JP4561742B2 - I型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体の製造方法 - Google Patents

I型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、I型結晶構造を高純度で含有するフッ化ビニリデン単独重合体の製造方法および該I型結晶構造を高純度で含有するフッ化ビニリデン単独重合体からなる薄膜の形成方法に関する。
ポリマー型の強誘電材料は、セラミックなどの無機系強誘電材料に対して、フレキシブル、軽量、加工性が良く安価といった長所を有している。その代表的なものとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン(VdF/TrFE)共重合体といったフッ化ビニリデン系重合体が知られている。
ところでPVdFは大きく分けてI型(β型とも言う)、II型(α型)およびIII型(γ型)の3種の結晶構造が存在し、そのうち充分大きな強誘電性を発現できるのはI型結晶のみである。
従来、ラジカル重合法で製造した高分子量体のPVdFはII型結晶構造を形成し、そのままでは強誘電性は示さない。II型結晶構造のPVdFをI型結晶に変換するためには、フィルムの延伸・熱処理工程や、またキャスト時における高圧急冷など複雑な後工程が必要となる。
松重らは、II型の結晶構造を有するフッ化ビニリデンオリゴマー:CF3(CH2CF2nI(数平均重合度n=17)を用いて、I型結晶構造のフッ化ビニリデンオリゴマーの薄膜形成について検討している(非特許文献1))。
しかしながら松重らはフッ化ビニリデンオリゴマーの末端がヨウ素原子であるものでしか検討していない。
奥居らは、CCl4を連鎖移動剤(テローゲン)として用い、ジノルマルパーオキシジカーボネートを触媒としてラジカル重合して得たフッ化ビニリデンオリゴマー:CCl3(CH2CF2nCl(数平均重合度n=9)について結晶構造解析を行なっており、このものがI型(β型)結晶構造とIII型(γ型)結晶構造の混合物であること、さらに結晶融点Tmを2点(74℃と110℃)有することを報告している(非特許文献2、非特許文献3)。しかしながら奥居らは末端が塩素原子であるものでしか検討していない。
その他、連鎖移動剤(テローゲン)としてメタノールを用いる重合方法により末端に水酸基を導入する方法があるが(非特許文献4)、単に重合方法についての検討がされているだけであり、強誘電特性を発現できるI型(β型)の結晶構造をもつ単独重合体を純度良く、また効率良く製造する方法は示されていない。もちろん薄膜の形成に関しては全く検討されていない。
さらに非特許文献5で、重量平均分子量が534,000といった高分子量のPVdFをジメチルホルムアミド(DMF)とジメチルスルホキサイド(DMSO)、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトンなどの各種の溶剤との有機混合溶剤に溶解させ、I型結晶構造(β型)の生成における有機溶剤の双極子モーメントおよび水分の影響を検討している。しかし、有機溶剤からの析出ではIII型結晶構造(γ型)かII型(α型)のものしか得られておらず、高純度のI型結晶構造(β型)のPVdFフィルムは得られていない(非特許文献5の表1参照)。
また特許文献1には、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系の強誘電性高分子と非強誘電性高分子とをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて加熱成膜すると、基材密着性が向上した混合薄膜が得られることが開示されている。しかし、この特許文献1で得られたとされる強誘電性薄膜の自発分極は80〜500nC/cm2程度と低く、到底、実用の目途がつくものではない。
特開昭63−145353号公報
M&BE最前線:M&BE Vol.11,No.2,145(2000) Polymer Journal,Vol.30,No.8,pp659−663(1998) POLYMER Vol.38,No.7,pp1677−1683(1997) Macromol. Chem. Phys.,199,pp1271−1289(1998) Macromolecules,35,pp2682−2688(2002)
本発明の第一の目的は、高純度のI型結晶構造を含有するフッ化ビニリデン単独重合体を溶剤の選択により容易に製造する方法を提供することにある。
本発明の第二の目的は、多様な機能を有する高純度I型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体の薄膜の形成方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を行なった結果、フッ化ビニリデン単独重合体を特定の有機溶剤を単独でまたは一部として含む溶剤に溶解し、その有機溶剤を蒸散させるという簡単な処理により、I型結晶構造の純度が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、数平均重合度3〜20のフッ化ビニリデン単独重合体(以下、「特定のフッ化ビニリデン単独重合体」ということもある)を双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を単独でまたは一部として含む溶剤に溶解させた後、該溶剤を蒸散させることを特徴とするI型結晶構造を70質量%以上含有するフッ化ビニリデン単独重合体の製造方法に関する。
本発明はまた、数平均重合度3〜20のフッ化ビニリデン単独重合体を双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を単独でまたは一部として含む溶剤に溶解させた後、基材に適用して、該溶剤を蒸散させることを特徴とするI型結晶構造を70質量%以上含有するフッ化ビニリデン単独重合体の薄膜の形成方法にも関する。
前記フッ化ビニリデンの単独重合体としては、式(1):
−(R1n−Y (1)
(式中、R1は2価の有機基、ただしフッ化ビニリデン単独重合体の構造単位は含まない;nは0または1;Yは水素原子、ハロゲン原子またはハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基。ただし、nが0のとき、Yはヨウ素原子ではない)で表される部位を片末端または両末端に有し、かつフッ化ビニリデン単独重合体単位の数平均重合度が3〜20であるフッ化ビニリデン単独重合体に適用するときに特に有効である。
また、前記有機溶剤に可溶な他のポリマーを共に溶解させておいても、得られる薄膜は強誘電性を示す。
本発明によれば、溶解、蒸散という極めて簡易な手段により高純度のI型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体を製造することができ、また薄膜も容易に形成できる。
全I型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体のIRチャートである。 全II型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体のIRチャートである。 I型結晶構造とII型結晶構造の混合物からなるフッ化ビニリデン単独重合体のIRチャートからI型結晶構造とII型結晶構造の特性吸収のピーク高さを読み取る方法の説明の図面である。 II型結晶構造とIII型結晶構造の混合物からなるフッ化ビニリデン単独重合体のIRチャートからII型結晶構造とIII型結晶構造の特性吸収のピーク高さを読み取る方法の説明の図面である。 I型結晶構造の含有率F(I)が判っているI型とII型とIII型の混合物からなるフッ化ビニリデン単独重合体のIRチャートからI型結晶構造とIII型結晶構造の特性吸収のピーク高さを読み取る方法の説明の図面である。
つぎに本発明を具体的に説明する。
フッ化ビニリデン単独重合体のI型結晶構造は、重合体分子中の1つの主鎖炭素に隣り合う炭素原子に結合したフッ素原子と水素原子がそれぞれトランスの立体配位(TT型構造)、つまり隣り合う炭素原子に結合するフッ素原子と水素原子が炭素−炭素結合の方向から見て180度の位置に存在することを特徴とする。
本発明においてI型結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体は、1つの重合体分子全体がTT型構造を有していてもよいし、また重合体分子の一部がTT型構造を有するものであってもよく、かつ少なくとも4つの連続するフッ化ビニリデン単量体単位のユニットにおいて上記TT型構造の分子鎖を有するものを示すものである。いずれの場合もTT型構造の部分がTT型の主鎖を構成する炭素−炭素結合は平面ジグザグ構造をもち、C−F2、C−H2結合の双極子能率が分子鎖に対して垂直方向の成分を有している。I型結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体についてIR分析を行なうと、1274cm-1、1163cm-1および840cm-1付近に特徴的なピーク(特性吸収)を有し、粉末X線回折分析においては2θ=21度付近に特徴的なピークを有する。
なお、IR分析において、I型結晶構造の特性吸収は認められるが実質的にII型結晶構造およびIII型結晶構造の特性吸収が認められないものを「全I型結晶構造」という。
フッ化ビニリデン単独重合体のII型結晶構造は、重合体分子中のある1つの主鎖炭素に結合するフッ素原子(または水素原子)に対し、一方の隣接する炭素原子に結合した水素原子(またはフッ素原子)がトランスの位置にあり、なおかつもう一方(逆側)に隣接する炭素原子に結合する水素原子(またはフッ素原子)がゴーシュの位置(60度の位置)にあり、その立体構造の連鎖が2つ以上連続して有すること
Figure 0004561742
を特徴とするものであって、分子鎖が
Figure 0004561742
型でC−F2、C−H2結合の双極子能率が分子鎖に垂直方向と平行方向とにそれぞれ成分を有している。II型結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体についてIR分析を行なうと、1212cm-1、1183cm-1および762cm-1付近に特徴的なピーク(特性吸収)を有し、粉末X線回折分析においては2θ=17.7度、18.3度および19.9度付近に特徴的なピークを有する。
なお、IR分析において、II型結晶構造の特性吸収は認められるが実質的にI型結晶構造およびIII型結晶構造の特性吸収が認められないものを「全II型結晶構造」という。
フッ化ビニリデン単独重合体のIII型結晶構造は、TT型構造とTG型構造が交互に連続して構成された立体構造
Figure 0004561742
を有することを特徴とし、分子鎖が
Figure 0004561742
型でC−F2、C−H2結合の双極子能率が分子鎖に垂直方向と平行方向とにそれぞれ成分を有している。III型結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体についてIR分析を行なうと、1235cm-1および811cm-1付近に特徴的なピーク(特性吸収)を有し、粉末X線回折分析においては2θ=18度付近に特徴的なピークを有する。
なお、通常、III型結晶構造はI型結晶構造および/またはII型結晶構造と混在する形でその存在が確認される。
I型、II型およびIII型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体の確認や存在比率については、X線解析やIR分析法など種々の方法で分析できるが、本発明において、フッ化ビニリデン単独重合体中のI型結晶構造の含有率F(I)は、IR分析により測定したチャートの各結晶構造の特性吸収のピーク高さ(吸光度A)から、以下の方法により算出する。
(1)I型とII型の混合物中のI型の含有率(質量%。F(I)×100)の算出
(1-1)計算式
Beerの法則:A=εbC
(式中、Aは吸光度、εはモル吸光係数、bは光路長、Cは濃度)から、I型結晶構造の特性吸収の吸光度をAI、II型結晶構造の特性吸収の吸光度をAII、I型結晶のモル吸光係数をεI、II型結晶のモル吸光係数をεII、I型結晶の濃度をCI、II型結晶の濃度をCIIとすると、
I/AII=(εI/εII)×(CI/CII) (1−a)
ここで、モル吸光係数の補正係数(εI/εII)をEI/IIとすると、I型結晶構造の含有率F(I)(=CI/(CI+CII))は、
Figure 0004561742
となる。
したがって、補正係数EI/IIを決定すれば、実測したI型結晶構造の特性吸収の吸光度AIとII型結晶構造の特性吸収の吸光度AIIから、I型結晶構造の含有率F(I)を算出できる。
(1-2)補正係数EI/IIの決定方法
全I型結晶構造のサンプル(図1)と全II型結晶構造のサンプル(図2)とを混合してI型結晶構造の含有率F(I)が分かっているサンプルを調製し、IR分析する。得られたチャートから各特性吸収の吸光度(ピーク高さ)AIおよびAIIを読み取る(図3)。
ついで上記式(2−a)をEI/IIについて解いた式(3−a):
Figure 0004561742
に代入して、補正係数EI/IIを求める。混合比を変えたサンプルについて繰り返し行なって補正係数EI/IIを求め、それらの平均値として1.681を得た。
I型結晶構造の特性吸収として840cm-1を用い(参照文献:バックマンら、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、50巻、10号(1979)(Bachmann et al., J. Appl. Phys., Vol.50, No.10(1979)))、同文献からII型結晶構造の特性吸収として763cm-1を用いた。
(2)I型とIII型の混合物中のI型の含有率F(I)
III型結晶構造のみからなる物質が得にくいので、II型とIII型の混合物を標準物質として使用する。
(2-1)まず、II型とIII型の標準混合物中のIII型結晶構造の含有率を上記式(2−a)においてAIおよびAIIをそれぞれAIIおよびAIIIとし、II型とIII型の混合物における補正係数EII/IIIを文献(エス・オサキら、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス:ポリマー フィジクス エディション、13巻、pp1071−1083(1975)(S.OSAKI et al., J. POLYMER SCIENCE: Polymer physics Edition, Vol.13, pp1071-1083(1975))から0.81とし、II型とIII型の標準混合物のIRチャート(図4)から読み取ったAIIおよびAIIIを代入して算出した(F(III)=0.573)。III型結晶構造の特性吸収として811cm-1を用いた(参照文献:バックマンら、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、50巻、10号(1979))。
(2-2)ついで、III型の含有率が判明したII型とIII型の標準混合物と全I型結晶構造の物質を所定の割合で混合し、I型の含有率F(I)が判っているI型とII型とIII型の混合物を調製し、この混合物をIR分析してチャート(図5)からAIおよびAIIIを読み取り、上記式(3−a)(ただし、AIIをAIIIとする)から補正係数EI/III(εI/εIII)を算出する。II型とIII型の標準混合物とI型のみの物質混合比を変えたサンプルについて繰り返し行なって補正係数EI/IIIを求め、それらの平均値として6.758を得た。
(2-3)この補正係数EI/III=6.758を用い、上記式(2−a)(ただし、AIIをAIIIとする)からI型とIII型の混合物中のI型の含有率F(I)を求める。
本発明において、フッ化ビニリデン単独重合体は末端に式(1):
−(R1n−Y (1)
(式中、R1は2価の有機基、ただしフッ化ビニリデン単独重合体単位は含まない;nは0または1;Yは水素原子、ハロゲン原子またはハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基。ただし、nが0のときYはヨウ素原子ではない)で示される部位を有することが好ましい。
1は2価の有機基(ただし、フッ化ビニリデン単独重合体単位は含まない)である。R1の2価有機基として具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等のアルキレン基;メチレンオキシエチレン基、メチレンオキシプロピレン基、エチレンオキシプロピレン基等のアルキレンオキシアルキレン基;フェニレンエチレン基、フェニレンプロピレン基、フェニレンブチレン基等のアリーレンアルキレン基;フェニレンオキシエチレン基、フェニレンオキシプロピレン基等のアリーレンオキシアルキレン基などが例示され、好ましくはエチレン基およびプロピレン基である。またこれらの基の一部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。
Yは水素原子、ハロゲン原子またはハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基である。
ハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基としては、炭素数1以上であり、好ましくは炭素数5以下、さらには炭素数2以下であることが、I型結晶構造の純度の向上の点で有利である。
アルキル基のもつ分子構造としては、より詳細には次のものが好ましくあげられる。
i)一般式:Cn2n+1(n=1〜5)で示される、水素原子の一部または全てがフッ素原子、塩素原子、臭素原子のいずれかに置換されていてもよい、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基。
ii)一般式:Cn2nI(n=1〜5)で示される、末端にヨウ素原子を有し、水素原子の一部または全てがフッ素原子、塩素原子、臭素原子のいずれかに置換されていてもよい、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基。
具体例としては、たとえば水素原子;CH3、CH2CH3、CH(CH32、CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH2CH3などのアルキル基;フッ素原子;CF3、CF(CH32、CH(CF3)(CH3)、CH(CF32、CF(CF32、CH2CF3、CH2CH2CH2CF3、CH2CH2CH2CH2CF3、CH2CF2CF2CH2CF3、CH2CF2CF2CF2CF3、CF2CF2CF2CF2CF3などの含フッ素アルキル基;CH2CH2I、CH2CH2CH2Iなどの末端ヨウ素化アルキル基などが例示できる。
これらのうち、I型結晶構造の純度の向上の点から、水素原子、フッ素原子、CH3、CH2CH3、CF3、CH2CF3が好ましい。
フッ化ビニリデン単独重合体中のフッ化ビニリデンのみの繰返し単位に着目した数平均重合度は、下限は4、さらには5、特に7であることが好ましく、上限は20、さらには17である。強誘電性材料として利用する場合の数平均重合度は、下限は4、特に7であり、上限は20、より好ましくは17、さらには15であるのが好ましい。数平均重合度が大きすぎるとI型結晶構造の比率が低下することがある。
本発明に用いる原料としてのフッ化ビニリデン単独重合体は、II型単独でも、I型とII型の混合物でも、さらにはIII型をも含んでいてもよい。
原料としてのフッ化ビニリデン単独重合体は、例えば、末端がヨウ素原子または臭素原子のフッ化ビニリデン単独重合体を製造し、ついで末端を前記式(1)で示される部位に変性することにより製造することができる。
このとき末端の変性は一段階の反応で進めてもよいが、一旦他の末端基に変性してから、目的とする末端基に変性してもよい。変性方法については、後述する。
末端がヨウ素原子または臭素原子のI型結晶構造を単独または主成分として有するフッ化ビニリデン単独重合体の製造方法は、本発明者らが開発したものである。
すなわち、フッ化ビニリデンを式(1A):
9−X10 (1A)
(式中、R9は1価の有機基、ただしI型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体単位は含まない;X10はヨウ素原子または臭素原子)で示されるヨウ素化合物または臭素化合物または式(1B):
10−R2−X10 (1B)
(式中、R2は2価の有機基、ただしI型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体単位は含まない;X10はヨウ素原子または臭素原子)で示されるヨウ素化合物または臭素化合物を連鎖移動剤(テローゲン)として存在させてラジカル重合することにより、末端がヨウ素原子または臭素原子のI型結晶構造を単独または50質量%以上有するフッ化ビニリデン単独重合体を得ることができる。
以上に、原料としてのI型結晶構造を単独または主成分として含むヨウ素原子または臭素原子末端のフッ化ビニリデン単独重合体について説明したが、上述したおよび後述するとおり、特定の溶剤に溶解して析出させる本発明の製造方法では、フッ化ビニリデン単独重合体であれば、結晶構造はII型単独でも、I型とII型の混合物でも、さらにはIII型を含んでいるものでもよい。
これらのII型結晶構造を単独または一部として含むフッ化ビニリデン単独重合体は、従来公知のII型結晶構造を含むヨウ素原子または臭素原子末端のフッ化ビニリデン単独重合体(例えば松重ら、Jpn. J. Appl. Phys., 39, 6358 (2000)などに記載)の末端を前記式(1)で示される部位に変性することにより製造することができる。
本発明の製造方法は、数平均重合度が3〜20の、好ましくは少なくとも一方の末端に部位(1)を有するI型結晶構造フッ化ビニリデン単独重合体を特定の有機溶剤に溶解し、ついで有機溶剤を蒸散させる方法である。
フッ化ビニリデン単独重合体は、重合反応生成物(原末)をそのまま有機溶剤に溶解してもよいし、フッ化ビニリデン単独重合体に何らかの処理工程を加えたのちに溶解してもよい。
加える処理工程としては、例えば、重合体原末中の低分子量不純物などを除去する洗浄処理工程のほか、フッ化ビニリデン単独重合体を特定の分子量のものに分離する分離工程、再沈および再結晶などの工程、乾燥を目的とする加熱工程、真空処理工程、結晶を成長させる目的の熱処理工程などがあげられる。
本発明においてI型結晶構造フッ化ビニリデン単独重合体を溶解する有機溶剤は、双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を単独でまたは一部として含む溶剤である。双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を単独でまたは一部として含む溶剤を用いることによりI型結晶構造が高純度で得られる理由は不明である。
なお、本発明で使用する双極子モーメントの値は、主として化学便覧・基礎編・改訂3版(日本化学会編:丸善)およびCRC Handbook of Chemistry and Physics(Lide, David R. 編:CRC Press)に記載されている値を採用している。
双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤としては、たとえばジメチルホルムアミド(双極子モーメント=3.82)、アセトニトリル(3.92)、アセトン(2.88)、ジメチルアセトアミド(3.81)、ジメチルスルフォキサイド(3.96)、ヘキサメチルフォスホルアミド(5.39)、N−メチル−2−ピロリドン(4.09)、テトラメチルウレア(3.47)などの1種または2種以上の混合溶剤が例示できる。これらのうち、I型結晶構造の生成率が高い点から、有機溶媒の双極子モーメントは、3.0以上が好ましく、より好ましくは3.5以上、特に3.7以上である。
本発明においては、双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を一部として含む溶剤も有効に使用できる。この混合溶剤では双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を5質量%以上、さらには10質量%以上、特に30質量%以上含んでいれば、双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤の単独使用に匹敵するI型結晶構造の高純度化効果が奏される。
混合する他の有機溶剤としては、併用する双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤よりも沸点が低いものが好ましく、たとえばメチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、酢酸、ピリジン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート(PEGMEA)、メチルアミルケトン(MAK)などが例示できる。
溶解温度は、通常−30〜150℃、好ましくは0〜80℃、より好ましくは25〜50℃が採用される。高すぎるとフッ化ビニリデン単独重合体もしくは溶媒の変質がおきる傾向となり、低すぎると溶媒が固化したり、粘度が上昇したり、フッ化ビニリデン単独重合体が溶解しにくくなる傾向にある。
フッ化ビニリデン単独重合体溶液の濃度としては、有機溶剤の種類や溶解温度などによって適宜選定すればよいが、飽和溶解度まで溶解させても本発明の効果は奏される。好ましい濃度は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
本発明の製造方法においては、つぎにこの溶液から有機溶剤を蒸散させてフッ化ビニリデン単独重合体を析出させる。
有機溶剤を蒸散させる方法としては特に制限はなく、たとえば大気圧下に開放系で放置する方法、大気圧下に密閉系で放置する方法、減圧下に室温で蒸散させる方法、減圧下に加熱して蒸散させる方法など通常の方法が採用できる。ただ、高温に加熱すると析出したフッ化ビニリデン単独重合体自身が溶融する傾向にあるので、周囲圧力に関係なく、フッ化ビニリデン単独重合体が溶融しない温度が好ましく、具体的には0℃以上、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、150℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下である。
周囲圧力は蒸散温度を低下させる点から大気圧、特に減圧下が好ましい。好ましい周囲圧力は0.0013Pa以上、さらには0.133kPa以上、特に1.333kPa以上であり、大気圧以下、さらには9.333kPa以下、特に6.666kPa以下である。
蒸散は残留溶媒による電気物性、特に強誘電特性の低下防止の点から溶剤が充分に除去されるまで時間をかけて行うことが望ましい。
有機溶剤を充分に蒸散して除去することにより析出したフッ化ビニリデン単独重合体は、出発物中のI型結晶構造の含有率に関係なく、I型結晶構造が70質量%以上の高純度のフッ化ビニリデン単独重合体になっている。生成物中のI型結晶構造の存在比率は、使用する目的によって決定すればよく、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらには95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
なお、出発物中のI型結晶構造の含有率は70質量%未満である必要はなく、70質量%以上の含有率のものに本発明の製造方法を適用すれば、純度をさらに高めることができる。
本発明の製造方法により得られる高純度のI型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体は、I型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体の集合体の形態で得られる。
そこで、フッ化ビニリデン単独重合体溶液を基材に適用し、溶剤を蒸散させることにより、高純度のI型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体の薄膜を基板上に形成することができる。
すなわち本発明はさらに、数平均重合度3〜20のフッ化ビニリデン単独重合体を双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を単独でまたは一部として含む溶剤に溶解させた後、基材に適用して、該溶剤を蒸散させることを特徴とするI型結晶構造を70質量%以上含有するフッ化ビニリデン単独重合体の薄膜の形成方法にも関する。
また、前記有機溶剤に可溶な他のポリマーを共に溶解させておいても、得られる薄膜は強誘電性を示すので、薄膜の強度や成膜加工性の向上が図れる。
他のポリマーとしては、強誘電性のポリマーであっても、非強誘電性のポリマーであっても、両者の混合物でもよい。また、液晶性ポリマー、導電性ポリマーのような強誘電性以外の電気的、光学的な機能性を示すポリマーでもよい。
他のポリマーが強誘電性のポリマーである場合は、その強誘電性ポリマー単独の薄膜の場合よりも強誘電性が向上する。他のポリマーが非強誘電性のポリマーである場合は、形成された薄膜に強誘電性が発現する。
前記有機溶剤に可溶な他の強誘電性ポリマーとしては、たとえばフッ化ビニリデン単独重合体のうち、上記の本発明で使用する特定のフッ化ビニリデン単独重合体以外のフッ化ビニリデン単独重合体、たとえば数平均重合度が20を超える高分子量のポリフッ化ビニリデンのほか、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系ポリマー;ビニリデンシアナミド−ビニリデンアセテート共重合体などのシアノ系ポリマー;ナイロン9やナイロン11などの奇数ナイロン;芳香族ポリアミドなどが例示できる。これらのうち良好な強誘電特性を示す点から、フッ素系ポリマー、特にフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、数平均重合度が20を超える高分子量のポリフッ化ビニリデンが好ましい。
前記有機溶剤に可溶な他の非強誘電性ポリマーとしては、たとえばオレフィン、含フッ素オレフィン、アクリル系化合物、メタクリル系化合物、含フッ素アクリル系化合物、含フッ素メタクリル系化合物、ノルボルネン化合物、オルガノシラン系化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテルなどの単量体の1種または2種以上を重合して得られるポリマーのうち、強誘電性を示さないものが例示できる。
オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどが例示でき、含フッ素オレフィンとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
アクリル系化合物およびメタクリル系化合物としては側鎖について特に制限なく使用でき、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルについては、エステル部位について特に制限なく使用できる。具体例としては、たとえばメチルアクリレートート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル;エチレングリコール基、プロピレングリコール基もしくはテトラメチレングリコール基を含有したアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル;アルコキシシラン基を含有するアクリル酸エステルまたはアルコキシシラン基を含有するメタクリル酸エステル;3−オキソシクロヘキシルアクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート、アルキルアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環を含むアクリル酸またはメタクリル酸エステルなどの環構造を含むアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン基を含有するビニルシラン、アクリル酸、メタクリル酸などが使用できる。さらにαシアノ基含有の上記アクリレート類化合物や類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などが例示できる。
含フッ素アクリル系化合物および含フッ素メタクリル系化合物としては側鎖について特に制限なく使用でき、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルについては、エステル部位について特に制限なく使用できる。含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子を有する基をアクリル酸のα位に有する含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル、エステル部位がフッ素原子を有する含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステルがあげられる。後者の場合、α位にシアノ基がさらに導入されていてもよい。
α位に含フッ素アルキル基が導入された含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステルとしては、上記非フッ素系のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであって、α位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが結合したものが例示できる。
含フッ素エステル部位としては、パーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基である含フッ素アルキル基;エステル部位に環状構造とフッ素原子が共存する部位であって、その環状構造がたとえばフッ素原子やトリフルオロメチル基で置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環などである部位があげられる。
含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステルのうち特に代表的なものとしては、たとえば2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレートなどの含フッ素アクリル酸エステル;2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの含フッ素メタクリル酸エステルなどがあげられる。
ノルボルネン化合物および含フッ素ノルボルネン化合物は、一核または複数の核構造を有するノルボルネン化合物である。この際アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、アクリル酸、αフルオロアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとを用いてディールス アルダー(Diels Alder)付加反応を行ったノルボルネン化合物が採用される。
スチレン系化合物または含フッ素スチレン系化合物としては、スチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどの他、ヘキサフルオロアセトンを付加したスチレン系化合物、トリフルオロメチル基で水素を置換したスチレンまたはヒドロキシスチレン、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレンまたは含フッ素スチレン系化合物などが例示できる。
また、ビニルエーテルおよび含フッ素ビニルエーテルとしては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基を含有してもよいアルキルビニルエーテルであって、その水素の一部または全部がフッ素で置換されていてもよい。またシクロヘキシルビニルエーテルやその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニルエーテル、それらの環状型ビニルエーテルの水素の一部または全部がフッ素で置換された単量体も例示できる。
なお、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルシランについても公知の化合物であれば特に制限なく使用することが可能である。
これらの単量体を用いたポリマーのうち、強誘電性向上の点から、含フッ素オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテルの1種または2種以上の単量体を用いたポリマーが好ましい。
前記特定のフッ化ビニリデン単独重合体と他のポリマーを混合することにより得られた薄膜は、強誘電性の発現または向上に加えて、他のポリマーの特性、たとえば延伸加工性の向上などの加工性や機械的強度の向上が期待できる。また、強誘電性に付随する電気的・光学的特性、たとえば電気光学効果などを向上させることもできる。
これらのコーティング溶液における特定のフッ化ビニリデン単独重合体の濃度は、目的とする膜厚やコーティング溶液の粘度などによって異なるが、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
他のポリマーを共存させる場合は、他のポリマーの種類や目的とする追加の特性などによって異なるが、他のポリマーと特定のフッ化ビニリデン単独重合体の混合物全体の質量に対してフッ化ビニリデン単独重合体が、たとえば5質量%以上、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上を占めるように配合することが望ましい。上限は、塗膜の膜質維持の点から、95質量%、好ましくは90質量%、さらに好ましくは85質量%である。
これらのコーティング溶液を用いて基材に塗布する方法としては、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコートなどの公知の塗装方法が採用可能であり、なかでも薄膜を効率よく形成する方法として、スピンコート法、グラビアコート法などが好ましく、特にスピンコートが好ましい。
上記の方法で塗布した後、溶媒を蒸散して除去する。蒸散の条件は上記の製造方法で説明した方法が採用できる。
薄膜の形成においては、特定のフッ化ビニリデン単独重合体の融点を下回る温度での加熱乾燥が好ましい。加熱による乾燥の温度は、使用する溶媒の沸点などによって異なるが、好ましい蒸散温度としては0℃以上、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、150℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下である。
このようにして、コーティング溶液の形態で塗布され基材に形成されたフッ化ビニリデン単独重合体薄膜はI型の結晶構造を維持しており、優れた強誘電性を発現する能力を有するものである。
基材の種類は、目的と用途などによって適宜選択されるが、シリコン系基材または金属系基材のほか、ガラス系基材などのセラミックス系基材、樹脂系基材などから選ばれる。
フッ化ビニリデン単独重合体薄膜の電気特性を利用する場合、基材としては、例えば、電極を形成できる導電性の基材であることが好ましい。また、シリコン系基材、セラミックス系基材(ガラス系基材など)、樹脂系基材など絶縁性基材の上に、導電性材料の薄膜を形成したものも導電性の基材として好ましい。
導電性基材または導電性薄膜用の金属系材料としては、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレス、金、銀、白金、タンタル、チタン、ニオブ、モリブデン、インジウム錫酸化物(ITO)などを用いることができる。なかでも、シリコンウェハ上にアルミニウム、金、銀、白金、タンタル、チタンなどの薄膜を形成したものが好ましい。
また、金属系基材として、アルミニウム、銅、金、銀および白金なども好ましい。
なお、基材表面に設けられたこれら導電性薄膜は、必要に応じてフォトリソグラフィー法やマスクデポジット法などの公知の方法で所定の回路にパターニングされていてもよい。
こうした基材の上に、前述の方法でI型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体薄膜が形成される。
基材への適用方法としては、コーティング溶液(塗料)の形態で塗布する方法(コーティング溶液法)が好ましく利用できる。またコーティングした薄膜を基材とともに用いてもよいし、基材から薄膜を剥がし取り、フィルムとして用いてもよい。
I型結晶構造のフッ化ビニリデン単独重合体薄膜の膜厚は、目的とする積層体の狙いと用途によって適宜選択されるが、通常、1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上であり、10μm以下、好ましくは1μm以下、特に好ましくは500nm以下程度である。フィルムとする場合には、膜厚は通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上であり、100μm以下、好ましくは80μm以下、特に好ましくは50μm以下程度である。
本発明の形成方法で得られた薄膜は、機械的強度が向上し、耐熱性も高くなるので、環境耐性が高く高性能なFE−RAM、赤外線センサー、マイクロホン、スピーカー、音声付ポスター、ヘッドホン、電子楽器、人工触覚、脈拍計、補聴器、血圧計、心音計、超音波診断装置、超音波顕微鏡、超音波ハイパーサーミア、サーモグラフィー、微小地震計、土砂崩予知計、近接警報(距離計)侵入者検出装置、キーボードスイッチ、水中通信バイモルフ型表示器、ソナー、光シャッター、光ファイバー電圧計、ハイドロホン、超音波光変調偏向装置、超音波遅延線、超音波カメラ、POSFET、加速度計、工具異常センサ、AE検出、ロボット用センサ、衝撃センサ、流量計、振動計、超音波探傷、超音波厚み計、火災報知器、侵入者検出、焦電ビジコン、複写機、タッチパネル、吸発熱反応検出装置、光強度変調素子、光位相変調素子、光回路切換素子などの圧電性、焦電性、電気光学効果あるいは非線形光学効果を利用したデバイス、高誘電率を利用したコンデンサーなどに利用可能である。
つぎに本発明を合成例、実施例などをあげて説明するが、本発明はかかる例のみに限定されるものではない。
まず、本発明の説明で使用するパラメーターの測定法について説明する。
[1]フッ化ビニリデン(VdF)重合体の数平均重合度の測定法
(1)CF3(VdF)nIの数平均重合度(n)
19F−NMRより求める。具体的には、−61ppm付近のピーク面積(CF3−由来)と、−90〜−96ppm付近のピーク面積(−CF2−CH2−由来)からつぎの計算式で算出する。
(数平均重合度)=((−90〜−96ppm付近のピーク面積)/2)/((−61ppm付近のピーク面積)/3)
[2]各種の測定(分析)方法および装置
(1)IR分析
(1-1)測定条件
KBr法。1〜5mgのフッ化ビニリデン重合体粉末を100〜500mgのKBr粉末に混合し、加圧してペレット化した後、測定装置にペレットを固定し、25℃にて測定する。
(1-2)測定装置
PERKIN ELMER社製のFT−IR spectrometer 1760X
(2)1H−NMRおよび19F−NMR分析
(2-1)測定条件
フッ化ビニリデン重合体粉末10〜20mgをd6−アセトン中に溶解し、得られたサンプルをプローブにセットして測定する。
(2-2)測定装置
Bruker社製のAC−300P
(3)粉末X線回折分析
(3-1)測定条件
専用のガラスプレート上にフッ化ビニリデン重合体粉末を塗布し、ガラスプレートを測定装置にセットして測定する。
(3-2)測定装置
Rigaku社製のRotaflex
(4)強誘電性測定装置
(4-1)測定条件
アルミニウム電極(下部電極)が形成されている基板上に、強誘電性を示す物質を塗布して薄膜を形成し、ついでその上に真空蒸着によりアルミニウム電極(上部電極)を形成して電極付きサンプルを作製し、これを測定装置にセットして測定する。
(4-2)測定装置
東陽テクニカ(株)製FCE−1
合成例1(CF3(VdF)15Iの合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた300ml容のステンレススチール製オートクレーブに、HCFC−225を50g入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネイト(50質量%メタノール溶液)0.27gを加え、系内をチッ素ガスで充分置換した。系内を減圧にした後、バルブからCF3Iを2.5g仕込み、系を45℃まで昇温の後、VdFを系内圧が0.8MPaGになるまで仕込み、系内圧0.8MPaG、系内温度を45℃に維持しながらVdFを連続供給し、9時間反応を行なった。
反応終了後、系内温度を25℃まで冷却し、未反応物(VdFとCF3I)を放出した後、析出した反応固形物(VdF重合体)を取り出し、デシケーター内で反応固形物を恒量になるまで真空乾燥し、VdF重合体12.2gを得た。
このVdF重合体を19F−NMRにより分析し、VdFの数平均重合度(n)を求めたところ、14.6であった。
このVdF重合体についてIR分析を行なったところ、I型結晶構造に特徴的なピークとII型結晶構造に特徴的なピークの両方が観測され、I型結晶構造とII型結晶構造のものが混在していることを確認した。さらに、I型結晶構造の含有率(F(I))を算出したところ、60質量%であった。
合成例2(CF3(VdF)1524Iの合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた300ml容のステンレススチール製オートクレーブに、系内温度は25℃のまま、合成例1で得たフッ化ビニリデンオリゴマー(n=15)を3.0g、酢酸エチルを30g、AIBNを0.021g加え、系内をチッ素ガスで充分置換した。その後系内を減圧にし、65℃まで昇温し、エチレンガスを系内圧が0.7MPaGになるまで仕込み、系内圧0.7MPaG、系内温度65℃を維持しながら、エチレンガスを連続供給し5時間反応を行なった。
反応終了後、系内温度を25℃まで冷却し、未反応物のエチレンガスを放出した後、系中の酢酸エチル溶液をヘキサン中に投入し、析出した反応固形物(以下、「フッ化ビニリデンオリゴマーエチレン付加体」という)をろ過により取り出した。デシケーター内でフッ化ビニリデンオリゴマーエチレン付加体を恒量になるまで真空乾燥し、2.8gを得た。
このフッ化ビニリデンオリゴマーエチレン付加体は、1H−NMRおよび19F−NMRにより分析したところ、−CF2I末端由来の−38ppm付近のピークの消失が確認され、付加したエチレン由来のピークが3.4〜3.2ppmと2.8〜2.6ppmに1H−NMRより観測された。このとき1H−NMRより求められた末端変性率は96%であった。
このVdF重合体についてIR分析を行なったところ、I型結晶構造に特徴的なピークとII型結晶構造に特徴的なピークの両方が観測され、I型結晶構造とII型結晶構造のものが混在していることを確認した。さらに、I型結晶構造の含有率(F(I))を算出したところ、52質量%であった。
合成例3(CF3(VdF)1525の合成)
環流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた50ml四ツ口フラスコに、酢酸30ml、合成例2で合成されたフッ化ビニリデンオリゴマーエチレン付加体:CF3(VdF)1524Iを0.5g、亜鉛粉末を0.33g仕込み加熱還流を4時間行った。
反応終了後、系内温度を25℃まで冷却し、亜鉛粉末をろ過により除いた後、反応物の酢酸溶液を純水中に投入し、反応固形物を再沈殿することにより取り出した。デシケーター内で反応固形物を恒量になるまで真空乾燥し、0.31gを得た。
反応固形物は、1H−NMRにより分析したところ、付加したエチレン由来の3.4〜3.2ppmと2.8〜2.6ppmのピークが消失し、末端メチル基由来のピークが1.1〜0.8ppmに観測され、フッ化ビニリデンオリゴマーエチレン付加体の末端ヨウ素がプロトン化されていることが確認された。このとき1H−NMRより求められた末端変性率は98%であった。
このVdF重合体についてIR分析を行なったところ、I型結晶構造に特徴的なピークとII型結晶構造に特徴的なピークの両方が観測され、I型結晶構造とII型結晶構造のものが混在していることを確認した。さらに、I型結晶構造の含有率(F(I))を算出したところ、57質量%であった。
実施例1
合成例3で合成したCF3(VdF)1525原末(I型結晶構造を57質量%含有)を表1に示す溶剤に25℃にて10質量%となるように溶解した。
ついでスピンコーターに固定されたシリコン基板に上記溶液を約30mgほど滴下し、1000rpmで1秒間、ついで2000rpmで30秒間というスピンコート条件で薄膜を形成した。スピンコート終了後、デシケーターにて減圧乾燥(約14.6kPa:25℃)を1時間行い残存溶媒を留去した。
シリコン基板上に形成された薄膜を剥がし取り、KBr法によりIR分析でI型結晶構造の含有率を求めた。結果を表1に示す。
比較例1
合成例1で合成したCF3(VdF)15I原末(I型結晶構造を60質量%含有)を表1に示す溶剤に25℃にて10質量%となるように溶解した。
ついでスピンコーターに固定されたシリコン基板に上記溶液を約30mgほど滴下し、1000rpmで1秒間、ついで2000rpmで30秒間というスピンコート条件で薄膜を形成した。スピンコート終了後、デシケーターにて減圧乾燥(約14.6kPa:25℃)を1時間行い残存溶媒を留去した。
シリコン基板上に形成された薄膜を剥がし取り、KBr法によりIR分析でI型結晶構造の含有率を求めた。結果を表1に示す。
なお、表1中の溶剤の略号はつぎの溶剤である。
DMF:ジメチルホルムアミド
DMA:ジメチルアセトアミド
THF:テトラヒドロフラン
MEK:メチルエチルケトン
Figure 0004561742
実施例2
実施例1の実験番号1−1で調製したフッ化ビニリデンオリゴマーの10質量%のDMF溶液をシリコン基板、ガラス基板およびアルミニウム基板上に約30mgほど滴下し、デシケーターにて減圧乾燥(約14.6kPa:25℃)を一時間行い残存溶媒を留去した。基板上に形成した薄膜を剥がし取り、KBr法によりIR分析でI型結晶構造の含有率を求めた。
また、アルミニウム基板については、DMF:MEK=1:9(質量比)の混合溶剤を用いた10質量%の溶液についても同様にして薄膜を形成し、I型結晶構造の含有率を求めた。
結果を表2に示す。
Figure 0004561742
実施例3
合成例3で合成したCF3n(VdF)1525原末(I型結晶構造を57質量%含有)100質量部およびVdF−トリフルオロエチレン(TrFE)共重合体(VdF:TrFE=75:25モル%)100質量部をDMFに25℃にて、溶剤の質量に対してTrFEと特定のフッ化ビニリデン単独重合体の混合物全体の質量が10質量%となるように溶解した。
ついでスピンコーターに固定されたシリコン基板に上記溶液を約30mgほど滴下し、1000rpmで1秒間、ついで2000rpmで30秒間というスピンコート条件で薄膜を形成した。スピンコート終了後、デシケーターにて減圧乾燥(約14.6kPa:25℃)を1時間行い残存溶媒を留去した。
シリコン基板上に形成された薄膜を剥がし取り、KBr法によりIR分析でI型結晶構造の含有率を求めたところ、I型結晶構造の含有率は100%であった。
実施例4
合成例3で合成したCF3(VdF)1525原末(I型結晶構造を57質量%含有)100質量部およびポリメチルメタクリレート100質量部をDMFに25℃にて10質量%となるように溶解した。
ついでスピンコーターに固定されたシリコン基板に上記溶液を約30mgほど滴下し、1000rpmで1秒間、ついで2000rpmで30秒間というスピンコート条件で薄膜を形成した。スピンコート終了後、デシケーターにて減圧乾燥(約14.6kPa:25℃)を1時間行い残存溶媒を留去した。
シリコン基板上に形成された薄膜を剥がし取り、KBr法によりIR分析でI型結晶構造の含有率を求めたところ、I型結晶構造の含有率は100%であった。
実施例5
合成例3で合成したCF3(VdF)1525原末(I型結晶構造を57質量%含有)およびVdF−トリフルオロエチレン(TrFE)共重合体(VdF:TrFE=75:25モル%)を表3に示す比率で25℃にてDMFに10質量%となるように溶解させた。
ついでアルミニウムを表面に蒸着したシリコン基板をスピンコーターに固定し、上記溶液を約30mgほど滴下し、1000rpmで1秒間、ついで2000rpmで30秒間というスピンコート条件で薄膜を形成した。スピンコート終了後、デシケーターにて減圧乾燥(約14.6kPa:25℃)を1時間行い残存溶媒を留去した。
ついで、当該混合ポリマー塗布基板にアルミニウムを上部電極として蒸着し、強誘電性測定装置(測定周波数:1KHz、印加電圧:200MV/m)を用いて強誘電特性の測定を行なった。結果を表3に示す。
Figure 0004561742
その結果、CF3(VdF)1525原末の混合比率の高いほうが残留分極が向上し、強誘電特性が改善した。

Claims (9)

  1. 数平均重合度3〜20のフッ化ビニリデン単独重合体を双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を単独で含む溶剤、または該双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を一部として含みかつ混合する他の有機溶剤が該双極子モーメント2.8以上の有機溶剤よりも沸点が低い有機溶剤である混合溶剤に溶解させた後、該溶剤を蒸散させることを特徴とするI型結晶構造を70質量%以上含有するフッ化ビニリデン単独重合体の製造方法。
  2. 前記フッ化ビニリデンの単独重合体が、式(1):
    −(R1n−Y (1)
    (式中、R1は2価の有機基、ただしフッ化ビニリデン単独重合体の構造単位は含まない;nは0または1;Yは水素原子、ハロゲン原子またはハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基。ただし、nが0のとき、Yはヨウ素原子ではない)で表される部位を片末端または両末端に有し、かつフッ化ビニリデン単独重合体単位の数平均重合度が3〜20であるフッ化ビニリデン単独重合体である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記式(1)の部位が、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状のハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基である請求項1または2記載の製造方法。
  4. 前記溶剤が、双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を5〜100質量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 数平均重合度3〜20のフッ化ビニリデン単独重合体を双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を単独で含む溶剤、または該双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を一部として含みかつ混合する他の有機溶剤が該双極子モーメント2.8以上の有機溶剤よりも沸点が低い有機溶剤である混合溶剤に溶解させた後、基材に適用して、該溶剤を蒸散させることを特徴とするI型結晶構造を70質量%以上含有するフッ化ビニリデン単独重合体の薄膜の形成方法。
  6. 双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を単独で含む溶剤、または該双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を一部として含みかつ混合する他の有機溶剤が該双極子モーメント2.8以上の有機溶剤よりも沸点が低い有機溶剤である混合溶剤に数平均重合度3〜20のフッ化ビニリデン単独重合体と前記有機溶剤に可溶な他の強誘電性および/または非強誘電性ポリマーとを溶解させた後、基材に適用して、該溶剤を蒸散させることを特徴とするI型結晶構造を70質量%以上含有するフッ化ビニリデン単独重合体と該他のポリマーとの混合物の薄膜の形成方法。
  7. 前記フッ化ビニリデンの単独重合体が、式(1):
    −(R 1 n −Y (1)
    (式中、R 1 は2価の有機基、ただしフッ化ビニリデン単独重合体の構造単位は含まない;nは0または1;Yは水素原子、ハロゲン原子またはハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基。ただし、nが0のとき、Yはヨウ素原子ではない)で表される部位を片末端または両末端に有し、かつフッ化ビニリデン単独重合体単位の数平均重合度が3〜20であるフッ化ビニリデン単独重合体である請求項5または6記載の形成方法。
  8. 前記式(1)の部位が、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状のハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基である請求項5〜7のいずれか1項に記載の形成方法。
  9. 前記溶剤が、双極子モーメントが2.8以上の有機溶剤を5〜100質量%含む請求項5〜8のいずれか1項に記載の形成方法。
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