JP4467634B2 - 有機電子写真感光体 - Google Patents

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Description

本発明は、有機電子写真感光体、特定の製法法で得られたトリフェニルアミンダイマー又はトリアリールアミンダイマーを用いる有機電子写真感光体に関する。
電子写真感光体は、画像に対応したビーム光を照射された場合に、受けた表面部分に電荷でなる潜像を形成する部材である。有機電子写真感光体は導電性支持体上に有機光導電性材料を備える。有機光導電性材料は光導電性化合物を有機樹脂で結着させて形成したものである。
一般に有機感光体は、光照射により電荷を発生するフタロシアニン系等の電荷発生材料を含有する電荷発生層と電荷を感光体表面部に移送する電荷輸送材料を含有する電荷輸送層とを備える。
有機電子写真感光体に用いられる電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ヒドラジン誘導体、トリアジン誘導体、キナゾリン誘導体、スチリル系化合物、スチリルトリフェニルアミン系化合物、ブタジエン系化合物、カルバゾール系化合物などが知られている。あるいは最近報告されたベンゾフラン系化合物(特開平9−179319号公報)などがある。
トリアリールアミンダイマーは、電子写真材料や有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料等に使用されている。とりわけ複写機やプリンター等の電子写真用有機感光体の電荷輸送材料(CTM)、あるいはEL素子中の正孔輸送材料(HTM)として広く適用されている。
従来、トリアリールアミンダイマーのような分子内に2つの芳香族三級アミンを有し、ビフェニレン基を含む芳香族三級アミン化合物は、ベンジジンを出発原料として製造されてきた。しかしながら、ベンジジンは発癌性物質であり、この方法は現在行われていない(米国特許第3,484,467号、及び特開平6−321872号)。
ベンジジンを出発原料としないトリアリールアミンダイマーの製造方法の例は、特開平10−17531号公報に記載されている。本公報実施例13以下には、トリフェニルアミンのヨウ素化物とトリフェニルアミンのヒドロキシホウ素化物とをパラジウム触媒の存在下にカップリングさせてトリフェニルアミンダイマーを製造する方法が記載されている。しかし、この方法には高価なパラジウム触媒の必要性と反応後の触媒の分離回収に難点がある。
他方、一般的な芳香族三級アミン系化合物の合成法としては、ウルマン反応を応用した方法が報告されている。例えば、Synthesis、1987年、383〜384頁には、以下のスキームの反応によるトリフェニルアミンの製造方法が記載されている。
Figure 0004467634
この反応では、触媒として金属銅、塩基として炭酸カリウム、反応促進剤としてクラウンエーテル(18−クラウン−6−エーテル)、そして反応溶媒としてo−ジクロロベンゼンを用いている。
EP0802173A1には、芳香族ハロゲン化物と芳香族二級アミンとを、触媒としてパラジウムtert−ホスフィン(例えば、P(o-tolyl)3Pd)、及び強塩基としてtert−BuONaの存在下で反応させて芳香族三級アミンを合成する方法が記載されている。
また、J. Org. Chem.、Vol. 54、No. 6、1989年、1476〜1479頁には、芳香族ハロゲン化物と芳香族二級アミンとを、触媒として金属銅、塩基としてアルカリ金属水酸化物、反応促進剤及び反応溶媒としてポリエチレングリコール(PEG)やポリエチレングリコールジアルキルエーテル(PEGDM)の存在下で反応させて芳香族三級アミンを合成する方法が記載されている。
これらのウルマン反応についての先行技術文献では種々の芳香族三級アミン化合物が合成されているが、トリアリールアミンダイマーを合成した例はいずれにも記載されていない。
更に、反応促進剤としてクラウンエーテルを用いる方法では、クラウンエーテルは高価であり、これを用いる方法は工業的規模で行うにはコストがかかりすぎる。また、触媒としてパラジウムtert−ホスフィンを用いる方法には、高価なパラジウム触媒の必要性と反応後の触媒の分離回収に難点がある。そして、反応促進剤及び反応溶媒としてPEGやPEGDMを用いる方法では、生成物の収率が40%と、工業的規模で行うには低すぎるという問題がある。
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、高価な薬品を使用せず、簡便で反応収率が高く、工業的規模で行うのに有利なトリアリールアミンダイマー(I)の製造方法を提供することにある。
本発明は、式
Figure 0004467634
[式中、Xはハロゲン原子であり、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、およびイソプロピル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、およびイソプロポキシ基のようなアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、Arはフェニレン基またはナフチレン基(好ましくはα−ナフチレン基)である。]
で示されるウルマン反応を用いてトリアリールアミンダイマー(I)を製造する方法において、上記反応促進剤としてポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールのジ−又はモノ−アルキルエーテルを用いることを特徴とする製造方法を提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明の方法は、4,4’−ジハロビフェニルとジアリールアミン類とを、塩基、銅触媒及び反応促進剤としてポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールのジ−又はモノ−アルキルエーテルの存在下でN−アリール化反応させる工程を包含することが好ましい。
本発明の方法によれば、高価な薬品を使用せず、簡便で反応収率が高く、工業的規模で行うのに有利なトリアリールアミンダイマー(例えば、TPD又はα−NPD)の製造方法が提供される。本発明の方法で得られたTPD又はα−NPDは、有機感光体の電荷輸送材料として使用した場合には、フタロシアニン系等の電荷発生材料と組合せて使用することによりOPC特性が良好な電子写真用有機感光体が提供できる。また、有機EL素子の正孔輸送材料として使用した場合には、発光輝度及び発光効率が良好である。
ウルマン反応を応用した本発明のトリアリールアミンダイマー(I)を製造する方法は、反応促進剤(相間移動触媒)としてポリエチレングリコール類(以下、本明細書においては、これらを総称してPEGと略す。)、またはポリエチレングリコールのジ−又はモノ−アルキルエーテル類(以下、本明細書においては、これらを総称してPEGMと略す。)を用いることを特徴としている。以下に詳細に説明する。
まず、下記式(3)で示される4,4’−ジハロビフェニルを得る。
Figure 0004467634
[式中、Xは上記と同意義である。]
好ましい4,4’−ジハロビフェニルは、反応性の観点から4,4’−ジブロモビフェニル、4,4’−ジヨードビフェニルである。4,4’−ジヨードビフェニルが特に好ましい。これらは合成してもよいし、市販のもの用いてもよい。
次いで、ジアリールアミン類を得る。ジアリールアミン類としては、下記式(1)
Figure 0004467634
[式中、R1、R2、及びArは上記と同意義である。]
で表される芳香族二級アミンを用いることができる。好ましくは、下記式(2−1)、または(2−2)で示される芳香族二級アミンである。
Figure 0004467634
これらは合成してもよいし、市販のもの用いてもよい。
次いで、4,4’−ジハロビフェニルとジアリールアミン類とを、塩基、銅触媒及び反応促進剤の存在下でN−アリール化反応させる。
塩基としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;トリエチルアミンやトリイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;tert−BuONaやtert−BuOK等の金属アルコキシド;等が例示できる。製造コスト(収率や原料コスト)の観点から、炭酸カリウムが特に好ましい。銅触媒としては、金属銅(Cu(0))を使用する。塩基及び銅触媒の量は、従来のウルマン反応と同様としてよい。
反応促進剤もしくは相間移動触媒としては、PEGまたはPEGMを使用する。好ましくは、下記(i)〜(iii)の式で示される化合物からなる群から選択されるPEGまたはPEGMを用いる。
HO(CH2CH2O)a−H (i)
[式中、aは2以上の整数である。]
で示されるPEG。例えば、aが2〜4のジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられる。具体的には和光純薬社製のPEG−6000(商品名)が使用できる。
3O(CH2CH2O)b−R4 (ii)
[式中、R3及びR4は同じであっても異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、bは、2以上の整数である。]
で示されるPEGM。例えば、bが2〜4のジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、ポリグライム及びそれらの混合物、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。具体的には東邦化学社製のPMP400(商品名)が使用できる。
3O(CH2CH2O)c−H (iii)
[式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基であり、cは2以上の整数である。]
で示されるPEGM。例えば、cが2〜4のジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、及びポリエチレングリコールモノエーテルの混合物等が挙げられる。
反応促進剤の使用量は、4,4’−ジハロビフェニル1.0gに対して1/10〜10倍量、好ましくは1/10〜1/5倍量である。
N−アリール化反応は、反応促進剤であるPEGやPEGMを反応溶媒として用いて行っても良いし、他に適当な反応溶媒を用いて行ってもよい。反応方法は、一般には適当な容器に、反応溶媒、4,4’−ジハロビフェニル、ジアリールアミン、塩基(好ましくは炭酸カリウム)、銅触媒、及び反応促進剤を入れ、100〜250℃に保ったまま5〜40時間撹拌する。
反応溶媒としては、キシレン、o-ジクロロベンゼン、キノリンα又はβ−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、及びニトロベンゼン等の(高沸点)芳香族溶剤;N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルフォルムアミド(DMF)、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン等のアミド系溶剤;等使用できる。 o-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の高沸点芳香族溶剤が好ましい。
反応の進行は、クロマトグラフィーのような通常の方法で追跡することができる。反応終了後、溶媒を留去し、生成物はクロマトグラフィー法のような通常の方法で単離精製する。生成物の構造は、元素分析、MS(FD−MS)分析、IR分析、1H−NMR及び13C−NMRにより同定することができる。
次に、本発明の一実施態様を示す。
4,4’−ジハロビフェニル(例えば、4,4’−ジヨードビフェニル1.0g)に反応溶媒(例えば、o-ジクロロベンゼン20ml)を加え、さらにジフェニルアミン類(例えば、m−メチルジフェニルアミン1.08g)、塩基(例えば、炭酸カリウム2.73g)、銅触媒(銅粉末0.635g)、及び反応促進剤としてのPEG(例えば、PEG−6000(商品名)0.104g)を加えて、反応が完了するまで(約15〜24時間)、攪拌下還流する。反応終了後、熱時濾過して、生成物をジクロロメタン等の溶剤を用いて洗浄し、溶剤を減圧留去する。残留物をシリカクロマトグラフィーにより精製することによりトリフェニルアミンダイマー(例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニル[TPD])を得る。
ジアリールアミン類(例えば、N−フェニル−1−ナフチルアミン32.4g)に、4,4’−ジハロビフェニル(例えば、4,4’−ジヨードビフェニル25.1g)、反応促進剤としてのPEG(例えば、PEG−6000(商品名)2.14g)、塩基(例えば、炭酸カリウム17.1g)、及び銅触媒(銅粉末15.7g)を加え、200℃に加熱する。この温度で反応が完了するまで(約15〜24時間)攪拌する。反応終了後、DMFと水を加えて分散し、濾過、水洗する。得られた結晶をシリカクロマトグラフィーにより精製することによりトリアリールアミンダイマー(例えば、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル− 4,4’−ジアミノビフェニル[α−NPD])を得る。
以上のような反応試薬(薬品、溶剤)を用いて本発明の方法で反応することによりトリアリールアミンダイマー(例えば、TPDまたはα−NPD)を高収率で得ることができる。
本発明の方法で製造されたTPDや芳香族三級アミン誘導体は、有機電子写真感光体の電荷輸送材料や有機エレクトロルミネッセンス(EL)現象を利用する有機薄膜EL素子に用いる正孔輸送材料として有用である。EL素子に応用した例としては、アブライド・フィジックス・レター第57巻第6号531頁(1990年)、特開平5−234681号公報(有機エレクトロルミネッセンス媒体を有するエレクトロルミネッセンス装置)、特開平10−218884号公報(フェナザシリン化合物及びそれを用いた有機薄膜EL素子)等がある。
特に、本発明の方法で製造されたトリアリールアミンダイマー、例えば、TPDやα−NPDは純度が高く、感光特性が安定している。従って、本発明の方法で製造されたTPD又はα−NPDを含んでなる有機電子写真感光体用電荷輸送材は有用である。また、この電荷輸送材を含む有機電子写真感光体も有用である。次に、本発明の方法で得られたトリアリールアミンダイマーの有機感光体への使用例について説明する。
TPD及びα−NPDのようなトリアリールアミンダイマーは、電子写真技術を応用した複写機などに広く適用されている電子写真用有機感光体の電荷輸送材料(CTM)として有用である。また、本発明のトリアリールアミンダイマーは、チタニルフタロシアニンやμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体またはμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等のフタロシアニン系電荷発生材料(CGM)と組合せて、有機感光体の電荷輸送層に使用された場合に、帯電性が良好で、中又は高感度、高耐久性(感度耐久性、電位耐久性)の感光体を提供する。
フタロシアニンのような有機光導電性顔料の少なくとも1種及び樹脂を備えてなる電子写真有機感光体は、感光層が電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)とに分離した積層型のものであってもよく、単層型のものであってもよい。しかし、フタロシアニン系電荷発生剤の結晶変態の電気特性及び光感光特性を有効に発揮させるためには、発生した電荷が捕獲される可能性が小さく、各層がそれぞれの機能を阻害することなく効率よく感光体表面に輸送される二層構造の機能分離型感光体に適用することが好ましい。
このような機能分離型感光体は、例えば、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とを薄膜状に積層して形成される。導電性支持体の基材としては、アルミニウム、ニッケル等の金属、金属蒸着フィルム等用いることができ、ドラム状、シート状又はベルト状の形態で作製される。
トリアリールアミンダイマーの電子写真用有機感光体への適用は、まず光導電性フタロシアニン系顔料を電荷発生材料(CG材)として含む電荷発生層を導電性支持体上に薄膜状に形成する。この際の電荷発生層は、フタロシアニン系顔料を導電性支持体上に蒸着させ薄膜を形成することもできるが、一般には、結着樹脂を溶媒に溶解した溶液に電荷発生材料を分散させた塗布液を調製して、それを支持体上に塗布することによって形成する。
フタロシアニン顔料(CGM)を分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー等用いる通常の分散法を採用することができる。
電荷発生層の塗工手段としては、特に限定されることはなく、例えば、バーコーター、ディップコーター、スピンコーター、ローラーコーター等を適宜使用することができる。乾燥は、30〜200℃の温度で5分〜2時間、静止又は送風下で行うことができる。
塗布液用の溶媒としては、フタロシアニン顔料を溶解することなく、均一に分散させ、必要に応じて用いられる結着樹脂を溶解するものであれば特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、テトラリンのような芳香族溶媒;ジクロルメタン、クロロホルム、トリクロルエチレン、四塩化炭素のようなハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピルのようなエステル系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
結着樹脂は、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。好ましい樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリレート等の縮合系樹脂;ポリスチレン、ポリアクリレート、スチレン-アクリル共重合体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の付加重合体;ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン等の有機光導電性樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらは適宜混合して用いることができる。
上記結着樹脂の使用量は、電荷発生材料に対して、0.1〜3重量比であり、3重量比よりも大であると、電荷発生層における電荷発生材料濃度が小さくなり光感度が悪くなる。電荷発生層の膜厚は、0.05〜5.0μmであり、一般に10μm以下である。
次に電荷発生層の上部に、電荷輸送材料を含む電荷輸送層を薄膜状に形成する。この薄膜形成法としては、電荷発生層と同様な塗工法が用いられ、電荷輸送材料を、必要に応じて結着樹脂と共に溶媒に溶解し、電荷発生層の上部に均一に塗布し、その後乾燥させればよい。
電荷輸送材料(CTM)としては、本発明の方法で得られたトリアリールアミンダイマー(例えば、TPD又はα−NPD)を使用する。
電荷輸送層を形成する結着樹脂及び溶媒としては、前記電荷発生層に使用されるものと同様なものが使用できる。
上記結着樹脂の使用量は、電荷輸送材料に対して、0.1〜5重量比であり、5重量比よりも大であると、電荷輸送層における電荷輸送材料濃度が小さくなり光感度が悪くなる。電荷輸送層の膜厚は、5〜50μmであり、一般に100μm以下である。
なお、上記電荷発生層、電荷輸送層、或いは表面保護層には、従来公知の増感剤;アミン系、フェノール系の酸化防止剤、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤などの劣化防止剤;等の種々の添加剤を含有させることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニルの合成
撹拌器、ダ(蛇)管冷却器などの必要器具を備えた100mlのガラス製4口フラスコに、4,4’−ジヨードビフェニル1.0g(2.46mmol)とo-ジクロロベンゼン20mlを加え、さらにm−メチルジフェニルアミン1.08g(5.90mmol)、反応促進剤としてのポリエチレングリコール(和光純薬社製のPEG−6000(商品名))0.104g、炭酸カリウム2.73g(0.0198mol)、及び銅(粉末)0.635g(9.87mmol)を加えて攪拌下、還流した。高速液体クロマトグラフィーにより反応を追跡し原料及び中間体のピークがなくなるまで攪拌下還流した(22時間)。熱時濾過後、生成物をジクロロメタンで濾液の色が薄くなるまで洗浄し、溶剤(媒)を減圧留去した。残留物をシリカクロマトグラフィーにより精製することにより、式
Figure 0004467634
で示されるN,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニル1.01g(収率78.7%)を得た。
元素分析結果を表1に、IR分析結果を図1に、1H−NMRスペクトルを図2に、13C−NMRスペクトルを図3に、FD−MSスペクトルを図4にそれぞれ示す。
Figure 0004467634
なお、FD-MS(電界脱離イオン化法による質量分析)の測定は、下記の条件で行った。
(1)測定法
Figure 0004467634
(2)測定結果:図4
図中、横軸はM/Z[質量/電荷]、縦軸はRelative Abundance[存在比]を示す。M/Z=516(100)[M+H]+に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニル[C38322]のイオンピークが確認される。
実施例2
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニルの合成
m−メチルジフェニルアミン10.8g(59.0mmol)、4,4’−ジヨードビフェニル10.0g(24.6mmol)に、ポリエチレングリコール(和光純薬社製のPEG−6000(商品名))1.04g、炭酸カリウム27.3g(0.198mol)、及び銅(粉末)6.35g(98.7mmol)を加えて205℃に加熱した。高速液体クロマトグラフィーにより反応を追跡し原料及び中間体のピークがなくなるまで加熱した(9時間)。これに25%アンモニア水270mlを加え、80〜90℃に15分間加熱した。熱時濾過し、少量の25%アンモニア水、水道水で洗浄した。得られた結晶をシリカクロマトグラフィーにより精製することによりN,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニル9.43g(収率73.6%)を得た。
元素分析結果、IR分析結果、1H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、及びFD−MSスペクトルは、実施例1と同じであった。
実施例3
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニルの合成
4,4’−ジヨードビフェニル1.0g(2.46mmol)にo−ジクロロベンゼン20mlを加え、さらにm−メチルジフェニルアミン1.08g(5.90mmol)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(東邦化学社製のPMP−400(商品名))0.104g、炭酸カリウム2.73g(0.0198mol)、及び銅(粉末)0.635g(9.87mmol)を加えて攪拌下、還流した。高速液体クロマトグラフィーにより反応を追跡し原料及び中間体のピークがなくなるまで攪拌下還流した(30時間)。熱時濾過後、生成物をジクロロメタンで濾液の色が薄くなるまで洗浄し、溶剤(媒)を減圧留去した。残留物をシリカクロマトグラフィーにより精製することによりN,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニル0.865g(収率67.8%)を得た。
元素分析結果、IR分析結果、1H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、及びFD−MSスペクトルは、実施例1と同じであった。
実施例4
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニルの合成
4,4’−ジヨードビフェニル1.0g(2.46mmol)にo−ジクロロベンゼン20mlを加え、さらにm−メチルジフェニルアミン1.08g(5.90mmol)、ポリエチレングリコール(和光純薬社製のPEG−6000(商品名))0.104g、水酸化カリウム1.11g(0.0198mol)、及び銅(粉末)0.635g(9.87mmol)を加えて攪拌下、還流した。高速液体クロマトグラフィーにより反応を追跡し原料及び中間体のピークがなくなるまで攪拌下還流した(66時間)。熱時濾過後、生成物をジクロロメタンで濾液の色が薄くなるまで洗浄し、溶剤(媒)を減圧留去した。残留物をシリカクロマトグラフィーにより精製することによりN,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニル0.416g(収率32.5%)を得た。
元素分析結果、IR分析結果、1H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、及びFD−MSスペクトルは、実施例1と同じであった。
実施例5
N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル− 4,4’−ジアミノビフェニル(α−NPD)の合成
N−フェニル−1−ナフチルアミン32.4g(148mmol)に、4,4’−ジヨードビフェニル25.1g(61.5mmol)、PEG−6000(2.14g)、炭酸カリウム17.1g(0.124mol)、及び銅(粉末)15.7g(247mmol)を加えて200℃に加熱した。高速液体クロマトグラフィーにより反応を追跡し、原料及び中間体のピークが無くなるまで加熱した(12時間)。これにDMFと水を加え分散し、濾過、水洗を行った。得られた結晶をシリカクロマトグラフィーにより精製することにより、式
Figure 0004467634
で示されるN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル− 4,4’−ジアミノビフェニル20.2g(収率55.9%)を得た。
IR分析結果を図5に、1H−NMRスペクトルを図6に、13C−NMRスペクトルを図7に、FD−MSスペクトルを図8にそれぞれ示す。
比較例1
4,4’−ジヨードビフェニル1.01g(2.47mmol)にo-ジクロロベンゼン20mlを加え、さらにm−メチルジフェニルアミン0.95g(5.20mmol)、18−クラウン−6−エーテル0.141g(0.493mmol)、炭酸カリウム2.73g(0.0197mol)、及び銅(粉末)0.625g(9.85mmol)を加えて攪拌下、還流した。高速液体クロマトグラフィーにより反応を追跡し原料及び中間体のピークがなくなるまで攪拌下還流した(19時間)。熱時濾過後、生成物を10mlのクロロホルムで洗浄し、溶剤(媒)を減圧留去した。残留物をシリカクロマトグラフィーにより精製することによりN,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニル0.871g(収率32.8%)を得た。
比較例2
4,4’−ジヨードビフェニル1.00g(2.46mmol)をキシレン44.0mlに溶解し、さらにm−メチルジフェニルアミン0.947g(5.17mmol)、ジベンジリデンアセトン二パラジウム22.5mg(0.0246mmol)、トリ−o-トリルホスフィン30.0mg(0.098mmol)、及びナトリウム tert-ブトキシド1.32g(0.0314mol)を加えて攪拌下、還流した。高速液体クロマトグラフィーにより反応を追跡し原料及び中間体のピークがなくなるまで攪拌下還流した(10時間)。セライトを用いて濾過し、生成物を10mlのジクロロメタンで濾液の色が薄くなるまで洗浄後、溶剤(媒)を減圧留去した。残留物をシリカクロマトグラフィーにより精製することによりN,N’−ジフェニル−N,N’−ジトリル−4,4’−ジアミノビフェニル0.622g(収率48.9%)を得た。
実施例6
特公平3−35064号公報に提案されているY型チタニルフタロシアニン0.20gとポリビニルブチラール樹脂[積水化学社製のエレックスBH-3]0.20g、及びシクロヘキサノン59.6gを、3mmφガラスビーズ50gと共にマヨネーズ瓶(140ml)に入れ、ペイントシェーカーで1時間撹拌後、これをアセトンでよく洗浄したアルミニウム板上にバーコーターを用いて膜厚が0.5μmになるよう電荷発生層(CGL)を形成した。次にこの上に、実施例1で合成したトリフェニルアミンダイマー(TPD)4.5g、ポリカーボネート樹脂[帝人社製のパンライトL−1250]4.5g及びジクロロメタン51.0gを混合し、超音波分散により均一の溶液とした後、バーコーターを用いて電荷発生層の上に、膜厚が60μmになるように電荷輸送層(CTL)を形成し、これを一晩乾燥して、試験用感光体(片)を作製した。
実施例7
実施例6で使用したY型チタニルフタロシアニンを、特開平9−217020号公報に提案されているII型μ−オキソ−アルミニウムフタロシアニンダイマー(μ−オキソ−AlPcダイマー)に代えた以外は、全く実施例6と同じ処方により試験用感光体(片)を作製した。
実施例8
実施例6で使用したY型チタニルフタロシアニンを、特開平10−88023号公報に提案されているG型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー(μ−オキソ−GaPcダイマー)に代えた以外は、全く実施例6と同じ処方により試験用感光体(片)を作製した。
実施例9
特公平3−35064号公報に提案されているY型チタニルフタロシアニン0.20gと、ポリビニルブチラール樹脂[積水化学社製のエレックスBH−3]0.20g、及びシクロヘキサノン59.6gを、3mmφガラスビーズ50gと共にマヨネーズ瓶(140ml)に入れ、ペイントシェーカーで1時間攪拌後、これをアセトンでよく洗浄したアルミニウム板上にバーコーターを用いて膜厚が0.5μmになるよう電荷発生層(CGL)を形成した。次にこの上に、実施例5で合成したトリアリールアミンダイマー(α−NPD)4.5g、ポリカーボネート樹脂[帝人社製のパンライトL−1250]4.5g及びクロロホルム51.0gを混合し、超音波分散により均一の溶液とした後、バーコーターを用いて電荷発生層の上に、膜厚が60μmになるように電荷輸送層(CTL)を形成し、これを一晩乾燥して、試験用感光体(片)を作製した。
実施例10
実施例9で使用したY型チタニルフタロシアニンを、特開平10−88023号公報に提案されているG型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー(μ−オキソ−GaPcダイマー)に代えた以外は、全く実施例9と同じ処方により試験用感光体(片)を作製した。
比較例3
実施例6で使用したトリフェニルアミンダイマー(実施例1合成品)を、式
Figure 0004467634
で示される高砂香料社製のブタジエン系電荷輸送剤(化学名:1,1−ビス(p-エチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエン、商品名:T405)に代えた以外は、全く実施例6と同じ処方により試験用感光体(片)を作製した。
感光体特性評価
上記実施例6〜10及び比較例3において作成した試験用感光体片につき、一次感光特性(OPC特性)の測定を行った。測定は、静電気帯電試験装置ペーパーアナライザーEPA−8200[川口電気社製]を用い、まず、−8.0kVでSTAT3モードで帯電し、2.0秒間暗所放置後、5.0lx.の白色光を10.0秒間照射して、帯電電位(Vmax)、暗減衰率(%)、残留電位(Vre)、半減露光量(感度)(E1/2)について測定し評価した。以上の測定結果を表3にまとめた。
Figure 0004467634
暗減衰率の測定は、帯電直後の表面電位(V0=Vmax)及び2.0秒間放置後の表面電位(V2)を測定し、次の式より暗減衰率(%)を求めた。
暗減衰率(%)=100×(V0−V2)/V0
分光感度の測定に関しては、バンドパス干渉フィルターを用いて450〜900nmの間において50nm(及び25nm)間隔で照射光の波長を変化させること以外は上述の感光体特性評価と同様にして、電子写真感光体片を帯電させた。露光エネルギーは1.00μWとした。それぞれの波長における初期帯電量(Vmax[V])及び半減露光感度(E1/2[μJ/cm2])を測定した。結果は良好であった。
また、耐久性試験については、静電気帯電試験装置EPA−8200を耐久性測定モードとし、感光体特性評価と同様の条件で、電子写真感光体片を帯電させた。耐久性測定モードでは、帯電する操作を約100回繰り返した。そして、それに伴う帯電電位(Vmax)、半減露光量感度(E1/2)の変化を測定した。結果は良好であった。
実施例11
この実施例では、実施例1で得られたTPDを正孔輸送材料(HTM)として使用した有機薄膜EL素子の例について説明する。
洗浄したITO電極付きガラス板上に、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体(発光材料)、実施例1で得られたTPD、ポリカーボネート樹脂[帝人社製のパンライトL−1250]を3:2:5の比率でクロロホルムに溶解分散させ、スピンコーティング法により膜厚100nmの発光層を得た。その上にマグネシウムと銀を10:1で混合した合金で、膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。この素子に直流電源を接続したところ、5V以上の直流電圧により緑色に発光した。
本発明のTPDを積層型EL素子(例えば、陽極/正孔注入層/発光層/陰極)に適用した場合にもついても、発光輝度(cd/m2)及び発光効率(lm/w)は良好であった。
実施例12
この実施例では、実施例5で得られたα−NPDを正孔輸送材料(HTM)として使用した有機薄膜EL素子の例について説明する。
洗浄したITO電極付きガラス板上に、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体(発光材料)、実施例5で得られたα−NPD、ポリカーボネート樹脂[帝人社製のパンライトL−1250]を3:2:5の比率でクロロホルムに溶解分散させ、スピンコーティング法により膜厚100nmの発光層を得た。その上にマグネシウムと銀を10:1で混合した合金で、膜厚150nmの電極を形成して有機EL素子を得た。この素子に直流電源を接続したところ、5V以上の直流電圧により緑色に発光した。
本発明のα−NPDを積層型EL素子(例えば、陽極/正孔注入層/発光層/陰極)に適用した場合についても、発光輝度(cd/m2)及び発光効率(1m/w)は良好であった。
実施例1で得られたトリフェニルアミンダイマー(TPD)のIRスペクトルである。 実施例1で得られたトリフェニルアミンダイマー(TPD)の1H−NMRスペクトルである。 実施例1で得られたトリフェニルアミンダイマー(TPD)の13C−NMRスペクトルである。 実施例1で得られたトリフェニルアミンダイマー(TPD)のFD−MSスペクトルである。 実施例5で得られたトリアリールアミンダイマー(α−NPD)のIRスペクトルである。 施例5で得られたトリアリールアミンダイマー(α−NPD)の1H−NMRスペクトルである。 実施例5で得られたトリアリールアミンダイマー(α−NPD)の13C−NMRスペクトルである。 実施例5で得られたトリアリールアミンダイマー(α−NPD)のFD−MSスペクトルである。

Claims (7)

  1. 電荷発生材としてチタニルフタロシアニン、μ−オキソ−アルミニウムフタロシアニンダイマーまたはμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを含み、電荷輸送材としてトリアリールアミンダイマーを含む有機電子写真感光体であって、
    該トリアリールアミンダイマーが、反応促進剤としてポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールのジ−又はモノ−アルキルエーテルを用いた、式
    Figure 0004467634
    [式中、Xはハロゲン原子であり、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、Arはフェニレン基またはナフチレン基である。]
    で示されるウルマン反応により製造されるトリアリールアミンダイマー(I)であることを特徴とする有機電子写真感光体。
  2. 前記Xがヨウ素原子である請求項記載の有機電子写真感光体。
  3. 前記R1がメチル基であり、R2が水素原子であり、Arがフェニレン基である請求項記載の有機電子写真感光体。
  4. 前記R1およびR2が水素原子であり、Arがα−ナフチレン基である請求項記載の有機電子写真感光体。
  5. 前記チタニルフタロシアニンが、Y型チタニルフタロシアニンである請求項1記載の有機電子写真感光体。
  6. 4,4’−ジハロビフェニルとジアリールアミン類とを、塩基、銅触媒及び反応促進剤としてポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールのジ−又はモノ−アルキルエーテルの存在下でN−アリール化反応させる工程を包含し、前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、トリアルキルアミンまたは金属アルコキシドである請求項1記載の有機電子写真感光体。
  7. 前記反応促進剤が、下記(i)〜(iii)の式で示される化合物からなる群から選択される請求項3記載の有機電子写真感光体:
    HO(CH2CH2O)a−H (i)
    [式中、aは2以上の整数である。]
    で示されるポリエチレングリコール;
    3O(CH2CH2O)b−R4 (ii)
    [式中、R3及びR4は同じであっても異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、bは、2以上の整数である。]
    で示されるポリエチレングリコールジアルキルエーテル;
    3O(CH2CH2O)c−H (iii)
    [式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基であり、cは2以上の整数である。]
    で示されるポリエチレングリコールモノアルキルエーテル。
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