しかしながら、サファイアは屈折率異方性が比較的大きいことから、表示パネルにサファイア基板を貼り付けた場合に、偏光作用を利用する投射型表示装置においては、コントラストが低下し、視野角が変化するといった技術的問題点がある。
本発明は、例えば上記問題点に鑑みなされたものであり、表示品質の低下を防止しつつ、効率よく冷却することが可能な電気光学装置及びその製造方法、並びにそのような電気光学装置を具備した電子機器を提供することを課題とする。
本発明に係る電気光学装置は、基板と、前記基板と対向配置された対向基板と、前記基板と前記対向基板との間に狭持された電気光学物質と、前記対向基板の前記電気光学物質に対向する面と反対側に配置され、スピネル又はイットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet:YAG)を含んでなる第1の板部材と、前記基板の前記電気光学物質に対向する面と反対側に配置され、スピネル又はイットリウム・アルミニウム・ガーネットを含んでなる第2の板部材と、プレート部及びカバー部を有し、前記基板、前記対向基板、前記第1の板部材及び前記第2の板部材をそれぞれ収容する実装ケースと、を備え、前記第1の板部材は、表面が、前記カバー部の窓部の周辺領域と接触するように配置され、前記第2の板部材は、側面が、前記プレート部の前記カバー部の内側面に接するように形成された折り曲げ部の内面と接触するように配置されることを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る電子機器は、上記に記載の電気光学装置と、前記第1の板部材の前記対向基板に対向する面と反対側に配置され、スピネル又はイットリウム・アルミニウム・ガーネットからなる第3の板部材を備える偏光素子と、を有することを特徴とする。
本発明の第1電気光学装置によれば、一対の基板間の電気光学物質の状態変化が制御され、電気光学装置への投射光が変調される。即ち、一対の基板のうちの一方に投射光が入射されると共に、他方から変調光が射出される。ここで、一対の基板の少なくとも一方における、電気光学物質とは対向する面と反対側には板部材が配置されており、この板部材が所謂防塵用基板として機能することから、前述のような粉塵に起因する表示品質低下が有効に防止される。尚、本発明における「板部材」とは、光学的性質が考慮された、或いは光学的機能を有する板状部材を指し、例えばデフォーカス機能を有する防塵用基板、偏光板等であってよい。
この第1電気光学装置における板部材は、スピネル(MgAl2O4)を含んでなる。スピネルは、光学異方性がない又は非常に小さい。これは、スピネルの構造が等軸晶系であることに由来すると考えられる。但し、この板部材は、実質的にスピネルとしての物性を有する程度にスピネルを含んでいればよく、多少不純物が混在していてもよい。尚、このようなスピネルを含んでなる板部材は、例えば粉体焼結法により製造される。
ところで、投射光の基板に対する入射角は、通常、基板面内でばらついている。仮に、サファイア基板等の屈折率異方性が比較的大きな基板を板部材として用いる場合には、屈折率異方性が発現する方向に応じてコントラストが部分的に低下したり、視野角が変化したりすることがある。ここでいう「視野角の変化」とは、視野角の狭小化や明視方向の変化等を指す。そのため、サファイア基板等については、ユーザが希望する視野角等の仕様を満たすように位置を調整し、異方性が発現する方向を合わせこむ必要がある。
これに対し、スピネルを含む板部材では、屈折率異方性がない又は小さいために、そのような表示上の不都合を全て回避することができる。従って、電気光学装置における表示品質の低下を防止することが可能となる。また、この板部材については、サファイア基板等のような調整が全く不要であり、どのような仕様にも対応できる。
また、スピネルの熱伝導率は、石英ガラス等の約十倍と非常に大きいことから、この板部材は、効率よく基板から吸熱し、基板外へ放出することができる。言ってみれば、この板部材は、ヒートシンクとして機能するのである。従って、電気光学装置内部の冷却を効果的に行うことが可能である。
以上のように本発明の第1電気光学装置によれば、粉塵や光学部材の屈折率異方性等に起因する表示上の問題が解決され、高品質な表示が可能であると共に、駆動中に効率よく冷却することで電気光学物質等の劣化が防止され、安定的に動作することが可能である。
尚、本発明において「一対の基板のうちの少なくとも一方における、前記電気光学物質に対向する面と反対側」に板部材が配置されるというのは、該板部材を、電気光学装置の光入射側、光出射側及びその両側に配置する三つのパターンを含んでいる。
本発明の第2電気光学装置は上記課題を解決するために、電気光学物質が挟持された一対の基板と、該一対の基板の一方に設けられた画素と、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の前記電気光学物質に対向する面と反対側に配置され、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet:YAG)を含んでなる板部材とを備えたことを特徴とする。
本発明の第2電気光学装置によれば、まず、第1電気光学装置と同様に、板部材が防塵用基板として機能し、粉塵に起因する表示品質低下が有効に防止される。
この場合、板部材は、YAGを含んでなる。YAGは、光学異方性がない又は非常に小さい。これは、YAGの構造が等軸晶系であることに由来すると考えられる。但し、この板部材は、実質的にYAGとしての物性を有する程度にYAGを含んでいればよく、多少不純物が混在していてもよい。尚、このようなYAGを含んでなる板部材は、例えば粉体焼結法、スリップキャスト法により製造される。
このように、YAGを含む板部材は、屈折率異方性がない又は小さいために、上述のような、サファイア基板を用いた場合に起きる屈折率異方性に起因した表示上の問題を全て回避することができる。従って、電気光学装置における表示品質の低下を防止することが可能となる。
また、YAGの熱伝導率は、石英ガラス等の約十倍と非常に大きいことから、この光学板部材は、効率よく基板から吸熱し、基板外へ放出することができる。従って、電気光学装置内部の冷却を効果的に行うことが可能である。
以上のように本発明の第2電気光学装置によれば、粉塵や光学部材の屈折率異方性等に起因する表示上の問題が解決され、高品質な表示が可能であると共に、駆動中に効率よく冷却することで電気光学物質等の劣化が防止され、安定的に動作することが可能である。
本発明の第2電気光学装置の一態様では、前記板部材に含まれるイットリウム・アルミニウム・ガーネットの組成は、組成式Y3Al5O12を基本とする。
この態様によれば、板部材に含まれるYAGの基本組成が、組成式Y3Al5O12で規定されている。これはYAGの代表的な組成であるが、YAGには、その他にイットリウム(Y)、アルミニウム(Al)及び酸素の組成比が上記組成式とは異なるものも含まれている。尚、Y3Al5O12を基本組成とするというのは、多少の組成ずれや不純物による置換は許容されることを意味している。
このように、YAGの基本組成をY3Al5O12とすることにより、上述の板部材による作用及び効果を確実に得ることができる。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の一態様では、前記板部材は、多結晶材料から構成されている。
この態様によれば、第1電気光学装置のスピネルを含んでなる板部材、又は、第2電気光学装置のYAGを含んでなる光学板部材は、多結晶であるために、その光学異方性が発現する方向に対する指向性は、総体として弱まる。その結果、光学板部材全体の光学異方性が抑制される。
従って、本発明の電気光学装置において、板部材の屈折率異方性に起因してコントラストが部分的に低下したり、視野角が変化したりする事態を、より確実に防止することが可能となる。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の他の態様では、前記板部材は、粉体焼結体である。
この態様によれば、第1電気光学装置のスピネルを含んでなる板部材、又は、第2電気光学装置のYAGを含んでなる板部材は、粉体焼結によって製造されることから、極めて簡単に製造することが可能である。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の他の態様では、前記板部材は、前記一対の基板の一方における、前記電気光学物質に対向する面と反対側に配置され、前記一対の基板の他方における、前記電気光学物質に対向する面と反対側には、スピネル及びイットリウム・アルミニウム・ガーネットのいずれも含まない第2の板部材が配置されている。
この態様によれば、電気光学装置の両側には夫々材質の異なる板部材が配置されている。このうち、一方の基板には上述の板部材が配置されていることから、電気光学装置の冷却効果、及び表示品質維持効果をそれ相応に引き出すことが可能であると同時に、比較的高価なスピネル又はYAGをむやみに使用することを控えて、電気光学装置全体の低コスト化を図ることができる。
ちなみに、本態様のように、一つの電気光学装置の両側に相異なる板部材を配置する場合には、第2の板部材の熱伝導率等その他の特性にもよるが、本発明に係るスピネルないしYAGを含んでなる板部材は、電気光学装置の光入射側に配置される方が好ましい。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の他の態様では、前記一対の基板のうちの少なくとも一方における、前記電気光学物質に対向する面と反対側に、偏光素子が更に配置されている。
この態様によれば、電気光学物質に入射させる光、或いは該電気光学物質から出射した光を適当な偏光状態にすることが可能となる。この偏光素子は、電気光学装置の基板から見て、板部材よりも外側に配置されるのが通常である。言い換えると、偏光素子は、板部材を介して基板に配置される。
特に、こうした偏光素子に加えて、スピネル又はYAGを含んでなる板部材が配置されていることにより、次のような作用及び効果が得られる。即ち、電気光学装置に配置する板部材を、仮に水晶やサファイア等で構成する場合には、これらの屈折率異方性が、偏光素子を通過して偏光した光に影響する。
これに対し、本発明に係る板部材はスピネル又はYAGを含んでおり、これらの材料の屈折率異方性がない又は小さいことから、偏光をかけた場合にも、前述のようなコントラスト低下や視野角の変化は、殆ど或いは全く起きない。例えば、屈折異方性を有する板部材を用いる場合に必要となる該屈折異方性を有する板部材と偏光素子との偏光軸を合わせる等が、本発明では不要となり、実践上大変有利となる。従って、本態様によれば、比較的容易にして、より高品質な表示が可能となる。
この態様では、前記偏光素子にスピネル又はイットリウム・アルミニウム・ガーネットからなる第3の板部材が備えられているようにしてもよい。
このような構成によれば、偏光素子において発生する熱が、比較的熱伝導率の大きいスピネル又はYAGを含んでなる板部材に吸収されることにより、該偏光素子の冷却を好適に行うことができる。
尚、本態様に係る偏光素子に加えて、λ/4板、λ/2板、広視野角等の光学補償フィルム等の光学補償素子を更に備え、該光学補償素子にもスピネル又はYAGを含んでなる板部材を配置してもよい。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の他の態様では、前記板部材の少なくとも一面に、AR(Anti Reflection)ことを更に備えている。
この態様によれば、スピネルの屈折率は1.7程度、YAGの屈折率は1.8程度と比較的大きいことから、板部材に入射する光、或いは板部材から出射する光は、その界面において殆ど反射してしまうおそれがある。しかるに、本態様においては、板部材の少なくとも一方の面にAR膜が備えられていることにより、上記のような光の反射を未然に防止できる。従って、電気光学装置における透過光の利用効率を高めることができ、より明るい表示が可能となる。
尚、本態様にいう「AR膜」は、例えば、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等の多層膜からなる。具体的には、ジルコニアこととシリカこととなどの屈折率が相異なる膜を交互に積相させるとよい。このようなAR膜は、材料の選択、各層の厚さ、更には層数等を異ならせることにより、反射率等の光学特性を所望の値とすることができる。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の他の態様では、少なくとも前記一対の基板と前記板部材とが収容されており、複数の着脱可能な部分から構成された外装ケースを更に備えている。
この態様によれば、基本的には一対の基板とこれに対応して配置される板部材とが外装ケース内に収容されるが、更に、上述した偏光素子やそれに対応する板部材まで収容されていてもよい。但し、偏光素子等を更に備える場合には、一対の基板及びそれに対応して配置される板部材のみが外装ケース内に収容され、偏光素子及びそれに対応して配置される板部材は、外装ケースの外部に設置されるほうが一般的である。尚、外装ケースは、例えば、基板表面に対向配置されるプレートと、該プレート及び収容物を覆うように配置されるカバーのように、複数の着脱可能な部分から構成されている。
駆動中に基板等にて発生する熱は、板部材だけでなく、外装ケースまで伝導する。即ち、この場合の外装ケースは、ヒートシンクとして機能し、内部の熱を吸収してケース外部へと放出する。従って、電気光学装置における蓄熱を一層確実に防止することが可能となる。
尚、外装ケースは、ヒートシンクとしての機能をより効果的に実現するために、金属、更に好ましくはその熱伝導率が15W/m・K程度以上となる金属から構成するとよい。そのような金属としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、銅、或いはこれらの合金等を挙げることができる。また、外装ケースに板部材が接触するように構成すれば、両者間の熱伝導効率が上がり、一層効果的に電気光学装置を冷却することができる。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様を含む)を備える。
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気光学装置を具備してなるので、塵芥による表示品質の低下を防止すると共に、簡便な構成で効率よく電気光学パネルを冷却することが可能である。
なお、前記板部材の製造方法としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネットを含む粉体を溶媒と混合してスラリーを作製する工程と、該スラリーを型に流し固めることにより、前記板部材の前駆体を作製する工程と、前記板部材の前駆体を焼結し、前記板部材を生成する工程とを含む。
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、まず、YAGを含む粉体を用意し、例えば純水等の溶媒に混合してスラリーを作製する。そして、このスラリーを型枠に流し込んで固めることで、板状に成型された板部材の前駆体が得られる。この前駆体を焼結すれば、本発明の板部材が得られる。
このような部材の成型においては、粉体を型にはめて加圧成型する方法が一般的であるが、その場合には加圧時に割れたりすることが多い。これに対し、本発明の製造方法は、型枠に流し込む、所謂スリップキャスト法に基づき成型するために、成形品(即ち、前駆体)の損傷頻度が小さい。従って、板部材を簡便に製造することができ、電気光学装置の製造効率を向上させることが可能である。
また、板部材は、その用途から、本来的に光学異方性を持たない或いはできるだけ小さいことが望ましく、そのために結晶構造を制御することが考えられる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。
<投射型表示装置の実施形態>
まず、本発明の実施形態に係る投射型表示装置について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態の投射型表示装置の構成を示している。
図1において、投射型表示装置1100は、本発明の電気光学装置の一例たる液晶装置を、RGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bの夫々に適用した液晶カラープロジェクタとして構成されている。
投射型表示装置1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。この際、特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、10及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
ライトバルブ100R、100G及び100Bとしては、例えば、後述の如きTFTをスイッチング素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置が使用される。この液晶装置は、外装ケースに収容されている。
また、投射型表示装置1100には、ライトバルブ100R、100G及び100Bに冷却風を送るためのシロッコファン1300が設けられている。シロッコファン1300は、その側面に複数のブレード1301を備えた略円筒形状の部材を含んでおり、該円筒形状の部材がその軸を中心として回転することでブレード1301が風を生じさせるようになっている。このような原理から、シロッコファン1300で作り出される風は、図1に示されるように、らせん状に渦巻いたものとなる。このような風は、図1に図示されない風路を通じて各ライトバルブ100R、100G及び100Bに送給される。ちなみに、前述したようなシロッコファン1300を用いれば、静圧が高くライトバルブ100R、100G及び100Bの周囲の狭い空間にも風を送りやすいという利点が得られる。
以上説明した構成においては、駆動中に、強力な光源たるランプユニット1102からの投射光により各ライトバルブ100R、100G及び100Bで温度が上昇する。このとき、過度に温度が上昇してしまうと、各ライトバルブ100R、100G、100Bを構成する液晶が劣化したり、光源光のむらによる部分的な液晶パネルの加熱によるホットスポットの出現により透過率にムラが生じたりする。また、これら各ライトバルブ100R、100G及び100Bの表面には、その周囲に漂う粉塵が付着し得るが、その場合に該粉塵の像がスクリーン1120上に投影されてしまうという問題も生じる。
そこで、本実施形態では、各ライトバルブ100R、100G及び100Bが、後述の如き光学板部材と共に、外装ケースにより外装されている。
<液晶装置の第1実施形態>
次に、本実施形態に係る液晶装置について、図2及び図3を参照して説明する。即ち、本実施形態に係る液晶装置は、上述した投射型表示装置1100におけるライトバルブ100R、100G及び100Bとして使用されるものである。ここに、図2は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た液晶装置の平面図であり、図3は、図2のH−H’断面図である。尚、この液晶装置は、駆動回路内蔵型であり、例えばTFTアクティブマトリクス駆動方式が採用されている。
(液晶装置の構成)
図2及び図3において、液晶装置は、一対のTFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域(画素アレイ領域)10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなる。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光こと53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光こと53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光こととして設けられてもよい。
画像表示領域の周辺に広がる領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記額縁遮光こと53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記額縁遮光こと53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
また、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナーに対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図3において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、図示しない配向ことが形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光こと23、更には最上層部分に図示しない配向ことが形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向こと間で、所定の配向状態をとる。
尚、図2及び図3に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
(光学板部材の構成)
このような液晶装置では、更にTFTアレイ基板10における液晶層50に対向しない側(図3中、TFTアレイ基板10の下面側)に、光学板部材410が配置されている。また、対向基板20における液晶層50に対向しない側(図3中、対向基板20の上面側)には、光学板部材420が配置されている。
光学板部材410及び420は、多結晶のスピネル(MgAl2O4)を含んでなる。即ち、光学板部材410及び420は、実質的にスピネルとしての物性を有する程度にスピネルを含んでいればよく、多少不純物が混在していてもよい。尚、本発明の光学板部材では、スピネルの構造は特に限定しておらず、例えば単結晶やバルクであってもよいし、可能であれば非晶質であってもよい。このようなスピネルを含んでなる光学板部材410及び420は、例えば粉体焼結法により成形することができる。
ここで、光学板部材410及び420は、スピネルを含むことで、スピネルに起因する以下のような特徴を有している。
第1に、スピネルは透光性が高い。そのため、光学板部材の透過光が着色したり、減衰したりするおそれが殆どない。例えば、光学板部材410及び420は、両面にAR膜が設けられているが、その状態で波長450〜780nmの可視光域における透過率が90%以上になる。
第2に、スピネルは熱伝導率が高い。スピネルの熱伝導率(16.9W/m・K)は、通常用いられる石英ガラスの熱伝導率(1.2W/m・K)に比べて十倍以上にもなる。
第3に、スピネルは、光学異方性、より具体的には屈折率異方性がない又は非常に小さい。これは、スピネルが等方晶系の構造をもつためと考えられるが、多結晶としたことによるとも考えられる。ちなみに、スピネル同様、石英ガラス等よりも熱伝導性が高い材料として、サファイアが知られているが、その屈折率異方性は比較的大きい。
このように、光学板部材410及び420は、光学板部材に要求される特性を総合的に備えている。従って、以下に説明するように、高品位な表示が可能であると共に、駆動中に液晶装置を効率よく冷却することが可能である。
尚、光学板部材410の両面には、AR膜503及び504が付設されており、光学板部材420の両面には、AR膜501及び502が付設されている。これらAR膜501から504は、例えばジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等の単層膜、或いは多層膜からなる。これにより、例えば、空気層(図3中上方)から対向基板20内(図3中下方)という異なる屈折率を有する部材間において、無用な反射による損失を避けることが可能となり、当該部材間にわたって効率的に導光することが可能となる。特に、本実施形態においては、光学板部材410及び420は、屈折率が1.7以上と比較的大きなスピネルを含んでなることから、AR膜501から504が付設されることで、それらの界面における光反射が防止されることは、投影像の明るさ維持等にとって非常に有効である。
ところで、各AR膜501から504の構造は、夫々相異なるようにするのが好ましい。というのも、各AR膜501から504においては、夫々、生じ得る光反射の態様が異なり得るからである。即ち、AR膜501については、空気層から光学板部材420への光の進入に際する反射を、AR膜502については、光学板部材420から石英ガラス等からなる対向基板20への光の進入に際する反射を夫々防止する必要がある。他方、AR膜503については、石英ガラス等からなるTFTアレイ基板10から光学板部材410への光の進入に際する反射を、AR膜504については、光学板部材410から空気層への光の進入に際する反射を夫々防止する必要がある。
従って、この場合には、AR膜501から504の各層の厚さを変更したり、該各AR膜の積層数を変化させたりする他、材料それ自体を変化させるなどして、各AR膜501乃至504間の構造に差異をもたせるのが好ましい。このようにすることで、前記のように異なった反射態様に好適に対応することができる。
(液晶装置の作用)
次に、このような液晶装置の動作を、光学板部材410及び420の作用に着目しつつ説明する。
投射型表示装置の動作時には、液晶装置に対し、図3の上側から強力な投射光が照射される。投射光は、光学板部材420側から液晶装置に入射し、液晶層50において変調された光が、光学板部材410側から射出される。ここでは、光学板部材410及び420の光透過性は良好なため、射出光が着色したり、減衰したりするおそれが殆どない。
この投射光の対向基板20に対する入射角は、通常、画像表示領域10a内でばらつくため、仮に、屈折率異方性のある光学板部材を用いる場合には、屈折率異方性の発現する方向に応じてコントラストが部分的に低下したり、視野角が変化したりする。これに対し、光学板部材410及び420は、屈折率異方性がない、或いはごく小さいために、こうした表示上の不都合を全て回避することができる。
尚、サファイア等の光学板部材については、ユーザが希望する視野角等の仕様を満たすように基板位置を調整し、異方性の発現する方向を合わせこむ必要があるが、光学板部材410及び420については、そのような調整が全く不要であり、どのような仕様にも対応できるうえ、装置の製造効率向上に寄与するといった利点がある。
また、液晶装置における画像表示領域10aに粉塵が付着すると、この粉塵の像が投影されてしまい、やはり表示品質を低下せしめる。これに対しては、光学板部材410及び420が夫々、TFTアレイ基板10及び対向基板20に配置されているために、対向基板20或いはTFTアレイ基板10の表面に粉塵は付着しえず、また粉塵が付着するとしても、それはAR膜501の表面或いはARこと504の表面に付着するに過ぎない。つまり、粉塵は、光学板部材410及び420、更にAR膜501から504の厚み分だけ、焦点から遠い位置に付着することになる。そのため、デフォーカス効果により、粉塵の像は結ばれず、表示品質低下が阻止される。
このように液晶装置に光学板部材410及び420を備えることにより、液晶装置延いては投射型表示装置における表示品質の低下を防止することが可能となる。
また、投射型表示装置の動作時には、対向基板20、液晶層50及びTFTアレイ基板10等は、光吸収により発熱し、液晶装置の温度が上昇する。このような温度上昇は、液晶層50等の劣化を早めると共に、表示品位を劣化させる。これに対し、本実施形態では、光学板部材410及び420の熱伝導率が優れて高いために、液晶装置内部の熱は、高効率で、TFTアレイ基板10及び対向基板20の各基板面から光学板部材410及び420に伝導し、外へ放出される。即ち、光学板部材410及び420は、液晶装置の良好な冷媒としても機能し、液晶装置の温度上昇が抑制される。
このように液晶装置に光学板部材410及び420を備えることにより、より効果的な熱放散効果を得ることができ、液晶装置内部における過剰な熱蓄積を未然に防止することが可能となる。ちなみに、このようにして液晶装置内部に蓄積される熱を効率よく外部に放散することが可能であることから、本実施形態においては、シロッコファン1300に強力な冷却能力が要求されない。即ち、従来に比べて風量を低くすることが可能だから、シロッコファン1300における消費電力を低減することができ、また、シロッコファン1300による騒音を低減することもできる。
以上説明したように本実施形態によれば、粉塵や光学部材の屈折率異方性等に起因する表示上の問題が解決され、高品位な表示が可能であると共に、駆動中に効率よく冷却することで電気光学物質等の劣化が防止され、液晶装置を安定的に動作させることが可能である。
(変形例)
以下、液晶装置の第1実施形態の変形例について、図4及び図5を参照して説明する。
(第1変形例)
まず、第1変形例について、図4を参照して説明する。ここに、図4は、図3と同趣旨の図ではあるが、図3とは異なる各種の態様を示している。
まず、図4(a)に示したように、対向基板20側にのみスピネルを含んでなる光学板部材420を配置するようにしてもよい。或いは、図4(b)に示したように、TFTアレイ基板10側にのみスピネルを含んでなる光学板部材410を配置するようにしてもよい。
更に、図4(c)に示したように、対向基板20側にはスピネルを含んでなる光学板部材420を設けるが、TFTアレイ基板10側にはスピネルを含まない光学板部材411を配置してもよい。ここで、光学板部材411は、本発明の「第2の光学板部材」の一具体例に相当する。尚、光学板部材411には、比較的安価な材料を用いることが可能であるから、液晶装置全体の低コスト化が可能となる。また、光学板部材411はスピネルを含まないため、その界面において入射光或いは射出光の反射が生じる可能性は一般的には小さいということはできるが、それでも光学板部材411の界面で反射が生じるおそれはやはりあるから、AR膜503’及び504’(図4(c)参照)を備えることには相応の意義がある。
このように、光学板部材の設置態様については各種採用が可能であり、どの態様によっても、液晶装置の冷却効果は相応に引き出されるが、液晶装置の放熱性を最も高めるためには、スピネルを含んでなる光学板部材を、液晶装置の光入射側及び光出射側に光学板部材410及び420を夫々配置する態様(図3参照)が最も好ましい。更に、光学板部材を液晶装置の片側にのみ配置する場合には、光入射側に配置する場合(即ち、図4(a))の方が、光出射側に配置する場合(即ち、図4(b))に比べて、より好ましい。
(第2変形例)
次に、第2変形例について、図5を参照して説明する。ここに図5は、図3と同趣旨の図ではあるが、図3とは異なる各種の態様を示している。
図5において、液晶装置は、図3に示した構成に加えて、図中上方側及び下方側に、偏光板701I及び701Oを備えている。偏光板701I及び701Oは、液晶層50に入射させる光及び液晶層50から出射した光を適当な偏光状態とする偏光素子の一種である。これにより、液晶層50の配向状態を適当に定め、該配向状態と該偏光板701I及び701Oにおける偏光状態との関係を調整することにより、入射光がほぼ完全に透過する状態から、ほぼ完全に遮蔽される状態に至るまでの調整を連続的に行うことが可能となる。
そして、第2変形例においては特に、偏光板701I及び701Oの夫々について、図5に示すように、昇温防止基板491及び492が備えられている。これら昇温防止基板491及び492は、本発明における「第3の光学板部材」の一具体例に相当する。
また、偏光板701I及び昇温防止基板491からなる構造物の各界面には、AR膜511から513が備えられており、偏光板701O及び昇温防止基板492からなる構造物の各界面には、AR膜521から523が備えられている。
このような形態によれば、偏光板701I及び701Oについて、第1実施形態で述べたのと同様の作用効果を享受することが可能となる。即ち、防塵用基板410及び420にスピネルが利用されることにより、偏光をかけた場合にも、屈折率異方性が顕在化することがない。よって、第2変形例によれば、より高品質な表示が可能となる。
また、偏光板701及び701Oもまた、光の照射を受けることにより熱の蓄積が懸念される光学素子であるが、上述したような昇温防止基板491及び492が貼着されていることにより、該偏光板701I及び701Oに蓄えられた熱を外部へと有効に放散することが可能となる。
尚、本変形例においては、図5に示す構成に加えて、光学補償素子としてのλ/4板、λ/2板、広視野角等の光学的補償フィルム等(不図示)を設けると共に、該光学補償素子に本発明の「光学板部材」を配置する形態を採用してもよい。この場合、屈折率異方性に起因する表示不具合をよりよく抑えることができると共に、該光学補償素子に蓄えられる熱の放散も可能となる。
<液晶装置の第2実施形態>
次に、本発明の電気光学装置に係る液晶装置の第2実施形態について、図6を参照して説明する。図6は、図3に対応しており、第2実施形態に係る液晶装置の断面構成を示している。尚、本実施形態においては、第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
(液晶装置の構成)
図6に示したように、本実施形態では、液晶装置の光入射側及び光出射側の双方に光学板部材430及び440が夫々配置されている。即ち、第1実施形態における光学板部材410及び420に代えて、光学板部材430及び440が配置されている。
光学板部材430及び440は、多結晶のYAGを含んでなる。即ち、光学板部材430及び440は、実質的にYAGとしての物性を有する程度にYAGを含んでいればよく、多少不純物が混在していてもよい。ここでは、YAGの基本組成をY3Al5O12としている。尚、本発明の光学板部材では、YAGの構造は上記以外には特に限定されておらず、例えば単結晶やバルクであってもよいし、可能であれば非晶質であってもよい。このようなYAGを含んでなる光学板部材430及び440は、例えば粉体焼結法、スリップキャスト法により成形することができる。
光学板部材430及び440はYAGを含むことで、スピネルを含む光学板部材410及び420と同様の特徴を有している。
即ち、第1に透光性が高い。第2に、熱伝導率が高い。YAGの熱伝導率(11.7W/m・K)は、通常用いられる石英ガラスの熱伝導率(1.2W/m・K)に比べて十倍以上にもなる。第3に、光学異方性、より具体的には屈折率異方性がない又は非常に小さい。これは、YAGが等方晶系の構造をもつためと考えられるが、多結晶としたことによるとも考えられる。
このように、光学板部材430及び440は、光学板部材に要求される特性を総合的に備えている。従って、以下に説明するように、高品位な表示が可能であると共に、駆動中に液晶装置を効率よく冷却することが可能である。
尚、光学板部材430の両面には、AR膜507及び508が付設されており、光学板部材440の両面には、AR膜505及び506が付設されている。これらAR膜505から508は、例えばジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等の単層膜、或いは多層膜からなる。これらは、第1実施形態におけるAR膜501から504と同様の作用及び効果を有している。
(液晶装置の製造方法)
次に、第2実施形態に係る液晶装置の製造方法について、図7を参照して説明する。ここに、図7は、本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要工程を示している。
本実施形態に係る液晶装置は、光学板部材430及び440が、通常「防塵用基板」として用いられる光学板部材とは異なる材質で構成されている点を除けば、一般的な製造方法に基づいて製造することができる。そこで、ここでは主に、光学板部材430及び440の製造工程に関して説明することにする。
即ち、TFTアレイ基板10の一面に、画素電極9a等の必要な構成要素を形成すると共に、対向基板20の一面に対向電極21等の必要な構成要素を形成する。次に、TFTアレイ基板10と対向基板20とを、互いの電極形成面において対向させ、シール材52を用いて貼りあわせる。次に、基板間の間隙に液晶を注入する。
以上の工程と相前後又は並行して、光学板部材430及び440が図7に示した要領で作製される。
まず、YAGを含む粉体を用意する(ステップS11)。この粉体は、できるだけ高純度のYAGからなることが好ましく、粉体の粒径等は、以下の工程との兼ね合いで適宜に調整される。
次に、この粉体を、純水等の溶媒に混合してスラリーを作製する(ステップS12)。そして、このスラリーを型枠に流し込んで固める(ステップS13)。これにより、板状に成型された光学板部材の前駆体が得られる。
次に、この前駆体を焼結する(ステップS14)。ここで、焼結温度等の条件は、適宜に調整される。こうして、光学板部材430及び440が作製される。
こうして得られた光学板部材430及び440には、AR膜501及び502、AR膜503及び504が夫々貼り付けられる。
その後、光学板部材430及び440を、TFTアレイ基板10及び対向基板20の他面側(即ち、液晶相50と対抗する側とは反対側の面)に配置させる。これは、例えば、これらの部材を重ね合わせた状態で後述のような外装ケースに収容することにより、実現できる。
ここでは、型枠に流し込む、所謂スリップキャスト法に基づき成型するために、成形品(即ち、前駆体)の損傷頻度が小さい。従って、光学板部材430及び440を簡便に製造することができ、液晶装置の製造効率を向上させることが可能である。
また、粉体を出発材料とすることや、圧力をかけずに粉体を成型することは、どちらかといえば異方性を分散させるように作用すると考えられ、光学板部材430及び440の作製方法としては、他の方法に比べて有利といえる。
(液晶装置の作用)
このような液晶装置は、第1実施形態と同様に動作させることができる。
即ち、投射型表示装置の動作時には、液晶装置に対し、図6の上側から強力な投射光が照射されるが、ここでは、光学板部材430及び440の光透過性は良好なため、射出光が着色したり、減衰したりするおそれが殆どない。
更に、光学板部材410及び420は屈折率異方性がない、或いはごく小さいために、投射光の入射角ばらつきと、光学板部材の屈折率異方性とに起因して、屈折率異方性の発現する方向に応じてコントラストが部分的に低下したり、視野角が変化したりする事態を回避することができる。また、この性質により、屈折率異方性のある光学板部材で必要となる位置調整が全く不要であり、どのような仕様にも対応できるうえ、装置の製造効率向上に寄与するといった利点がある。
また、光学板部材430及び440が夫々、TFTアレイ基板10及び対向基板20に配置されているために、対向基板20或いはTFTアレイ基板10の表面に粉塵は付着しえず、また粉塵が付着する場合にはデフォーカス効果により、粉塵の像は結ばれず、表示品質低下が阻止される。
また、光学板部材430及び440の熱伝導率が優れて高いために、駆動時に発生する液晶装置内部の熱は、高効率に、TFTアレイ基板10及び対向基板20の各基板面から光学板部材410及び420に伝導し、外へ放出される。よって、より効果的な熱放散効果を得ることができ、液晶装置内部における過剰な熱蓄積を未然に防止することが可能となる。
以上説明したように本実施形態においても、粉塵や光学部材の屈折率異方性等に起因する表示上の問題が解決され、高品位な表示が可能であると共に、駆動中に効率よく冷却することで電気光学物質等の劣化が防止され、液晶装置を安定的に動作させることが可能である。
<液晶装置の第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る電気光学装置について、図8を参照して説明する。図8は、本実施形態に係る液晶装置を分解された状態で示している。尚、本実施形態に係る液晶装置は、外装ケース601に外装されていることを除けば第1実施形態における液晶装置と同様に構成されている。そこで、以下の説明では、第1実施形態と同様の構成要素に同一の符号を付し、その説明を適宜省略ないし簡略化して説明する。但し、第2実施形態は、第1実施形態とは材質が異なる光学板部材を用いた点のみで相違し、その実質的な作用及び効果は同様であるから、本実施形態に係る液晶装置の外装ケース601内部は、第2実施形態における液晶装置と同様に構成されていてもよい。
図8において、液晶表示部500が第1実施形態の液晶装置に相当している。前述した光学板部材410及び420を備えた液晶表示部500は、プレート部610及びカバー部620からなる実装ケース601内に収納されている。このうちプレート部610には取付孔611c、611d及び611eが形成されており、該取付孔611c、611d及び611eを用いることによって投射型表示装置1100に対する取付けを好適になすことができる。具体的には、取付孔611c、611d及び611eに図示しないねじを通し、該ねじを投射型表示装置1100の一部を構成する図示しない被取付面に形成された雌ねじ穴に螺合する等により、取付けることができる。
また、プレート部610及びカバー部620の夫々には、窓部615及び625が形成されている。液晶表示部500に対する光の入射及び出射は、窓部615及び625を介して可能となる。尚、窓部615の辺縁部に光学板部材410の周辺部が接触し、窓部625の辺縁部に光学板部材420の周辺部が接触するように構成されている。すなわち、光学板部材410の表面の周辺部が、プレート部610の表面(液晶表示部500と対向する面)の窓部615の周辺の領域と接触することで、光学板部材410からプレート部610に熱が伝わり、放熱の効果がより向上する。また、光学板部材420の表面の周辺部が、カバー部620の表面(液晶表示部500と対向する面)の窓部625の周辺の領域と接触することで、光学板部材420からカバー部620に熱が伝わり、放熱の効果がより向上する。
更に、カバー部620は、カバー本体部623に加えて、スロープを有する冷却風導入部622、及び冷却風排出部624を備え、カバー部620全体に冷却風(図1に示すシロッコファン1300から送り出される風等)を満遍なく行き渡らせることが可能となっており、カバー部620の冷却が効果的に行われるようになっている。ちなみに、冷却風は、冷却風導入部622、カバー本体部623及び冷却風排出部624の順に流れることが好適である。そのためには、図1に示した投射型表示装置1100内において、ライトバルブたる液晶装置は、冷却風導入部622が吹き出し口100RW、100GW、及び100BWに対向するように配置されるのが好ましい。
また、カバー本体部623が千鳥足状のサイドフィン部628を備え、また冷却風排出部624がリアフィン部624Fを備えていることにより、カバー部620の放熱能力が高められている。
また、プレート部610には、液晶表示部500の両側面に対向すると共に、カバー部620の内側面に接するようにされた折り曲げ部613が形成されており、該折り曲げ部613を介することによって、液晶表示部500からプレート部610及びカバー部620への熱伝導が滞りなく行われるようになっている。なお、光学板部材410の側面とプレート部610の折り曲げ部613の内面(窓部615側の面)とが接触することで熱伝導の効果がより高まる。
尚、図8に示した液晶表示部500においては、図2に示した外部回路接続端子102に接続されたフレキシブルコネクタ501が図示されている。
次に、このような構成の液晶装置の作用及び効果について説明する。
液晶表示部500が光学板部材410及び420を備えることにより、液晶装置内部の熱は、まず、光学板部材410及び420に伝導される。そして、本実施形態では更に、光学板部材410及び420の熱は、カバー部620或いはプレート部610へと伝導する。その際、窓部615の辺縁部及び光学板部材410の周辺部間、並びに、窓部625の辺縁部及び光学板部材420の周辺部間が相互に接触しているため、光学板部材410及び420の熱は、より効率よくプレート部610及びカバー部620へと伝導される。
更に、カバー部620にサイドフィン部628及びリアフィン部624Fが設けられていること、或いはプレート部610に折り曲げ部613が形成されていて、プレート部610及びカバー部620間の熱の伝達が滞りなく行われ得るようになっていること等が併せ機能することで、液晶表示部500からカバー部620へと伝達された熱、或いは該液晶表示部500からプレート部610を介してカバー部620へと伝達された熱は、速やかに外部へと放散される。このように、カバー部620、或いはプレート部610は、液晶装置500におけるヒートシンクとして有効に機能する。
このように本実施形態では、外装ケース610を備えるようにしたので、液晶装置内部から外部へ、より効率よく放熱させることが可能となる。
尚、このように光学板部材410及び420のみならず、外装ケース601をもヒートシンクとして機能させる場合においては、該機能のより効果的な実現のために、該カバー部620及び該プレート部610の少なくとも一方は、好ましくは金属、更に好ましくはその熱伝導率が15W/m・K程度以上となる金属から構成するとよい。そのような金属材料としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、銅、或いはこれらの合金等を挙げることができる。
また、液晶表示部500が、偏光板701I及び701O、或いは昇温防止基板491及び492を更に備える場合には、これらの構成要素は、外装ケース601の外部に設置されるのが一般的である。即ち、図5において、中央に図示された部分のみが外装ケース601に収納され、それ以外の部分、図5の上側及び下側に図示された各部分は、外装ケース601外に配置される。
また、光学板部材410及び420の少なくとも一方には、画像表示領域10aの周辺を覆うように、画像表示領域10aの外枠に対応した矩形枠状の遮光膜(周辺見切り)を設けても良い。これによって表示に寄与しない斜め光が液晶表示部500に入射するのを防ぐことが可能となる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及び該電気光学装置の製造方法、並びに、該電気光学装置が適用される電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
例えば、第1実施形態は、液晶装置がスピネルを含んでなる光学板部材を備えた場合について説明し、第2実施形態は、液晶装置がYAGを含んでなる光学板部材を備えた場合について説明したが、スピネルを含んでなる光学板部材とYAGを含んでなる光学板部材との両方を備えるようにしてもよい。
また、本発明における「表示用電極」としては、画素電極及び対向電極(共通電極)の形態以外に、一対の基板夫々に形成され、相互に交差するストライプ状の電極であってもよい。この場合にはパッシブマトリクス駆動が可能である。
更に、以上では、本発明の電気光学装置の具体例として専ら液晶装置について説明したが、本発明の電気光学装置は駆動時に発熱する装置であればよく、液晶装置の他にDMD(Digital Micromirror Device)を利用した表示装置や、電気泳動装置、電子放出素子を利用した表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等であってもよい。そのような電気光学装置は、投射型だけでなく反射型のプロジェクタにも適用可能であり、更に、例えばライトバルブとしてテレビジョン受像機等の各種表示装置に対して広く適用可能である。
なお、本発明はシリコン基板上にトランジスタを形成した基板を用いる液晶装置(LCOS)や、シリコン基板上に可動ミラーを形成したDMD(Digital Micromirror Device)などの反射型のライトバルブにも適用可能である。
LCOSに本発明を適用する場合は、対向基板20の液晶層50とは反対側の面にスピネルを含んでなる光学板部材またはYAGを含んでなる光学板部材を設けるのが好ましい。
また、DMDの場合には、マイクロミラーが形成された反射面の側にスピネルを含んでなる光学板部材またはYAGを含んでなる光学板部材を設けるのが好ましい。その際、光学部材はマイクロミラーのミラー表面と接触しないように取付けることが望ましい。具体的には、DMDのシリコン基板(あるいはその他の下地の基板)に光学部材を支持するための凸部や、ギャップ保持粒子などを設けて、該凸部やギャップ保持粒子の上に光学部材を固定する構成が望ましい。
このように、LCOSやDMDのような反射型のデバイスにおいては、基板に対して入射光が反射される方向の側、すなわち出射方向側に、光学板部材を設けることで、本発明の効果が得られる。
尚、本発明の電子機器は、このような本発明の電気光学装置を備えることで実現され、上述したプロジェクタの他に、テレビジョン受像機や、ビューファインダ型或いはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の各種の電子機器として実現可能である。
10…TFTアレイ基板、20…対向基板、50…液晶層、410,420,430,440…光学板部材、491,492…昇温防止基板、500…液晶表示部、501〜508…AR膜、701I,701O…偏光板、601…外装ケース、610…プレート部、620…カバー部、628…サイドフィン部、624F…リアフィン部、1100…投射型表示装置、100R,100G,100B…ライトバルブ、1120…スクリーン。