JP2001269065A - 農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム - Google Patents

農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム

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JP2001269065A
JP2001269065A JP2000085555A JP2000085555A JP2001269065A JP 2001269065 A JP2001269065 A JP 2001269065A JP 2000085555 A JP2000085555 A JP 2000085555A JP 2000085555 A JP2000085555 A JP 2000085555A JP 2001269065 A JP2001269065 A JP 2001269065A
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resin film
agricultural
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acrylic resin
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JP2000085555A
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Hirotaka Arai
博孝 荒井
Hiroshi Yamagishi
宏 山岸
Emi Yoshimura
恵美 吉村
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Mitsubishi Chemical MKV Co
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 融着が少なく、重なり後の透明性に優れ、ま
た外面塗膜、防曇塗膜の密着性がよいため長期間にわた
り融着防止性を持続し、かつ防曇性(発現の速さ、持続
性)に優れた農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを得
る。 【解決手段】農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムであ
って、展張時ハウス外面に、アクリル系樹脂被膜を形成
し、他方の面に、(a)疎水性アクリル系樹脂の水分散
液、(b)ポリウレタン水性樹脂組成物、及び(c)無
機質コロイドゾルの3成分を必須成分とする防曇剤組成
物よりなる被膜を形成し、かつ基材のポリオレフィン系
樹脂フィルム中にエチレンと環状アミノビニル化合物と
を共重合させて得られたヒンダードアミンを側鎖に有す
るエチレン系共重合体を該ビニル化合物単位の割合で
0.05〜5重量%含有することを特徴とする農業用ポ
リオレフィン系樹脂フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は農業用ポリオレフィ
ン系樹脂フィルムに関し、さらに詳しくは、フィルム同
士が重なりあった際に融着することが少なく、かつ耐候
性、防曇性、特に防曇性の発現速さ、及び防曇性の長期
持続性に優れる農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、農業用作物を半促成又は抑制栽培
して、その市場性、生産性を高めるため、農業用塩化ビ
ニルフィルムやポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共
重合体、及びポリオレフィン系樹脂を主体とした特殊フ
ィルムなどの農業用被覆材による被覆下に有用植物を栽
培する、いわゆるハウス栽培やトンネル栽培が盛んに行
われている。
【0003】なかでも、ポリオレフィン系樹脂を主体と
した特殊フィルムは、軽量であり、また焼却しても有毒
ガスの発生が少なく、安価であることなどから盛んに利
用されるようになってきている。さて、このような農業
用ハウスでは、春〜秋の気温が高い時期にはハウス内が
高温になるのを避けるため、ハウス側面のフィルムを金
属パイプ等に巻き付けることで、ハウス側面を開放して
換気をする。気温が高い夏期には、側面フィルムは巻き
上げられたまま数ヶ月間放置されることもあり、この時
フィルムは高温度・高湿度の雰囲気にさらされ、またフ
ィルムは互いに圧着されているため、接触面同士が融着
することがある。秋〜冬に気温が低下した時、ハウス内
が低温になるのを避けるために巻き上げていたフィルム
を巻きおろすが、フィルムが融着した場合巻きおろすこ
とができず、また、無理に巻きおろすとフィルムが破れ
てしまい大きな問題であった。
【0004】この問題を解決する方法として、農業用ポ
リオレフィン系フィルムの片面に、特定のアクリル系樹
脂からなる被膜を形成することにより、フィルム透明性
を損なうことなく高温高湿度における巻き上げ時の融着
を防止することを、先に提案している。(特願平10−
364505号公報及び11−198601号)。しか
しながら、かかる特定のアクリル系樹脂をポリオレフィ
ン系樹脂からなるフィルムの片面に形成して長期に展張
試験を行っていった場合に、ポリオレフィン系樹脂フィ
ルムとの相性の問題からか、該フィルムに対するアクリ
ル系樹脂塗膜の密着性が劣り、長期間外気にさらされて
いるうちに、だんだんとアクリル系樹脂層が剥がれてき
て、耐久性に劣るという問題が見いだされてきた。
【0005】また、これら農業用ハウスに用いられる農
業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、その表面が疎水
性であるため、温度・湿度等の条件によってはフィルム
表面に曇りを生じ、そのため太陽光線の透過が悪くな
り、植物の生育を遅くしたり、或いは曇りの微細水滴が
集合して生じた水滴が栽培植物に落下することにより、
幼芽が害を受けたり、病害の発生原因となったりする。
【0006】このような不具合を解消するためには、農
業用ポリオレフィン系樹脂フィルムの表面に防曇性を付
与すればよいことが知られている。農業用ポリオレフィ
ン系樹脂フィルム表面に防曇性を付与するためには、ポ
リオレフィン樹脂に界面活性剤のような親水性物質を練
り混む方法、またはフィルム化した後に、その表面に、
例えば、シリカまたはアルミナと界面活性剤との混合物
を塗布する方法が各種提案されている。
【0007】しかしながら、前者の方法では樹脂に練り
込んだ親水性物質がフィルム表面に噴き出して配位し、
フィルムに防曇性を付与するため、防曇性を発現するま
での時間は短いものの、水によって流失しやすく、短期
間の内に防曇性が消失する。他方、後者の方法において
もポリオレフィン系樹脂フィルムとの密着性に乏しいた
め、形成塗膜は時間の経過とともに脱落し、いずれの方
法を採用しても防曇性の発現の速さと防曇効果の持続性
の両立が困難であった。
【0008】さらに、近年では農家の人手不足や省資源
といった理由から農業用被覆材に対して長期間に亘り展
張しておくことが可能なものが要望されており、フッ素
系フィルム等も開発さてれいるが、価格が高い、硬質で
あり展張作業に手間が掛かる等の問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかして本発明は、上
記問題を解決した、巻き上げられたフィルムの融着がフ
ィルム透明性を損なうことなく改善され、かつ、被膜の
密着性が良く、耐候性、防曇性に優れ、長期間にわたっ
て展張しておくことができる農業用ポリオレフィン系樹
脂フィルムを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上
記問題を解決するため鋭意検討した結果、ポリオレフィ
ン系フィルム中に耐久性付与のために通常よく添加され
ている光安定剤が、ポリオレフィン系フィルムと特定ア
クリル系樹脂の密着性に深く関与していることを見いだ
し、種々の化合物を試してみた結果、特定の化合物、す
なわち、エチレンと環状アミノビニル化合物とを共重合
させて得られたヒンダードアミン化合物をポリオレフィ
ン系樹脂フィルムに含有し、そのフィルムの展張時ハウ
ス外面に特定のアクリル系樹脂被膜を形成し、展張時ハ
ウス内面に特定の防曇組成物よりなる被膜を形成するこ
とにより、上記問題が解決できることを見出し、本願発
明に到達した。
【0011】しかして本発明の要旨とするところは、農
業用ポリオレフィン系樹脂フィルムであって、展張時ハ
ウス外面に、ガラス転移温度が50〜82℃の範囲にあ
るアクリル系樹脂被膜を形成し、他方の面に、(a)ガ
ラス転移温度が35〜80℃の範囲にある疎水性アクリ
ル系樹脂の水分散液、(b)ポリウレタン水性樹脂組成
物、及び(c)無機質コロイドゾルの3成分を必須成分
とし、かつ、成分(b)の配合量が、固形分重量比で成
分(a)に対して、0.01以上、1以下で、成分(c)の
配合量が固形分重量比で成分(a)と成分(b)の合計
に対して0.5以上、5以下である防曇剤組成物よりな
る被膜を形成し、かつ基材のポリオレフィン系樹脂フィ
ルム中にエチレンと環状アミノビニル化合物とを共重合
させて得られたヒンダードアミンを側鎖に有するエチレ
ン系共重合体を該ビニル化合物単位の割合で0.05〜
5重量%含有することを特徴とする農業用ポリオレフィ
ン系樹脂フィルムにある。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂としては、α−オ
レフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とす
る異種単量体との共重合体であり、例えばポリエチレ
ン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、
エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1
−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、
エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これら
のうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエ
チレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸
ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル
共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用
フィルムとして好ましい。
【0013】また、本発明において、ポリオレフィン系
樹脂の一成分としてメタロセン触媒で共重合して得られ
るエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を使用すること
ができる。これは、通常、メタロセンポリエチレンとい
われているものであり、エチレンとブテン−1、ヘキセ
ン−1、4−メチルペンテン−1、オクテンなどのα−
オレフィンとの共重合体であり、この共重合体は、(A
法)特開昭58−19309号、特開昭59−9529
2号、特開昭60−35005号、特開昭60−350
06号、特開昭60−35007号、特開昭60−35
008号、特開昭60−35009号、特開昭61−1
30314号、特開平3−163088号の各公開公
報、ヨーロッパ特許出願公開第420436号明細書、
米国特許第5055438号明細書及び国際公報WO9
1/04247号明細書などに記載されている方法、即
ちメタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触
媒、又は、例えば、国際公開公報WO92/01723
号明細書等に開示されているような、メタロセン化合物
と、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなる化
合物からなる触媒、又は、更には、特開平5−2950
20号、特開平5−295022号などに記載されてい
るような、メタロセン化合物を無機化合物に担持させた
触媒などを使用して、主成分のエチレンと従成分の炭素
数4〜20のα−オレフィンとを、得られる共重合体の
密度が0.880〜0.930g/cm3となるように
共重合させる方法である。この重合方法としては、高圧
イオン重合法、溶液法、スラリー法、気相法などを挙げ
ることができる。これらの中では高圧イオン重合法で製
造するのが好ましい。
【0014】なお、この高圧イオン重合法とは、特開昭
56−18607号、特開昭58−25106号の各公
報に記載されているが、圧力が100kg/cm2
上、好ましくは300〜1500kg/cm2で、温度
が125℃以上、好ましくは150〜200℃の反応条
件下に高圧イオン重合法により製造されるものである。
他方、メタロセンポリエチレンといわれるエチレン−α
−オレフィン共重合体の製造方法として、例えば、(B
法)特開平6−9724号、特開平6−136195
号、特開平6−136196号、特開平6−20705
7号の各公開公報に記載されているメタロセン触媒成
分、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分、微粒子状
担体、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒
成分、イオン化イオン性化合物触媒成分を含む、オレフ
ィン重合用触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あ
るいは溶液状の液相で種々の条件でエチレンとα−オレ
フィン、具体的には炭素原子数3〜20のα−オレフィ
ンとを、得られる共重合体の密度が0.900〜0.9
30g/cm3となるように共重合させることによっても
調製することができるが、フィルムの良好な初期透明性
及び透明持続性が得られる点で上記(A)法によりメタ
ロセンポリエチレンの製造がより好ましい。
【0015】(A)法によるメタロセンポリエチレン
は、温度上昇溶離分別(TREF:Temperatu
re Rising Elution Fractio
nation)による測定によって得られる微分溶出曲
線で特定される。即ち、温度上昇溶離分別によって得ら
れる溶出曲線のピークが1つ存在するもので、そのピー
ク温度が20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範
囲内にあるものである。また、該ピーク温度の溶出温度
以外の温度において溶出するものが実質的に該溶出曲線
に存在することがある。上記溶出曲線のピーク温度内の
ピークが2つ以上存在すると透明性が劣るものとなる。
また、存在していない場合にはフィルムがべたつくこと
になる。
【0016】温度上昇溶離分別(TREF)による溶出
曲線の測定 上記温度上昇溶離分別(Temperature Ri
sing Elution Fractionatio
n:TREF)による溶出曲線の測定は、「Journ
al of Applied Polymer Sci
ence.Vol 126,4,217−4,231
(1981)」、「高分子討論会予稿集2P1C09
(昭和63年)」等の文献に記載されている原理に基づ
いて実施される。すなわち、先ず対象とするポリエチレ
ンを溶媒中で一度完全に溶解させる。その後、冷却し、
不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させる。かかる
ポリマー層は結晶し易いものが内側(不活性担体表面に
近い側)に形成され、結晶し難いものが外側に形成され
てなるものである。次に、温度を連続又は段階的に昇温
することにより、先ず、低温度では対象ポリマー中の非
晶部分から、すなわち、ポリマーの持つ短鎖分岐の分岐
度の多いものから溶出する。溶出温度が上昇すると共
に、徐々に分岐度の少ないものが溶出し、ついには分岐
の無い直鎖状の部分が溶出して測定は終了する。この各
温度での溶出成分の濃度を連続的に検出して、その溶出
量と溶出温度によって描かれるグラフ(溶出曲線)のピ
ークによって、ポリマーの組成分布を測定することがで
きるものである。
【0017】本発明のポリオレフィン系樹脂の一成分と
して使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、
以下の物性を示すものである。メルトフローレート(MFR) JIS−K7210により測定されたMFRが0.01
〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分の
値を示すものである。該MFRがこの範囲より大きいと
成形時にフィルムが蛇行し安定しない。また、該MFR
がこの範囲より小さすぎると成形時の樹脂圧力が増大
し、成形機に負荷がかかるため、生産量を減少させて圧
力の増大を抑制しなければならず、実用性に乏しい。
【0018】密度 JIS−K7112により測定された密度が0.880
〜0.930g/cm 3、好ましくは0.880〜0.
920g/cm3の値を示すものである。該密度がこの
範囲より大きいと透明性が悪化する。また、密度がこの
範囲より小さいと、フィルム表面のべたつきによりブロ
ッキングが生じ実用性に乏しくなる。
【0019】分子量分布 ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)
によって求められる分子量分布(重量平均分子量/数平
均分子量)は1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.
0の値を示すものである。該分子量分布がこの範囲より
大きいと機械的強度が低下し好ましくない。該分子量分
布がこの範囲より小さいと成形時にフィルムが蛇行し安
定しない。
【0020】本発明における農業用ポリオレフィン系樹
脂フィルムの基材となるポリオレフィン系樹脂フィルム
には、ヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重
合体を含有することを特徴とする。この共重合体は、耐
光性向上を目的とする光安定剤としての効果を奏するだ
けでなく、他の通常の光安定剤を用いる場合に比べて、
その展張時ハウス外面になる面に、融着性等を改良する
為に設ける、ガラス転移温度が50〜82℃のアクリル
系樹脂被膜との密着性、更に好ましくは反対面に設ける
防曇性被膜との密着性を大幅に改良する効果を有するも
のである。
【0021】本発明に使用するヒンダードアミンを側鎖
に有するエチレン系共重合体とは、エチレンと環状アミ
ノビニル化合物とを共重合させて得られた共重合体であ
り、特にエチレンと環状アミノビニル化合物との和に対
する環状アミノ化合物の割合が1モル%未満、更に好ま
しくは0.1〜0.7モル%で、該共重合体のMFRが
0.1〜200g/10分である共重合体を用いること
が好ましい。
【0022】環状アミノビニル化合物は、下記一般式で
示されるものであり、
【0023】
【化1】
【0024】(式中、R1 及びR2 は水素原子またはメ
チル基を、R3 は水素原子または炭素数1〜4のアル
キル基をそれぞれ示す)代表例を挙げれば下記の通りで
ある。 4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリ
ジン 4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピ
ペリジン 4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラ
メチルピペリジン 4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テト
ラメチルピペリジン 4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラ
メチルピペリジン 4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリ
ジン 4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピ
ペリジン 4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラ
メチルピペリジン 4−メタクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テト
ラメチルピペリジン 4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラ
メチルピペリジン 4−クリトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリ
ジン 4−クリトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テト
ラメチルピペリジン これらのヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共
重合体は、高圧ラジカル共重合法によって製造される。
【0025】ヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン
系共重合体の添加量は、環状アミンビニル化合物に基づ
く構成単位の割合で0.05〜5重量%、好ましくは
0.1〜4重量%である。0.05%未満では耐候性改
良効果が少なく、また5重量%を越えても増量による耐
候性向上効果はほとんど無く、経済的に不利である。ヒ
ンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体は、
単層からなるポリオレフィン系樹脂フィルム中に均一に
含有させても、また、オレフィン樹脂フィルムを多層と
した場合の最外層(農業用フィルムが風雨、日光に晒さ
れる側)に濃縮して含有させても、多層フィルムに均一
に含有させても良い。また、多層とした場合は、ヒンダ
ードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体を最外層
に含有させ、その他の層には農業用として通常配合され
るヒンダードアミン系光安定剤を使用することもでき、
全層にヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重
合体を用いる場合よりコスト的には有利になる。
【0026】本発明で使用可能な市販のヒンダードアミ
ン系化合物を例示すれば、TINUVIN770、TI
NUVIN780、TINUVIN144、TINUV
IN622LD、CHIMASSORB119FL、C
HIMASSORB944(以上、チバガイギー社
製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MAR
KLA−63、MARK LA−68、MARK LA
−68、MARK LA−62、MARK LA−6
7、MARK LA−57(以上、アデカ・アーガス社
製)等が挙げられる。
【0027】酸化防止剤としては、2,6−ジ−ter
t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレ
ンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノー
ル)、ジラウリルチオジプロピオネート等を挙げること
ができる。また本発明における農業用ポリオレフィン系
樹脂フィルムには、上記ヒンダードアミン系光安定剤の
他にも必要に応じて、塗膜の密着性を阻害しない範囲で
可塑剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、熱
安定剤、顔料、染料等の着色剤、防霧剤、帯電防止剤・
無機微粒子等を配合することができる。
【0028】可塑剤としては、例えば、フタル酸誘導
体、イソフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、マレイン
酸誘導体、クエン酸誘導体、イタコン酸誘導体、オレイ
ン酸誘導体、リシノール酸誘導体、その他トリクレジル
ホスフェート、エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂系可塑
剤等が挙げられる。防曇剤としては、非イオン系界面活
性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等
が挙げられる。
【0029】紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリ
アゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、シア
ノアクリレート系、フェニルサリシレート系、トリアジ
ン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、ベンゾフ
ェノン系紫外線吸収剤及び/又はベンゾトリアゾール系
紫外線吸収剤が特に好ましい。酸化防止剤としては、
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノー
ル、2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチル−
4−エチルフェノール)、ジラウリルチオジプロピオネ
ート等を挙げることができる。
【0030】滑剤ないし熱安定剤としては、例えばポリ
エチレンワックス、流動パラフィン、ビスアマイド、ス
テアリン酸、ステアリン酸亜鉛、脂肪族アルコール、ス
テアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、リシノ
ール酸バリウム、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫
ジマレート、有機リン酸金属塩、有機ホスファイト化合
物、フェノール類、β−ジケトン化合物等が挙げられ
る。
【0031】着色剤としては例えば、フタロシアニンブ
ルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリ
ザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネン
トレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げる
ことができる。防霧剤としては、フッ素系界面活性剤が
挙げられ、具体的には、通常の界面活性剤の疎水基のC
に結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換
した界<面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基また
はパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤であ
る。以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上
を組み合わせて使用することができる。上記各種添加剤
の配合量は、フィルムの性能、特に防塵塗膜、防曇塗膜
の密着性を悪化させない範囲で選ぶことができる。
【0032】無機微粒子としては、保温剤として有効な
Mg、Ca、Al、SiおよびLiの少なくとも1つの
原子を含有する無機酸化物、無機水酸化物、ハイドロタ
ルサイト類などである。具体的には、SiO2、Al2
3、MgO、CaOなどの無機酸化物;Al(OH)3
Mg(OH)2、Ca(OH)2などの無機水酸化物;式
2+ 1-X AlX(OH)2(An-X/n・mH2O〔式
中、M2+は、Mg、CaまたはZnの二価金属イオンで
あり、An-はCl-、Br-、I-、NO3 2-、ClO4-
SO4 2-、CO2 2-、SiO3 2-、HPO4 2-、HB
3 2-、PO4 2-等のアニオンであり、xは、0<x<
0.5の条件を満足する数値であり、mは、0≦m≦2
の条件を満足する数値である〕で表される無機複合化合
物、その焼成物等のハイドロタルサイト類などが挙げら
れる。
【0033】これら無機微粒子は、それぞれ1種または
2種以上を組み合わせて使用することができる。上記各
種添加剤の配合量は、フィルムの性能を悪化させない範
囲、通常は基体のオレフィン系樹脂100重量部当り1
2重量部以下の範囲で選ぶことができる。基材ポリオレ
フィン系樹脂に、各種添加剤を配合するには、各々必要
量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ス
ーパーミキサーその他従来から知られている配合機、混
合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組
成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例え
ば溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を
含む)、カレンダー成形法等の従来から知られている方
法によればよい。
【0034】かかるフィルムは単層でもよいが、柔軟性
及び強度などの点から3層以上の積層フィルムとしても
よく、積層フィルムの方が好ましい。例えば、3層の積
層フィルムのうち、ハウス展張時に外側となる層を、メ
タロセンポリエチレンを主樹脂とする層とし、中間層を
酢酸ビニル含有量が10〜20重量%のエチレンー酢酸
ビニル共重合体を主樹脂とする層とし、内層を酢酸ビニ
ル含有量が3〜12重量%であるエチレンー酢酸ビニル
共重合体を主樹脂とする層と形成する態様、内外層をメ
タロセンポリエチレンを主樹脂とする層とし、中間層を
エチレンー酢酸ビニル共重合体を主樹脂とする層と形成
する態様、などが好ましく挙げられる。
【0035】本発明に係るフィルムは、透明でも、梨地
でも、半梨地でもよく、その用途は農業用ハウス(温
室)、トンネル等の被覆用に使用できるほか、マルチン
グ用、袋掛用等にも使用できる。また、フィルム厚みに
ついては強度やコストの点で0.03〜0.3mmの範
囲のものが好ましく、0.05〜0.2mmのものがよ
り好ましい。
【0036】本発明においては、上記基体ポリオレフィ
ン系樹脂フィルムの展張時ハウス外面に、アクリル系樹
脂被膜を形成されてなることを特徴とする。該アクリル
系樹脂としては、ガラス転移温度が50〜82℃、更に
好ましくは55〜80℃の範囲にあるものを用いるのが
好ましい。ガラス転移温度が低すぎる場合、長期展張時
の光線透過率の低下や被膜と基体フィルムに融着が起こ
りやすくなり、また高すぎる場合、被膜の可撓性が不十
分なために、巻き上げによるフィルム変形や、展張中の
風によるフィルムはためき変形に、被膜が追随できず剥
離や亀裂を生じやすく、フィルム透明性を損なうことが
多くなり、実用性に乏しい。
【0037】本発明において、展張時ハウス外面に形成
される被膜のアクリル系樹脂として好ましく用いられる
1つの例としては、ヒドロキシルアルキル(メタ)アク
リレート5〜40重量%、分子内に1個もしくは2個以
上のカルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸0
〜20重量%、および残部がこれら化合物と共重合可能
な他のビニル系化合物からなるモノマー成分を共重合し
て得られる共重合体を挙げることができる。
【0038】ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート
モノマーとしては、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒ
ドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル
アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ
プロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアク
リレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2
−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチ
ルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレー
ト、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロ
キシペンチルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルメ
タクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、
6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート等が挙げられ
る。
【0039】分子内に1個もしくは2個以上のカルボキ
シル基を含むα,β−不飽和カルボン酸としては、アク
リル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水
マレイン酸、アコニット酸、フマル酸、クロトン酸等が
挙げられ、20重量%以下で用いるのが好ましい。前記
化合物と共重合可能な他のビニル系化合物としては、メ
チルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピル
アクリレート、イソプロピルアクリレート等のアルキル
基の測鎖が1〜5のアルキルアクリレート;メチルメタ
クリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタ
クリレート、イソプロピルメタクリレート等のアルキル
基の測鎖が1〜5のアルキルメタクリレート;エチレン
スルホン酸のようなα,β−エチレン性不飽和ホスホン
酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル
等の水酸基含有ビニル単量体:アクリロニトリル類;ア
クリルアマイド類;(メタ)アクリル酸のグリシジルエ
ステル類等がある。これら単量体は単独で用いても、又
は2種以上の併用でもよい。
【0040】アクリル系樹脂の重合は、単量体を所定量
配合して、有機溶剤とともに重合缶に仕込み、重合開始
剤、必要に応じて分子量調節剤を加えて、攪拌しつつ加
熱し、重合する。重合は、通常公知の方法、例えば懸濁
重合法、溶液重合法などが採用される。この際、使用し
うる重合開始剤としては、α,α−アゾビスイソブチロ
ニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロ
パーオキサイド等のラジカル生成触媒が挙げられ、分子
量調節剤としては、ブチルメルカプタン、n−ドデシル
メルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、β−
メルカプトエタノール等が挙げられる。重合に用いる有
機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパ
ノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−
ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコ
ール、イソアミルアルコール、tert−アミルアルコ
ール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール等
のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳
香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エス
テル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−
プロピルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジ
−n−プロピルケトン、ジ−n−アミルケトンシクロヘ
キサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン等があり、
これらは、1種もしくは2種以上混合して使用すること
ができる。
【0041】また、本発明において、展張時ハウス外面
に形成される被膜のアクリル系樹脂として好ましく用い
られる他の例としては、架橋アクリル酸エステル系弾性
体の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル単量体、
又はメタクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これ
と共重合可能なビニル化合物単量体との混合物を重合し
て得られるグラフト共重合体であって、前記架橋アクリ
ル酸エステル系弾性体を5〜80重量%含むものを挙げ
ることができる。
【0042】アクリル酸アルキルエステルとしては、ア
ルキル基の炭素数が1〜8のものが好ましく用いられ、
直鎖状・分岐鎖状のいずれでもよい。具体的には、アク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピ
ル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ー2ーエチルヘキシ
ル、アクリル酸オクチル等が挙げられ、これらは混合し
て使用することもできる。
【0043】これらアクリル酸アルキルエステルと共重
合可能なビニル化合物単量体としては、メタクリル酸お
よびメタクリル酸のアルキルエステル、イタコン酸のジ
アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニト
リル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、核アル
キル置換スチレン、αーメチルスチレン等が挙げられ
る。
【0044】架橋性単量体としては、通常多官能性化合
物として使用されているものでよく、具体的には、エチ
レングリコールジメタクリレート、1,3ーブチレング
リコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメ
タクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレ
ート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、
ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジビニルベ
ンゼン、ジビニルアジペート、ジアリルフタレート、ジ
アリルマレート、アリルアクリレート、アリルメタクリ
レート、トリアリルシアヌレート等が挙げられ、これら
は2種以上を併用してもよい。
【0045】架橋アクリル酸エステル系弾性体は、乳化
重合法によって製造するのが好まし<い。この際使用で
きる重合開始剤は、通常の遊離基発生開始剤である。具
体的には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無
機過硫化物;キュメンハイドロパーオキサイド、pーメ
ンタンハイドロパーオキサイド、ジターシャリーブチル
ハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイ
ド;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサ
イド、キュメンパーオキサイド等の有機過酸化物や、ア
ゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系の開始剤を挙げる
ことができる。更に、これらと亜硫酸ナトリウム、酸性
亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホ
ルムアルデヒドスルフォキシレート、グルコース、ポリ
アミン、アスコルビン酸ヒドロキシアセトン等の還元剤
を組み合わせた、通常のレドックス系開始剤も使用でき
る。
【0046】使用できる乳化剤は、通常の乳化重合用の
界面活性剤を挙げることができる。たとえば、炭素数が
8〜20個のアルキル硫酸のナトリウム、カリウム、ア
ンモニウム塩およびラウリン酸、ステアリン酸、パルミ
チン酸等の脂肪族カルボン酸のナトリウム、カリウム塩
等の陰イオン界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂
肪族アルコール類およびポリプロピレンオキサイド類と
エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン界面活
性剤が挙げられる。また、場合によっては、これら界面
活性剤を2種以上併用することができる。更に、ナフタ
レンホルムアルデヒド縮合スルフォン酸塩等の界面活性
助剤を添加することもできる。また更に、アルキルアミ
ン塩酸塩等の陽イオン界面活性剤を使用することもでき
る。
【0047】乳化重合法によって架橋アクリル酸エステ
ル系弾性体を製造するには、例えば、アクリル酸アルキ
ルエステル単量体、又はアクリル酸アルキルエステルと
これと共重合可能なビニル化合物単量体の混合物に、少
量の架橋性単量体を加えて、乳化重合法により製造すれ
ばよい。この方法で得た重合体エマルジョンに、更にア
クリル酸アルキルエステル単量体、又はアクリル酸アル
キルエステルとこれと共重合可能なビニル化合物単量体
混合物を加え、乳化重合法により製造する事もできる。
【0048】架橋アクリル酸エステル系弾性体は、前記
界面活性剤の使用量や、使用する水性媒体の量を加減す
ることで架橋弾性体エマルジョン粒子の平均粒子径を調
節することができる。上記架橋アクリル酸エステル系弾
性体にグラフトさせる単量体は、メタクリル酸アルキル
エステル、又はメタクリル酸アルキルエステルを主成分
とし、これと共重合可能なビニル化合物単量体との混合
物を使用できる。グラフトさせる成分としてのメタクリ
ル酸エステルは、弾性体製造の際にしようされる前述の
中から選ぶことができ、これと共重合可能なビニル化合
物単量体もまた、弾性体製造の際に使用されると例示し
たものの中から選ぶことができる。
【0049】グラフト重合反応は、乳化重合法によって
実施するのが好ましいが、溶液重合法によっても良い。
乳化重合法によるときは例えば、架橋アクリル酸エステ
ル系弾性体のエマルジョンに、グラフトさせる単量体を
加え、必要があれば乳化剤、重合開始剤、分子量調節
剤、水等を加えて、通常の乳化重合の条件を選んで実施
することができる。グラフト重合体は、そのまま、また
はグラフト重合体と相溶性がある透明な熱可塑性樹脂を
ブレンドして、被膜形成用アクリル系樹脂として使用す
ることができる。
【0050】本発明においては、上記基体ポリオレフィ
ン系樹脂フィルムの展張時ハウス内面に、(a)疎水性
アクリル系樹脂の水分散液、(b)ポリウレタン水性樹
脂組成物、及び(c)無機質コロイドゾルの3成分を必
須成分とする防曇被膜を形成されてなることを特徴とす
る。アクリル系樹脂は、疎水性であることが好ましく、
またガラス転移温度が35〜80℃の範囲にあることが
好ましい。該疎水性アクリル系樹脂のガラス転移温度が
低すぎる場合、無機質コロイド粒子が数次凝集して不均
一な分散状態をとりやすく、また無機質コロイド粒子の
塗布基材に対する固着が十分でないため、時間の経過と
ともに無機質コロイド粒子が基材表面から脱落・流失し
て防曇性能を損なうことがあり、また高すぎる場合、透
明性のある均一な被膜を得るのが困難になり、実用性に
乏しい。
【0051】本発明において、形成される被膜の疎水性
アクリル系樹脂として好ましく用いられる1つの例とし
ては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメ
タクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、また
はアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類
とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40
重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体
とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下
に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重
合体または共重合体を挙げることができる。
【0052】疎水性アクリル系樹脂の製造に用いるアク
リル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類として
は、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエス
テル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸
イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステ
ル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリ
ル酸デシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メ
タクリル酸エチルエステル、メタクリル酸−n−プロピ
ルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタ
クリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エ
チルヘキシルエステル、メタクリル酸デシルエステル等
が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20
個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基
の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステル
が使用される。
【0053】アルケニルベンゼン類としては、スチレ
ン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ
る。本発明で用いる疎水性アクリル系樹脂は、上記のよ
うなアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル
類、又は、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエス
テル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物を、少
なくとも計60重量%を含有することが好ましい。60
重量%に満たないときは、形成被膜の耐水性が十分でな
いために、防曇持続性能を発揮しえないことがあり好ま
しくない。
【0054】疎水性アクリル系樹脂を得るために用いる
α、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル
酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ
ル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性
不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−
エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−
2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホス
ホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエ
チル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル
類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸
のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体
は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよく、
0〜40重量%の範囲で使用するのが好ましい。使用量
が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ま
しくない。
【0055】疎水性アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、
例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、
非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2
種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、
反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せ
ずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によっ
て得ることができる。乳化剤の存在下での重合方法の場
合、これら乳化剤は、単量体の仕込み合計量に対し0.
1〜10重量%の範囲で使用するのが、重合速度の調
整、合成される樹脂の分散安定性の点から好ましい 本発明の疎水性アクリル系樹脂の製造に好ましく用いら
れる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸
カリウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸
化ベンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これら
は、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%
の範囲で使用することができる。
【0056】本発明に用いる疎水性アクリル系樹脂の水
系エマルジョンは、各単量体を水系媒質中での重合によ
って得られた水系エマルジョンをそのまま使用しても良
く、更にこのものに液状分散媒を加えて希釈したもので
もよく、また上記のような重合によって生じた重合体を
分別採取し、これを液状分散媒に再分散させて水系エマ
ルジョンとしたものでもよい。
【0057】本発明で用いるポリウレタン水性組成物と
しては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボ
ネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが用い
られるが、防曇被膜の基体ポリオレフィン系樹脂フィル
ムとの密着性、耐水性及び耐傷付き性の点でポリカーボ
ネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ま
しく、更なる防曇被膜の耐水性、耐傷付き性向上並びに
防曇性を発現するまでの時間及び防曇持続性の点でシラ
ノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポ
リウレタンエマルジョンがより好まい。これらは1種ま
たは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】シラノール基を含有するポリカーボネート
系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンとは分子内に
少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン
樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有
してなり、具体的には水相中にシラノール基含有ポリウ
レタン樹脂及び前記強塩基性第3級アミンが溶解してい
るもの、又は微粒子状に分散しているコロイド分散系の
もの(エマルジョン)をいう。
【0059】ポリウレタン水性組成物は、その配合量を
固形分重量比で疎水性アクリル系樹脂樹脂に対して0.
01以上、2以下、更に好ましくは0.01以上1以下
にすることが好ましい。0.01に満たないときには耐
傷付き性の向上が見られず、また、防曇性を発現するま
での時間が長く、十分な防曇効果が発揮できない。ま
た、多すぎると、耐傷付き性が配合量に比例して向上し
ないばかりでなく、塗布後に形成される塗膜が白濁化し
光線透過率を低下させやすく、また、コスト面でも不利
であり好ましくない。
【0060】本発明で用いる無機質コロイドゾルは、疎
水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に塗布するこ
とにより、フィルム表面に親水性を付与する機能を果た
すものである。無機質コロイドゾルとしては、シリカ、
アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水
酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コ
ロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分
散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用い
られるのは、シリカゾルとアルミナゾルで、これらは、
単独で用いても併用しても良い。
【0061】無機質コロイドゾルとしては、その平均粒
子径が5〜100μmの範囲で選ぶのが好ましく、ま
た、この範囲であれば、平均粒子径の異なる2種以上の
コロイドゾルを組み合わせて用いても良い。平均粒子径
が大きすぎると、被膜が白く失透することがあり、ま
た、平均粒子径が小さすぎると、無機質コロイドゾルの
安定性に欠けることがあるため好ましくない。
【0062】無機質コロイドゾルは、その配合量を
(a)疎水性アクリル系樹脂と(b)ポリウレタン水性
樹脂組成物のの固形分重量の合計に対して、固形分とし
ての重量比で0.5以上5以下にするのが好ましい。す
なわち、配合量が少なすぎる場合は、十分な防曇効果が
発揮できないことがあり、一方、配合量が多すぎる場合
は、防曇効果が配合量に比例して向上しにくいばかりで
なく、塗布後に形成される被膜が白濁化してフィルムの
光線透過率を低下させる現象があらわれ、また、被膜が
粗雑で脆弱になることがあり、好ましくない。
【0063】本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤
組成物を調製するときに、陰イオン系界面活性剤、陽イ
オン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面
活性剤等の界面活性剤を添加することができる。陰イオ
ン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、オレ
イン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウ
ム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸
エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキル
ベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン
酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアル
キルスルホコハク酸塩;ジアルキルホスフェート塩;ポ
リオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポ
リオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリ
ウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩等が挙げら
れる。
【0064】陽イオン系界面活性剤としては、エタノー
ルアミン類;ラウリルアミンアセテート、トリエタノー
ルアミンモノステアレートギ酸塩;ステアラミドエチル
ジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリルトリメチ
ルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアン
モニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウム
クロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロラ
イド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライ
ド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0065】非イオン系界面活性剤としては、ポリオキ
シエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンラ
ウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル
等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポ
リオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチ
レンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキル
アリールエーテル類;ポリエチレングリコールモノステ
アレート等のポリオキシエチレンアシルエステル類;ポ
リプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物;ソ
ルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテー
ト、ソルビタンモノベンゾエート等のソルビタン脂肪酸
エステル類;ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセ
リンモノステアレート等のジグリセリン脂肪酸エステル
類;グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸
エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート等
のペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ジペンタエ
リスリトールモノパルミテート等のジペンタエリスリト
ール脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミテート・
ハーフアジペート、ジグリセリンモノステアレート・ハ
ーフグルタミン酸エステル等のソルビタン及びジグリセ
リン脂肪酸・2塩基酸エステル類;またはこれらとアル
キレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピ
レンオンオキサイド等の縮合物、例えばポリオキシエチ
レンソルビタンモノラウレート、ポリオキシプロピレン
ソルビタンモノステアレート等;ポリオキシエチレンス
テアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、
ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシ
エチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;シュガーエ
ステル類等が挙げられる。
【0066】高分子界面活性剤としては、ポリアクリル
酸塩、ポリメタクリル酸塩、セルロースエーテル類等が
挙げられる。これら界面活性剤の添加は、疎水性アクリ
ル系樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに
均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと
併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フ
ィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性
剤の添加量は、疎水性アクリル系樹脂の固形分100重
量部に対し0.1〜50重量部の範囲で選ぶと良い。界
面活性剤の添加量が少なすぎると、疎水性アクリル系樹
脂及び無機質コロイドゾルが十分に分散するのに時間が
かかり、また、無機質コロイドゾルとの併用での防曇効
果を十分に発揮しえず、一方界面活性剤の添加量が多す
ぎると塗布後に形成される被膜表面へのブリードアウト
現象により被膜の透明性が低下し、顕著な場合は被膜の
耐ブロッキング性の悪化や被膜の耐水性低下を引き起こ
す場合がある。
【0067】本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤
組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができ
る。架橋剤は、アクリル系樹脂同士を架橋させ、被膜の
耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェ
ノール樹脂類、アミノ樹脂類、アミン化合物類、アジリ
ジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物
類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられる
が、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキ
シ化合物類が好ましく使用できる。
【0068】アミン化合物類としては、ジエチレントリ
アミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジア
ミン等の脂肪族ポリアミン;3,3’−ジメチル−4,
4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジ
アミン等の脂環式アミン;4−4’−ジアミノジヘニル
メタン、m−フェニレンジアミン等の芳香族アミンが使
用される。アジリジン化合物類としては、トリス−2,
4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジ
ン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニル
プロピオネート、トリス[1−(2−メチル)−アジリ
ジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチ
ル)−アジリジニル]トリホスファトリアジン等が使用
される。エポキシ化合物類としては、ビスフェノールA
又はビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応生
成物、フェノール(又は置換フェノール)とホルムアル
デヒドとの樹脂反応生成物とエピクロルヒドリンの反応
により生成されるエポキシ化ノボラック樹脂、エピクロ
ルヒドリン及び脂肪族多価アルコール例えばグリセロー
ル、1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシプロピレ
ン)グリコール又は類似の多価アルコール成分から生成
される樹脂状反応生成物及び過酢酸を用いるエポキシ化
により得られる樹脂等が使用される。エポキシ化合物類
では、さらに三級アミン類や四級アンモニウム塩類を触
媒として併用することができる。これら架橋剤は、その
添加量がアクリル系樹脂固形分に対して0.1〜30重
量%の範囲で使用することができる。本発明に使用され
る防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合
することができる。かかる液状分散媒としては、水を含
む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルア
ルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコー
ル、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエ
チレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;
ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブ
アセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分
散媒は単独で用いても併用しても良い。
【0069】防曇剤組成物は、疎水性アクリル系樹脂、
ポリウレタン水性組成物及び無機質コロイドの固形分と
して一般に0.5〜50重量%の濃度で調製し、これを
希釈して使用することが多い。本発明で調製される防曇
剤組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、可塑剤、造
膜助剤、造粘剤、顔料、顔料分散剤等の慣用の添加剤を
混合することができる。
【0070】なお、本発明でいう、アクリル系樹脂被膜
のガラス転移温度は、次式により算出した。
【0071】
【数1】1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+
Wn/Tgn ただし、Tgはアクリル系樹脂のガラス転移温度(絶対
温度)、Tg1、Tg2、…、Tgnは各成分1、2、
…、nのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)、
W1、W2、…、Wnは各成分1、2、…、nの重量分
率をそれぞれ示す。
【0072】基体フィルムの表面にアクリル系樹脂被膜
及び防曇性被膜をそれぞれ形成するには、前述の重合に
て得られたアクリル系樹脂溶液及び防曇剤組成物をそれ
ぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディ
ップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バ
ーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公
知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。塗布後
の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を
採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常5
0〜250℃、好ましくは70〜200℃の温度範囲で
乾燥すればよい。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾
燥法、遠赤外線乾燥法等適宜方法を採用すればよく、乾
燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが
有利である。
【0073】本発明において、基体フィルムの表面に形
成させる被膜の厚さは、基体フィルムの1/10以下を
目安に選択するとよいが、必ずしもこの範囲に限定され
るものではない。被膜の厚さが基体フィルムの1/10
より大であると、基体フィルムと被膜とでは屈曲性に差
があるため、被膜が基体フィルムから剥離する等の現象
がおこりやすく、また、被膜に亀裂が生じて基体フィル
ムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくな
い。
【0074】また、基体フィルムと被膜組成物に由来す
る被膜との接着性が充分でない場合には、基体フィルム
の表面を予めアルコールまたは水で洗浄したり、プラズ
マ放電処理、あるいはコロナ放電処理を施しておいても
よい。本発明に係る農業用ポリオレフィン系樹脂フィル
ムを、実際に使用するにあたっては、アクリル系樹脂被
膜の設けられた側をハウス又はトンネルの外側に、防曇
性被膜の設けられた側をハウス又はトンネルの内側とな
るようにして展張するのがよい。
【0075】
【実施例】以下、本発明を実施例にもとづいて詳細に説
明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例
に限定されるものではない。 (1)ポリオレフィン系基体フィルムの調製 三層インフレーション成形装置として三層ダイに100
mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機は外内層を
30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40m
mφ((株)プラ技研製)として成形温度160℃、ブ
ロー比2.0、引取速度5m/分にて、表−1に記載の
ポリオレフィン系基材フィルム(A〜F)を得た。
【0076】(2)ハウス外面のアクリル系樹脂被膜の
形成 表−2に記載のモノマー組成よりなるアクリル系樹脂を
MEKに溶解し、固形分濃度が20%になるように調製
し、4種類の防塵塗膜用塗布液を得た。得られた塗布液
を前記、基材フィルムの表面に、上記被覆材をグラビア
コート法によって塗布した後、150℃に温度調節した
温風乾燥炉内に2分間滞留させ、溶剤を飛散させ防塵被
膜を形成させた。尚、被膜の厚みは全て2μmであっ
た。
【0077】(3)ハウス内面の防曇被膜の形成 表−3に記載のモノマー組成よりなるアクリル系樹脂の
水分散液を調製し、得られたアクリル系水分散液に表−
4に記載のポリウレタン水性組成物、無機質コロイドゾ
ル、及びその他の成分を配合し、各種の防曇剤組成物を
調整した。
【0078】得られた防曇剤組成物を、前記、基体フィ
ルムのハウス外面のアクリル系樹脂被膜を形成した面と
別の面にグラビアコート法によって塗布した後、80℃
に温度調節した温風乾燥炉内に2分間滞留させ、液状分
散媒を飛散させて膜を形成させた。尚、被膜の厚みは全
て0.5μmであった。 (4)フィルムの評価 得られた各フィルムについて、次のような評価試験を行
い、その結果を表−5に示した。
【0079】a)融着性試験 幅30cm、長さ150cmに切断したフィルムを、名
古屋市の水道水に2日間浸し、これを、直径2cm幅3
5cmの亜鉛メッキをした鉄製のパイプに巻き付け、6
5℃のオーブン内で1週間放置し、乾燥させた。このフ
ィルムを鉄パイプから巻き戻した時のフィルム接触部分
の融着が発生した面積の、フィルム全体の面積に対する
割合を示した。
【0080】b)もみ試験後のフィルム透明性 株式会社上島製作所製UF耐揉試験機FT−501にて
揉み試験を実施した。幅2cm、長さ7cmに切断した
フィルムを23℃恒温室に60分静置した後、荷重50
0g、もみ幅2cm、もみ速度120回/分の条件にて
10回揉み試験を実施した。その後、もみ幅部分の、波
長555nmにおける平行光線透過率を、U−2000
型日立ダブルビーム分光光度計で測定した。
【0081】c)塗膜密着性 幅20cm、長さ30cmに切断したフィルムを名古屋
市の水道水に浸漬し、5℃雰囲気下に一昼夜放置した。
このフィルムにスコッチブライト(3M製工業用パッド
8448、サイズ;8cm×10cm)をのせ、以下の
条件で塗膜剥離試験を行った。
【0082】 試験温度:5℃雰囲気下 荷重:4kg 試験回数:長さ方向へ20cm×10往復 試験後のサンプルを乾燥させ、塗膜密着性を以下の基準
にて目視評価した。 ○; 剥離面積 0〜20% △; 剥離面積 20〜50% ×; 剥離面積 >50% d)防曇塗膜傷付き性試験 防曇塗膜を形成した面に10cm四方に裁断したスコッ
チ・ブライト(3M製)を置き、荷重1kg下で引張り
速度2cm/秒の速さで引張り、塗膜面の傷付き状況を
目視にて観察した。この評価基準は、次の通りである。
【0083】 ○ : 塗膜表面に傷付き性が認められない ○×: 塗膜表面に傷付き性がやや認められるもの △ : 塗膜表面に傷付き性がかなり認められるもの × : 塗膜表面に傷付き性が非常に激しく、実用に耐
えないもの e)防曇性試験 1)条件1 水を入れた水槽の上部に、フィルムの防曇被膜面を水槽
に向けて配置し、外気温を20℃、水槽内気温を50℃
に保持し、水槽の上部にフィルムを配置してから所定期
間経過後の時点で、防曇性の発現速さを目視で観察し
た。
【0084】この評価基準は以下の通りである。 ◎: 水が薄膜状に付着し、水滴が認められない状態 ○: 水が薄膜状に付着しているが、わずかに大粒の水
滴が認められる状態 ○×: 水が薄膜状に付着しているが、部分的に大粒の
水滴の付着が認められる状態 △: 部分的に細かい水滴の付着が認められる状態 × : フィルム表面全体に、細かい水滴の付着が認め
られる状態 2)条件2 条件1で1ヶ月経過した各フィルムについて、外気温1
0℃、水槽内気温20℃に保持し、所定時間経過時点で
の防曇性の発現速さを目視で観察した。この評価基準は
上記条件1と同じである。
【0085】3)条件3 フィルムを、戸外の試験圃場に設置した片屋根式ハウス
(間口2m、奥行き20m、棟高2m、屋根勾配30
度)に、防曇被膜面をハウス内側になるように被覆し、
18ヶ月間の展張試験を行った。展張試験中に経時的に
各フィルムの防曇性を目視で観察した。この評価基準
も、上記条件1と同じである。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、フィルム同士が重なり
あった際にも融着することが少なく、かつ重なり合った
後の透明性に優れ、また外面塗膜、防曇塗膜の密着性が
よいため長期間にわたり融着防止性を持続し、かつ防曇
性(発現の速さ、持続性)に優れた農業用ポリオレフィ
ン系樹脂フィルムを得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 23/02 C08L 23/02 //(C08L 23/02 (C08L 23/02 23:08) 23:08) (72)発明者 吉村 恵美 愛知県名古屋市中村区岩塚町大池2番地 三菱化学エムケーブイ株式会社名古屋事業 所内 Fターム(参考) 2B024 DB01 DB07 2B029 EB03 EB16 EC02 EC06 EC09 EC17 EC19 RA03 4F006 AA12 AB24 AB37 AB76 BA10 CA06 4F100 AA01C AA19C AA20C AC10 AH03A AH03H AH06C AK02A AK02B AK02J AK02K AK03A AK04A AK04J AK06 AK25B AK25C AK25K AK45C AK51C AK62A AK68 AL01A AL01B AL06A AL06J AL09B AR00C BA03 BA07 BA10B BA10C CA02C GB01 JA05C JB06C JB09C JB20B JL07 JL07C JL11 JL14 JM01C JN01 YY00C 4J002 BB031 BB051 BB061 BB102 BB121 BB151 BB171 BJ002 GA01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムであ
    って、展張時ハウス外面に、アクリル系樹脂被膜を形成
    し、他方の面に、(a)疎水性アクリル系樹脂の水分散
    液、(b)ポリウレタン水性樹脂組成物、及び(c)無
    機質コロイドゾルの3成分を必須成分とする防曇剤組成
    物よりなる被膜を形成し形成し、かつ基材のポリオレフ
    ィン系樹脂フィルム中にエチレンと環状アミノビニル化
    合物とを共重合させて得られたヒンダードアミンを側鎖
    に有するエチレン系共重合体を該ビニル化合物単位の割
    合で0.05〜5重量%含有することを特徴とする農業
    用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  2. 【請求項2】該防曇剤組成物中の、成分(b)の配合量
    が、固形分重量比で成分(a)に対して、0.01以上、1
    以下で、成分(c)の配合量が固形分重量比で成分
    (a)と成分(b)の合計に対して0.5以上、5以下
    である防曇剤組成物であることを特徴とする請求項1記
    載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  3. 【請求項3】展張時ハウス外面に形成するアクリル系樹
    脂被膜のガラス転移温度が50〜82℃の範囲であり、
    防曇剤組成物の(a)疎水性アクリル系樹脂のガラス転
    移温度が35〜80℃であることを特徴とする請求項1
    又は2に記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  4. 【請求項4】フィルムのハウス外面の被膜を形成するア
    クリル系樹脂が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ
    ート5〜40重量%、分子内に1個もしくは2個以上の
    カルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸0〜2
    0重量%、および残部がこれら化合物と共重合可能な他
    のビニル系化合物からなるモノマー成分を共重合して得
    られる共重合体であることを特徴とする請求項1ないし
    3のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィ
    ルム。
  5. 【請求項5】フィルムのハウス外面の被膜を形成するア
    クリル系樹脂が、架橋アクリル酸エステル系弾性体の存
    在下に、メタクリル酸アルキルエステル単量体、又はメ
    タクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これと共重
    合可能なビニル化合物との混合物を重合して得られるグ
    ラフト共重合体であって、該架橋アクリル酸エステル系
    弾性体を5〜80重量%含むものであることを特徴とす
    る請求項1ないし3のいずれかに記載の農業用ポリオレ
    フィン系樹脂フィルム。
  6. 【請求項6】ポリオレフィン系樹脂の一成分として、メ
    タロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレ
    フィン共重合樹脂が使用される事を特徴とする請求項1
    ないし5のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹
    脂フィルム。
  7. 【請求項7】防曇剤組成物中の成分(b)が、分子内に
    少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン
    樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有
    してなるポリウレタン水性組成物である請求項1ないし
    6のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィ
    ルム。
  8. 【請求項8】防曇剤組成物中の成分(b)が、ポリカー
    ボネート系のアニオン性ポリウレタン水性組成物である
    請求項1ないし7のいずれかに記載の農業用ポリオレフ
    ィン系樹脂フィルム。
  9. 【請求項9】防曇剤組成物中の成分(c)が、シリカ及
    び/またはアルミナゾルである請求項1ないし請求項8
    のいずれかに記載の農業用樹脂フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010244015A (ja) * 2009-03-18 2010-10-28 Jsr Corp 液晶配向剤および液晶表示素子

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