JP4503159B2 - 農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は農業用ポリオレフィン系フィルムに関し、さらに詳しくは、耐久性、防曇性の諸特性、特に防曇層の密着性に優れ、長期間使用可能な農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業用作物を半促成又は抑制栽培して、その市場性、生産性を高めるため、農業用塩化ビニルフィルムやポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂を主体とした農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムなどの農業用被覆材による被覆下に有用植物を栽培する、いわゆるハウス栽培やトンネル栽培が盛んに行われている。
【0003】
なかでも、ポリオレフィン系樹脂を主体とした農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、軽量であり、また焼却しても有毒ガスの発生が少なく、安価であることなどから盛んに利用されるようになってきている。
さらに、近年では農家の人手不足や省資源といった理由から農業用被覆材に対して長期間に亘り展張しておくことが可能なものが要望されており、フッ素系フィルム等も開発されているが、価格が高い、硬質であり展張作業に手間が掛かる等の問題がある。従って、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムであって、長期間に亘り展張が可能なものが要望されている。
【0004】
これら農業用ハウスに用いられる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、その表面が疎水性であるため、温度・湿度等の条件によってはフィルム表面に曇りを生じ、そのため太陽光線の透過が悪くなり、植物の生育を遅くしたり、或いは曇りの微細水滴が集合して生じた水滴が栽培植物に落下することにより、幼芽が害を受けたり、病害の発生原因となったりする。
【0005】
このような不具合を解消するためには、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムの表面に防曇性を付与すればよいことが知られている。農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム表面に防曇性を付与するためには、ポリオレフィン樹脂に界面活性剤のような親水性物質を練り混む方法、またはフィルム化した後に、その表面に、例えば、シリカまたはアルミナと界面活性剤との混合物を塗布する方法が各種提案されている。
【0006】
しかしながら、前者の方法では樹脂に練り込んだ親水性物質がフィルム表面に噴き出して配位し、フィルムに防曇性を付与するため、防曇性を発現するまでの時間は短いものの、水によって流失しやすく、短期間の内に防曇性が消失する。他方、後者の方法においてもポリオレフィン系樹脂フィルムとの密着性に乏しいため、形成塗膜は時間の経過とともに脱落する。
【0007】
また、防曇性を付与する他の方法として、フィルム化した後に、その表面に、アクリル樹脂とコロイダルシリカなどの無機質コロイドゾルを主成分とする防曇被膜を設けることも提案されている。
しかしながら、かかるアクリル樹脂を主成分とする防曇被膜では、アクリル樹脂とポリオレフィン系樹脂の相性の問題からか、長期間外気にさらされ、かつ、ハウス内換気の為に、フィルムをパイプに巻き付け巻き上げたり巻き下げたりしているうちに、塗膜が剥離することがあり、また透明性も低下するという問題が生じていた。
【0008】
すなわち、いずれの方法を採用しても、防曇性能の高さと、防曇塗膜の密着性、耐久性の両立が難しかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかして本発明は、上記問題を解決した、防曇被膜の密着性が良く、かつ耐候性、耐候性に優れ、長期にわたって展張しておくことができる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに関するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記問題を解決するため鋭意検討した結果、ポリオレフィン系フィルム中に耐久性付与のために通常良く添加されてなる光安定剤が、ポリオレフィン系フィルムとアクリル系樹脂の密着性に深く関与していることを見いだし、種々の化合物を試してみた結果、特定の化合物、すなわちエチレンと環状アミノビニル化合物とを共重合させて得られたヒンダードアミン化合物をポリオレフィン系フィルムに含有し、その上に特定の防曇被膜を形成することにより、上記問題が解決できることを見いだし、本願発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、農業用ポリオレフィン系樹脂多層フィルムであって、基材のポリオレフィン系樹脂フィルムが、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を30重量%以上含有する外層、エチレン−酢酸ビニル系樹脂を45重量%以上含有する中間層、エチレン−酢酸ビニル系樹脂を45重量%以上含有する内層を有し、かつ少なくとも該内層に、エチレンと環状アミノビニル化合物とを共重合させて得られたヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体を該ビニル化合物単位の割合で0.05〜5重量%含有し、かつ該内層に接する面に、アクリル系樹脂および無機質コロイドゾルを主成分とする防曇被膜を形成してなることを特徴とする農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用フィルムとして好ましい。
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂の一成分としてメタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を使用することができる。
【0013】
これは、通常、メタロセンポリエチレンといわれているものであり、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体であり、この共重合体は、(A法)特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35005号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開昭60−35009号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号の各公開公報、ヨーロッパ特許出願公開第420436号明細書、米国特許第5055438号明細書及び国際公報WO91/04247号明細書などに記載されている方法、即ちメタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、又は、例えば、国際公開公報WO92/01723号明細書等に開示されているような、メタロセン化合物と、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなる化合物からなる触媒、又は、更には、特開平5−295020号、特開平5−295022号などに記載されているような、メタロセン化合物を無機化合物に担持させた触媒などを使用して、主成分のエチレンと従成分の炭素数4〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.880〜0.930g/cm3 となるように共重合させる方法である。この重合方法としては、高圧イオン重合法、溶液法、スラリー法、気相法などを挙げることができる。これらの中では高圧イオン重合法で製造するのが好ましい。
【0014】
なお、この高圧イオン重合法とは、特開昭56−18607号、特開昭58−25106号の各公報に記載されているが、圧力が100kg/cm2 以上、好ましくは300〜1500kg/cm2 で、温度が125℃以上、好ましくは150〜200℃の反応条件下に高圧イオン重合法により製造されるものである。
他方、メタロセンポリエチレンといわれるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法として、例えば、(B法)特開平6−9724号、特開平6−136195号、特開平6−136196号、特開平6−207057号の各公開公報に記載されているメタロセン触媒成分、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分、微粒子状担体、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分、イオン化イオン性化合物触媒成分を含む、オレフィン重合用触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あるいは溶液状の液相で種々の条件でエチレンとα−オレフィン、具体的には炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.900〜0.930g/ cm3となるように共重合させることによっても調製することができるが、フィルムの良好な初期透明性及び透明持続性が得られる点で上記(A)法によりメタロセンポリエチレンの製造がより好ましい。
【0015】
(A)法によるメタロセンポリエチレンは、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fractionation)による測定によって得られる微分溶出曲線で特定される。即ち、温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線のピークが1つ存在するもので、そのピーク温度が20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲内にあるものである。また、該ピーク温度の溶出温度以外の温度において溶出するものが実質的に該溶出曲線に存在することがある。
【0016】
上記溶出曲線のピーク温度内のピークが2つ以上存在すると透明性が劣るものとなる。また、存在していない場合にはフィルムがべたつくことになる。
温度上昇溶離分別(TREF)による溶出曲線の測定
上記温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)による溶出曲線の測定は、「Journal of Applied Polymer Science.Vol 126,4, 217−4,231(1981)」、「高分子討論会予稿集2P1C09(昭和63年)」等の文献に記載されている原理に基づいて実施される。すなわち、先ず対象とするポリエチレンを溶媒中で一度完全に溶解させる。その後、冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させる。かかるポリマー層は結晶し易いものが内側(不活性担体表面に近い側)に形成され、結晶し難いものが外側に形成されてなるものである。次に、温度を連続又は段階的に昇温することにより、先ず、低温度では対象ポリマー中の非晶部分から、すなわち、ポリマーの持つ短鎖分岐の分岐度の多いものから溶出する。溶出温度が上昇すると共に、徐々に分岐度の少ないものが溶出し、ついには分岐の無い直鎖状の部分が溶出して測定は終了する。この各温度での溶出成分の濃度を連続的に検出して、その溶出量と溶出温度によって描かれるグラフ(溶出曲線)のピークによって、ポリマーの組成分布を測定することができるものである。
【0017】
本発明のポリオレフィン系樹脂の一成分として使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、以下の物性を示すものである。
メルトフローレート(MFR)
JIS−K7210により測定されたMFRが0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分の値を示すものである。該MFRがこの範囲より大きいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。また、該MFRがこの範囲より小さすぎると成形時の樹脂圧力が増大し、成形機に負荷がかかるため、生産量を減少させて圧力の増大を抑制しなければならず、実用性に乏しい。
【0018】
密度
JIS−K7112により測定された密度が0.880〜0.930g/cm3 、好ましくは0.880〜0.920g/cm3 の値を示すものである。該密度がこの範囲より大きいと透明性が悪化する。また、密度がこの範囲より小さいと、フィルム表面のべたつきによりブロッキングが生じ実用性に乏しくなる。
【0019】
分子量分布
ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0の値を示すものである。該分子量分布がこの範囲より大きいと機械的強度が低下し好ましくない。該分子量分布がこの範囲より小さいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。
【0020】
本発明における基材となる多層フィルムの構成は、2以上の多層であればよいが、好ましくは、3層構成とし、ハウス展張時に外面側となる外層を、前述のメタロセン触媒で共重合して得られるエチレンーα―オレフィン共重合樹脂を30重量%以上、好ましくは45重量%以上、更に好ましくは60重量含有する層とし、中間層には、エチレンー酢酸ビニル系樹脂を45重量%以上含有する層を、内層には、エチレンー酢酸ビニル系樹脂を45重量%以上含有する層又は、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレンーα―オレフィン共重合樹脂を30重量%以上含有する層とする、層構成が好ましい。
【0021】
そして、本発明における基材となるポリオレフィン系樹脂多層フィルムには、その多層のうち、ハウス展張時にハウス内面側となる少なくとも最内層に、ヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体を含有することを特徴とする。この共重合体は、耐候性向上を目的とする光安定剤としての効果を奏するだけでなく、他の通常の光安定剤を用いる場合に比べて、その展張時ハウス内面になる面に、フィルムに防曇性を付与する為に設ける、アクリル系樹脂および無機質コロイドゾルを主成分とする被膜との密着性を大幅に改良するという意外な効果を有するものである。
【0022】
本発明に使用するヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体とは、エチレンと環状アミノ化合物とを共重合させて得られた共重合体であり、特にエチレンと環状アミノ化合物との和に対する環状アミノ化合物の割合が1モル%未満、更に好ましくは0.1〜0.7モル%で、該共重合体のMFRが0.1〜200g/10分である共重合体を用いることが好ましい。
【0023】
環状アミノビニル化合物は、下記一般式で示されるものである。
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、R1 及びR2 は水素原子またはメチル基を、R3 は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ示す)
代表例を挙げれば下記の通りである。
4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン
4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン
4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−メタクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−クリトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
4−クリトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
これらのヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体は、高圧ラジカル共重合法によって製造される。
【0026】
ヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体の添加量は、層を構成する樹脂成分に対し、環状アミンビニル化合物に基づく構成単位の割合で0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%である。0.05%未満では耐候性改良効果が少なく、また5重量%を越えても増量による耐候性向上効果はほとんど無く、経済的に不利である。
【0027】
ヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体は、オレフィン系樹脂フィルムを多層とした場合の、少なくとも最内層(ハウス内面)に含有することを特徴とするため、もちろん全層に含有させてもよいし、最内層と最外層(ハウス外面)に含有させ、その他の層には農業用として通常配合されるヒンダードアミン系光安定剤を含有させることもでき、後者の場合は全層にヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体を用いる場合よりコスト的に有利になる。使用可能な市販のヒンダードアミン系化合物を例示すれば、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622LD、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB944(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−68、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−57(以上、アデカ・アーガス社製)等が挙げられる。
【0028】
また本発明における農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムには、上記ヒンダードアミン系光安定剤の他にも必要に応じて、塗膜の密着性を阻害しない範囲で可塑剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、熱安定剤、顔料、染料等の着色剤、防霧剤、帯電防止剤・無機微粒子等を配合することができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、マレイン酸誘導体、クエン酸誘導体、イタコン酸誘導体、オレイン酸誘導体、リシノール酸誘導体、その他トリクレジルホスフェート、エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂系可塑剤等が挙げられる。
【0029】
防曇剤としては、公知の種々の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、フェニルサリシレート系等の紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及び/又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0030】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、ジラウリルチオジプロピオネート等を挙げることができる。
滑剤ないし熱安定剤としては、例えばポリエチレンワックス、流動パラフィン、ビスアマイド、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、脂肪族アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、有機リン酸金属塩、有機ホスファイト化合物、フェノール類、β−ジケトン化合物等が挙げられる。
【0031】
着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
防霧剤としては、フッ素系界面活性剤が挙げられ、具体的には、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記各種添加剤の配合量は、フィルムの性能、特に外面塗膜、防曇塗膜の密着性を悪化させない範囲で選ぶことができる。
【0032】
無機微粒子としては、保温剤として有効なMg、Ca、Al、SiおよびLiの少なくとも1つの原子を含有する無機酸化物、無機水酸化物、ハイドロタルサイト類などである。具体的には、SiO2 、Al2 O3 、MgO、CaOなどの無機酸化物;Al(OH)3 、Mg(OH)2 、Ca(OH)2 などの無機水酸化物;
式M2+ 1-X AlX (OH)2 (An-)X/n ・mH2 O
〔式中、M2+は、Mg、CaまたはZnの二価金属イオンであり、An-はCl- 、Br- 、I- 、NO3 2- 、ClO4-、SO4 2- 、CO2 2- 、SiO3 2- 、HPO4 2- 、HBO3 2- 、PO4 2- 等のアニオンであり、xは、0<x<0.5の条件を満足する数値であり、mは、0≦m≦2の条件を満足する数値である〕で表される無機複合化合物、その焼成物等のハイドロタルサイト類などが挙げられる。
【0033】
これら無機微粒子は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記各種添加剤の配合量は、フィルムの性能を悪化させない範囲、通常は基体のオレフィン系樹脂100重量部当り12重量部以下の範囲で選ぶことができる。
基材ポリオレフィン系樹脂に、各種添加剤を配合するには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサーその他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー成形法等の従来から知られている方法によればよい。
【0034】
本発明に係るフィルムは、透明でも、梨地でも、半梨地でもよく、その用途は農業用ハウス(温室)、トンネル等の被覆用に使用できるほか、マルチング用、袋掛用等にも使用できる。
また、フィルム厚みについては強度やコストの点で0.03〜0.3mmの範囲のものが好ましく、0.05〜0.2mmのものがより好ましい。
【0035】
本発明において、前記基材の最内層に接して形成される防曇被膜としては、アクリル系樹脂及び無機質コロイドゾルを主成分とする被膜を用いる。
アクリル系樹脂として好ましく用いられる1つの例としては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体である疎水性アクリル系樹脂を挙げることができる。
【0036】
アクリル系樹脂の製造に用いるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸デシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸−n−プロピルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸デシルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。
【0037】
アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
本発明で用いるアクリル系樹脂は、疎水性アクリル系樹脂であることが好ましく、即ち、上記のようなアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類、又は、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物を、少なくとも計60重量%を含有すること、好ましくは80重量%以上含有することが好ましい。60重量%に満たないときは、形成被膜の耐水性が十分でないために、防曇持続性能を発揮しえないことがあり好ましくない。
【0038】
アクリル系樹脂を得るために用いるα、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよいが、疎水性アクリル系樹脂とするためには、0〜40重量%の範囲で、好ましくは0〜20重量%で使用するのが好ましい。使用量が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ましくない。
【0039】
アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。乳化剤の存在下での重合方法の場合、これら乳化剤は、単量体の仕込み合計量に対し0.1〜10重量%の範囲で使用するのが、重合速度の調整、合成される樹脂の分散安定性の点から好ましい。
【0040】
本発明のアクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。
本発明のアクリル系樹脂は、特に、ガラス転移温度が35〜80℃のものを用いるのが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると無機質コロイド粒子が数次凝集して不均一な分散状態をとりやすく、高すぎる場合、透明性のある均一な被膜を得るのが困難となりやすい。
【0041】
本発明で用いる無機質コロイドゾルは、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に塗布することにより、フィルム表面に親水性を付与する機能を果たすものである。
無機質コロイドゾルとしては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、シリカゾルとアルミナゾルで、これらは、単独で用いても併用しても良い。
【0042】
無機質コロイドゾルとしては、その平均粒子径が5〜100μmの範囲で選ぶのが好ましく、また、この範囲であれば、平均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組み合わせて用いても良い。平均粒子径が大きすぎると、被膜が白く失透することがあり、また、平均粒子径が小さすぎると、無機質コロイドゾルの安定性に欠けることがあるため好ましくない。 無機質コロイドゾルは、その配合量をアクリル系樹脂の固形分重量に対して、固形分として50〜400重量%にするのが好ましい。すなわち、配合量が少なすぎる場合は、十分な防曇効果が発揮できないことがあり、一方、配合量が多すぎる場合は、防曇効果が配合量に比例して向上しないばかりでなく、塗布後に形成される被膜が白濁化してフィルムの光線透過率を低下させる現象があらわれ、また、被膜が粗雑で脆弱になることがあり、好ましくない。
【0043】
本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を添加することができる。
陰イオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ジアルキルホスフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩等が挙げられる。
【0044】
陽イオン系界面活性剤としては、エタノールアミン類;ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩;ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0045】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベンゾエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート等のジグリセリン脂肪酸エステル類;グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ジペンタエリスリトールモノパルミテート等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミテート・ハーフアジペート、ジグリセリンモノステアレート・ハーフグルタミン酸エステル等のソルビタン及びジグリセリン脂肪酸・2塩基酸エステル類;またはこれらとアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオンオキサイド等の縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシプロピレンソルビタンモノステアレート等;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;シュガーエステル類等が挙げられる。
【0046】
高分子界面活性剤としては、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、セルロースエーテル類等が挙げられる。
これら界面活性剤の添加は、疎水性アクリル系樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性剤の添加量は、アクリル系樹脂の固形分100重量部に対し0.1〜50重量部の範囲で選ぶと良い。界面活性剤の添加量が少なすぎると、アクリル系樹脂及び無機質コロイドゾルが十分に分散するのに時間がかかり、また、無機質コロイドゾルとの併用での防曇効果を十分に発揮しえず、一方界面活性剤の添加量が多すぎると塗布後に形成される被膜表面へのブリードアウト現象により被膜の透明性が低下し、顕著な場合は被膜の耐ブロッキング性の悪化や被膜の耐水性低下を引き起こす場合がある。
【0047】
本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができる。架橋剤は、アクリル系樹脂同士を架橋させ、被膜の耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、アミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられるが、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキシ化合物類が好ましく使用できる。
【0048】
アミン化合物類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン等の脂環式アミン;4−4’−ジアミノジヘニルメタン、m−フェニレンジアミン等の芳香族アミンが使用される。アジリジン化合物類としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス[1−(2−メチル)−アジリジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)−アジリジニル]トリホスファトリアジン等が使用される。エポキシ化合物類としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応生成物、フェノール(又は置換フェノール)とホルムアルデヒドとの樹脂反応生成物とエピクロルヒドリンの反応により生成されるエポキシ化ノボラック樹脂、エピクロルヒドリン及び脂肪族多価アルコール例えばグリセロール、1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール又は類似の多価アルコール成分から生成される樹脂状反応生成物及び過酢酸を用いるエポキシ化により得られる樹脂等が使用される。エポキシ化合物類では、さらに三級アミン類や四級アンモニウム塩類を触媒として併用することができる。これら架橋剤は、その添加量がアクリル系樹脂固形分に対して0.1〜30重量%の範囲で使用することができる。
【0049】
本発明に使用される防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合することができる。かかる液状分散媒としては、水を含む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブアセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分散媒は単独で用いても併用しても良い。防曇剤組成物は、アクリル系樹脂、無機質コロイドの固形分として一般に0.5〜50重量%の濃度で調製し、これを希釈して使用することが多い。
【0050】
本発明で調製される防曇剤組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、造粘剤、顔料、顔料分散剤等の慣用の添加剤を混合することができる。また、アクリル系樹脂以外のバインダー成分として、たとえばポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系の水分散性ウレタン樹脂などをアクリル系樹脂の含有量未満の量範囲で混合していてもよい。
【0051】
なお、本発明でいう、アクリル系樹脂被膜のガラス転移温度は、次式により算出した。
【0052】
【数1】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+Wn/Tgn
ただし、Tgはアクリル系樹脂のガラス転移温度(絶対温度)、Tg1、Tg2、…、Tgnは各成分1、2、…、nのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)、W1、W2、…、Wnは各成分1、2、…、nの重量分率をそれぞれ示す。
【0053】
基体フィルムの表面に防曇性被膜を形成するには、前述の重合にて得られたアクリル系樹脂溶液及び防曇剤組成物をそれぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50〜250℃、好ましくは70〜200℃の温度範囲で乾燥すればよい。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法等適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが有利である。
【0054】
本発明において、基体フィルムの表面に形成させる被膜の厚さは、基体フィルムの1/10以下を目安に選択するとよいが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。被膜の厚さが基体フィルムの1/10より大であると、基体フィルムと被膜とでは屈曲性に差があるため、被膜が基体フィルムから剥離する等の現象がおこりやすく、また、被膜に亀裂が生じて基体フィルムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくない。
【0055】
また、基体フィルムと被膜組成物に由来する被膜との接着性が充分でない場合には、基体フィルムの表面を予めアルコールまたは水で洗浄したり、プラズマ放電処理、あるいはコロナ放電処理を施しておいてもよい。
本発明に係る農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを、実際に使用するにあたっては、防曇被膜の設けられた側をハウス又はトンネルの内側となるようにして展張するのがよい。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例にもとづいて詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
(1)ポリオレフィン系基材フィルムの調製
三層インフレーション成形装置として三層ダイに100mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機は外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40mmφ((株)プラ技研製)として成形温度160℃、ブロー比2.0、引取速度5m/分にて、表−1に記載のポリオレフィン系基材フィルム(A〜D)を得た。
【0057】
尚、ヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体としては、エチレン及び4―アクリロイルオキシー2、2、6、6―テトラメチルピペリジンを共重合させてなる共重合体を用いた。
また、比較例に用いる、通常一般的に用いられているヒンダードアミンとして、下記2種類の化合物を用いた。
【0058】
キマソーブ944(チバガイギー社製)
【0059】
【化2】
【0060】
MARK LA−57(アデカ・アーガス社製)
【0061】
【化3】
【0062】
(2)ハウス内面の防曇被膜の形成
表−2に記載のモノマー組成よりなるアクリル系樹脂の水分散液を調製し、得られたアクリル系水分散液に表−3に記載の無機質コロイドゾル、その他の成分を配合したA,Bの2種類の防曇剤組成物と、比較例に用いる防曇剤組成物として、アクリル系樹脂成分を含有せず、主に無機質コロイドゾルと界面活性剤とからなる防曇剤組成物C、1種類を調整した。
【0063】
得られた防曇剤組成物を、前記、基材フィルムにグラビアコート法によって塗布した後、80℃に温度調節した温風乾燥炉内に2分間滞留させ、液状分散媒を飛散させて膜を形成させた。
(3)フィルムの評価
得られた各フィルムについて、次のような評価試験を行い、その結果を表−4に示した。
a)もみ試験後のフィルム透明性
株式会社上島製作所製UF耐揉試験機FT−501にて揉み試験を実施した。幅2cm、長さ7cmに切断したフィルムを23℃恒温室に60分静置した後、荷重500g、もみ幅2cm、もみ速度120回/分の条件にて10回揉み試験を実施した。その後、もみ幅部分の、波長555nmにおける平行光線透過率を、U−2000型日立ダブルビーム分光光度計で測定した。
b)塗膜密着性
幅20cm、長さ30cmに切断したフィルムを名古屋市の水道水に浸漬し、5℃雰囲気下に一昼夜放置した。このフィルムにスコッチブライト(3M製工業用パッド8448、サイズ;8cm×10cm)をのせ、以下の条件で塗膜剥離試験を行った。
【0064】
試験温度:5℃雰囲気下
荷重:4kg
試験回数:長さ方向へ20cm×10往復
試験後のサンプルを乾燥させ、防曇層の塗膜密着性を以下の基準にて目視評価した。
【0065】
○;剥離面積 0〜20%
△;剥離面積 20〜50%
×;剥離面積 >50%
d)防曇性試験
三重県一志郡の圃場に、間口5.4m、棟高3m、奥行き15mのパイプハウス13棟を構築し、表−4に記載の構成よりなる各種フィルムを各棟に1種類ずつ防曇被膜が形成された面がハウスの内側になるように展張した。
【0066】
展張したフィルムのうち、摩擦を受けやすいフィルムの部位(換気の為に巻上げ巻下げを行うハウス側面部位)について、ハウス内面の防曇性を目視にて評価した。尚、評価基準は、次の通りである。
◎・・・フィルム表面(ハウス内側に面した方、以下同じ)に付着した水滴同士が合体して薄膜状に広がり、この薄膜状部分の面積がフィルム表面の2/3以上にわたるもの。
【0067】
○・・・フィルム表面に付着した水滴同士の合体は認められるが、この薄膜状部分の面積がフィルム表面の2/3未満、1/2以上のもの。
△・・・フィルム表面に付着した水滴同士の合体は認められるが、この薄膜状部分の面積がフィルム表面の1/2未満のもの。
×・・・フィルム表面に付着した水滴同士の合体は認められるが、薄膜状部分が認められないもの、または、フィルム表面に付着した水滴同士の合体が認められないもの。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、耐候性に優れ、フィルム同士が重なりあった際の防曇被膜剥離が少なく、また防曇塗膜の密着性が良いため長期間にわたり防曇性を持続できる耐久性農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを得ることできる。
Claims (2)
- 農業用ポリオレフィン系樹脂多層フィルムであって、基材のポリオレフィン系樹脂フィルムが、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を30重量%以上含有する外層、エチレン−酢酸ビニル系樹脂を45重量%以上含有する中間層、エチレン−酢酸ビニル系樹脂を45重量%以上含有する内層を有し、かつ少なくとも該内層に、エチレンと環状アミノビニル化合物とを共重合させて得られたヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体を該ビニル化合物単位の割合で0.05〜5重量%含有し、かつ該内層に接する面に、アクリル系樹脂および無機質コロイドゾルを主成分とする防曇被膜を形成してなることを特徴とする農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
- フィルムのハウス内面の防曇被膜を形成するアクリル系樹脂が、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物を主要成分として製造されたガラス転移温度が35〜80℃の重合体または共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
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