JP2006254791A - カゼイン加水分解物含有組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カゼイン加水分解物、シュガーフレーバー、及びグレープフルーツフレーバーを含有することを特徴とするカゼイン加水分解物含有組成物。
【選択図】 なし
Description
一方、最近では酸性条件下での安定性の改善、消化吸収性の向上、又は抗原性の低減等を目的として、乳蛋白質を酵素で加水分解した乳蛋白質加水分解物の利用が増加している。また、乳蛋白質加水分解物は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有することが見出され、高血圧予防への期待が高まるなど保健機能への注目も集まり今後ますます有望視されている食品素材である。
従って乳蛋白質、特にカゼインを高度に加水分解した加水分解物を、実際の飲食物に高含量に含有させて利用する際には、風味の改善が重要な課題である。
下記特許文献1には、異味・異風味を有するアミノ酸から成る主原料と、異味・異風味を有し、かつ主原料を構成するアミノ酸とは異種のアミノ酸から成る副原料と、甘味料及び/又はフレーバーとを含有する、飲食品用又は医薬品用に好適なアミノ酸組成物が開示されている。
下記特許文献2には、苦味及び/又はえぐ味を有するペプチド又はペプチド混合物、糖アルコール、酸味料及びプラム系フレーバーから成る経口投与用の水性溶液が開示されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、苦味等の不快味が高度にマスキングされたカゼイン加水分解物含有組成物を提供することを目的とする。
本発明における(1)カゼインの分解率の算出方法、(2)アミノ酸組成の測定方法、(3)アミノ酸遊離率の算定方法は、それぞれ以下のとおりである。
(1)蛋白質(カゼイン)の分解率の算出方法
ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定し、ホルモール滴定法(満田他編、「食品工学実験書」、上巻、第547ページ、養賢堂、1970年)により試料のホルモール態窒素量を測定し、これらの測定値から分解率を次式により算出した。
分解率(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×100
トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミノ酸については、試料を6規定の塩酸で110℃、24時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6規定の塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸自動分析機(日立製作所製。835型)により分析し、アミノ酸の質量を測定した。
試料中の各アミノ酸組成を前記(2)の方法により測定し、これを合計して試料中の全アミノ酸の質量を算出する。次いで、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、残留する各遊離アミノ酸の質量を前記(2)の方法により測定し、これを合計して試料中の全遊離アミノ酸の質量を算出する。これらの値から、試料中の遊離アミノ酸含有率を次式により算出した。
アミノ酸遊離率(%)=(全遊離アミノ酸の質量/全アミノ酸の質量)×100
具体的には(a)分解率が15%以上30%以下であり、かつ(b)カゼイン加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合で表されるアミノ酸遊離率が10質量%以下であるカゼイン加水分解物が好ましい。
上記(a)分解率のより好ましい範囲は20%以上、25%以下である。また上記(b)アミノ酸遊離率は、より好ましくは5質量%以下である。
(a)分解率を上記範囲の下限値以上とすることにより、消化吸収性をより向上させることができ、上記範囲の上限値以下とすることにより過度な苦味を抑えることができる。
(b)アミノ酸遊離率を上記範囲の上限値以下とすることにより、遊離アミノ酸に由来する不快味を抑えることができる。(b)アミノ酸遊離率の下限値は特に制限されない。ゼロでもよい。
出発原料として使用するカゼインは、市販品又は牛乳、脱脂乳等から公知の方法により分離された乳酸カゼイン、塩酸カゼイン等の酸カゼイン、ナトリウムカゼイネイト、カリウムカゼイネイト等のカゼイネイト、若しくはこれらの任意の割合の混合物が好ましい。
まず、原料カゼインを水又は温湯に分散し、溶解してカゼイン溶液を調製する。該カゼイン溶液の濃度は格別の制限はないが、通常、蛋白質濃度として、5〜15質量%程度の濃度範囲にするのが好ましい。
エンドプロテア−ゼとしては、ビオプラーゼ(長瀬生化学工業社製)、プロレザー(天野エンザイム社製)、プロテアーゼS(天野エンザイム社製)、サビナーゼ(ノボザイムズ社製)、GODO B.A.P(合同酒精社製)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)、GODO B.N.P(合同酒精社製)、ニュートラーゼ(ノボザイムズ社製)、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製)、トリプシン(ノボザイムズ社製)、キモトリプシン(ノボザイムズ社製)、ズブチリシン(ノボザイムズ社製)、パパイン(天野エンザイム社製)、ブロメライン(天野エンザイム社製)等の市販品を例示することができる。エンドプロテア−ゼは1種類を単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。複数種類のエンドプロテア−ゼを使用する場合には、所望の(a)分解率および(b)アミノ酸遊離率を達成できるならば同時に添加してもよく、順次添加してもよい。
カゼインに対するエンドプロテア−ゼの使用量は、基質濃度、酵素力価、反応温度及び反応時間等により異なるが、一般的には、カゼイン中の蛋白質1g当り3000〜10000活性単位の割合で添加することが好ましい。
具体的には、加水分解に伴って発生する不溶物を濾過により除去した後の濾液中に含まれるカゼイン加水分解物が、上記(a)分解率および(b)アミノ酸遊離率の好ましい範囲内となるように、反応条件および反応時間を設定すればよい。
酵素反応の停止は、加熱(例えば、85℃で15分間等)して酵素を失活させることにより行う。
また、必須の工程ではないが、濾過により不溶物の除去をした後、風味改善又は物性改善等のためにエンドプロテア−ゼ又はエキソプロテア−ゼを添加して(a)分解率および(b)アミノ酸遊離率が上記の好ましい範囲を超えない程度に二次的な加水分解を行ってから以後の処理を行ってもよい。
接触処理は、イオン交換樹脂、疎水性樹脂等の樹脂との接触により行うことができる。イオン交換樹脂としては、アンバ−ライトXAD−7(オルガノ社製)、アンバ−ライトIR−120A(オルガノ社製)等を例示することができる。また、疎水性樹脂としては、KS−35(味の素ファインテクノ社製)、ダウエックスS−112(ダウケミカル社製)を例示することができる。樹脂の使用量はトリプトファン、及び混濁、沈殿、凝集及び褐変等を惹起する因子を所望の程度に低減するのに充分な量を設定すればよい。
また、本発明におけるカゼイン加水分解物が、カルシウム不溶化防止効果を有するカゼイン加水分解物であることが好ましい。
本発明における「カルシウム不溶化防止効果を有する」とは、下記の方法で測定されるカルシウム可溶化率が95%以上であることをいう。
まず(1)試料溶液、(2)塩化カルシウム溶液、(3)リン酸緩衝液、(4)希塩酸溶液を、以下のように調製する。
(1)試料溶液:測定対象のカゼイン加水分解物を乾燥質量基準で6mg/mlの濃度となるように精製水に溶解して試料溶液とする。
(2)塩化カルシウム溶液:試薬特級の塩化カルシウム(和光純薬工業社製)を精製水に20mMの濃度で溶解する。
(3)リン酸緩衝液 :20mMの濃度(pH7.0)に調製する。
(4)希塩酸溶液 :0.1Nの濃度に調製する。
次に、塩化カルシウム溶液1mlと試料溶液1mlを試験管に取り、リン酸緩衝液2mlを添加し、37℃で2時間保持する。こうして得られる反応液をフィルター(0.45μm)で濾過し、濾液0.5mlに希塩酸溶液0.1mlを添加した後、該濾液中のカルシウム量を平沼Ca−Mgカウンター(平沼産業社製)で測定する。最初に添加した塩化カルシウム溶液(1ml)中のカルシウム量に対する、最初に添加した塩化カルシウム溶液中のカルシウム量と得られた濾液中のカルシウムの量との差(絶対値)、の百分率を算出し、その値をカルシウム可溶化率とする。尚、濾液中のカルシウムの量が、最初に添加した塩化カルシウム溶液中のカルシウム量と同じであるときに該カルシウム可溶化率は100%となる。
出発原料としては各種酸カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム等の市販品、及び牛乳,脱脂乳等を用いることができる。出発原料として牛乳,脱脂乳等を用いる場合は、そのまま蛋白質分解酵素により加水分解する。出発原料として市販のカゼイン化合物を用いる場合は、蛋白質濃度が5〜18%,望ましくは10〜15%の水性溶液とした後、蛋白質分解酵素により加水分解する。
より好ましくは、パンクレアチンとエキソペプチダーゼとの組み合わせ、パンクレアチンとエキソペプチダーゼと他のプロテアーゼとの組み合わせを用いる。
エキソペプチダーゼの具体例としては、カルボキシペプチダーゼ,アスペルギルス・プロテアーゼ,ストレプトコッカス・プロテアーゼ,リゾープス・プロテアーゼ,乳酸菌プロテアーゼ等が挙げられる。
その他のプロテアーゼの具体例としては、例えば、トリプシン,キモトリプシン,ズブチリシン,エラスターゼ,プロリン特異性プロテアーゼ,スタフィロコッカス・プロテアーゼ,パパイン,ペプシン,サーモリシン等が挙げられる。
加水分解反応時のpHは、使用酵素の最適pHに対応して設定するのが好ましいが、例えばpH5.0〜8.0の範囲が好ましく、pH6.5〜7.5の範囲がより好ましい。
加水分解反応時の温度は、使用酵素の最適pHに対応して設定するのが好ましいが、例えば40〜55℃の範囲が好ましく、45〜52℃の範囲がより好ましい。
加水分解反応の反応時間は4時間以上が好ましく、6〜18時間がより好ましい。浸透圧の改善の観点から過度の分解を避けるのが望ましい。酵素反応の停止は加熱により行うのがよい。
分子量分画には、限外濾過、ゲル濾過等の方法が採用できるが、厳密で効率的な回収の観点からはゲル濾過が特に好ましい。尚、分子量分画は、必要に応じ反復して不要な分子量のペプチドの除去率を高めることができる。ゲル濾過は、排除限界分子量10000以下、望ましくは1000以下のゲル濾過剤を使用する。望ましくは、芳香族アミノ酸に吸着性を有する疎水性側鎖(例えば、カルボキシル基、ブチル基、フェニル基等)又は疎水的部位を有するゲル濾過剤を使用する。かかるゲル濾過剤の具体例としては、オクチルセファロースCL−4B、フェニルセファロースCL−4B、ブチルセファロース4B、セファデックスG−10(何れもファルマシア社製)等が挙げられる。溶出液は水、又は芳香族アミノ酸に吸着性を高めるために2〜15%濃度のエタノール溶液を用い、カラム高10〜30cmのカラムで分画することが好ましい。
また、上記の調製方法によれば、カルシウム不溶化防止効果を有するとともに、下記の理化学的性状を有するカゼイン加水分解物を得ることができる。かかるカゼイン加水分解物は、抗原性が低く、リンの含有量が高いという利点を有する。
(1)アミノ酸残基数が5〜10である。
(2)主たる構成アミノ酸はグルタミン酸、セリン、アスパラギン酸、イソロイシンである。
(3)分子量分布が500〜1000である。
(4)窒素/リンの分子数比が5.0以下である。
具体的には、ヌートカトン、1−パラ−メンテン−8−チオールからなる群(以下、G群ということがある)から選ばれる1種または2種以上の成分を含有するグレープフルーツフレーバーを用いることが好ましい。例えばヌートカトンはサンキスト社製の市販品から入手でき、1−パラ−メンテン−8−チオールは高砂香料社製の市販品から入手できる。
グレープフルーツフレーバーには、通常溶剤が含まれている。具体的には水、エチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、中鎖脂肪酸エステル等の溶剤が使用される。
具体的には、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノン、3−メチル−1,2−シクロペンタジオン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、5−エチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−3(2H)−フラノン、マルトール及びエチルマルトールからなる群(以下、S群ということがある)から選ばれる1種または2種以上の成分を含有するシュガーフレーバーを用いることが好ましい。例えば3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノン及び3−メチル−1,2−シクロペンタジオンは曽田香料社製の市販品から入手でき、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンはフィルメニッヒ社(スイス)製の市販品から入手でき、5−エチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−3(2H)−フラノンはジボダン社(スイス)製の市販品から入手でき、マルトール及びエチルマルトールはファイザー社製の市販品から入手できる。
シュガーフレーバーには、通常溶剤が含まれている。具体的には水、エチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、中鎖脂肪酸エステル等の溶剤が使用される。
本発明のカゼイン加水分解物含有組成物におけるシュガーフレーバーの含有量は特に制限されず、好ましい風味が得られる範囲で適宜設定できるが、好ましくはカゼイン加水分解物中に含まれる蛋白質量に対して0.1〜10質量%程度であり、1〜6質量%程度がより好ましい。
酸味料は、食品に許容されるものであれば如何なる酸味料であってもよく、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、塩酸等を例示することができる。
甘味料は食品に許容されるものであれば如何なる甘味料であってもよく、具体的には、砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖、異性化糖、エリスリトール、トレハロース、ステビア、ソーマチン、スクラロース、アスパルテーム等を例示することができる。
また、酸味料および甘味料以外にも、食品に許容されるその他の成分を適宜含有させてもよい。例えばカルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル成分や、ラクトフェリン、各種ビタミンなどの微量有用成分を添加してもよい。
また必要に応じて、殺菌前にミネラル成分及び/又は微量有用成分などを添加することもできる。
本発明のカゼイン加水分解物含有組成物が溶液状の場合は、そのまま飲料とすることができ、嗜好性に優れた風味を有する飲料が得られる。又は水で希釈して飲料とすることもできる。また本発明のカゼイン加水分解物含有組成物が粉末状の場合は、これを水に溶解して飲料とすることができ、嗜好性に優れた風味を有する飲料が得られる。
本発明のカゼイン加水分解物含有組成物を飲料に用いる場合、該飲料中におけるカゼイン加水分解物の含有量は特に制限されないが、蛋白質補給の点からは、カゼイン加水分解物中に含まれている蛋白質の量が、飲料(カゼイン加水分解物含有組成物)全体の1〜7質量%程度が好ましく、2.5〜4.0質量%程度がより好ましい。
また本発明のカゼイン加水分解物含有組成物は、飲料として用いるほかに、各種の飲食物に添加して使用することも可能である。
したがって本発明によれば、優れた栄養価や消化吸収性等の特性を有するカゼイン加水分解物を含有し、風味が良好な飲食品が得られる。
また、特に、カルシウム不溶化防止効果を有するカゼイン加水分解物を用いた場合には、カルシウムの吸収促進効果を有するカゼイン加水分解物含有組成物および飲食品が得られる。
(参考例1)カゼイン加水分解物の調製例(1)
まず、乳酸カゼイン(蛋白質含有量85質量%、ユニーレ・フランス社製)1kgを精製水9kgに溶解し、85℃で10分間加熱殺菌し、50℃に冷却し、水酸化ナトリウム(日本曹達社製)13g及び水酸化カリウム(日本曹達社製)33gを添加してpHを9.3に調整した。
次に、バチルス属細菌由来の中性プロテアーゼ(商品名:プロテアーゼN;天野エンザイム社製)168万活性単位(蛋白質1g当たり2,000活性単位)、バチルス属細菌由来のアルカリ性プロテアーゼ(商品名:ビオプラーゼsp−20;長瀬生化学工業社製)100.8万活性単位(蛋白質1g当たり1,200活性単位)、及びトリプシン(商品名:トリプシンV;日本バイオコン社製)588万活性単位(蛋白質1g当たり7,000活性単位)を添加し、50℃で加水分解した。
酵素反応を分解率によりモニターし、分解率が24%かつアミノ酸遊離率4.3%に達した時点で、130℃で2秒間加熱して酵素を失活させた。
得られた加水分解液を、分画分子量10,000の限外ろ過膜モジュール(商品名:SLP1030;旭化成社製)により処理し、膜透過画分を吸着性樹脂アンバーライトXAD−7(オルガノ社製)に対してSV(空間速度)=2.5h−1、温度10℃の条件で接触処理した。
得られたカゼイン加水分解物を常法により濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状のカゼイン加水分解物約0.9kgを得た。
得られたカゼイン加水分解物の(a)分解率は25%、(b)アミノ酸遊離率は6.7%であった。また上述の測定方法によりカルシウム可溶化率を測定したところ50%であった。
市販の乳酸カゼイン(ニュージーランド・ミルク・プロダクツ社製)20kgを10質量%濃度で加温しながら溶解し、得られた溶液のpHを8.0に調整し、90℃で10分間加熱殺菌し45℃に冷却した。
このカゼイン溶液にパンクレアチンF(天野エンザイム社製)1kg、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)0.2kg、及び下記参考例3と同一の方法で調製した乳酸菌抽出物0.4kgを加え、45℃で24時間加水分解した後、90℃で5分間加熱して酵素を失活させた。続いて、濾過して沈殿物を除去し、凍結乾燥し、粉末状のカゼイン加水分解物17kgを得た。
この低分子量粉末7kgを14%(質量/容量)の濃度で水に溶解し、pHを8.0に調整し、予め弱塩基性陰イオン交換体であるDEAEセファデックスA−25(ファルマシア社製)10kgを膨潤させ、pHを8.0に調整して充填したカラムにSV=2h−1で通液し、得ようとするカゼインホスホオリゴペプチド混合物を交換体に吸着させた後、カラムを水洗した。次いで1.8%(質量/容量)の濃度の食塩水溶液200LをSV=2h−1で通液し、次いで3.0%(質量/容量)の濃度の食塩水溶液200LをSV=2で通液した。こうして得られたカゼインホスホオリゴペプチド混合物の溶出液を常法に従って電気透析により脱塩し、濃縮し、凍結乾燥して、粉末状のカゼイン加水分解物約0.9kgを得た。
得られたカゼイン加水分解物の(a)分解率は18%、(b)アミノ酸遊離率は7.2%であった。また上述の測定方法によりカルシウム可溶化率を測定したところ100%であった。
上記参考例で使用する乳酸菌抽出物は、例えば特公昭54−36235号公報第6欄4行「(3)使用する酵素について」の項に記載の方法により次のとおり製造することができる。すなわち、乳酸菌(ビフィズス菌を含む)を公知の方法(例えば特公昭48−43878号公報記載の方法)により培養し、得られた培養液を遠心分離して乳酸菌菌体を回収し、滅菌水に菌体を懸濁し、遠心分離して乳酸菌菌体を回収する操作を2回繰り返し、菌体を洗浄し、20質量%の濃度で菌体を滅菌水に懸濁し、菌体破砕機(例えば、ダイノミル(Willy Bachnfen Engineering)社製、KDL型)により菌体を破砕し、凍結乾燥し、乳酸菌抽出物粉末を得る。
参考例1で得られたカゼイン加水分解物3kgを精製水60kgに溶解し、クエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1kg、及びクエン酸三ナトリウム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.05kg、アスパルテーム(味の素社製)0.04kg、シュガーフレーバーA0.15kg、及びグレープフルーツフレーバーA0.12kgを加え、134℃で30秒間の加熱殺菌を行い、カゼイン加水分解物含有組成物J−1の溶液65kgを得た。
参考例1で得られたカゼイン加水分解物7kg及び参考例2で得られたカゼイン加水分解物1kgを精製水70kgに溶解し、クエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.5kg、及びリンゴ酸(理研化学社製)0.4kg、酒石酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.3kg、アスパルテーム(味の素社製)0.06kg、ラクトフェリン(森永乳業社製)0.02kgを加え、ここにシュガーフレーバーA0.4kg及びグレープフルーツフレーバーA0.5kgを加え、130℃で20秒間の加熱殺菌を行い、濃縮し、噴霧乾燥し、カゼイン加水分解物含有組成物J−2の粉末8.0kgを得た。
参考例1で得られたカゼイン加水分解物7kg及び参考例2で得られたカゼイン加水分解物3kgを精製水90kgに溶解し、クエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1.2kg、及びリンゴ酸(理研化学社製)0.8kg、グルコン酸(扶桑化学工業社製)1.5kg、ミルクカルシウム(ニュージーランドミルクプロダクツ製)0.2kg、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.05kgを加え約80℃で10分間加熱殺菌を行った。ここにシュガーフレーバーA0.7kg及びグレープフルーツフレーバーA0.7kgを加え、90℃で20秒間の加熱殺菌を行い、濃縮し、噴霧乾燥し、カゼイン加水分解物含有組成物J−3の粉末9.9kgを得た。
実施例1において、シュガーフレーバーA0.15kg及びグレープフルーツフレーバーA0.12kgを加える代わりに、シュガーフレーバーA0.27kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−1の溶液65kgを得た。
実施例1において、シュガーフレーバーA0.15kg及びグレープフルーツフレーバーA0.12kgを加える代わりに、グレープフルーツフレーバーA0.27kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−2の溶液65kgを得た。
実施例1において、シュガーフレーバーA0.15kg及びグレープフルーツフレーバーA0.12kgを加える代わりに、プラムフレーバーA0.27kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−3の溶液65kgを得た。
実施例1において、シュガーフレーバーA0.15kg及びグレープフルーツフレーバーA0.12kgを加える代わりに、アップルフレーバーA0.27kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−4の粉末65kgを得た。
実施例1において、シュガーフレーバーA0.15kg及びグレープフルーツフレーバーA0.12kgを加える代わりに、チョコレートフレーバーA0.27kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−5の粉末65kgを得た。
実施例2において、シュガーフレーバーA0.4kg及びグレープフルーツフレーバーA0.5kgを加える代わりにシュガーフレーバーA0.9kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−6の粉末8.0kgを得た。
実施例2において、シュガーフレーバーA0.4kg及びグレープフルーツフレーバーA0.5kgを加える代わりにグレープフルーツフレーバーA0.9kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−7の粉末8.0kgを得た。
実施例2において、シュガーフレーバーA0.4kg及びグレープフルーツフレーバーA0.5kgを加える代わりにプラムフレーバーA0.9kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−8の粉末8.0kgを得た。
実施例2において、シュガーフレーバーA0.4kg及びグレープフルーツフレーバーA0.5kgを加える代わりにアップルフレーバーA0.9kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−9の粉末8.0kgを得た。
実施例2において、シュガーフレーバーA0.4kg及びグレープフルーツフレーバーA0.5kgを加える代わりチョコレートフレーバーA0.9kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−10の粉末8.0kgを得た。
実施例3において、シュガーフレーバーA0.7kg及びグレープフルーツフレーバーA0.7kgを加える代わりに、シュガーフレーバーA1.4kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−11の粉末9.9kgを得た。
実施例3において、シュガーフレーバーA0.7kg及びグレープフルーツフレーバーA0.7kgを加える代わりに、グレープフルーツフレーバーA1.4kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−12の粉末9.9kgを得た。
実施例3において、シュガーフレーバーA0.7kg及びグレープフルーツフレーバーA0.7kgを加える代わりに、プラムフレーバーA1.4kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−13の粉末9.9kgを得た。
実施例3において、シュガーフレーバーA0.7kg及びグレープフルーツフレーバーA0.7kgを加える代わりに、アップルフレーバーA1.4kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−14の粉末9.9kgを得た。
実施例3において、シュガーフレーバーA0.7kg及びグレープフルーツフレーバーA0.7kgを加える代わりに、チョコレートフレーバーA1.4kgを用いた他は同様にして、カゼイン加水分解物含有組成物H−15の粉末9.9kgを得た。
前記実施例1、および比較例1〜5で得られたカゼイン加水分解物含有組成物J−1、及びH−1〜5について、各溶液をそのまま飲用し、訓練されたパネラー6名により「苦味」「苦味のマスキング」を評価項目として官能評価を行った。
評価方法は「苦味」を強く感じ「苦味のマスキング」が全く出来ていないものを1点、「苦味」を全く感じられず「苦味のマスキング」が充分出来ているものを7点とし、7段階で評価した。評価結果の平均値を表6に示した。
前記実施例2、および比較例6〜10で得られたカゼイン加水分解物含有組成物J−2、及びH−6〜10について、各粉末の1部を精製水20部に溶解した溶液を飲用し、訓練されたパネラー6名により「苦味」「苦味のマスキング」を評価項目として官能評価を行った。
評価方法は試験例1と同様である。評価結果の平均値を表7に示した。
前記実施例3、および比較例11〜15で得られたカゼイン加水分解物J−3、及びH−11〜15について、各粉末の1部を精製水20部に溶解した溶液を飲用し、訓練されたパネラー6名により「苦味」「苦味のマスキング」を評価項目として官能評価を行った。
評価方法は試験例1と同様である。評価結果の平均値を表8に示した。
1)本発明のカゼイン加水分解物含有組成物は、風味が良好であることから広範な種々の食品及び飲料等に使用できる。
2)本発明のカゼイン加水分解物含有組成物は、風味が良好であることから、一般食品、栄養食品及び医療用の蛋白質補給材として広範な用途に使用できる。
Claims (7)
- カゼイン加水分解物、シュガーフレーバー、及びグレープフルーツフレーバーを含有することを特徴とするカゼイン加水分解物含有組成物。
- 前記カゼイン加水分解物は、分解率が15%以上30%以下で、かつ該カゼイン加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合で表されるアミノ酸遊離率が10質量%以下である請求項1に記載のカゼイン加水分解物含有組成物。
- 前記カゼイン加水分解物がカルシウム不溶化防止効果を有する請求項1又は請求項2に記載のカゼイン加水分解物含有組成物。
- 前記カゼイン加水分解物の含有量が、固形分換算で、カゼイン加水分解物含有組成物中の総蛋白質量当り65質量%以上である請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のカゼイン加水分解物含有組成物。
- さらに、酸味料及び/または甘味料を含有する請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のカゼイン加水分解物含有組成物。
- 前記シュガーフレーバーが、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノン、3−メチル−1,2−シクロペンタジオン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、5−エチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−3(2H)−フラノン、マルトール及びエチルマルトールからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のカゼイン加水分解物含有組成物。
- 前記グレープフルーツフレーバーが、ヌートカトン、および1−パラ−メンテン−8−チオールからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のカゼイン加水分解物含有組成物。
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