JP2005179524A - フッ化ビニリデン単独重合体単結晶の製造法および単結晶 - Google Patents
フッ化ビニリデン単独重合体単結晶の製造法および単結晶 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】比較的簡便な工程で、強誘電性に優れたI型結晶構造のVdF単独重合体の単結晶を製造する。
【解決手段】(i)フッ化ビニリデンをラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することにより、I型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体原末を製造する工程、および
(ii)前記I型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体原末から単一分子量のフッ化ビニリデン単独重合体を分離し、結晶化する工程
を含むI型結晶構造のみから実質的になるフッ化ビニリデン単独重合体単結晶の製造法。
【選択図】図8
【解決手段】(i)フッ化ビニリデンをラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することにより、I型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体原末を製造する工程、および
(ii)前記I型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体原末から単一分子量のフッ化ビニリデン単独重合体を分離し、結晶化する工程
を含むI型結晶構造のみから実質的になるフッ化ビニリデン単独重合体単結晶の製造法。
【選択図】図8
Description
本発明は、I型の結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体の単結晶の製造法、および新規なI型の結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体の単結晶に関する。
I型の結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体の単結晶は他のフッ化ビニリデン含有重合体またはその単結晶に比べて特に強誘電性に優れ、たとえば有機系の強誘電材料として期待できる。
ポリマー型の強誘電材料は、セラミックなどの無機系強誘電材料に対して、フレキシブル、軽量、加工性が良く安価といった長所を有している。その代表的なものとして、フッ化ビニリデン(VdF)の単独重合体(PVdF)やフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン(VdF/TrFE)共重合体といったVdF系重合体が知られている(特許文献1)。
ところでPVdFは大きく分けてI型(β型とも言う)、II型(α型)およびIII型(γ型)の3種の結晶構造が存在する。
田代らは、II型(α型)およびIII型(γ型)の2種の結晶構造のみから実質的になるPVdF重合体からII型結晶構造のみから実質的になる単一分子量体を取り出し、再結晶してII型結晶構造のみから実質的になる単結晶を得ている(非特許文献1)。
しかしながら、PVdFにおいては、その3種類の結晶構造のうち充分大きな強誘電性を発現できるのはI型結晶構造のみであり、I型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体単結晶が望まれている。
本発明の目的は、I型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体単結晶の製造法を提供することにある。
また本発明は新規なI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体単結晶を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を行なった結果、重合により直接、I型結晶構造のVdF単独重合体をえ、さらに得られた重合体から高純度のI型結晶構造のVdF繰返し単位を有する単結晶を得ることができた。
すなわち、本発明は、
(i)VdFをラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することにより、I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末を製造する工程、および
(ii)前記I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末から単一分子量のVdF単独重合体を分離し、結晶化する工程
を含むI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体単結晶の製造法に関する。
(i)VdFをラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することにより、I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末を製造する工程、および
(ii)前記I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末から単一分子量のVdF単独重合体を分離し、結晶化する工程
を含むI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体単結晶の製造法に関する。
本発明の製造法の工程(i)で得られるVdF単独重合体原末は、IR分析法により算出されるVdF単独重合体原末中のI型、II型およびIII型結晶構造を有するそれぞれのVdF単独重合体の存在比率に着目したとき、I型結晶構造を有するVdF単独重合体の存在比率が、(数式1):
100≧I型/(I型+II型)>50重量% (数式1)
および(数式2):
100≧I型/(I型+III型)>50重量% (数式2)
のいずれの関係をも満たすものであること、さらには、
I型結晶構造を有するVdF単独重合体の存在比率が(数式3):
100≧I型/(I型+II型)>70重量% (数式3)
および(数式4):
100≧I型/(I型+III型)>70重量% (数式4)
のいずれの関係をも満たすものであることが好ましい。
100≧I型/(I型+II型)>50重量% (数式1)
および(数式2):
100≧I型/(I型+III型)>50重量% (数式2)
のいずれの関係をも満たすものであること、さらには、
I型結晶構造を有するVdF単独重合体の存在比率が(数式3):
100≧I型/(I型+II型)>70重量% (数式3)
および(数式4):
100≧I型/(I型+III型)>70重量% (数式4)
のいずれの関係をも満たすものであることが好ましい。
本発明はさらに、式(1):
Rf−(CH2CF2)m1(R1)n1−X1 (1)
(式中、X1はハロゲン原子;R1は炭素数1〜10の2価のアルキレン基または含フッ素アルキレン基(ただしCH2CF2またはCF2CH2は除く);Rfは炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基;m1は4〜12の整数;n1は0または1)で示される重合体の結晶であり、該結晶が単一分子量の重合体のみで実質的に構成されているI型結晶構造を有するVdF単結晶に関する。
Rf−(CH2CF2)m1(R1)n1−X1 (1)
(式中、X1はハロゲン原子;R1は炭素数1〜10の2価のアルキレン基または含フッ素アルキレン基(ただしCH2CF2またはCF2CH2は除く);Rfは炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基;m1は4〜12の整数;n1は0または1)で示される重合体の結晶であり、該結晶が単一分子量の重合体のみで実質的に構成されているI型結晶構造を有するVdF単結晶に関する。
本発明はまた、式(2):
(式中、X2、X3はいずれもハロゲン原子;R2、R3は同じかまたは異なりいずれも炭素数1〜10の2価のアルキレン基または含フッ素アルキレン基;Rf1は炭素数1〜10のポリフルオロアルキレン基(ただしR2、R3およびRf1はいずれも−CH2CF2−および−CF2CH2−ではない);m2およびm3は同じかまたは異なりゼロではなくm2+m3=4〜15の整数;n2、n3およびn4は同じかまたは異なりいずれも0または1)で示される重合体の結晶であり、該結晶が単一分子量の重合体のみで実質的に構成されているI型結晶構造を有するVdF単結晶にも関する。
本発明において、I型結晶構造、II型結晶構造およびIII型結晶構造とはそれぞれ以下の結晶構造をいう。
VdF単独重合体のI型結晶構造は、重合体分子中の1つの主鎖炭素に隣り合う炭素原子に結合したフッ素原子と水素原子がそれぞれトランスの立体配位(TT型構造)、つまり隣り合う炭素原子に結合するフッ素原子と水素原子が炭素−炭素結合の方向から見て180度の位置に存在することを特徴とする。
本発明においてI型結晶構造を有するVdF単独重合体は、1つの重合体分子全体がTT型構造を有していてもよいし、また重合体分子の一部がTT型構造を有するものであっても良く、かつ少なくとも4つの連続するVdF単量体単位のユニットにおいて上記TT型構造の分子鎖を有するものを示すものである。いずれの場合もTT型構造の部分がTT型の主鎖を構成する炭素−炭素結合は平面ジグザグ構造をもち、C−F2、C−H2結合の双極子能率が分子鎖に対して垂直方向の成分を有している。I型結晶構造を有するVdF単独重合体についてIR分析を行なうと、1274cm-1、1163cm-1および840cm-1付近に特徴的なピーク(特性吸収)を有し、粉末X線回折分析においては2θ=21度付近に特徴的なピークを有する。
なお、IR分析において、I型結晶構造の特性吸収は認められるが実質的にII型結晶構造およびIII型結晶構造の特性吸収が認められないものを「I型結晶構造のみから実質的になる結晶」という。
VdF単独重合体のII型結晶構造は、重合体分子中のある1つの主鎖炭素に結合するフッ素原子(または水素原子)に対し、一方の隣接する炭素原子に結合した水素原子(またはフッ素原子)がトランスの位置にあり、なおかつもう一方(逆側)に隣接する炭素原子に結合する水素原子(またはフッ素原子)がゴーシュの位置(60度の位置)にあり、その立体構造の連鎖が2つ以上連続して有すること
[外1]
を特徴とするものであって、分子鎖が
[外2]
型でC−F2、C−H2結合の双極子能率が分子鎖に垂直方向と平行方向とにそれぞれ成分を有している。II型結晶構造を有するVdF単独重合体についてIR分析を行なうと、1212cm-1、1183cm-1および762cm-1付近に特徴的なピーク(特性吸収)を有し、粉末X線回折分析においては2θ=17.7度、18.3度および19.9度付近に特徴的なピークを有する。
VdF単独重合体のIII型結晶構造は、TT型構造とTG型構造が交互に連続して構成された立体構造
[外3]
を有することを特徴とし、分子鎖が
[外4]
型でC−F2、C−H2結合の双極子能率が分子鎖に垂直方向と平行方向とにそれぞれ成分を有している。III型結晶構造を有するVdF単独重合体についてIR分析を行なうと、1235cm-1および811cm-1付近に特徴的なピーク(特性吸収)を有し、粉末X線回折分析においては2θ=18度付近に特徴的なピークを有する。
[外1]
を特徴とするものであって、分子鎖が
[外2]
型でC−F2、C−H2結合の双極子能率が分子鎖に垂直方向と平行方向とにそれぞれ成分を有している。II型結晶構造を有するVdF単独重合体についてIR分析を行なうと、1212cm-1、1183cm-1および762cm-1付近に特徴的なピーク(特性吸収)を有し、粉末X線回折分析においては2θ=17.7度、18.3度および19.9度付近に特徴的なピークを有する。
VdF単独重合体のIII型結晶構造は、TT型構造とTG型構造が交互に連続して構成された立体構造
[外3]
を有することを特徴とし、分子鎖が
[外4]
型でC−F2、C−H2結合の双極子能率が分子鎖に垂直方向と平行方向とにそれぞれ成分を有している。III型結晶構造を有するVdF単独重合体についてIR分析を行なうと、1235cm-1および811cm-1付近に特徴的なピーク(特性吸収)を有し、粉末X線回折分析においては2θ=18度付近に特徴的なピークを有する。
なお、通常、III型結晶構造はI型結晶構造および/またはII型結晶構造と混在する形でその存在が確認される。
本発明で「I型結晶構造を単独または主成分とする」とは、好ましくは、I型結晶構造を有するVdF単独重合体の存在比率が、つぎの(数式1)および(数式2)のいずれの関係をも満たすものをいう。
100≧I型/(I型+II型)>50重量% (数式1)
100≧I型/(I型+III型)>50重量% (数式2)
I型、II型およびIII型結晶構造のVdF単独重合体の確認や存在比率については、X線解析やIR分析法など種々の方法で分析できるが、本発明において、VdF単独重合体中のI型結晶構造の含有率F(I)は、IR分析により測定したチャートの各結晶構造の特性吸収のピーク高さ(吸光度A)から、以下の方法により算出する。
(1)I型とII型の混合物中のI型の含有率(重量%。F(I)×100)の算出
(1-1)計算式
Beerの法則:A=εbC
(式中、Aは吸光度、εはモル吸光係数、bは光路長、Cは濃度)から、I型結晶構造の特性吸収の吸光度をAI、II型結晶構造の特性吸収の吸光度をAII、I型結晶のモル吸光係数をεI、II型結晶のモル吸光係数をεII、I型結晶の濃度をCI、II型結晶の濃度をCIIとすると、
AI/AII=(εI/εII)×(CI/CII) (1a)
ここで、モル吸光係数の補正係数(εI/εII)をEI/IIとすると、I型結晶構造の含有率F(I)(=CI/(CI+CII))は、
100≧I型/(I型+III型)>50重量% (数式2)
I型、II型およびIII型結晶構造のVdF単独重合体の確認や存在比率については、X線解析やIR分析法など種々の方法で分析できるが、本発明において、VdF単独重合体中のI型結晶構造の含有率F(I)は、IR分析により測定したチャートの各結晶構造の特性吸収のピーク高さ(吸光度A)から、以下の方法により算出する。
(1)I型とII型の混合物中のI型の含有率(重量%。F(I)×100)の算出
(1-1)計算式
Beerの法則:A=εbC
(式中、Aは吸光度、εはモル吸光係数、bは光路長、Cは濃度)から、I型結晶構造の特性吸収の吸光度をAI、II型結晶構造の特性吸収の吸光度をAII、I型結晶のモル吸光係数をεI、II型結晶のモル吸光係数をεII、I型結晶の濃度をCI、II型結晶の濃度をCIIとすると、
AI/AII=(εI/εII)×(CI/CII) (1a)
ここで、モル吸光係数の補正係数(εI/εII)をEI/IIとすると、I型結晶構造の含有率F(I)(=CI/(CI+CII))は、
となる。
したがって、補正係数EI/IIを決定すれば、実測したI型結晶構造の特性吸収の吸光度AIとII型結晶構造の特性吸収の吸光度AIIから、I型結晶構造の含有率F(I)を算出できる。
(1-2)補正係数EI/IIの決定方法
全I型結晶構造(II型およびIII型の結晶構造が観測されない)のサンプル(図1)と全II型結晶構造(I型およびIII型の結晶構造が観測されない)のサンプル(図2)とを混合してI型結晶構造の含有率F(I)が分かっているサンプルを調製し、IR分析する。得られたチャートから各特性吸収の吸光度(ピーク高さ)AIおよびAIIを読み取る(図3)。
(1-2)補正係数EI/IIの決定方法
全I型結晶構造(II型およびIII型の結晶構造が観測されない)のサンプル(図1)と全II型結晶構造(I型およびIII型の結晶構造が観測されない)のサンプル(図2)とを混合してI型結晶構造の含有率F(I)が分かっているサンプルを調製し、IR分析する。得られたチャートから各特性吸収の吸光度(ピーク高さ)AIおよびAIIを読み取る(図3)。
ついで上記式(2a)をEI/IIについて解いた式(3a):
に代入して、補正係数EI/IIを求める。混合比を変えたサンプルについて繰り返し行なって補正係数EI/IIを求め、それらの平均値として1.681を得た。
I型結晶構造の特性吸収として840cm-1を用い(参照文献:バックマンら、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、50巻、10号(1979)(Bachmann et al., J. Appl. Phys., Vol.50, No.10(1979)))、同文献からII型結晶構造の特性吸収として763cm-1を用いた。
(2)I型とIII型の混合物中のI型の含有率F(I)
III型結晶構造のみからなる物質が得にくいので、II型とIII型の混合物を標準物質として使用する。
III型結晶構造のみからなる物質が得にくいので、II型とIII型の混合物を標準物質として使用する。
(2-1)まず、II型とIII型の標準混合物中のIII型結晶構造の含有率を上記式(2a)においてAIおよびAIIをそれぞれAIIおよびAIIIとし、II型とIII型の混合物における補正係数EII/IIIを文献(エス・オサキら、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス:ポリマー フィジクス エディション、13巻、pp1071−1083(1975)(S.OSAKI et al., J. POLYMER SCIENCE: Polymer physics Edition, Vol.13, pp1071-1083(1975))から0.81とし、 II型とIII型の標準混合物のIRチャート(図4)から読み取ったAIIおよびAIIIを代入して算出した(F(III)=0.573)。III型結晶構造の特性吸収として811cm-1を用いた(参照文献:バックマンら、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、50巻、10号(1979))。
(2-2)ついで、III型の含有率が判明したII型とIII型の標準混合物と全I型結晶構造の物質を所定の割合で混合し、I型の含有率F(I)が判っているI型とII型とIII型の混合物を調製し、この混合物をIR分析してチャート(図5)からAIおよびAIIIを読み取り、上記式(3a)(ただし、AIIをAIIIとする)から補正係数EI/III(εI/εIII)を算出する。II型とIII型の標準混合物とI型のみの物質混合比を変えたサンプルについて繰り返し行なって補正係数EI/IIIを求め、それらの平均値として6.758を得た。
(2-3)この補正係数EI/III=6.758を用い、上記式(2a)(ただし、AIIをAIIIとする)からI型とIII型の混合物中のI型の含有率F(I)を求める。
本発明によれば、比較的簡便な工程で、強誘電性に優れたI型結晶構造のVdF単独重合体の単結晶を製造することができる。
本発明のI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体単結晶の製造法は、前記のとおり、
(i)VdFをラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することにより、I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末を製造する工程、および
(ii)前記I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末から単一分子量のVdF単独重合体を分離し、結晶化する工程
を含む製造法である。
(i)VdFをラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することにより、I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末を製造する工程、および
(ii)前記I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末から単一分子量のVdF単独重合体を分離し、結晶化する工程
を含む製造法である。
本発明によれば、比較的簡便な工程で、強誘電性に優れたI型結晶構造のVdF単独重合体の単結晶を製造することができる。
本発明の大きな特徴の一つは、I型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末をラジカル重合法により製造し、分子量(VdF繰返し単位の個数)の異なる重合体が混在している該VdF単独重合体原末から、単一分子量のVdF単独重合体を分離し、結晶化することに着目することで、従来に比べ比較的簡便な工程で、強誘電性に優れたI型結晶構造のVdF単独重合体の単結晶を得ることができたことにある。
そこでまず、工程(i)の説明をする。
本発明における工程(i)でのVdF単独重合体原末の製造は、VdFをラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合反応させることにより行われる。
ラジカル発生源としては、本発明で用いるラジカル重合開始剤のほか、光、熱などが利用可能であるが、ラジカル重合開始剤の存在下で製造するときは、重合度を制御でき、反応をスムーズに進行させることができ、また高収量で重合体が得られる。
ラジカル重合開始剤としては、パーオキサイド類、アゾ系開始剤などが利用できる。
パーオキサイド類としては、たとえばn−プロピルパーオキシジカーボネート、i−プロピルパーオキシジカーボネート、n−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;α、α‘−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノネイト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノネイト、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノネイト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノネイト、t−ブチルパーオキシネオデカノネイト、t−ヘキシルパーオキシピバレイト、t−ブチルパーオキシピバレイト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネイト、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネイト、t−ブチルパーオキシラウレイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネイト、t−ヘキシルパーオキシベンゾネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイル)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルレートとパーオキシベンゾエート混合物、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジt−ブチルパーオキシイソフタレートなどのオキシパーエステル類;イソブチルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール類;α、α‘−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;P―メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩類;その他、過塩素酸類、過酸化水素などがあげられる。
また、フッ素原子を有するパーオキサイド類も利用可能であり、含フッ素ジアシルパーオキサイド類、含フッ素パーオキシジカーボネート類、含フッ素パーオキシジエステル類、含フッ素ジアルキルパーオキサイド類から選ばれる1種または2種以上が好ましい。なかでも例えば、ペンタフルオロプロピオノイルパーオキサイド(CF3CF2COO)2、ヘプタフルオロブチリルパーオキサイド(CF3CF2CF2COO)2、7H−ドデカフルオロヘプタノイルパーオキサイド(CHF2CF2CF2CF2CF2CF2COO)2などのジフルオロアシルパーオキサイド類が好ましくあげられる。
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、たとえば2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4′−アゾビス(4−シアノペンテン酸)などがあげられる。
ラジカル重合開始剤としては、なかでも、パーオキシジカーボネート類、ジフルオロアシルパーオキサイド類、オキシパーエステル類、過硫酸塩類などが好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、使用するヨウ素化合物1モルに対し、下限は0.0001モル、好ましくは0.01モル、より好ましくは0.03モル、特に好ましくは0.04モルであり、上限は0.9モル、好ましくは、0.5モル、より好ましくは0.1モル、特に好ましくは0.08モルである。
ラジカル重合開始剤の使用量が少なすぎると、重合反応が進行しにくくなり、また使用量が多すぎるとI型結晶構造の含有比率が低下するため好ましくない。
ラジカル重合の際、好ましくは連鎖移動剤(テローゲン)を共存させておくことが、I型結晶構造の存在比率を高くすることから好ましい。連鎖移動剤としては、従来公知のものが使用でき、たとえば各種の塩素化合物、臭素化合物、ヨウ素化合物、アルコール類の連鎖移動剤を使用すればよい。特に、式(3):
(式中、X4はヨウ素原子または臭素原子;Rf3、Rf4は同じかまたは異なってなるフッ素原子または炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基から選ばれるもの)で示される部位を少なくとも1個含む炭素数1〜20のヨウ素化合物または臭素化合物などが好ましく使用できる。なかでも、式(3)で示される部位を有するヨウ素化合物または臭素化合物がより好ましい。
式(3)の部位を有するヨウ素化合物または臭素化合物を連鎖移動剤(テローゲン)として重合時に用いるときは、分子量分布が狭い重合体や分岐の比率の少ない重合体鎖が合成でき、I型結晶構造の含有比率の高いVdF単独重合体が得られるのである。
式(3)の部位の具体例は、−CF2Br、−CF2I、
などがあげられる。なかでも、分子量分布をより狭くすることができ、結果的にI型結晶構造の含有比率の高いVdF単独重合体原末がえられる点で、ヨウ素化合物であることが好ましい。
また、式(3)の部位において、I型結晶構造の含有比率の高いVdF単独重合体が得られる点で、Rf3およびRf4はなかでもFであることが好ましい。
式(3)の部位を有するヨウ素化合物または臭素化合物は、より重合反応が収率よく進行し、かつ分子量分布や分岐鎖の少ない重合体が得られる点で、式(3)の部位を有するポリフルオロ化合物であることが好ましく、式(3)の部位を有するパーフルオロ化合物であることがより好ましい。
特に、式(3−1):
X5−(CF2)n−I (3−1)
(式中、X5はフッ素原子またはヨウ素原子、nは1〜20の整数)で示される少なくとも1種のパーフルオロアイオダイド、またはヨウ素原子が臭素原子に置き換えられたパーフルオロブロマイドが好ましい。
X5−(CF2)n−I (3−1)
(式中、X5はフッ素原子またはヨウ素原子、nは1〜20の整数)で示される少なくとも1種のパーフルオロアイオダイド、またはヨウ素原子が臭素原子に置き換えられたパーフルオロブロマイドが好ましい。
このようなパーフルオロ化合物としては、例えばモノアイオダイドパーフルオロメタン、モノアイオダイドパーフルオロエタン、モノアイオダイドパーフルオロプロパン、モノアイオダイドパーフルオロブタン(たとえば2−アイオダイドパーフルオロブタン、1−アイオダイドパーフルオロ(1,1−ジメチルエタン))、モノアイオダイドパーフルオロペンタン(たとえば1−アイオダイドパーフルオロ(4−メチルブタン))、1−アイオダイドパーフルオロ−n−ノナン、モノアイオダイドパーフルオロシクロブタン、2−アイオダイドパーフルオロ(1−シクロブチル)エタン、モノアイオダイドパーフルオロシクロヘキサンなどのパーフルオロモノアイオダイド化合物;ジアイオダイドパーフルオロメタン、1,2−ジアイオダイドパーフルオロエタン、1,3−ジアイオダイドパーフルオロ−n−プロパン、1,4−ジアイオダイドパーフルオロ−n−ブタン、1,7−ジアイオダイドパーフルオロ−n−オクタン、1,2−ジ(アイオダイドジフルオロメチル)パーフルオロシクロブタン、2−アイオダイド1,1,1−トリフルオロエタンなどのパーフルオロジアイオダイド化合物などのヨウ素化合物、およびこれらのヨウ素化合物のヨウ素原子を臭素原子に置換した臭素化合物があげられる。
より好ましくは、工程(i)におけるI型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末の製造は、式(3−1):
X5−(CF2)n−I (3−1)
(式中、X5はフッ素原子またはヨウ素原子、nは1〜20の整数)で示される少なくとも1種のパーフルオロアイオダイドおよびラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することを特徴とし、なおかつ、重合体におけるVdF単位の数平均重合度を4〜20、好ましくは4〜15とすることで、より確実に達成される。
X5−(CF2)n−I (3−1)
(式中、X5はフッ素原子またはヨウ素原子、nは1〜20の整数)で示される少なくとも1種のパーフルオロアイオダイドおよびラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することを特徴とし、なおかつ、重合体におけるVdF単位の数平均重合度を4〜20、好ましくは4〜15とすることで、より確実に達成される。
つまり直鎖状のフルオロアルキル基を有するヨウ素化合物を用いることが重要であり、(CF3)2CF−Iなどの分岐状のフルオロアルキル基を用いた場合に比べて、I型結晶構造が高純度のものをより一層製造しやすい。
式(3−1)のヨウ素化合物のなかでも、nが1または4m(ただしmは1〜5)であることがより好ましい。
式(3−1)のヨウ素化合物は具体的には、CF3I、F(CF2)4I、F(CF2)8Iのほか式I(CF2CF2)n1I(n1は1〜5の整数)で示されるパーフルオロジアイオダイド[たとえばI(CF2CF2)I、I(CF2CF2)2I、I(CF2CF2)3 I、I(CF2CF2)4Iなど]が好ましくあげられ、特には、CF3I、I(CF2CF2)n1I(n1は1〜5の整数)が好ましく、なかでもCF3I、I(CF2CF2)2Iが好ましい。
これらヨウ素化合物を連鎖移動剤(テローゲン)として用いるときは、I型結晶構造のVdF単独重合体原末が高純度、高効率でえられる。
ヨウ素化合物の使用量は、使用するVdF単量体1モルに対し、下限は0.01モル、好ましくは0.02モル、より好ましくは0.03モル、特に好ましくは0.08モルであり、上限は10モル、好ましくは6モル、より好ましくは2モル、特に好ましくは1モルである。
ヨウ素化合物の使用量が少なすぎると、重合度が大きくなりすぎ、それによってI型結晶構造の含有比率が低下する傾向がある。ヨウ素化合物の使用量が多すぎると、重合反応が進行しにくく、収量が低下したり、重合度が低くなりすぎる傾向がある。
VdF単独重合体中のVdFのみの繰返し単位に着目した数平均重合度は、下限は4、特に5であることが好ましく、上限は20、より好ましくは15、さらには12、とりわけ10であるのが好ましい。数平均重合度が大きすぎるとI型結晶構造の比率が低下するため好ましくない。
本発明のVdF単独重合体の製造法において、ラジカル重合の実施形態としては、重合溶媒を使用しないバルク重合法、重合場におけるモノマーを溶解させる溶剤を使用した溶液重合法、重合場におけるモノマーを溶解または分散させる溶剤と必要に応じて水などの分散媒を加えた懸濁重合法、乳化剤を含む水性溶剤中で行なう乳化重合法などが採用できる。
なかでも、溶液重合法および懸濁重合法が、重合度を制御しやすい点で好ましい。
溶液重合法、懸濁重合法で製造する場合の重合溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、セロソルブアセテート、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、酢酸カルビトールなどのエステル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノールなどのアルコール系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などが利用可能であり、またさらに、CHF2CF2OCHF2、(CF3)2CFOCH3、CF3CF2CF2OCH3、CHF2CF2OCH3、CF3CF2CH2OCHF2、CF3CFHCF2OCH3、CHF2CF2OCH2CF3、CF3CF2CF2CF2OCH3、CF3CF2CH2OCF2CHF2、(CF3)2CHCF2OCH3、CF3CFHCF2OCH2CF3、CF3CF2CF2CF2OCH2CH3、CF3CHFCF2OCH2CF2CF3、CF3CHFCF2CH2OCHF2、CHF2CF2CH2OCF2CHF2、CF3CFHCF2OCH2CF2CF2H、CHF2CF2CF2CF2CH2OCH3、C6F12、C9F18、C6F14、CF3CH2CF2CH3、CHF2CF2CF2CHF2、(CF3)2CFCHFCHFCF3、CF3CHFCHFCF2CF3、(CF3)2CHCF2CF2CF3、C4H2F6、CF3CF2CHF2、CF2ClCF2CF2CHF2、CF3CFClCFClCF3、CF2ClCF2CF2CF2Cl、CF2ClCF2CF2CF2CF2CF2CHF2、CF2ClCFClCFClCF2Cl、HCFC−225,HCFC−141b、CF2ClCFClCFClCF2Cl、CF2ClCF2Cl、CF2ClCFCl2、H(CF2)nH(n:1〜20の整数)、CF3O(C2F4O)nCF2CF3(n:0または1〜10の整数)、N(C4F9)3などのフッ素系溶剤も利用できる。
なかでもフッ素系溶剤が、重合度を制御しやすい点で好ましく、特にHCFC−225、HCFC−141b、CF2ClCFClCFClCF2Cl、CF2ClCF2Cl、CF2ClCFCl2、H(CF2)nH(n:1〜20の整数)、CF3O(C2F4O)nCF2CF3(n:0または1〜10の整数)、N(C4F9)3などのフッ素系溶剤が好ましい。
重合温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類によって適宜選択できるが、通常−10〜200℃であり、下限は好ましくは5℃、より好ましくは10℃であり、上限は好ましくは150℃、より好ましくは100℃である。
本発明における工程(i)で得られるVdF単独重合体原末は、特に前述の特定の連鎖移動剤(例えば式(3−2)の連鎖移動剤)を用いることで、I型結晶構造の存在比率が特に高いVdF単独重合体原末となるが、それらに限定されるものではない。
すなわち、工程(i)で得られるVdF単独重合体原末は、好ましくは式(4):
Y−(A1)−X6 (4)
(式中、A1は数平均重合度が4〜12のVdF単独重合体の構造単位、X6はヨウ素原子または臭素原子、Yは連鎖移動剤の残基)で示されるVdF単独重合体を単独または主成分として含む原末である。
Y−(A1)−X6 (4)
(式中、A1は数平均重合度が4〜12のVdF単独重合体の構造単位、X6はヨウ素原子または臭素原子、Yは連鎖移動剤の残基)で示されるVdF単独重合体を単独または主成分として含む原末である。
このVdF単独重合体は、1つの重合体分子において一方の末端に連鎖移動剤の残基(たとえばCF3基)を、もう一方の末端にヨウ素原子を有するVdF単独重合体であり、構造単位A1は、数平均重合度で4〜12のVdFの繰返し単位を有する。
この式(4)の重合体は、連鎖移動剤として前記の式(3−1)のものを使用するときは、特にI型の結晶構造の純度が高いものである。
構造単位A1の数平均重合度が3以下になると室温で結晶を形成しにくくなる。また数平均重合度が13以上になるとI型結晶構造の純度が低くなる(例えばII型結晶構造の比率が増大する)。
また、一方の末端の構造はCF3基であることが、I型結晶構造の純度が高くなる点で特に好ましく、例えば、長鎖のパーフルオロアルキル基や分岐状のパーフルオロアルキル基が末端である場合はI型結晶構造の純度が低くなる(例えばII型結晶構造の比率が増大する)。
式(4)の重合体の分子量分布は、平均重合度によって異なるが、例えばGPC分析により求められるMw/Mnで1以上で3以下のもの、好ましくは2以下のもの、より好ましくは1.5以下のものであり、分子量分布が大きくなるとI型結晶構造の純度が低くなる傾向にある。
また、式(4)の重合体は、より詳しくは、VdF単位が重合体1分子中に同じ方向を向いた式(4−1):
Y−(CH2CF2)m−X6 (4−1)
(式中、Y、X6は式(4)と同じ、mは4〜12の整数)のみからなるものが好ましい。
Y−(CH2CF2)m−X6 (4−1)
(式中、Y、X6は式(4)と同じ、mは4〜12の整数)のみからなるものが好ましい。
本発明における工程(i)で得られるVdF単独重合体原末の他のものは、たとえば式(5):
X7−(A2)−(Rf2)n−(A3)−X8 (5)
(式中、nは0または1;A2、A3は同じかまたは異なるVdF単独重合体の構造単位であって、構造単位A2とA3の合計の数平均重合度が4〜20;Rf2はたとえばCF2CF2などのパーフルオロアルキレン基;X7およびX8は同じかまたは異なりヨウ素原子または臭素原子)で示されるVdF単独重合体を単独または主成分とする原末である。
X7−(A2)−(Rf2)n−(A3)−X8 (5)
(式中、nは0または1;A2、A3は同じかまたは異なるVdF単独重合体の構造単位であって、構造単位A2とA3の合計の数平均重合度が4〜20;Rf2はたとえばCF2CF2などのパーフルオロアルキレン基;X7およびX8は同じかまたは異なりヨウ素原子または臭素原子)で示されるVdF単独重合体を単独または主成分とする原末である。
Rf2がCF2CF2でX7およびX8がいずれもヨウ素原子である重合体原末は、予想外にもI型結晶構造の純度の高いものである。
構造単位A2とA3の合計の数平均重合度は4〜20の範囲から選ばれるが、下限はより好ましくは5であり、上限は好ましくは15、さらに好ましくは12である。
つまり、数平均重合度が低すぎると室温で結晶を形成しにくくなり、また数平均重合度が高すぎるとI型結晶構造の純度が低くなる(例えばII型結晶構造の比率が増大する)。
式(5)の重合体において、nは0または1の整数から選択できるが、より好ましくは0であり、このものはI型結晶構造の純度の特に高いものである。
式(5)の重合体は種々の方法で合成できるが、例えば、式(5−1):
X7−(Rf2)n−X8 (5−1)
(式中、nは1〜5の整数;Rf2、X7およびX8は前記と同じ)を連鎖移動剤として前述の製造法により合成できる。この連鎖移動剤を使用するときは、分子量分布の狭い重合体を合成できる点で好ましく、それによってI型結晶構造の純度を高められる点でも好ましい。
X7−(Rf2)n−X8 (5−1)
(式中、nは1〜5の整数;Rf2、X7およびX8は前記と同じ)を連鎖移動剤として前述の製造法により合成できる。この連鎖移動剤を使用するときは、分子量分布の狭い重合体を合成できる点で好ましく、それによってI型結晶構造の純度を高められる点でも好ましい。
また、式(5)の重合体においてnが0のものは、前述の式(4):
Y−(A1)−X6 (4)
(式中、A1は数平均重合度が4〜12のVdF単独重合体の構造単位、X6はヨウ素原子または臭素原子、Yは連鎖移動剤の残基)で示されるVdF単独重合体を2モル反応させることによっても製造できる。
Y−(A1)−X6 (4)
(式中、A1は数平均重合度が4〜12のVdF単独重合体の構造単位、X6はヨウ素原子または臭素原子、Yは連鎖移動剤の残基)で示されるVdF単独重合体を2モル反応させることによっても製造できる。
式(5)の重合体において構造単位A2およびA3の部分の分子量分布は、構造単位A2とA3の合計の数平均重合度によって異なるが、例えばGPC分析により求められるMw/Mnで1以上で3以下のもの、好ましくは2以下のもの、より好ましくは1.5以下のものであり、分子量分布が大きくなるとI型結晶の純度が低くなる傾向がある。
式(4)および式(5)で示したVdF単独重合体原末は、それぞれ、前述と同様に(数式1)で示した関係を満たすI型結晶構造を含有するものが好ましい。
さらにはつぎの数式:
100≧I型/(I型+II型)>60重量%
および
100≧I型/(I型+III型)>60重量%
のいずれの関係をも満たすものであり、より好ましくは、下式(数式3)および(数式4)のいずれの関係をもみたすものである。
100≧I型/(I型+II型)>60重量%
および
100≧I型/(I型+III型)>60重量%
のいずれの関係をも満たすものであり、より好ましくは、下式(数式3)および(数式4)のいずれの関係をもみたすものである。
100≧I型/(I型+II型)>70重量% (数式3)
100≧I型/(I型+III型)>70重量% (数式4)
さらには、つぎの数式:
100≧I型/(I型+II型)>80重量%
および
100≧I型/(I型+III型)>80重量%
のいずれの関係をも満たすものが好ましく、これらはつぎの工程である分子結晶化工程を容易にする。
100≧I型/(I型+III型)>70重量% (数式4)
さらには、つぎの数式:
100≧I型/(I型+II型)>80重量%
および
100≧I型/(I型+III型)>80重量%
のいずれの関係をも満たすものが好ましく、これらはつぎの工程である分子結晶化工程を容易にする。
またさらに3種混合型の場合、I型結晶の存在比率は、式:
100≧I型/(I型+II型+III型)>50重量%
の関係にあるのが好ましく、より好ましくは、式:
100≧I型/(I型+II型+III型)>70重量%
特に好ましくは、式:
100≧I型/(I型+II型+III型)>80重量%
の関係を有するものである。
100≧I型/(I型+II型+III型)>50重量%
の関係にあるのが好ましく、より好ましくは、式:
100≧I型/(I型+II型+III型)>70重量%
特に好ましくは、式:
100≧I型/(I型+II型+III型)>80重量%
の関係を有するものである。
本発明の工程(i)で得られるI型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末は固形状であり、それには通常、分子量(VdF繰返し単位の個数)の異なる重合体が混在している。その分子量分布は重合条件などによって異なるが、最終的に単結晶として得ることを目的とする分子量(VdF繰返し単位の個数)のI型結晶構造を有するVdF単独重合体が、原末中の好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上であれば、収率よく該単結晶を得ることができる。
つぎに、本発明の製造法における工程(ii)について説明する。
工程(ii)は、工程(i)で得られたI型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末から単一分子量のVdF単独重合体を分離し、結晶化する工程である。
このうち分離処理は、たとえば再沈法、蒸留法、クロマトグラフィー法、蒸着法などにより好ましく実施できる。
再沈法によれば、VdF単独重合体原末をできるだけ少量の溶媒(良溶媒)に溶解させておき、ついでVdF単独重合体原末に対して溶解度の低い溶媒(貧溶媒)に投入して単一分子量のVdF単独重合体を再沈させることにより、効率よく分離できる。
このときVdF単独重合体原末は、良溶媒に対して通常1〜80重量%、好ましくは1〜70重量%、より好ましくは1〜50重量%溶解させておくのが好ましい。また、貧溶媒は良溶媒の10〜20倍量程度とすることが好ましい。再沈時の温度は、通常−30〜150℃、好ましくは0〜80℃、より好ましくは25〜50℃が採用される。
前記良溶媒や貧溶媒は、再沈させる単一分子量のVdF単独重合体の溶解性に応じて適宜選択すればよい。例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、セロソルブアセテート、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、酢酸カルビトール、ジブチルフタレートなどのエステル系溶剤;ベンズアルデヒドなどのアルデヒド系溶剤;ジメチルアミン、ジブチルアミン、ジメチルアニリン、メチルアミン、ベンジルアミンなどのアミン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤;無水酢酸などのカルボン酸無水物系溶剤;酢酸などのカルボン酸系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、塩化ベンジル、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホンアミド系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、1−プロパノールなどのアルコール系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;またはこれらの2種以上の混合溶剤などが好ましく利用できる。
蒸留法によれば、VdF単独重合体原末を一定圧力(減圧)状態において一定温度下で蒸留することにより、目的とする単一分子量のVdF単独重合体を効率よく分離できる。
蒸留時の圧力は、通常0.1Pa〜101KPa、好ましくは1Pa〜50KPa、より好ましくは100Pa〜1KPaである。蒸留時の温度は、通常0〜500℃、好ましくは0〜250℃、より好ましくは25〜200℃である。
洗浄法によれば、溶剤によりVdF単独重合体原末を洗浄する操作を施すことにより、単一分子量のVdF単独重合体を効率よく分離できる。洗浄に用いる溶剤としては、目的とする単一分子量のVdF単独重合体を溶解させることのできるものを任意に用いればよい。具体的には、再沈法で例示したものと同様のものが使用できる。
洗浄の際の溶剤の温度は、通常−30〜150℃、好ましくは0〜80℃、より好ましくは25〜50℃である。
また、洗浄操作は使用する洗浄用の溶剤により異なるが、原則として何回でもよく、通常100回以下、好ましくは50回以下、より好ましくは10回以下である。
クロマトグラフィー法によれば、効率よく単一分子量のVdF単独重合体を分離できる。移動相がVdF単独重合体を溶解するものであれば、公知の方法のうちのどの方法を採用してもよく、例えば液相クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーが好ましく採用される。その際の温度は、通常−30〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは25〜80℃である。
蒸着法によれば、VdF単独重合体原末を一定圧力(減圧)の状態において一定温度下で蒸着することにより、効率よく単一分子量のVdF単独重合体を分離できる。蒸着の際、VdF単独重合体原末を加熱または冷却するが、その温度は、通常−30〜1000℃、好ましくは0〜800℃、より好ましくは0〜500℃である。蒸着の際の系内の圧力は、通常1×10-6Pa〜100KPa、好ましくは1KPa以下、より好ましくは1Pa以下である。
より簡易かつ効率的に単一分子量のVdF単独重合体を分離できる点から、蒸留法またはクロマトグラフィー法を採用することが好ましい。
かかる分離処理により、単一分子量のVdF単独重合体の純度を70重量%以上、さらには80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特には95重量%以上にまで高めることが好ましい。
ついで、得られた高純度のI型結晶構造を有する単一分子量のVdF単独重合体を結晶化する。
結晶化は、溶融法、溶液法、昇華法、気相反応法などで好ましく実施することができ、より簡易かつ効率的に結晶化処理を実施できる点、製造コストの点から、溶液法を採用するのが好ましい。
溶液法による結晶化温度は、通常−30〜200℃、好ましくは0〜150℃、より好ましくは25〜80℃である。溶液法に用いる結晶化用の溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、セロソルブアセテート、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、酢酸カルビトール、ジブチルフタレートなどのエステル系溶剤;ベンズアルデヒドなどのアルデヒド系溶剤;ジメチルアミン、ジブチルアミン、ジメチルアニリン、メチルアミン、ベンジルアミンなどのアミン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤;無水酢酸などのカルボン酸無水物系溶剤;酢酸などのカルボン酸系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、塩化ベンジル、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホンアミド系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、1−プロパノールなどのアルコール系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;またはこれらの2種以上の混合溶剤などが好ましくあげられる。
溶融法、昇華法、気相反応法については、公知の方法を適宜条件を設定しならが適用すればよい。
なお、以上の説明では分離処理と結晶化処理を別々に説明したが、工程(ii)では、工程(i)で得られたI型結晶構造を単独または主成分とするVdF単独重合体原末から単一分子量のVdF単独重合体が分離、結晶化されればよく、例えば前記の溶融法、溶剤法、昇華法、気相反応法などにより分離処理と結晶化処理とを同一の処理工程で行なうようにしてもよい。
本発明の工程(i)および(ii)を含む製造法により、I型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体の単結晶が得られる。
得られるI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体の単結晶では、偏光顕微鏡を用いたクロスニコル条件下の観測で複屈折が生じて光の透過を観測でき、しかも単結晶X線構造解析より、立方晶系、正方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系、六方晶系、三方晶系のいずれか1つの結晶系のみが観察でき、単結晶体であることが確認できる。
なお、I型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体のアモルファス(非晶質体)では、偏光顕微鏡を用いたクロスニコル条件下の観測で光の透過を確認できず、また、I型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体の多結晶体では、単結晶X線構造解析において単一の結晶系のみを特定できない。
本発明はまた、新規なI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体の単結晶にも関する。
すなわち、式(1):
Rf−(CH2CF2)m1(R1)n1−X1 (1)
(式中、X1はハロゲン原子;R1は炭素数1〜10の2価のアルキレン基または含フッ素アルキレン基(ただしCH2CF2またはCF2CH2は除く);Rfは炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基;m1は4〜12の整数;n1は0または1)で示される重合体の結晶であり、該結晶が単一分子量の重合体のみで実質的に構成されているI型結晶構造を有するVdF単結晶(以下、「I型単結晶1」という)に関する。
Rf−(CH2CF2)m1(R1)n1−X1 (1)
(式中、X1はハロゲン原子;R1は炭素数1〜10の2価のアルキレン基または含フッ素アルキレン基(ただしCH2CF2またはCF2CH2は除く);Rfは炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基;m1は4〜12の整数;n1は0または1)で示される重合体の結晶であり、該結晶が単一分子量の重合体のみで実質的に構成されているI型結晶構造を有するVdF単結晶(以下、「I型単結晶1」という)に関する。
式(1)において、ハロゲン原子X1としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、特にヨウ素原子が製造コストが低減化される点で好ましい。
R1としては、炭素数が5個以下、さらには4個以下、特に2個以下であることが単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。特に含フッ素アルキレン基、さらにはパーフルオロアルキレン基が単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。
R1の具体例としては、−CH2−、−CH2CH2−、−(CH2CH2)2−などのアルキレン基;−CF2−、−CF2CF2−などの含フッ素アルキレン基があげられ、特に−CF2−、−CH2−、−CH2CH2−、−CF2CF2−が単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。
Rfとしては、単結晶の強誘電性をより向上させる観点から、炭素数は5個以下、さらには1個以下であることが好ましく、またパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Rfの具体例としては、CF3、F(CF2)4、F(CF2)8、CH3CF2などがあげられ、さらにはCF3、F(CF2)4、F(CF2)8、特にCF3、F(CF2)4が単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。
VdFの繰返し単位の個数(m1)は4個以上、さらには8個以上、特に10個以上であるのが単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。一方、12個以下、さらには10個以下、特に8個以下であることが製造コストの低減化の点で好ましい。
また、n1は製造コストの低減化の点で0であることが好ましい。
I型単結晶1の具体例としては、たとえばつぎの重合体の単結晶があげられる。
(1-1) CF3−(CH2CF2)m1(CH2)n1−X1
(X1=F、Cl、Br、I;m1=4〜12の整数;n1=0または1)
(1-2) CF3−(CH2CF2)m1(CH2CH2)n1−X1
(X1=F、Cl、Br、I;m1=4〜12の整数;n1=0または1)
(1-3) CF3−(CH2CF2)m1(CF2)n1−X1
(X1=F、Cl、Br、I;m1=4〜12の整数;n1=0または1)
本発明はまた、式(2):
(1-1) CF3−(CH2CF2)m1(CH2)n1−X1
(X1=F、Cl、Br、I;m1=4〜12の整数;n1=0または1)
(1-2) CF3−(CH2CF2)m1(CH2CH2)n1−X1
(X1=F、Cl、Br、I;m1=4〜12の整数;n1=0または1)
(1-3) CF3−(CH2CF2)m1(CF2)n1−X1
(X1=F、Cl、Br、I;m1=4〜12の整数;n1=0または1)
本発明はまた、式(2):
(式中、X2、X3はいずれもハロゲン原子;R2、R3は同じかまたは異なりいずれも炭素数1〜10の2価のアルキレン基または含フッ素アルキレン基;Rf1は炭素数1〜10のポリフルオロアルキレン基(ただしR2、R3およびRf1はいずれも−CH2CF2−および−CF2CH2−ではない);m2およびm3は同じかまたは異なりゼロではなくm2+m3=4〜15の整数;n2、n3およびn4は同じかまたは異なりいずれも0または1)で示される重合体の結晶であり、該結晶が単一分子量の重合体のみで実質的に構成されているI型結晶構造を有するVdF単結晶(以下、「I型単結晶2」という)にも関する。
式(2)において、X2、X3としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、特にフッ素原子が単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。
R2、R3としては、炭素数が5個以下、さらには4個以下、特に2個以下であることが単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。特に含フッ素アルキレン基、さらにはパーフルオロアルキレン基が単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。
R2、R3の具体例としては、−CH2−、−CH2CH2−、−(CH2CH2)2−などのアルキレン基;−CF2−、−CF2CF2−などの含フッ素アルキレン基があげられ、特に−CF2−、−CH2−、−CH2CH2−、−CF2CF2−が単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。
Rf1としては、パーフルオロアルキレン基であることが、また炭素数が5個以下、さらには2個以下、特に1個以下であることが単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。
Rf1の具体例としては、−CF2−、−(CF2)4−、−(CF2)8−などがあげられ、さらには−CF2−、−(CF2)4−が単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。
VdFの繰返し単位の個数(m2、m3)は同じでも異なっていてもよいが、性状の均一化がよい点から、同じであることが好ましく、それぞれ4個以上、さらには6個以上、特に8個以上であるのが単結晶の強誘電性をより向上させる点で好ましい。一方、12個以下、さらには8個以下、特に4個以下であることが製造コストの低減化の点で好ましい。
また、n2およびn4は製造コストの低減化の点で1であることが好ましい。n3は単結晶の強誘電性をより向上させる点で0であることが好ましい。
I型単結晶2の具体例としては、たとえば式(2−1)の重合体の単結晶があげられる。
式(2-1):
X2(R2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(R3)n4X3
(X2=F、Cl、Br、I;X3=F、Cl、Br、I;m2+m3=4〜10の整数;n2、n3およびn4は同じかまたは異なりいずれも0または1)
この単結晶の具体例としては、たとえばつぎのものがあげられる(各式中のX2、X3、m2、m3、n2、n3およびn4は式(2−1)と同じ)。
式(2-1-1)
X2(CF2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CF2)n4X3
式(2-1-2)
X2(CF2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2)n4X3
式(2-1-3)
X2(CF2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2CH2)n4X3
式(2-1-4)
X2(CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CF2)n4X3
式(2-1-5)
X2(CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2)n4X3
式(2-1-6)
X2(CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2CH2)n4X3
式(2-1-7)
X2(CH2CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CF2)n4X3
式(2-1-8)
X2(CH2CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2)n4X3
式(2-1-9)
X2(CH2CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2CH2)n4X3
X2(R2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(R3)n4X3
(X2=F、Cl、Br、I;X3=F、Cl、Br、I;m2+m3=4〜10の整数;n2、n3およびn4は同じかまたは異なりいずれも0または1)
この単結晶の具体例としては、たとえばつぎのものがあげられる(各式中のX2、X3、m2、m3、n2、n3およびn4は式(2−1)と同じ)。
式(2-1-1)
X2(CF2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CF2)n4X3
式(2-1-2)
X2(CF2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2)n4X3
式(2-1-3)
X2(CF2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2CH2)n4X3
式(2-1-4)
X2(CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CF2)n4X3
式(2-1-5)
X2(CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2)n4X3
式(2-1-6)
X2(CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2CH2)n4X3
式(2-1-7)
X2(CH2CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CF2)n4X3
式(2-1-8)
X2(CH2CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2)n4X3
式(2-1-9)
X2(CH2CH2)n2(CF2CH2)m2(CF2)n3(CH2CF2)m3(CH2CH2)n4X3
本発明の製造法で得られるI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体の単結晶は、強誘電性を有している。
本発明において強誘電性とは、物質内部の永久双極子が何らかの力の作用によって同じ向きに配向しており、電場を加えていないときでも分極をもっている性質をいい(電場がなくても生じている分極を自発分極という)、また、自発分極を外部からの電場によって反転することができる性質のことである。物質が強誘電体であるかどうかは、電界Eと電気変位Dの関係を調べれば、強誘電体であればある程度振幅の大きい交流電場を加えたとき強磁性体のようなヒステリシス(履歴)曲線を示すことでわかる。
強誘電性をもつ物質は、圧電性、焦電性、電気光学効果あるいは非線形光学効果といった電気的あるいは光学的な機能に結びつく性質を併せもっている。
これらの性質により、本発明で得られた単結晶は、FE−RAM、赤外線センサー、マイクロホン、スピーカー、音声付ポスター、ヘッドホン、電子楽器、人工触覚、脈拍計、補聴器、血圧計、心音計、超音波診断装置、超音波顕微鏡、超音波ハイパーサーミア、サーモグラフィー、微小地震計、土砂崩予知計、近接警報(距離計)侵入者検出装置、キーボードスイッチ、水中通信バイモルフ型表示器、ソナー、光シャッター、光ファイバー電圧計、ハイドロホン、超音波光変調偏向装置、超音波遅延線、超音波カメラ、POSFET、加速度計、工具異常センサ、AE検出、ロボット用センサ、衝撃センサ、流量計、振動計、超音波探傷、超音波厚み計、火災報知器、侵入者検出、焦電ビジコン、複写機、タッチパネル、吸発熱反応検出装置、光強度変調素子、光位相変調素子、光回路切換素子などの圧電性、焦電性、電気光学効果あるいは非線形光学効果を利用したデバイスに利用可能である。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる例のみに限定されるものではない。
まず、本発明の説明で使用するパラメーターの測定法について説明する。
[1]VdF重合体の重合度の測定法
(1)CF3(CH2CF2)nIの重合度(n)
19F−NMRより求める。具体的には、−61ppm付近のピーク面積(CF3−由来)と、−90〜−96ppm付近のピーク面積(−CF2−CH2−由来)からつぎの計算式で算出する。
(重合度)=((−90〜−96ppm付近のピーク面積)/2)/((−61ppm付近のピーク面積)/3)
(1)CF3(CH2CF2)nIの重合度(n)
19F−NMRより求める。具体的には、−61ppm付近のピーク面積(CF3−由来)と、−90〜−96ppm付近のピーク面積(−CF2−CH2−由来)からつぎの計算式で算出する。
(重合度)=((−90〜−96ppm付近のピーク面積)/2)/((−61ppm付近のピーク面積)/3)
[2]各種の測定(分析)方法および装置
(1)IR分析
(1-1)測定条件
KBr法。1〜5mgのVdF重合体粉末を100〜500mgのKBr粉末に混合し、加圧してペレット化した後、測定装置にペレットを固定し、25℃にて測定する。
(1-2)測定装置
PERKIN ELMER社製のFT−IR spectrometer 1760X
(2)1H−NMRおよび19F−NMR分析
(2-1)測定条件
VdF重合体粉末10〜20mgをd6−アセトン中に溶解し、得られたサンプルをプローブにセットして測定する。
(2-2)測定装置
Bruker社製のAC−300P
(1)IR分析
(1-1)測定条件
KBr法。1〜5mgのVdF重合体粉末を100〜500mgのKBr粉末に混合し、加圧してペレット化した後、測定装置にペレットを固定し、25℃にて測定する。
(1-2)測定装置
PERKIN ELMER社製のFT−IR spectrometer 1760X
(2)1H−NMRおよび19F−NMR分析
(2-1)測定条件
VdF重合体粉末10〜20mgをd6−アセトン中に溶解し、得られたサンプルをプローブにセットして測定する。
(2-2)測定装置
Bruker社製のAC−300P
(3)元素分析
(3-1)測定条件
3mgの試料を装置にセットして測定を行なう。
(3-2)測定装置
CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業製)
(3-1)測定条件
3mgの試料を装置にセットして測定を行なう。
(3-2)測定装置
CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業製)
(4)質量分析
(4-1)測定条件
VdF単独重合体の50重量%アセトン溶液を0.2μlの試料を装置に導入して測定を行なう。
(4-2)測定装置
PERKIN ELMER社製のTurbo Mass(商標)
(4-1)測定条件
VdF単独重合体の50重量%アセトン溶液を0.2μlの試料を装置に導入して測定を行なう。
(4-2)測定装置
PERKIN ELMER社製のTurbo Mass(商標)
(5)単結晶X線構造解析
(5-1)測定条件
0.5mm×0.2mm×0.01mmの結晶を接着剤によりグラスファイバー先端に取り付けた後、測定を行なう。位相決定法には直接法(SHELXS−97)を用いる。
(5-2)測定装置
理学電気(株)製のX線発生装置(RU−H2R、ゴニオメータ:AFC−7R)を用いる。
(5-1)測定条件
0.5mm×0.2mm×0.01mmの結晶を接着剤によりグラスファイバー先端に取り付けた後、測定を行なう。位相決定法には直接法(SHELXS−97)を用いる。
(5-2)測定装置
理学電気(株)製のX線発生装置(RU−H2R、ゴニオメータ:AFC−7R)を用いる。
(6)偏光顕微鏡測定
(6-1)測定条件
クロスニコル条件下、1mm×1mm×0.01mmの結晶を試料台の上に固定し、光の透過について観察する。
(6-2)測定装置
OPTIPHOT−POL(日本光学工業製)
(6-3)評価
結晶のような周期構造をもつ試料であれば、複屈折が生ずるため、光の透過が観測される。
(6-1)測定条件
クロスニコル条件下、1mm×1mm×0.01mmの結晶を試料台の上に固定し、光の透過について観察する。
(6-2)測定装置
OPTIPHOT−POL(日本光学工業製)
(6-3)評価
結晶のような周期構造をもつ試料であれば、複屈折が生ずるため、光の透過が観測される。
(7)強誘電性の確認(D−Eヒステリシス曲線)
ある材料が強誘電性である場合、その材料のD−Eヒステリシス曲線は矩形状を示す。そこで、本発明においては、つぎの条件で電流電圧特性を調べ、D−Eヒステリシス曲線を描き、強誘電性の有無を判断する。
(7-1)測定条件
周波数15mHz、振幅120Vの三角波電圧をVdF単結晶の両側に形成したアルミニウム電極に加える。
(7-2)測定装置
アジレント社製の誘電薄膜電気特性評価装置
ある材料が強誘電性である場合、その材料のD−Eヒステリシス曲線は矩形状を示す。そこで、本発明においては、つぎの条件で電流電圧特性を調べ、D−Eヒステリシス曲線を描き、強誘電性の有無を判断する。
(7-1)測定条件
周波数15mHz、振幅120Vの三角波電圧をVdF単結晶の両側に形成したアルミニウム電極に加える。
(7-2)測定装置
アジレント社製の誘電薄膜電気特性評価装置
実施例1
(1-1)CF3(CH2CF2)4Iの合成
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた3000ml容のステンレススチール製オートクレーブに、HCFC−225を500g入れ、氷溶で冷却しながら、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネイト(50重量%メタノール溶液)1.56gを加え、系内をチッ素ガスで充分置換した。系内を減圧にした後、バルブからCF3Iを200g仕込み、系を45℃まで昇温の後、VdFを系内圧が0.8MPaGになるまで仕込み、系内圧0.8MPaG、系内温度を45℃に維持しながらVdFを連続供給し、3.5時間反応を行なった。
(1-1)CF3(CH2CF2)4Iの合成
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた3000ml容のステンレススチール製オートクレーブに、HCFC−225を500g入れ、氷溶で冷却しながら、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネイト(50重量%メタノール溶液)1.56gを加え、系内をチッ素ガスで充分置換した。系内を減圧にした後、バルブからCF3Iを200g仕込み、系を45℃まで昇温の後、VdFを系内圧が0.8MPaGになるまで仕込み、系内圧0.8MPaG、系内温度を45℃に維持しながらVdFを連続供給し、3.5時間反応を行なった。
反応終了後、系内温度を25℃まで冷却し、未反応物(VdFとCF3I)を放出した後、析出した反応固形物を濾過し、濾液を減圧蒸留(5mmHg、83℃)してVdF単独重合体原末(液状。以下、「VdF単独重合体原末1」という)20gを分離取得した。
このVdF単独重合体原末1を19F−NMRにより分析し、VdFの重合度(n)を求めたところ、重合度(n)は4であった。
19F−NMR:−38.3ppm(2F)、−60.7ppm(3F)、−91.1〜−93.6ppm(4F)
このVdF単独重合体原末1についてIR分析を行なったところ、I型結晶構造に特徴的なピークのみが観測された(図6参照)。
19F−NMR:−38.3ppm(2F)、−60.7ppm(3F)、−91.1〜−93.6ppm(4F)
このVdF単独重合体原末1についてIR分析を行なったところ、I型結晶構造に特徴的なピークのみが観測された(図6参照)。
(1-2)CF3(CH2CF2)4(CF2CH2)4CF3の合成
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下ロートを備えた50ml容の四つ口フラスコに、上記(1−1)で製造したVdF単独重合体原末1(CF3(CH2CF2)4I)3g、亜鉛粉末0.52g、無水酢酸2ml、ジクロロメタン4mlを投入し、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら、系内をチッ素ガスで充分置換した後、系内を60℃に加熱し、6時間反応を行なった。
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下ロートを備えた50ml容の四つ口フラスコに、上記(1−1)で製造したVdF単独重合体原末1(CF3(CH2CF2)4I)3g、亜鉛粉末0.52g、無水酢酸2ml、ジクロロメタン4mlを投入し、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら、系内をチッ素ガスで充分置換した後、系内を60℃に加熱し、6時間反応を行なった。
反応終了後、1N−HClと酢酸エチルを加えて分液抽出した。酢酸エチル層を取り出し、減圧下に酢酸エチルを蒸発させて濃縮し、ついでn−ヘキサン中で再沈殿させることにより固形物を分離した。この固形物をデシケータ内で恒量になるまで真空乾燥してVdF単独重合体原末(液状。以下、「VdF単独重合体原末2」という)2.5gを得た。
このVdF単独重合体原末2についてIR分析を行なったところ、I型結晶構造に特徴的なピークのみが観測された(図7参照)。
このVdF単独重合体原末2を1H−NMR、19F−NMR、元素分析および質量分析に供して分析したところ、CF3(CH2CF2)4(CF2CH2)4CF3であった。
1H−NMR:3.26〜3.12ppm(4H)、3.10〜2.82ppm(12H)
19F−NMR:−60.9ppm(6F)、−91.5ppm(8F)、−93.9ppm(4F)、−113.8ppm(4F)
元素分析:計算値(%)C:33.25、F:64.27、H:2.4
実測値(%)C:33.27、F:63.8、H:2.47
質量分析(m/z):685([M+Cl]−)(C10F22H16=650で計算)
1H−NMR:3.26〜3.12ppm(4H)、3.10〜2.82ppm(12H)
19F−NMR:−60.9ppm(6F)、−91.5ppm(8F)、−93.9ppm(4F)、−113.8ppm(4F)
元素分析:計算値(%)C:33.25、F:64.27、H:2.4
実測値(%)C:33.27、F:63.8、H:2.47
質量分析(m/z):685([M+Cl]−)(C10F22H16=650で計算)
(1-3)単結晶の製造
上記(1−2)で合成したI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体原末2(CF3(CH2CF2)4(CF2CH2)4CF3)の0.5gをアセトン/n−ヘキサン(50/50重量%)混合溶媒に濃度10重量%まで溶解させ、室温(25℃)にて放置して再結晶したところ、ウロコ状の薄片状物が生成した(収量0.4g)。
上記(1−2)で合成したI型結晶構造のみから実質的になるVdF単独重合体原末2(CF3(CH2CF2)4(CF2CH2)4CF3)の0.5gをアセトン/n−ヘキサン(50/50重量%)混合溶媒に濃度10重量%まで溶解させ、室温(25℃)にて放置して再結晶したところ、ウロコ状の薄片状物が生成した(収量0.4g)。
この薄片状物についてIR分析を行なったところ、I型結晶構造に特徴的なピークのみが観測された(図8参照)。また偏光顕微鏡を用いてクロスニコル条件下で観察したところ、単結晶の特有の複屈折が観測された。さらに単結晶X線構造解析を行なったところ、単結晶(三斜晶系)であり、この単結晶はI型結晶構造のみからなることを確認した。
(単結晶X線構造解析)
空間群:P1−;格子定数(オングストローム):a=4.951、b=5.581、c=22.208;α=84.22、β=87.45、γ=64.5;R因子:R(F)=0.059、WR(F2)=0.200
空間群:P1−;格子定数(オングストローム):a=4.951、b=5.581、c=22.208;α=84.22、β=87.45、γ=64.5;R因子:R(F)=0.059、WR(F2)=0.200
Claims (5)
- (i)フッ化ビニリデンをラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル重合することにより、I型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体原末を製造する工程、および
(ii)前記I型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体原末から単一分子量のフッ化ビニリデン単独重合体を分離し、結晶化する工程
を含むI型結晶構造のみから実質的になるフッ化ビニリデン単独重合体単結晶の製造法。 - 前記I型結晶構造を単独または主成分とするフッ化ビニリデン単独重合体原末が、IR分析法により算出されるフッ化ビニリデン単独重合体原末中のI型、II型およびIII型結晶構造を有するそれぞれのフッ化ビニリデン単独重合体の存在比率に着目したとき、I型結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体の存在比率が、(数式1):
100≧I型/(I型+II型)>50重量% (数式1)
および(数式2):
100≧I型/(I型+III型)>50重量% (数式2)
のいずれの関係をも満たすものである請求項1記載の製造法。 - I型結晶構造を有するフッ化ビニリデン単独重合体の存在比率が(数式3):
100≧I型/(I型+II型)>70重量% (数式3)
および(数式4):
100≧I型/(I型+III型)>70重量% (数式4)
のいずれの関係をも満たすものである請求項2記載の製造法。 - 式(1):
Rf−(CH2CF2)m1(R1)n1−X1 (1)
(式中、X1はハロゲン原子;R1は炭素数1〜10の2価のアルキレン基または含フッ素アルキレン基(ただしCH2CF2またはCF2CH2は除く);Rfは炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基;m1は4〜12の整数;n1は0または1)で示される重合体の結晶であり、該結晶が単一分子量の重合体のみで実質的に構成されているI型結晶構造を有するフッ化ビニリデン単結晶。
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