JP5005641B2 - 積層体の製造方法、積層体およびビニリデンフルオライド系オリゴマー膜 - Google Patents

積層体の製造方法、積層体およびビニリデンフルオライド系オリゴマー膜 Download PDF

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Description

この発明は、例えばビニリデンフルオライド系オリゴマーの膜を有する積層体の製造方法、積層体、およびビニリデンフルオライド系オリゴマー膜に関する。
ビニリデンフルオライド系ポリマー、ビニリデンフルオライド系オリゴマーの強誘電性薄膜は、記憶素子(メモリ)、圧電素子、焦電素子等のデバイス等に用いられており、強誘電性を示すI型結晶構造の比率が大きい方が、強誘電性に優れることが知られている。
たとえば、ビニリデンフルオライド系オリゴマーの場合、強誘電性薄膜を得る方法として、極低温まで冷却した基板上にビニリデンフルオライド系オリゴマーを真空中または乾燥気体中で蒸着または噴霧する方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。この方法は、作製時に結晶化度の向上のための熱処理が不要であり、容易に膜厚の薄い薄膜が得られ、かつ任意の基板等の上に形成することができるとされている。
しかし、これらの文献では、たとえば、−160℃といった極低温まで低下させた状態で真空蒸着を行う必要があった。そして、仮に室温で真空蒸着を行った場合、強誘電性を示さないII型結晶構造の比率が大きいため、充分な強誘電性を示さないという問題点があった。
国際公開第2004/085498号パンフレット 国際公開第2004/086419号パンフレット 国際公開第2005/089962号パンフレット
この発明は、極低温まで冷却せずとも強誘電性を示すI型結晶構造の比率が大きいビニリデンフルオライド系オリゴマーを有する積層体の製造方法、その積層体、およびビニリデンフルオライド系オリゴマー膜を提供することを目的とする。
この発明は、基板表面にビニリデンフルオライド系ポリマーを摩擦転写し、該ビニリデンフルオライド系ポリマー表面に重合度が4〜70のビニリデンフルオライド系オリゴマーを蒸着することによって、ビニリデンフルオライド系オリゴマー膜を前記基板上に積層させる積層体の製造方法であることを特徴とする。
この発明の態様として、前記ビニリデンフルオライド系ポリマーは、ビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレンの共重合体(P(VdF/TrFE)共重合体)とすることができる。
またこの発明は、基板と、該基板表面に摩擦転写されたビニリデンフルオライド系ポリマーと、該ビニリデンフルオライド系ポリマー表面に蒸着された重合度が4〜70のビニリデンフルオライド系オリゴマー膜とを備えた積層体とすることができる。
この発明の態様として、前記ビニリデンフルオライド系オリゴマー膜が強誘電性を備えている構成とすることができる。
またこの発明は、基板表面にビニリデンフルオライド系ポリマーを摩擦転写し、該ビニリデンフルオライド系ポリマー表面に重合度が4〜70のビニリデンフルオライド系オリゴマーを蒸着することで形成したビニリデンフルオライド系オリゴマー膜とすることができる。
この発明により、極低温まで冷却せずとも強誘電性を示すI型結晶構造の比率が大きいビニリデンフルオライド系オリゴマーを有する積層体の製造方法、その積層体、およびビニリデンフルオライド系オリゴマー膜を提供することができる。
図1(A)は、摩擦転写法に用いる摩擦転写装置1の外観構成図を示し、図1(B)は摩擦転写後にビニリデンフルオライド系オリゴマーを真空蒸着した積層体16の断面図を示す。
摩擦転写装置1は、押圧掃引アーム2と加熱部3と台部4とで構成されており、加熱部3上に基板12が載置され、押圧掃引アーム2にブロック11が保持される。
押圧掃引アーム2は、図示省略する操作部によって入力された押圧力でブロック11を基板12に垂直に押圧する押圧機能と、図示省略する操作部によって入力された掃引速度でブロック11を基板12と平行に一直線に掃引する掃引機能とを有している。
加熱部3は、図示省略する操作部によって入力された加熱温度に発熱して基板12を加熱する。
台部4は、上面に加熱部3が固定され、押圧掃引アーム2がスライド移動可能に取り付けられている。従って、押圧掃引アーム2で保持したブロック11と、加熱部3上に載置された基板12とを、基板12表面と平行に一直線に相対移動させることができる。なお、この相対移動は、加熱部3を固定して押圧掃引アーム2を移動させても、逆に加熱部3を移動させて押圧掃引アーム2を固定してもよい。
ブロック11は、ビニリデンフルオライド系ポリマーを加圧等によりペレット状にして作成したものである。このブロック11は、該ブロック11に用いるビニリデンフルオライド系ポリマーに熱処理等を行ってから作成しても良い。
この摩擦転写装置1を用いて、基板12の素材、加熱部3で加熱している基板12の温度、押圧掃引アーム2によるブロック11の掃引速度、押圧掃引アーム2によるブロック11と基板12の押圧力等の主に4つの条件を適宜変化させることにより摩擦転写を行う。
摩擦転写装置1は、上記設定がなされてブロック11と基板12がセットされ、開始操作が入力されると、設定に従って摩擦転写を開始する。
この摩擦転写は、加熱部3により設定温度まで基板12を加熱し、基板12から離間させていたブロック11を押圧掃引アーム2で基板12に設定圧力で押圧し、この押圧を維持したまま押圧掃引アーム2でブロック11を設定掃引速度(一定速度)で掃引して行われる。
この一連の動作が終了すると、基板12の表面には、図1に示すようにブロック11の掃引軌跡に沿ってビニリデンフルオライド系ポリマー膜13が形成される。したがって、基板12の表面にビニリデンフルオライド系ポリマー膜13が積層した積層体15が完成する。
次に、ビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を摩擦転写装置1によって作成する際の条件となる、ブロック11の材料、基材12の材料または表面処理、加熱部3の温度、掃引速度、および加圧時にかける圧力について説明する。
ブロック11の材料は、ビニリデンフルオライド系ポリマーとすることができ、中でもビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレンとの共重合体であるP(VDF/TrFE)共重合体が最も良い。
なお、ビニリデンフルオライド系ポリマーは、これに限らず、たとえば、ビニリデンフルオライド(VdF)のホモポリマーや、VdFと他のモノマーとを共重合したコポリマーを使用できる。VdFと共重合可能な他のモノマーとしては、たとえば、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロアセトン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロオクチル)プロピレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ビニレンカーボネート、エチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ピバリン酸ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、Veova−9(商品名、シェル社製)、Veova−10(商品名、シェル社製)、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、ノルボルナジエン、クロトン酸およびそのエステル、アクリル酸およびそのアルキルエステル、メタクリル酸およびそのアルキルエステルなどがあげられ、これらの1種以上をVdFと共重合させたコポリマーを使用できる。
なかでも、摩擦転写工程における製膜性に優れ、塗布するだけで強誘電性を発現しうる結晶構造を有する点から、VdFと他のモノマーとを共重合したコポリマーが好ましく、ビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレンの共重合体であるP(VDF/TrFE)共重合体がより好ましい。
ビニリデンフルオライド系ポリマーとして、VdFと他のモノマーとを共重合したコポリマーを使用する場合、ビニリデンフルオライド系ポリマー中におけるVdFの繰り返し単位の含有比率は、その後真空蒸着するビニリデンフルオライド系オリゴマーのI型結晶構造形成に優れる点から、2〜98モル%が好ましく、20〜80モル%がより好ましい。
ビニリデンフルオライド系ポリマーの数平均分子量は、使用するポリマーの種類にもよるが、摩擦転写工程における製膜性や溶剤溶解性に優れる点から、10000〜1000000が好ましく、10000〜500000より好ましい。
ポリマー膜は、ビニリデンフルオライド系ポリマー以外にも、他のポリマーなどを添加剤として含んでいてもよい。ただし、その後真空蒸着するビニリデンフルオライド系オリゴマーのI型結晶構造形成に優れる点から、ビニリデンフルオライド系ポリマー以外のポリマーを実質的に含まないことが好ましい。なお、本発明の効果を損なわないためには、ポリマー膜中のこれらの添加剤の含有量は、0〜30質量%であることが好ましい。
ポリマー膜の厚さは、ビニリデンフルオライド系オリゴマー膜の強誘電特性に影響を与えない点から、0.5〜100000nmが好ましく、0.5〜1000nmがより好ましい。
基材12は、ブロック11の材料により適宜選択できる。例えば、ガラス基板、ポリイミド,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリアクリレート,ポリカーボネート(PC),ポリエーテルスルホン(PES),または芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等の絶縁性基板や導電性シリコンを用いることができる。基材12は、この中でもプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、またはシリコン基板が好ましく、さらにはシリコン基板または石英基板がより好ましい。
また、基板12は、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cu、Ni、Li、Ca、Mgまたはこれらを含む合金等の金属材料からなる基板を用いても良い。基材12は、この中でもPt、Au、W、Ta、Al、Cr、Ti、またはCuが好ましく、さらにはPt、Au、Al、Cr、Ti、Cuがより好ましい。
また、絶縁性基板上のビニリデンフルオライド系ポリマー膜13が形成される側に、塗布法もしくは蒸着法によって、前述の金属材料、ITO,FTO,ATO,またはSnO2等の透明導電性酸化物、カーボンブラック,カーボンナノチューブ,またはフラーレン等の炭素材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が電極として形成されていても良い。
この電極材料は、Pt、Au、W、Ta、Al、Cr、Ti、Cu、ITO、FTO、ATO、カーボンナノチューブ、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレンが好ましく、さらにはPt、Au、Al、Cr、Ti、Cu、ITO、FTO、カーボンナノチューブ、ポリピロール、PEDOT、ポリチオフェン、ポリアニリンがより好ましい。
また、基板12の摩擦転写される側の表面上は、シランカップリング剤等の表面処理剤で処理するとよい。これにより、摩擦転写を行う際に、欠陥がより少なく配向性の高いビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を製造することができる。
この表面処理剤は、例えば基板12にシリコン(シリコンウェハー)を用いる場合であれば、有機シラン類、モノアルキルシラン類、ニトリル化合物類、アルキルチオール類などが好ましい。
これにより、ブロック11の材料が、摩擦転写してもシリコンそのものの表面に転写されないような物質である場合に、該物質をシリコン表面に摩擦転写することが可能となる。
摩擦転写を行う際の加熱部3の温度としてはブロック11の材料の種類により適宜選択できる。具体的には、加熱部3の温度を、0〜300℃とすることができ、好ましくは25〜250℃とすることができ、より好ましくは25〜200℃とすることができる。
また、掃引速度はブロック11の材料の種類により適宜選択できる。具体的には、掃引速度を、0.01〜10m/minとすることができ、好ましくは0.01〜5m/minとすることができ、より好ましくは0.01〜1m/minとすることができる。
加圧時にかける圧力は、ブロック11の材料の種類により適宜選択できる。具体的には、圧力を、0.1〜750kgf/cmとすることができ、好ましくは0.5〜500kgf/cmとすることができ、より好ましくは、0.5〜100kgf/cmとすることができる。
前述の条件で基板12の表面に転写されたビニリデンフルオライド系ポリマー膜13は、真空蒸着法や、スピンコート法の様な塗布法で基板12の表面に製膜された場合に比べて、強誘電性を示すI型結晶構造の比率が大きく、分子鎖の長軸方向が基板に平行配向(以下、I型平行配向と呼ぶ)しており、かつ一軸配向している。ここで1軸配向とは、基板面内において特定の1方向に分子主鎖が配列することをいう。ビニリデンフルオライド系ポリマーの場合、摩擦転写の挿引方向に分子主鎖が1軸性で配列して成膜される。
例えば材料にビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を用いた場合、その上に真空蒸着するビニリデンフルオライド系オリゴマーが強誘電性を示すために必要なI型結晶構造を誘起しやすい結晶構造であるI型結晶構造に近い結晶構造、もしくはI型結晶構造がブロック材料であるときと比べて増加する。また、他にも、分子鎖の長軸方向が基板12に対して平行配向しやすくなる。従って、摩擦転写することで、よりI型結晶構造もしくは、I型結晶構造に近いビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を形成することができる。
また、ビニリデンフルオライド系ポリマー膜13は、真空蒸着法や、スピンコート法の様な塗布法で製膜するのに比べて、溶剤を使用することも無く、また、ビニリデンフルオライド系ポリマーの使用量を削減できて、コストダウンを図ることができる。
また、成膜と同時に配向でき、しかも室温雰囲気下で実行可能であるため、真空蒸着法や、スピンコート法の様な塗布法で製膜するのに比べて非常に効率よくビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を得ることができる。
このようにして摩擦転写法により基板12の上にビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を積層した中間積層体15に、さらにVDFオリゴマー膜14を真空蒸着によって積層し、積層体16を得る。この真空蒸着において、ビニリデンフルオライド系ポリマー膜13は、テンプレートとして用いられ、配向誘起膜として機能する。
この真空蒸着は、蒸着源の温度の温度が50〜400度で行うことができ、100〜300度とすることが好ましく、120〜200度とすることがさらに好ましい。
また、真空蒸着時の中間積層体15の温度は、0度〜130度で行うことができ、25度〜100度とすることが好ましく、30度〜100度とすることがさらに好ましい。
また、蒸着速度は、0.1nm/min〜1000nm/minとすることができ、1nm/min〜500nm/minとすることが好ましく、1nm/min〜15nm/minとすることがさらに好ましい。
蒸着するVDFオリゴマー膜14の材料は、VDFオリゴマー(CF−(CHCF−I、もしくは、CF−(CHCF−C:ここで、化学式中のnは量体数を示す)等のビニリデンフルオライド系オリゴマー材料を用いることができるが、中でもVDFオリゴマーが最も良い。
このVDFオリゴマーは、特開2005−200623号公報に開示されている製造方法を用いることにより得ることができる。
この製造方法を用いると分子量分布が狭い重合体や分岐の比率の少ない重合体を合成でき、I型結晶構造の含有比率が高いビニリデンフルオライド単独重合体を得ることができる。
また、このようにして得たVDFオリゴマーのヨウ素端末を末端変性し、n=4〜70のビニリデンフルオライド系オリゴマーを用いても良い。ヨウ素端末の末端変性は、国際公開第2005/089962号パンフレットに開示されているように、官能基の種類や、ビニリデンフルオライド単独重合体のビニリデンフルオライドの繰り返し単位などによって、種々の方法で行うことができる。
VDFオリゴマーを用いる場合には、n=4〜70のものが好ましく、n=4〜60のものがより好ましく、さらにはn=4〜50のものが最も好ましい。
オリゴマー膜の厚さは、強誘電特性等の電気物性発現に優れる点から、1〜10000nmが好ましく、1〜50000nmがより好ましい。
このようにして、摩擦転写法によって基板12の表面にI型平行配向し、かつ一軸配向しているビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を成膜し、さらに蒸着によってビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を配向誘起膜としてI型平行配向しているVDFオリゴマー膜14を成膜することができる。
これにより、I型平行配向し、かつ一軸配向したVDFオリゴマー膜14を室温に近い温度で作成することが可能となる。すなわち、摩擦転写法によりビニリデンフルオライド系ポリマー膜13をI型平行配向し、かつ一軸配向させ、その上にVDFオリゴマーを蒸着することでI型平行配向し、かつ一軸配向したVDFオリゴマー膜14を簡単に創作でき、製造設備のコストダウンおよび製造工程の簡略化を図ることができる。
I型平行配向し、かつ一軸配向しているVDFオリゴマー膜14は、分子鎖の方向が揃っており、初期ポーリング時の分子運動が小さくてすみ、ヒステリシスがとれやすいという効果が得られる。
また、VDFオリゴマー膜14により、フィルターを入れて特定波長の取り出しを行えば、偏光赤外分光への応用が可能である。
また、スピンコート膜の場合であれば平行配向およびI型の割合は低く、また一軸配向をとることは無い。上述したVDFオリゴマー膜14では、ほぼ完全に平行配向およびI型であり、かつ一軸配向をとっている。
また、ビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を摩擦転写により基板12に積層させたため、塗布法に比べて溶媒が不要でVOCフリーにできる、極薄膜が簡単にできる、1軸配向膜ができる、およびアニーリング処理が不要であるといった利点がある。
また、VDFオリゴマー膜14を半導体材料として用いる場合、VDFオリゴマー膜14の一軸配向の方向をチャネル長方向に沿ってほぼ平行となるように揃えることで、チャネル領域におけるキャリア移動度が高いものとなり、強誘電体メモリの動作速度をより早いものとすることができる。
また、VDFオリゴマー膜14を半導体材料として用いる場合、VDFオリゴマー膜14の主鎖をチャネル幅方向に沿って一軸配向させることで、強誘電体膜としてのVDFオリゴマー膜14の上面には、VDFオリゴマー膜14の配向方向に沿って微小な溝が形成される。このため、VDFオリゴマー膜14の上面に液状材料を供給すると、この液状材料をチャネル幅方向に沿って優先的に濡れ広がらせることができる。この結果、比較的細幅のゲート電極を形成することができる。したがって、ソース電極3とドレイン電極4との間隔(チャネル長)を小さくすることができ、トランジスタとしての特性の向上を図ることができる。
また、このように作製したVDFオリゴマー膜14や積層体16は、液晶配向膜、有機物もしくは無機物蒸着時の配向誘起膜、FE−RAM、赤外線センサー、マイクロホン、スピーカー、音声付ポスター、ヘッドホン、電子楽器、人工触覚、脈拍計、補聴器、血圧計、心音計、超音波診断装置、超音波顕微鏡、超音波ハイパーサーミア、サーモグラフィー、微小地震計、土砂崩予知計、近接警報(距離計)侵入者検出装置、キーボードスイッチ、水中通信バイモルフ型表示器、ソナー、光シャッター、光ファイバー電圧計、ハイドロホン、超音波光変調偏向装置、超音波遅延線、超音波カメラ、POSFET、加速度計、工具異常センサ、AE検出、ロボット用センサ、衝撃センサ、流量計、振動計、超音波探傷、超音波厚み計、火災報知器、侵入者検出、焦電ビジコン、複写機、タッチパネル、吸発熱反応検出装置、光強度変調素子、光位相変調素子、光回路切換素子などの圧電性、焦電性、電気光学効果あるいは非線形光学効果を利用したデバイスに利用可能である。
次に、この発明の実施例をあげて説明するが、この発明はかかる実施例のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
この実施例では、P(VDF/TrFE)共重合体(75mol%/25mol%)で示されるポリマー粉末を、加圧成形することによりブロック11を得た。このブロック11を用いて摩擦転写装置1により、シリコン基板(基板12の一例)上に摩擦転写を行った。この摩擦転写されたポリマー膜の上に、CF−(CHCF24.8−Cで示されるVDFオリゴマーを蒸着した。
摩擦転写は、次の条件で行った。
基板温度:130℃
掃引速度:0.05m/min
圧力:4.1kgf/cm
摩擦転写装置:株式会社井本製作所製のIMC−115A型
このようにして摩擦転写を行った結果、シリコン基板上にI型平行配向したP(VDF/TrFE)共重合体膜(ビニリデンフルオライド系ポリマー膜13の一例)を形成することができた。
この摩擦転写法により作成されたビニリデンフルオライド系ポリマー膜13は、I型平行配向かつ一軸配向していることが確認された。
蒸着は、次のように基板温度のみを変えた5種類の条件で行った。
試料:VDFオリゴマー(n=24.8)
基板温度:室温、30℃、40℃、50℃、70℃
蒸着速度:約1nm/min
VDFオリゴマー膜の膜厚:50nm
蒸着装置:サンユー電子株式会社 SVC−700TURBO−TM
このようにして蒸着を行った結果、ビニリデンフルオライド系ポリマー膜13の表面にVDFオリゴマー膜14を形成することができた。
図2は、蒸着前のVDFオリゴマーの一回反射ATRスペクトルを示す。このスペクトルは、赤外分光装置として日本分光株式会社製のFT/IR660を用いて測定したものである。このスペクトルにより、VDFオリゴマーは、II型結晶構造をとっていることを確認できる。
上述した蒸着により作成したVDFオリゴマー膜14を、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、原子間力顕微鏡(AFM)観察で評価したところ、図3および図4に示す結果が得られた。これら図3、図4のスペクトルは、いずれも、赤外分光装置として日本分光株式会社製のFT/IR660を用いて測定したものである。
ここで、図3は、各基板温度で作成したVDFオリゴマー膜14のAFM像を説明する説明図である。
図3(A)〜(D)に示すように、蒸着時の基板温度が上がるにつれてVDFオリゴマー膜14のグレインサイズが大きくなっていることを確認できた。
また、図3(E)に示すように、自乗平均面粗さは、基板温度40℃で最も細かく、30℃で少し粗く、50℃でより粗く、70℃でさらに粗くなっている。また図3(E)に示すように、山と谷の高低差は、30℃と40℃では変わらず、50℃では高く、70℃ではより高くなっている。
図4は、各基板温度で作成したVDFオリゴマー膜14の透過IRスペクトルを示す。
各基板温度で作成したVDFオリゴマー膜14のスペクトルを見ると、蒸着時の基板温度を高めると、I型結晶構造に特徴的なピーク(1270cm−1)増大しており、基板温度が30度以上となるとI型となっていることを確認できた。また、このスペクトルの1400cm−1付近(図の点線参照)のピーク強度から、VDFオリゴマー膜14は、分子鎖の長軸方向が基板12に対してほぼ平行配向していることがわかる。
また、図5は、基板温度40℃で蒸着した場合のVDFオリゴマー膜14の偏光IRスペクトルを示す。このスペクトルは、ビニリデンフルオライド系ポリマー膜13を摩擦転写するときの掃引方向に平行なスペクトル(細線)と、掃引方向に垂直なスペクトル(太線)とを示している。
この2つのスペクトルにより、VDFオリゴマー膜14がI型平行配向かつ一軸配向していることを確認できた。
図6は、VDFオリゴマー膜14の膜厚を増加させた場合の測定結果であり、図6(A)はIR、図6(B)は偏光IR、図6(C)はAFM像を示している。
この測定結果は、Si/VDF(150nm)/Al(200nm)、基板温度40℃で電気特性を評価したものである。
この検査結果により、蒸着するVDFオリゴマー膜14の膜厚を増加させてもI型平行配向かつ一軸配向していることを確認できた。
図7は、VDFオリゴマー膜14のDEヒステリシス測定の結果を示す説明図である。
測定の結果、残留分極は約77mC/cm2であり、DEヒステリシスを測定できた。
以上の結果から、I型平行配向かつ一軸配向した強誘電性VDFオリゴマー膜14を得たことを確認できた。
摩擦転写法に用いる摩擦転写装置の外観構成図。 VDFオリゴマーの蒸着前の一回反射ATRスペクトルを示すチャート。 VDFオリゴマー膜のAFM像を説明する説明図。 VDFオリゴマー膜の透過IRスペクトルを示す説明図。 VDFオリゴマー膜の偏光IRスペクトルを示すチャート。 VDFオリゴマー膜の膜厚を増加させた場合の測定結果を示すチャート。 VDFオリゴマー膜のDEヒステリシス測定の説明図。
12…基板、13…ビニリデンフルオライド系ポリマー膜、14…VDFオリゴマー膜、16…積層体

Claims (6)

  1. 基板表面にビニリデンフルオライド系ポリマーを摩擦転写し、該ビニリデンフルオライド系ポリマー表面に重合度が4〜70のビニリデンフルオライド系オリゴマーを蒸着することによって、ビニリデンフルオライド系オリゴマー膜を前記基板上に積層させる
    積層体の製造方法。
  2. 前記ビニリデンフルオライド系ポリマーは、ビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレンの共重合体(P(VdF/TrFE)共重合体)である
    請求項1記載の積層体の製造方法。
  3. 基板と、
    該基板表面に摩擦転写されたビニリデンフルオライド系ポリマーと、
    該ビニリデンフルオライド系ポリマー表面に蒸着された重合度が4〜70のビニリデンフルオライド系オリゴマー膜とを備えた
    積層体。
  4. 前記ビニリデンフルオライド系ポリマーは、ビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレンの共重合体(P(VdF/TrFE)共重合体)である
    請求項3記載の積層体。
  5. 前記ビニリデンフルオライド系オリゴマー膜が強誘電性を備えている
    請求項4記載の積層体。
  6. 基板表面にビニリデンフルオライド系ポリマーを摩擦転写し、該ビニリデンフルオライド系ポリマー表面に重合度が4〜70のビニリデンフルオライド系オリゴマーを蒸着することで形成した
    ビニリデンフルオライド系オリゴマー膜。
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