JP4524657B2 - 回転子の磁石保護構造及び磁石保護方法 - Google Patents

Description

この発明は、回転電機に用いるインナーロータ型回転子の磁石保護構造及び磁石保護方法に関する。

例えば車両の内燃機関により駆動される車両用交流発電機等の回転電機の回転子において、ランデル式ロータコアの爪極間ギャップに永久磁石を介在させることにより、ランデル式ロータコアの各爪極の界磁電流磁束を磁石磁束によりアシストする磁石併用ランデル式ロータコアが下記の特許文献１〜７などに提案されている。
特開２００４−７９５８号公報 特開２００２−２６２５３０号公報 特開平１０−４６６４号公報 特開平１０−２０１１４９号公報 特開平１０−４６６０号公報 特開平１０−４６６２号公報 特開平１０−４６６３号公報

上記した磁石併用ランデル式ロータコアをもつ車両用交流発電機は、永久磁石による磁束強化分だけ同一体格における出力増大効果を得ることができるが、回転子の製造に際して発生する磁性粉などがロータコアに組み付けた磁石体の表面に付着し、磁石特性や耐久性の劣化を招く可能性が生じる。

本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、簡素な手段により固定子組み付け前の磁石付き回転子の永久磁石の表面に磁性粉が付着するのを防止可能な回転電機の回転子の磁気保護構造及び磁石保護方法を提供することをその目的としている。

上記課題を解決するためになされた本発明の回転子の磁石保護構造は、固定子組み付け前の回転子の磁石保護構造であって、着磁済みマグネットを含む磁石体を有する回転子に着脱可能に支持されて、前記磁石体の少なくとも外周側の露出表面を覆って前記磁石体の両磁極を磁気短絡する磁気短絡部材からなる磁石囲覆部材を有することを特徴としている。このようにすれば、構造や作業の煩雑化を抑止しつつ磁石併用回転子の磁石体に磁性粉からなる異物が付着するのを防止することができるので、この磁石併用回転子を固定子に組み付けた後で、磁石併用回転子の回転による遠心力などによりこの磁性粉が好ましくない部位、たとえば回転子の外周面などに移動したりすることを防止することができる。

ここで言う着磁済みマグネットを含む磁石体は、樹脂製又は非磁性金属板などから構成されてマグネットの外周面を被覆する磁石カバーを含むことができる。回転子は、たとえば周知の磁石併用ランデル式ロータコアでもよく、あるいはその他の構造の磁石付き回転子でもよい。本発明の磁石囲覆部材は、回転子を固定子に組み付ける前に取り外される。

本発明者らの経験によれば、着磁済みマグネットがロータコアに装着された回転子の製造工程において、磁石体の表面のうち特にその外周側の表面に磁性粉の付着が発生する。この磁性粉は、たとえば製造現場に存在したり、あるいはロータコアの切削や研削において発生する。これは、着磁済みマグネットの外周側の表面近傍に強い磁石磁界が形成されるためである。着磁済みマグネットの外周側の表面に付着した磁性粉の除去は簡単では無く、その検査も容易ではない。

本発明によれば、ロータコアに装着された着磁済みマグネットの外周側の露出表面を、固定子組み付け前の必要な期間だけ磁気短絡部材からなる磁石囲覆部材で囲覆する。この磁石囲覆部材は安価で加工も容易な軟鉄板などにより作製でき、回転子に装着された後、着磁済みマグネットの漏れ磁界の短絡通路となる。これにより、着磁済みマグネットやそれが固定されるロータコアから外部空間に漏洩する磁石磁界を大幅に減衰させることができ、その結果として回転子が磁性粉を拾うのを良好に防止することができる。また、磁石囲覆部材は着磁済みマグネットを覆って着磁済みマグネットを機械的に保護することもできる。つまり、本発明の磁石囲覆部材は、ロータコアとともに着磁済みマグネットの両磁極を磁気短絡する磁気短絡部材をなすため、着磁済みマグネットの磁界が着磁済みマグネットの表面やロータコアの表面に磁極面を形成するのを良好に阻止する。

好適な態様において、前記磁石体は、ランデル式ロータコアの爪極部の外周側の表面よりも径方向内側に位置して前記各爪極部の間の爪極間ギャップに介設され、前記磁石囲覆部材は、前記ランデル型ロータコアの爪極部の外周側の表面よりも径方向内側に配置される。つまり、このようにすれば、磁石囲覆部材がロータコアの外周側の表面すなわちランデル式ロータコアの爪極部の外周側の表面よりも径方向内側に位置するため、磁石囲覆部材を装着した状態にてロータコアの外周側の表面を回転バランス調整などのため研削したり切削したりすることができ、この研削又は切削加工に際して生じた軟磁性粉がロータコアや着磁済みマグネットの表面に付着するのを抑止することができる。たとえ付着したとしても、付着力が弱いため、エアブローなどにより容易に除去することができる。

好適な態様において、前記磁石囲覆部材は、前記爪極間ギャップにて前記磁石体の外周側の露出表面を覆う外周面部と、前記外周面部の軸方向両端から径方向内側へ延在して前記磁石体の側面を覆う一対の側面部とを有して略コ字状に形成される。このようにすれば、磁石体の側面への磁性粉の付着を防止することができるとともに、ランデル式ロータコアの爪極間をより良好に磁気短絡することができ、磁性粉付着を一層良好に抑止することができる。

好適な態様において、前記磁石囲覆部材の一対の側面部の先端部は、前記磁石側に曲げられて前記磁石体に径方向着脱自在に係止される係止突部を有する。このようにすれば、磁石囲覆部材の弾性変形機能により磁石囲覆部材の脱着が容易となる。

好適な態様において、前記磁石囲覆部材は、前記磁石体の外周側の露出表面に対して前記所定の対磁石ギャップを隔てて前記磁石体に装着される。このようにすれば、磁石囲覆部材が磁石体に強力に磁気吸着して取り外し作業が困難となるのを防止することができるとともに、磁石体が樹脂カバーをもつ場合やあるいは裸のマグネットをもつ場合において、それらの表面を磁石囲覆部材により傷つけるのも防止することもできる。

好適な態様において、前記磁石体は、ランデル式ロータコアの爪極部の外周側の表面よりも径方向内側に位置して前記各爪極部の間の爪極間ギャップに介設され、前記磁石囲覆部材は、円筒形状に形成されて前記ランデル式ロータコアの外周面に嵌着される筒部を有する。このようにすれば、ランデル式ロータコアの爪極部の外周側の表面の加工はできないものの、磁石囲覆部材の脱着が容易となり、機械保護効果を向上することができる。

上記課題を解決するためになされた本発明の回転子の磁石保護方法は、着磁済みマグネットを有する磁石体が固定されたロータコアを有し、前記磁石体の外周側の表面は、前記ロータコアの外周側の表面よりも径方向内側に配置される回転子の磁石保護方法であって、前記ロータコアの外周側の表面よりも径方向内側かつ前記磁石体の外周側の表面よりも径方向外側に位置にて前記磁石体の少なくとも外周側の表面を覆う磁石囲覆部材を、前記ロータコアの外周側の表面の切削乃至研削の前に前記回転子に取り付け、前記切削乃至研削が完了した後でかつ前記回転子を固定子に取り付ける前に前記磁石囲覆部材を前記回転子から取り外すことを特徴としている。

すなわち、この回転子の磁石保護方法は、ロータコアの外周側の表面の加工の間、ロータコアの外周側の表面よりも径方向内側に位置する磁石囲覆部材により、更に径方向内側の磁石体を囲覆する。なお、磁石囲覆部材としては上記した磁気短絡効果や磁気シールド効果により外部への磁石磁界の漏洩を防ぐ軟磁性材料により構成してもよいが、あるいは使い捨ての樹脂材などを用いてもよい。後者の例としては、たとえば粘着テープを用いてもよい。

このようにすれば、既述したように、磁石囲覆部材をロータコアの外周側の表面よりも径方向内側に配置したため、磁石囲覆部材を装着した状態にてロータコアの外周側の表面をたとえばバランス調整などのために研削したり切削したりすることができ、軟磁性粉が発生するこれらの作業の後のロータコアや磁石体からの軟磁性粉の除去作業が容易となる。

この発明の好適な実施形態を図面を参照して具体的に説明する。

（車両用交流発電機の基本構造）
まず、以下の実施形態の回転子を用いる車両用交流発電機の基本構造を図１を参照して説明する。図１は車両用交流発電機の軸方向断面図である。１は回転子、２は固定子、３はフロントフレーム、４はリヤフレーム、５はプーリー、６はスリップリング、７はブラシ装置、８は整流器、９はレギュレータである。ステータ２は、ステータコア２１にステータコイル２２を巻装してなり、フロントフレーム３及びリヤフレーム４の内周面に固定されている。フロントフレーム３及びリヤフレーム４はボルトによりステータ２を囲んで締結され、軸受けを介してロータ１の回転軸１１を回転自在に支承している。ロータ１は、回転軸１１に固定された前側のポールコア１２と、界磁コイル（以下、励磁コイルとも言う）１３と、後側のポールコア１４と、本発明で言う着磁済みマグネットをなす永久磁石１５とにより構成されている。

図１に示す回転子１の基本構造を図２、図３を参照して更に詳しく説明する。なお、図２は回転子１の軸方向断面を示し、図３は回転子１の爪極部の径方向断面を示す。ただし、図２、図３に示す後述の磁石囲覆部材１９は回転子１が組み立てられた図１の状態にては存在していない点に留意されたい。

ポールコア１２は、回転軸１１に嵌着されたボス部１４１と、ボス部１４１の前端部から径方向外側へ延在するディスク部１４２と、ディスク部１４２から略軸方向後方へ延在する爪極部１４３とからなり、軟鉄鍛造品からなる。ポールコア１４もポールコア１２と同一形状をもつ。ポールコア１２のボス部１４１の後端面とポールコア１４のボス部１４１の前端面とを接面することにより、励磁コイル１３はポールコア１２、１４により囲まれている。ポールコア１２、１４のディスク部１４２はそれぞれ８極の爪極部１４３をもち、実際には８本の柱部が略放射状に配置された形状をもつ。ポールコア１２の爪極部１４３とポールコア１４の爪極部１４３とは周方向交互に配置されている。ポールコア１２、１４の爪極部１４３の外周側の表面は、ステータコア２１の内周面に小さい電磁ギャップを隔てて対面している。永久磁石１５は、非磁性の磁石カバー１５１に包まれて本発明で言う磁石体を構成しており、互いに周方向に隣接する二つの爪極部１４３、１４３の間の爪極間ギャップに配置されている。永久磁石１５は、これら爪極部１４３、１４３により挟持されており、図３に示すように周方向（正確には略接線方向）に着磁されている。これにより、永久磁石１５は、自己に隣接する二つの爪極部１４３、１４３を逆極性に磁化している。

上記説明した車両用交流発電機及びその磁石併用ランデル式ロータの構造自体はよく知られているためこれ以上の説明は省略する。

（実施形態１）
次に、上記した回転子１の固定子組み付け前の磁気保護構造の一例を図２〜図４を参照して具体的に説明する。

図３に示す回転子１のポールコア１２、１４は、ステータコア２１内に組み付ける以前に、着磁済みの永久磁石１５により磁化されている。この段階では、回転子１のポールコア１２、１４はステータコア２１とともに略閉磁気回路を構成できないため、ポールコア１２、１４及び永久磁石１５の周辺に磁界が広く形成される。この磁界を以下、漏れ磁石磁界と称する。漏れ磁石磁界は、図３に示すように、爪極部１４３、１４３間の爪極間ギャップ１０１、１０２に集中する。これは、互いに逆方向に磁化された爪極部１４３、１４３の間の距離がこの爪極間ギャップ１０１、１０２にて最小となるためである。このことは、もし、回転子１の外側に磁性粉が浮遊又は飛散又は存在すると、この磁性粉はこの爪極間ギャップ１０１に磁気吸引されることを意味する。なお、爪極間ギャップ１０１は永久磁石１５の外周側の表面近傍の爪極間ギャップであり、爪極間ギャップ１０２は永久磁石１５の内周側の表面近傍の爪極間ギャップである。爪極間ギャップ１０２は主として内側に開口するため、磁性粉の飛び込みはほとんど考慮を必要としない。つまり、着磁済みの永久磁石１５をもつ回転子１をステータコア２１内に組み付ける以前には、永久磁石１５の外周側の表面に近接する爪極間ギャップ１０１に最も強い漏れ磁石磁界が形成され、この部位に磁性粉が飛び込んで永久磁石１５の外周側の表面などに付着するという問題があるわけである。このような磁性粉は後述するようにポールコア１２、１４の外周側の表面を研削したりする場合にも典型的に発生する。この問題を解決するために、この実施形態では、略長方形の軟鉄板を曲げ加工してなる磁石囲覆部材１９を各永久磁石１５に個別に被せる。

この実施例の磁石囲覆部材１９は、図３に示すように、爪極間ギャップ１０１内にて永久磁石１５の外周側の露出表面Ｓを覆う外周面部１９１と、外周面部１９１の軸方向両端から径方向内側へ延在して永久磁石１５の側面を覆う一対の側面部１９２とを有して略コ字板形状に形成されている。磁石囲覆部材１９の位置は、図２、図３に示すように、永久磁石１５の外周側の表面と爪極部１４３の外周側の表面との間に設定される。

磁石囲覆部材１９の一対の側面部１９２の先端部は、永久磁石１５側に曲げられて永久磁石１５の角部に径方向着脱自在に係止される係止突部１９３を有する。つまり、それぞれ板状一対の側面部１９２は外周面部１９１の両端を支点として弾性変形することにより、一対の係止突部１９３を永久磁石１５側に弾性付勢し、これにより、磁石囲覆部材１９の径方向外側への脱落を防止することができる。なお、磁石囲覆部材１９は軟磁性をもつため、永久磁石１５の磁界により爪極部１４３や永久磁石１５に磁気吸引されるため、上記係止突部１９３を持たなくても磁石囲覆部材１９の脱落は防止することができる。

この実施例では更に、磁石囲覆部材１９の外周面部１９１の周方向（接線方向）幅は、図３に示すように永久磁石１５の外周側の表面よりも径方向外側の位置にて爪極間ギャップ１０１の周方向（接線方向）幅に一致する。爪極間ギャップ１０１はこの位置から径方向内側に次第に狭く形成されているため、磁石囲覆部材１９が永久磁石１５の外周側の表面に密着するのが阻止されている。これにより、磁石囲覆部材１９を回転子１から引き剥がす作業が容易となるとともに、磁石囲覆部材１９と爪極部１４３との間の隙間から永久磁石１５の外周側の表面へ磁性粉が飛び込むのも阻止することができる。

すなわち、この実施例によれば、爪極間ギャップ１０１に配置された磁石囲覆部材１９が一対の爪極部１４３、１４３を磁気短絡して外部漏洩磁界を消すとともに、外周側に露出する永久磁石１５の表面を機械的保護し、更に、最も漏れ磁石磁界が集中する爪極間ギャップ１０１へ飛び込んだ磁性粉が強力な爪極間ギャップ１０１の磁界に吸引されて永久磁石１５の外周側の露出表面に到達するのを防止する効果を奏することもできる。

（実施形態２）
回転子１の固定子組み付け前の磁気保護構造の他例を図５〜図８を参照して具体的に説明する。

実施例１と同じく、図３に示す回転子１のポールコア１２、１４は、ステータコア２１内に組み付ける以前に、着磁済みの永久磁石１５により磁化されている。この段階では、回転子１のポールコア１２、１４はステータコア２１とともに略閉磁気回路を構成できないため、実施例１の場合と同じく、ポールコア１２、１４及び永久磁石１５の周辺に漏れ磁石磁界が形成され、この漏れ磁石磁界は、爪極部１４３、１４３間の爪極間ギャップ１０１、１０２に集中する。磁石外側の爪極間ギャップ１０１は外部に露出するため、外部で発生したあるいは外部に存在する磁性粉は爪極間ギャップ１０１へ誘因される。このような磁性粉は後述するようにポールコア１２、１４の外周側の表面を研削したりする場合にも典型的に発生する。

この問題を解決するために、この実施形態では、図５に示す回転子１のポールコア１２、１４の爪極部１４３、１４３の外周側の表面に、図６に示す軟磁性板からなる略円筒状の磁石囲覆部材１９０を嵌着する。ただし、この磁石囲覆部材１９０は、組み立てられた回転子１をステータコア２１に嵌入する際には回転子１から取り外される。磁石囲覆部材１９０の内径は回転子１の外径よりもわずかに大きく形成されており、容易に回転子１に嵌着でき、作業性が向上されている。取り付けられた磁石囲覆部材１９０は、永久磁石１５によりポールコア１２、１４の爪極部１４３の外周側の表面に誘導される磁極により磁気吸引されるため、回転子１に安定に保持される。回転子１に磁石囲覆部材１９０を嵌着した状態を図７に示す。図８は、図７の一部径方向断面図である。

このようにすれば、磁石囲覆部材１９０が既述の磁気短絡効果を奏するため、外部の磁性粉が回転子１側に吸引されるのを防止乃至低減することができ、併せて、磁石囲覆部材１９０が機械衝撃に弱い永久磁石１５を覆うため、作業工程又は搬送工程又は輸送工程中の落下などの事故により永久磁石１５が破損するのも防止することができる。なお、この実施形態では、磁石囲覆部材１９０の一端側は図６に示すように先細円筒形状に形成されている。これは、ポールコア１２、１４の爪極部１４３の基端部の外周側の表面の形状に合わせたものであり、これにより、爪極部１４３の基端部の外周側の表面と磁石囲覆部材１９０の内周面との間の隙間を縮小して、磁石囲覆部材１９０の内部への磁性粉飛び込みを減らすことができ、更に、磁石囲覆部材１９０が回転子１から軸方向こちら側へ抜けるのを禁止することができる。また、この実施形態によれば、永久磁石１５の露出表面のみならずポールコア１２、１４の爪極部１４３の表面への磁性粉の吸着も阻止することができる。

（回転子１の移送工程の説明）
次に、上記第１、第２の実施形態の磁石囲覆部材を用いた場合の回転子１の移送工程例を図９に示す。図９において補給とは、完成された回転子１をただちに回転電機に組み付けるのではなく、保管したり、たとえば交換部品などとして輸送したりする場合を意味する。

磁石囲覆部材１９、１９０は、図９に示す回転子製造工程群Aや搬送工程Bや輸送工程Cにおいて適用できる。ただし、第２実施形態の磁石囲覆部材１９０は、回転子製造工程Aのうち磁石囲覆部材１９０の取り外しが必要な工程の実行中、たとえば切削工程の実行中には取り外されるべきであることは当然である。なお、図９において磁石組み付け工程は着磁済みの永久磁石１５を用いている。

（変形態様）
上記実施形態では、回転子１としてランデル式ロータコア構造を採用したが、ロータコアに永久磁石を装着しようし、永久磁石の外周側の表面が外部に露出する構造の回転子であれば、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、SPMと呼ばれる同期機の回転子構造にも利用することができる。

（変形態様）
ポールコア１２、１４の爪極部１４３の間の爪極間ギャップにて、永久磁石１５の外周側の表面を磁石囲覆部材１９により覆う実施形態１の変形態様として、各永久磁石１５の外側の各磁石囲覆部材１９をその軸方向一端側にて周方向に連ねて磁石囲覆部材１９の個数を減らすことができる。この場合、磁石囲覆部材１９は、外周面が軸方向先端側から周方向一定ピッチで切り欠かれたくし形形状をもつ。

ただし、通常のポールコア１２、１４の爪極部１４３は径方向外側から見て略三角形形状をもつ（先細形状をもつ）ため、奇数番目の爪極間ギャップ１０１と偶数番目の爪極間ギャップ１０１とは延在方向が異なっている。このため、奇数番目の爪極間ギャップ１０１はポールコア１２の側に円筒状の基端部をもつ第１のくし形円筒状の磁石囲覆部材により被覆され、偶数番目の爪極間ギャップ１０１はポールコア１４の側に円筒状の基端部をもつ第２のくし形円筒状の磁石囲覆部材により被覆されることができる。ただし、上述したように爪極間ギャップ１０１が軸方向に対して斜めに形成されているために、これら第１、第２の磁石囲覆部材を回転子１にはめ込むに際して、それらを捻りながら回転子１に軸方向に押し込んで装着することが好適である。これら第１、第２の磁石囲覆部材は、ポールコア１２、１４の爪極部１４３の外周側の表面の研削などにおいて取り外す必要が無く、この際に発生する磁性粉に対する永久磁石防護効果に優れ、かつ、着脱容易のため作業性向上も可能となる。

（変形態様）
ポールコア１２、１４の爪極部１４３に磁石囲覆部材１９０を嵌着する実施形態２の変形態様として、図６、図８に示す円筒状の磁石囲覆部材１９０をたとえば軸方向中央部において半割りして２つの円筒状磁石囲覆部材とすることができる。この場合、これら２つの円筒状磁石囲覆部材はそれぞれ底板部をもつ底付き円筒とすることができる。このようにすれば、これら２つの円筒状磁石囲覆部材は回転軸が貫通する中央孔をもつべきである。このようにすれば、これら２つの円筒状磁石囲覆部材により回転子１を完全に囲覆することができ、磁性粉防護効果を更に向上することができる。

なお、これら２つの円筒状磁石囲覆部材の先端部は同径として突き合わせてもよく、径を円筒状磁石囲覆部材の厚さより大きい寸法だけ異ならせてこれら２つの円筒状磁石囲覆部材の先端部を嵌め合いさせてもよい。

（変形態様）
上記説明した実施形態では、軟鉄板製の磁石囲覆部材を回転子１に嵌着したが、たとえば粘着テープが内側に貼られた軟磁性粉入りテープや軟磁性薄板を永久磁石１５の外周側の表面にはりつけても、同様の効果を奏することができる。

（変形態様）
上記各実施形態は、回転子１の永久磁石１５が着磁済みである場合に特に好適であることは当然である。しかし、未着磁の永久磁石１５を回転子１に組み付ける際においても、軟磁性粉やその他の塵などが回転子１に付着する。この後着磁済方式の磁石回転子は、たとえば励磁コイルを持たない磁石発電機に適用されることができる。したがって、この場合においても上記実施形態１、２の磁石囲覆部材１９、１９０の使用は粉付着防護効果を奏することができる。この場合の回転子製造工程を図１０に示す。なお、図１０は図９のB、C前の工程の変形例である。永久磁石１５は回転子組み立て後に実施される。ただし、この後着磁方式においても、実施形態１、２の磁石囲覆部材１９、１９０は着磁時には取り外されるべきであり、実施形態２の磁石囲覆部材１９０は図９と同様、切削工程実行中などにおいても取り外されるべきである。この場合においても、磁石囲覆部材１９、１９０は図９に示すB、Cにおいて磁性粉防護効果を奏する。

（変形態様）
上記した粘着テープを永久磁石１５の表面などに貼り付け、回転子をステータコア２１に組み付ける前にこの粘着テープを取り外す場合、ポールコア１２、１４の爪極部１４３の磁気短絡効果を期待しない場合、粘着テープは軟磁性をもつ必要はない。

たとえば、粘着テープをポールコア１２、１４へ組み付ける前の永久磁石１５の外部露出表面にあらかじめ貼り付けて回転子を製造し、この回転子をステータコア２１に組み付ける前にこの粘着テープを取り外せば、永久磁石１５の外部露出表面の保護効果を奏することができる。なお、ここで言う永久磁石１５の外部露出表面とは永久磁石１５の表面のうちポールコア１２、１４に接触しない表面部分を意味する。

この場合には、磁性粉は永久磁石１５の磁界に吸引されて粘着テープ表面に吸着されるが、粘着テープを取り外すことにより磁性粉を永久磁石１５の表面から除去することができる。なお、粘着テープはその両面に粘着性をもつ両面粘着テープとすることが好適である。このようにすれば、永久磁石１５により吸引された磁性粉は両面粘着テープの外側の粘着面に固定されるため、この両面粘着テープを永久磁石１５から取り外す際に、磁性粉が永久磁石１５の表面などに再吸着されるのを防止することができる。

なお、本発明で言う軟磁性とは残留磁束が０のもの以外に外部磁界０にて弱い残留磁束をもつ材料を含むことは当然である。

（変形態様）
磁石囲覆部材１９、１９０の内側表面に樹脂塗装、樹脂フィルムを貼り付けてもよい。つまり、磁石囲覆部材１９、１９０の内側の表面は永久磁石１５やポールコア１２、１４の爪極部１４３よりも軟質材料により形成される。これにより、回転子１側の表面保護効果を実現することができる。

実施形態１、２に用いる車両用交流発電機の軸方向断面図である。 実施形態１の回転子の軸方向断面図である。 図２の回転子の軸方向拡大部分断面図である。 図２の永久磁石及び磁石囲覆部材の拡大軸方向断面図である。 実施形態２の回転子の斜視図である。 図５の回転子に嵌着する磁石囲覆部材の斜視図である。 図６の磁石囲覆部材を嵌着した回転子の斜視図である。 図６の磁石囲覆部材の拡大径方向断面図である。 前着磁方式の回転子製造工程を示す工程図である。 後着磁方式の回転子製造工程を示す工程図である。

符号の説明

１ 回転子（ロータ）
２ 固定子（ステータ）
３ フロントフレーム
４ リヤフレーム
１１ 回転軸
１２ ポールコア
１３ 励磁コイル
１４ ポールコア
１５ 永久磁石
１９ 磁石囲覆部材
２１ ステータコア
２２ ステータコイル
１０１ 爪極間ギャップ
１０２ 爪極間ギャップ
１４１ ボス部
１４２ ディスク部
１４３ 爪極部
１５１ 磁石カバー
１９０ 磁石囲覆部材
１９１ 外周面部
１９２ 側面部
１９３ 係止突部

Claims (8)

1. 固定子組み付け前の回転子の磁石保護構造であって、
   着磁済みマグネットを含む磁石体を有する前記固定子組み付け前の回転子に着脱可能に支持されて、前記磁石体の少なくとも外周側の露出表面を覆って前記磁石体の両磁極を磁気短絡する磁気短絡部材からなる磁石囲覆部材を有することを特徴とする回転子の磁石保護構造。
2. 請求項１記載の回転子の磁石保護構造において、
   前記磁石囲覆部材は、回転子を固定子に組み付ける前に回転子から取り外され、回転子が固定子に取り付けられた状態では存在していないことを特徴とする回転子の磁石保護構造。
3. 請求項１または２記載の回転子の磁石保護構造において、
   前記磁石体は、
   ランデル式ロータコアの爪極部の外周側の表面よりも径方向内側に位置して前記各爪極部の間の爪極間ギャップに介設され、
   前記磁石囲覆部材は、
   前記ランデル型ロータコアの爪極部の外周側の表面よりも径方向内側に配置される回転子の磁石保護構造。
4. 請求項３記載の回転子の磁石保護構造において、
   前記磁石囲覆部材は、
   前記爪極間ギャップにて前記磁石体の外周側の露出表面を覆う外周面部と、
   前記外周面部の軸方向両端から径方向内側へ延在して前記磁石体の側面を覆う一対の側面部と、
   を有して略コ字状に形成される回転子の磁石保護構造。
5. 請求項４記載の回転子の磁石保護構造において、
   前記磁石囲覆部材の一対の側面部の先端部は、
   前記磁石側に曲げられて前記磁石体に径方向着脱自在に係止される係止突部を有する回転子の磁石保護構造。
6. 請求項３記載の回転子の磁石保護構造において、
   前記磁石囲覆部材は、
   前記磁石体の外周側の露出表面に対して前記所定の対磁石ギャップを隔てて前記磁石体に装着される回転子の磁石保護構造。
7. 請求項１記載の回転子の磁石保護構造において、
   前記磁石体は、
   ランデル式ロータコアの爪極部の外周側の表面よりも径方向内側に位置して前記各爪極部の間の爪極間ギャップに介設され、
   前記磁石囲覆部材は、
   円筒形状に形成されて前記ランデル式ロータコアの外周面に嵌着される筒部を有する回転子の磁石保護構造。
8. 着磁済みマグネットを有する磁石体が固定されたロータコアを有し、前記磁石体の外周側の表面は、前記ロータコアの外周側の表面よりも径方向内側に配置される回転子の磁石保護方法であって、
   前記ロータコアの外周側の表面よりも径方向内側かつ前記磁石体の外周側の表面よりも径方向外側に位置にて前記磁石体の少なくとも外周側の表面を覆う磁石囲覆部材を、前記ロータコアの外周側の表面の切削乃至研削の前に前記回転子に取り付け、前記切削乃至研削が完了した後でかつ前記回転子を固定子に取り付ける前に前記磁石囲覆部材を前記回転子から取り外すことを特徴とする回転子の磁石保護方法。

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