明 細 書
末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマーおよびその製造法 技術分野
[0001] 本発明は、末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマーおよびその製造法に関す る。さらに詳しくは、フッ化ビニリデンおよびテトラフルォロエチレンをオリゴマー付加さ せた末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマーおよびその製造法に関する。 背景技術
[0002] パーフルォロアルキルアイオダイドを出発原料とし、これにフッ化ビニリデンをテロメ リゼーシヨンする反応が、金属あるいは金属錯体を触媒に用いて行われる方法が知 られている。また、高温、高圧あるいはこれら両方の条件下でラジカル発生剤の存在 下で、このテロメリゼーシヨンを行う方法も知られている。このような高温、高圧下で反 応を行うには、多量のエネルギーが必要となる。また、反応時に発生するフッ酸等に よる設備の腐食が激しくなり、設備の更新頻度が多くなる。一方、腐食に耐え得る材 質を用いた場合には、材料が高価なため、設備が高価になるのを避けることができな レ、。
特許文献 1 :特開昭 60— 106533号公報
特許文献 2:特開昭 60— 104023号公報
非特許文献 1 :J. Fluorine Chem. 70卷 215頁 (1995)
非特許文献 2 : J. Fluorine Chem. 102卷 253頁 (2000)
[0003] ここで得られるテロマー末端パーフルォロアルキル基の炭素数が 8前後の化合物は 生体蓄積性が高ぐ環境に問題がみられるとの報告がなされており、今後はその製 造や使用が困難になることが懸念される。ただし、パーフルォロアルキル基の炭素数 力 以下の化合物にあっては、生体蓄積性が低いとレ、われてレ、る。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] 本発明の目的は、生体蓄積性が低いといわれている炭素数力 以下のパーフルォ 口アルキル基を有する化合物であって、フッ化ビニリデンおよびテトラフルォロェチレ
ンをオリゴマー付加させた末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマーおよびその製 造法を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0005] 本発明によって、一般式
C F (CH CF ) (CF CF ) I 〔I〕
n 2n+l 2 2 s+p 2 2 t+r
(ここで、 nは 1〜6の整数であり、 s+pは 1〜4の整数であって、フッ化ビニリデン骨格の 数であり、 t+rは 1〜6の整数であって、テトラフルォロエチレン骨格の数であり、 C F n 211+1 基の隣接基は CH CF基である)で表わされる末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリ
2 2
ゴマーが提供される。ここで、 s+p、 t+rは、いずれも一般に種々の値を有する混合物 であり得る。
[0006] 力かる末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマーは、
一般式
C F (CH CF ) (CF CF ) I 〔II〕
n 2n+l 2 2 s+p 2 2 t
(ここで、 nは 1〜6の整数であり、 s+pは 1〜4の整数であって、フッ化ビニリデン骨格の 数であり、 tは 0〜3の整数であって、原料中のテトラフルォロエチレン骨格の数である) で表わされる末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンを、過酸化物開始剤の存在下でテト ラフルォロエチレンと反応させ、一般式
C F (CH CF ) (CF CF ) I 〔I〕
n 2n+l 2 2 s+p 2 2 t+r
(ここで、 n、 s+p、 tは上記定義と同じであり、 rは 1〜5であって、反応により付加したテト ラフルォロエチレンの骨格の数であり、ただ U+rは 1〜6の整数である)で表わされる 末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマーとして製造される。化合物〔II〕としては、 種々の n値、 s+p値、 t値を有する化合物の混合物を使用することもできる。
発明の効果
[0007] 本発明に係る末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマーは、パーフルォロアルキ ル基が生体蓄積性の低い炭素数 6以下で構成されているば力りではなぐ分子中に フッ化ビニリデン由来の CH CF基が存在するので、それが容易に脱 HFィヒして二重
2 2
結合を形成し、それがオゾン分解を受けて分解し易いため環境を阻害することが少 ない。
[0008] また、それの用途面からみると、その末端ヨウ素基を末端- OH基に変換させ、さらに この末端- OH基を (メタ)アクリル酸と反応させて末端 (メタ)アクリル酸エステルを形成さ せることができ、これらは界面活性剤、撥水撥油剤、表面改質剤等を形成し得るので 、末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマーは、これら誘導体化合物の合成原料 として有効に用いられる。
発明を実施するための最良の形態
[0009] 末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマー〔I〕の合成原料となる末端ヨウ素化ポリ フルォロアルカン〔π〕は、一般式
C F (CH CF ) I 〔III〕
n 2n+l 2 2 s
n: l〜6の整数
s: 0〜3の整数であって、原料化合物中のフッ化ビニリデ ン骨格の数である
で表わされるパーフルォロアルキル基含有アイオダイド化合物を、過酸化物開始剤 の存在下でフッ化ビニリデンと反応させて得られる、一般式
C F (CH CF ) I 〔IV〕
n 2n+l 2 2 s+p
s+p:フッ化ビニリデン骨格の数 1〜4
ただし、 pは 1〜3であって、反応により付加させたフ ッ化ビ二リデン骨格の数である
で表わされる末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンを出発原料とし、これに過酸化物開 始剤の存在下でテトラフルォロエチレンを反応させることにより得られる。なお、化合 物〔III〕または〔IV〕としては、種々の n値、 s値、 s+p値を有する化合物の混合物を使用 することちでさる。
[0010] これらのフッ化ビニリデンおよびテトラフルォロエチレンの付加反応に用いられる過 酸化物開始剤としては、例えばジ第 3ブチルパーオキサイド、(第 3プチルシクロへキ シノレ)パーォキシジカーボネート、ジセチルパーォキシジカーボネート、ジ -n-プロピ ノレパーォキシジカーボネート、ジイソプロピルパーォキシジカーボネート、ジ第 2ブチ ルパーォキシジカーボネート等の存在下で行われる。これらの有機過酸化物開始剤 は、反応の進行性および制御性の点から、前記各末端ヨウ素化化合物〔III〕または〔I
V〕に対して約 0·05〜0·5モル0 /0、好ましくは約 0· 1〜0.25モル0 /0の割合で用いられる。
[0011] 具体的なパーフルォロアルキル基含有アイオダイド化合物〔III〕としては、次のよう な化合物が例示される。
CF I
CF CF I
CF (CF ) I
CF (CF ) I
CF (CF ) I
CF (CF ) I
CF (CH CF )1
C F (CH CF )1
C F (CH CF ) I
C F (CH CF )1
C F (CH CF ) I
C F (CH CF )1
C F (CH CF ) I
[0012] フッ化ビニリデン付加反応生成物〔IV〕は、種々の s+p値を有するオリゴマーの混合 物であり、特定の s+p値を有するフッ化ビニリデン付加反応生成物は混合物を蒸留す ることにより単離すること力 Sできる。なお、所定の s+p値を有しないオリゴマーは、それ を単離してまたは混合物のまま、再度フッ化ビニリデンとのオリゴマー数増加反応に 用いることができる。
[0013] 本発明の目的生成物である末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマー〔I〕は、そ の合成原料となる末端ヨウ素化ポリフルォロアルカン〔II〕に、過酸化物開始剤の存在 下でテトラフルォロエチレンを反応させることにより得られる。この反応に用いられる過 酸化物開始剤としては、上記の如き有機過酸化物開始剤が同様の割合で用レ、られ る。
[0014] フッ化ビニリデンおよびテトラフルォロエチレンの付加反応の反応温度は、用いられ る開始剤の分解温度にも依存するが、低温で分解する過酸化物開始剤を用いること
により、低圧条件下でも 80°C以下での反応が可能である。低温で反応を行えるという ことは、エネルギーの使用量を減少させることが可能となるば力りではなぐ設備内で のフッ酸等による腐食を抑制し、設備の更新頻度を減らすことができる。さらに、より 廉価な材料の使用が可能となることから、更新頻度の減少と併せて、設備投資費用 を廉価に抑えることができる。
[0015] フッ化ビニリデンおよびテトラフルォロエチレンの付加反応は、パーフルォロアルキ ル基含有アイオダイド化合物〔III〕または末端ヨウ素化ポリフルォロアルカン〔II〕 (t=0の ときは〔IV〕となる)をオートクレーブ内に入れ、その内温を昇温させて約 10〜60°C、例 えば 50°Cとしたら、そこにパーフルォロアルキル基含有アイオダイド化合物〔III〕また は末端ヨウ素化ポリフルォロアルカン〔II〕に溶解した過酸化物系開始剤を加え、内温 が例えば 55°Cになったら、フッ化ビニリデンまたはテトラフルォロエチレンを約 0.1〜10 MPaの圧力を保ちながら分添し、所望量を分添した後、例えば約 55〜80°Cの間の温 度で約 1時間程度エージングすることにより行われる。その添カ卩量によって、反応によ つて付加したフッ化ビニリデンまたはテトラフルォロエチレン骨格の数 Pまたは rが左右 される。ただし、一般には種々の s+p値または t+r値の混合物として形成される。
[0016] 最終生成物である、具体的な末端ヨウ素化ポリフルォロアルカンオリゴマー〔I〕とし ては、次のような化合物が例示される。
C F (CH CF )(CF CF )1
C F (CH CF )(CF CF ) I
C F (CH CF ) (CF CF )1
C F (CH CF ) (CF CF ) I
C F (CH CF )(CF CF )1
C F (CH CF ) (CF CF )1
C F (CH CF )(CF CF ) I
C F (CH CF ) (CF CF ) I
[0017] テトラフルォロエチレン付加反応生成物〔I〕は、種々の t+r値を有するオリゴマーの 混合物であり、特定の t+r値を有するオリゴマーは混合物を蒸留することにより単離す ること力 Sできる。なお、所定の t+r値を有しないオリゴマーは、それを単離してまたは混
合物のまま、再度テトラフルォロエチレンとのオリゴマー数増加反応に用いることがで きる。
実施例
[0018] 次に、実施例について本発明を説明する。
[0019] 実施例 1
パーフルォロブチルアイオダイド C F 1(純度 82.9%)500gを容量 1200mlのオートタレ ーブ中に入れ、その内温を昇温させて 50°Cになったら、 C F I 60gに溶解したジ (4-第
3プチルシクロへキシル)パーォキシジカーボネート開始剤 (ィヒ薬ァクゾ製品パーカドッ タス 16)0.75§(0.13モル%)を加え、内温が 55°Cになったら、フッ化ビニリデンを 0·5〜0· 7MPaの圧力を保ちながら分添し、分添量 214gを分添した後、 55〜65°Cで 1時間エー ジングして反応を終了させた。反応終了後冷却して、 583gの生成物を回収した。
[0020] また、得られた生成物について、塔頂温度 58°C、圧力 7.4kPa(56mmHg)の条件下で 蒸留により分離を行い、 CF (CF ) (CH CF )1 (純度 99.5%)203gを得た。これを、実施 例 2および 3の反応原料として用いた。なお、反応生成物 CF (CF ) (CH CF ) Iについ ては、塔頂温度 74°C、圧力 2.6kPa(20mmHg)の条件下で蒸留による分離が行われた [0021] 実施例 2
CF (CF ) (CH CF )1 (純度 99.5%)600gを容量 1200mlのオートクレーブ中に入れ、そ の内温を昇温させて 50°Cになったら、 CF (CF ) (CH CF )1 300gに溶解した過酸化物 系開始剤 (パー力ドックス 16)1.358(0.15モル%)をカ卩え、内温が 55°Cになったら、テトラ フルォロエチレンを 0.2〜0.3MPaの圧力を保ちながら分添し、分添量 150gを分添した 後、 55〜74°Cで 1時間エージングして反応を終了させた。反応終了後冷却して、 1010 gの生成物を回収した。
[0022] また、得られた生成物について、塔頂温度 71°C、圧力 2.6kPa(20mmHg)の条件下で 蒸留により分離を行い、 CF (CF ) (CH CF )(CF CF )1 (純度 99.8%)347gを得た。これ を、実施例 3の反応原料として用いた。
[0023] 実施例 3
CF (CF ) (CH CF )1 (純度 99.5%)
CF (CF ) (CH CF )(CF CF )1 (純度 99.8%)
との混合物 (重量比 35.4 : 64.0)830gを容量 1200mlのオートクレーブ中に入れ、その内 温を昇温して 50°Cになったら、このような混合組成の混合物 300gに溶解した過酸化 物系開始剤 (パー力ドックス 16)1.688(0.18モル%)を加え、内温が 55°Cになったら、テ トラフルォロエチレンを 0.2〜0.3MPaに圧力を保ちながら分添し、分添量 150gを分添 した後、 55〜78°Cで 1時間エージングして反応を終了させた。反応終了後冷却して、 1257gの混合生成物を回収した。
[0024] また、得られた生成物について、蒸留により分離を行レ、、 CF (CF ) (CH CF )1 (純度
99.7%)184g、 CF (CF ) (CH CF )(CF CF )1 (純度 99.4%)575gおよび CF (CF ) (CH
CF )(CF CF ) I (純度 99.3%)302gを得た。なお、蒸留による分離は、 CF (CF ) (CH C
F )1および CF (CF ) (CH CF )(CF CF )1については前記各蒸留条件下で、また CF (
CF ) (CH CF )(CF CF ) Iについては塔頂温度 91。C、圧力 0.8kPa(6.0mmHg)の蒸留 条件下で行われた。
[0025] 以上の各実施例で得られた生成物のガス'クロマトグラフィー (GC)による分析結果 は、次の表 1に種々の n値、 s(+p)値、 t(+r)値を有する、一般式
C F (CH CF ) (CF CF ) I
で表わされる化合物の GC%として示される。
実施例: 実施例 2 実施例 3
s(+p) t(+r) 原料 廳 生 j¾物 原 1 生成
4 0 0 82.9 5.6
4 0 61.4 99.5 44. 35.4 14.8 4 2 0 20.2
4 3 0 2.4
4 4 0 0.2
4 1 37.1 64.0 46.2 4 2 12.0 23.9 4 3 3.5 9.3 4 4 0.8 3.0 4 5 0.2 0.8 4 6 0.2 し 6F13H 16. 注) C F H(CF CF CF CF CF CF H)は、原料 C F Iに含まれる不純物であり、そ
6 13 3 2 2 2 2 2 4 9
の沸点が C F Iと近く分離が困難な物質であるが、反応には関与しないため
4 9
分離せずに次の反応に用いている
[0026] 実施例 4
パーフルォロブチルアイオダイド C F 1(純度 82.9%)1000gおよびジ (4-第 3ブチルシ
4 9
クロへキシル)パーォキシジカーボネート開始剤 (パー力ドックス 16)1.5g(0.15モル0 /0)を 容量 1200mlのオートクレーブ中に入れ、その内温を昇温させて 55°Cになったら、フッ 化ビニリデンを 0.4〜0.8MPaの圧力を保ちながら分添し、分添量 210gを分添した後、 5 5〜67°Cで 1時間エージングして反応を終了させた。反応終了後冷却して、 1097gの 生成物を回収した。回収物の組成は、表 2に示される。
[0027] 実施例 5
実施例 4の回収物の蒸留分とパーフルォロブチルアイオダイド C F 1(純度 82.9%)と
4 9
の混合物 (その組成は表 2参照) 500gおよびジ (4-第 3ブチルシクロへキシル)パーォキ シジカーボネート開始剤 (パー力ドックス 16)0.6g(0.13モル0 /0)を容量 1200mlのオートク
レーブ中に入れ、その内温を昇温させて 55°Cになったら、フッ化ビニリデンを 0.4〜0. 8MPaの圧力を保ちながら分添し、分添量 203gを分添した後、 55〜65°Cで 1時間エー ジングして反応を終了させた。反応終了後冷却して、 606gの生成物を回収した。回 収物の組成は、表 2に示される。
[0028] 実施例 6
パーフルォロェチルアイオダイド C F 1(純度 97.8%)8000gおよびジ (4-第 3ブチルシ
2 5
クロへキシル)パーォキシジカーボネート開始剤 (パー力ドックス 16)30g(0.24モル0 /0)を 容量 10Lのオートクレーブ中に入れ、その内温を昇温させて 55°Cになったら、フツイ匕 ビニリデンを 0.8〜1.0MPaの圧力を保ちながら分添し、分添量 764gを分添した後、 55 〜75°Cで 1時間エージングして反応を終了させた。反応終了後冷却して、 7845gの生 成物を回収した。回収物の組成は、表 2に示される。
[0029] 実施例 7
パーフルォロアルキアィオダイド (C F I、 C F I、 C F Iの混合物であり、その組成は
2 5 4 9 6 13
表 2参照) 424kgおよびジ (4-第 3ブチルシクロへキシル)パーォキシジカーボネート開 始剤 (パー力ドックス 16)0.6kg(0.14モル0 /0)を容量 300Lのオートクレーブ中に入れ、そ の内温を昇温させて 50°Cになったら、フッ化ビニリデンを 0.2〜0.5MPaの圧力を保ち ながら分添し、分添量 78kgを分添した後、 50〜60°Cで 1時間エージングして反応を終 了させた。反応終了後冷却して、 477kgの生成物を回収した。回収物の組成は、表 2 に示される。
[0030] 以上の実施例 4〜7で得られた生成物の GCによる分析結果は、次の表に種々の n 値、 s(+p)値を有する、一般式
C F (CH CF ) I
n 2n+l 2 2 s(+p)
で表わされる化合物の GC%として示される。
表 2
実施例 4 実施例 5 実施例 6 実施例 7(+p) 厚料 回収物 原料 回収物 原料 回収物 職 回収物
0 99.0 77.3 3.6 1.3
0 82.9 6.1 77.1 0.8 78.2 10.5
0 8.4 1.0
1 17.1 2.0
1 60.9 5.6 40.3 61.5
1 5.4
2 3.8 0.5
2 19.4 35.2 9.6
2 0.5
3 0.2
3 2.3 10.0 0.5
3 0.2