JP4347987B2 - 農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム - Google Patents

農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに関し、さらに詳しくは、フィルム同士が重なりあった際に融着することが少なく、かつ耐候性、防曇性、特に防曇性の発現速さ、及び防曇性の長期持続性に優れる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業用作物を半促成又は抑制栽培して、その市場性、生産性を高めるため、農業用塩化ビニルフィルムやポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂を主体とした特殊フィルムなどの農業用被覆材による被覆下に有用植物を栽培する、いわゆるハウス栽培やトンネル栽培が盛んに行われている。
【0003】
なかでも、ポリオレフィン系樹脂を主体とした特殊フィルムは、軽量であり、また焼却しても有毒ガスの発生が少なく、安価であることなどから盛んに利用されるようになってきている。
さて、このような農業用ハウスでは、春〜秋の気温が高い時期にはハウス内が高温になるのを避けるため、ハウス側面のフィルムを金属パイプ等に巻き付けることで、ハウス側面を開放して換気をする。気温が高い夏期には、側面フィルムは巻き上げられたまま数ヶ月間放置されることもあり、この時フィルムは高温度・高湿度の雰囲気にさらされ、またフィルムは互いに圧着されているため、接触面同士が融着することがある。秋〜冬に気温が低下した時、ハウス内が低温になるのを避けるために巻き上げていたフィルムを巻きおろすが、フィルムが融着した場合巻きおろすことができず、また、無理に巻きおろすとフィルムが破れてしまい大きな問題であった。
【0004】
この問題を解決する方法として、農業用ポリオレフィン系フィルムの片面に、特定のアクリル系樹脂からなる被膜を形成することにより、フィルム透明性を損なうことなく高温高湿度における巻き上げ時の融着を防止することを、先に提案している。(特願平10−364505号公報及び11−198601号)。
しかしながら、かかる特定のアクリル系樹脂をポリオレフィン系樹脂からなるフィルムの片面に形成して長期に展張試験を行っていった場合に、ポリオレフィン系樹脂フィルムとの相性の問題からか、該フィルムに対するアクリル系樹脂塗膜の密着性が劣り、長期間外気にさらされているうちに、だんだんとアクリル系樹脂層が剥がれてきて、耐久性に劣るという問題が見いだされてきた。
【0005】
また、これら農業用ハウスに用いられる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、その表面が疎水性であるため、温度・湿度等の条件によってはフィルム表面に曇りを生じ、そのため太陽光線の透過が悪くなり、植物の生育を遅くしたり、或いは曇りの微細水滴が集合して生じた水滴が栽培植物に落下することにより、幼芽が害を受けたり、病害の発生原因となったりする。
【0006】
このような不具合を解消するためには、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムの表面に防曇性を付与すればよいことが知られている。農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム表面に防曇性を付与するためには、ポリオレフィン樹脂に界面活性剤のような親水性物質を練り混む方法、またはフィルム化した後に、その表面に、例えば、シリカまたはアルミナと界面活性剤との混合物を塗布する方法が各種提案されている。
【0007】
しかしながら、前者の方法では樹脂に練り込んだ親水性物質がフィルム表面に噴き出して配位し、フィルムに防曇性を付与するため、防曇性を発現するまでの時間は短いものの、水によって流失しやすく、短期間の内に防曇性が消失する。他方、後者の方法においてもポリオレフィン系樹脂フィルムとの密着性に乏しいため、形成塗膜は時間の経過とともに脱落し、いずれの方法を採用しても防曇性の発現の速さと防曇効果の持続性の両立が困難であった。
【0008】
さらに、近年では農家の人手不足や省資源といった理由から農業用被覆材に対して長期間に亘り展張しておくことが可能なものが要望されており、フッ素系フィルム等も開発さてれいるが、価格が高い、硬質であり展張作業に手間が掛かる等の問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、巻き上げられたフィルムの融着がフィルム透明性を損なうことなく改善され、かつ、耐候性、防曇性に優れ、長期間にわたって展張しておくことができる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムであって、展張時ハウス外面に、下記重合生成物(A)または下記重合生成物(A)およびアクリル系樹との混合物よりなる被膜が形成され、かつ他方の面に、下記防曇剤組成物(B)よりなる被膜が形成されてなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにある。
【0011】
重合生成物(A):一分子中に少なくとも1個の官能基を有するオレフィン樹脂(a)と、該官能基と反応性を有する官能基を有するラジカル重合性単量体(b)とを反応させて得られるラジカル重合性オレフィン樹脂(c)にアルキル(メタ)アクリレートを必須成分として含有する共重合体可能な単量体(d)を共重合して得られる重合生成物
防曇剤組成物(B):(e)ある疎水性アクリル系樹脂の水分散液、(f)ポリウレタン水性樹脂組成物、及び(g)無機質コロイドゾルの3成分を必須成分とする防曇剤組成物
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用フィルムとして好ましい。
【0013】
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂の一成分としてメタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を使用することができる。これは、通常、メタロセンポリエチレンといわれているものであり、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体であり、この共重合体は、(A法)特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35005号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開昭60−35009号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号の各公開公報、ヨーロッパ特許出願公開第420436号明細書、米国特許第5055438号明細書及び国際公報WO91/04247号明細書などに記載されている方法、即ちメタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、又は、例えば、国際公開公報WO92/01723号明細書等に開示されているような、メタロセン化合物と、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなる化合物からなる触媒、又は、更には、特開平5−295020号、特開平5−295022号などに記載されているような、メタロセン化合物を無機化合物に担持させた触媒などを使用して、主成分のエチレンと従成分の炭素数4〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.880〜0.930g/cm3となるように共重合させる方法である。この重合方法としては、高圧イオン重合法、溶液法、スラリー法、気相法などを挙げることができる。これらの中では高圧イオン重合法で製造するのが好ましい。
【0014】
なお、この高圧イオン重合法とは、特開昭56−18607号、特開昭58−25106号の各公報に記載されているが、圧力が100kg/cm2以上、好ましくは300〜1500kg/cm2で、温度が125℃以上、好ましくは150〜200℃の反応条件下に高圧イオン重合法により製造されるものである。他方、メタロセンポリエチレンといわれるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法として、例えば、(B法)特開平6−9724号、特開平6−136195号、特開平6−136196号、特開平6−207057号の各公開公報に記載されているメタロセン触媒成分、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分、微粒子状担体、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分、イオン化イオン性化合物触媒成分を含む、オレフィン重合用触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あるいは溶液状の液相で種々の条件でエチレンとα−オレフィン、具体的には炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.900〜0.930g/cm3 となるように共重合させることによっても調製することができるが、フィルムの良好な初期透明性及び透明持続性が得られる点で上記(A)法によりメタロセンポリエチレンの製造がより好ましい。
【0015】
(A)法によるメタロセンポリエチレンは、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fractionation)による測定によって得られる微分溶出曲線で特定される。即ち、温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線のピークが1つ存在するもので、そのピーク温度が20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲内にあるものである。また、該ピーク温度の溶出温度以外の温度において溶出するものが実質的に該溶出曲線に存在することがある。
【0016】
上記溶出曲線のピーク温度内のピークが2つ以上存在すると透明性が劣るものとなる。また、存在していない場合にはフィルムがべたつくことになる。
温度上昇溶離分別(TREF)による溶出曲線の測定
上記温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)による溶出曲線の測定は、「Journal of Applied Polymer Science.Vol 126,4,217−4,231(1981)」、「高分子討論会予稿集2P1C09(昭和63年)」等の文献に記載されている原理に基づいて実施される。すなわち、先ず対象とするポリエチレンを溶媒中で一度完全に溶解させる。その後、冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させる。かかるポリマー層は結晶し易いものが内側(不活性担体表面に近い側)に形成され、結晶し難いものが外側に形成されてなるものである。次に、温度を連続又は段階的に昇温することにより、先ず、低温度では対象ポリマー中の非晶部分から、すなわち、ポリマーの持つ短鎖分岐の分岐度の多いものから溶出する。溶出温度が上昇すると共に、徐々に分岐度の少ないものが溶出し、ついには分岐の無い直鎖状の部分が溶出して測定は終了する。この各温度での溶出成分の濃度を連続的に検出して、その溶出量と溶出温度によって描かれるグラフ(溶出曲線)のピークによって、ポリマーの組成分布を測定することができるものである。
【0017】
本発明のポリオレフィン系樹脂の一成分として使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、以下の物性を示すものである。
メルトフローレート(MFR)
JIS−K7210により測定されたMFRが0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分の値を示すものである。該MFRがこの範囲より大きいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。また、該MFRがこの範囲より小さすぎると成形時の樹脂圧力が増大し、成形機に負荷がかかるため、生産量を減少させて圧力の増大を抑制しなければならず、実用性に乏しい。
【0018】
密度
JIS−K7112により測定された密度が0.880〜0.930g/cm3、好ましくは0.880〜0.920g/cm3の値を示すものである。該密度がこの範囲より大きいと透明性が悪化する。また、密度がこの範囲より小さいと、フィルム表面のべたつきによりブロッキングが生じ実用性に乏しくなる。
【0019】
分子量分布
ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0の値を示すものである。該分子量分布がこの範囲より大きいと機械的強度が低下し好ましくない。該分子量分布がこの範囲より小さいと成形時にフィルムが蛇行し安定しない。
【0020】
また本発明における農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムには、必要に応じて、防塵塗膜、防曇塗膜の密着性を阻害しない範囲で可塑剤、防曇剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、熱安定剤、顔料、染料等の着色剤、防霧剤、帯電防止剤・無機微粒子等を配合することができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、マレイン酸誘導体、クエン酸誘導体、イタコン酸誘導体、オレイン酸誘導体、リシノール酸誘導体、その他トリクレジルホスフェート、エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂系可塑剤等が挙げられる。
【0021】
防曇剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、フェニルサリシレート系、トリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及び/又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0022】
光安定剤としては、農業用に通常配合される種々の化合物を使用することができる。具体的には、特公昭62−59745公報第5欄第37行〜第16欄第18行目、特開平2−30529明細書第20頁15行〜第38頁第3行目に記載されているヒンダードアミン化合物である。
本発明で使用可能な市販のヒンダードアミン系化合物を例示すれば、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622LD、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB944(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MARKLA−63、MARK LA−68、MARK LA−68、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−57(以上、アデカ・アーガス社製)等が挙げられる。
【0023】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、ジラウリルチオジプロピオネート等を挙げることができる。
滑剤ないし熱安定剤としては、例えばポリエチレンワックス、流動パラフィン、ビスアマイド、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、脂肪族アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、有機リン酸金属塩、有機ホスファイト化合物、フェノール類、β−ジケトン化合物等が挙げられる。
【0024】
着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
防霧剤としては、フッ素系界面活性剤が挙げられ、具体的には、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界<面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記各種添加剤の配合量は、フィルムの性能、特に防塵塗膜、防曇塗膜の密着性を悪化させない範囲で選ぶことができる。
【0025】
無機微粒子としては、保温剤として有効なMg、Ca、Al、SiおよびLiの少なくとも1つの原子を含有する無機酸化物、無機水酸化物、ハイドロタルサイト類などである。具体的には、SiO2、Al23、MgO、CaOなどの無機酸化物;Al(OH)3、Mg(OH)2、Ca(OH)2などの無機水酸化物;式M2+ 1-X AlX(OH)2(An-X/n・mH2O〔式中、M2+は、Mg、CaまたはZnの二価金属イオンであり、An-はCl-、Br-、I-、NO3 2-、ClO4-、SO4 2-、CO2 2-、SiO3 2-、HPO4 2-、HBO3 2-、PO4 2-等のアニオンであり、xは、0<x<0.5の条件を満足する数値であり、mは、0≦m≦2の条件を満足する数値である〕で表される無機複合化合物、その焼成物等のハイドロタルサイト類などが挙げられる。
【0026】
これら無機微粒子は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記各種添加剤の配合量は、フィルムの性能を悪化させない範囲、通常は基体のオレフィン系樹脂100重量部当り12重量部以下の範囲で選ぶことができる。
基材ポリオレフィン系樹脂に、各種添加剤を配合するには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサーその他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー成形法等の従来から知られている方法によればよい。
【0027】
かかるフィルムは単層でもよいが、柔軟性及び強度などの点から3層以上の積層フィルムとしてもよく、積層フィルムの方が好ましい。
例えば、3層の積層フィルムとし、ハウス展張時に外側となる層を、メタロセンポリエチレンを主樹脂とする層とし、中間層を酢酸ビニル含有量が10〜20重量%のエチレンー酢酸ビニル共重合体を主樹脂とする層とし、内層を酢酸ビニル含有量が3〜12重量%であるエチレンー酢酸ビニル共重合体を主樹脂とする層と形成する態様、内外層をメタロセンポリエチレンを主樹脂とする層とし、中間層をエチレンー酢酸ビニル共重合体を主樹脂とする層と形成する態様、などが好ましく挙げられる。
【0028】
本発明に係るフィルムは、透明でも、梨地でも、半梨地でもよく、その用途は農業用ハウス(温室)、トンネル等の被覆用に使用できるほか、マルチング用、袋掛用等にも使用できる。
また、フィルム厚みについては強度やコストの点で0.03〜0.3mmの範囲のものが好ましく、0.05〜0.2mmのものがより好ましい。
【0029】
2)ハウス外面被膜
本発明においては、上記基体ポリオレフィン系樹脂フィルムの展張時ハウス外面に、下記重合生成物(A)または下記重合生成物(A)およびアクリル系樹との混合物よりなる被膜がを形成してなることを特徴とする。
重合生成物(A):一分子中に少なくとも1個の官能基を有するオレフィン樹脂(a)と、該官能基と反応性を有する官能基を有するラジカル重合性単量体(b)とを反応させて得られるラジカル重合性オレフィン樹脂(c)にアルキル(メタ)アクリレートを必須成分として含有する共重合体可能な単量体(d)を共重合して得られる重合生成物
重合生成物(A)は特にポリオレフィン系基体フィルムとの密着性に優れ、かつ農業用フィルムのハウス外面被膜としての性能を兼ね備えており、単一での使用が可能であるが、その製造の複雑さから高価なものとなっている。そのため、密着性とコストのバランスから、重合生成物(A)とアクリル系樹脂との混合物を使用することが好ましい。
【0030】
重合生成物(A)とアクリル系樹脂との混合比は、重合生成物(A)中の(d)成分量に併せて適宜選択すれば良く、(d)成分量が多い場合は重合生成物(A)の量を多くし、(d)成分量が少ない場合は重合生成物(A)の量を少なくすることが密着性、融着防止をバランスさせる点で好ましいが、通常、重合生成物(A):アクリル系樹脂の重量比で、1:99〜99:1、好ましくは10:90〜90:10、更に好ましくは30:70〜70:30の混合比を採用する。
【0031】
本発明において、展張時ハウス外面に形成される被膜のアクリル系樹脂として好ましく用いられる1つの例としては、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート5〜40重量%、分子内に1個もしくは2個以上のカルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸0〜20重量%、および残部がこれら化合物と共重合可能な他のビニル系化合物からなるモノマー成分を共重合して得られる共重合体を挙げることができる。
【0032】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0033】
分子内に1個もしくは2個以上のカルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アコニット酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられ、20重量%以下で用いるのが好ましい。前記化合物と共重合可能な他のビニル系化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート等のアルキル基の測鎖が1〜5のアルキルアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート等のアルキル基の測鎖が1〜5のアルキルメタクリレート;エチレンスルホン酸のようなα,β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体:アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル類等がある。これら単量体は単独で用いても、又は2種以上の併用でもよい。
【0034】
アクリル系樹脂の重合は、単量体を所定量配合して、有機溶剤とともに重合缶に仕込み、重合開始剤、必要に応じて分子量調節剤を加えて、攪拌しつつ加熱し、重合する。重合は、通常公知の方法、例えば懸濁重合法、溶液重合法などが採用される。この際、使用しうる重合開始剤としては、α,α−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のラジカル生成触媒が挙げられ、分子量調節剤としては、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、β−メルカプトエタノール等が挙げられる。重合に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ジ−n−アミルケトンシクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン等があり、これらは、1種もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0035】
上記ハウス外面の被膜を形成するアクリル系樹脂のガラス転移温度は50〜82℃の範囲のものが良く、好ましくは55〜80℃の範囲のものである。該アクリル系樹脂被膜のガラス転移温度が低すぎる場合、防塵性の低下や被膜と基体フィルムに融着が起こりやすくなり、また高すぎる場合、被膜の可撓性が不十分なために、巻き上げによるフィルム変形や、展張中の風によるフィルムはためき変形に、被膜が追随できず剥離や亀裂を<生じ、フィルム透明性を損なうことが多くなり、実用性に乏しい。
【0036】
本発明に使用される重合生成物(A)の原料として用いられる、一分子中に少なくとも1個の官能基を有するオレフィン樹脂(a)は、その重量平均分子量が1000〜200000であるものが好ましく、特に10000〜100000のものが好ましい。分子量が低すぎるとポリオレフィン系樹脂基材との接着性が悪くなり、高すぎると単量体(d)を共重合する際にゲル化しやすくなるので好ましくない。
【0037】
一分子中に少なくとも1個の官能基を有するオレフィン樹脂(a)は、既存のポリオレフィンに目的とする官能基を有する不飽和化合物を反応させることにより得られる。その前駆体のポリオレフィンとして、例えばポリエチレン、ポリプロピレン,ポリブテン−1,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−ブテン共重合体等のα−オレフィンまたはこれらの共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体,イソブテン−イソプレン共重合体等のα−オレフィンと共役ジエンの共重合体、ポリブタジエン,ポリイソプレン等のポリ共役ジエン、スチレン−ブタジエン共重合体,スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体またはその水添物,スチレン−イソプレン共重合体,スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体またはその水添物等の芳香族ビニル化合物と共役ジエンの共重合体等が挙げられる。
【0038】
ポリオレフィンと反応させる官能基を有する不飽和化合物としては、これら前駆体のポリオレフィンにカルボン酸またはその無水物基を導入する場合、(メタ)アクリル酸,フマル酸,マレイン酸及びその無水物,イタコン酸及びその無水物,クロトン酸およびその無水物,シトラコン酸およびその無水物等の不飽和カルボン酸またはその無水物等が、エポキシ基を導入する場合、グリシジル(メタ)アクリレート,マレイン酸のモノ及びジグリシジルエステル,イタコン酸のモノ及びジグリシジルエステル,アリルコハク酸のモノ及びジグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸のグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル,2−メチルアリルグリシジルエーテル,スチレン−p−グリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン,3,4−エポキシ−1−ブテン,3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン等のエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等が、水酸基を導入する場合、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート,N−メチロ―ル(メタ)アクリルアミド,2−ヒドロキシエチルアクリレート−6−ヘキサノリド付加重合物、2−プロペン−1−オール等のアルケニルアルコール、2−プロピン−1−オール等のアルキニルアルコール、ヒドロキシビニルエーテル等が、また、イソシアネート基を導入する場合、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。ポリオレフィンと官能基を有する不飽和化合物との反応は、通常の方法でラジカル開始剤を用いて行われる。
【0039】
本発明に使用される重合生成物(A)の製造に用いられるラジカル重合性オレフィン樹脂(c)はオレフィン樹脂(a)の官能基に該官能基と反応性を有する官能基を有するラジカル重合性単量体(b)を反応させることにより得られる。オレフィン樹脂(a)のカルボン酸またはその無水物基と反応性を有する官能基には水酸基、エポキシ基、及びイソシアネート基がある。水酸基を有するラジカル重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート,N−メチロ―ル(メタ)アクリルアミド,2−ヒドロキシエチルアクリレート−6−ヘキサノリド付加重合物、2−プロペン−1−オール等のアルケニルアルコール、2−プロピン−1−オール等のアルキニルアルコール、ヒドロキシビニルエーテル等があり、エポキシ基を有するラジカル重合性単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート,マレイン酸のモノ及びジグリシジルエステル,イタコン酸のモノ及びジグリシジルエステル,アリルコハク酸のモノ及びジグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸のグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル,2−メチルアリルグリシジルエーテル,スチレン−p−グリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン,3,4−エポキシ−1−ブテン,3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン等のエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等があり、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体としては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
オレフィン樹脂(a)のエポキシ基と反応性を有する官能基にはカルボキシル基、エポキシ基、及び水酸基がある。カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸、カルボキシエチルビニルエーテル,カルボキシプロピルビニルエーテル等のカルボキシアルキルビニルエーテル等があり、水酸基を有するラジカル重合性単量体としては、前記、オレフィン樹脂(a)のカルボン酸またはその無水物と反応性を有する水酸基を有するラジカル重合性単量体(b)として例示された単量体が挙げられる。
【0041】
オレフィン樹脂(a)の水酸基と反応性を有する官能基にはイソシアネート基、カルボキシル基、およびエポキシ基がある。イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体およびエポキシ基を有するラジカル重合性単量体としては、前記、オレフィン樹脂(a)のカルボン酸またはその無水物と反応性を有する該単量体(b)として例示された夫々の単量体が、又、カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体としては、前記、オレフィン樹脂(a)のエポキシ基と反応性を有する該単量体(b)として例示された単量体が挙げられる。
【0042】
オレフィン樹脂(a)のイソシアネート基と反応性を有する官能基には水酸基、およびカルボキシル基がある。これら官能基を有するラジカル重合性単量体としては、夫々、当該単量体(b)として前記により例示された単量体が挙げられる。
オレフィン樹脂(a)とラジカル重合性単量体(b)は、オレフィン樹脂(a)中の官能基1当量に対し、ラジカル重合性単量体(b)中の官能基が0.1〜10当量になるように配合し反応させるのが好ましい。0.1当量未満ではラジカル重合性オレフィン樹脂(c)に共重合可能な単量体(d)を共重合する際に成分(d)のホモポリマーの含有量が多くなり、10当量を越えるとゲル化しやすくなる傾向がある。
【0043】
本発明に使用される重合生成物(A)の製造に用いられるラジカル重合性オレフィン樹脂(c)と共重合可能な単量体(d)としては、(メタ)アクリレートを必須成分として含有する単量体である。
必須成分であるアルキル(メタ)アクリレートには、モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,ブチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、メチルメタクリレートが最も好ましい。
【0044】
他の共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸,マレイン酸モノアルキルエステル等のα,β−不飽和カルボン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基を有する重合性単量体、(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド、(メタ)アクリロニトリル、エポキシアクリレート、アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール・ジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
必須成分の配合割合は、全単量体成分(d)に対して30重量%以上、好ましくは50重量%以上必要である。30重量%以下では被膜の防塵性、及び耐候性が低下し被膜形成効果が得られにくくなる。
本発明に使用される重合生成物(A)は、前記ラジカル重合性オレフィン樹脂(c)と上記特定の単量体成分(d)とを共重合させて得られる。オレフィン樹脂(c)に対する単量体成分(d)の配合割合は、ハウス外面被膜を形成するアクリル系樹脂との混合比により適宜選択すれば良く、重合生成物(A)の配合量が多い場合は(d)成分量を多くし、配合量が少ない場合は(d)成分量を少なくすることにより、密着性、融着防止効果のバランスが得られ易くなる。成分(c)と成分(d)との共重合反応は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エタノール、ブタノール、プロパノ―ル等の有機溶剤を反応溶媒とし、重合触媒として過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、クメンハイドロパーオキシド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾビス化合物等を成分(d)に対して0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%用い、50〜200℃で1〜20時間加熱反応させることにより行うことができる。この場合、共重合成分(c)、および(d)は、反応物中に合計で5〜50重量%となるように反応溶媒の量を調整し、反応は窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。残存モノマーを少なくするために、重合開始剤としてアゾビス系化合物と過酸化物を併用してもよい。
【0046】
本発明に使用される重合生成物(A)を溶解する有機溶剤としては、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジオキサン,テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル,セロソルブアセテート等のエステル類、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素、テトラリン、ミネラルスピリッツやこれらの混合溶媒が挙げられ、上記溶媒は重合反応に用いた溶液をそのまま使用することもできる。
【0047】
本発明においては、上記基体ポリオレフィン系樹脂フィルムの展張時ハウス内面に、下記防曇剤組成物(B)よりなる被膜を形成してなることを特徴とする。防曇剤組成物(B):(e)疎水性アクリル系樹脂の水分散液、(f)ポリウレタン水性樹脂組成物、及び(g)無機質コロイドゾルの3成分を必須成分とする防曇剤組成物。
【0048】
アクリル系樹脂は、疎水性であることが好ましく、ガラス転移温度が35〜80℃の範囲であることが好ましい。該疎水性アクリル系樹脂のガラス転移温度が低すぎる場合、無機質コロイド粒子が数次凝集して不均一な分散状態をとりやすく、また無機質コロイド粒子の塗布基材に対する固着が十分でないため、時間の経過とともに無機質コロイド粒子が基材表面から脱落・流失して防曇性能を損なうことがあり、また高すぎる場合、透明性のある均一な被膜を得るのが困難になり、実用性に乏しい。
【0049】
本発明において、形成される被膜の疎水性アクリル系樹脂として好ましく用いられる1つの例としては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体を挙げることができる。
【0050】
疎水性アクリル系樹脂の製造に用いるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸デシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸−n−プロピルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸デシルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。
【0051】
アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
本発明で用いる疎水性アクリル系樹脂は、上記のようなアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類、又は、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物を、少なくとも計60重量%を含有することが好ましい。60重量%に満たないときは、形成被膜の耐水性が十分でないために、防曇持続性能を発揮しえないことがあり好ましくない。
【0052】
疎水性アクリル系樹脂を得るために用いるα、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよく、0〜40重量%の範囲で使用するのが好ましい。使用量が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ましくない。
【0053】
疎水性アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。乳化剤の存在下での重合方法の場合、これら乳化剤は、単量体の仕込み合計量に対し0.1〜10重量%の範囲で使用するのが、重合速度の調整、合成される樹脂の分散安定性の点から好ましい
本発明の疎水性アクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。
【0054】
本発明に用いる疎水性アクリル系樹脂の水系エマルジョンは、各単量体を水系媒質中での重合によって得られた水系エマルジョンをそのまま使用しても良く、更にこのものに液状分散媒を加えて希釈したものでもよく、また上記のような重合によって生じた重合体を分別採取し、これを液状分散媒に再分散させて水系エマルジョンとしたものでもよい。
【0055】
本発明で用いるポリウレタン水性組成物としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが用いられるが、防曇被膜の基体ポリオレフィン系樹脂フィルムとの密着性、耐水性及び耐傷付き性の点でポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ましく、更なる防曇被膜の耐水性、耐傷付き性向上並びに防曇性を発現するまでの時間及び防曇持続性の点でシラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンがより好まい。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
シラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンとは分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有してなり、具体的には水相中にシラノール基含有ポリウレタン樹脂及び前記強塩基性第3級アミンが溶解しているもの、又は微粒子状に分散しているコロイド分散系のもの(エマルジョン)をいう。
【0057】
ポリウレタン水性組成物は、その配合量を固形分重量比で疎水性熱可塑性樹脂に対して0.01以上、2以下、更に好ましくは0.01以上1以下にすることが好ましい。0.01に満たないときには耐傷付き性の向上が見られず、また、防曇性を発現するまでの時間が長く、十分な防曇効果が発揮できない。また、多すぎるときは、耐傷付き性が配合量に比例して向上しないばかりでなく、塗布後に形成される塗膜が白濁化し光線透過率を低下させ、また、コスト面でも不利であり好ましくない。
【0058】
本発明で用いる無機質コロイドゾルは、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に塗布することにより、フィルム表面に親水性を付与する機能を果たすものである。
無機質コロイドゾルとしては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、シリカゾルとアルミナゾルで、これらは、単独で用いても併用しても良い。
【0059】
無機質コロイドゾルとしては、その平均粒子径が5〜100μmの範囲で選ぶのが好ましく、また、この範囲であれば、平均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組み合わせて用いても良い。平均粒子径が大きすぎると、被膜が白く失透することがあり、また、平均粒子径が小さすぎると、無機質コロイドゾルの安定性に欠けることがあるため好ましくない。
【0060】
無機質コロイドゾルは、その配合量を(e)アクリル系樹脂と(b)ポリウレタン水性樹脂組成物の固形分重量の合計に対して、固形分としての重量比で0.5以上5以下にするのが好ましい。すなわち、配合量が少なすぎる場合は、十分な防曇効果が発揮できないことがあり、一方、配合量が多すぎる場合は、防曇効果が配合量に比例して向上しないばかりでなく、塗布後に形成される被膜が白濁化してフィルムの光線透過率を低下させる現象があらわれ、また、被膜が粗雑で脆弱になることがあり、好ましくない。
【0061】
本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を添加することができる。
陰イオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ジアルキルホスフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩等が挙げられる。
【0062】
陽イオン系界面活性剤としては、エタノールアミン類;ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩;ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0063】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベンゾエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート等のジグリセリン脂肪酸エステル類;グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ジペンタエリスリトールモノパルミテート等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミテート・ハーフアジペート、ジグリセリンモノステアレート・ハーフグルタミン酸エステル等のソルビタン及びジグリセリン脂肪酸・2塩基酸エステル類;またはこれらとアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオンオキサイド等の縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシプロピレンソルビタンモノステアレート等;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;シュガーエステル類等が挙げられる。
【0064】
高分子界面活性剤としては、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、セルロースエーテル類等が挙げられる。
これら界面活性剤の添加は、疎水性アクリル系樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性剤の添加量は、疎水性アクリル系樹脂の固形分100重量部に対し0.1〜50重量部の範囲で選ぶと良い。界面活性剤の添加量が少なすぎると、疎水性アクリル系樹脂及び無機質コロイドゾルが十分に分散するのに時間がかかり、また、無機質コロイドゾルとの併用での防曇効果を十分に発揮しえず、一方界面活性剤の添加量が多すぎると塗布後に形成される被膜表面へのブリードアウト現象により被膜の透明性が低下し、顕著な場合は被膜の耐ブロッキング性の悪化や被膜の耐水性低下を引き起こす場合がある。
【0065】
本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができる。架橋剤は、アクリル系樹脂同士を架橋させ、被膜の耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、アミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられるが、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキシ化合物類が好ましく使用できる。アミン化合物類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン等の脂環式アミン;4−4’−ジアミノジヘニルメタン、m−フェニレンジアミン等の芳香族アミンが使用される。アジリジン化合物類としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス[1−(2−メチル)−アジリジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)−アジリジニル]トリホスファトリアジン等が使用される。エポキシ化合物類としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応生成物、フェノール(又は置換フェノール)とホルムアルデヒドとの樹脂反応生成物とエピクロルヒドリンの反応により生成されるエポキシ化ノボラック樹脂、エピクロルヒドリン及び脂肪族多価アルコール例えばグリセロール、1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール又は類似の多価アルコール成分から生成される樹脂状反応生成物及び過酢酸を用いるエポキシ化により得られる樹脂等が使用される。エポキシ化合物類では、さらに三級アミン類や四級アンモニウム塩類を触媒として併用することができる。これら架橋剤は、その添加量がアクリル系樹脂固形分に対して0.1〜30重量%の範囲で使用することができる。本発明に使用される防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合することができる。かかる液状分散媒としては、水を含む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブアセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分散媒は単独で用いても併用しても良い。
【0066】
防曇剤組成物は、疎水性アクリル系樹脂、ポリウレタン水性組成物及び無機質コロイドの固形分として一般に0.5〜50重量%の濃度で調製し、これを希釈して使用することが多い。
本発明で調製される防曇剤組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、造粘剤、顔料、顔料分散剤等の慣用の添加剤を混合することができる。
【0067】
なお、本発明でいう、アクリル系樹脂被膜のガラス転移温度は、次式により算出した。
【0068】
【数1】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+Wn/Tgn
ただし、Tgはアクリル系樹脂のガラス転移温度(絶対温度)、Tg1、Tg2、…、Tgnは各成分1、2、…、nのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)、W1、W2、…、Wnは各成分1、2、…、nの重量分率をそれぞれ示す。
【0069】
基体フィルムの表面にアクリル系樹脂被膜及び防曇性被膜をそれぞれ形成するには、前述の重合にて得られたアクリル系樹脂溶液及び防曇剤組成物をそれぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50〜250℃、好ましくは70〜200℃の温度範囲で乾燥すればよい。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法等適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが有利である。
【0070】
本発明において、基体フィルムの表面に形成させる被膜の厚さは、基体フィルムの1/10以下を目安に選択するとよいが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。被膜の厚さが基体フィルムの1/10より大であると、基体フィルムと被膜とでは屈曲性に差があるため、被膜が基体フィルムから剥離する等の現象がおこりやすく、また、被膜に亀裂が生じて基体フィルムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくない。
【0071】
また、基体フィルムと被膜組成物に由来する被膜との接着性が充分でない場合には、基体フィルムの表面を予めアルコールまたは水で洗浄したり、プラズマ放電処理、あるいはコロナ放電処理を施しておいてもよい。
本発明に係る農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを、実際に使用するにあたっては、アクリル系樹脂被膜の設けられた側をハウス又はトンネルの外側に、防曇性被膜の設けられた側をハウス又はトンネルの内側となるようにして展張するのがよい。
【0072】
【実施例】
以下、本発明を実施例にもとづいて詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
(1)ポリオレフィン系基体フィルムの調製
三層インフレーション成形装置として三層ダイに100mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機は外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40mmφ((株)プラ技研製)として成形温度160℃、ブロー比2.0、引取速度5m/分にて、表−1に記載のポリオレフィン系基材フィルム(A、B)を得た。
【0073】
(2)ハウス外面のアクリル系樹脂被膜の形成
表−2及び表−3に記載の組成よりなる重合生成物(A)及びアクリル系樹脂をトルエンに溶解し、固形分濃度が20%になるように調製した。得られたトルエン溶液を表−4に記載の混合比になるように混合、攪拌し被膜形成用塗布液を得た。
【0074】
尚、比較例としてアクリル系樹脂単品も被膜形成用塗布液とした。
得られた塗布液を前記、基体フィルムの表面にグラビアコート法によって塗布した後、150℃に温度調節した温風乾燥炉内に2分間滞留させ、溶剤を飛散させ外面被膜を形成させた。尚、被膜の厚みは全て2μmであった。
(3)ハウス内面の防曇被膜の形成
表−5に記載のモノマー組成よりなるアクリル系樹脂の水分散液を調製 し、得られたアクリル系水分散液に表−6に記載のポリウレタン水性組成 物、無機質コロイドゾル、及びその他の成分を配合し、各種の防曇剤組成 物を調整した。
【0075】
得られた防曇剤組成物を、前記、基体フィルムのハウス外面のアクリル系樹脂被膜を形成した面と別の面にグラビアコート法によって塗布した後、80℃に温度調節した温風乾燥炉内に2分間滞留させ、液状分散媒を飛散させて膜を形成させた。
尚、被膜の厚みは全て0.5μmであった。
【0076】
(4)フィルムの評価
得られた各フィルムについて、次のような評価試験を行い、その結果を 表−7に示した。
a)融着性試験
幅30cm、長さ150cmに切断したフィルムを、名古屋市の水道水に2日間浸し、これを、直径2cm幅35cmの亜鉛メッキをした鉄製のパイプに巻き付け、65℃のオーブン内で1週間放置し、乾燥させた。このフィルムを鉄パイプから巻き戻した時のフィルム接触部分の融着が発生した面積の、フィルム全体の面積に対する割合を示した。
【0077】
b)塗膜密着性
幅20cm、長さ30cmに切断したフィルムを名古屋市の水道水に浸漬し、5℃雰囲気下に一昼夜放置した。このフィルムにスコッチブライト(3M製工業用パッド8448、サイズ;8cm×10cm)をのせ、以下の条件で塗膜剥離試験を行った。
【0078】
試験温度:5℃雰囲気下
荷重:4kg
試験回数:長さ方向へ20cm×10往復
試験後のサンプルを乾燥させ、塗膜密着性を以下の基準にて目視評価した。
○; 剥離面積 0〜20%
△; 剥離面積 20〜50%
× ; 剥離面積 >50%
c)防曇塗膜傷付き性試験
防曇塗膜を形成した面に10cm四方に裁断したスコッチ・ブライト(3M製)を置き、荷重1kg下で引張り速度2cm/秒の速さで引張り、塗膜面の傷付き状況を目視にて観察した。この評価基準は、次の通りである。
【0079】
○ : 塗膜表面に傷付き性が認められない
○×: 塗膜表面に傷付き性がやや認められるもの
△ : 塗膜表面に傷付き性がかなり認められるもの
× : 塗膜表面に傷付き性が非常に激しく、実用に耐えないもの
e)防曇性試験
1)条件1
水を入れた水槽の上部に、フィルムの防曇被膜面を水槽に向けて配置し、外気温を20℃、水槽内気温を50℃に保持し、水槽の上部にフィルムを配置してから所定期間経過後の時点で、防曇性の発現速さを目視で観察した。この評価基準は以下の通りである。
【0080】
◎: 水が薄膜状に付着し、水滴が認められない状態
○: 水が薄膜状に付着しているが、わずかに大粒の水滴が認めら れる状態
○×: 水が薄膜状に付着しているが、部分的に大粒の水滴の付着が認 められる状態
△: 部分的に細かい水滴の付着が認められる状態
×: フィルム表面全体に、細かい水滴の付着が認められる状態
2)条件2
条件1で1ヶ月経過した各フィルムについて、外気温10℃、水槽内 気温20℃に保持し、所定時間経過時点での防曇性の発現速さを目視で 観察した。この評価基準は上記条件1と同じである。
【0081】
3)条件3
フィルムを、戸外の試験圃場に設置した片屋根式ハウス(間口2m、 奥行き20m、棟高2m、屋根勾配30度)に、防曇被膜面をハウス内 側になるように被覆し、18ヶ月間の展張試験を行った。展張試験中に 経時的に各フィルムの防曇性を目視で観察した。この評価基準も、上記 条件1と同じである。
【0082】
【表1】
Figure 0004347987
【0083】
【表2】
Figure 0004347987
【0084】
【表3】
Figure 0004347987
【0085】
【表4】
Figure 0004347987
【0086】
【表5】
Figure 0004347987
【0087】
【表6】
Figure 0004347987
【0088】
【表7】
Figure 0004347987
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルム同士が重なりあった際にも融着することが少なく、また外面塗膜の密着性がよいため長期間にわたり融着防止を持続し、かつ防曇性(発現の速さ、持続性)に優れた農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。

Claims (9)

  1. 農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムであって、展張時ハウス外面に、下記重合生成物(A)または下記重合生成物(A)およびアクリル系樹脂との混合物よりなる被膜が形成され、かつ他方の面に、下記防曇剤組成物(B)よりなる被膜が形成されてなる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
    重合生成物(A):一分子中に少なくとも1個の官能基を有するオレフィン樹脂(a)と、該官能基と反応性を有する官能基を有するラジカル重合性単量体(b)とを反応させて得られるラジカル重合性オレフィン樹脂(c)にアルキル(メタ)アクリレートを必須成分として含有する共重合体可能な単量体(d)を共重合して得られる重合生成物。
    防曇剤組成物(B):(e)疎水性アクリル系樹脂の水分散液、(f)ポリウレタン水性樹脂組成物、及び(g)無機質コロイドゾルの3成分を必須成分とする防曇剤組成物。
  2. フィルムのハウス外面の被膜を形成するアクリル系樹脂のガラス転移温度が50〜82℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  3. フィルムのハウス外面の被膜を形成するアクリル系樹脂が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート5〜40重量%、分子内に1個もしくは2個以上のカルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸0〜20重量%、および残部がこれら化合物と共重合可能な他のビニル系化合物からなるモノマー成分を共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  4. ポリオレフィン系樹脂の一成分として、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂が使用される事を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  5. 防曇剤組成物中の成分(f)が、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有してなるポリウレタン水性組成物である請求項1ないし4のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  6. 防曇剤組成物中の成分(f)が、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタン水性組成物である請求項1ないし5のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  7. 防曇剤組成物中の成分(g)が、シリカ及び/またはアルミナゾルである請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  8. 該防曇剤組成物中の、成分(f)の配合量が、固形分重量比で成分(e)に対して、0.01以上、1以下で、成分(g)の配合量が固形分重量比で成分(e)と成分(f)の合計に対して0.5以上、5以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  9. 該防曇剤組成物中の(a)疎水性アクリル系樹脂のガラス転移温度が35〜80℃であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
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