JP4493334B2 - Hsa非含有組成物中のnesp/epoの安定化剤としてのl−メチオニン - Google Patents

Hsa非含有組成物中のnesp/epoの安定化剤としてのl−メチオニン Download PDF

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Description

発明の背景
遺伝子及び細胞工学技術の最近の進歩により、in vivoで種々の薬理学的作用を示すことが知られるタンパク質を、医薬用途のために大量に製造することが可能である。そのようなタンパク質には、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン(アルファ、ベータ、ガンマ、コンセンサス)、腫瘍壊死因子結合タンパク質(TNFbp)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、角質細胞成長因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、巨核球成長分化因子(MGDF)、オステオプロテゲリン(OPG)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、肥満タンパク質(OBプロテイン)、及び新規の赤血球産生刺激タンパク質(NESP)が含まれる。
EPOは、赤血球前駆細胞の赤血球への成熟に必要な糖タンパク質ホルモンである。それは腎臓で産生され、循環中の赤血球のレベルを調節するのに必須である。低い組織酸素レベルによって特徴付けられる状態がEPOの産生増加のシグナルを伝達し、ついで、赤血球産生を刺激する。例えば慢性腎不全症(CRF)で見られるように腎機能が喪失すると、その結果一般に、EPOの産生減少と、それと同時の赤血球の低減が起こる。ヒト尿EPOは、再生不良性貧血症の患者からMiyakeら(J. Biol. Chem., 252:5558 (1977))により精製されたが、この供給源から得られた精製EPOタンパク質の量は治療用途には不十分であった。ヒトEPOをコードする遺伝子の同定とクローニング、並びに組換えタンパク質の発現が、Linに対する米国特許4,703,008に開示された。その開示は参考として本明細書中に取り入れるものとする。細胞培地からの組換えヒトエリスロポエチンの精製方法が、Laiらに対する米国特許4,667,016に開示されており、これも参考として本明細書中に取り入れるものとする。哺乳動物宿主細胞からの生物学的に活性なEPOの製造は、治療用途に適したEPO量を初めて入手可能にした。さらに、その遺伝子配列の知識と精製タンパク質の入手容易性の増大が、このタンパク質の作用様式のよりよい理解に導いた。
ヒト尿由来EPO(Miyakeら、上記)及び哺乳動物細胞内で発現された組換えヒトEPOはともに、糖タンパク質の総分子量の約40%からなる3つのN結合オリゴ糖鎖及び1つのO結合オリゴ糖鎖を含む。N結合グリコシル化は、24位、38位及び83位に位置するアスパラギン残基で起こるが、一方、O結合グリコシル化は、126位に位置するセリン残基で起こる(Laiら, J. Biol. Chem., 261:3116 (1986); Broudyら, Arch. Biochem,. Biophys., 265:329 (1988)参照)。オリゴ糖鎖は、末端がシアル酸残基で修飾されており、N結合鎖は一般に1鎖あたり最高4つのシアル酸を有し、またO結合鎖は最高2つのシアル酸を有することが示されている。したがって、EPOポリペプチドは、最高で合計14個のシアル酸を収容することが可能である。
EPO炭水化物鎖の改変が生物学的活性に影響を及ぼしうることが、種々の研究によって示されている。1つの研究では、しかしながら、グリコシル化部位であるアスパラギン又はセリン残基の突然変異誘発によりN結合又はO結合オリゴ糖鎖の一方もしくは両方が除去されると、哺乳動物細胞で産生される改変EPOのin vitro活性が急激に低下する(Dubeら, J. Biol. Chem. 263:17516 (1988))。しかしながら、DeLormeら(Biochemistry,31:9871-9876(1992))は、EPO中のN結合グリコシル化部位の除去によって、in vivo生物学的活性は低下するが、in vitro生物学的活性は低下しなかったことを報告した。
EPOのシアル酸含量とin vivo生物学的活性との関係は、単離されたEPOイソフォームのin vivo活性の測定を通して開示された。EPO分子あたりのシアル酸含量を段階的に増加すると、それに相応して段階的に、in vivo生物学的活性が増加することが見出された(Egrieら, Glycoconjugate J., 10:263 (1993))。この活性は、等モル濃度の単離EPOイソフォームが正常マウスのヘマトクリット値を高める能力によって測定された。より高いシアル酸含量をもつこれらのEPOイソフォームは、より長い血清半減期を示すが、EPO受容体に対する親和性を減少した。これによって、血清半減期が、in vivo生物学的活性の重要な決定指標であることが示された。
米国では、EPOが、透析及び前透析を欠かせない慢性腎不全症の治療、並びに、癌の化学療法治療に対する続発性貧血症や、HIV感染のジドブジン(zidovudine)治療に関わる貧血症の治療に使用されている。世界的には、EPOを用いて、早産、鎌状赤血球貧血症、関節リウマチ及び骨髄移植に関わる貧血症が治療されている(Markhamら, Drugs, 49:232-254 (1995))。
NESPは、rHuEPOのアミノ酸配列中に5つの変更をもつ過剰にグリコシル化されたエリスロポエチン類似体であり、2つの追加の炭水化物鎖を備えている。より具体的には、NESPは、(ヒトEPOの配列に対応する番号付けで)アミノ酸残基30及び88番目に2つの追加のN結合炭水化物鎖を含んでいる(参考としてその全体を本明細書中に取り入れるものとする、PCT出願US94/02957参照のこと)。NESPは、生化学的にEPOと区別され、より長い血清半減期とより高いin vivo生物学的活性を有する(Egrieら, ASH 97, Blood, 90:56a (1997))。NESPは、マウス、ラット、イヌ及びヒトでは約3倍高い血清半減期をもつことが示されている(Egrieら,上記)。マウスでは、同じ生物学的応答を得るためのrHuEPOと比較して、少ない頻度(週に1回又は隔週ごとに1回)の投与でより長い血清半減期とより高いin vivo活性を可能にする(Egrieら,上記)。
薬物動態学研究によって、上記の動物実験と一致して、慢性腎不全症患者においてrHuEPOよりも有意に長い血清半減期をもつことが実証されたが、このことから、少ない頻度の投薬計画をヒトにおいても使用できることが示された(MacDougallら, J American Society of Nephrology, 8:268A (1997))。医者にとっても患者にとっても、少ない頻度の投薬計画はより都合のよいものであるし、また、自己投与に関わるそのような患者にとって特に助かるだろう。少ない頻度の投薬に対する他の可能な利点には、患者に投与される薬剤が少ないこと、rHuEPO投与で認められる2,3の副作用の性質又は重症度の低減、並びに応諾(compliance)の増加が含まれる。
商業的に入手可能なEPO及びNESP製剤は一般に十分に耐容性と安定性があるけれども、極度の条件下では、そのようなタンパク質は、製造、処理及び保存条件中に不安定になり、望ましくない物理化学的な分解を起こす可能性がある。そのような分解には、凝集、不活性化、及びメチオニン残基の酸化が含まれ、熱や光などの外部要因によって、あるいは、アルブミンなどのヒト血液産物を含まない製剤中で、あるいは、ベンジルアルコールなどの保存剤を含む頻回投与製剤中で、分解が促進されかもしれない。
メチオニン含有ポリペプチドで酸化を抑制する方法はTakruriらの米国特許5,272,135(1993年12月21日)に記載されている。具体的には、Takruriは、液体又は半液体製剤中のメチオニン残基の酸化を抑制する方法を記載し、その製剤には、少なくとも1つのメチオニン残基を有するアミノ酸配列をもつポリペプチドが含まれる。メチオニン酸化の防止には、該ポリペプチド中のメチオニン残基の酸化を抑制するのに十分な量で該製剤に遊離のL-メチオニンを加えることで達成されると言われている。メチオニン残基の酸化は、酸素の透過が容易であり、かつ、製剤を内部に保存するプラスチック容器、例えばポリプロピレン又は低密度ポリエチレン(LDPE)製容器、と関わりがあると言われている。Takruriでの使用に含まれるポリペプチドは成長因子であり、試験された製剤は、上皮成長因子(EGF)の眼科用水性ベース製剤である。EPO又はNESPあるいはあらゆる他のグリコシル化タンパク質を含有する製剤は議論されていないし、HSA非含有の頻回投与組成物、すなわちHSA非含有頻回投与組成物も議論されていない。
発明の概要
本発明は、EPO及び/又はNESPの医薬組成物を提供する。この組成物では、メチオニンや他の安定化剤を組成物に取り込むと、光、熱、添加剤中の不純物、前もって充填された注射器中の浸出液、製造工程、保存、輸送及び処理によって誘導される重大な分解が起こりうる極度の条件でさえ、より安定な組成物を与える。
重要なことは、本発明の組成物がさらに、重大な分解がよく指摘されることがある、保存剤含有のHSA非含有組成物及びHSA非含有頻回投与組成物中で改善された安定性を示すことである。
発明の詳細な説明
本明細書中、「賦形剤」は、所望の効果例えば安定性、等張性を付与するために医薬組成物に添加される非有効成分として定義される。
本明細書中、「ポリペプチド」は、約10より多いアミノ酸を有し、かつ、所望の生物学的活性を有する、天然、合成、及び組換えタンパク質もしくはペプチドとして定義される。
本明細書中で使用される生物学的に活性な薬剤とは、ヒト又は動物のいずれの由来でもよく、予防、治療又は診断用途に有用な組換え又は天然ポリペプチドを指す。生物学的に活性な薬剤は、天然、合成、半合成のもの、又はそれらの誘導体であり得る。意図する活性薬剤には、ペプチド、小分子、炭水化物、核酸、脂質、タンパク質、及びそれらの類似体が含まれる。当業者であれば、本発明の組成物に所望の生物学的に活性な薬剤を容易に適合させることができるであろう。
使用を意図するタンパク質には、以下のものに限定されないが、インターフェロンコンセンサス(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、米国特許5,372,808、米国特許5,541,293、米国特許4,897,471及び米国特許4,695,623参照)、顆粒球コロニー刺激因子(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、米国特許4,810,643、米国特許4,999,291、米国特許5,581,476、米国特許5,582,823、及びPCT公開94/17185参照)、インターロイキン(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、米国特許5,075,222参照)、エリスロポエチン(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、米国特許4,703,008、米国特許5,441,868、米国特許5,618,698、米国特許5,547,933及び米国特許5,621,080参照)、幹細胞因子(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、PCT公開91/05795、PCT公開92/17505及びPCT公開95/17206参照)、オステオプロテゲリン(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、PCT公開97/23614参照)、新規の赤血球産生刺激タンパク質(NESP)(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、PCT公開94/09257参照)、レプチン(OBタンパク質)(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、PCT公開96/40912、PCT公開96/05309、PCT公開97/00128、PCT公開97/01010及び97/06816参照)、巨核球成長分化因子(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、PCT公開95/26746参照)、腫瘍壊死因子結合タンパク質(TNF-bp)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、角質細胞成長因子(KGF)、及びトロンボポエチンが含まれる。本明細書中で使用されるタンパク質なる用語は、ペプチド、ポリペプチド、コンセンサス分子、類似体、誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。
一般に、本発明で有用なEPOは、ヒトエリスロポエチン、又は密接に関連したその類似体、の配列を有する。EPOは体外で哺乳動物細胞によって産生されてもよいし、あるいは、天然源から単離されてもよい。好ましくは、EPOは、Linに対する米国特許4,703,008(その開示は参考として本明細書中に取り入れる。)に記載されるように製造された組換えヒトEPO(rHuEPO)である。EPOのアミノ酸配列は、本明細書中、配列番号1に示された配列である。好ましい宿主細胞は、Lin特許の実施例10に記載されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。当業界で公知の他の宿主細胞、例えばベビーハムスター腎細胞もまた、本発明で有用なEPOを製造するために使用しうる。Lin特許の実施例10の手法は、rEPOを製造するための好ましい方法であるが、当業界で公知の方法に改変や変更を加えることも可能である。好ましいEPO濃度は、50IU/mL〜500,000IU/mLであり、さらに好ましくは750IU/mL〜48,000IU/mLである。
本発明のNESPは、2つの追加グリコシル化部位の各々に結合された追加の炭水化物鎖を含む過グリコシル化EPO類似体である。NESPは部位特異的突然変異誘発法を用いて構築され、哺乳動物宿主細胞内で発現される。NESPの製造の詳細は、本出願人が同時に所有するPCT特許出願US94/02957に提供されている。rHuEPOの新たなN結合グリコシル化部位は、ポリペプチド鎖中アミノ酸Asn-X-Ser/ThrをコードするようにDNA配列中の改変によって導入された。NESPをコードするDNAは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞中にトランスフェクションされ、発現されたポリペプチドが追加の炭水化物鎖の存在について分析された。好適実施態様において、NESPは、残基30及び88番目に2つの追加のN結合炭水化物鎖を有する。アミノ酸配列の番号付けは、ヒトエリスロポエチン(EPO)の番号付けである。NESPのアミノ酸配列は、本明細書中の配列番号2に示される配列である。NESPが、新しい部位の他に、通常のN結合及びO結合グリコシル化部位の炭水化物鎖(complement)を有することは、理解される。NESPの好ましい濃度は、1μg/mL〜5000μg/mLであり、さらに好ましくは、10μg/mL〜500μg/mLである。
本発明のEPO及びNESPはさらに、配列番号1及び2中の1以上の残基において保存アミノ酸変更を含んでもよい。これらの変更は、結果として、炭水化物鎖を追加しないもの、また類似体の生物学的活性にほとんど影響を与えないものである。これらの変更は下記の表1に記載されている。一般に、Creighton, Proteinsなど (W.H. FreemanとCompany, N.Y., 1984);Fordら, Protein Expression and Purification 2:95-107 (1991)(これらは参考として本明細書中に取り入れる。)参照のこと。
Figure 0004493334
本発明の組成物の治療用途は、使用される生物学的に活性な薬剤に依存している。当業者であれば、その意図する治療用途のために、所望の生物学的に活性な薬剤を本発明に容易に適合させることができるだろう。そのような薬剤の治療用途は、図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる下記の刊行物中により詳細に記載されている。治療用途は、以下のものに限定されないが、コンセンサスインターフェロン(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、米国特許5,372,808、米国特許5,541,293参照)、インターロイキン(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、米国特許5,075,222参照)、エリスロポエチン(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、米国特許4,703,008、米国特許5,441,868、米国特許5,618,698、米国特許5,547,933、米国特許5,621,080、米国特許5,756,349、及び米国特許5,955,422参照)、顆粒球コロニー刺激因子(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、米国特許4,999,291、米国特許5,581,476、米国特許5,582,823、米国特許4,810,643及びPCT公開94/17185参照)、巨核球成長分化因子(PCT公開95/26746参照)、幹細胞因子(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、PCT公開91/05795、PCT公開92/17505及びPCT公開95/17206参照)、OBタンパク質(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、PCT公開96/40912、PCT公開96/05309、PCT公開97/00128、PCT公開97/01010及び97/06816参照)、新規の赤血球産生刺激タンパク質(図面を含めて参考として本明細書中に取り入れる、PCT公開94/09257参照)を含む。さらに、本発明の組成物はまた、生物学的に活性な薬剤によって治療が意図される症状の治療又は軽減のための1以上の医薬品の製造に使用できる。
特にNESPに関するものとして、本発明は、哺乳動物においてヘマトクリット値を高め維持するための方法を提供し、この方法は、本発明の医薬組成物中に治療有効量のNESPを投入することを含み、NESPは、等モル量のrHuEPOよりも少ない頻度で投与されて、匹敵する目標のヘマトクリット値が得られる。患者の最適ヘマトクリット値範囲を達成するために、本発明の投薬頻度は、1週間あたり3回未満である。投薬頻度は、1週間あたり2回、1週間あたり1回、あるいは1週間あたり1回未満、例えば隔週ごとに1回、1ヶ月あたり1回又は2ヶ月ごとに1回であることができる。患者の目標のヘマトクリット値を維持するのに必要な投薬頻度は、1週間あたり3回未満である。投薬頻度は、1週間あたり2回、1週間あたり1回、あるいは、1週間あたり1回未満、例えば2週間ごとに1回、1ヶ月あたり1回、又は2ヶ月ごとに1回であることができる。
本発明は、赤血球の減少が起こるすべての症状、例えば腎機能の低下もしくは喪失、(慢性腎不全症)、骨髄抑制治療、癌、ウイルス感染、慢性疾患、及び外科手術中の過度の血液損失において使用できる。
本発明の組成物はさらに、所望の範囲内に溶液のpHを維持するために、緩衝剤、例えばアルカリ塩(リン酸ナトリウムもしくはカリウム、又はそれらの一水素塩もしくは二水素塩)、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、並びに、当業界で公知のすべての他の医薬的に許容可能なpH緩衝剤を含むであろう。これらの緩衝剤の混合物もまた使用できる。本組成物中で有用な緩衝剤の量は、使用する特定の緩衝液や、溶液のpHに大きく依存する。例えば、酢酸塩はpH6と比べてpH5で効率的な緩衝液であるので、それは、pH6と比べてpH5の溶液で少ない酢酸塩を使用できる。好ましい組成物の好適pHは、5.0〜7.0の範囲内であり、また、所望のpHを得るために、pH調整剤、例えば塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、又はそれらの塩もまた含有しうる。
本組成物はさらに、限定されないがポリソルベート(polysorbate)80又はポリソルベート20などのソルビタンモノ-9-オクタデセノエートポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)誘導体含むであろう。他の誘導体は当業界でよく知られている。使用されるポリソルベート20又は80の量は、0.001%〜0.1%(w/v)の範囲内であり、その好適な量は、単回使用及び頻回投与組成物で0.005%(w/v)である。
優れた安定性をもつEPO及び/又はNESP医薬組成物を提供するために、組成物中に遊離のL-メチオニンが含有される。含有される遊離L-メチオニンの量は、0.05mM〜50mMの範囲内である。HSA含有組成物では、単回使用組成物中の好ましい量は0.05mM〜5mMであり、頻回投与組成物中の好ましい量は1mM〜10mMである。HSA非含有組成物では、単回使用組成物中の好ましい量は0.05mM〜5mMであり、頻回投与組成物中の好ましい量は1mM〜10mMである。
本発明の頻回投与組成物中での使用に意図される保存剤には、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、クレゾール、フェノール、及びパラベンが含まれる。含有される保存剤の量は、0%〜2%(w/v)の範囲内であり、組成物中の好ましい量は1%(w/v)である。
本発明の組成物はさらに、溶液を等張にし、注射用に適合させるために、等張性調整剤を含有させてもよい。典型的な等張化剤は当業界でよく知られており、限定されないが、塩化ナトリウム、マンニトール、グリシン及びソルビトールが含まれる。好適な等張化剤は、0mM〜200mMの濃度範囲内の塩化ナトリウムである。
本発明の組成物中には、他の酸化防止剤を含有させることも意図されている。組成物の製造への使用に意図される酸化防止剤には、アミノ酸、例えばグリシン及びリシン、キレート剤、例えばEDTA及びDTPA、並びに遊離ラジカル捕捉剤、例えばソルビトール及びマンニトールが含まれる。
本発明での使用に意図される好適なNESP組成物は、1〜5000μg/mLのNESP、10mM〜30mMのリン酸緩衝液、100mM〜200mMのNaCl、0.001%〜0.1%(w/v)のポリソルベート80、及び0.5mM〜50mMのL-メチオニン、pH5.0〜7.0を含み、より好ましくは、10〜500μg/mLのNESP、20mMのリン酸緩衝液、140mMのNaCl、0.005%(w/v)のポリソルベート80、及び1mMのL-メチオニン、pH6.2を含む。
本発明での使用に意図される好適なEPO組成物は、50〜500,000IU/mLのEPO、0.01mM〜5mMのリン酸緩衝液、0.01mM〜150mMのNaCl、5mM〜50mMのL-アルギニンもしくはL-ヒスチジン又はそれらの塩、0.001%〜0.1%(w/v)のポリソルベート80、及び0.5mM〜50mMのL-メチオニン、pH5.0〜7.0を含み、より好ましくは、750〜48,000IU/mLのEPO、2mMのリン酸緩衝液、110mMのNaCl、43.1mMのL-アルギニン・HCl、0.006%(w/v)のポリソルベート80、及び0.5、1、2、3もしくは5mMのL-メチオニン、pH6.0;又は2mMのリン酸緩衝液、142mMのNaCl、9.54mMのL-ヒスチジン・HCl、0.006%(w/v)のポリソルベート80、及び0.5、1、2、3もしくは5mMのL-メチオニン、pH6.0を含む。
メチオニンの酸化を抑制することに使用するためにさらに意図されるものが、窒素重層(nitrogen overlay)である。窒素重層は、充填工程中に窒素で掃気することによってバイアル又は前もって充填された注射器の上部空間(headspace)に導入可能である。
下記の実施例は本発明をさらに十分に説明するために提供されるものであり、その範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
本実施例は、EPO及びNESP HSA含有又はHSA非含有単回使用及び頻回投与組成物の製造を記載する。EPO及びNESPタンパク質調製物は下記の材料及び方法セクションに記載されるとおりに製造された。
ついで、NESP及び/又はEPO HSA含有組成物は、作製したタンパク質に、0.1〜1%アルブミン、適当な緩衝剤(例えばリン酸ナトリウム)と等張性改善剤(例えば塩化ナトリウム)を加えて、所望濃度のタンパク質と賦形剤を含む組成物を得ることによって製造された。NESP及び/又はEPO HAS非含有組成物は、アルブミンを他の組換えタンパク質もしくは医薬的に許容可能な界面活性剤(例えばポリソルベート20もしくは80)と置き換えることによって製造された。頻回投与組成物は、HSA含有又はHSA非含有組成物に保存剤(例えばベンジルアルコール)を導入することによって製造された。
本実施例は、NESPの(光によってもたらされる)凝集に対する遊離L-メチオニンの効果を評価した実験を記載する。明確な機序ははっきりしないが、極度の条件下で光はNESP組成物に対し重大な凝集をもたらす。実施例1で記載したとおりに製造したNESP単回使用HSA非含有組成物を本実験で使用した。
上記タンパク質を含有するガラスバイアルをUV光ボックスの中に入れ、一晩(16時間)、UV光に連続的に曝露した。サンプルをSEC-HPLCで分析した。図1に示されるように、10mMの遊離メチオニンを添加すると、凝集率が有意に減少した。
本実施例は、ベンジルアルコールの存在下でのNESPの凝集に対する遊離L-メチオニンの効果を評価した実験を記載する。明確な機序ははっきりしないが、ベンジルアルコールは、2〜8℃での保存中でさえ、NESP組成物に対して非常に僅かの凝集をもたらす。実施例1に記載したとおりに製造したNESP頻回投与HSA非含有組成物を、本実験で使用した。
1%ベンジルアルコールを含有する頻回投与組成物を2〜8℃で13ヶ月間インキュベーションし、SEC-HPLC法で分析した。図2に示されるように、1mM〜20mMの遊離メチオニンの添加が凝集率を有意に減少させた。
本実施例は、NESP HSA非含有単回使用組成物でのメチオニン酸化を抑制する能力について、種々の添加剤と処理を試験した実験を記載する。実施例1に記載したとおりに製造したNESP HSA非含有単回使用組成物を、本実験で使用した。
はじめに、NESPに対する種々の酸化防止剤の保護効果を、(下記の材料及び方法セクションに記載した)過酸化水素打ち込み実験によって調べた。遊離アミノ酸L-リシン、グリシン及びL-メチオニンを試験し、下記の材料及び方法セクションに記載したトリプシン処理マッピングによって%酸化を測定した。遊離L-メチオニンが、過剰の過酸化水素の存在下でNESPのMet-54残基の酸化を防止することが説得性をもって実証された(表2参照)。
Figure 0004493334
次に、NESPに対する種々の添加剤及び処理の保護効果を調べた。NESP HSA非含有組成物を対照として使用した。試験した添加剤は、20mM L-メチオニン、10mMヒスチジン及び0.1mM EDTAであった。上部空間中の窒素重層もまた評価された。遊離L-メチオニン、EDTA、ヒスチジン、及び/又は窒素重層が、ペルオキシダーゼ、スーパーオキシドイオンなどの種々の酸化剤に対するNESP HSA非含有組成物のMet-54残基の酸化を有効に抑制することが確定された(図3参照)。遊離L-メチオニンと、EDTAもしくはヒスチジンのいずれかとの組み合わせが、個別の添加剤と比べて酸化抑制に有効であった(図3参照)。遊離L-メチオニンと、上部空間内の窒素重層との組み合わせもまた、個々の処理において、より有効であった(図3参照)。
本実施例は、EPO及び/又はNESP HSA非含有頻回投与組成物でのメチオニン酸化を抑制する能力について、種々の添加剤及び処理を試験した実験を記載する。実施例1に記載したとおりに製造したEPO及び/又はNESP HSA非含有頻回投与組成物を、本実験に使用した。
はじめに、NESP HSA非含有頻回投与組成物に対する種々の濃度の遊離L-メチオニンの保護効果を、実施例2に記載したように過酸化水素打ち込み実験によって調べた。1%ベンジルアルコールと、0〜20mMの範囲の濃度の遊離メチオニンとを含有する組成物を試験した。サンプルは、4℃又は29℃のいずれかで56日間インキュベーションされた。遊離L-メチオニンの添加が、頻回投与組成物においてベンジルアルコール不純物により誘導される酸化を抑制することに有効であることが判明した(図4及び5参照)。
次に、HSA非含有EPO組成物±ベンジルアルコールに対するメチオニンの効果を評価した。図6は、ベンジルアルコールが含有する又は含有しない溶液でのEPOのトリプシン処理マップの比較であり、この特定のロットのベンジルアルコールの添加がpH7.0の溶液中でのEPOのほぼ完全な酸化に導き得ることが明らかである。しかしながら、遊離L-メチオニンの添加が、同じベンジルアルコールを含む溶液中でEPOの酸化を完全に防止できる。
さらに、緩衝溶液を窒素で掃気することによってもまた、ベンズアルデヒドによるNESPのMet-54酸化率を有意に低減できることが確定された(図7参照)。このことは、遊離L-メチオニンがNESPのMet-54に対する溶解分子状酸素の酸化作用を抑制できることを示している。
本実施例は、NESPの生物学的活性に対するメチオニン54酸化の影響を評価した実験を記載する。はじめに、NESP組成物を、種々の持続期間の間0.01%過酸化水素で酸化し、これによって、種々の量の酸化メチオニン54残基を有するNESPサンプルを得ることができた。メチオニン54の酸化は、NESP又はEPOの生物学的活性に悪影響を及ぼさないことが確定された(表3参照)。
Figure 0004493334
次に、十分な濃度の過酸化水素を加え、NESP溶液中のメチオニン54残基の全てが、添加された遊離L-メチオニンの存在中でさえ酸化されるように、上記サンプルを数日間インキュベーションした。過度の酸化ストレス下では、NESPは生物学的活性を失うことが実証され、遊離メチオニンを含まないサンプルは有意の生物学的活性を失った(表4参照)。
Figure 0004493334
NESPの不活性化は、メチオニン以外の他の残基の酸化にもよると考えられた。トリプトファン、システイン及びヒスチジンが、さらなる酸化部位として同定された(図8参照)。遊離メチオニンの添加が、これらの危機的なアミノ酸を酸化から保護することによってNESPの酸化による不活性化を防止する(表4)。
材料及び方法
本発明で使用されるEPOは、参考として本明細書に取り入れる上記米国特許4,703,008(Lin)に従って製造できる。
本発明で使用されるNESPは、参考として本明細書に取り入れる上記PCT公開94/09257に従って製造できる。
NESP又はEPOのトリプシン処理マッピングは、市販のトリプシンでタンパク質を消化した後、逆相HPLCでペプチドを分離することによって行われた。典型的な実験は次のように実施される。すなわち、20mMメチオニン、500mM Tris(塩基)及び5M尿素を含有する20μLトリプシン消化緩衝液(pH8.2)アリコートを、180μLのサンプルに加えた後で、1mg/mLトリプシン溶液4μLを加えた。室温で18時間消化したのち、消化サンプルを、Phenomenex Jupiter C18(250x4.6, 300A)カラムを使用する逆相HPLCによって分析した。
過酸化水素打ち込み実験は、小アリコートの過酸化水素を被試験サンプルに加えることによって行われた。所定の時間、室温でインキュベーションしたのち、100mM過剰遊離L-メチオニンの添加により遊離過酸化物をクエンチングして反応を止めた。
本発明は、本明細書中に見出されるか提案される特定の実施態様について、本発明の好適実施形態を含むように説明されている。本明細書の開示に照らせば、本発明が意図する範囲から逸脱することなく、例示した特定の実施態様において多数の変形と変更をなしうることは、当業者には明らかであろう。
光に曝露したときのNESPの凝集に対する遊離メチオニンの効果を示すグラフである。リン酸緩衝塩水中のNESPは、室温で4時間紫外線に曝露された。 2〜8℃での保存中、1%ベンジルアルコールの存在中NESPの凝集に対する遊離メチオニンの効果を示すグラフである。500μg/mLのNESPを含有するサンプルが13ヶ月間保存された。 37℃、90日間のインキュベーション中、NESPの54番目メチオニン残基の酸化に対する種々の添加剤と処理の効果を示すグラフである。%酸化は、トリプシン処理マッピング、それに続く逆相HPLC及びマススペクトロメトリーによって測定された。 1%ベンジルアルコールを含有する保存された組成物中、NESPの酸化に対する遊離メチオニンの効果を示すグラフである。0〜20mMの遊離メチオニンが試験され、サンプルが4℃、56日間インキュベーションされた。 1%ベンジルアルコールを含有する保存された組成物中、NESPの酸化に対する遊離メチオニンの効果を示すグラフである。0〜20mMの遊離メチオニンが試験され、サンプルが29℃、56日間インキュベーションされた。 pH7.0±ベンジルアルコール及び±遊離L-メチオニンの溶液中のEPOのトリプシン処理マップの比較である。 窒素での掃気(10分)がある場合、あるいは、ない場合における、NESPメチオニンの酸化率を比較するグラフである。%メチオニン酸化は、ベンズアルデヒド濃度に対するプロットである。0.1mg/ml NESPが試験された。 過剰酸化されたNESPサンプルのトリプシン処理マップの比較である。図に示された全てのサンプルについて、Met-54が完全に酸化された。図に示した番号は、サンプルに加えたメチオニンの濃度を表す。
配列表
Figure 0004493334
Figure 0004493334

Claims (10)

  1. 新規の赤血球産生刺激タンパク質(NESP)と、0.5mM〜50mMの濃度のメチオニンとを含み、改善された安定性を示し、及びヒト血清アルブミンを含まない、医薬組成物。
  2. 前記NESPが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の組成物。
  3. 5〜7のpH範囲を提供するpH緩衝剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 0.001%〜0.1%(w/v)の濃度で存在する、安定化する量のソルビタンモノ-9-オクタデセノエートポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)誘導体をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 新規の赤血球産生刺激タンパク質(NESP)、保存剤及び0.5mM〜50mMの濃度のメチオニンを含み、改善された安定性を示し、及びヒト血清アルブミンを含まない、頻回投与医薬組成物。
  6. 前記NESPが配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の組成物。
  7. 前記保存剤が、0%から2%(w/v)の濃度で存在するベンジルアルコールである、請求項5に記載の組成物。
  8. 5〜7のpH範囲を提供するpH緩衝剤をさらに含む、請求項57のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 0.001%〜0.1%(w/v)の濃度で存在する、安定化する量のソルビタンモノ-9-オクタデセノエートポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)誘導体をさらに含む、請求項58のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 新規の赤血球産生刺激タンパク質(NESP)を含む医薬組成物を安定化する方法であって、0.5mM〜50mMの濃度のメチオニンを該組成物に加えることを含み、該組成物がヒト血清アルブミンを含まない、上記方法。
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