JP2004037291A - 焦電型赤外線センサ - Google Patents

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【課題】性能が高く、作製の際に品質低下につながる熱処理工程や湿式法による薄膜形成工程が不要な、焦電型赤外線センサを提供する。
【解決手段】CF−(CHCF17−I(VDFオリゴマー)から成る焦電体層23を2枚の電極22及び24で挟んで焦電型赤外線センサを構成する。焦電体層23内の温度変化によって自発分極量の変化が生じ(焦電性)、それを電圧又は電流信号として取り出すことによって赤外線を検出する。VDFオリゴマーの焦電係数は従来の赤外線センサに用いられてきた有機強誘電体の焦電係数よりも大きいため、本発明に係る焦電型赤外線センサは従来のものよりも感度が高い。また、本発明の焦電型赤外線センサでは、従来の赤外線センサの製造時に必要であった熱処理工程及び/又は湿式法による薄膜形成工程が不要であり、これらの工程による品質低下が生じない。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焦電性を有する材料を用いた赤外線センサや赤外線イメージセンサ等に関する。
【0002】
【従来の技術】
赤外線センサは、人体や物体から輻射される赤外線を検出する機能を利用して、侵入警報器や自動扉等の多くの分野に利用されている。さらに、多数個の赤外線センサを2次元的に配列することにより、赤外線画像を撮影するイメージセンサとしても用いられる(方法によっては、1次元的配列センサでもイメージセンサとして使用することができる)。このような赤外線イメージセンサは、暗視カメラ、サーモグラフィ等に利用されている。
【0003】
これまでに開発されてきた赤外線センサは、熱型と量子型の2種類に大別される。熱型は赤外線照射による物質の温度上昇に伴い発生する物性変化を利用したものであり、量子型は赤外線照射により物質内部で発生する光導電効果や光起電力を直接検出するものである。このうち量子型は高感度の検出が可能であるが、検出できる波長範囲が限られるうえに、現状では使用時に検出器自身を液体窒素で冷却する必要がある。一方、熱型は感度や応答性では量子型には及ばないが、検出できる波長範囲が広く、室温においても動作可能であり、かつ比較的安価である。このような特性により、一般的には熱型センサが普及している。
【0004】
熱型センサの中でも特に広く普及しているのが、焦電性を有する材料(焦電体)を用いたものである。焦電性とは、物質内部の自発分極量Pが温度Tによって変化する性質を指す。焦電型赤外線センサは、赤外線を吸収し温度が上昇することから生じる自発分極量の変化を電気信号として取り出すことによって、赤外線の有無及び強度を検出するものである。
【0005】
この赤外線センサの性能を向上させるために、例えば基板と素子との間に空隙を設けたメンブレン構造をとることによって、素子から基板への熱伝導を低減し、熱に対するセンサの応答性を高める方法が、特開平9−196756号公報に記載されている。
【0006】
一方、センサの性能向上のための条件のうち焦電体に起因するものとして、(i)焦電係数が大きい、(ii)熱容量が小さい、(iii)誘電率が小さい、ことが挙げられる。焦電係数は、単位体積あたりに単位温度変化が与える分極の変化で定義される。熱容量を小さくすることは、同一量の赤外線照射による温度上昇を大きくすることにつながり、赤外線の検出感度を向上させることに寄与する。また、誘電率を小さくすることは、その焦電体を間に挟んだ電極間の静電容量を小さくすることになる。この場合、分極の変化により生じる両電極間の電圧が大きく現れることになるため、電圧の変化で測定される赤外線検出の感度を向上させることに寄与する。
【0007】
強誘電体は一般的に焦電性を有するので、焦電体として広く用いられている。現在実用化されているものとして、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)やチタン酸バリウム(BaTiO)等の無機強誘電体、三硫酸グリシン(TGS)等の有機・無機複合系材料等が挙げられる。また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やPVDFと三フッ化エチレン(TrFE)とのランダム共重合体であるP(VDF/TrFE)等の強誘電ポリマーを用いた赤外線センサも提案されている。強誘電ポリマーを焦電体として利用したものについては、特開平9−196756号公報等に記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の焦電性材料はいずれも以下のような問題を有している。PZTやBaTiO等の無機強誘電体は、焦電係数は大きいものの誘電率が大きいために、センサの感度の向上に限界を生じていた。また、これらの無機強誘電体は、薄膜の成膜過程が数百℃程度の高温プロセスになるため、赤外線イメージセンサのように前もって基板上にモノリシックな形で作成した回路等に対してこの成膜過程を行うことは困難であった。TGSは薄膜化が困難であり、薄膜化による熱容量の低減が行えず、センサの感度の向上という点で問題が生じていた。強誘電ポリマーは、薄膜形成の際に乾式法を用いることができず、キャスト法やスピンコート法などの湿式法を用いざるを得ない。このため、微細にパターニングされた領域に選択的に成膜したり、膜厚がサブミクロン以下の薄膜を大面積に亘り均一に作成することは困難であった。そのうえ、湿式法を用いる限り不純物や水分の混入が避けられない。また、強誘電ポリマー薄膜では結晶相と非結晶相が混在し結晶化度が低いので、焦電体としての機能を高めるために100℃〜150℃程度の温度で熱処理を行うことが不可欠である。この熱処理工程は、上記無機強誘電体と同様に、強誘電ポリマーを基板上にモノリシックな形で作成した回路等へ適用することを困難にし、熱処理が影響を及ぼさない場合においても、この工程が加わることによりコストアップとなる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは性能が高く(焦電係数が大きく、熱容量が小さく、誘電率が小さい)、作製の際に熱処理工程や湿式法による薄膜形成工程が不要な焦電型赤外線センサや赤外線イメージセンサを提供することにある。併せて、その焦電型赤外線センサの製造方法も提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係る焦電型赤外線センサは、2枚の電極と、その間に設けられたCF−(CHCF−CH(ここで、n=10〜50)又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質(フッ化ビニリデンオリゴマー)から成るフッ化ビニリデンオリゴマー層を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る焦電型赤外線センサの製造方法の第1の態様は、
a) 基板上に下部電極を形成する工程と、
b) 基板温度を−100℃以下に保ちつつ、下部電極上にCF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質を真空蒸着させるフッ化ビニリデンオリゴマー薄膜形成工程と、
c) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜上に上部電極を形成する工程と、
d) 下部電極と上部電極との間に、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜に自発分極を生成する電圧を印加するポーリング処理工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
焦電型赤外線センサの製造方法の第2の態様は、
a) 基板上に下部電極を形成する工程と、
b) 基板温度を−100℃以下に保ちつつ、下部電極上にCF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質を真空蒸着させるフッ化ビニリデンオリゴマー薄膜形成工程と、
c) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜の表面から離れた位置に電界印加電極を配置し、電界印加電極と下部電極との間に、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜に自発分極を生成する電圧を印加するコロナポーリング処理工程と、
d) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜上に上部電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
焦電型赤外線センサの製造方法の第3の態様は、
a) 基板上に下部電極を形成する工程と、
b) 下部電極に高分子材料を押しつけながら滑らせることにより下部電極の表面に該高分子の薄膜を形成する摩擦転写工程と、
c) 該高分子薄膜上にCF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質を真空蒸着させるフッ化ビニリデンオリゴマー薄膜形成工程と、
d) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜上に上部電極を形成する工程と、
e) 下部電極と上部電極との間に、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜に自発分極を生成する電圧を印加するポーリング処理工程と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
焦電型赤外線センサの製造方法の第4の態様は、
a) 基板上に下部電極を形成する工程と、
b) 下部電極に高分子材料を押しつけながら滑らせることにより下部電極の表面に該高分子の薄膜を形成する摩擦転写工程と、
c) 該高分子薄膜上にCF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質を真空蒸着させるフッ化ビニリデンオリゴマー薄膜形成工程と、
d) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜の表面から離れた位置に電界印加電極を配置し、電界印加電極と下部電極との間に、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜に自発分極を生成する電圧を印加するコロナポーリング処理工程と、
e) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜上に上部電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
なお、第2の態様及び第4の態様において、電界印加電極は平面状であってもよいし、針状であってもよい。
【0016】
【発明の実施の形態及び効果】
本発明に係る焦電型赤外線センサは、2枚の電極と、その間に設けられたフッ化ビニリデンオリゴマー層を有する。フッ化ビニリデンオリゴマー層は、CF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質(本明細書ではこれらを総称してフッ化ビニリデンオリゴマー又はVDFオリゴマーと呼ぶ)から成り、その化学式における重合数nは10から50の範囲内である。現時点では、VDFオリゴマーはCH基がハロゲン原子で置換されたものの方が製造が容易であるが、本発明における赤外線センサとしての性能的には同等である。電極の材料には、例えばカーボンブラック、金、白金、アルミニウム等を用いることができる。なお、赤外線を照射する面に電極を取り付ける場合には、熱吸収を良くするために電極の材料にはカーボンブラックを用いることが好ましい。一方、それ以外の面に電極を取り付ける場合には、赤外線を反射させフッ化ビニリデンオリゴマー層に再度赤外線を吸収させるために、電極の材料には金、白金等を用いることが好ましい。
【0017】
フッ化ビニリデン(CHCF)の重合体CF−(CHCF−CHの焦電係数は、その重合度nにより変わる。本発明者が調べたところ、重合数n=17のVDFオリゴマーの焦電係数Pは−70μC/mKであり、重合度nが遙かに大きい(n=1000〜2000程度)VDFポリマー(PVDF)の焦電係数P=−30μC/mKよりも大きな絶対値を持つ。また、従来、焦電体として広く用いられているP(VDF/TrFE)の焦電係数P=−50μC/mKよりも大きな絶対値を持つ。
【0018】
焦電係数は前記の通り自発分極量の温度変化dP/dTで定義されるので、正負に関わらず絶対値の大きい方が赤外線センサとしての性能は良い。従って、本発明に係るVDFオリゴマーは従来の有機強誘電体よりも焦電体としての性能が良いと言うことができる。
【0019】
なお、重合数n=17のVDFオリゴマーの誘電率は、PVDFやP(VDF/TrFE)の誘電率と同程度である。
【0020】
本発明で用いるVDFオリゴマーの重合数nは、以下の理由により10〜50の範囲内にあることが望ましい。重合数nが大きすぎると、蒸着によるVDFオリゴマー層作製時に分子の熱分解が生じ薄膜の結晶性を低下させる。そのため、重合数nは50以下であることが望ましい。一方、重合数nが小さすぎると、分子の揮発性が高くなり蒸着による薄膜作成が困難になるうえに、温度等の外的作用に対して結晶構造の安定性が悪くなる。そのため、nの値は10以上が望ましい。
【0021】
本発明の焦電型赤外線センサにおいても、素子と基板との間の熱伝導を低減し熱に対する応答性を高めるためにメンブレン構造をとることが望ましい。メンブレン構造を持つ赤外線センサについては前記特開平9−196756号公報に詳しく記載されている。
【0022】
本発明に係る焦電型赤外線センサ(又はそれをメンブレン型にしたもの)を多数個2次元的又は1次元的に配列することにより、赤外線イメージセンサを構成することができる。
【0023】
このように、本発明では焦電係数の絶対値が大きいVDFオリゴマーを使用するため、本発明に係る焦電型赤外線センサ及び赤外線イメージセンサは高感度のセンサとなる。
【0024】
また、VDFオリゴマーを用いたことにより、真空蒸着法などの乾式法を用いて焦電層を形成することが可能になった。これにより、従来のように高結晶化のための熱処理を施す必要がなくなり、コストダウンにつながるだけでなく、前もって基板上にモノリシックな形で作成した回路等の熱処理が困難なものに対しても本発明に係る赤外線センサを形成することができるようになった。また、湿式法と比較すると、焦電体層に混入する不純物の量が減少し、さらに微細にパターニングされた領域に選択的に成膜したり、薄膜を従来より薄い膜厚で大面積に渡り均一に作成することが可能になった。膜厚を薄くすることができることによって熱容量を小さくすることができるので、赤外線センサとしての性能が従来よりも向上する。
【0025】
次に、本発明の焦電型赤外線センサの製造方法の上記4つの態様について説明する。
【0026】
第1の製造方法を図1を用いて説明する。まず、基板11上に真空蒸着法やスパッタリング法により下部電極12を形成する(1)。下部電極12の上に、真空蒸着法によってVDFオリゴマー薄膜13を形成する(2)。この際、液体窒素などを用いて基板11の温度を−100℃以下に冷却しておく。この冷却により、VDFオリゴマーの分子鎖の向きを基板に平行に配向させることができ、このような配列構造をとることによって、強誘電性を発現しやすい状態にすることができる。VDFオリゴマー薄膜13の形成後、基板11の冷却を終了し、VDFオリゴマー薄膜13の上に上部電極14を形成する(3)。上部電極14は下部電極12と同様の方法で形成することができる。そして下部電極12と上部電極14との間に直流電圧又は三角波電圧を印加する(4)。この工程(ポーリング工程)により、VDFオリゴマー薄膜に大きな自発分極が生成される。以上により、焦電型赤外線センサが完成する(5)。
【0027】
焦電型赤外線センサの第2の製造方法を図2を用いて説明する。まず、第1の製造方法と同様に、基板11上に下部電極12を形成し(1)、その上に、基板11を−100℃以下に冷却しつつ、真空蒸着法によってVDFオリゴマー薄膜13を形成する(2)。次に、VDFオリゴマー薄膜13の表面から僅かに離れた位置に電界印加電極15を置き、下部電極12と電界印加電極15との間に直流電圧又は三角波電圧を印加する。電界印加電圧15は(3a)に示すように針状であってもよいし、(3b)に示すように平面状であってもよい。赤外線センサの面積が小さい場合には、(3a)に示すような針状の電界印加電極15でも十分VDFオリゴマー薄膜13に自発分極を生成させることができる。これにより電界印加電極15周辺でコロナ放電が生じ、VDFオリゴマー薄膜13の表面に電荷16が蓄積され、電荷16によってVDFオリゴマー薄膜13の内部に高電界が生成して薄膜13内に自発分極が生成される(コロナポーリング)。コロナポーリング工程の終了後、VDFオリゴマー薄膜13の上に上部電極14を形成し(4)、焦電型赤外線センサを完成する。
【0028】
この第2の製造方法では、上部電極14にポーリング工程のための高電圧用の配線を行う必要がないため、素子のサイズが小さいときに有利である。
【0029】
焦電型赤外線センサの第3及び第4の製造方法を図3を用いて説明する。まず、第1及び第2の製造方法と同様に、基板11上に下部電極12を形成する(1)。次に、下部電極12の表面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の高分子材料を押しつけながら滑らせることにより、下部電極12の表面に高分子薄膜17を形成する(2)。この方法を摩擦転写法と呼ぶ。こうして形成した高分子薄膜17上に、真空蒸着法によってVDFオリゴマー薄膜13を形成する(3)。この際、上記の2つの製造方法とは異なり、基板11を冷却する必要はない。摩擦転写された高分子薄膜17上に真空蒸着すれば自然に、薄膜13内においてVDFオリゴマーの分子鎖が基板に平行に配向するからである。ここまでは、第3及び第4の方法に共通の工程である。
【0030】
第3の方法と第4の方法との違いは、ポーリング処理の方法の違いにある。第3の方法では、第1の方法と同様にVDFオリゴマー薄膜13の上に上部電極14を形成し、下部電極12と上部電極14との間に直流電圧又は三角波電圧を印加することによってポーリング処理を行い(4a)、焦電型赤外線センサを完成する(5)。第4の方法では、第2の方法と同様にVDFオリゴマー薄膜13の表面から僅かに離れた位置に電界印加電極15を配置し、下部電極12と電界印加電極15との間に直流電圧又は三角波電圧を印加することによってコロナポーリング処理を行う(4b)。その後上部電極14を形成し、焦電型赤外線センサを完成する(5)。なお、上記第2の製造方法の場合と同様、電界印加電極15は針状でもよいし平面状でもよい。
【0031】
これら第3及び第4の方法では、基板を冷却する必要がないので、コスト的に有利である。第4の方法では更に、第2の方法と同様に上部電極14にポーリング工程のための高電圧用の配線を行う必要がないため、素子のサイズが小さいときに有利である。
【0032】
【実施例】
本発明の一実施例として、上記第1の製造方法を用いて図4に示す焦電型赤外線センサを、VDFオリゴマー薄膜23の膜厚が500nmのもの及び100nmのものの2種類作製した。Si及びSiOの2層からなる基板21上に真空蒸着法により白金製の下部電極22を形成した。基板21を液体窒素で冷却しつつ、下部電極22の上に、真空蒸着法によってVDFオリゴマー薄膜23を形成した。ここでVDFオリゴマー薄膜23の膜厚は一方のセンサでは500nm、他方のセンサでは100nmとし、その面積は共に0.925mmとした。VDFオリゴマーは、重合数n=17でありCH基がヨウ素原子で置換されたCF−(CHCF17−Iである。VDFオリゴマー薄膜23の上に真空蒸着法によりアルミニウム製の上部電極24を形成した。下部電極22と上部電極24との間に、VDFオリゴマー薄膜23の膜厚が500nmのものには100Vの、VDFオリゴマー薄膜23の膜厚が100nmのものには16Vの電圧をそれぞれ印加し、ポーリング処理を行った。この電圧の大きさは、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜内に、自発分極を生成するために必要である50MV/m以上の電界を印加することができる値として定めた。以上のように作製された焦電型赤外線センサを、内部を真空にした真空セル25内に設置した。
【0033】
このVDFオリゴマー薄膜23の膜厚が500nm及び100nmの2種類の焦電型赤外線センサの特性について調べた。下部電極22と上部電極24との間の配線上に電流計26を設置し、温度変化による電流Iの変化を測定した。図5に示すように、VDFオリゴマー薄膜23の温度が時間経過とともに交互に39℃及び41℃になるように赤外線センサを加熱・冷却制御した。赤外線センサから出力された電流の変化を、温度変化のグラフに重畳して、VDFオリゴマー薄膜23の膜厚が500nmのセンサについては図5(a)に、膜厚が100nmのセンサについては図5(b)に示す。いずれのセンサも同様に、以下の結果が得られた。VDFオリゴマー薄膜23の温度が一定の場合(図5の時間領域27)は、39℃及び41℃のいずれの場合も電流Iはほぼ一定の値で安定している。それに対して、VDFオリゴマー薄膜23の温度が上昇している間(図5の時間領域28)は電流Iが約1pA増加し、VDFオリゴマー薄膜23の温度が下降している間(図5の時間領域29)は電流Iが約1pA減少している。VDFオリゴマー薄膜23の温度が変化する時間領域においてのみ検出された電流が変化していることから、この電流Iの変化分(約±1pA)が焦電効果による電流(焦電電流)であるといえる。
【0034】
焦電電流Ipは焦電係数Pを用いて、Ip=P・S・(dT/dt)と表される。ここでSは、本実施例ではVDFオリゴマー薄膜23及び電極22、24の面積(0.925mm)である。dT/dtは焦電電流Ipが観測されるときの温度の時間変化率を表し、本実施例では図5より2K/150秒である。焦電電流Ipの絶対値1pAと上記のS、dT/dtの値を用いて焦電係数Pの絶対値を求めると、70μC/mKとなる。既に述べたように、この値は従来技術の焦電体であるPVDFやP(VDF/TrFE)の焦電係数よりも(絶対値において)大きい。
【0035】
上記の通り、本実施例の素子のうちのひとつは、VDFオリゴマー薄膜23の膜厚が約100nmである。更に膜厚が約50nmのVDFオリゴマー薄膜についても分極反転が観測されており、焦電性を有することが確認されている。従来のPVDFやP(VDF/TrFE)では乾式法を用いることができなかったため、このような薄膜の薄さは実現することができなかった。これにより、VDFオリゴマー薄膜23の熱容量が小さくなり、赤外線センサの感度が向上する。また、VDFオリゴマーの使用量を低減することができるのでコストダウンにもつながる。
【0036】
次に、本発明に係る焦電型赤外線センサの信号検出回路の一構成例を図6に示す。焦電型赤外線センサ31の一方の電極をFET32のゲート電極に接続し、他方の電極を接地する。FET32のソース電極と接地33の間に抵抗34を接続する。また、焦電型赤外線センサ31と並列に保護ダイオード35を接続する。なお、保護ダイオード35は焦電型赤外線センサ素子と周辺回路(検出回路等)をモノリシックな形で作成する場合に必要なものであり、ポーリング処理の際にFET32のゲート酸化膜が絶縁破壊を生じないようにするために設けられるものである。
【0037】
赤外線センサとして使用する際は、FET32のソース−ドレイン電極間に直流電圧Vsdを印加する。焦電型赤外線センサ31が赤外線を検知すると、生じた焦電信号によりFET32のゲート電極に電荷が誘起される。それによってゲート電極の電圧が変化し、ソース電極−ドレイン電極間の電流Isdが変化する。この電流Isdの変化によって、抵抗34の両端の電圧Vrが変化する。この電圧Vrを測定することにより、焦電型赤外線センサ31の焦電信号が検出される。
【0038】
前記のように、本発明の焦電型赤外線センサにおいても、前記特開平9−196756号公報や、藤塚等による「PVDF薄膜を用いたモノリシック焦電型赤外線イメージセンサ」(豊田中央研究所R&Fレビュー, Vol.33, No.1(1998.3), pp.63−70)に記載されているメンブレン構造を用いることが有効である。図7にその構成例を示す。基板41上に、基板41との間に空隙45を設けて、周囲に腕44aを形成した面状の支持体44を架設する。支持体44上に、前記の各種方法で下部電極42、VDFオリゴマー薄膜43及び上部電極(図示せず)を設ける。支持体44と基板41との間には隙間が存在するため、VDFオリゴマー薄膜43から基板41への熱伝導が抑制され、赤外線センサの熱に対する応答性が高められる。支持体44の材料には、例えばノンドープのシリコン酸化膜が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る焦電型赤外線センサの第1の製造方法を表す工程図。
【図2】本発明に係る焦電型赤外線センサの第2の製造方法を表す工程図。
【図3】本発明に係る焦電型赤外線センサの第3及び第4の製造方法を表す工程図。
【図4】本発明に係る焦電型赤外線センサの一実施例を表す断面図。
【図5】実施例の焦電型赤外線センサの温度変化と焦電電流の変化の関係を示すグラフ。
【図6】焦電型赤外線センサの信号検出回路の一構成例を表す回路図。
【図7】メンブレン構造の構成例を表す平面図及び断面図。
【符号の説明】
11、21、41…基板
12、22、42…下部電極
13、23、43…VDFオリゴマー薄膜
14、24…上部電極
15…電界印加電極
16…電荷
17…高分子薄膜
25…真空セル
26…電流計
31…焦電型赤外線センサ
32…FET
33…接地
34…抵抗
35…保護ダイオード
44…支持体
44a…腕
45…空隙

Claims (12)

  1. 2枚の電極と、その間に設けられたCF−(CHCF−CH(ここで、n=10〜50)又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質から成るフッ化ビニリデンオリゴマー層を有することを特徴とする焦電型赤外線センサ。
  2. 請求項1に記載の焦電型赤外線センサを用いたメンブレン型赤外線センサ。
  3. 請求項1に記載の焦電型赤外線センサ又は請求項2に記載のメンブレン型赤外線センサを複数個配列して成ることを特徴とする赤外線イメージセンサ。
  4. a) 基板上に下部電極を形成する工程と、
    b) 基板温度を−100℃以下に保ちつつ、下部電極上にCF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質を真空蒸着させるフッ化ビニリデンオリゴマー薄膜形成工程と、
    c) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜上に上部電極を形成する工程と、
    d) 下部電極と上部電極との間に、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜に自発分極を生成する電圧を印加するポーリング処理工程と、
    を含むことを特徴とする焦電型赤外線センサの製造方法。
  5. a) 基板上に下部電極を形成する工程と、
    b) 基板温度を−100℃以下に保ちつつ、下部電極上にCF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質を真空蒸着させるフッ化ビニリデンオリゴマー薄膜形成工程と、
    c) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜の表面から離れた位置に電界印加電極を配置し、電界印加電極と下部電極との間に、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜に自発分極を生成する電圧を印加するコロナポーリング処理工程と、
    d) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜上に上部電極を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする焦電型赤外線センサの製造方法。
  6. 上記電界印加電極が平面状である請求項5に記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
  7. 上記電界印加電極が針状である請求項5に記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
  8. a) 基板上に下部電極を形成する工程と、
    b) 下部電極に高分子材料を押しつけながら滑らせることにより下部電極の表面に該高分子の薄膜を形成する摩擦転写工程と、
    c) 該高分子薄膜上にCF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質を真空蒸着させるフッ化ビニリデンオリゴマー薄膜形成工程と、
    d) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜上に上部電極を形成する工程と、
    e) 下部電極と上部電極との間に、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜に自発分極を生成する電圧を印加するポーリング処理工程と、
    を含むことを特徴とする焦電型赤外線センサの製造方法。
  9. a) 基板上に下部電極を形成する工程と、
    b) 下部電極に高分子材料を押しつけながら滑らせることにより下部電極の表面に該高分子の薄膜を形成する摩擦転写工程と、
    c) 該高分子薄膜上にCF−(CHCF−CH又はそのCH基をハロゲン原子で置換した物質を真空蒸着させるフッ化ビニリデンオリゴマー薄膜形成工程と、
    d) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜の表面から離れた位置に電界印加電極を配置し、電界印加電極と下部電極との間に、フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜に自発分極を生成する電圧を印加するコロナポーリング処理工程と、
    e) フッ化ビニリデンオリゴマー薄膜上に上部電極を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする焦電型赤外線センサの製造方法。
  10. 上記電界印加電極が平面状である請求項9に記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
  11. 上記電界印加電極が針状である請求項9に記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
  12. 上記高分子材料がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
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