JP2004269413A - フルオロアルキルアイオダイドテロマー混合物および含フッ素(メタ)アクリル酸エステル混合物の製造方法 - Google Patents
フルオロアルキルアイオダイドテロマー混合物および含フッ素(メタ)アクリル酸エステル混合物の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるテロマーの混合物を得る。
【解決手段】式RfI(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示す)で示されるフルオロアルキルアイオダイドと、テトラフルオロエチレンとを反応させることにより、式Rf(CF2CF2)nIで示され、重合度nが1以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む反応混合物を得、この混合物を蒸留工程に付して、重合度nが(k−1)以下であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含むフラクションと、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含むフラクションとに分離し、後者のフラクションを製品として得る。
【選択図】 なし
【解決手段】式RfI(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示す)で示されるフルオロアルキルアイオダイドと、テトラフルオロエチレンとを反応させることにより、式Rf(CF2CF2)nIで示され、重合度nが1以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む反応混合物を得、この混合物を蒸留工程に付して、重合度nが(k−1)以下であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含むフラクションと、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含むフラクションとに分離し、後者のフラクションを製品として得る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物の製造方法、およびその製造方法により得たフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を用いる含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テロメリゼーションとは、適当な触媒の存在下で熱または光を作用させて、テロゲン(AB)にタクソゲンを(X)を付加し、式A(X)mB(mは一般に1〜20)で表される重合度の低いポリマー、即ちテロマーを得る反応をいう。公知のテロメリゼーションとして、テロゲンとしてフルオロアルキルアイオダイドを、タクソゲンとしてテトラフルオロエチレンを使用し、テロゲンよりも分子量の高いフルオロアルキルアイオダイドをテロマーとして得る反応がある。この反応は、テロゲンにテトラフルオロエチレンを付加した、テトラフルオロエチレン付加物を得る反応とも見なせる。この反応を利用して、工業的に有用なフルオロアルキルアイオダイドを得る種々の方法が、予てより提案されてきた。以下に、それらのうちの幾つかを列挙する。なお、以下の説明を含む本明細書においては、生成物のフルオロアルキルアイオダイドと、出発物質のフルオロアルキルアイオダイドとを区別するために、前者をフルオロアルキルアイオダイドテロマーと称することに留意されたい。
【0003】
米国特許第3,226,449号(特許文献1)は、有機過酸化物を開始剤として用いる、パーフルオロアルキルアイオダイドにテトラフルオロエチレンを付加するテロメリゼーションによって、パーフルオロアルキルアイオダイドテロマーを製造する方法を開示している。テロメリゼーションは1つの反応器において一段階で行われている。
【0004】
英国特許第1,256,818号(特許文献2)、特公昭60−22687号(特許文献3)、米国特許第3,234,294号(特許文献4)、米国特許第3,404,189号(特許文献5)、および英国特許第1,189,576号(特許文献6)は、パーフルオロアルキルアイオダイドテロマーを製造する際に用いるテロメリゼーションの開始方法を開示している。
【0005】
特開平6−206908号(特許文献7)、特開平6−305995号(特許文献8)、および特公平7−59525号(特許文献9)は、ある用途においては、パーフルオロアルキルアイオダイドテロマーの炭素数(または分子量)を特定範囲にする必要があることを説明し、所望の炭素数を有するパーフルオロアルキルアイオダイドテロマーを、特定形状の反応器および特定の手順を使用する、重合度を制御したテロメリゼーションにより製造する方法を開示している。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,226,449号明細書
【特許文献2】英国特許第1,256,818号明細書
【特許文献3】特公昭60−22687号公報
【特許文献4】米国特許第3,234,294号明細書
【特許文献5】米国特許第3,404,189号明細書
【特許文献6】英国特許第1,189,576号明細書
【特許文献7】特開平6−206908号公報
【特許文献8】特開平6−305995号公報
【特許文献9】特公平7−59525号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、これまでに、テロマーを製造する種々の製造方法が提案され、その中には、重合度を制御して所望の炭素数のテロマーを得る方法も含まれる。また、特開平6−206908号公報(特許文献7)等に記載の方法は、重合度を制御するために、特定の反応器および操作条件を採用して、テロメリゼーションを実施することを要する。このことは、テロマーを工業的に生産するに際し、生産効率の低下および生産コストの上昇を招き得る。このように、従来のテロマーの製造方法はいずれも、所望の炭素数を有するテロマー、特に一定数以上の炭素数を有するテロマーの混合物を、工業的な生産にも適した簡易な操作で得る方法ではない。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、簡易な操作で、所定値k以上の重合度を有するフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を製造する方法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、アルコキシル基の炭素数が所定値以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、第1の要旨において、式(I):
【化6】
Rf(CF2CF2)nI (I)
(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示し、nは重合度を示す整数である)
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物をテロメリゼーションにより製造する方法であって、
(1)式RfI(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示す)で示されるフルオロアルキルアイオダイドと、テトラフルオロエチレンとを反応させることにより、式(I)で示され、重合度nが1以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む反応混合物を得る工程、ならびに
(2)工程(1)で得た反応混合物を、
式(I)で示され、重合度nが(k−1)以下であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物、および式RfIで示されるフルオロアルキルアイオダイドを含む中間物フラクション、ならびに
式(I)で示され、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む生成物フラクション
に、蒸留により分離する工程
を含む製造方法を提供する。
【0010】
この製造方法により製造されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーは、上記式(I)で示される化合物である。式(I)において、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示す。Rfは、テロメリゼーションの出発物質であるフルオロアルキルアイオダイドのフルオロアルキル基に相当する。
【0011】
フルオロアルキルアイオダイドテロマー(以下、単に「テロマー」とも呼ぶ)の混合物とは、重合度nが異なる複数のテロマーを含む混合物を意味する。
【0012】
本発明の製造方法により製造すべき対象物は、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマー(以下、単に「テロマー」とも呼ぶ)の混合物である。この混合物は、重合度nがそれぞれk、k+1、k+2、...であるテロマーの混合物である。尤も、この混合物は、テロメリゼーションの条件および反応混合物の分離条件等によって、nがkより小さいテロマー、および未反応のフルオロアルキルアイオダイド等を不可避的に含むことがある。これらの不可避的に含まれる化合物を含む混合物もまた、本発明の製造方法により製造すべき対象物に含まれることに留意されたい。
【0013】
本明細書においては、式(I)で示され、重合度nがp以上であるテロマーの混合物を、「≧」を用いて、≧Rf(CF2CF2)pIと示す場合がある。また、式(I)で示され、重合度nがq以下であるテロマーの混合物を、「≦」を用いて、≦Rf(CF2CF2)qIと示す場合がある。
【0014】
本発明の製造方法において、kは3以上の整数から選択される1の整数であり、テロマーの用途等に応じて所望のように選択される。nがk以上のテロマーの混合物において、重合度が最大であるテロマーの重合度nmaxは、テロメリゼーションの条件によって異なる。一般にnmaxは20程度である。本発明の製造方法により得られる混合物は、好ましくは、重合度nがkであるテロマーを最も多く含む。
【0015】
本発明のテロマーの混合物の製造方法は、テロメリゼーションにおいて常套的に採用されている手法で得たテロマーの混合物を、蒸留によって、重合度nが(k−1)以下であるテロマーの混合物を含む中間物フラクションと、重合度nがk以上であるテロマーの混合物を含む生成物フラクションとに分離することを特徴とする。それにより、重合度nが所定値(即ち、k)以上である、所望のテロマー混合物を得ることができる。即ち、本発明によれば、テロメリゼーションの後に、蒸留以外の特殊な操作を行わなくとも、所望のテロマー混合物を製造できる。
【0016】
本発明はまた、上記課題を解決するために、第2の要旨において、式(III):
【化7】
Rf(CF2CF2)nCH2CH2OCOCR1=CH2 (III)
(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示し、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは重合度を示す整数である)
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する方法であって、
(A)上記式(I)で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を、上記第1の要旨において提供される方法に従って得るテロメリゼーション工程、
(B)工程(A)で得たフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物にエチレンを付加させて、式(II):
【化8】
Rf(CF2CF2)nCH2CH2I (II)
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるエチレン付加物の混合物を得るエチレン付加工程、ならびに
(C)工程(B)で得たエチレン付加物の混合物を(メタ)アクリル酸化合物と反応させて、上記含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を得るエステル化工程
を含む製造方法を提供する。
【0017】
重合度nがk以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物とは、式(III)の基Rf(CF2CF2)nCH2CH2O−のnがそれぞれk、k+1、k+2、...である、複数の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物である。本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法においては、上述した製造方法に従ってテロマーの混合物を得、これにエチレンを付加させた後、(メタ)アクリル酸化合物と反応させる。したがって、生成物である、式(III)で示されるエステルの混合物において、混合物を構成する各エステルのnは3以上の整数のいずれか1つとなる。
【0018】
本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法は、重合度nが所定値k以上であるテロマーの混合物を生成する工程を含むことを特徴とする。この特徴により、アルコキシル基の炭素数が所定値以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を選択的に製造することが可能となる。
【0019】
上記含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法において、工程(A)と工程(B)とは、必ずしも連続して実施する必要はない。例えば、本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法は、上記の製造方法に従って得た「最終製品」としてのテロマーの混合物を原料として使用して、上記工程(B)を開始し、それから工程(B)で得た混合物を工程(C)に付す方法であってよい。即ち、上記式(III)で示され、重合度がk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物は、上記第1の要旨の製造方法で製造した、式(I)で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物にエチレンを付加させ、次いで(メタ)アクリル酸化合物と反応させることを含む製造方法によっても製造される。
【0020】
【発明の実施の形態】
第1の要旨に係る本発明のフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物の製造方法は、前述のとおり、≧Rf(CF2CF2)kI(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示し、kは重合度を示す3以上の整数のいずれか1つである)をテロメリゼーションにより製造する方法であって、
(1)フルオロアルキルアイオダイドRfIと、テトラフルオロエチレン(本明細書において「TFE」と略する場合がある)とを反応させることにより、≧Rf(CF2CF2)Iを含む反応混合物を得る工程、ならびに
(2)工程(1)で得た反応混合物を、
≦Rf(CF2CF2)k−1Iおよび未反応の出発原料を含む中間物フラクション、ならびに
≧Rf(CF2CF2)kIを含む生成物フラクション
に、蒸留により分離する工程
を含む製造方法である。
以下に、工程(1)および(2)について説明する。
【0021】
工程(1)は、テロメリゼーションを実施する工程である。テロメリゼーションは、式RfIで示されるフルオロアルキルアイオダイドと、TFEとを反応させることにより実施する。反応器は、テロメリゼーションのために常套的に採用されている任意の反応器であってよく、例えばオートクレーブであってよい。
【0022】
RfIにおいて、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つである。Rfは、好ましくは、炭素数が1〜8であるフルオロアルキル基のいずれか1つであり、より好ましくは、炭素数が1〜5であるフルオロアルキル基のいずれか1つである。また、Rfは、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0023】
フルオロアルキルアイオダイドRfIの例としては、トリフルオロメチルアイオダイド、ペンタフルオロエチルアイオダイド、パーフルオロイソプロピルアイオダイド、およびパーフルオロ−n−ブチルアイオダイドが挙げられる。これらのうち、ペンタフルオロエチルアイオダイド(C2F5I)が、TFEのテロメリゼーションに一般的に使用される。C2F5Iは、本発明の製造方法においても好ましく使用される。
【0024】
工程(1)において、テロメリゼーションは、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの製造において常套的に採用されている条件下で実施してよい。具体的には、反応温度を、30〜150℃とし、反応圧力を0.01〜2MPaとして、反応を進行させる。反応時間は、一般に、0.1〜10時間である。反応圧力は、圧入するTFEによって生じる圧力である。上記に示した具体的な圧力は、ゲージ圧である。以下の説明を含む本明細書において、圧力は特に断りのない限りゲージ圧で表される。
【0025】
テロメリゼーションは、触媒の存在下で実施してよい。触媒は、例えば、有機過酸化物、遷移金属、またはIF5・SbF5等である。触媒に適した有機過酸化物は、例えば、t−ブチルパーオキシピバレートのようなカルボン酸エステルパーオキサイド化合物、t−ブチル過炭酸イソプロピルのようなパーオキシモノカーボネート、およびビス−(4−アルキルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのようなパーオキシジカーボネート化合物である。触媒の量は、フルオロアルキルアイオダイド(RfI)1モルに対して、0.001〜0.1モル程度とする。
【0026】
反応器において、フルオロアルキルアイオダイド(RfI)とテトラフルオロエチレン(TFE)のモル比は、20:80〜99:1にすることが好ましい。RfI/TFEが大きいほど(即ち、TFEのモル比が小さいほど)、生成するテロマーの混合物において、一般に、nmaxはより小さくなり、また、混合物の平均重合度naveが小さくなる。したがって、最終的に得ようとするテロマーの混合物において、nmaxをより小さくするとともに、naveを小さくしたい場合には、RfI/TFEをより大きくすることが好ましい。例えば、RfIとしてC2F5Iを使用し、重合度nが3以上のテロマーの混合物を製造する場合には、RfI:TFE(モル比)を99:1〜97:3として本発明の製造方法を実施すれば、naveが3により近い(例えば、3.05〜3.4程度の)混合物を生成物として得ることができる。
【0027】
工程(1)においては、反応器に、RfIに加えて、式(I)で示され、重合度nが(k−1)以下である低重合度テロマーを、1種または複数種供給してよい。供給された低重合度テロマーは、反応器においてテトラフルオロエチレンと反応して、より重合度の高いテロマーに転化される。例えば、RfIとしてC2F5Iを使用し、重合度nが3以上のテロマーの混合物を製造する場合には、C4F9I(n=1)および/またはC6F13I(n=2)を反応器に供給してよい。この場合、(k−1)以下であるnは1および2であるから、反応器には、1種または2種のテロマーを供給できる。
【0028】
nが(k−1)以下であるテロマーは、例えば、反応混合物を後述の工程(2)において分離することにより得られたものであってよい。即ち、nが(k−1)以下であるテロマーを1種または複数種供給することは、反応混合物の一部を戻すことによって実施してよい。
【0029】
反応器に供給するnが(k−1)以下であるテロマーは、RfIとTFEのテロメリゼーションによって得たものである必要は必ずしもない。式(I)で示され、nが(k−1)以下である構造を有する化合物であれば、テロメリゼーション以外の方法によって得たものを反応器に供給してよい。そのような化合物は、厳密にはテロマーと呼べるものでない場合があるが、ここではそのような化合物も便宜上テロマーと呼ぶ。
【0030】
反応器において、TFEは反応器の気相部に仕込んでよい。その場合、テロメリゼーションは、気相と液相の界面にて進行する。あるいは、TFEは液相のRfIに気泡を生じるように仕込んでよい。
【0031】
次に工程(2)について説明する。工程(2)は、工程(1)で得た反応混合物を、重合度nが(k−1)以下であるテロマーの混合物および未反応の出発原料を含む中間物フラクションと、重合度nがk以上であるテロマーの混合物を含む生成物フラクションとに、蒸留により分離する工程である。尤も、各フラクションは、本発明によるテロマーの混合物の製造に悪影響を及ぼさない限りにおいて、上記の成分に加えて他の成分(例えば、他方のフラクションに含まれるべきテロマー)を含んでよい。そのような他の成分は、蒸留装置の性能および操作条件によっては、不可避的に含まれることがある。
【0032】
工程(2)において、蒸留は、化学工業において常套的に採用されている装置および方法により実施する。蒸留装置は、一般に、蒸留塔および凝縮器を含む。蒸留塔は、充填塔または段塔のいずれであってもよい。また、蒸留は、連続蒸留または回分蒸留のいずれであってもよい。本発明の製造方法において、工程(2)は、蒸留塔の塔頂から中間物フラクションを留出させて取り出し、蒸留塔の塔底から生成物フラクションを取り出す。留出させた中間物フラクションは凝縮器で凝縮し、凝縮した中間物フラクションの一部は蒸留塔に還流する。
【0033】
中間物フラクションは、式(I)で示され、重合度nが(k−1)以下である低重合度のフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物、および式RfIで示される未反応のフルオロアルキルアイオダイドを含む。「中間物フラクション」という用語は、このフラクションが、テロメリゼーションにより生成した、重合度がk未満である中間生成物とみなし得るテロマーを含むことを意味するために使用される。中間物フラクションは、未反応のTFEを気相および/または液相の形態で含む場合がある。中間物フラクションは、反応器に戻すことが製造効率の点から好ましい。反応器に戻した中間物フラクションに含まれるテロマーは、さらにテロメル化されて、より重合度の大きいテロマーを与える。
【0034】
中間物フラクションは、重合度nが(k−1)以下であるテロマー、RfI、およびTFEに加えて、他の成分、例えば重合度nが(k−1)よりも大きいテロマーを含んでよい。そのような他の成分は、上述のように蒸留装置の性能等に応じて、不可避的に中間物フラクションに含まれることがある。中間物フラクションに含まれる他の成分の量は、できるだけ少量(例えば0.1mol%以下)であることが好ましい。
【0035】
生成物フラクションは、式(I)で示され、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む。生成物フラクションは、目的とする製品として取り出される。生成物フラクションは、重合度nがk以上であるテロマーに加えて、他の成分、例えば重合度nが(k−1)以下であるテロマーを含んでよい。そのような他の成分は、上述のように蒸留装置の性能等に応じて、不可避的に生成物フラクションに含まれることがある。生成物フラクションに含まれる他の成分の量は、できるだけ少量(例えば0.1mol%以下)であることが好ましい。
【0036】
工程(2)は、上述のように、1段階で実施してよい。あるいは、工程(2)は、複数段階で実施してよい。その場合、工程(2)は、工程(1)で得た反応混合物を、
式(I)で示されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーおよび/またはRfIを含むフラクションであって、フラクションに含まれるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの最大重合度が(k−1)以下であり、且つその平均重合度がより小さい低重合度中間物フラクションと、
式(I)で示されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションであって、その平均重合度がより大きい高重合度中間物フラクション
とに、蒸留により分離することを1回または複数回実施した後で得られる高重合度中間物フラクションを、
式(I)で示され、重合度nが(k−1)であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを少なくとも含む最終中間物フラクション、および
式(I)で示され、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む生成物フラクション
に、蒸留により分離する工程となる。ここで、平均重合度の大小は、蒸留により分離される2つのフラクションとの間で比較されることに留意すべきである。
【0037】
このようにして実施する工程(2)においては、低重合度中間物フラクションと高重合度中間物フラクションとを得、得られた高重合度中間物フラクションを次いで蒸留して、低重合度中間物フラクションと高重合度中間物フラクションとに、更に分離するように、蒸留を繰り返す。したがって、蒸留を繰り返すにつれて、得られる高重合度中間物フラクションにおいてn≧kのテロマーの占める割合は次第に増加することとなる。
【0038】
繰り返し実施する蒸留は、低重合度中間物フラクションが、それに含まれるテロマーの最大重合度が(k−1)以下となるように、即ち、nがk以上であるテロマーを含まないように実施する必要がある。nがk以上であるテロマーが低重合度中間物フラクションに含まれると、これを反応器に戻した場合に、反応器においてn>kの重合度の大きいテロマーが生成されることがある。そのような大きな重合度のテロマーが生成されると、最終的に得られるテロマーの混合物において、n=kのテロマーの占める割合が小さくなり好ましくない。しかしながら、低重合度中間物フラクションには、蒸留装置の性能等に応じて不可避的にnがk以上であるテロマーが僅かに(例えば1mol%以下の量で)含まれることがある。そのような僅かな量で含まれるn≧kのテロマーは、平均重合度および最大重合度を求めるにあたり無視してよい。
【0039】
低重合度中間物フラクションは、n≧kのテロマーを含まない限りにおいて、1種類のテロマーから成るフラクションであってよく、あるいは、重合度の異なる2種以上のテロマーの混合物であってよく、あるいは1種類または2種類以上のテロマーとRfIとの混合物であってよい。また、最初に実施される蒸留は、低重合度中間物フラクションがRfIのみを実質的に含むように実施してよい。その場合、低重合度中間物フラクションにはテロマーが含まれず、平均重合度および最大重合度は、ともに0であるとみなす。最後に実施される蒸留において得られる低重合度中間物フラクションは、最後に得られる中間物であり、「最終中間物フラクション」と称される。この最終中間物フラクションは、nが(k−1)であるテロマーを少なくとも含み、さらにnが(k−1)よりも小さいテロマー、ならびに場合によりRfIおよびTFEを含む。
【0040】
高重合度中間物フラクションは、それに含まれるテロマーの平均分子量が、低重合度中間物フラクションのそれよりも大きい限りにおいて、低重合度中間物フラクションの主成分である重合度の低いテロマーおよび/またはRfIを含んでよい。但し、最後に実施する蒸留は、生成物フラクションが、そのような低重合度のテロマーおよびRfIを実質的に含まないように実施する必要があることに留意すべきである。
【0041】
例えば、RfがC2F5であり、重合度nが3以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を製造する場合、複数回の蒸留は、(i)第1回目の蒸留において、反応器からの反応混合物を、RfIを主成分として90mol%以上含み、さらにC4F9I(n=1)およびC6F13I(n=2)を僅かに含む低重合度中間物フラクションと、反応混合物に含まれるテロマーをほぼ全て含む高重合度中間物フラクションとに分離し、(ii)第2回目の蒸留において、第1回目の蒸留で得た高重合度中間物フラクションを、C4F9I(n=1)を主成分として90mol%以上含み、それ以外の成分としてC6F13I(n=2)および場合によりRfIを含む低重合度中間物フラクションと、n≧2以上であるテロマーの混合物を含む高重合度成分とに分離し、(iii)第3回目(最後)の蒸留において、第2回目の蒸留で得た高重合度中間物フラクションを、C6F13I(n=2)を主成分として90mol%以上含み、それ以外の成分としてC4F9I(n=1)および場合によりRfIを含む最終中間物フラクションと、≧C8F17I(n≧3)を含む生成物フラクションとに分離するように、実施することができる。これは一例であり、高重合度中間物フラクションに含まれるテロマーの平均分子量の増加幅が小さくなるように、4回またはそれ以上の回数で蒸留を繰り返してよい。あるいは、2回の蒸留で生成物フラクションが得られるようにしてもよい。
【0042】
複数段階の蒸留は1つの蒸留装置で実施してよい。その場合、蒸留は回分蒸留であり、低重合度中間物フラクションを、蒸留塔の塔頂から取り出し、高重合度中間物フラクションを釜残液として得る。次いで、高重合度中間物フラクションを蒸留して、さらに低重合度中間物フラクションと高重合度中間物フラクションとに分離し、低重合度中間物フラクションを蒸留塔の塔頂から取り出し、高重合度中間物フラクションを釜残液として得る。このように蒸留を繰り返した後、最後に実施される蒸留において、低重合度フラクションである最終中間物フラクションを塔頂から取り出し、高重合度フラクションである生成物フラクションを釜残液として塔底から取り出す。
【0043】
あるいは、複数段階の蒸留は、好ましくは2以上の蒸留装置で実施される。その場合、高重合度中間物フラクションは、蒸留装置の蒸留塔の塔頂から留出させて取り出し、低重合度中間物フラクションは、当該蒸留塔の塔底から取り出し、次の蒸留装置に送られる。各蒸留装置において、蒸留は、連続蒸留および回分蒸留のいずれであってもよい。
【0044】
複数段階の蒸留は、1段階の蒸留により得られる中間物フラクションを、2以上の低重合度中間物フラクションとして取り出す操作に相当する。このように蒸留を実施すると、後述するように、低重合度中間物フラクションを反応器に戻す場合に、反応器に戻されるテロマー中にn≧kのテロマーが含まれる割合をより小さくすることができる。それにより、反応器でn>kのテロマーが生成されることを防止でき、最終製品においてnmaxがより小さく、naveがkにより近い生成物を得ることができる。
【0045】
複数段階で蒸留を実施する場合、各段階の蒸留により得られる低重合度中間物フラクションを反応器に戻すことが、製造効率の点から好ましい。反応器に戻した低重合度中間物フラクションに含まれるテロマーは、さらにテロメル化されて、より重合度の大きいテロマーを与える。前述のように、低重合度中間物フラクションを反応器に戻す場合、低重合度中間物フラクションにnがk以上であるテロマーが含まれると、最終製品に占めるn>kのテロマーの割合が大きくなり好ましくない。したがって、低重合度中間物フラクションを反応器に戻す場合、各段階で得られる低重合度中間物フラクションを合わせたもの(即ち、反応器に戻される低重合度中間物フラクションの全量)に占めるn≧kのテロマーの割合が1mol%以下となるように、各段階で得られる低重合度中間物フラクションの量及び蒸留装置の性能等を考慮して、複数段階の蒸留を実施することが好ましい。
【0046】
このように、工程(2)(即ち、蒸留工程)を実施することにより、重合度nが1以上であるテロマーの混合物から、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるテロマーの混合物を効率良く得ることができる。さらに、前述のように、工程(1)において、RfI/TFEモル比を大きくすることにより、nmaxが小さく、かつnaveが小さいテロマーの混合物を得、工程(2)において、そのような混合物からnが(k−1)以下のテロマーを取り除くことによって、最終生成物においてnaveがkにより近いテロマーの混合物を得ることができる。nがk以上であるテロマーの混合物は、種々の化学製品の原料として有用であり、特に含フッ素アクリル酸エステルを製造するのに適している。以下に、本発明の第2の要旨である含フッ素アクリル酸エステルの混合物の製造方法を説明する。
【0047】
第2の要旨に係る本発明の含フッ素アクリル酸エステルの製造方法は、前述のとおり、式(III):
【化9】
Rf(CF2CF2)nCH2CH2OCOCR1=CH2 (III)
(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示し、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは重合度を示す整数である)
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する方法であって、
(A)上記本発明のテロマーの混合物の製造方法に従って、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を得るテロメリゼーション工程、
(B)工程(A)で得たフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物にエチレンを付加させて、エチレン付加物の混合物を得るエチレン付加工程、ならびに
(C)工程(B)で得たエチレン付加物の混合物を(メタ)アクリル酸化合物と反応させて、目的とする含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を得るエステル化工程
を含む製造方法である。
以下に工程(A)〜(C)について説明する。
【0048】
工程(A)は、上述した、テロマーの混合物の製造方法と同じ方法で実施できる。したがって、工程(A)についての詳細な説明はここでは省略する。
【0049】
工程(B)は、工程(A)で得たテロマーの混合物にエチレンを付加する工程である。工程(B)は、エチレン付加反応において常套的に採用されている条件下で実施してよい。具体的には、反応温度を、30〜250℃、例えば50〜220℃の温度とし、反応圧力を1MPa以下、例えば0.2〜0.4MPaとして、エチレン付加を実施する。反応時間は、一般に、0.1〜10時間である。反応圧力は、圧入するエチレンによって生じる圧力である。反応は、テロマー混合物とエチレンのモル比を、1:2〜1:0.05として実施することが好ましい。
【0050】
エチレン付加反応は、ラジカルを発生させる触媒の存在下で実施してよい。触媒は、例えば、アゾ化合物、または有機過酸化物である。触媒に適したアゾ化合物は、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルである。触媒に適した有機過酸化物は、例えば、ベンゾイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイドのようなジアルキルパーオキサイド、またはt−ブチル過炭酸イソプロピルのようなパーオキシモノカーボネートである。触媒の量は、テロマーの混合物1モルに対して、0.005〜0.02モル程度とする。
【0051】
工程(B)の結果として、上記式(II)で示されるエチレン付加物の混合物が得られる。混合物に含まれる各エチレン付加物中の−(CF2CF2)−の重合度nは、工程(A)で得たテロマーの重合度nによって決定される。工程(A)では、nがk以上であるテロマーの混合物が得られるから、工程(B)において得られるエチレン付加物の混合物もまた、nがk以上であるエチレン付加物の混合物となる。エチレン付加物の混合物は、次に工程(C)においてエステル化される。
【0052】
工程(C)は、工程(B)で得たエチレン付加物の混合物と、(メタ)アクリル酸化合物とを反応させて、目的とする含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を得る工程である。(メタ)アクリル酸化合物は、例えば、(メタ)アクリル酸の金属塩である。(メタ)アクリル酸の金属塩は、カリウムまたはナトリウムのようなアルカリ金属の塩、あるいはアルカリ土類金属の塩である。工程(C)は、エステル化反応において常套的に採用されている条件下で実施してよい。具体的には、反応温度を、160〜220℃、例えば170〜190℃として実施する。反応時間は、一般に、0.1〜10時間である。
【0053】
以上において説明した各工程を実施することにより、目的とする含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物が得られる。このエステルの混合物において、各エステル中の−(CF2CF2)−の重合度nはk以上である。これは、工程(A)で得られるテロマーの混合物において、各テロマーの重合度nがk以上であることによる。したがって、kを所望の値に設定してテロマーを製造すれば、エステル中のアルコキシル基(式(III)においてRf(CF2CF2)nCH2CH2O−に相当)の炭素数が所望の値以上であるエステルの混合物を得ることが可能となる。
【0054】
前述のように、テロメリゼーションを、TFEに対するRfIのモル比を大きくして実施することにより、最大重合度nmaxが小さく、また平均重合度naveがkに近いテロマーの混合物を得ることができる。したがって、所望のエステルに応じてkを設定し、本発明の製造方法に従ってエステルを製造すれば、所望のエステルをより選択的に製造し得る。
【0055】
上記本発明の製造方法で含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する場合、工程(C)において、Rf(CF2CF2)nCH2CH2CH=CH2で示されるオレフィンの混合物が副生する。このオレフィン混合物は不純物であり、これがエステル混合物中に占める割合はより小さいことが好ましい。しかし、このオレフィンは、nの値によっては、その沸点がエステルの沸点に近くなるために、精留によってもエステル混合物中から除去することが困難となる場合がある。例えば、RfがC2F5であり、nが3以上であるエステルの混合物を製造する場合、副生するオレフィンのうち、nが5以上である高分子量オレフィンの除去が困難となる。
【0056】
副生するオレフィンのnもまた、工程(A)で得たテロマーの重合度によって決定される。前述のように、本発明の製造方法によれば、nmaxが小さく、naveがkに近いテロマーの混合物を得ることができるから、これを使用するエステル製造において副生するオレフィン混合物もまた、nmaxが小さく、naveがkに近い混合物となる。したがって、本発明の製造方法によれば、除去しにくい高分子量オレフィンの含有量が小さいエステル混合物を得ることができ、製品の品質が有意に向上する。
【0057】
含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物は、モノマーとして、重合体の製造に利用できる。このエステルを用いて製造した重合体は、撥水撥油剤として使用される。
【0058】
特にRfがC2F5であり、nが3であるエステルC8F17CH2CH2OCOCR1=CH2を用いて製造した重合体は、撥水撥油剤として有用である。このエステルを含む混合物は、kとして3を選択し、フルオロアルキルアイオダイドRfIとしてC2F5Iを使用して、上記本発明の製造方法に従ってテロマーの混合物を製造し、得られたテロマーをエチレン付加工程、およびその後のエステル化工程に付すことによって得られる。
【0059】
図1に、本発明のテロマーの混合物の製造方法の一態様を模式的に示す。図1は、フルオロアルキルアイオダイドRfIとしてC2F5Iを使用し、重合度nが3以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を製造するプロセスを示す。図示するプロセスにおいて、工程(1)は、反応器10にフルオロアルキルアイオダイドRfIとTFEとを供給して実施される。工程(2)は、第1蒸留装置20および第2蒸留装置30を用いて、2段階の蒸留により実施される。第1蒸留装置20は、第1蒸留塔21および第1凝縮器22を含み、第2蒸留装置30は、第2蒸留塔31および第2凝縮器32を含む。
【0060】
反応器10には、新しいC2F5IとTFEとが仕込まれる。反応器10では、C2F5IによりTFEがテロメル化されて、式(I):
【化10】
Rf(CF2CF2)nI (I)
で示され、重合度nが1以上であるテロマーの混合物が生成される。このテロマーの混合物ならびに未反応のC2F5IおよびTFEを含む反応混合物Mが反応器10から取り出されて、第1蒸留装置20に送られる。
【0061】
第1蒸留装置20は、反応混合物Mを、C4F9I(n=1)ならびに未反応のC2F5IおよびTFEを含む低重合度中間物フラクションF1と、≧C6F13I(n≧2)を主成分として含む高重合度中間物フラクションF2とに分離する。第1蒸留塔21の塔頂から抜き出された低重合度中間物フラクションF1は、第1凝縮器22で凝縮される。凝縮された低重合度中間物フラクションF1の一部は第1蒸留塔21に還流され、残りは、反応器10に戻される。第1凝縮器21で凝縮されなかった低重合度中間物フラクションF1もまた、第1凝縮器21の頂部から反応器10に戻される。
【0062】
第1蒸留塔21の塔底から抜き出された高重合度中間物フラクションF2は、第2蒸留装置30に送られ、C6F13I(n=2)を主成分として含む最終中間物フラクションF3と、≧C8F17I(n≧3)を含む生成物フラクションFPとに分離される。最終中間物フラクションF3は、第2蒸留塔31の塔頂から取り出され、第2凝縮器32で凝縮される。凝縮された液の一部は第2蒸留塔31に還流され、残りは反応器10に戻される。図において、反応器に戻される最終中間物フラクションF3は、低重合度中間物フラクションF1とともに、1つのラインで戻される。生成物フラクションFPは、第2蒸留塔31の塔底から製品として取り出される。
【0063】
図示した方法においては、2つの蒸留装置が使用される。蒸留装置の数は2に限定されるものでなく、3または4であってよい。例えば、図1に示す方法の応用例として、第1蒸留装置20の前に別の蒸留装置をもう1つ設けて、未反応のRfIおよびTFEを含む低重合度中間物フラクションと、生成されたテロマーの混合物を含む高重合度中間物フラクションとに分離し、得られた高重合度中間物フラクションを図1に示す第1蒸留装置20に送るようにしてよい。その場合、第1蒸留装置20で得られる低重合度中間物フラクションは、C4F9I(n=1)を主たる成分として含み、RfIおよびTFEの割合がより低減されたものとなる。
【0064】
図1は本発明の方法を示す概略図である。図1に示すプロセスは、テロメリゼーションおよび蒸留に常套的に用いられる他の要素または装置を使用することを含んでよい。例えば、図1に示すプロセスは、例えば、蒸留塔の塔底から取り出したフラクションの一部をリボイラーで蒸発させて塔底に戻すことを含んでよい。
【0065】
【発明の効果】
本発明のテロマーの混合物の製造方法は、重合度nが1以上であるテロマーの混合物を蒸留工程に付すことを特徴とする。この特徴により、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるテロマーの混合物を効率良く得ることができる。得られたテロマーの混合物を使用すれば、特定値以上の炭素数(または分子量)を有する種々の化学製品を、選択的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のテロマーの混合物の製造方法の一態様を示す模式図である。
【符号の説明】
10...反応器、20...第1蒸留装置、21...第1蒸留塔、22...第1凝縮器、30...第2蒸留装置、31...第2蒸留塔、32...第2凝縮器。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物の製造方法、およびその製造方法により得たフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を用いる含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テロメリゼーションとは、適当な触媒の存在下で熱または光を作用させて、テロゲン(AB)にタクソゲンを(X)を付加し、式A(X)mB(mは一般に1〜20)で表される重合度の低いポリマー、即ちテロマーを得る反応をいう。公知のテロメリゼーションとして、テロゲンとしてフルオロアルキルアイオダイドを、タクソゲンとしてテトラフルオロエチレンを使用し、テロゲンよりも分子量の高いフルオロアルキルアイオダイドをテロマーとして得る反応がある。この反応は、テロゲンにテトラフルオロエチレンを付加した、テトラフルオロエチレン付加物を得る反応とも見なせる。この反応を利用して、工業的に有用なフルオロアルキルアイオダイドを得る種々の方法が、予てより提案されてきた。以下に、それらのうちの幾つかを列挙する。なお、以下の説明を含む本明細書においては、生成物のフルオロアルキルアイオダイドと、出発物質のフルオロアルキルアイオダイドとを区別するために、前者をフルオロアルキルアイオダイドテロマーと称することに留意されたい。
【0003】
米国特許第3,226,449号(特許文献1)は、有機過酸化物を開始剤として用いる、パーフルオロアルキルアイオダイドにテトラフルオロエチレンを付加するテロメリゼーションによって、パーフルオロアルキルアイオダイドテロマーを製造する方法を開示している。テロメリゼーションは1つの反応器において一段階で行われている。
【0004】
英国特許第1,256,818号(特許文献2)、特公昭60−22687号(特許文献3)、米国特許第3,234,294号(特許文献4)、米国特許第3,404,189号(特許文献5)、および英国特許第1,189,576号(特許文献6)は、パーフルオロアルキルアイオダイドテロマーを製造する際に用いるテロメリゼーションの開始方法を開示している。
【0005】
特開平6−206908号(特許文献7)、特開平6−305995号(特許文献8)、および特公平7−59525号(特許文献9)は、ある用途においては、パーフルオロアルキルアイオダイドテロマーの炭素数(または分子量)を特定範囲にする必要があることを説明し、所望の炭素数を有するパーフルオロアルキルアイオダイドテロマーを、特定形状の反応器および特定の手順を使用する、重合度を制御したテロメリゼーションにより製造する方法を開示している。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,226,449号明細書
【特許文献2】英国特許第1,256,818号明細書
【特許文献3】特公昭60−22687号公報
【特許文献4】米国特許第3,234,294号明細書
【特許文献5】米国特許第3,404,189号明細書
【特許文献6】英国特許第1,189,576号明細書
【特許文献7】特開平6−206908号公報
【特許文献8】特開平6−305995号公報
【特許文献9】特公平7−59525号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、これまでに、テロマーを製造する種々の製造方法が提案され、その中には、重合度を制御して所望の炭素数のテロマーを得る方法も含まれる。また、特開平6−206908号公報(特許文献7)等に記載の方法は、重合度を制御するために、特定の反応器および操作条件を採用して、テロメリゼーションを実施することを要する。このことは、テロマーを工業的に生産するに際し、生産効率の低下および生産コストの上昇を招き得る。このように、従来のテロマーの製造方法はいずれも、所望の炭素数を有するテロマー、特に一定数以上の炭素数を有するテロマーの混合物を、工業的な生産にも適した簡易な操作で得る方法ではない。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、簡易な操作で、所定値k以上の重合度を有するフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を製造する方法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、アルコキシル基の炭素数が所定値以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、第1の要旨において、式(I):
【化6】
Rf(CF2CF2)nI (I)
(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示し、nは重合度を示す整数である)
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物をテロメリゼーションにより製造する方法であって、
(1)式RfI(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示す)で示されるフルオロアルキルアイオダイドと、テトラフルオロエチレンとを反応させることにより、式(I)で示され、重合度nが1以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む反応混合物を得る工程、ならびに
(2)工程(1)で得た反応混合物を、
式(I)で示され、重合度nが(k−1)以下であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物、および式RfIで示されるフルオロアルキルアイオダイドを含む中間物フラクション、ならびに
式(I)で示され、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む生成物フラクション
に、蒸留により分離する工程
を含む製造方法を提供する。
【0010】
この製造方法により製造されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーは、上記式(I)で示される化合物である。式(I)において、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示す。Rfは、テロメリゼーションの出発物質であるフルオロアルキルアイオダイドのフルオロアルキル基に相当する。
【0011】
フルオロアルキルアイオダイドテロマー(以下、単に「テロマー」とも呼ぶ)の混合物とは、重合度nが異なる複数のテロマーを含む混合物を意味する。
【0012】
本発明の製造方法により製造すべき対象物は、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマー(以下、単に「テロマー」とも呼ぶ)の混合物である。この混合物は、重合度nがそれぞれk、k+1、k+2、...であるテロマーの混合物である。尤も、この混合物は、テロメリゼーションの条件および反応混合物の分離条件等によって、nがkより小さいテロマー、および未反応のフルオロアルキルアイオダイド等を不可避的に含むことがある。これらの不可避的に含まれる化合物を含む混合物もまた、本発明の製造方法により製造すべき対象物に含まれることに留意されたい。
【0013】
本明細書においては、式(I)で示され、重合度nがp以上であるテロマーの混合物を、「≧」を用いて、≧Rf(CF2CF2)pIと示す場合がある。また、式(I)で示され、重合度nがq以下であるテロマーの混合物を、「≦」を用いて、≦Rf(CF2CF2)qIと示す場合がある。
【0014】
本発明の製造方法において、kは3以上の整数から選択される1の整数であり、テロマーの用途等に応じて所望のように選択される。nがk以上のテロマーの混合物において、重合度が最大であるテロマーの重合度nmaxは、テロメリゼーションの条件によって異なる。一般にnmaxは20程度である。本発明の製造方法により得られる混合物は、好ましくは、重合度nがkであるテロマーを最も多く含む。
【0015】
本発明のテロマーの混合物の製造方法は、テロメリゼーションにおいて常套的に採用されている手法で得たテロマーの混合物を、蒸留によって、重合度nが(k−1)以下であるテロマーの混合物を含む中間物フラクションと、重合度nがk以上であるテロマーの混合物を含む生成物フラクションとに分離することを特徴とする。それにより、重合度nが所定値(即ち、k)以上である、所望のテロマー混合物を得ることができる。即ち、本発明によれば、テロメリゼーションの後に、蒸留以外の特殊な操作を行わなくとも、所望のテロマー混合物を製造できる。
【0016】
本発明はまた、上記課題を解決するために、第2の要旨において、式(III):
【化7】
Rf(CF2CF2)nCH2CH2OCOCR1=CH2 (III)
(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示し、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは重合度を示す整数である)
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する方法であって、
(A)上記式(I)で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を、上記第1の要旨において提供される方法に従って得るテロメリゼーション工程、
(B)工程(A)で得たフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物にエチレンを付加させて、式(II):
【化8】
Rf(CF2CF2)nCH2CH2I (II)
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるエチレン付加物の混合物を得るエチレン付加工程、ならびに
(C)工程(B)で得たエチレン付加物の混合物を(メタ)アクリル酸化合物と反応させて、上記含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を得るエステル化工程
を含む製造方法を提供する。
【0017】
重合度nがk以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物とは、式(III)の基Rf(CF2CF2)nCH2CH2O−のnがそれぞれk、k+1、k+2、...である、複数の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含む混合物である。本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法においては、上述した製造方法に従ってテロマーの混合物を得、これにエチレンを付加させた後、(メタ)アクリル酸化合物と反応させる。したがって、生成物である、式(III)で示されるエステルの混合物において、混合物を構成する各エステルのnは3以上の整数のいずれか1つとなる。
【0018】
本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法は、重合度nが所定値k以上であるテロマーの混合物を生成する工程を含むことを特徴とする。この特徴により、アルコキシル基の炭素数が所定値以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を選択的に製造することが可能となる。
【0019】
上記含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法において、工程(A)と工程(B)とは、必ずしも連続して実施する必要はない。例えば、本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物の製造方法は、上記の製造方法に従って得た「最終製品」としてのテロマーの混合物を原料として使用して、上記工程(B)を開始し、それから工程(B)で得た混合物を工程(C)に付す方法であってよい。即ち、上記式(III)で示され、重合度がk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物は、上記第1の要旨の製造方法で製造した、式(I)で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物にエチレンを付加させ、次いで(メタ)アクリル酸化合物と反応させることを含む製造方法によっても製造される。
【0020】
【発明の実施の形態】
第1の要旨に係る本発明のフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物の製造方法は、前述のとおり、≧Rf(CF2CF2)kI(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示し、kは重合度を示す3以上の整数のいずれか1つである)をテロメリゼーションにより製造する方法であって、
(1)フルオロアルキルアイオダイドRfIと、テトラフルオロエチレン(本明細書において「TFE」と略する場合がある)とを反応させることにより、≧Rf(CF2CF2)Iを含む反応混合物を得る工程、ならびに
(2)工程(1)で得た反応混合物を、
≦Rf(CF2CF2)k−1Iおよび未反応の出発原料を含む中間物フラクション、ならびに
≧Rf(CF2CF2)kIを含む生成物フラクション
に、蒸留により分離する工程
を含む製造方法である。
以下に、工程(1)および(2)について説明する。
【0021】
工程(1)は、テロメリゼーションを実施する工程である。テロメリゼーションは、式RfIで示されるフルオロアルキルアイオダイドと、TFEとを反応させることにより実施する。反応器は、テロメリゼーションのために常套的に採用されている任意の反応器であってよく、例えばオートクレーブであってよい。
【0022】
RfIにおいて、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つである。Rfは、好ましくは、炭素数が1〜8であるフルオロアルキル基のいずれか1つであり、より好ましくは、炭素数が1〜5であるフルオロアルキル基のいずれか1つである。また、Rfは、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0023】
フルオロアルキルアイオダイドRfIの例としては、トリフルオロメチルアイオダイド、ペンタフルオロエチルアイオダイド、パーフルオロイソプロピルアイオダイド、およびパーフルオロ−n−ブチルアイオダイドが挙げられる。これらのうち、ペンタフルオロエチルアイオダイド(C2F5I)が、TFEのテロメリゼーションに一般的に使用される。C2F5Iは、本発明の製造方法においても好ましく使用される。
【0024】
工程(1)において、テロメリゼーションは、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの製造において常套的に採用されている条件下で実施してよい。具体的には、反応温度を、30〜150℃とし、反応圧力を0.01〜2MPaとして、反応を進行させる。反応時間は、一般に、0.1〜10時間である。反応圧力は、圧入するTFEによって生じる圧力である。上記に示した具体的な圧力は、ゲージ圧である。以下の説明を含む本明細書において、圧力は特に断りのない限りゲージ圧で表される。
【0025】
テロメリゼーションは、触媒の存在下で実施してよい。触媒は、例えば、有機過酸化物、遷移金属、またはIF5・SbF5等である。触媒に適した有機過酸化物は、例えば、t−ブチルパーオキシピバレートのようなカルボン酸エステルパーオキサイド化合物、t−ブチル過炭酸イソプロピルのようなパーオキシモノカーボネート、およびビス−(4−アルキルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのようなパーオキシジカーボネート化合物である。触媒の量は、フルオロアルキルアイオダイド(RfI)1モルに対して、0.001〜0.1モル程度とする。
【0026】
反応器において、フルオロアルキルアイオダイド(RfI)とテトラフルオロエチレン(TFE)のモル比は、20:80〜99:1にすることが好ましい。RfI/TFEが大きいほど(即ち、TFEのモル比が小さいほど)、生成するテロマーの混合物において、一般に、nmaxはより小さくなり、また、混合物の平均重合度naveが小さくなる。したがって、最終的に得ようとするテロマーの混合物において、nmaxをより小さくするとともに、naveを小さくしたい場合には、RfI/TFEをより大きくすることが好ましい。例えば、RfIとしてC2F5Iを使用し、重合度nが3以上のテロマーの混合物を製造する場合には、RfI:TFE(モル比)を99:1〜97:3として本発明の製造方法を実施すれば、naveが3により近い(例えば、3.05〜3.4程度の)混合物を生成物として得ることができる。
【0027】
工程(1)においては、反応器に、RfIに加えて、式(I)で示され、重合度nが(k−1)以下である低重合度テロマーを、1種または複数種供給してよい。供給された低重合度テロマーは、反応器においてテトラフルオロエチレンと反応して、より重合度の高いテロマーに転化される。例えば、RfIとしてC2F5Iを使用し、重合度nが3以上のテロマーの混合物を製造する場合には、C4F9I(n=1)および/またはC6F13I(n=2)を反応器に供給してよい。この場合、(k−1)以下であるnは1および2であるから、反応器には、1種または2種のテロマーを供給できる。
【0028】
nが(k−1)以下であるテロマーは、例えば、反応混合物を後述の工程(2)において分離することにより得られたものであってよい。即ち、nが(k−1)以下であるテロマーを1種または複数種供給することは、反応混合物の一部を戻すことによって実施してよい。
【0029】
反応器に供給するnが(k−1)以下であるテロマーは、RfIとTFEのテロメリゼーションによって得たものである必要は必ずしもない。式(I)で示され、nが(k−1)以下である構造を有する化合物であれば、テロメリゼーション以外の方法によって得たものを反応器に供給してよい。そのような化合物は、厳密にはテロマーと呼べるものでない場合があるが、ここではそのような化合物も便宜上テロマーと呼ぶ。
【0030】
反応器において、TFEは反応器の気相部に仕込んでよい。その場合、テロメリゼーションは、気相と液相の界面にて進行する。あるいは、TFEは液相のRfIに気泡を生じるように仕込んでよい。
【0031】
次に工程(2)について説明する。工程(2)は、工程(1)で得た反応混合物を、重合度nが(k−1)以下であるテロマーの混合物および未反応の出発原料を含む中間物フラクションと、重合度nがk以上であるテロマーの混合物を含む生成物フラクションとに、蒸留により分離する工程である。尤も、各フラクションは、本発明によるテロマーの混合物の製造に悪影響を及ぼさない限りにおいて、上記の成分に加えて他の成分(例えば、他方のフラクションに含まれるべきテロマー)を含んでよい。そのような他の成分は、蒸留装置の性能および操作条件によっては、不可避的に含まれることがある。
【0032】
工程(2)において、蒸留は、化学工業において常套的に採用されている装置および方法により実施する。蒸留装置は、一般に、蒸留塔および凝縮器を含む。蒸留塔は、充填塔または段塔のいずれであってもよい。また、蒸留は、連続蒸留または回分蒸留のいずれであってもよい。本発明の製造方法において、工程(2)は、蒸留塔の塔頂から中間物フラクションを留出させて取り出し、蒸留塔の塔底から生成物フラクションを取り出す。留出させた中間物フラクションは凝縮器で凝縮し、凝縮した中間物フラクションの一部は蒸留塔に還流する。
【0033】
中間物フラクションは、式(I)で示され、重合度nが(k−1)以下である低重合度のフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物、および式RfIで示される未反応のフルオロアルキルアイオダイドを含む。「中間物フラクション」という用語は、このフラクションが、テロメリゼーションにより生成した、重合度がk未満である中間生成物とみなし得るテロマーを含むことを意味するために使用される。中間物フラクションは、未反応のTFEを気相および/または液相の形態で含む場合がある。中間物フラクションは、反応器に戻すことが製造効率の点から好ましい。反応器に戻した中間物フラクションに含まれるテロマーは、さらにテロメル化されて、より重合度の大きいテロマーを与える。
【0034】
中間物フラクションは、重合度nが(k−1)以下であるテロマー、RfI、およびTFEに加えて、他の成分、例えば重合度nが(k−1)よりも大きいテロマーを含んでよい。そのような他の成分は、上述のように蒸留装置の性能等に応じて、不可避的に中間物フラクションに含まれることがある。中間物フラクションに含まれる他の成分の量は、できるだけ少量(例えば0.1mol%以下)であることが好ましい。
【0035】
生成物フラクションは、式(I)で示され、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む。生成物フラクションは、目的とする製品として取り出される。生成物フラクションは、重合度nがk以上であるテロマーに加えて、他の成分、例えば重合度nが(k−1)以下であるテロマーを含んでよい。そのような他の成分は、上述のように蒸留装置の性能等に応じて、不可避的に生成物フラクションに含まれることがある。生成物フラクションに含まれる他の成分の量は、できるだけ少量(例えば0.1mol%以下)であることが好ましい。
【0036】
工程(2)は、上述のように、1段階で実施してよい。あるいは、工程(2)は、複数段階で実施してよい。その場合、工程(2)は、工程(1)で得た反応混合物を、
式(I)で示されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーおよび/またはRfIを含むフラクションであって、フラクションに含まれるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの最大重合度が(k−1)以下であり、且つその平均重合度がより小さい低重合度中間物フラクションと、
式(I)で示されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションであって、その平均重合度がより大きい高重合度中間物フラクション
とに、蒸留により分離することを1回または複数回実施した後で得られる高重合度中間物フラクションを、
式(I)で示され、重合度nが(k−1)であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを少なくとも含む最終中間物フラクション、および
式(I)で示され、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む生成物フラクション
に、蒸留により分離する工程となる。ここで、平均重合度の大小は、蒸留により分離される2つのフラクションとの間で比較されることに留意すべきである。
【0037】
このようにして実施する工程(2)においては、低重合度中間物フラクションと高重合度中間物フラクションとを得、得られた高重合度中間物フラクションを次いで蒸留して、低重合度中間物フラクションと高重合度中間物フラクションとに、更に分離するように、蒸留を繰り返す。したがって、蒸留を繰り返すにつれて、得られる高重合度中間物フラクションにおいてn≧kのテロマーの占める割合は次第に増加することとなる。
【0038】
繰り返し実施する蒸留は、低重合度中間物フラクションが、それに含まれるテロマーの最大重合度が(k−1)以下となるように、即ち、nがk以上であるテロマーを含まないように実施する必要がある。nがk以上であるテロマーが低重合度中間物フラクションに含まれると、これを反応器に戻した場合に、反応器においてn>kの重合度の大きいテロマーが生成されることがある。そのような大きな重合度のテロマーが生成されると、最終的に得られるテロマーの混合物において、n=kのテロマーの占める割合が小さくなり好ましくない。しかしながら、低重合度中間物フラクションには、蒸留装置の性能等に応じて不可避的にnがk以上であるテロマーが僅かに(例えば1mol%以下の量で)含まれることがある。そのような僅かな量で含まれるn≧kのテロマーは、平均重合度および最大重合度を求めるにあたり無視してよい。
【0039】
低重合度中間物フラクションは、n≧kのテロマーを含まない限りにおいて、1種類のテロマーから成るフラクションであってよく、あるいは、重合度の異なる2種以上のテロマーの混合物であってよく、あるいは1種類または2種類以上のテロマーとRfIとの混合物であってよい。また、最初に実施される蒸留は、低重合度中間物フラクションがRfIのみを実質的に含むように実施してよい。その場合、低重合度中間物フラクションにはテロマーが含まれず、平均重合度および最大重合度は、ともに0であるとみなす。最後に実施される蒸留において得られる低重合度中間物フラクションは、最後に得られる中間物であり、「最終中間物フラクション」と称される。この最終中間物フラクションは、nが(k−1)であるテロマーを少なくとも含み、さらにnが(k−1)よりも小さいテロマー、ならびに場合によりRfIおよびTFEを含む。
【0040】
高重合度中間物フラクションは、それに含まれるテロマーの平均分子量が、低重合度中間物フラクションのそれよりも大きい限りにおいて、低重合度中間物フラクションの主成分である重合度の低いテロマーおよび/またはRfIを含んでよい。但し、最後に実施する蒸留は、生成物フラクションが、そのような低重合度のテロマーおよびRfIを実質的に含まないように実施する必要があることに留意すべきである。
【0041】
例えば、RfがC2F5であり、重合度nが3以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を製造する場合、複数回の蒸留は、(i)第1回目の蒸留において、反応器からの反応混合物を、RfIを主成分として90mol%以上含み、さらにC4F9I(n=1)およびC6F13I(n=2)を僅かに含む低重合度中間物フラクションと、反応混合物に含まれるテロマーをほぼ全て含む高重合度中間物フラクションとに分離し、(ii)第2回目の蒸留において、第1回目の蒸留で得た高重合度中間物フラクションを、C4F9I(n=1)を主成分として90mol%以上含み、それ以外の成分としてC6F13I(n=2)および場合によりRfIを含む低重合度中間物フラクションと、n≧2以上であるテロマーの混合物を含む高重合度成分とに分離し、(iii)第3回目(最後)の蒸留において、第2回目の蒸留で得た高重合度中間物フラクションを、C6F13I(n=2)を主成分として90mol%以上含み、それ以外の成分としてC4F9I(n=1)および場合によりRfIを含む最終中間物フラクションと、≧C8F17I(n≧3)を含む生成物フラクションとに分離するように、実施することができる。これは一例であり、高重合度中間物フラクションに含まれるテロマーの平均分子量の増加幅が小さくなるように、4回またはそれ以上の回数で蒸留を繰り返してよい。あるいは、2回の蒸留で生成物フラクションが得られるようにしてもよい。
【0042】
複数段階の蒸留は1つの蒸留装置で実施してよい。その場合、蒸留は回分蒸留であり、低重合度中間物フラクションを、蒸留塔の塔頂から取り出し、高重合度中間物フラクションを釜残液として得る。次いで、高重合度中間物フラクションを蒸留して、さらに低重合度中間物フラクションと高重合度中間物フラクションとに分離し、低重合度中間物フラクションを蒸留塔の塔頂から取り出し、高重合度中間物フラクションを釜残液として得る。このように蒸留を繰り返した後、最後に実施される蒸留において、低重合度フラクションである最終中間物フラクションを塔頂から取り出し、高重合度フラクションである生成物フラクションを釜残液として塔底から取り出す。
【0043】
あるいは、複数段階の蒸留は、好ましくは2以上の蒸留装置で実施される。その場合、高重合度中間物フラクションは、蒸留装置の蒸留塔の塔頂から留出させて取り出し、低重合度中間物フラクションは、当該蒸留塔の塔底から取り出し、次の蒸留装置に送られる。各蒸留装置において、蒸留は、連続蒸留および回分蒸留のいずれであってもよい。
【0044】
複数段階の蒸留は、1段階の蒸留により得られる中間物フラクションを、2以上の低重合度中間物フラクションとして取り出す操作に相当する。このように蒸留を実施すると、後述するように、低重合度中間物フラクションを反応器に戻す場合に、反応器に戻されるテロマー中にn≧kのテロマーが含まれる割合をより小さくすることができる。それにより、反応器でn>kのテロマーが生成されることを防止でき、最終製品においてnmaxがより小さく、naveがkにより近い生成物を得ることができる。
【0045】
複数段階で蒸留を実施する場合、各段階の蒸留により得られる低重合度中間物フラクションを反応器に戻すことが、製造効率の点から好ましい。反応器に戻した低重合度中間物フラクションに含まれるテロマーは、さらにテロメル化されて、より重合度の大きいテロマーを与える。前述のように、低重合度中間物フラクションを反応器に戻す場合、低重合度中間物フラクションにnがk以上であるテロマーが含まれると、最終製品に占めるn>kのテロマーの割合が大きくなり好ましくない。したがって、低重合度中間物フラクションを反応器に戻す場合、各段階で得られる低重合度中間物フラクションを合わせたもの(即ち、反応器に戻される低重合度中間物フラクションの全量)に占めるn≧kのテロマーの割合が1mol%以下となるように、各段階で得られる低重合度中間物フラクションの量及び蒸留装置の性能等を考慮して、複数段階の蒸留を実施することが好ましい。
【0046】
このように、工程(2)(即ち、蒸留工程)を実施することにより、重合度nが1以上であるテロマーの混合物から、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるテロマーの混合物を効率良く得ることができる。さらに、前述のように、工程(1)において、RfI/TFEモル比を大きくすることにより、nmaxが小さく、かつnaveが小さいテロマーの混合物を得、工程(2)において、そのような混合物からnが(k−1)以下のテロマーを取り除くことによって、最終生成物においてnaveがkにより近いテロマーの混合物を得ることができる。nがk以上であるテロマーの混合物は、種々の化学製品の原料として有用であり、特に含フッ素アクリル酸エステルを製造するのに適している。以下に、本発明の第2の要旨である含フッ素アクリル酸エステルの混合物の製造方法を説明する。
【0047】
第2の要旨に係る本発明の含フッ素アクリル酸エステルの製造方法は、前述のとおり、式(III):
【化9】
Rf(CF2CF2)nCH2CH2OCOCR1=CH2 (III)
(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示し、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは重合度を示す整数である)
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する方法であって、
(A)上記本発明のテロマーの混合物の製造方法に従って、フルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を得るテロメリゼーション工程、
(B)工程(A)で得たフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物にエチレンを付加させて、エチレン付加物の混合物を得るエチレン付加工程、ならびに
(C)工程(B)で得たエチレン付加物の混合物を(メタ)アクリル酸化合物と反応させて、目的とする含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を得るエステル化工程
を含む製造方法である。
以下に工程(A)〜(C)について説明する。
【0048】
工程(A)は、上述した、テロマーの混合物の製造方法と同じ方法で実施できる。したがって、工程(A)についての詳細な説明はここでは省略する。
【0049】
工程(B)は、工程(A)で得たテロマーの混合物にエチレンを付加する工程である。工程(B)は、エチレン付加反応において常套的に採用されている条件下で実施してよい。具体的には、反応温度を、30〜250℃、例えば50〜220℃の温度とし、反応圧力を1MPa以下、例えば0.2〜0.4MPaとして、エチレン付加を実施する。反応時間は、一般に、0.1〜10時間である。反応圧力は、圧入するエチレンによって生じる圧力である。反応は、テロマー混合物とエチレンのモル比を、1:2〜1:0.05として実施することが好ましい。
【0050】
エチレン付加反応は、ラジカルを発生させる触媒の存在下で実施してよい。触媒は、例えば、アゾ化合物、または有機過酸化物である。触媒に適したアゾ化合物は、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルである。触媒に適した有機過酸化物は、例えば、ベンゾイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイドのようなジアルキルパーオキサイド、またはt−ブチル過炭酸イソプロピルのようなパーオキシモノカーボネートである。触媒の量は、テロマーの混合物1モルに対して、0.005〜0.02モル程度とする。
【0051】
工程(B)の結果として、上記式(II)で示されるエチレン付加物の混合物が得られる。混合物に含まれる各エチレン付加物中の−(CF2CF2)−の重合度nは、工程(A)で得たテロマーの重合度nによって決定される。工程(A)では、nがk以上であるテロマーの混合物が得られるから、工程(B)において得られるエチレン付加物の混合物もまた、nがk以上であるエチレン付加物の混合物となる。エチレン付加物の混合物は、次に工程(C)においてエステル化される。
【0052】
工程(C)は、工程(B)で得たエチレン付加物の混合物と、(メタ)アクリル酸化合物とを反応させて、目的とする含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を得る工程である。(メタ)アクリル酸化合物は、例えば、(メタ)アクリル酸の金属塩である。(メタ)アクリル酸の金属塩は、カリウムまたはナトリウムのようなアルカリ金属の塩、あるいはアルカリ土類金属の塩である。工程(C)は、エステル化反応において常套的に採用されている条件下で実施してよい。具体的には、反応温度を、160〜220℃、例えば170〜190℃として実施する。反応時間は、一般に、0.1〜10時間である。
【0053】
以上において説明した各工程を実施することにより、目的とする含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物が得られる。このエステルの混合物において、各エステル中の−(CF2CF2)−の重合度nはk以上である。これは、工程(A)で得られるテロマーの混合物において、各テロマーの重合度nがk以上であることによる。したがって、kを所望の値に設定してテロマーを製造すれば、エステル中のアルコキシル基(式(III)においてRf(CF2CF2)nCH2CH2O−に相当)の炭素数が所望の値以上であるエステルの混合物を得ることが可能となる。
【0054】
前述のように、テロメリゼーションを、TFEに対するRfIのモル比を大きくして実施することにより、最大重合度nmaxが小さく、また平均重合度naveがkに近いテロマーの混合物を得ることができる。したがって、所望のエステルに応じてkを設定し、本発明の製造方法に従ってエステルを製造すれば、所望のエステルをより選択的に製造し得る。
【0055】
上記本発明の製造方法で含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する場合、工程(C)において、Rf(CF2CF2)nCH2CH2CH=CH2で示されるオレフィンの混合物が副生する。このオレフィン混合物は不純物であり、これがエステル混合物中に占める割合はより小さいことが好ましい。しかし、このオレフィンは、nの値によっては、その沸点がエステルの沸点に近くなるために、精留によってもエステル混合物中から除去することが困難となる場合がある。例えば、RfがC2F5であり、nが3以上であるエステルの混合物を製造する場合、副生するオレフィンのうち、nが5以上である高分子量オレフィンの除去が困難となる。
【0056】
副生するオレフィンのnもまた、工程(A)で得たテロマーの重合度によって決定される。前述のように、本発明の製造方法によれば、nmaxが小さく、naveがkに近いテロマーの混合物を得ることができるから、これを使用するエステル製造において副生するオレフィン混合物もまた、nmaxが小さく、naveがkに近い混合物となる。したがって、本発明の製造方法によれば、除去しにくい高分子量オレフィンの含有量が小さいエステル混合物を得ることができ、製品の品質が有意に向上する。
【0057】
含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物は、モノマーとして、重合体の製造に利用できる。このエステルを用いて製造した重合体は、撥水撥油剤として使用される。
【0058】
特にRfがC2F5であり、nが3であるエステルC8F17CH2CH2OCOCR1=CH2を用いて製造した重合体は、撥水撥油剤として有用である。このエステルを含む混合物は、kとして3を選択し、フルオロアルキルアイオダイドRfIとしてC2F5Iを使用して、上記本発明の製造方法に従ってテロマーの混合物を製造し、得られたテロマーをエチレン付加工程、およびその後のエステル化工程に付すことによって得られる。
【0059】
図1に、本発明のテロマーの混合物の製造方法の一態様を模式的に示す。図1は、フルオロアルキルアイオダイドRfIとしてC2F5Iを使用し、重合度nが3以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を製造するプロセスを示す。図示するプロセスにおいて、工程(1)は、反応器10にフルオロアルキルアイオダイドRfIとTFEとを供給して実施される。工程(2)は、第1蒸留装置20および第2蒸留装置30を用いて、2段階の蒸留により実施される。第1蒸留装置20は、第1蒸留塔21および第1凝縮器22を含み、第2蒸留装置30は、第2蒸留塔31および第2凝縮器32を含む。
【0060】
反応器10には、新しいC2F5IとTFEとが仕込まれる。反応器10では、C2F5IによりTFEがテロメル化されて、式(I):
【化10】
Rf(CF2CF2)nI (I)
で示され、重合度nが1以上であるテロマーの混合物が生成される。このテロマーの混合物ならびに未反応のC2F5IおよびTFEを含む反応混合物Mが反応器10から取り出されて、第1蒸留装置20に送られる。
【0061】
第1蒸留装置20は、反応混合物Mを、C4F9I(n=1)ならびに未反応のC2F5IおよびTFEを含む低重合度中間物フラクションF1と、≧C6F13I(n≧2)を主成分として含む高重合度中間物フラクションF2とに分離する。第1蒸留塔21の塔頂から抜き出された低重合度中間物フラクションF1は、第1凝縮器22で凝縮される。凝縮された低重合度中間物フラクションF1の一部は第1蒸留塔21に還流され、残りは、反応器10に戻される。第1凝縮器21で凝縮されなかった低重合度中間物フラクションF1もまた、第1凝縮器21の頂部から反応器10に戻される。
【0062】
第1蒸留塔21の塔底から抜き出された高重合度中間物フラクションF2は、第2蒸留装置30に送られ、C6F13I(n=2)を主成分として含む最終中間物フラクションF3と、≧C8F17I(n≧3)を含む生成物フラクションFPとに分離される。最終中間物フラクションF3は、第2蒸留塔31の塔頂から取り出され、第2凝縮器32で凝縮される。凝縮された液の一部は第2蒸留塔31に還流され、残りは反応器10に戻される。図において、反応器に戻される最終中間物フラクションF3は、低重合度中間物フラクションF1とともに、1つのラインで戻される。生成物フラクションFPは、第2蒸留塔31の塔底から製品として取り出される。
【0063】
図示した方法においては、2つの蒸留装置が使用される。蒸留装置の数は2に限定されるものでなく、3または4であってよい。例えば、図1に示す方法の応用例として、第1蒸留装置20の前に別の蒸留装置をもう1つ設けて、未反応のRfIおよびTFEを含む低重合度中間物フラクションと、生成されたテロマーの混合物を含む高重合度中間物フラクションとに分離し、得られた高重合度中間物フラクションを図1に示す第1蒸留装置20に送るようにしてよい。その場合、第1蒸留装置20で得られる低重合度中間物フラクションは、C4F9I(n=1)を主たる成分として含み、RfIおよびTFEの割合がより低減されたものとなる。
【0064】
図1は本発明の方法を示す概略図である。図1に示すプロセスは、テロメリゼーションおよび蒸留に常套的に用いられる他の要素または装置を使用することを含んでよい。例えば、図1に示すプロセスは、例えば、蒸留塔の塔底から取り出したフラクションの一部をリボイラーで蒸発させて塔底に戻すことを含んでよい。
【0065】
【発明の効果】
本発明のテロマーの混合物の製造方法は、重合度nが1以上であるテロマーの混合物を蒸留工程に付すことを特徴とする。この特徴により、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるテロマーの混合物を効率良く得ることができる。得られたテロマーの混合物を使用すれば、特定値以上の炭素数(または分子量)を有する種々の化学製品を、選択的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のテロマーの混合物の製造方法の一態様を示す模式図である。
【符号の説明】
10...反応器、20...第1蒸留装置、21...第1蒸留塔、22...第1凝縮器、30...第2蒸留装置、31...第2蒸留塔、32...第2凝縮器。
Claims (8)
- 式(I):
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物をテロメリゼーションにより製造する方法であって、
(1)式RfI(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれか1つを示す)で示されるフルオロアルキルアイオダイドと、テトラフルオロエチレンとを反応させることにより、式(I)で示され、重合度nが1以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む反応混合物を得る工程、ならびに
(2)工程(1)で得た反応混合物を、
式(I)で示され、重合度nが(k−1)以下であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物、および式RfIで示されるフルオロアルキルアイオダイドを含む中間物フラクション、ならびに
式(I)で示され、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む生成物フラクション
に、蒸留により分離する工程
を含む製造方法。 - 中間物フラクションを反応器に戻すことをさらに含む請求項1に記載の製造方法。
- 工程(2)が、工程(1)で得た反応混合物を、
式(I)で示されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーおよび/またはRfIを含むフラクションであって、フラクションに含まれるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの最大重合度が(k−1)以下であり、且つその平均重合度がより小さい低重合度中間物フラクションと、
式(I)で示されるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを含むフラクションであって、その平均重合度がより大きい高重合度中間物フラクション
とに、蒸留により分離することを1回または複数回実施して得た高重合度中間物フラクションを、
式(I)で示され、重合度nが(k−1)であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーを少なくとも含む最終中間物フラクション、および
式(I)で示され、重合度nがk以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を含む生成物フラクション
に、蒸留により分離する工程である、請求項1に記載の製造方法。 - 低重合度中間物フラクションおよび/または最終中間物フラクションを反応器に戻すことを含む請求項3に記載の製造方法。
- 式RfIで示されるフルオロアルキルアイオダイドとしてC2F5Iを使用し、式(I)において、RfがC2F5であり、重合度nが3以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を製造する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 式(III):
で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上である含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を製造する方法であって、
(A)請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法に従って、式(I)で示され、重合度nがk(kは3以上の整数のいずれか1つ)以上であるフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物を得るテロメリゼーション工程、
(B)工程(A)で得たフルオロアルキルアイオダイドテロマーの混合物にエチレンを付加させて、式(II):
(C)工程(B)で得たエチレン付加物の混合物を(メタ)アクリル酸化合物と反応させて、上記含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの混合物を得るエステル化工程
を含む製造方法。
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