JP4536665B2 - カゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法 - Google Patents

カゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4536665B2
JP4536665B2 JP2006030674A JP2006030674A JP4536665B2 JP 4536665 B2 JP4536665 B2 JP 4536665B2 JP 2006030674 A JP2006030674 A JP 2006030674A JP 2006030674 A JP2006030674 A JP 2006030674A JP 4536665 B2 JP4536665 B2 JP 4536665B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
casein hydrolyzate
granulated product
casein
mass
hydrolyzate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2006030674A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007209230A5 (ja
JP2007209230A (ja
Inventor
浩 越智
祐三 浅野
真喜子 平松
貴広 小山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Morinaga Milk Industry Co Ltd
Original Assignee
Morinaga Milk Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Morinaga Milk Industry Co Ltd filed Critical Morinaga Milk Industry Co Ltd
Priority to JP2006030674A priority Critical patent/JP4536665B2/ja
Publication of JP2007209230A publication Critical patent/JP2007209230A/ja
Publication of JP2007209230A5 publication Critical patent/JP2007209230A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4536665B2 publication Critical patent/JP4536665B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
  • Non-Alcoholic Beverages (AREA)

Description

本発明は、カゼイン加水分解物を含有するカゼイン加水分解物含有造粒物、当該カゼイン加水分解物含有造粒物を含有する粉末飲食物、および当該粉末飲食物を含水飲食物に溶解または分散させてなるカゼイン加水分解物含有飲食物に関する。
蛋白質を加水分解すると、ペプチドと遊離アミノ酸との混合物が得られる。かかる蛋白質加水分解物は、単独の蛋白質やアミノ酸混合物と比較して種々の優位性があることが知られるようになり、各方面から注目されている。
例えば栄養学の面では、最近の研究により、ジペプチド及びトリペプチドは、アミノ酸とは別の経路で吸収され、その吸収が構成アミノ酸より速いこと、蛋白質加水分解物からの個々のアミノ酸の吸収量が、アミノ酸混合物からの個々のアミノ酸の吸収量と比べて変動が少ないこと等が明らかになっている[非特許文献1参照]。
このように、低分子量ペプチドや、低分子量ペプチドを含有する蛋白質加水分解物は、は、消化吸収性及び栄養生理の面、その他様々な面から極めて有用であると考えられるようになっており、それらを含有する種々の組成物が提案されている。たとえば特許文献1には、特定のペプチドを含有する乳酸発酵液のホエー画分の造粒物及びその製造方法が開示されている。また、最近は、低分子量ペプチドを配合したスポーツ飲料、疲労回復飲料等の清涼飲料タイプの飲料が多く開発されている。
ところが、飲料中に低分子量ペプチドや蛋白質加水分解物が含まれている場合、殺菌などの加熱時や製品化後の保存中に低分子量ペプチドや蛋白質加水分解物が他の成分と反応し、意図しない外観、風味の劣化が惹起されることがあり、問題となっている。
一方、飲食物の一形態として、消費者が飲用時に自ら加水し、溶解または分散させて飲料とすることができる粉末飲食物が一般的に知られている。
粉末飲食物は、一般的に、複数の原料粉末を粉体混合することにより製造されるため、加熱により、または保存中に、別々の成分が反応する心配がほとんどなく、長期間の保存や流通が可能であるという利点を有している。そのため、蛋白質やその加水分解物についても粉末飲食品が求められている。
しかし、蛋白質やその加水分解物(以下、これらをまとめて蛋白質成分ということがある。)を含む粉末飲食物は、水等に対する溶解性が低いという問題がある。
たとえば、蛋白質成分を含む溶液を噴霧乾燥して得られる微細な粉末をそのまま粉末飲食物として用いた場合、例えば液面上に浮遊したまま沈降しなかったり、水中で塊となって分散しないなどの現象が発生するなどの問題があり、結果、溶解するために時間を要する。そのため、当該粉末飲食物を溶解させるために激しい撹拌操作が必要となるなど取扱いに問題が生じ、そのままでは粉末飲食物に利用するのは困難である。
蛋白質成分の溶解性を向上させる方法の1つとして、造粒を行う方法が知られている。たとえば特許文献2には、当該蛋白質の等電点より酸性領域で加熱処理する等により製造した酸性可溶大豆蛋白を造粒する方法が開示されている。
「代謝」,第27巻,第993〜1000ページ,1990年。 特開2000−204045号公報 特開2005−287506号公報
従来、上記造粒においては、通常、蛋白質成分とともに、糖類、水溶性多糖類等の結着剤などの添加剤が併用されている。そのため、得られる造粒物中には、蛋白質成分以外の成分が多く含まれることとなる。つまり、当該造粒物が、蛋白質含量が低く、目的としない成分が多く含まれるものとなってしまう。
そのため、蛋白質分解物の消化吸収性の高さに着目し、蛋白成分を高純度で補給することを目的として蛋白質分解物の粉末飲食物を得ようとしても、上記のような造粒物を用いてその目的を達成することは困難である。
このような問題に対し、蛋白質分解物を単独で造粒することが考えられる。しかし、蛋白質がカゼインである場合、カゼインはもともと蛋白質含量が比較的高く、その他の成分(脂肪、乳糖等)の含量が低い材料であるため、その加水分解物も蛋白質含量が高く、脂肪含量や乳糖含量が低い。特に、加水分解後に更に精製したカゼイン加水分解物は、極めて脂肪含量及び乳糖含量が低い。脂肪や乳糖の含量が多い材料であれば、それらの成分が造粒工程において結着剤として機能し、単独で造粒できる可能性が考えられるが、カゼイン加水分解物は、乳糖含量及び脂肪含量が低く、単独での造粒には困難を伴う。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高い蛋白質含量を有し、沈降性および/または分散性が高く、優れた溶解性を有するカゼイン加水分解物含有造粒物、当該カゼイン加水分解物含有造粒物を含有する粉末飲食物、および当該粉末飲食物を用いたカゼイン加水分解物含有飲食物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、カゼイン加水分解物を、平均粒子径が50μm以上となるよう造粒した造粒物においては、脂肪含量が1質量%以下、乳糖含量が1質量%以下という少ない含量であっても、蛋白質含量70質量%以上という高い蛋白質含量の造粒物となり、しかも高い沈降性および/または分散性と溶解性とを両立できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち上記課題を解決する本発明、カゼイン加水分解物を含有し、蛋白質含量が70質量%以上、脂肪含量が1質量%以下、乳糖含量が1質量%以下であり、平均粒子径が50μm以上であるカゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法であって、カゼイン加水分解物を含有する原料粉末を水の存在下で造粒する工程と、乾燥する工程を備え、前記造粒する工程が、原料粉末の質量に対する噴霧液量を0.17〜0.5L/kg、原料粉末の質量に対する噴霧流量を0.017〜0.05L/min/kgの条件で、水または結着剤の水溶液を噴霧して造粒する工程であることを特徴とするカゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法。である。
本発明によれば、高い蛋白質含量を有し、沈降性および/または分散性が高く、優れた溶解性を有するカゼイン加水分解物含有造粒物、当該カゼイン加水分解物含有造粒物を含有する粉末飲食物、および当該粉末飲食物を用いたカゼイン加水分解物含有飲食物を提供できる。
次に、本発明について詳細に説明する。尚、本明細書において、百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
<カゼイン加水分解物含有造粒物>
本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物は、カゼイン加水分解物を含有し、蛋白質含量が70質量%以上、脂肪含量が1質量%以下、乳糖含量が1質量%以下である。当該造粒物中の蛋白質含量が多く、その他の成分の含量が少ないことから、蛋白質分解物の消化吸収性の高さに着目し、蛋白成分を高純度で補給することを目的とした飲食品に好適に使用でき特に粉末飲食物への適用が好適である。
カゼイン加水分解物含有造粒物の蛋白質含量は、70〜100質量%が好ましく、84〜100質量%が特に好ましい。
カゼイン加水分解物含有造粒物中の蛋白質含量は、たとえば、ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定し、係数6.38を乗じて蛋白質含量とすることにより算出できる。
カゼイン加水分解物含有造粒物中の蛋白質は、カゼイン加水分解物に由来するものであることが好ましく、カゼイン加水分解物含有造粒物は、カゼイン加水分解物以外の成分に由来する蛋白質は含有しないことが好ましい。
カゼイン加水分解物含有造粒物の蛋白質含量は、使用するカゼイン加水分解物の蛋白質含量、任意に添加するその他の成分の種類と配合量を調整することにより調整できる。たとえば他の成分を使用しない場合は蛋白質含量が70質量%以上のカゼイン加水分解物を用いればよく、また、結着剤等の任意成分を添加する場合はその添加後の造粒物中の蛋白質含量が70質量%以上となるよう、より高い蛋白質含量のカゼイン加水分解物を用いればよい。カゼイン加水分解物の蛋白質含量は、公知の方法により調整でき、たとえば後述するように、加水分解処理を行った後、(1)濾過、(2)精密濾過、限外濾過膜等の膜分離処理、(3)樹脂吸着分離等の方法によって精製することにより高くすることができる。
カゼイン加水分解物含有造粒物の脂肪含量は、1質量%以下であれば特に制限はない。
カゼイン加水分解物含有造粒物中の脂肪含量は、たとえば、レーゼゴットリーブ法(日本食品科学工学会編、「新・食品分析法」、第54ページ、株式会社光琳、平成8年)により測定できる。
カゼイン加水分解物含有造粒物中の脂肪は、カゼイン加水分解物に由来するものであることが好ましく、カゼイン加水分解物含有造粒物は、カゼイン加水分解物以外の成分に由来する脂肪は含有しないことが好ましい。
カゼイン加水分解物含有造粒物の脂肪含量は、使用するカゼイン加水分解物の脂肪含量、任意に添加するその他の成分の種類と配合量を調整することにより調整できる。たとえば他の成分を使用しない場合は脂肪含量が1質量%以下のカゼイン加水分解物を用いればよく、また、結着剤等の任意成分を添加する場合はその添加後の造粒物中の脂肪含量が1質量%以下となる範囲で、より高い脂肪含量のカゼイン加水分解物であっても使用することができる。カゼイン加水分解物の脂肪含量は、公知の方法により調整でき、たとえば後述するように、加水分解処理を行った後、(1)濾過、(2)精密濾過、限外濾過膜等の膜分離処理、(3)樹脂吸着分離等の方法によって精製することにより低くすることができる。
カゼイン加水分解物含有造粒物の乳糖含量は、1質量%以下であれば特に制限はない。
カゼイン加水分解物含有造粒物中の乳糖は、カゼイン加水分解物に由来するものであることが好ましく、カゼイン加水分解物含有造粒物は、カゼイン加水分解物以外の成分に由来する乳糖は含有しないことが好ましい。
カゼイン加水分解物含有造粒物中の乳糖含量は、たとえば、高速液体クロマトグラフィーを用いたアルギニン蛍光法(BUNSEKI KAGAKU、第32巻、第E207ページ、1983年)により、次のようにして測定できる。すなわち、シリカゲル−NHカラム[昭和電工社製。直径6mm及び長さ150mm]を用い、アセトニトリル、水により溶出速度1ml/分で溶出し、蛍光検出器を用いて検出する。
カゼイン加水分解物含有造粒物の乳糖含量は、使用するカゼイン加水分解物の乳糖含量、任意に添加するその他の成分の種類と配合量を調整することにより調整できる。たとえば他の成分を使用しない場合は乳糖含量が1質量%以下のカゼイン加水分解物を用いればよく、また、結着剤等の任意成分を添加する場合はその添加後の造粒物中の乳糖含量が1質量%以下となる範囲で、より高い乳糖含量のカゼイン加水分解物であっても使用することができる。カゼイン加水分解物の乳糖含量は、公知の方法により調整でき、たとえば後述するように、加水分解処理を行った後、(1)濾過、(2)精密濾過、限外濾過膜等の膜分離処理、(3)樹脂吸着分離等の方法によって精製することにより低くすることができる。
カゼイン加水分解物含有造粒物は、平均粒子径が50μm以上である必要があり、50〜130μmがより好ましく、50〜105μmがさらに好ましい。平均粒子径が50μm以上であることにより、沈降性と溶解性とを両立でき、しかも高い蛋白質含量の造粒物が得られる。
カゼイン加水分解物含有造粒物は、その粒度分布において、粒子径が30μ以下の粒子の割合が低いほど、本発明の効果に優れるため好ましい。
カゼイン加水分解物含有造粒物中、粒子径が30μ以下の粒子の割合は、0〜25質量%であることがより好ましい。
カゼイン加水分解物含有造粒物の平均粒子径や粒度分布は、たとえば造粒方法やその造粒条件、たとえば後述する流動層造粒装置の操作条件(吹込み風量、吹込み温度、噴霧液量、噴霧流量、排風温度、ダンパー開度等)、結着剤の種類や量などを調節することにより調節できる。
[カゼイン加水分解物]
カゼイン加水分解物は、カゼインの加水分解により得られるものである。
本発明において、カゼイン加水分解物は、造粒時の結着剤の使用の有無、使用する結着剤の種類と添加量等にもよるが、当該カゼイン加水分解物を用いて得られる造粒物の蛋白質含量が70質量%以上、脂肪含量が1質量%以下、乳糖含量が1%以下であることから、少なくとも、蛋白質含量が70質量%以上であるものが好ましい。
カゼイン加水分解物の蛋白質含量は、80〜100質量%がより好ましく、84〜100質量%が特に好ましい。
カゼイン加水分解物は、カゼインの分解率が15%以上30%以下であることが好ましく、20%以上25%以下であることがより好ましい。分解率が上記範囲の下限値以上であることにより、消化吸収性を向上させることができ、上記範囲の上限値以下であることにより過度な苦味を抑えることができる。そのため、飲食物としたときの風味が良好で、飲食物用として好適である。
分解率(%)は、原料蛋白質溶液の全窒素量当たりの分解溶液のホルモル態窒素量の百分率であり、次の方法により求められる。
蛋白分解溶液4mlと蒸留水30mlを混合し、0.2N水酸化ナトリウム溶液又は塩酸溶液でpHを6.8に調整する。この溶液を0.2N水酸化ナトリウム溶液でpHを8.0に調整したホルマリン溶液5mlを添加し、0.1N水酸化ナトリウム溶液でpHが7.9に達するまで滴定する。この時の滴定量をAml、0.1N水酸化ナトリウム溶液のファクターをF、原料蛋白質溶液の蛋白濃度をB(%)として、分解率を次式から算出する。
分解率(%)=22.3×A×F/B
分解率は、カゼインを加水分解させる際の反応条件(加水分解の反応温度、反応時間、酵素添加量等)を調整し、加水分解の程度を調整することにより調整できる。
また、カゼイン加水分解物は、当該カゼイン加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合で表されるアミノ酸遊離率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。アミノ酸遊離率が上記範囲の上限値以下であることにより、遊離アミノ酸に由来する不快味を抑えることができる。アミノ酸遊離率の下限値は特に制限されず、ゼロでもよい。
アミノ酸遊離率は、以下の手順で求めることができる。
(1)アミノ酸組成の測定
トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミノ酸については、試料を6N塩酸で110℃、24時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6N塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸分析機(日立製作所製。835型)により分析し、アミノ酸の質量を測定する。
なお、この方法では、試料のグルタミンとグルタミン酸の量は、両者を合わせた合計量であるグルタミン酸分析値として定量される。
(2)アミノ酸遊離率の算定
試料中の各アミノ酸組成を前記(1)の方法により測定し、これを合計して試料中の全アミノ酸の質量を算出する。次いで、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、残留する各遊離アミノ酸の質量を前記(1)の方法により測定し、これを合計して試料中の全遊離アミノ酸の質量を算出する。これらの値から、試料中のアミノ酸遊離率を次式により算出する。
アミノ酸遊離率(%)=(全遊離アミノ酸の質量/全アミノ酸の質量)×100
アミノ酸遊離率は、カゼインを加水分解させる際の酵素の種類、酵素の添加量、反応時間、及び/又は加水分解後の精製条件(膜分離、樹脂吸着分離)等により調整できる。
カゼイン加水分解物は、市販のものを用いてもよく、また、カゼインを加水分解して調製してもよい。
以下、カゼイン加水分解物の製造方法について説明する。
原料であるカゼインは、乳由来の蛋白質を主成分とするものであり、カゼインとしては、市販の各種カゼイン、カゼイネート等が利用でき、例えば、乳酸カゼイン、硫酸カゼイン、塩酸カゼイン、ナトリウムカゼイネート、カリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネート、マグネシウムカゼイネート又はこれらの任意の混合物等が望ましい。また、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳から常法により精製したカゼインも利用できる。
カゼインは、当該カゼインの加水分解物を用いて得られるカゼイン加水分解物含有造粒物中の蛋白質含量が70質量%以上であることから、少なくとも、蛋白質含量が、目的とするカゼイン加水分解物含有造粒物中の蛋白質含量と同等以上であることが好ましい。
カゼインの蛋白質含量は、80〜100質量%がより好ましく、84〜100質量%が特に好ましい。
カゼインの加水分解方法としては、蛋白分解酵素等の酵素を用いる方法が好ましい。
以下、カゼイン加水分解物の製造方法の好ましい一例を説明する。この例では、カゼインを蛋白質分解酵素を用いて加水分解する。
まず、原料(カゼイン)を水に分散し溶解する。
該溶解液の濃度は格別の制限はないが、通常、蛋白質換算で5〜15質量%前後の濃度範囲にするのが効率性及び操作性の点から好ましい。
次に、溶解液のpHを、使用する蛋白分解酵素の至適pH付近に調整することにより原料水溶液を調製する。具体的には、溶解液のpHを、アルカリ溶液を用いて、多くの蛋白質分解酵素の至適pHがその範囲内に含まれるpH7〜10に調整することが好ましい。
pH調整に用いるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等を例示することができる。
次に、調製した原料水溶液に蛋白質分解酵素を添加する。
蛋白質分解酵素としては、細菌由来、動物由来、植物由来の蛋白質分解酵素があり、いずれのものも使用できる。
細菌由来の蛋白質分解酵素としては、バシラス属由来のエンドプロテアーゼとして、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製)、ニュートラーゼ(ノボザイムズ社製)、プロチンA(大和化成社製)、プロチンP(大和化成社製)、プロレザー(天野エンザイム社製)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)、コロラーゼ7089(樋口商会社製)、ビオプラーゼ(ナガセケムテック社製)、オリエンターゼ90N(エイチビイアイ社製)、オリエンターゼ22BF(エイチビイアイ社製)等を例示することができる。
動物由来の蛋白質分解酵素としては、トリプシンを主成分とするPTN(ノボザイムズ社製)、トリプシンV(日本バイオコン社製)等を例示することができる。
植物由来の蛋白質分解酵素としては、パパイン(天野エンザイム社製)、ブロメライン(天野エンザイム社製)を例示することができる。
これらの蛋白質分解酵素は単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
蛋白質分解酵素は、4〜10℃の冷水に分散し、溶解して使用することが好ましい。該蛋白質分解酵素の溶解液の濃度は、格別の制限はないが、通常、酵素濃度が3〜10%程度となる量で使用することが効率性及び操作性の点から望ましい。
カゼイン加水分解に用いる蛋白質分解酵素の使用量は、基質濃度、酵素力価、反応温度、及び反応時間により異なるが、一般的には、カゼインの蛋白質換算質量1g当たり1000〜20000単位(活性単位)の割合を望ましい態様として例示することができる。
ここで、蛋白質分解酵素の活性単位は、使用する蛋白質分解酵素の種類に応じて測定できる。
たとえばエンドプロテアーゼの活性単位は、カゼイン([ハマーシュタイン]メルク社製)にエンドペプチダーゼを作用させ、30℃で1分間に1μgのチロシンに相当するアリルアミノ酸のフォリン試薬での呈色反応を示す酵素活性が1活性単位である。
また、ペプチダーゼの活性単位は、次の方法により測定できる。ペプチダーゼを含有する粉末を0.2g/100mlの割合で0.1モルのリン酸緩衝液(pH7.0)に分散又は溶解し酵素溶液とする。一方、ロイシルパラニトロアニリド(国産化学社製。以下Leu−pNAと記載する)を0.1モルのリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解して2mMの基質溶液を調製する。酵素溶液1mlに基質溶液1mlを加え37℃で5分間反応させた後、30%の酢酸溶液2mlを加えて反応を停止させる。反応液をメンブランフィルターで濾過し、波長410nmで濾液の吸光度を測定する。ペプチダーゼの活性単位は、1分間に1μmolのLeu−pNAを分解するのに必要な酵素量が1活性単位であり、次式により算出する。
活性単位(粉末1g当たり)=20×(A/B)
(ただし、前記の式においてA及びBは、それぞれ波長410nmにおける試料の吸光度及び0.25mMパラニトロアニリンの吸光度である)
蛋白質分解酵素の添加に当っては、1種類ずつ溶解し、添加することが望ましいが、添加の順番には特に制限はない。
酵素反応中、反応系の温度は格別の制限はなく、酵素作用の発現する最適温度範囲を含む実用に供され得る範囲から選ばれ、通常30〜60℃の範囲から選ばれる。
反応継続時間は、反応温度、初発pH等の反応条件によって進行状態が異なり、たとえば酵素反応の反応継続時間を一定とすると製造バッチ毎に異なる理化学的性質を有する分解物が生じる可能性があるため、一該に決定できない。従って、酵素反応をモニターし、分解率、アミノ酸遊離率等の理化学的性質が所望の値となるように反応継続時間を決定することが好ましい。
酵素反応のモニタリングは、たとえば当該反応溶液の一部を採取し、後述する蛋白質の分解率等を測定することにより実施できる。
次に、酵素反応を停止させる。
酵素反応の停止は、加水分解液中の酵素を失活させることにより行われる。失活処理は、常法、たとえば加熱失活処理により実施することができる。
加熱失活処理の条件(加熱温度、加熱時間等)は、使用した酵素の熱安定性を考慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができ、例えば、80〜130℃の温度範囲で30分間〜2秒間の保持時間で行うことができる。
酵素反応停止後、得られた加水分解失活液を、(1)濾過、(2)精密濾過、限外濾過膜等の膜分離処理、及び(3)樹脂吸着分離からなる群から選択されるいずれか1種、又はそれらの2種以上の組合せによって精製することが好ましい。
精製を行うことにより、当該失活液中に含まれる不溶物の除去、脂肪や乳糖、その他の不要な成分の低減等を行うことができ、たとえば蛋白質含量が70質量%以上、脂肪含量が1質量%以下、乳糖含量が1%以下のカゼイン加水分解物を得ることができる。精製回数を増やすほど、得られるカゼイン加水分解物の蛋白質含量が向上し、脂肪含量および乳糖含量が低減される。さらに、精製を行うことにより、カゼイン加水分解物の風味、外観等を向上させることができ、結果、本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物や粉末飲食物、カゼイン加水分解物含有飲食品等の風味、外観等も向上する。
(1)の濾過は、従来公知の方法により実施することができ、たとえば珪藻土を用いて公知の装置を用いることができる。
濾過を行うことにより、加水分解失活液中に存在する加水分解反応時及び/又は酵素加熱失活時に生成した不溶物を除去できる。結果、得られるカゼイン加水分解物中の蛋白質含量が向上する。
(2)の膜分離処理は、公知の装置を用いて行うことができ、かかる装置としては、精密濾過モジュール等、限外濾過モジュールSEP1053(旭化成社製、分画分子量3,000)、SIP1053(旭化成社製、分画分子量6,000)、SLP1053(旭化成社製、分画分子量10,000)等を例示することができる。
この場合、膜分離処理後の膜透過画分としてカゼイン加水分解物を含有する溶液が得られる。
膜分離処理を行うことにより、(1)のろ過と同様、加水分解失活液中に存在する加水分解反応時及び/又は酵素加熱失活時に生成した不溶物を除去できる。結果、得られるカゼイン加水分解物中の蛋白質含量が向上する。
(3)の樹脂吸着分離は、公知の方法により実施することができ、たとえば樹脂をカラムに充填し、前記加水分解失活液を当該カラムを通過させることにより行うことができる。
樹脂としては、商品名,:ダイヤイオン、セパビーズ(三菱化学社製)、アンバーライトXAD(オルガノ社製)、KS−35(味の素ファインテクノ社製)などを例示することができる。
樹脂吸着分離は、これらの樹脂をカラムに充填して前記加水分解失活液を連続的に流入させ流出させることによる連続式で行うこともでき、また前記加水分解失活液中に樹脂を投入し、一定時間接触させた後、加水分解失活液と樹脂とを分離するバッチ方式で行うこともできる。
加水分解失活液中には、保存期間中に混濁、沈殿、凝集及び褐変等を惹起する因子(たとえば疎水性アミノ酸を多く含むペプチド等)が残存している可能性があり、樹脂吸着分離を行うことにより、これらの因子を除去できる。結果、得られるカゼイン加水分解物中の蛋白質含量が向上する。
精製後、得られたカゼイン加水分解物を含有する溶液は、殺菌してもよい。
殺菌方法は、常法による加熱処理方法を用いることができる。
加熱処理時の加熱温度と保持時間は、充分に殺菌できる条件を適宜設定すればよく、例えば、70〜140℃で2秒間〜30分間加熱処理することにより殺菌できる。
加熱殺菌の方式は、バッチ式、連続式いずれも可能であり、連続式においてもプレート熱交換方式、インフュージョン方式、インジェクション方式などいずれの方式も用いることができる。
このようにして得られるカゼイン加水分解物を含有する溶液は、公知の方法により、たとえば減圧濃縮機等を用いて濃縮し、噴霧乾燥機等を用いて噴霧乾燥し、粉末化する。
この時得られる噴霧乾燥粉末の平均粒子径は、使用する噴霧乾燥機の形状、噴霧乾燥条件などを調節することにより調節できる。
このようにして得られる噴霧乾燥粉末、すなわち、カゼインを、1種または2種以上の蛋白質分解酵素を用いて加水分解し、加水分解液を失活し、濾過又は膜分離又は樹脂吸着分離で精製し、濃縮し、噴霧乾燥機等により乾燥することで得られる粉末は、原料粉末として、カゼイン加水分解物含有造粒物の製造に用いられる。
このとき、噴霧乾燥粉末は、そのまま、原料粉末として本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物の製造に用いてもよく、また、結着剤等の他の成分とともに再度溶液とし、乾燥し、粉末化することにより、カゼイン加水分解物と他の成分とを含有する混合粉末として本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物の製造に用いてもよい。
また、本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物に含まれるカゼイン加水分解物は、カルシウム不溶化防止効果を有することが好ましい。
ここで、本発明における「カゼイン加水分解物がカルシウム不溶化防止効果を有する」とは、下記の測定方法で測定されるカルシウム可溶化率が95%以上であることをいう。
「カルシウム可溶化率の測定方法」
まず、以下の各種溶液を調整する。
塩化カルシウム溶液:試薬特級の塩化カルシウム(和光純薬工業社製)を精製水に20mMの濃度で溶解する。
リン酸緩衝液:20mMの濃度(pH7.0)に調整する。
希塩酸溶液:0.1Nの濃度に調整する。
次に、塩化カルシウム溶液1mlと試料溶液1mlを試験管にとり、リン酸緩衝液2mlを添加し、37℃で2時間保持する。反応液をフィルター(0.45μm)で濾過し、濾液0.5mlに希塩酸溶液0.1mlを添加し、濾液のカルシウム量を平沼Ca−Mgカウンター(平沼産業社製)で測定する。
そして、「最初に添加した塩化カルシウム溶液中のカルシウム量」に対する「最初に添加した塩化カルシウム溶液中のカルシウム量と濾液中のカルシウム量との差」の百分率を算出し、各試料のカルシウムの可溶化率を測定する。
[カルシウム不溶化防止効果を有するカゼイン加水分解物の調製方法]
カルシウム不溶化防止効果を有するカゼイン加水分解物(以下、カゼインホスホオリゴペプチド混合物という。)は、例えば以下の方法で調製することができる。
カゼインホスホオリゴペプチド混合物の原料としては、各種酸カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム等の原料カゼイン物質、及び牛乳、脱脂乳等を用いることができる。これらの原料カゼイン物質や牛乳、脱脂乳等は市販品を使用できる。
牛乳、脱脂乳等は、そのまま蛋白質分解酵素により加水分解し、原料カゼイン物質は5〜18%、望ましくは10〜15%濃度の水性溶液として蛋白質分解酵素により加水分解する。
蛋白質分解酵素は、パンクレアチン、エキソペプチダーゼ、及びその他のプロテアーゼからなる群から選択される少なくとも2種類の酵素を組み合わせて用いる。特に、パンクレアチンとエキソペプチダーゼとの組み合わせ、パンクレアチンとエキソペプチダーゼと他のプロテアーゼとの組み合わせを用いることが好ましい。
使用されるエキソペプチダーゼとしては、カルボキシペプチダーゼ、アスペルギルス・プロテアーゼ、ストレプトコッカス・プロテアーゼ、リゾーブス・プロテアーゼ、乳酸菌プロテアーゼ等が挙げられる。
その他のプロテアーゼとしては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、ズブチリシン、エラスターゼ、プロリン特異性プロテアーゼ、パパイン、ペプシン、サーモリシン等が挙げられる。
酵素の使用量は、制限するものではないが、蛋白質分解酵素の活性単位の総和が蛋白質1g当たり1200〜6000単位の範囲、望ましくは1500〜5000単位の範囲で用いることが好ましい。
酵素処理は、制限するものではないが、pH5.0〜8.0、望ましくは6.5〜7.5の範囲で、40〜55℃、望ましくは45〜52℃の温度で、12時間以上、望ましくは16〜18時間保持して行うことが好ましい。
酵素処理は、浸透圧の改善の観点から、過度の分解を避けて行うことが好ましい。
酵素反応の停止は加熱により行うことが好ましい。
次に、得られた加水分解物から、分子量500〜1000の画分を分別する。
目的とする分子量500〜1000の画分を分別する方法としては、分子量分画が望ましい。分子量分画には、限外濾過、ゲル濾過等の方法が採用できる。分子量分画は、必要に応じ反復して不要な分子量のペプチドの除去率を高めることができる。
分子量分画の中でも、目的とする分画の厳密であり、効率的な回収の観点から、ゲル濾過が特に推奨される。
ゲル濾過は、排除限界分子量10000以下、望ましくは1000以下のゲル濾過剤を使用することが好ましく、特に、芳香族アミノ酸に吸着性を有する疎水性側鎖(例えばカルボキシル基、ブチル基、フェニル基等)又は疎水的部位を有するゲル濾過剤[例えば、オクチルセファロースCL−4B、フェニルセファロースCL−4B、ブチルセファロース4B(何れもファルマシア社製)]を使用することが好ましい。
溶出液としては、水を用いるか、又は芳香族アミノ酸に吸着性を高めるために2〜15%濃度のエタノール溶液を用いることが好ましい。
分画に用いるカラムとしては、カラム高10〜30cmのものが好ましい。
次に、得られた分画を精製してカゼインホスホオリゴペプチド混合物を得る。
得られた分画の精製は、例えば下記の方法で行うことができる。まず、得られた分画を陰イオン交換体、望ましくは弱塩基性陰イオン交換体[例えばDEAEセファデックスA−25(ファルマシア社製)等]に吸着させ、1.0〜5.0%、望ましくは2.0〜4.0%の塩溶液(例えば、食塩水溶液)を通液し、カゼインホスホオリゴペプチド混合物を溶出させる。得られた溶出液を公知の方法で脱塩し、濃縮し、液状のカゼインオリゴホスホペプチド混合物を得る。濃縮後、公知の方法で乾燥し、粉末状のカゼインホスホオリゴペプチド混合物を得ることもできる。
こうして得られるカゼインホスホオリゴペプチド混合物はカルシウム不溶化防止効果を有する。
また、上記の調製法によれば、カルシウム不溶化防止効果を有するとともに下記の理化学的性状を有するカゼイン加水分解物を得ることができる。かかるカゼイン加水分解物は、抗原性が低く、リンの含有量が高いという利点を有する。
(1)アミノ酸残基数が5〜10である。
(2)主たる構成アミノ酸がグルタミン酸、セリン、アスパラギン酸、イソロイシンである。
(3)分子量分布が500〜1000である。
(4)窒素/リンの分子数比が5.0以下である。
カゼインホスホオリゴペプチド混合物の構成アミノ酸の組成は上述したアミノ酸遊離率の測定方法の項で示したアミノ酸組成の測定方法により測定できる。
カゼインホスホオリゴペプチド混合物の分子量分布は、たとえば高速液体クロマトグラフィーにより、宇井信生ら編「タンパク質・ペプチドの高速液体クロマトグラフィー」、化学増刊第102号、第241頁、株式会社化学同人(1984年)に記載の方法に準拠して測定することができる。
具体的には、ポリハイドロキシエチル・アスパルタミド・カラム[Poly Hydroxyethyl Aspartamide Column:ポリ・エル・シー(Poly LC)社製。直径4.6mm及び長さ220mm]を用い、20mM塩化ナトリウム、50mMギ酸により溶出速度0.4ml/分で溶出する。検出はUV検出器(島津製作所社製)を用い、データ解析はGPC分析システム(島津製作所社製)を使用する。
[その他の成分]
本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物は、本発明の効果を損なわない範囲で、カゼイン加水分解物以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、結着剤、酸味料、甘味料、フレーバー、ミネラル、アミノ酸、ペプチド等が挙げられる。
結着剤は、含有してもよく、含有しなくてもよいが、結着剤を含有することにより、操作条件の変動による影響を低減でき、造粒を安定的に実施できる。そのため、造粒物の品質も向上する。
結着剤としては、一般的に造粒に用いられているものが使用できる。本発明において、結着剤としては、水溶性多糖類が好ましく、水溶性多糖類としては、マルツデキストリン、グアガム、ペクチン、アラビアガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、ジェランガム、キサンタンガム等が例示できる。これらの中でも、特にグアガムが、効果が高く、少量で充分な効果が得られるため好ましい。
結着剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、複数組み合わせて使用してもよい。
結着剤を含有する場合、その含量は、カゼイン加水分解物含有造粒物中の蛋白質含量が70%未満にならない範囲であれば適宜設定することができる。好ましくは、カゼイン加水分解物含有造粒物の総質量に対し、5質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、ゼロであってもよい。
結着剤は、造粒前にカゼイン加水分解物の粉末と混合してもよく、また、造粒時に水溶液とし、噴霧液としてカゼイン加水分解物に噴霧してもよい。
本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物は、蛋白質含量の向上等を考慮すると、カゼイン加水分解物および結着剤以外の成分は含有しないことが好ましい。
[造粒方法]
本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物は、上記カゼイン加水分解物を含有する粉末(原料粉末)を、水の存在下で造粒し、乾燥することにより製造できる。
かかる造粒は、従来粉末の造粒に用いられている方法、たとえば流動層造粒法、押出造粒法等が利用でき、本発明においては、造粒流動層造粒法を用いて行われることが好ましい。
流動層造粒法は、従来公知の流動層造粒装置を用いて行うことができる。
流動層造粒装置は、装置の下部から空気等の流体を吹き上げ、固体粒子(原料粉末)を浮遊(流動)状態とし、これに噴霧液を噴霧して造粒、乾燥を行う装置であり、流動層造粒装置としては、市販の流動層造粒機を用いることができる。
本発明においては、平均粒子径が50μm以上となるように、流動層造粒装置の各操作条件を調整して造粒を行うことが好ましい。
このとき調整される操作条件としては、噴霧液の種類、噴霧液量、噴霧流量、吹込み風量、吹込み風温、排風温度、ダンパー開度などが挙げられる。これらの中でも、特に、噴霧液量および噴霧流量を調節することが、平均粒子径50μm以上の造粒物を得やすいため好ましい。
噴霧液としては、水、結着剤の水溶液等が挙げられる。
噴霧液として結着剤の水溶液を用いる場合、結着剤の濃度は、結着剤の種類等を考慮し、噴霧可能な濃度とすればよい。通常、0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましく、1〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
噴霧液量(原料粉末の質量あたりの噴霧液の噴霧量)は、目的とする平均粒子径、結着剤の使用の有無、使用する結着剤の種類と量等を考慮して設定すればよい。平均粒子径50μm以上の造粒物を得やすいことから、0.1L/kg以上であることが好ましく、0.15L/kg以上がより好ましく、0.17以上がさらに好ましい。噴霧液量を大きくするほど造粒物の平均粒子径を大きくすることができる。噴霧液量の上限は、特に制限はないが、造粒物の好ましい平均粒子径や、過度の湿潤が防止されて良好な品質の造粒物が得られること等の点で、0.5L/kg以下が好ましく、0.4L/kg以下がより好ましい。
噴霧流量(原料粉末の質量あたりの噴霧液の流量)は、目的とする平均粒子径、結着剤の使用の有無、使用する結着剤の種類と量等を考慮して設定すればよい。平均粒子径50μm以上の造粒物を得やすいことから、0.01L/分(min)/kg以上が好ましく、0.015L/min/kg以上がより好ましく、0.017L/min/kg以上がさらに好ましく、0.02L/min/kg以上が特に好ましい。噴霧流量を大きくするほど造粒物の平均粒子径を大きくすることができる。噴霧流量の上限は、特に制限はないが、造粒物の好ましい平均粒子径や、過度の湿潤が防止されて良好な品質の造粒物が得られること等の点で、0.05L/min/kg以下が好ましく、0.04L/min/kg以下がより好ましい。
上記本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物は、蛋白質含量が70質量%以上と高く、しかも水等に対する沈降性および/または分散性、ならびに溶解性が良好なものである。
かかる性質を有することから、本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物は、蛋白質供給源として有用なものであり、そのまま、またはその他の粉末状の成分と混合して、高い蛋白質含量を粉末飲食物として利用できる。また、本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物は、水等の含水飲食物に分散または溶解させてカゼイン加水分解物含有飲食物とすることもできる。
<粉末飲食物>
本発明の粉末飲食物は、上記本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物を含有するものである。かかる粉末飲食物は、上記本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物と同様、水に対する沈降性および溶解性が良好である。そのため、水等に溶解または分散させやすく、そのため、消費者が飲用時に自ら加水し、溶解または分散させて飲料等の飲食物とすることができる粉末飲食物として有用である。
粉末飲食物は、カゼイン加水分解物含有造粒物以外の成分を含有してもよい。
カゼイン加水分解物含有造粒物以外の成分としては、一般的に粉末飲食品に配合されている任意の食品原料を用いることができる。
食品原料としては、特に限定されず、酸味料(クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、リン酸)、甘味料・糖類(ショ糖、果糖、麦芽糖、ブドウ糖、異性化糖、粉末水飴、デキストリン、オリゴ糖、多糖類、環状オリゴ糖、高甘度甘味料(アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウムなど)など)、ビタミン類(アスコルビン酸(ビタミンC)、葉酸、パントテン酸、ビタミンB群、リボフラビン、ビタミンA、D、E、K、Pなど)、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄、亜鉛など)、食物繊維(難消化性デキストリンなど)、油脂類、着色料、各種生理活性物質(イソフラボン、ラクトフェリン、タウリン、γ−アミノ酪酸、カテキン、没食子酸、セサミン、クロロゲン酸、ルチン、アントシアニン、セラミド、DHA、β−カロチン、コエンザイムQ10、リコピンなど)、フレーバー類(グレープフルーツフレーバー、オレンジフレーバー、アップルフレーバー、シュガーフレーバー、パイナップルフレーバー、ライチフレーバー、ヨーグルトフレーバー、チョコフレーバー、スイートフレーバー、ピーチフレーバー、レモンフレーバー、ペアフレーバーなど)等が例示できる。
これらの他の成分は、カゼイン加水分解物含有造粒物との混和性を考慮すると、粉末であることが好ましく、特に、平均粒子径が30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
また、水等に溶解又は分散させて飲食物とする際の溶解性を考慮すると、平均粒子径が150μm以下であることが好ましく、105μm以下であることがより好ましい。
これらの他の成分は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記本発明の粉末飲食物は、蛋白質含量が70質量%以上と高く、しかも水等に対する沈降性および/または分散性、ならびに溶解性が良好な本発明のカゼイン加水分解物含有造粒物を含有するものである。
そのため、本発明の粉末飲食物は、蛋白質供給源として有用なものであり、そのまま飲食物として利用できる。また、本発明の粉末飲食物は、水等の含水飲食物に分散または溶解させてカゼイン加水分解物含有飲食物とすることもできる。
<カゼイン加水分解物含有飲食物>
本発明のカゼイン加水分解物含有飲食物は、上記本発明の粉末飲食物を含水飲食物に溶解又は分散させてなるものである。
粉末飲食物を溶解又は分散させる含水飲食物としては、特に制限はなく、水(冷水、熱水)の他、果汁、野菜汁、乳製品(牛乳、ヨーグルト、乳清飲料、乳飲料、加工乳など)、アルコール飲料(焼酎、日本酒、ワイン、リキュール、ウイスキーなど)等が例示できる。
カゼイン加水分解物含有飲食物の調製方法は、特に制限はなく、たとえば含水飲食物と粉末飲食物とを混合することにより調製できる。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
下記試験例および実施例において用いた蛋白質含量、脂肪含量、乳糖含量、分解率およびアミノ酸遊離率の測定方法を以下に示す。
[蛋白質含量]
ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試料(噴霧乾燥品または造粒物)の全窒素量を測定し、係数6.38を乗じて蛋白質含量とすることにより算出した。
[脂肪含量]
レーゼゴットリーブ法(日本食品科学工学会編、「新・食品分析法」、第54ページ、株式会社光琳、平成8年)により測定した。
[乳糖含量]
高速液体クロマトグラフィーを用いたアルギニン蛍光法(BUNSEKI KAGAKU、第32巻、第E207ページ、1983年)により、次のようにして測定した。すなわち、シリカゲル−NHカラム[昭和電工社製。直径6mm及び長さ150mm]を用い、アセトニトリル、水により溶出速度1ml/分で溶出した。検出は蛍光検出器を用いた。
[分解率]
加水分解されたカゼインを含有する溶液(蛋白分解溶液)4mlと蒸留水30mlを混合し、0.2N水酸化ナトリウム溶液又は塩酸溶液でpHを6.8に調整した。この溶液に、0.2N水酸化ナトリウム溶液でpHを8.0に調整したホルマリン溶液5mlを添加し、0.1N水酸化ナトリウム溶液でpHが7.9に達するまで滴定した。この時の滴定量をAml、0.1N水酸化ナトリウム溶液のファクターをF、原料蛋白質溶液の蛋白濃度をB(%)として次式から分解率を算出した。
分解率(%)=22.3×A×F/B
[アミノ酸遊離率]
(1)アミノ酸組成の測定
トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミノ酸については、試料を6N塩酸で110℃、24時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及びメチオニンについては、過ぎ酸処理後、6N塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸分析機(日立製作所製。835型)により分析し、アミノ酸の質量を測定した。
なお、この方法では、試料のグルタミンとグルタミン酸の量は、両者を合わせた合計量であるグルタミン酸分析値として定量される。
(2)遊離アミノ酸組成の測定方法
試料中の各アミノ酸組成を前記(1)の方法により測定し、これを合計して試料中の全アミノ酸の質量を算出した。次いで、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、残留する各遊離アミノ酸の質量を前記(1)の方法により測定し、これを合計して試料中の全遊離アミノ酸の質量を算出した。これらの値から、試料中のアミノ酸遊離率を次式により算出した。
アミノ酸遊離率(%)=(全遊離アミノ酸の質量/全アミノ酸の質量)×100
(試験例)
この試験は、カゼイン加水分解物含有造粒物が良好な沈降性及び溶解性を示す好適な平均粒子径の範囲を調べるために行った。
1)試料の調製
「試料番号1〜8の造粒物の製造」
後述する実施例1と同一の方法で得た粉末状のカゼイン加水分解物各100質量部と、表1に示す結着剤(表1にしめす使用量[%]は、カゼイン加水分解物の使用量に対する当該結着剤の使用量の割合である。)とを混合し、水に溶解してカゼイン加水分解物溶液を調製した。
次に、調製した各カゼイン加水分解物溶液を再度、噴霧乾燥してカゼイン加水分解物含有粉末を得た。
次に、各カゼイン加水分解物含有粉末を原料粉末として用い、下記の手順で造粒を実施した。
原料粉末1kgを流動層造粒機(大川原製作所製)に投入し、造粒の際の噴霧液として水を用い、吹込み温度60℃、吹込み風量0.1m/min、噴霧液の液温25℃、表1に示す噴霧流量[L/min/kg]、表1に示す噴霧液量[L/kg]で造粒したのち、吹込み温度を80℃まで上げ、排風温度が40℃となるまで乾燥を実施し、下記表1の試料番号1〜8の造粒物を得た。
「試料番号9〜13の造粒物の製造」
実施例1と同一の方法で得た粉末状のカゼイン加水分解物を原料粉末として用い、下記の手順で造粒を実施した。
原料粉末1kgを流動層造粒機(大川原製作所製)に投入し、造粒の際の噴霧液として、表1中に結着剤の種類の項に「なし」と記載した例では水を用い、「グアガム」と記載した例ではグアガム(太陽化学社製:商品名「ネオソフトG」)の0.3質量%溶液を用いて、吹込み温度60℃、風量0.1m/min、噴霧液の液温25℃、表1に示す噴霧流量[L/min/kg]、表1に示す噴霧液量[L/kg]で造粒したのち、吹込み温度を80℃まで上げ、排風温度が40℃となるまで乾燥を実施し、下記表1の試料番号9〜12の造粒物を得た。
各造粒物の製造に用いた原料粉末については、下記2)試験方法に示したのと同様の方法で平均粒子径を測定し、その結果を表1に示した。
得られた試料番号1〜13の造粒物について、下記2)の試験方法に示す粒度分布及び平均粒子径の測定、ならびに沈降性及び溶解性の評価を行った。その結果を表2に示す。
2)試験方法
[平均粒子径及び粒度分布の測定]
造粒物の平均粒子径及び粒度分布の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社)を用いて実施した。
[沈降性及び溶解性の評価]
造粒物の沈降性及び溶解性の確認は次の方法で実施した。
まず、造粒物2.5gを50mlの精製水の入った100ml容ビーカーに一度に投入して造粒物の沈降性を確認し、その後引き続き、薬さじを用いて一定速度で撹拌して溶解性を確認した。
沈降性の評価は、造粒物を投入してから全ての粉末が水中に没するまでに要する時間が、5秒以内の場合を○、5秒超1分以内の場合を△、1分超の場合を×とした。
溶解性の評価は、造粒物が水中に沈降した後、一定速度(1分間当たり60回転)で薬さじを用いて撹拌して、造粒物が完全に溶解するのに要した時間が30秒以内の場合を○、30秒超1分以内の場合を△、1分超の場合を×とした。
3)試験結果
表2に示す結果から明らかなように、平均粒子径が50μm以上である試料番号8〜12の造粒物は、沈降性および溶解性がともに良好であり、特に平均粒子径が50〜105μmの範囲内である試料番号8〜11の造粒物は、沈降性および溶解性の評価がともに○であった。
また、試料番号8〜12の造粒物は、粒子径が30μm以下の粒子の割合が25%以下と低かった。
一方、平均粒子径が50μm未満である試料番号1〜7,13の造粒物は、沈降性が悪かった。たとえば試料番号4の造粒物を試料番号8の造粒物と比較すると、原料粉末の平均粒子径、結着剤の種類と使用量が同じであるにも関わらず、試料番号4の造粒物は沈降性が悪かった。また、試料番号13の造粒物を試料番号9の造粒物と比較すると、原料粉末の平均粒子径が同じであり、どちらも結着剤を使用していないにも関わらず、試料番号13の造粒物は沈降性および溶解性の両方が悪かった。
また、試料番号1〜7,13の造粒物は、粒子径が30μm以下の粒子の割合が30%以上と高かった。
Figure 0004536665
Figure 0004536665
(実施例1)
市販のカゼイン(フォンテラ社製)1kgに水9kgを添加し、均一に分散させ、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、溶液のpHを7.0に調整し、カゼインを完全に溶解し、濃度約10%のカゼイン水溶液を調製した。
該カゼイン水溶液を85℃で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.5に調整し、ビオプラーゼsp−20(長瀬生化学工業社製) 1,008,000活性単位(蛋白質1g当り1,200活性単位)、プロテアーゼN(天野製薬社製)1,680,000 活性単位(蛋白質1g当り2,000活性単位)、及びPTN6.0S(ノボ・ノルディスク社製)5,880,000活性単位(蛋白質1g当り7,000活性単位)を添加して加水分解反応を開始し、経時的に酵素反応を分解率によりモニタ−し、分解率が24.1%に達した時点で、80℃で6分間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
この加水分解液に、濾過助剤としてスタンダードスーパーセル(東京硅藻土社製)を添加し、吸引濾過した。
次いで、得られた濾過液を、イオン交換樹脂[アンバーライトXAD−7(オルガノ社製)]に対して、SV(空間速度)=2.5h−1、温度10℃の条件で接触させる吸着分離処理を行い、カゼイン加水分解物含有溶液を得た。
得られたカゼイン加水分解物含有溶液を常法により濃縮し、噴霧乾燥し、噴霧乾燥品(粉末状のカゼイン加水分解物)0.90kgを得た。
得られたカゼイン加水分解物の平均粒子径を上記試験例1と同様の方法で測定したところ27.2μmであった。
次に、得られたカゼイン加水分解物を原料粉末として用い、下記の手順で造粒を実施した。
原料粉末0.90kgを流動層造粒機(大川原製作所製)に投入し、造粒の際の噴霧液としてグアガム(太陽化学社製:商品名「ネオソフトG」)の0.3質量%水溶液を用い、吹込み温度60℃、風量0.1m/min、噴霧液の液温25℃、噴霧流速0.028L/min/kg、噴霧液量0.333L/kgで12分間かけて造粒したのち、吹込み温度を80℃まで上げ、排風温度が40℃となるまで乾燥を実施した。その結果、0.88kgの造粒物が得られた。
得られた造粒物について、上記試験例1と同様の方法で、平均粒子径の測定と沈降性及び溶解性の評価を行った。その結果、平均粒子径は62μmで沈降性、溶解性ともに良好であった。
得られた造粒物125gに対し、結晶クエン酸(ロシュ・ビタミン・ジャパン社製)25g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.5g、ミルクカルシウム(森永乳業社製)1.5g、グレープフルーツフレーバー(ジボダンジャパン社製)8gを混合し、粉末飲食物160gを得た。
この粉末飲食物160gを3000mlの水に添加し、沈降性および溶解性を評価したところ、沈降性、溶解性ともに優れており、粉末飲食物は水に完全に溶解した。
また、このようにして得られた飲料は、カゼイン加水分解物特有の苦味等も感じない、風味に優れた高蛋白質含量の飲料であった。
(実施例2)
市販のカゼインナトリウム(タツア社製)200gを溶解し、90℃で10分間加熱殺菌し、45℃に冷却した。このカゼイン溶液に、パンクレアチンF(天野エンザイム社製)10g、プロテアーゼNアマノ(天野エンザイム社製)2g及び乳酸菌抽出物4g(合計490,000活性単位)を加え、45℃で24時間加水分解した後、90℃で5分間加熱して酵素を失活させ、濾過して沈澱物を除去し、凍結乾燥して凍結乾燥品約170gを得た。
この凍結乾燥品18gを、20%の濃度となるよう水に溶解し、不溶物を除去し、セファデックスG−10(ファルマシア社製)を充填したカラム(10×12cm)に通液して吸着させ、イオン交換水を用いて10mL/分の流速で溶出し、200〜500mLの分画を集め、凍結乾燥し、低分子量ペプチド粉末約6gを得た。
上記の方法を反復して得られた低分子量ペプチド粉末70gを、14質量%の濃度で水に溶解し、pHを8.0に調整し、予め弱塩基性陰イオン交換体であるDEAEセファデックスA−25(ファルマシア社製)100gを膨潤させ、pHを8.0に調整して充填したカラム(直径10cm,高さ10cm)にSV=2−1で通液し、低分子量ペプチド中のカゼインホスホオリゴペプチド混合物を交換体に吸着させた後カラムを水洗した。
次いで、1.8%(質量/容量)の濃度の食塩水溶液2000mLを、SV=2h−1で通液し、カゼインホスホオリゴペプチド以外のペプチドを溶出させ、次いで3.0%(質量/容量)の食塩水溶液2LをSV=2で通液し、カゼインホスホオリゴペプチド混合物を溶出させた。この溶出液を、常法により電気透析機を用いて脱塩し、濃縮し、凍結乾燥し、カゼインホスホオリゴペプチド混合物約9gを得た。
上記方法を反復して得られたカゼインホスホオリゴペプチド混合物を原料粉末として用い、下記の手順で造粒を実施した。
原料粉末1kgを流動層造粒機(大川原製作所製)に投入し、造粒の際の噴霧液として水のみを用い、吹込み温度60℃、風量0.1m/min、噴霧液の液温25℃、噴霧流速0.020L/min/kg、噴霧液量0.180L/kgで9分間かけて造粒したのち、吹込み温度を80℃まで上げ、排風温度が40℃となるまで乾燥を実施した。その結果、0.73kgの造粒物が得られた。
得られたカゼインホスホオリゴペプチド混合物の造粒物について、上記試験例1と同様の方法で、平均粒子径の測定と沈降性及び溶解性の評価を行った。その結果、平均粒子径は58μmであり、沈降性、溶解性共に良好であった。
得られた造粒物40gに対し、脱脂粉乳(森永乳業社製)30g、難消化性デキストリン(太陽化学社製)25g、チョコレート粉末(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1.6g、チョコフレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製)2g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.05gを混合し、粉末飲食物100gを得た。
この粉末飲食物50gを300mlの水に添加し、沈降性および溶解性を評価したところ、沈降性、溶解性ともに優れており、粉末飲食物は水に完全に溶解した。
また、このようにして得られた飲料は、風味に優れた高蛋白質含量の飲料であった。
(実施例3)
実施例1で得たカゼイン加水分解物と、実施例2の方法で得たカゼインホスホオリゴペプチド混合物とを70:30の比率(質量比)で混合した混合粉末を原料粉末として用い、下記の手順で造粒を実施した。
原料粉末1kgを流動層造粒機(大川原製作所製)に投入し、造粒の際の噴霧液として、マルトデキストリン(松谷化学社製)の0.5%(質量/容量)の水溶液を用い、吹込み温度60℃、風量0.1m/min、噴霧液の液温25℃、噴霧流速0.020L/min/kg、噴霧液量0.220L/kgで11分間造粒したのち、吹込み温度を80℃まで上げ、排風温度が40℃となるまで乾燥を実施した。その結果、0.68kgの造粒物(カゼイン加水分解物とカゼインホスホオリゴペプチド混合物との混合粉末の造粒物)が得られた。
得られた造粒物について、上記試験例1と同様の方法で、平均粒子径の測定と沈降性及び溶解性の評価を行った。その結果、平均粒子径は92μmで、沈降性及び溶解性が良好であった。
得られた造粒物125gに対し、結晶クエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)15g、DL−リンゴ酸(理研化学社製)10g、アスパルテーム(味の素社製)0.5g、オレンジフレーバー(高砂香料社製)8.5g、ラクトフェリン(森永乳業社製)1.1gを混合し、粉末飲食物160gを得た。
この粉末飲食物20gを650mlの水に添加し、沈降性および溶解性を評価したところ、沈降性、溶解性ともに優れており、粉末飲食物は水に完全に溶解した。
また、このようにして得られた飲料は、カゼイン加水分解物特有の苦味等も感じない、風味に優れた高蛋白質含量の飲料であった。
(実施例4)
実施例1の方法で得たカゼイン加水分解物を原料粉末として用い、下記の手順で造粒を実施した。
原料粉末3kgを流動層造粒機(大川原製作所製)に投入し、造粒の際の噴霧液として、グアガム(太陽化学社製:ネオソフトG)の0.3質量%水溶液を用い、吹込み温度70℃、風量1.5m/min、噴霧液の液温25℃、噴霧流量0.017L/min/kg、噴霧液量0.167L/kgで10分間かけて造粒したのち、吹込み温度を75℃まで上げ、排風温度が45℃となるまで乾燥を実施した。その結果、2.95kgの造粒物(カゼイン加水分解物含有造粒物)が得られた。
得られた造粒物について、上記試験例1と同様の方法で、平均粒子径の測定と沈降性及び溶解性の評価を行った。その結果、平均粒子径は62μmで、沈降性及び溶解性に優れていた。
得られた造粒物100gに対し、無水クエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)22g、スクラロース600(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.5g、炭酸カルシウム(白石カルシウム社製:コロカルソWB)1.4g、グレープフルーツフレーバー(ジボダンジャパン社製)5.8g、スイートフレーバー(ジボダンジャパン社製)1.6gを混合し、粉末飲食物131gを得た。
この粉末飲食物100gを2500mlの水に添加し、沈降性および溶解性を評価したところ、沈降性、溶解性ともに優れており、粉末飲食物は水に完全に溶解した。
また、このようにして得られた飲料は、蛋白質分解物特有の苦味等も感じない、風味に優れた高蛋白質含量の飲料であった。
表3に、実施例1〜4で造粒物の製造に用いた原料粉末の平均粒子径、結着剤の種類と使用量、噴霧液量、噴霧流量、ならびに得られた造粒物の平均粒子径、沈降性および溶解性の評価結果を示す。
Figure 0004536665
また、実施例1〜4において製造された造粒物および当該造粒物の製造に用いた原料粉末について、上述した測定方法により蛋白質含量、脂肪含量、乳糖含量、分解率およびアミノ酸遊離率を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0004536665
上記結果から明らかなように、実施例1〜4で得られた造粒物は、蛋白質含量が70質量%以上と高い蛋白質含量を有しており、しかも水に対する沈降性および溶解性に優れたものであった。
また、当該造粒物を用いて得られた粉末飲食物は、水に対する沈降性および溶解性が良好であった。
さらに、当該粉末飲食物を水に溶解して得た飲料は、蛋白質含量が高く、また、風味にも優れていた。

Claims (3)

  1. カゼイン加水分解物を含有し、蛋白質含量が70質量%以上、脂肪含量が1質量%以下、乳糖含量が1質量%以下であり、平均粒子径が50μm以上であるカゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法であって、
    カゼイン加水分解物を含有する原料粉末を水の存在下で造粒する工程と、乾燥する工程を備え、
    前記造粒する工程が、原料粉末の質量に対する噴霧液量を0.17〜0.5L/kg、原料粉末の質量に対する噴霧流量を0.017〜0.05L/min/kgの条件で、水または結着剤の水溶液を噴霧して造粒する工程であることを特徴とするカゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法。
  2. 平均粒子径が50μm以上105μm以下であるカゼイン加水分解物含有造粒物を製造する請求項1記載のカゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法
  3. ルシウム不溶化防止効果を有するカゼイン加水分解物含有造粒物を製造する請求項1又は2に記載のカゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法
JP2006030674A 2006-02-08 2006-02-08 カゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法 Expired - Fee Related JP4536665B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006030674A JP4536665B2 (ja) 2006-02-08 2006-02-08 カゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006030674A JP4536665B2 (ja) 2006-02-08 2006-02-08 カゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2007209230A JP2007209230A (ja) 2007-08-23
JP2007209230A5 JP2007209230A5 (ja) 2008-09-18
JP4536665B2 true JP4536665B2 (ja) 2010-09-01

Family

ID=38488176

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006030674A Expired - Fee Related JP4536665B2 (ja) 2006-02-08 2006-02-08 カゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4536665B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4908434B2 (ja) * 2008-01-25 2012-04-04 ハウス食品株式会社 顆粒状造粒物及びその製造方法
JPWO2021054452A1 (ja) * 2019-09-20 2021-03-25
TW202123823A (zh) * 2019-09-20 2021-07-01 日商明治股份有限公司 大豆蛋白質造粒物
JP2021078361A (ja) * 2019-11-14 2021-05-27 森永乳業株式会社 飲料
CN117919377A (zh) * 2023-11-27 2024-04-26 广州绿萃生物科技有限公司 水解酪蛋白寡肽及其在辅助降血压中的应用

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001333731A (ja) * 2000-05-25 2001-12-04 Ichimaru Pharcos Co Ltd 免疫賦活用食品。
JP2001346522A (ja) * 2000-06-09 2001-12-18 Matsutani Chem Ind Ltd 易分散性大豆蛋白造粒物及びその製造法
WO2004050118A1 (ja) * 2002-11-29 2004-06-17 Morinaga Milk Industry Co., Ltd. システインプロテアーゼ阻害剤
WO2005025609A1 (ja) * 2003-09-10 2005-03-24 Nrl Pharma, Inc. ラクトフェリン素材組成物

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2945995B2 (ja) * 1989-05-12 1999-09-06 大塚製薬株式会社 オリゴペプチド混合物、その製造法及び肝疾患患者用栄養補給組成物
JPH0795868A (ja) * 1993-12-22 1995-04-11 Ajinomoto Co Inc 顆粒状又は結晶状低カロリー飲料の製造法
JP3542190B2 (ja) * 1995-03-10 2004-07-14 明治乳業株式会社 カルシウム−カゼインホスホペプチド調製物の製造方法、骨塩減少抑制食品及び骨塩減少抑制剤
JP3386635B2 (ja) * 1995-07-21 2003-03-17 森永乳業株式会社 カゼイン加水分解物

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001333731A (ja) * 2000-05-25 2001-12-04 Ichimaru Pharcos Co Ltd 免疫賦活用食品。
JP2001346522A (ja) * 2000-06-09 2001-12-18 Matsutani Chem Ind Ltd 易分散性大豆蛋白造粒物及びその製造法
WO2004050118A1 (ja) * 2002-11-29 2004-06-17 Morinaga Milk Industry Co., Ltd. システインプロテアーゼ阻害剤
WO2005025609A1 (ja) * 2003-09-10 2005-03-24 Nrl Pharma, Inc. ラクトフェリン素材組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007209230A (ja) 2007-08-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2452765C (en) Process for the hydrolysis of milk proteins
US6395508B1 (en) Peptide mixture and products thereof
KR101915815B1 (ko) 카세인 미셀 및 트립토판-풍부 펩티드를 포함하는 포장된 열-보존된 수성 음료의 제조 방법 및 제조된 제품
AU2002325890A1 (en) Process for the hydrolysis of milk proteins
EP2766383B1 (en) Peptides from fish gelatine
JP4536665B2 (ja) カゼイン加水分解物含有造粒物の製造方法
US10172375B2 (en) Compositions comprising carbohydrates and peptides which comprise tryptophan
JP2007215474A (ja) タンパク質及び/又はタンパク加水分解物を含有する酸性飲食品の製造方法
NZ518375A (en) Protein hydrolyzates, process for producing the same and drinks and foods containing the protein hydrolyzates
JP2006075064A (ja) ペプチド含有飲料
JPH04190797A (ja) ペプチド混合物の製造法及びペプチド混合物を含有する飲料
JP7252733B2 (ja) 乳蛋白質加水分解物の製造方法
JP3386635B2 (ja) カゼイン加水分解物
JPH06245790A (ja) オリゴペプチド混合物およびその製造方法
JP2006254791A (ja) カゼイン加水分解物含有組成物
JP2959747B2 (ja) 風味良好な乳清蛋白加水分解物及びその製造法
JP3636322B2 (ja) 乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法
JP3396001B2 (ja) ペプチド混合物の新規な製造法
AU701507B2 (en) Peptide mixture and products thereof
JP3639820B2 (ja) 一定品質のペプチド混合物の製造方法
JPS62224245A (ja) 不快味のない易溶性乳蛋白加水分解物の製造方法
JP2008237085A (ja) 臭気成分が低減した殺菌済み乳蛋白質加水分解物の製造方法
JP2000297100A (ja) 抗酸化性蛋白質加水分解物

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080804

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080804

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100121

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100126

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100310

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100608

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100616

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130625

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4536665

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees