補強部のサイドパネル45及び47がエアバッグドア2のサイドパネル19及び21よりも中央側に延出している。
【0024】
このようにエアバッグドア2本体が4つの区画に分かれ、それぞれの区画の境界がティアラインとなり、さらに第1側部ティアライン25及び第2側部ティアライン27の屈曲した箇所のなす角度が95°から115°の間にあることから、エアバッグドア2が2つの区画に分割されていたときと比べてエアバッグ展開時の応力が分散し、エアバッグドア2に無理な破断時の引き裂き力も掛かることがないことから、エアバッグ展開時にバリの発生や飛散が起こることなく、さらにエアバッグドア2に割れも発生しない。
【0025】
そして、前記補強部の一対のサイドパネル45及び47はエアバッグドア2のサイドパネル19及び21よりも1mmから4mm中央側に延出させた方が好ましい。前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルより延出する量が1mmより少なければ前記第1側部ティアライン25及び第2側部ティアライン27で屈曲した箇所が補強板5で十分に包囲されずエアバッグ展開時に前記屈曲した箇所が鋭角となり、エアバッグの破損及びエアバッグに傷を付けることとなる。一方、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルより延出する量が4mmより多ければ補強部のサイドパネル45及び47がエアバッグドア2のサイドパネル19及び21よりも大きくなりすぎ、ドアパネル15及び17と干渉し、エアバッグ展開時にエアバッグドア2の第1側部ティアライン25及び第2側部ティアライン27近辺が破損を起こす。
【0026】
補強板13は、鉄板、アルミニウム等の金属や、ポリカーボネイト−ABS等の複合材料、熱可塑性エラストマー等の温度特性の良い樹脂等で形成することができる。また、この補強板の厚みは、0.5mm前後とすることが好ましい。この、補強板13には、後述する裏打ち材5、7、9及び11の凸部が貫通する穴33が複数形成され、前述のインストルメントパネル3のエアバッグドア部2と一体となって展開する時に回転軸となるヒンジ部35が形成されている。このヒンジ部35は、図示しないエアバッグ側に突出するように折り曲げられていることが好ましい。これによって、展開時にヒンジ部で干渉部分が発生することがなくなり、スムーズに展開する。また、このヒンジ部35以外の部分、例えば、補強板端部37のような部分は、剛性を付与するためにビード加工等で加工しておくことが好ましい。
【0027】
補強板13の固定に用いられる裏打ち材5、7、9及び11は、インストルメントパネル3の芯材と同質の材料であるPPC樹脂、変性PPO樹脂、PC−ABSアロイ樹脂等の樹脂を用いることが好ましい。同質材料を用いることで溶着強度が高くなる。また、裏打ち材5、7、9及び11には、TPOを用いることもできる。TPOを用いることで、衝撃力やせん断力を緩和することが可能になるとともに、低温特性に優れるため、低温雰囲気下においても使用することができる。
【0028】
次に図3を参照しつつ本発明に係るエアバッグドア一体型インストルメントパネル3における補強板13の固定方法について説明する。図3(a)は組付け前の状態を示す図であり、(b)は振動溶着時の裏打ち材の振動方向を説明するための図であり、(c)は溶着後の状態を示す図である。
【0029】
先ず、図3(a)に示すように、インストルメントパネル3のエアバッグドア2を補強している補強板13の上に、裏打ち材5,7,9及び11を設置する。この時、裏打ち材5,7,9及び11の開口予定部分と、エアバッグドア2のティアライン29とを合わせるとともに、補強板に形成されている穴33と、エアバッグドア2に形成されている凹部49とを合わせて設置する。次に、裏打ち材5、7、9及び11の凸部51をそれぞれ補強板13の穴33に入れ、エアバッグドア2に形成された凹部49に接するように設置する。この時、凸部51の円筒内に形成されている樹脂板部59の方向が、図4に示すように中心部より外側に向かって放射状になるように設置するよう注意する。
【0030】
図3に戻り、図3(b)に示すように各材料を設置すると、裏打ち材5、7、9及び11の先端を、エアバッグドア2の凹部49に接触させながら、図に示すように2次元的に振動を加える。この振動による裏打ち材5、7、9及び11の凸部51の先端と対峙するエアバッグドア2の凹部49との摩擦熱により、裏打ち材5、7、9及び11の凸部51の先端とエアバッグドア2の凹部49とが溶け始め、図3(c)に示すような状態となって溶着することができる。この時、溶着部53から外側にバリ55がはみ出すようになる。このバリ55は、前述したように、凹部49の面積を凸部51の先端面積よりも大きく形成することで、逃がすことが可能となり、図3(c)に示すように、裏打ち材5、7、9及び11と補強板13とエアバッグドア2との間に隙間57を残した状態で溶着することが可能となる。このため、補強板13が鉄やアルミニウム等の金属のように、インストルメントパネル3の芯材や裏打ち材5、7、9及び11と熱膨張率が大きく異なる材質でも、熱履歴を受けたときに伸縮することが可能となり、熱応力による歪みや破壊を抑止することができる。
【0031】
以上のように、本実施形態例に係るエアバッグドア一体型インストルメントパネルは、インストルメントパネルの裏面側に形成されたエアバッグドアに、補強板が裏打ち材とインストルメントパネルの芯材とで挟持され、この裏打ち材と芯材とが振動溶着されることで、固定されたものである。このため、補強板は裏打ち材及び芯材それぞれの面によって挟持されているため、溶着強度を高くすることができる。また、振動溶着によって、裏打ち材と芯材とを溶着するため、裏打ち材の材質を適宜選択することが可能となる。また、補強板に金属等の別物を使用することができ、芯材と裏打ち材との振動溶着によって固定されるため、芯材に補強板を固定するために別途、固定部分を形成する必要もなくなり、このため、インストルメントパネルの成形時にインストルメントパネル表面にひけが発生することも無くなる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0033】
(実施例、参考例、従来例、比較例)所定形状のインストルメントパネルの金型に、PPCを投入して、厚さ4mm、ティアライン部の残厚が0.2mm、エアバッグドアの展開枠の大きさが縦110mm、横230mmのものを用いた。インストルメントパネルの裏面側に補強ドア部の長辺側の長さが205mmである補強板を、PPCからなる裏打ち材をインストルメントパネルに振動溶着して固定した。補強板は、材質がSPCC電気亜鉛メッキであり、厚さ0.5mmのものを用いた。前記補強板を4分割して補強部のサイドパネルと補強部のドアパネルとした。そして、それぞれ補強部のサイドパネルとエアバッグドアのサイドパネルとを対応させ、さらに補強部のドアパネルとエアバッグドアのドアパネルとをそれぞれ対応させて振動溶着を行った。また、エアバッグドアの第1側部ティアラインと第2側部ティアラインが屈曲する角度を何水準かに振ってエアバッグドアとそれに対応させて裏打ち材及び補強板を作製し、振動溶着を行った後、エアバッグの展開試験を行った。その結果を表1に示す。このとき、補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルからはみ出した量は0.5mmであった。
【0034】
【表1】
【0035】
表1の結果からわかるように、前記第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインのなす角度が90°以下の場合は、エアバッグドアに割れやひびが発生し、一方第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインの屈曲した箇所のなす角度が120°以上になるとバリの発生や飛散が起こることがわかる。
【0036】
さらに、次に、補強部のサイドパネル及びドアパネルの寸法を変化させて、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりはみ出す量を振ったものを作製した。はみ出し量としては、図5に示す量を採用した。この時の第1側部ティアラインと第2側部ティアラインの屈曲した箇所のなす角度は110°であった。そして、エアバッグの展開試験を行った。その結果を表2に示す。なお、図6に実施例、比較例の前記はみ出し量の形態を抜粋して示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2からもわかるように、補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりはみ出す量が1mmから4mmの間であれば特に問題無くエアバッグが展開できることがわかる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本発明では、エアバッグが膨出する開口部を閉成し、前記エアバッグ作動時の膨張圧力によって展開するエアバッグドアを一体に形成したエアバッグドア一体型インストルメントパネルであって、前記エアバッグドアとインストルメントパネルとが同じ熱可塑性樹脂からなり、前記エアバッグドアの内壁面には、その略中央部を横切るセンターティアラインと、センターティアラインの両端で交差部が略直角に交わるように継続している第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインとを形成したエアバッグドア一体型インストルメントパネルとしたことから、剛性の高い熱可塑性樹脂を使用した場合においても、エアバッグ膨出時にエアバッグドアが割れず、さらにはエアバッグドアのバリの飛散がなくなったという効果がある。
【0040】
請求項2に記載の発明では、前記第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインの屈曲部のなす角度が95°から115°である請求項1に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネルであることから、エアバッグ展開時に応力の分散が行われ、ティアラインに沿った破断となる効果がある。
【0041】
請求項3に記載の発明では、前記エアバッグドアの裏側に、前記エアバッグを収納するエアバッグケースが取り付けられる取付部と、前記エアバッグドアに接合し、前記エアバッグドアを補強する補強部が一体に形成されたエアバッグブラケットが接合しており、エアバッグドア本体は、前記第1側部ティアライン、センターティアライン、及び第2側部ティアラインで形成される一対のドアパネルと、第1側部ティアライン並びに第2側部ティアラインで形成される一対のサイドパネルとに区画され、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも中央側に延出したエアバッグドア一体型インストルメントパネルとすることによって、エアバッグ膨出時の衝撃によるエアバッグドアの破損も発生せず、さらにエアバッグに傷もつかないという効果がある。
【0042】
請求項4に記載の発明では、請求項3の効果に加えて、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも1mmから4mm中央側に延出したエアバッグドア一体型インストルメントパネルとすることによって、確実にティアラインのみで破断を起こし、エアバッグドアの割れ及びバリの発生やエアバッグの破損は全く生じないという効果がある。
【0043】
請求項5に記載の発明では、別部品である補強板を、インストルメントパネルの芯材と裏打ち材とで挟持して、これら芯材と裏打ち材とを振動溶着して補強板を固定する為強度を持たせることができて展開時の衝撃によりエアバッグドアが飛散せず、また、インストルメントパネル側に補強板を固定する為に別途、固定用の部分等を形成する必要がなくなるという効果がある。
【0044】
請求項6に記載の発明によると、前記エアバッグドアとインストルメントパネルとを同じ熱可塑性樹脂で同時に成形したことから、質感がエアバッグドアとインストルメントパネルとで統一され外観を損なわなく、さらにエアバッグドアとインストルメントパネルとの間に段差及び隙間がなくなり外観を損なうことがなくなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエアバッグドア一体型インストルメントパネルの構造の裏面側からの斜視図を示す。
【図2】本発明に係るエアバッグドア一体型インストルメントパネルで、エアバッグドアのティアララインと補強材との位置関係を示す図である。
【図3】裏打ち材を芯材に振動溶着する方法を説明するための図である。(a)は組み付け前の状態を示す図であり、(b)は振動溶着時の裏打ち材の振動方向を説明するための図であり、(c)は溶着後の状態を示す図である。
【図4】裏打ち材の凸部形状を示す図である。
【図5】補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりはみ出した状態を示した図であり、そのはみ出し量を図示したものである。
【図6】補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりはみ出した状態を示した図である。(a)は比較例4の状態を示す図であり、(b)は実施例4の状態を示した図であり、(c)は比較例6の状態を示した図である。
【図7】従来のエアバッグドアの構造の裏面側からの図である。
【符号の説明】
1 エアバッグドア一体型インストルメントパネル
2 エアバッグドア
3 インストルメントパネル
5 裏打ち材
7,9,11 裏打ち材
13 補強板
15,17 エアバッグドアのドアパネル
19,21 エアバッグドアのサイドパネル
23 センターティアライン
25 第1側部ティアライン
27 第2側部ティアライン
29,31,39,41 ヒンジ部
33 穴
35 ヒンジ部
37 補強板端部
42,43 補強部のドアパネル
45,47 補強部のサイドパネル
49 凹部
51 凸部
53 溶着部
55 バリ
57 隙間
Claims (5)
- エアバッグが膨出する開口部を閉成し、前記エアバッグ作動時の膨張圧力によって展開するエアバッグドアを一体に形成したエアバッグドア一体型インストルメントパネルであって、前記エアバッグドアとインストルメントパネルとが同じ熱可塑性樹脂からなり、前記エアバッグドアの内壁面には、その略中央部を横切るセンターティアラインと、センターティアラインの両端で交差部が略直角に交わるように継続している第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインとを形成しており、
前記エアバッグドアの裏側に、前記エアバッグを収納するエアバッグケースが取付けられる取付部と、前記エアバッグドアに接合し、前記エアバッグドアを補強する補強部が一体に形成されたエアバッグブラケットが接合しており、エアバッグドア本体は、前記第1側部ティアライン、センターティアライン、及び第2側部ティアラインで形成される一対のドアパネルと、第1側部ティアライン並びに第2側部ティアラインで形成される一対のサイドパネルとに区画され、前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも中央側に延出したことを特徴とするエアバッグドア一体型インストルメントパネル。 - 前記第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインの屈曲部のなす角度が95°から115°である請求項1に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネル。
- 前記補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも1mmから4mm中央側に延出した請求項1又は2に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネル。
- エアバッグ作動時の膨張圧力によって展開するエアバッグドアのヒンジ部と開口予定部がそれぞれ形成されたインストルメントパネルの芯材において、前記エアバッグドアのエアバッグ側の面に補強板が裏打ちされたエアバッグドア一体型インストルメントパネルの製造方法であって、
前記エアバッグドアの内壁面には、その略中央部を横切るセンターティアラインと、センターティアラインの両端で交差部が95°から115°の角度を成して交わるように継続している第1側部ティアライン及び第2側部ティアラインとを形成して、エアバッグドア本体を前記第1側部ティアライン、センターティアライン、及び第2側部ティアラインで形成される一対のドアパネルと、第1側部ティアライン並びに第2側部ティアラインで形成される一対のサイドパネルとに区画し、
前記エアバッグドアの裏側に、前記エアバッグを収納するエアバッグケースが取付けられる取付部と、前記エアバッグドアに接合し、前記エアバッグドアを補強する補強部が一体に形成されたエアバッグブラケットを補強部のサイドパネルがエアバッグドアのサイドパネルよりも中央側に延出した状態に接合し、
前記補強板を、前記芯材と裏打ち材によって挟持して、前記芯材に前記裏打ち材を振動溶着することによって固定するエアバッグドア一体型インストルメントパネルの製造方法。 - 前記エアバッグドアとインストルメントパネルとを同じ熱可塑性樹脂で同時に成形した請求項4に記載のエアバッグドア一体型インストルメントパネルの製造方法。
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