JP3841453B2 - 農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム - Google Patents

農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は新規な農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム、さらに詳しくは、透明性を低下させることなく、長期間にわたって防曇性を持続し、かつ優れた保温性、耐候性、防塵性を有し、ハウス栽培用、トンネル栽培用として好適な農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハウス栽培用やトンネル栽培用の農業用フィルムとして、従来、塩化ビニル系樹脂フィルムが主流を占めてきたが、このものは可塑剤のブリードアウトに伴う塵埃の付着により光透過性がそこなわれるという欠点がある上、使用済の廃棄物を焼却する際に、有害な塩化水素ガスを発生し、環境汚染の原因になるなどの理由で、近年ポリオレフィン系樹脂フィルムに代替されつつある。
【0003】
このポリオレフィン系樹脂フィルムは可塑剤を必要としないので、可塑剤のブリードアウトによる光透過性の低下はなく、焼却に際して有害ガスを発生することもない上、加工しやすいなどの長所を有しているが、ハウス内面の水滴を防止するために通常練り込まれている防曇剤がブリードアウトしやすく、このものがフィルムの透明性を阻害するとともに、防曇性の持続性にも劣るという欠点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムのもつ欠点を克服し、透明性を低下させることなく、長期間にわたって防曇性を持続し、かつ優れた耐候性、防塵性、保温性を有し、ハウス栽培用、トンネル栽培用として好適な農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを提供することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、防曇剤のブリードアウトがなく、長期間にわたって持続した防曇性を示し、優れた保温性、防塵性を有する農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、各層が特定の樹脂から成る3層構造の積層フィルムの内層表面に特定の防曇性塗膜を設けることにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、3層構造のポリオレフィン系積層フィルムにおいて、(A)外層が低密度ポリエチレン、エチレン‐α‐オレフィン共重合体及びエチレン‐酢酸ビニル共重合体の中から選ばれた少なくとも1種から成り、外層の樹脂成分全体に対する酢酸ビニル単位含有量が10重量%未満の樹脂、(B)中間層がエチレン‐酢酸ビニル共重合体を主材とし、中間層の樹脂成分全体に対する酢酸ビニル単位含有量が10〜18重量%の樹脂成分に、該成分100重量部に対し、一般式
[Al2Li(OH)6nX・mH2O (I)
(式中のXは無機又は有機アニオン、nはアニオンXの価数、mは3以下の数である)
で表わされるリチウムアルミニウム化合物、及び一般式
2+ 1-xAlx(OH)2(Ap-x/p・qH2O (II)
(M2+はMg2+、Ca2+及びZn2+の中から選ばれた少なくとも1種の2価金属イオンを示し、Ap-はp価のアニオン、x及びqは、それぞれ0<x<0.5、0≦q≦2を満たす数である)
で表わされるハイドロタルサイト類の中から選ばれた少なくとも1種1〜20重量部を配合した樹脂組成物及び(C)内層がエチレン‐酢酸ビニル共重合体、又はエチレン‐酢酸ビニル共重合体と低密度ポリエチレン若しくはエチレン‐α‐オレフィン共重合体との樹脂混合物から成り、内層の樹脂成分全体に対する酢酸ビニル単位含有量が3重量%以上10重量%未満の樹脂からそれぞれ成り、かつ内層表面に水性熱可塑性ウレタン樹脂と無機質コロイドゾルとから成る防曇性塗膜を設けたことを特徴とする農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを提供するものである。
【0007】
本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムにおいては、3層構造から成る積層フィルムが使用され、その外層の樹脂成分の主材としては、低密度ポリエチレン、エチレン‐α‐オレフィン共重合体又はエチレン‐酢酸ビニル共重合体が用いられる。
【0008】
ここで、低密度ポリエチレンとしては、たとえば密度が0.935g/cm3以下、好ましくは0.910〜0.935g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン、メタロセン触媒法による低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどが好ましく、またエチレン‐α‐オレフィン共重合体としては、エチレンとα‐オレフィン、たとえばプロピレン、ブテン‐1、3‐メチルブテン‐1、ペンテン‐1、3‐メチルペンテン‐1、4‐メチルペンテン‐1、ヘキセン‐1、オクテン‐1、デセン‐1などとのランダム共重合体やブロック共重合体を用いることができる。この共重合体においては、前記α‐オレフィンは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
さらに、エチレン‐酢酸ビニル共重合体は単独で用いてもよいし、ポリエチレン若しくはエチレン‐α‐オレフィン共重合体と混合して用いてもよいが、単独で用いる場合には、酢酸ビニル単位含有量が10重量%未満、好ましくは3重量%以上10重量%未満のものであることが必要である。また前記樹脂と混合して用いる場合は、この単独使用のものの他、酢酸ビニル単位含有量が10〜18重量%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を用いることができるが、この場合混合物中の酢酸ビニル単位含有量が10重量%未満、好ましくは7重量%以下になるように混合割合を調整することが必要である。このエチレン‐酢酸ビニル共重合体との混合に用いられるポリエチレンとしては、前記の高圧法低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレンなどが好ましく、またエチレン‐α‐オレフィン共重合体としては、先に例示したものの中から任意に選ぶことができる。
【0010】
この外層には、ブロッキング防止のため、無機充てん剤を1重量%未満で含有させることができる。
この外層は、農業用フィルムに表面平滑性、ベタツキ防止性、防塵性などを付与するために設けられるものであるが、外層中の樹脂成分全体に対する酢酸ビニル単位含有量が10重量%以上であったり、無機充てん剤が多量に含まれるとこれらの物性や透明性が低下する。
【0011】
この外層の厚さは、通常10〜60μm、好ましくは10〜40μmの範囲で選ばれる。この厚さが薄すぎると防塵効果が十分に発揮されないし、厚すぎると光透過性が低下する。
【0012】
本発明の農業用フィルムにおいては、中間層は、樹脂成分と特定の保温剤との樹脂組成物から成る。この樹脂成分は、エチレン‐酢酸ビニル共重合体を主材とし、酢酸ビニル単位含有量が10〜18重量%であることが重要である。この酢酸ビニル単位含有量が10重量%未満では外層及び内層との接着性に劣るし、18重量%を超えると得られる農業用フィルムの強度が低下する。
【0013】
この中間層を樹脂成分とともに構成する保温剤は、フィルムの保温性を向上させるものであって、一般式
[Al2Li(OH)6nX・mH2O (I)
(式中のXは無機又は有機アニオン、nはアニオンXの価数、mは3以下の数である)
で表わされるリチウムアルミニウム化合物及び一般式
2+ 1-xAlx(OH)2(Ap-x/p・qH2O (II)
(M2+はMg2+、Ca2+及びZn2+の中から選ばれた1種以上の二価金属イオンを示し、Ap-はp価のアニオン、x及びqは、それぞれ0<x<0.5、0≦q≦2を満たす数である)
で表わされるハイドロタルサイト類の中から選ばれた少なくとも1種であることが重要である。この保温剤は、樹脂成分100重量部に対し、1〜20重量部、好ましくは3〜10重量部の割合で配合することができる。この配合量が1重量部未満では保温性の向上効果が十分に発揮されないし、20重量部を超えるとフィルムの引張強度や引裂強度などの機械物性が低下する。また、中間層において、上記保温剤は上記樹脂成分と相容性よく均一にブレンドされ、特にリチウムアルミニウム化合物は透明性がよく好ましい。
【0014】
前記一般式(I)で表わされるリチウムアルミニウム化合物において、Xは無機又は有機のアニオンであり、具体例としては、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、メタリン酸イオンなどの無機アニオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、シュウ酸イオン、アジピン酸イオン、安息香酸イオン、フタル酸イオンなどの有機アニオンを挙げることができる。
このものは一般に粒径5μm以下、特に0.1〜3μmの六角板状の結晶として入手しうる公知の無機充てん剤である(特開平5−179052号公報)。
【0015】
前記一般式(II)で表わされるハイドロタルサイト類において、Aは無機又は有機のアニオンであり、具体例としては、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどの無機アニオン、CH3COO-、C64(OH)COO-などの有機アニオンを挙げることができる。
【0016】
この中間層は、農業用フィルムの基材層であり、その厚さは、通常30〜180μm、好ましくは50〜730μmの範囲で選ばれる。この厚さが薄すぎると得られるフィルムの機械物性が不十分となるし、厚すぎると光透過性が低下する。中間層の厚さは、フィルム全体の厚さに対し、50〜80%の範囲が好ましく、特に55〜75%の範囲が好ましい。
【0017】
本発明の農業用フィルムにおいては、内層の樹脂の主材として、エチレン‐酢酸ビニル共重合体が用いられる。このエチレン‐酢酸ビニル共重合体は単独で用いてもよいし、ポリエチレン若しくはエチレン‐α‐オレフィン共重合体あるいはその両方と混合して用いてもよいが、単独で用いる場合は、酢酸ビニル単位含有量が3重量%以上10重量%未満のものであることが必要である。また、前記樹脂と混合して用いる場合は、この単独使用のものの他、酢酸ビニル単位含有量が10〜18重量%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体を用いることができるが、この場合混合物中の酢酸ビニル単位含有量が3重量%以上10重量%未満になるように混合割合を調整することが必要である。内層中の樹脂成分全体に対する酢酸ビニル単位の含有量が3重量%未満では防曇性塗膜との密着性が不十分であるし、10重量%以上では防曇性塗膜を形成する際の作業性が低下する。
【0018】
この内層において、エチレン‐酢酸ビニル共重合体との混合に用いられるポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレンが好適であり、またエチレン‐α‐オレフィン共重合体としては、前記外層の樹脂の主材に例示したものと同じものを挙げることができる。
【0019】
この内層の厚さは、通常10〜60μm、好ましくは15〜40μmの範囲で選ばれる。
【0020】
本発明の農業用フィルムにおいては、前記内層の表面に、水性熱可塑性ウレタン樹脂バインダーと無機質コロイドゾルとから成る防曇性塗膜を設けることが必要である。この水性熱可塑性ウレタン樹脂バインダーは、通常水又は水とアルコールなどの水性溶剤との混合液剤に分散させ、水系エマルションとして用いられる。
【0021】
前記水性熱可塑性ウレタン樹脂バインダーの中では、特に水性アクリル変性ウレタン樹脂が好適である。この水性アクリル変性ウレタン樹脂としては、ポリエステル系アニオン性のものが好ましく、このものは、例えば(イ)ポリエステル系アニオン性の水性ウレタン樹脂の存在下に、(ロ)ヒドロキシ基含有アクリル系化合物を重合させたのち、(ハ)活性イソシアネート化合物を反応させることにより、製造することができる。
【0022】
一方、防曇性塗膜の他の成分として用いられる無機質コロイドゾルとしては、例えばコロイド状シリカ粒子やコロイド状アルミナ粒子などが挙げられる。コロイド状シリカ粒子には、鎖状のものと球状のものがあり、鎖状のコロイド状シリカ粒子としては、平均粒系3〜30mμ、好ましくは5〜20mμ、平均長さ30〜500mμ、好ましくは40〜300mμの粒子からなるものが好適である。このような鎖状のコロイド状シリカ粒子は公知であり(特開平4−65314号公報)、市販品として入手することができる。また、球状のコロイド状シリカ粒子としては、平均粒径5〜70mμ、好ましくは10〜40mμの通常のコロイド状シリカ粒子のほか、コロイド状リチウムシリケート粒子などを用いることができる。一方、コロイド状アルミナ粒子としては、平均粒径が5〜70mμ、好ましくは10〜40mμのものが好適である。これらの無機質コロイドゾルは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記水性熱可塑性ウレタン樹脂と無機質コロイドゾルとの割合は、固形分重量比で1:9ないし7:3の範囲にあるのが望ましい。これよりも水性熱可塑性ウレタン樹脂の割合が少ないと防曇性塗膜と内層との接着が不十分になるし、またこれよりも無機質コロイドゾルの割合が少ないと十分な防曇性が得られない。
【0024】
この防曇性塗膜を形成させるには、次に示す方法を用いるのが好ましい。まず、水性熱可塑性ウレタン樹脂と無機質コロイドゾルとを所定の割合で含有する水性エマルション組成物を調製し、グラビアコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーターなどによるコーティング法を用いて、該組成物を積層フィルムの内層表面に塗布したのち、50〜150℃程度の温度で熱風乾燥して、膜厚0.2〜5μm、好ましくは0.5〜2μm程度の塗膜を形成させればよい。この際、前記水性エマルション組成物には、所望に応じ塗布性を向上させる目的でシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤を含有させることができる。シリコーン系界面活性剤としては、例えばポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく、またフッ素系界面活性剤としては、例えばフルオロアルキル基やフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤が用いられる。これらの界面活性剤の配合量は、通常水性エマルション組成物全量に対し、0.01〜1重量%の範囲で選ばれる。
【0025】
また、本発明の目的がそこなわれない範囲で、従来慣用されている防曇剤、乳化剤、分散剤、安定剤、架橋剤などの各種添加成分を含有させることができる。さらに、塗膜の耐候性を高めるためにヒンダードアミン系の光安定剤や紫外線吸収剤などを含有させることができる。架橋剤は特に塗膜の耐水性を向上させるために使用され、例えばエポキシ系やアジリジン系のものが挙げられる。
【0026】
本発明の農業用フィルムにおいては、外層、中間層、内層の各層に、従来農業用ポリオレフィン系フィルムに慣用されている各種添加剤、例えばヒンダードアミン系の光安定剤や紫外線吸収剤などの耐候剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。
【0027】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニル‐4‐ベンゾエート、ビス‐(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジニル)セバケート、トリス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジン)ホスファイト、4‐ベンジルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン、4‐アセトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)テレフタレート、1,3,8‐トリアザ‐7,7,9,9‐テトラメチル‐2,4‐ジオキソ‐スピロ[4,5]デカン、トリ‐(4‐アセトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン)‐アミン、1,2,3,4‐テトラ(4‐カルボニルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン)ブタン、4‐(フェニルカルバモイルオキシ)‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン、(2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン)‐4‐スピロ‐2′‐(6′,6′‐ジメチルピペリジン)‐4′‐スピロ‐5″‐ヒダントイン、4‐(p‐トルエンスルホニルオキシ)‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン、1,3,8‐トリアザ‐7,7,9,9‐テトラメチル‐3‐n‐オクチル‐スピロ[4,5]デカン‐2,4‐ジオン、4‐ステアロイルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジンなどを挙げることができる。
【0028】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系のものなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系のものの例としては、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′,5′‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′‐tert‐ブチル‐5′‐メチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′‐tert‐アミル‐5′‐イソブチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′‐イソブチル‐5′‐メチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′‐イソブチル‐5′‐プロピルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐3′,5′‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2′‐ヒドロキシ‐5′‐メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐[2′‐ヒドロキシ‐5′‐(1,1,3,3‐テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどがある。
【0029】
また、ベンゾフェノン系のものの例としては、2,2′‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2′‐ジヒドロキシ‐4,4′‐ジメトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノンなどがある。
【0030】
また、サリチル酸系のものとしては、フェニルサリチレート、p‐オクチルフェニルサリチレートなどがある。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系のものなどが用いられる。
滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、有機亜リン酸エステルのようなキレーター、エポキシ樹脂、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアロアミドなどの脂肪酸アミドや、固体状の高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0031】
本発明において、外層、中間層及び内層から成る3層構造の積層フィルムを作成するには、まず各層を形成しうるペレットをそれぞれ調製したのち、公知の方法、例えば、共押出インフレーション成形法などにより、各層が所定の厚さになるように製膜すればよい。各ペレットは、樹脂成分と各種配合成分とをそれぞれ所定の割合で用い、リボンブレンダー、バンバリミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機を用いて均質に配合した組成物を、常法によりペレット加工することにより調製することができる。
【0032】
本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、所望により、その外層表面に防塵塗料から成る防塵層を設けることができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の農業用ポリオレフィン系フィルムは、3層構造の積層フィルムの内層表面に防曇性塗膜を設けたものであって、透明性を低下させることなく、長期間にわたって防曇性を持続し、かつ優れた保温性、防塵性、耐候性を有し、ハウス栽培用やトンネル栽培用として好適に用いられる。
【0034】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、防曇性塗膜形成特性及び農業用フィルムの性能は次のようにして求めた。
【0035】
防曇性塗膜形成特性
(1)塗膜形成性
次の基準に従い、塗膜形成性を評価した。
○:防曇性塗膜形成用塗工液をフィルムの内層にコーティングする際、ブロッキングの問題もなく、塗膜を形成できる。
×:防曇性塗膜形成用塗工液をフィルムの内層にコーティングする際、ブロッキングのため、塗膜を形成できない。
【0036】
(2)塗工性
次の基準に従い、塗工性を評価した。
○:防曇性塗膜形成用塗工液がはじくことなく塗工できる。
×:防曇性塗膜形成用塗工液がはじいて塗工できない。
【0037】
(3)密着性
次の基準に従い密着性を評価した。
○:セロテープにより塗膜が剥がれない。
×:セロテープにより塗膜が全面に剥がれる。
【0038】
農業用フィルムの性能
(4)防曇性
(イ)低温時
水温20℃の水槽に、外気温5℃にてフィルムを展張し、全面に水滴の付着がなく流れる場合を○とした。
(ロ)高温時
水温50℃の水槽に、外気温30℃にてフィルムを展張し、全面に水滴の付着がなく流れる場合を○とした。
(ハ)持続性
前記高温時の状態で1か月間放置したのち、観察し、次の基準に従い持続性を評価した。
○:全面に水滴の付着がなく流れる。
×:塗膜が剥離して有滴化している。
【0039】
(5)防塵性、保温性
平成6年4月20日から5月16日までの間、北海道札幌市の試験農場の間口1.5m、高さ1.0m、奥行7.0mのトンネルにフィルムを展張し、防塵性を次の基準に従い評価するとともに、保温性を求めた。
(イ)防塵性
○:ほとんど汚れが付着しない。
×:汚れの付着がみられる。
(ロ)保温性
上記期間の21時〜3時までの夜間の平均気温を測定し、保温性を求めた。
また、農業用フィルムの作成に使用した材料を以下に示す。
(a)高圧法低密度ポリエチレン
密度0.922g/cm3、MI2.4g/10分
(b)線状低密度ポリエチレン
密度0.915g/cm3、MI2.3g/10分(4‐メチルペンテン‐1との共重合体)
(c)酢酸ビニル単位含有量5重量%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体
MI0.5g/10分
(d)酢酸ビニル単位含有量15重量%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体
MI1.5g/10分
(e)リチウムアルミニウム化合物
[Al2Li(OH)62CO3・1.6H2O、平均粒径0.2μm
(f)ハイドロタルサイト
Mg0.67Al0.33(OH)2(CO30.165・0.5H2O(商品名:アルカマイザー1)、平均粒径0.5μm
(g)ウレタン樹脂系エマルション
UE‐2103、東亜合成化学(株)製、固形分35重量%
(h)アクリル変性ウレタン樹脂系エマルション
HUX‐401、旭電化工業(株)製、固形分37重量%
(i)アルミナゾル
コロイダルアルミナ、アルミナゾル‐100、日産化学(株)製、平均粒径100mμ、固形分20重量%
(j)シリカゾル
コロイダルシリカ、スノーテックス20、日産化学(株)製、平均粒径15mμ、固形分20重量%
(k)リチウムシリケートゾル
コロイダルリチウムシリケート、LSS‐35、日産化学(株)製、固形分35重量%
(l)ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
L―77、日本ユニカー(株)製
【0040】
実施例1
低密度ポリエチレン(以下、LDPEと略記)から成る外層用ペレット、酢酸ビニル単位含有量15重量%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体[以下、EVA(VA15%)と略記]100重量部にリチウムアルミニウム化合物5重量部を配合して成る中間層用ペレット及び酢酸ビニル単位含有量5重量%のエチレン‐酢酸ビニル共重合体[以下、EVA(VA5%)と略記]から成る内層用ペレットを用い、共押出インフレーション成形法により、外層、中間層及び内層の厚さが、それぞれ30μm、100μm及び20μmの3層構造の積層フィルムを得た。
【0041】
次に、ウレタン樹脂系エマルション50重量部、シリカゾル50重量部及びポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤0.5重量部から成る防曇性塗膜形成用塗工液を調製し、前記積層フィルムの内層表面に、グラビアコーター(グラビアロール:160メッシュ)により塗工し、120℃で乾燥して厚さ約2μmの防曇性塗膜を形成させ、農業用フィルムを作成した。
【0042】
防曇性塗膜形成特性及び農業用フィルムの性能を求めた。その結果を表1に示す。
【0043】
なお、フィルムの各層には、樹脂成分100重量部に対し、耐候剤として、チヌビン622(チバガイギー社製、ヒンダードアミン系光安定剤)0.3重量部及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.1重量部を添加した。
【0044】
以下の例においても同様である。
【0045】
実施例2
実施例1において、外層として、線状低密度ポリエチレン(以下L‐LDPEと略記)を用い、かつ中間層にリチウムアルミニウム化合物の代わりに、ハイドロタルサイトを用いた以外は、実施例1と同様にして3層構造の積層フィルムを得た。
【0046】
次に、アクリル変性ウレタン樹脂系エマルション50重量部、シリカゾル50重量部及びポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤0.5重量部から成る防曇性塗膜形成用塗工液を調製し、実施例1と同様にして防曇性塗膜を形成させ、農業用フィルムを作成した。
【0047】
防曇性塗膜形成特性及び農業用フィルム性能を求めた。その結果を表1に示す。
【0048】
実施例3
実施例2において、内層として、EVA(VA15%)とLDPEとの重量比1:1の混合物を用いた以外は、実施例2と同様にして3層構造の積層フィルムを得た。
【0049】
次に、実施例2において、シリカゾルの代わりにリチウムシリケートゾルを用いた以外は、実施例2と同様にして防曇性塗膜形成用塗工液を調製し、さらに農業用フィルムを作成した。
【0050】
防曇性塗膜形成特性及び農業用フィルムの性能を求めた。その結果を表1に示す。
【0051】
実施例4
EVA(VA5%)から成る外層用ペレット、EVA(VA15%)100重量部にリチウムアルミニウム化合物5重量部を添加したものから成る中間層用ペレット、EVA(VA5%)から成る内層用ペレットを用い、共押出インフレーション成形法により、外層、中間層及び内層の厚さが、それぞれ25μm、100μm及び25μmの3層構造の積層フィルムを得た。
【0052】
次に、実施例2と同様にして防曇性塗膜形成用塗工液を調製し、さらに農業用フィルムを作成した。
防曇性塗膜形成特性及び農業用フィルムの性能を求めた。その結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
中間層は設けず、外層が厚さ50μmのLDPE、内層が厚さ100μmのEVA(VA15%)から成る2層構造の積層フィルムを得たのち、実施例1と同様にして農業用フィルムを作成した。
防曇性塗膜形成特性及び農業用フィルムの性能を求めた。その結果を表2に示す。
【0054】
比較例2
厚さ150μmのLDPEから成る単層フィルムを用い、実施例1と同様にして農業用フィルムを作成した。
防曇性塗膜形成特性及び農業用フィルムの性能を求めた。その結果を表2に示す。
【0055】
比較例3
中間層は設けず、外層が厚さ50μmのEVA(VA15%)、内層が厚さ100μmのEVA(VA5%)から成る2層構造の積層フィルムを得たのち、実施例2と同様にして農業用フィルムを作成した。
防曇性塗膜成形特性及び農業用フィルムの性能を求めた。その結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
Figure 0003841453
【0057】
【表2】
Figure 0003841453
【0058】
表1及び表2から分かるように、実施例の農業用フィルムは、防曇性塗膜形成特性(塗膜形成性、塗工性、密着性)及び防曇性、防塵性に優れ、しかも、保温性も良好であり、比較例のものに比べて、防曇性塗膜形成特性やフィルムの性能のバランスに優れている。

Claims (4)

  1. 3層構造のポリオレフィン系積層フィルムにおいて、(A)外層が低密度ポリエチレン、エチレン‐α‐オレフィン共重合体及びエチレン‐酢酸ビニル共重合体の中から選ばれた少なくとも1種から成り、外層の樹脂成分全体に対する酢酸ビニル単位含有量が10重量%未満の樹脂、(B)中間層がエチレン‐酢酸ビニル共重合体を主材とし、中間層の樹脂成分全体に対する酢酸ビニル単位含有量が10〜18重量%の樹脂成分に、該成分100重量部に対し、一般式
    [Al2Li(OH)6nX・mH2
    (式中のXは無機又は有機アニオン、nはアニオンXの価数、mは3以下の数である)
    で表わされるリチウムアルミニウム化合物、及び一般式
    2+ 1-xAlx(OH)2(Ap-x/p・qH2
    (M2+はMg2+、Ca2+及びZn2+の中から選ばれた少なくとも1種の2価金属イオンを示し、Ap-はp価のアニオン、x及びqは、それぞれ0<x<0.5、0≦q≦2を満たす数である)
    で表わされるハイドロタルサイト類の中から選ばれた少なくとも1種1〜20重量部を配合した樹脂組成物及び(C)内層がエチレン‐酢酸ビニル共重合体、又はエチレン‐酢酸ビニル共重合体と低密度ポリエチレン若しくはエチレン‐α‐オレフィン共重合体との樹脂混合物から成り、内層の樹脂成分全体に対する酢酸ビニル単位含有量が3重量%以上10重量%未満の樹脂からそれぞれ成り、かつ内層表面に水性熱可塑性ウレタン樹脂と無機質コロイドゾルとから成る防曇性塗膜を設けたことを特徴とする農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  2. 3層構造の積層フィルムの外層、中間層及び内層の厚さが、それぞれ10〜60μm、30〜180μm及び10〜60μmであり、かつ中間層の厚さが積層フィルム全体の厚さに対し50〜80%である請求項1記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  3. 防曇性塗膜が、水性熱可塑性ウレタン樹脂と無機質コロイドゾルとを固形分重量比1:9ないし7:3の割合で含有し、かつ厚さが0.2〜5μmである請求項1又は2記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  4. 外層が、低密度ポリエチレン又はエチレン‐α‐オレフィン共重合体から成る請求項1ないし3のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。
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