本発明の目的、特徴、局面、及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
以下、本発明の一実施の形態による光ディスク装置及び光ディスクについて図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1におけるチルト検出の原理について説明するための図である。なお、図1では、説明を簡単にするため、記録層が1層の例を示しているが、記録層が複数積層されている場合でも同様である。図1(a)は、チルトがない時のレーザ光(光ビーム)の光路を示す図である。図1(a)に示すように、光ディスク表面17から基材12に入射したレーザ光は、記録層13によって反射される。すなわち、Aより入射したレーザ光の光路15は、B、C、D、Eを通ってゆく。この光ディスクをそのままチルトさせると、図1(b)の様になる。図1(b)では、レーザ光の光軸10に対して記録層13の法線11が所定の角度16だけ傾いており、この角度16がチルト角度である。図1(b)に示す光路15は、Aより入射してB’、C’、D’、E’を通り、チルトなしの時と光路長は同じになり、反射光でチルト検出をすることができない。そこで、図1(c)の様に、記録層13に平行な反射層14を設け、記録層13の透過率を調整して記録層13を透過する光を作り、反射層14による光でチルト検出を行う様にする。図1(c)において、光路A、B’C’D’E’は、図1(b)と同様に、図1(a)の光路A,B,C,D,Eと光路長が同じである。もう一つの光路A,B’,C’,C”,D”,E”は、明らかに図1(b)の光路、即ち、A、B’、C’、D’、E’の光路長と異なる。よって、左右の光路長の増減量で収差がキャンセルされずに、反射光でチルト収差及びコマ収差を検出することができる。
図2は、実施の形態1の多層光ディスクの断面を示す図である。本光ディスクは、上部基材51と、記録層スタック52と、反射層53と、下部基材54とで構成されている。ここで、記録層スタックとは、記録層55が中間層56を介して積層している部分のことを意味している。更に、記録層スタック52内の各記録層55は、反射層53に平行に構成されている。これらの平行な層は、例えば、反射層53上に中間層56をスピンコートやスパッタリングにより形成し、その上に記録層55と中間層56とをスピンコートやスパッタリングにより積層することにより形成される。これにより、記録層55と反射層53とは、平行に作ることができる。
記録層55の間隔、即ち、中間層56の厚さは、例えば10μmである。この厚さは、レーザ光57が集光している集光記録層59に隣接する隣接記録層5Aをレーザ光57が横切る円5B内に記録されているデータ数で決まる。これは、円5B内に記録されているデータの記録符号での“1”と“0”の数の変動がクロストークノイズとなるので、円5B内に記録されているデータ数が多いと、この変動は、平均化される。よって、所定の許容クロストークノイズが、円5B内に記録されているデータ数を決め、円5B内に記録されているデータ数が、隣接する記録層55の間隔、即ち中間層56の厚さを決める。しかし、記録層スタック52と反射層53との間の中間層56は、反射層53には記録されているデータが無い為、10μm以下、例えば、3μm程度でも良い。
従来の光ディスクの記録層に使用されている反射層は、記録層にレーザ光が複数回照射される様にする為の光反射層と、記録層で発生した熱を速やかに放散する為の熱拡散層との役目を果たしている。よって、反射層で反射した光が効率良く記録層に照射される様に、又は、記録層で発生した熱が効率よく放散される様に、記録層と反射層とはできるだけ近くに設けられている(Matsushita Technical journal Vol.45 No.6 Dec.1999 pp672-678 3.2ディスク設計技術)。
光ディスクがDVD−RAMディスクなどの相変化ディスクである場合、記録層と反射層との間隔は20nmから200nm程度である(電子情報通信学会 信学技報Technical Report of IEICE.CPM2000-95 2000.09 pp21-27 4計算結果)。
これに対し、本発明の反射層53は、記録層55に集光していて反射層53でデフォーカスしているレーザ光を反射する為に設けられている。即ち、ある程度デフォーカスしていないと、反射光に含まれるチルト収差やコマ収差が復路でキャンセルされて、チルト検出の感度が低くなってしまう。
よって、本発明における記録層53と反射層55との間隔(記録層53と反射層55との間に形成される中間層56の厚み)は、レーザ光の波長より十分長くなければならない。例えば、波長が660nmのレーザ光を使用する場合、記録層53と反射層55との間隔は、レーザ光の波長の5倍程度以上、即ち、3000nm(3μm)程度以上は必要である。
このように、従来の光ディスクの記録層に使用されている反射層と本発明の反射層とでは、記録層と反射層との間隔が1桁から2桁分、本発明の方が大きくなっており、異なった構造となっている。
尚、記録層55には、例えばジアリールエテン、フルギドなどのフォトクロミック材料が使用される。中間層56には、例えばUV硬化樹脂やZnS−SiO2などが使用される。反射層53には、例えばシリコン系薄膜やアルミニウムなどの薄膜金属層などが使用される。
また、記録層55には、レーザ光が照射されることによって2光子吸収現象を生じさせる光異性化材料により形成してもよい。2光子吸収現象とは、非線形光学効果の一つであり、材料の分子が同時に2個の光子を吸収して屈折率などが変化する現象をいう。2光子吸収現象を利用することによって、レーザ光の焦点部分の光異性化材料のみ屈折率を変化させることができ、多層方式の光ディスクにおいて、レーザ光の焦点を深さ方向に制御することによって記録する記録層を選択することができる。なお、光異性化材料としては、例えばジアリールエテンが使用される。
図3は本発明の実施の形態1における光ディスク装置の構成を示す図である。光ディスク66は、図2で示された多層光ディスクである。レーザ(光源)61は、レーザ駆動回路60により駆動され、所定のパワーのレーザ光を出力する。レーザ61によって出力されたレーザ光は、コリメートレンズ62により平行光に変換される。
平行光に変換されたレーザ光は、デフォーマブルミラー6Qにて球面収差が補正される。デフォーマブルミラー6Qでの球面収差補正は、図2での記録層スタック52内のレーザ光57が集光している記録層59からの反射光に含まれる球面収差量が最小になる様に補正量が決められる。記録層59からの反射光に含まれる球面収差量は、偶対称収差センサ6Sにて検出される。ここで、偶対称収差センサ6Sは、Zernikeモードでの偶数次の収差モード、例えば、デフォーカス収差や球面収差の収差量を出力するセンサである。偶対称収差センサ6Sの球面収差量出力は、一旦サーボコントローラ6Uに入力される。サーボコントローラ6Uは、偶対称収差センサ6Sによって検出された球面収差量に基づいてデフォーマブルミラー駆動回路6Rを通してデフォーマブルミラー6Qを駆動している。
デフォーマブルミラー6Qによって反射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッター63を透過して1/4波長板6Tを通り対物レンズ64に入射する。サーボコントローラ6Uは、偶対称収差センサ6Sからのデフォーカス収差量に基づき対物レンズアクチエータ65を制御することで対物レンズ64を記録層スタック67内の所定の記録層に集光する様に制御している。
記録層スタック67内の所定の記録層に到達したレーザ光の一部は、記録層スタック67を透過して反射層68に到達する。記録層スタック67内の所定の記録層に到達したレーザ光のその他の部分は、記録層スタック67内の所定の記録層で反射する。反射層68は、記録層スタック67内の記録層に平行になる様に作られている。反射層68に到達したレーザ光は、反射層68で反射し、対物レンズ64に戻っていく。対物レンズ64に戻ったレーザ光は、対物レンズ64、1/4波長板6Tを通り、偏光ビームスプリッター63で往路光と異なった方向に反射してハーフミラー6Vに入射する。ハーフミラー6Vでは、入射したレーザ光が2つのレーザ光に分割される。ハーフミラー6Vによって分割された一方のレーザ光(ハーフミラー6Vを透過したレーザ光)は、図3上で点線で囲まれた範囲で示されたチルトセンサ6Pの内部に入射する。ハーフミラー6Vによって分割された他方のレーザ光(ハーフミラー6Vにより反射されたレーザ光)は、図3上で点線で囲まれた範囲で示された偶対称収差センサ6Sの内部に入射する。
このチルトセンサ6Pは、従来から知られているモーダル型の波面センサを改良したものになっている。モーダル型の波面センサとは、波面をZernikeモードなどの直交収差モードの各係数として出力する波面センサである。その特徴は、予め設定された収差モードの収差量が他の収差モードの収差量に関係なく検出できることである。モーダル型の波面センサは、例えば、1つの収差モードであるコマ収差量を他の収差モード、例えば、球面収差とは独立して検出することができる。よって、チルト収差、又はコマ収差をモーダル型の波面センサで検出することで、光ディスクのチルトを検出することが可能である。
本実施の形態の原型となったモーダル型の波面センサは、下記の文献に記載されている。Mark A.A、Tony Wilson,et al.,New modalwave−front sensor:a theoretical analysis,
J.Opt.Soc.Am.A/Vol.17,No.8,pp1098−1107/June2000
上記文献のモーダル型の波面センサと本実施の形態のチルトセンサ6Pとの構成上の差異は、チルトセンサ6Pに入射するレーザ光のデフォーカス収差と球面収差とをキャンセルする機構を付加した点にある。デフォーカス収差のキャンセル機構は集光レンズ6Dを可動に設けることで実現している。球面収差のキャンセル機構はデフォーマブルミラー6Aを設けることで実現している。
チルトセンサ6Pに入射したレーザ光は、デフォーマブルミラー6Aに入射する。デフォーマブルミラー6Aは、入力される球面収差制御信号6Mに応じてミラー形状を変える。先に述べた様に、このデフォーマブルミラー6Aで球面収差をキャンセルしている。
デフォーマブルミラー6Aで反射したレーザ光は、ホログラム6Cに入射する。ホログラム6Cでは、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスXコマ収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスYコマ収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスデフォーカス収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアス球面収差の8種類のバイアス収差を加えている。各々のバイアス収差の収差量は、検出する収差量により決まり、検出する収差量の半分程度が望ましい。
ホログラム6Cにてバイアス収差が加えられたレーザ光は、集光レンズ6Dに入射する。集光レンズ6Dは、集光レンズアクチエータ6Eで保持されている。集光レンズアクチエータ6Eは、デフォーカス収差制御信号6Lに応じて集光レンズ6Dのフォーカス位置を移動させる。先に述べたように、この集光レンズを動かすことで、デフォーカス収差をキャンセルしている。
集光レンズ6Dに入射したレーザ光は、ピンホール群6F上に集光される。ピンホール群6F上には、付加されたバイアス収差に対応した8つのピンホールが設けられている。各々のピンホールの半径は、エアリーディスク径の例えば1/1.22倍としている。
ピンホール群6Fを通過したレーザ光は、フォトセンサ群6G上の各々のピンホールに対応したフォトセンサに入射する。フォトセンサに入射した光は、電気信号に変換されて、収差モード検出回路6Hに入力される。各フォトセンサの信号は、収差モード検出回路6H内で収差モード毎に差動増幅される。収差モード検出回路6Hは、X−Yチルト検出信号6N(X−Yコマ収差検出信号)、デフォーカス収差信号6J、及び球面収差信号6Kを出力する。このX−Yチルト検出信号6N(X−Yコマ収差検出信号)がこのチルトセンサの出力となる。
デフォーカス収差信号6J、球面収差信号6K、及びX−Yチルト検出信号6Nは、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iに入力される。デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、集光レンズ6Dに入射するレーザ光のデフォーカス収差をキャンセルし、デフォーマブルミラー6Aに入射するレーザ光の球面収差をキャンセルする様に、デフォーカス収差信号6Jと球面収差信号6Kとに基づいてデフォーカス収差制御信号6Lと球面収差制御信号6Mとを生成し、生成したデフォーカス収差制御信号6Lと球面収差制御信号6Mとを出力する。また、同時に、デフォーカス収差信号6J、球面収差信号6K、及びX−Yチルト検出信号6Nは、サーボコントローラ6Uに出力される。尚、サーボコントローラ6Uとデフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iとは、双方向の通信ラインにて結ばれている。
このように構成したチルトセンサ6Pは、上記文献のモーダル型の波面センサに対して以下に説明するような特長を有する。
反射層68から反射されたレーザ光は、コマ収差がキャンセルされずに残っており、原理的にはこれを用いてチルトが検出可能である。しかし、一方で、コマ収差以外にも大きなデフォーカス収差と球面収差とを同時に含んでおり、このため上記文献のモーダル型の波面センサを用いた場合には集光レンズ6Dにより形成されたビームスポットがぼけて検出出力が小さくなるという課題がある。
これに対し、チルトセンサ6Pでは、チルトセンサ6Pに入射するレーザ光のデフォーカス収差と球面収差とをキャンセルしてから集光レンズ6Dに入射しているので、有る程度シュトレール比の高いクリアなビームスポットが得られ、検出出力が大きく、SN比の高いX−Yチルト検出信号6Nを得ることができる。
次に、偶対称収差センサ6Sの構成について説明する。
記録層スタック67内の所定の記録層で反射したレーザ光は、対物レンズ64に戻っていく。対物レンズ64に戻った記録層からのレーザ光は、対物レンズ64、1/4波長板6Tを通り、偏光ビームスプリッター63で往路光と異なった方向に反射し、ハーフミラー6Vに入射する。ハーフミラー6Vでは、入射したレーザ光が2つのレーザ光に分割される。一方のレーザ光は、図3上で点線で囲まれた範囲で示されたチルトセンサ6Pの内部に入射する。他方のレーザ光は、図3上で点線で囲まれた範囲で示された偶対称収差センサ6Sの内部に入射する。
偶対称収差センサ6Sは、記録層スタック67内の所定の記録層で集光して反射したレーザ光のデフォーカス収差と球面収差とを検出する。よって、偶対称収差センサ6Sで検出するレーザ光は、チルトセンサ6Pで検出するレーザ光とは異なり、大きなデフォーカス収差や球面収差が含まれていない。その為に、検出するレーザ光のデフォーカス収差や球面収差をキャンセルする必要がない。よって、偶対称収差センサ6Sは、上記文献のモーダル型の波面センサと同じセンサである。
偶対称収差センサ6Sに入射したレーザ光は、ホログラム6Wに入射する。ホログラム6Wでは、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスデフォーカス収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアス球面収差の4種類のバイアス収差を加えている。各々のバイアス収差の収差量は、検出する収差量により決まり、検出する収差量の半分程度が望ましい。
ホログラム6Wにてバイアス収差が加えられたレーザ光は、集光レンズ6Xに入射する。集光レンズ6Xは、対物レンズ64の集光点からのレーザ光を集光する様に位置調整されている。
集光レンズ6Xに入射したレーザ光は、ピンホール群6Y上に集光される。ピンホール群6Y上には、付加されたバイアス収差に対応した4つのピンホールが設けられている。各々のピンホールの半径は、エアリーディスク径の例えば1/1.22倍としている。
ピンホール群6Yを通過したレーザ光は、フォトセンサ群6Z上の各々のピンホールに対応したフォトセンサに入射する。フォトセンサは、入射した光を電気信号に変換する。フォトセンサによって変換された電気信号は、収差モード検出回路610に出力される。各フォトセンサによって出力された信号は、収差モード検出回路610内で収差モード毎に差動増幅される。収差モード検出回路610は、デフォーカス収差信号、及び球面収差信号をサーボコントローラ6Uに出力する。
また、記録データの再生信号は、チルトセンサ6P及び偶対称収差センサ6S内のフォトセンサ群からの信号の内、符号の異なる同じ種類の収差の信号を加算すれば得られる。例えば、偶対称収差センサ6S内のデフォーカス収差でプラスのバイアス加算に対応したディテクターからの信号と、デフォーカス収差でマイナスのバイアス加算に対応したディテクターからの信号とを加算すれば再生信号が得られる。また、1つの組のディテクターからの信号の加算だけでなく、複数の組のディテクターからの信号を加算する方が、より高いSN比の再生信号が得られる。
次に、本実施の形態での光ディスク装置の動作について説明を行う。電源ON時などの初期状態において、サーボコントローラ6Uは、記録層スタック67内の所定の記録層にレーザ光が集光する様に対物レンズアクチエータ65を動作させ、対物レンズ64を制御する。初期状態からチルト検出信号が出力されるまでの制御手順の一例を以下に示す。
(1)一旦、対物レンズアクチエータ65は、レーザ光が光ディスク66の表面に集光する様に対物レンズ64をおおよその位置に移動させる。
(2)デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、集光レンズアクチエータ6Eを駆動し、光ディスク66の表面によって反射された反射光を用いてデフォーカス収差信号6Jで“S字曲線”が検出できる様にチルトセンサ6Pの集光レンズ6Dの位置調整を行う。また、同時に、サーボコントローラ6Uは、偶対称収差センサ6Sからのデフォーカス収差出力により“S字曲線”を検出して対物レンズ64を光ディスク66の表面に集光する様に制御する。この時、デフォーマブルミラー6Aとデフォーマブルミラー6Qとは、球面収差補正量が同じになる様に、光ディスク66の表面に対応した球面収差補正が行われる。
(3)光ディスク66の表面によって反射された反射光にて、偶対称収差センサのデフォーカス収差出力、及びデフォーカス収差信号6Jで“S字曲線”が検出されたら、サーボコントローラ6Uは、対物レンズ64を移動させることによって、レーザ光の集光位置を光ディスク66の表面より下方向に移動させる。そして、サーボコントローラ6Uは、順次、次の記録面の“S字曲線”が検出できる様にデフォーマブルミラー6Aとデフォーマブルミラー6Qとチルトセンサ6Pの集光レンズ6Dとを制御し、記録層の“S字曲線”の検出個数をカウントしながら記録層スタック67内の所定の記録層の“S字曲線”を検出する。
(4)記録層スタック67内の所定の記録層の“S字曲線”が検出されたら、サーボコントローラ6Uは、記録層スタック67内の所定の記録層にレーザ光が集光する様に対物レンズ64とデフォーマブルミラー6Qとを制御し、偶対称収差センサ6Sのデフォーカス収差出力と球面収差出力とをキャンセルする様に対物レンズ64とデフォーマブルミラー6Qとを制御する。また、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、チルトセンサ6Pの集光レンズ6Dを(3)と同じ方向に進める。デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、収差モード検出回路6Hによって検出された球面収差信号6Kをキャンセルする様にデフォーマブルミラー6Aを制御する。これらの動作により、順次“記録層のS字曲線”の検出個数をカウントしながら“反射層68のS字曲線”を検出する。
(5)“反射層68のS字曲線”が検出されたら、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、デフォーカス収差信号6Jの“反射層68のS字曲線”の集光点を制御目標にして、デフォーマブルミラー6Aと集光レンズ6Dとを制御する。この時に、収差モード検出回路6Hから出力されるX−Yチルト検出信号6Nが記録層スタック67内の記録層のチルトを検出している。
以降、サーボコントローラ6Uは、偶対称収差センサ6Sのデフォーカス収差出力で記録層スタック67内の所定の記録層の“S字曲線”を検出し、偶対称収差センサ6Sの球面収差出力で記録層スタック67内の所定の記録層の“S字曲線”を検出して記録層スタック67内の所定の記録層にレーザ光が集光する様に対物レンズ64とデフォーマブルミラー6Qとを制御する。同時に、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、デフォーカス収差信号6Jの“反射層68のS字曲線”の集光点を制御目標にしてデフォーマブルミラー6Aと集光レンズ6Dとを制御する。サーボコントローラ6Uは、その時のX−Yチルト検出信号6Nで記録層スタック67内の記録層のチルトを対物レンズアクチエータ65で制御する。
上記動作例では、チルトセンサ6Pと偶対称収差センサ6Sの両方の検出信号を使用したが、チルトセンサ6Pを時分割で偶対称収差センサ6Sの代わりとして使い、チルトセンサ6Pだけでチルト検出の初期動作は可能である。
また、この実施の形態では、反射層68からの反射光のチルト収差、又はコマ収差を検出することで記録層スタック67内の集光している記録層のチルト検出を行ったが、集光している記録層以外の記録層からの反射光のチルト収差、又はコマ収差を検出することで、チルト検出を行っても良い。
尚、チルト収差とコマ収差の両方を検出した場合、レンズシフトが無い時は、チルト収差の符号とコマ収差の符号とは異なるが、レンズシフトがある時は、チルト収差の符号とコマ収差の符号とは同じである。そのため、サーボコントローラ6Uは、チルト収差の符号とコマ収差の符号とが同じになる様に対物レンズアクチエータ65を制御することによって、レンズシフトを無くすことができる。
また、この他のモーダル型のセンサとしては、ハルトマンセンサ等を利用したセンサがある。ハルトマンセンサでは、波面形状が検出値として得られるが、検出された波面形状を直交ツェルニケ円多項式で展開することにより、各収差モード別の収差量を算出することができる(Carios Robledo−Sanchez,Applied
Optics/Vol38、No.16/1 June 1999 Aberration extraction in the Hartmann test by use of spatial filters)。同様のことは、ラテラルシェア干渉センサ等、波面形状が検出できるセンサで可能である。
以上説明した様な本実施の形態の光ディスク装置によれば、記録層に平行な反射層からの反射光でチルト検出を行うので、記録層に溝など光を回折する構造が必要なく、平坦であっても高精度なチルト検出が可能となる。
ここで、本願発明におけるチルト検出と、従来技術におけるチルト検出との差異について説明する。上述した特許文献1(特開平11−232677号公報)では、本発明と同じ様に、デフォーカスしたビームスポットよりの反射光でチルト検出を行っている。しかしながら、特許文献1では、フォーカス信号にオフセット電圧を加えることで、記録層上のビーム光をデフォーカスさせて、その反射光を用いてチルト検出している。これに対し、本発明では、記録層55よりも所定の距離だけ離れた位置に反射層53を設け、記録層55にビーム光のフォーカスを合わせ、反射層53上のデフォーカスしたビーム光の反射光を検出することでチルト検出を行っている。よって、本発明では、記録層55でビーム光のフォーカスが合っているので、チルト検出と記録、又は、再生とを同時に行うことができる。
しかしながら、特許文献1では、記録層でフォーカスが合っていないので、チルト検出中は、記録、又は、再生を行うことができない。特許文献1の方式の様に、記録層においてデフォーカスして、更に、元の記録層にフォーカスするには、通常、ミリ秒単位の時間がかかる。よって、セクター毎にチルト検出するのは困難である。
一方、本発明のチルト検出方式では、常に記録層にフォーカスが合っているので、記録層への情報の記録、又は記録層からの情報の再生と同時にリアルタイムでチルト検出が可能であり、例えば、1セクター毎にチルト検出することができる。
また、特許文献1の方式の様に、記録層よりデフォーカスすると、ビームスポットが等価的に大きくなるので、トラッキングエラー信号(例えば、プッシュプル方式のトラッキング信号)の波高値が低くなり、トラッキング自体が不安定になる可能性がある。よって、特許文献1の方式では、チルト検出を長い期間行うことができない。
一方、本発明のチルト検出方式では、常に記録層にフォーカスが合っているので、トラッキングが安定し、チルト検出を長い期間行うことができる。
これらの理由により、本発明では、リアルタイムでチルト検出が可能であり、更に、チルト検出と記録又は再生とを同時に行うことができるという特許文献1の方式にはない効果を得ることができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明の実施の形態2におけるチルト検出の原理について説明するための図である。なお、図4では、説明を簡単にするため、記録層が1層の例を示しているが、記録層が複数積層されている場合でも同様である。図4(a)は、光ディスクにチルトがある場合における平坦な記録層23に集光するビーム光の光路を示す図である。図4(a)では、レーザ光の光軸21に対して記録層23の法線22が所定の角度26だけ傾いており、この角度26がチルト角度である。図4(a)に示すように、光ディスク表面27から基材29に入射したレーザ光は記録層23によって反射される。すなわち、光路25は、Aから入射してB’、C’、D’、E’を通り、チルトなしの時と光路長が同じになり、記録層23による反射光ではチルト検出をすることができない。そこで、図4(b)に示すように、記録層23の一部に入射光を散乱する部分(散乱部24)を設け、その散乱部24による散乱光でチルト検出を行う様にする。図4(b)において、Aから入射したレーザ光は、B’を通りC’に集光する。C’に散乱する部分(散乱部24)がある。散乱部24による散乱光は、波長λ0の入射光のエネルギーを吸収して入射光と同じ波長λ0の光を記録層23の法線22を対称の中心とした広い角度に放射する。よって、散乱光は、往路光、即ち、A、B’C’を通って入射したレーザ光の位相との相関が少なく、又は、無相関なので、散乱光にチルト収差及びコマ収差が残り、散乱光のチルト収差及びコマ収差によって光ディスクのチルトを検出することが可能である。図4(c)は、記録層23とは別に記録層23と所定の位置関係にあって入射光を散乱する層(散乱層28)を設けている例である(この図の場合は、記録層23と平行な関係に設けている)。図4(c)では、散乱層28による散乱光でチルト検出を行うことで間接的に記録層23のチルト検出を行う。Aから入射したレーザ光は、B’を通りC’に集光する。C’は散乱層上なので、波長λ0の入射光のエネルギーを吸収して入射光と同じ波長λ0の光を記録層23の法線22を対称の中心とした広い角度に放射する。よって、図4(c)では、図4(b)と同様に、散乱光は、往路光、即ち、A、B’C’を通って入射したレーザ光の位相との相関が少ない、又は、無相関なので、散乱光のチルト収差及びコマ収差によって散乱層28のチルトを検出することができ、散乱層28のチルトより間接的に記録層23のチルトを検出することが可能である。なお、この散乱層28を設ける例については、実施の形態3でより詳細に説明する。
図5は、本発明の実施の形態2における光ディスクの記録層の構成を説明するための図である。光ディスク内の記録層71の一部には、散乱部72が設けられている。散乱部72は入射するレーザ光の位相を少なくとも一部ランダム化するものである。
散乱部72の構成としては、下記のようなものが採用可能である。
1)表面に微小な凹部または凸部を設けて光を乱反射する乱反射部を設ける。図6(a)は、その一例を示した図である。乱反射部(散乱部82)の凹部の深さまたは凸部の高さは、レーザ光の波長λ0の半波長分(λ0/2)以上とするのが好ましい。凹部または凸部は、スタンパの表面を散乱部82のみ局所的に荒らして設けておき、この形状を転写することによって形成する。波長λ0のレーザ光は、記録層81に凹凸に形成された散乱部82の散乱面83によって波長λ0の散乱光となる。なお、散乱部82は、記録層81の表面に対してレーザ光の波長の半波長分以上の凹部のみを形成してもよく、記録層81の表面に対してレーザ光の波長の半波長分以上の凸部のみを形成してもよい。
2)レーザ光に対して透過性を有する媒質中に、少なくともレーザ光の半波長以上の深さにわたって散乱物質を分散する。図5がこの例となっている。媒質74は入射するレーザ光の波長に対して透明もしくは半透明である。散乱物質73は媒質74と異なる屈折率を持ち、その界面において入射したレーザ光の一部を反射する。この散乱物質73は媒質74中に少なくとも半波長分以上の深さにわたって実質的に連続的に分散されている。
従って、入射されたレーザ光は様々な深さにある散乱物質73に反射されることによって、位相がランダム化される。散乱物質73は分子レベルに小さなものでも良いが、反射効率を高めるためにはある程度大きな径を持つ方が好ましい。特に好ましくは、入射するレーザ光の波長をλとして、散乱物質の平均的な直径Dがλ/10<D<λ/2の条件を満たすように設定する。
なお、図5に示す散乱部72の形状は、図6(a)に示す散乱部82のように凹凸形状であってもよい。すなわち、レーザ光に対して透過性を有する媒質中に、少なくともレーザ光の半波長以上の深さにわたって散乱物質を分散させ、その表面を凹凸形状に形成する。
散乱物質73の例としては、各種の染料などの有機物を分散する。あるいは特に散乱性を高める場合にはIntralipid(R)などの高散乱材料を使用する。あるいは各種の顔料やフラーレンといった無機物を分散させても良い。さらに別の例としては、媒質74中にYAGレーザなどの高出力レーザを照射して、媒質74を変質させることで屈折率が変化した部分を設け、これを散乱物質73としてもよい。図6(b)は、その一例を示した図である。ここでは媒質である記録層81に短時間に高出力レーザ光を集光して照射し、ボイド84を形成し、このボイド84を散乱物質としている。この場合、1回のレーザ照射で1つのボイド84が形成されるが、予め微小な核を媒質中に分散しておいて、この核を起点にして1回のレーザ照射で多数のボイドを形成することもできる。例えば、核として媒質に比べて高出力レーザ光の吸収率が高い微小な吸光体を分散し、ここにレーザを照射すれば、吸光体のみが高温となるため、この周りにボイドもしくは変質した媒質による散乱物質が形成される。すなわち、小さな核を大きく成長させるように散乱物質を形成することが可能である。核となる吸光体の分散量を適宜調節すれば、1回のレーザ照射で形成される散乱物質の数を任意に設定することができる。ボイドを形成するための高出力レーザの波長は、記録/再生用レーザの波長とは異なる波長を用い、この核となる吸光体は記録/再生用のレーザの波長には高い透過率を示すようにしておく。こうしておけば、核となる吸光体を光ディスク全体に分散させておいても、記録再生に対する悪影響を与えることはないため、ディスク製造工程を極めて簡素化することができる。
なお、核となる吸光体に反応性の化学物質を含ませることにより、核を成長させて散乱物質にするためのレーザエネルギーを大幅に低減させることもできる。例えば、核となる吸光体をマイクロカプセルとし、このマイクロカプセル中に媒質と化学変化を起こす反応性物質を含有させ、高出力レーザの照射によりこのマイクロカプセルを破壊して中の反応性物質と媒質とを化学反応させて変質させ、この変質部を散乱物質とすることができる。
あるいは、記録/再生光とは別の波長の光に対して光化学反応を起こす感光性材料を媒質中に分散し、これにディスク製造工程で選択的に光を照射することで任意の場所に散乱部を形成することもできる。これらの感光性材料としては、光ディスク、銀塩写真などの光記録に用いられる一般的な感光色素の中から適当な波長特性のものを選ぶことができる。
図7は、図5及び図6の構造を用いた実施の形態2での多層光ディスクの断面を示した図である。本光ディスクは、上部基材91と、記録層スタック92と、下部基材94とで構成されている。ここで、記録層スタック92とは、複数の記録層95が中間層96を介して積層している部分のことを意味している。記録層スタック92内の記録層95は、その一部分が散乱部93で構成されており、レーザ光97が照射されると散乱光を発する様になっている。尚、記録層95を形成する記録材料には、ジアリールエテン、フルギドなどのフォトクロミック材料が使用され、散乱物質には、平均径0.1μm程度のボイドや凹凸面をスタンパにて転写した面などが使用されていて、中間層96には、UV硬化樹脂やZnS−SiO2などが使用される。
また、図7において散乱部93の厚さは記録層95の厚さと各々同じに設けられ、1つ1つの記録層95に対して所定の場所に散乱部93が位置決めして設けられているが、散乱部93は厚さ方向に複数の記録層95を横断するように一括して設けても良い。特に記録層スタック92を形成した後に、散乱部形成用ビームを記録層スタック92全体に照射して散乱部93を一括形成すれば、記録層95各層毎に散乱部93を形成する必要が無く、ディスクの製造工数を大幅に削減することができる。散乱部形成用ビームの入射開口数NAは0.3以下、より好ましくは0.1以下に小さくとって平行光に近くし、最上層から最下層までの散乱部の形状を均等に近くしている。散乱部形成用ビームとしては、既に説明した高出力レーザの他に、DUV、EUV、X線、シンクロトロン放射光、電子ビームといった短波長ビームを用いることができる。こうした短波長ビームを用いれば、NAを小さくしても回折による散乱部93の形状の広がりを有効に抑制することができるばかりでなく、高エネルギー線であるために、記録層95及び中間層96の変質による屈折率変化をより容易に誘発することが可能であり、記録層95及び中間層96の材料選択の幅をより広げることができる。
図8は、本発明の実施の形態2における光ディスク装置の構成を示す図である。なお、図8に示す光ディスク装置は、図7に示す光ディスクを適用した例である。光ディスク103は、記録層スタック67内の記録層に散乱部101を含んでいる。散乱部101は光ディスク103の1周当たり10〜50個程度が所定の場所に配置され、記録層からのタイミング情報に基づいて光ディスク装置は散乱部101の検出タイミングを識別可能となっている。
図8に示すレーザ駆動回路60、レーザ61、コリメートレンズ62、デフォーマブルミラー6Q、デフォーマブルミラー駆動回路6R、偏光ビームスプリッター63、対物レンズ64、対物レンズアクチエータ65、記録層スタック67、スピンドルモータ69、集光レンズ6D、X−Yチルト検出信号6N、デフォーマブルミラー6Q、デフォーマブルミラー駆動回路6R、及び1/4波長板6Tの構成は、実施の形態1で説明したものと同一である。なお、デフォーマブルミラー6Qの球面収差補正を行うための偶対称収差センサ6Sは図示されていないが、実施の形態1と同等のものが備えられている。
実施の形態1と異なる点は、チルトセンサ108の構成である。チルトセンサ108が実施の形態1のチルトセンサ6Pと異なる点は、集光レンズ6Dを固定とした点と、散乱部93において間欠的にチルト検出を行う点である。この実施の形態での光ディスク装置では、光ディスク103の記録層にレーザ光が集光しているので、チルトセンサ108に入射した光には、大きなデフォーカス収差、球面収差は含まれていない。よって、この実施の形態では、デフォーカス収差や球面収差をキャンセルしないでも十分集光レンズだけで集光できる。
電源ON時など初期状態において、サーボコントローラ109は、対物レンズアクチエータ65を動作させ、記録層スタック67内の所定の記録層にレーザ光が集光する様に対物レンズ64を制御する。この時の制御手順は、光ディスク103の所定の記録層にレーザ光が集光するので、チルトセンサ108と独立して制御することができる。即ち、サーボコントローラ109は、レーザ光を集光する記録層に合わせた球面収差が付加される形になる様に、図8には示されていない偶対称収差センサの球面収差検出値によりデフォーマブルミラー6Qを制御する。また、サーボコントローラ109は、図8には示されていない偶対称収差センサのデフォーカス検出値により対物レンズアクチュエータ65を制御し、所定の記録層にレーザ光を集光させる。この時のX−Yチルト検出信号6Nが、検出されたチルトとなる。
また、この様な散乱部は、記録層上のトラックに一定間隔で配置されている。例えば、サンプルサーボ方式でトラッキングを行っている場合は、サーボマークがこの様な散乱物質でできていると、散乱部を一定間隔で配置したことになる。
尚、散乱部としては、レーザ光の波長とは異なる波長の光を発する材料で形成してもよい。例えば、散乱物質の代わりにジアリールエテンやフルギドなどの蛍光物質を用いて、蛍光物質から発する蛍光でチルト検出を行っても同様の効果が得られる。この場合には、蛍光物質に入射するレーザ光と蛍光とは波長が異なるので、光学フィルタ等で、蛍光だけを分離して検出に用いることができ、更に、検出感度が向上することが期待できる。
以上説明した様な本実施の形態の光ディスク装置によれば、散乱物質に照射されたレーザ光の位相はランダム化されて散乱光として放射されるので、散乱光のチルト収差、又はコマ収差を検出することで、高精度なチルト検出が可能となる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について図面を参照しながら説明する。
図9は、本発明の実施の形態3における多層光ディスクの断面を示す図である。本光ディスクは、上部基材111と、記録層スタック112と、散乱層113と、下部基材114とで構成されている。ここで、記録層スタック112とは、複数の記録層115が中間層116を介して積層している部分のことを意味している。更に、記録層スタック112内の各記録層115は、散乱層113に平行に構成されている。これらの平行な層は、例えば、散乱層113上に中間層116をスピンコートやスパッタリングにより形成し、その上に記録層115と中間層116とをスピンコートやスパッタリングにより積層することによって形成する。このようにして、記録層115と散乱層113とを平行に作ることができる。尚、記録層112には、例えばジアリールエテン、フルギドなどのフォトクロミック材料が使用される。中間層116には、例えばUV硬化樹脂やZnS−SiO2などが使用される。散乱層113には、実施の形態2と同じ材質、例えば、少なくとも入射光の波長の半波長分以下の最大径を持つ粒子が所定の密度でランダムに配置されている。レーザ光117は、記録層115に集光し、レーザ光118は、散乱層113に集光する。レーザ光117は、記録層への記録又は再生に使用され、レーザ光118は、チルト検出に使用される。レーザ光118が散乱層113に照射されると、散乱層113は、散乱光を発する様になっている。チルトによる収差は、この散乱光にて検出される。
図10は、本発明の実施の形態3における光ディスク装置の構成を示す図である。図10に示す光ディスク装置は、図9に示す光ディスクを適用した例である。光ディスク126は、図9で示された多層光ディスクである。光ディスク126は、記録層スタック128とは別に散乱層125を含んでいる。散乱層125は、記録層スタック128内の記録層と平行な位置関係にある。なお、デフォーマブルミラー6Qの球面収差補正を行うための偶対称収差センサ6Sは図示されていないが、実施の形態1と同等のものが備えられている。
レーザ駆動回路(第1のレーザ駆動回路)60は、レーザ(第1のレーザ)61を駆動して波長λ0のレーザ光を発振させている。レーザ61から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ(第1のコリメートレンズ)62によって平行光に変換されて、デフォーマブルミラー6Qに入射する。デフォーマブルミラー6Qでは、図10には示されていない波長λ0のレーザ光の球面収差センサの検出値により球面収差補正が行われる。すなわち、サーボコントローラ130は、波長λ0のレーザ光を集光する記録層に合わせた球面収差が付加される形になる様に、図10には示されていない偶対称収差センサの球面収差検出値によりデフォーマブルミラー6Qを制御する。デフォーマブルミラー6Qによって反射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッター124に入射する。
また、第2のレーザ駆動回路121は、第2のレーザ122を駆動して波長λ1のレーザ光を発振させている。この波長λ0と波長λ1とは異なる波長である。例えば、λ0は405nmであり、λ1は、650nm、又は780nmである。第2のレーザ122から出射されたレーザ光は、第2のコリメートレンズ123によってほぼ平行光に変換されて、偏光ビームスプリッター124に入る。
波長λ0と波長λ1の2つのレーザ光は、偏光ビームスプリッター124の入射面とは異なる面から出射される。出射される波長λ0のレーザ光の光軸とλ1のレーザ光の光軸とはそろっている。また、波長λ1のレーザの開口数は、波長λ0のレーザの開口数より小さくなっている。
偏光ビームスプリッター124から出射した波長λ0と波長λ1のレーザ光は、偏光ビームスプリッター63に入射する。偏光ビームスプリッター63に入射した波長λ0と波長λ1のレーザ光は、偏光ビームスプリッター63をそのまま透過して、1/4波長板6Tを通り、対物レンズ64に入る。対物レンズ64は、波長λ0のレーザ光を光ディスク126内の記録層スタック128内の所定の記録層に集光させる。また、同時に、図10では示していない第2のコリメートレンズ123のアクチエータによる第2のコリメートレンズ123の位置制御により、対物レンズ64は、波長λ1のレーザ光を散乱層125に集光させる。散乱層125は、第2のレーザ122によって照射された波長λ1のレーザ光のエネルギーを吸収して波長λ1の散乱光を出射し、出射された散乱光の一部が、対物レンズ64に再び入射し、1/4波長板6Tを通り、更に、偏光ビームスプリッター63に入射する。また、記録層スタック128の所定の記録層に集光した波長λ0のレーザ光は、記録層スタック128の所定の記録層で反射して再び対物レンズ64に入射し、1/4波長板6Tを通り、更に、偏光ビームスプリッター63に入射する。
偏光ビームスプリッター63に入射した記録層スタック128の記録層からの反射光と散乱層125からの散乱光とは、偏光ビームスプリッター63によって往路光とは異なった方向に反射されて、光学フィルタ127に入射する。光学フィルタ127は、波長λ0の光を透過させ、波長λ1の光を反射させる分光特性を持っている。よって、光ディスク126の記録層からの反射光は、この光学フィルタ127を通過することができず、不図示の再生信号センサに入射する。再生信号センサは、入射した反射光を検出し、記録層に記録されている情報を読み出す。また、光学フィルタ127では、散乱層125からの波長λ1の散乱光が透過される。光学フィルタ127を透過した波長λ1の散乱光は、反射ミラー102によって反射され、点線で囲まれたチルトセンサ129に入射する。このチルトセンサ129は、図8に示すチルトセンサ108と同じ構成であり、レーザ光の波長や開口数が異なるのみである。チルトセンサ129に入射した散乱光は、ホログラム104に入射する。ホログラム104では、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスXコマ収差、バイアスYコマ収差が付加される。ホログラム104にてバイアス収差が加えられたレーザ光は、集光レンズ6Dに入射する。集光レンズ6Dに入射したレーザ光は、ピンホール群105上に集光される。ピンホール群105上には、付加されたバイアス収差に対応した4つのピンホールが設けられている。
ピンホールを通過したレーザ光は、フォトセンサ群106上の各々のピンホールに対応したフォトセンサに入射する。フォトセンサに入射した光は、電気信号に変換されて、収差モード検出回路107に入力される。各フォトセンサの信号は、収差モード検出回路107内で収差モード毎に差動増幅され、X−Yチルト検出信号6N(X−Yコマ収差検出信号)を出力する。
図10の光ディスク装置の動作は、図8と同様であるので説明を省略する。
また、図10には示されていない波長λ0のレーザ光の球面収差センサ、波長λ0のレーザ光のデフォーカスセンサ、再生信号センサは、光学フィルタ127に入射する前のレーザ光を分け、そのレーザ光にて動作する様になっている。
尚、散乱層125の代わりに乱反射面や蛍光層を使用しても同様の効果が得られる。
以上説明した様な本実施の形態の光ディスク装置によっても、散乱層に照射されたレーザ光の位相はランダム化されて散乱光となり復路光だけの収差を持つ為に、この散乱光のチルト収差、又は、コマ収差を検出することで、散乱層のチルト検出ができて、間接的に記録層のチルト検出が可能となる。
また、記録層スタック128以外の異なる層に散乱層125が設けられているため、記録層内に散乱部を構成する場合に比べて光ディスクの製造を極めて容易にすることができる。また、情報を記録する面として記録層の全面を利用でき、収差検出も時間的に連続して行うことができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について図面を参照しながら説明する。
図3の光ディスク装置では、光ディスク66に記録層スタック67内の記録層に平行な反射層68を設けて反射層からの反射光のチルト収差やコマ収差がキャンセルされない様にしていた。本実施の形態の光ディスク装置は、反射層を設ける代わりに、往路光の波面を所定の形に変形して、記録層からの反射光のチルト収差やコマ収差がキャンセルされない様にした例である。往路光の波面の変形の方法としては、所定量の球面収差、又は、デフォーカス収差を波面に残す方法などが考えられる。よって、実施の形態4における構成は、図3とほとんど同じである。異なる点は、以下の2点である。1点は、本実施の形態の光ディスクが、デフォーカスした反射光を作る反射層を持っていない点である。また、他の1点は、本実施の形態の光ディスク装置が、記録層によって反射されたレーザ光だけを検出しているので、図3での偶対称収差センサ6Sを備えていない点である。また、構成は同じであるが、動作が異なる点は、図3の光ディスク装置におけるデフォーマブルミラー6Qは球面収差をキャンセルしていたが、本実施の形態におけるデフォーマブルミラーは往路光の波面を所定の形に変形している。
図11は、本発明の実施の形態4における光ディスク装置の構成を示す図であり、往路光に所定量の球面収差を残す方法を適用した場合の光ディスク装置を説明している。光ディスク131は、図2で示された多層光ディスクから反射層53を取り除いた構成となっている。
図11に示すレーザ61、レーザ駆動回路60及びコリメートレンズ62は、図3と同じ構成であるので、説明を省略する。コリメートレンズ62によって平行光にされた光ビームは、デフォーマブルミラー6Qによって球面収差補正される。デフォーマブルミラー6Qでの球面収差補正値は、サーボコントローラ6Uによって決定される。サーボコントローラ6Uは、チルトセンサ6Pから球面収差量信号が入力されると、その値に基づいて所定の演算を行い、球面収差補正値を決定する。この球面収差補正値は、球面収差が所定量残る様に演算された値である。サーボコントローラ6Uは、デフォーマブルミラー駆動回路6Rを通して球面収差補正値に対応する面になるようにデフォーマブルミラー6Qを制御する。この様なフィードバックループにより、図2に示す記録層スタック52内の所定の記録層59に集光しているレーザ光57に含まれる球面収差が所定量になる様に制御されている。
デフォーマブルミラー6Qから出射したレーザ光は、偏光ビームスプリッター63を透過して1/4波長板6Tを通り、対物レンズ64に入射する。サーボコントローラ6Uは、チルトセンサ6Pからのデフォーカス収差量に基づき対物レンズアクチエータ65を制御する。対物レンズアクチエータ65は、記録層スタック67内の所定の記録層にレーザ光が集光する様に対物レンズ64を駆動する。
記録層スタック67内の所定の記録層に到達したレーザ光は、記録層スタック67内の所定の記録層によって反射されて対物レンズ64に戻っていく。この時、往路光に含まれる収差(この場合は、球面収差)により往路光と復路光、即ち、記録層スタック内の所定の記録層に集光して反射したレーザ光のチルト収差及びコマ収差はキャンセルされない。
対物レンズ64に戻ったレーザ光は、対物レンズ64及び1/4波長板6Tを通り、偏光ビームスプリッター63で往路光とは異なったに方向反射されてチルトセンサ6Pの内部に入射する。
チルトセンサ6Pに入射したレーザ光は、デフォーマブルミラー6Aに入射する。デフォーマブルミラー駆動回路6Bは、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iから入力される球面収差制御信号6Mに応じてデフォーマブルミラー6Aのミラー形状を変えていく。デフォーマブルミラー6Aは、チルトセンサ6Pに入射したレーザ光の球面収差をキャンセルする。この球面収差は、デフォーマブルミラー6Qで所定量の球面収差を残した分である。なお、ここで球面収差をキャンセルしなくとも後述するピンホール群6F上で十分な強さのビームスポットが得られる場合は、デフォーマブルミラー6Aは必要ない。
デフォーマブルミラー6Aで反射したレーザ光は、ホログラム6Cに入射する。ホログラム6Cでは、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスXコマ収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスYコマ収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスデフォーカス収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアス球面収差の8種類のバイアス収差を加えている。各々のバイアス収差の収差量は、検出する収差量により決まり、検出する収差量の半分程度が望ましい。
ホログラム6Cによってバイアス収差が加えられたレーザ光は、集光レンズ6Dに入射する。集光レンズ6Dは、集光レンズアクチエータ6Eで保持されている。集光レンズアクチエータ6Eは、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iから入力されるデフォーカス収差制御信号6Lに応じて集光レンズ6Dのフォーカス位置を移動させる。先に述べたように、この集光レンズ6Dを動かすことで、デフォーカス収差をキャンセルしている。なお、ここでデフォーカス収差をキャンセルしなくとも後述するピンホール群6F上で十分な強さのビームスポットが得られる場合は、集光レンズアクチエータ6Eは必要なく、集光レンズ6Dは、所定の位置に固定されていても良い。
集光レンズ6Dに入射したレーザ光は、ピンホール群6F上に集光される。ピンホール群6F上には、付加されたバイアス収差に対応した8つのピンホールが設けられている。各々のピンホールの半径は、エアリーディスク径の例えば1/1.22倍としている。
ピンホール群6Fを通過したレーザ光は、フォトセンサ群6G上の各々のピンホールに対応したフォトセンサに入射する。フォトセンサに入射した光は、電気信号に変換されて、収差モード検出回路6Hに入力される。収差モード検出回路6Hは、各フォトセンサから入力される信号を収差モード毎に差動増幅し、X−Yチルト検出信号6N(X−Yコマ収差検出信号)、デフォーカス収差信号6J、球面収差信号6Kを出力する。このX−Yチルト検出信号6N(X−Yコマ収差検出信号)がこのチルトセンサ6Pの出力となる。
デフォーカス収差信号6J、球面収差信号6K及びX−Yチルト検出信号6Nは、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iに入力される。デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、収差モード検出回路6Hから入力されたデフォーカス収差検出信号6Jに基づいて、集光レンズ6Dに入射するレーザのデフォーカス収差をキャンセルするデフォーカス収差制御信号6Lを作成し、作成したデフォーカス収差制御信号6Lを集光レンズアクチエータ6Eに出力する。また、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、収差モード検出回路6Hから入力された球面収差信号6Kに基づいて、デフォーマブルミラー6Aに入射するレーザ光の球面収差をキャンセルする球面収差制御信号6Mを作成し、作成した球面収差制御信号6Mをデフォーマブルミラー駆動回路6Bに出力する。また、同時に、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、デフォーカス収差検出信号、球面収差検出信号及びX−Yチルト検出信号の4つの信号をサーボコントローラ6Uに出力する。尚、サーボコントローラ6Uとデフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iとは、双方向の通信ラインにて結ばれている。
次に、本実施の形態での光ディスク装置の動作について説明を行う。電源ON時などの初期状態において、サーボコントローラ6Uは、記録層スタック67内の所定の記録層にレーザ光が集光する様に対物レンズアクチエータ65を動作させ、対物レンズ64を制御する。初期状態からチルト検出信号が出力されるまでの制御手順の一例を以下に示す。
(1)一旦、対物レンズアクチエータ65は、レーザ光が光ディスク66の表面(又は、記録層スタック67内の複数の記録層のうちの最も上層の記録層)に集光する様に対物レンズ64をおおよその位置に移動させる。
(2)サーボコントローラ6Uは、対物レンズアクチエータ65を駆動し、光ディスク66の表面(又は、記録層スタック67内の複数の記録層のうちの最も上層の記録層)によって反射された反射光を用いて、デフォーカス収差信号6Jで“S字曲線”が検出できる様に対物レンズ64の位置調整を行う。更に、デフォーカス収差・球面収差キャンセルコントローラ6Iは、チルトセンサ6Pの集光レンズアクチエータ6Eを駆動し、集光レンズ6Dの位置調整を行う。また、同時に、デフォーマブルミラー6Aとデフォーマブルミラー6Qとは、球面収差補正量が同じになる様に、光ディスク66の表面に対応した球面収差補正を行う。
(3)光ディスク66の表面(又は、記録層スタック67内の複数の記録層のうちの最も上層の記録層)によって反射された反射光にて、デフォーカス収差信号6Jで“S字曲線”が検出されたら、サーボコントローラ6Uは、対物レンズ64を移動させることによって、レーザ光の集光位置を光ディスク66の表面より下方向に移動させる。そして、サーボコントローラ6Uは、(2)と同様に、順次、次の記録面の“S字曲線”が検出できる様にデフォーマブルミラー6Aとデフォーマブルミラー6Qとチルトセンサ6Pの集光レンズ6Dとを制御し、記録層の“S字曲線”の検出個数をカウントしながら記録層スタック67内の所定の記録層の”S字曲線”を検出する。
(4)記録層スタック67内の所定の記録層の”S字曲線”が検出されたら、サーボコントローラ6Uは、(2)と同様に、チルトセンサ6Pのデフォーカス収差信号6Jと球面収差信号6Kとに基づいて、記録層スタック67内の所定の記録層にレーザ光が集光する様に対物レンズ64とデフォーマブルミラー6Qと集光レンズ6Dとデフォーマブルミラー6Aとを制御する。
(5)サーボコントローラ6Uは、デフォーマブルミラー6Aとデフォーマブルミラー6Qでの球面収差量の補正量を所定の量だけ差を持たせて制御する。この時に出力されるX−Yチルト検出信号が記録層スタック67内の記録層のチルトを検出している。
以降、サーボコントローラ6Uは、チルトセンサ6Pのデフォーカス収差信号6Jで、“S字曲線”を検出し、所定の記録層にレーザ光が集光する様に対物レンズ64を制御する。同時に、サーボコントローラ6Uは、チルトセンサ6Pの球面収差信号6Kで、“S字曲線”を検出し、デフォーマブルミラー6Aとデフォーマブルミラー6Qとの補正球面収差量に所定量の差を持たせる様に制御する。
また、先に述べた様に、往路光の波面を変形することは、光ディスク131の記録層上の集光点の形状、即ち、ビームスポットが回折限界まで絞らないことを意味する。これは、ビームスポットが大きくなり、記録密度を低下させることを意味する。よって、往路光の波面の変形は、ユーザデータの記録容量に影響しない様に、所定のタイミング、例えば、データフォーマット上で、有意データを記録していない領域、ランイン及びランアウトなどの領域で時分割して行われる。
尚、記録及び再生のレーザ光と異なる波長のレーザ光にて本実施の形態のチルト検出を行えば、上記時分割処理は必要ない。
更に、往路光の波面を変形する波面の形状としては、所定量のデフォーカス収差や球面収差を加える以外に開口を狭くする方法がある。この場合、波面の変形の効果と、開口を狭くすることで、記録層上のビームスポットが大きくなり、記録層上の凹凸が散乱面と見なせる効果と、記録層上の記録マークが散乱物質となり散乱光を発生する効果とが加わる。
以上説明した様な本実施の形態の光ディスク装置によれば、記録層に照射するレーザ光の波面に所定のデフォーカス収差や球面収差を含ませるので、記録層が平坦であっても、その反射光で記録層のチルトに対応したチルト収差又はコマ収差を検出することができ、高精度なチルト検出が可能となる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について図面を参照しながら説明する。
実施の形態1から実施の形態4までの光ディスク装置は、光ディスクによる反射光を検出することで光ディスクのチルトを検出している。これに対し、実施の形態5の光ディスク装置では、記録層を透過して光ディスクのレーザ光入射面と反対側の面に出射するレーザ光のチルト収差やコマ収差を検出することで、光ディスクのチルトを検出する。
図12は、本発明の実施の形態5におけるチルト検出の原理について説明するための図である。なお、説明を簡単にするため、図12では、記録層が1層の例を示しているが、記録層が複数積層されている場合でも同様である。図12は、光ディスクがチルトしている時に平坦な記録層44に集光しているレーザ光の光路を示している。図12において、レーザ光の光軸40は、記録層44の法線41に対して所定の角度48だけ傾いており、この角度48がチルト角度である。光ディスク表面45から入射したレーザ光は、上部基材42、記録層44、下部基材43及び光ディスク裏面46をそれぞれ透過し、外部へ出射する。すなわち、光路47aは、A1より光ディスク表面45上のB1、記録層44上のC1、光ディスク裏面上のD1、E1を通る。光路47aと光軸40に対して対称な光路47bは、A2より光ディスク表面45上のB2、記録層44上のC2、光ディスク裏面上のD2、E2を通る。B1からC1までの光路長は、光ディスクがチルトしているので、その分B2からC2までの光路長より短い、また、C1からD1までの光路長は、光ディスクがチルトしているので、その分C2からD2までの光路長より短い。よって、光路47aは、光路47bより短い。
光軸40に対称な光路は、同様の関係にある。よって、光ディスクのチルトにより、透過したレーザ光に光軸に非対称な収差が現れ、それがチルト収差、コマ収差となる。よって、記録層による反射光でチルトを検出する時と異なり、透過光ではチルト収差やコマ収差がキャンセルされない。図12で示した様に、光ディスクがチルトしている時、光ディスクを透過したレーザ光には、チルト収差やコマ収差がキャンセルされずに残されている。
図13は、本発明の実施の形態5における光ディスク装置の構成を示す図であり、透過光にて光ディスクのチルトを検出する方法を適用した時の光ディスク装置を説明している。光ディスク140は、図3で示された光ディスク66から反射層68を取り除くことで、記録層スタック67を透過し、更にレーザ光入射面と反対側の面を透過するする構造となっている。
図13に示すレーザ61、レーザ駆動回路60、コリメートレンズ62、デフォーマブルミラー6Q、偏光ビームスプリッター63、1/4波長板6T、対物レンズ64及び対物レンズアクチエータ65の構成は、図3と同じであるので説明を省略する。
記録層スタック67内の所定の記録層に集光したレーザ光の一部は、記録層スタック67を透過して、更に、レーザ光入射面とは反対側の面より光ディスク140の外へ出射する。
記録層スタック67内の所定の記録層に集光したレーザ光の他の一部分は、反射して対物レンズ64に戻っていく。対物レンズ64に戻ったレーザ光は、対物レンズ64及び1/4波長板6Tを通り、偏光ビームスプリッター63で往路光と異なったに方向反射して偶対称収差センサ6Sの内部に入射する。
平面ミラー102Aによって反射されて偶対称収差センサ6Sに入射したレーザ光は、ホログラム6Wに入射する。ホログラム6Wでは、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスデフォーカス収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアス球面収差の4種類のバイアス収差を加えている。各々のバイアス収差の収差量は、検出する収差量により決まり、検出する収差量の半分程度が望ましい。
ホログラム6Wにてバイアス収差が加えられたレーザ光は、集光レンズ6Xに入射する。集光レンズ6Xは、対物レンズ64の集光点からのレーザ光をピンホール群6Y上に集光する様に位置が調整されている。
集光レンズ6Xに入射したレーザ光は、ピンホール群6Y上に集光される。ピンホール群6Y上には、ホログラム6Wによって付加されたバイアス収差に対応した4つのピンホールが設けられている。各々のピンホールの半径は、エアリーディスク径の例えば1/1.22倍としている。
ピンホール群6Yを通過したレーザ光は、フォトセンサ群6Z上の各々のピンホールに対応したフォトセンサに入射する。フォトセンサに入射した光は、電気信号に変換されて、収差モード検出回路610に入力される。収差モード検出回路610は、各フォトセンサから入力される信号を収差モード毎に差動増幅し、差動増幅したデフォーカス収差信号14A及び球面収差信号14Bをサーボコントローラ143に出力する。サーボコントローラ143は、デフォーカス収差信号14A及び球面収差信号14Bの示す値によって、デフォーマブルミラー6Qを駆動するデフォーマブルミラー駆動回路6R、及び対物レンズ64を駆動する対物レンズアクチエータ65を制御する。
一方、光ディスク140を透過したレーザ光は、透過側対物レンズ141に入射する。対物レンズ64と透過側対物レンズ141とは、対物レンズ64の集光点と透過側対物レンズ141の焦点とが一致する様にサーボコントローラ143により制御されている。よって、透過側対物レンズ141は、透過側対物レンズ141に入射するレーザ光を平行光に変換している。
透過側対物レンズ141を出射したレーザ光は、平面ミラー102Bによって反射されてチルトセンサ144に入射する。チルトセンサ144に入射したレーザ光は、ホログラム145に入射する。ホログラム145は、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスデフォーカス収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスXチルト収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアスYチルト収差、符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアス0度非点収差、及び符号の異なる同じ大きさの2種類のバイアス45度非点収差の合計10種類のバイアス収差をレーザ光に加えている。各々のバイアス収差の収差量は、検出する収差量により決まり、検出する収差量の半分程度が望ましい。
ホログラム145にてバイアス収差が加えられたレーザ光は、集光レンズ146に入射する。集光レンズ146は、対物レンズ64及び集光レンズ146の集光点からのレーザ光をピンホール群147上に集光する様に位置が調整されている。
集光レンズ146に入射したレーザ光は、ピンホール群147上に集光される。ピンホール群147上には、ホログラム145によって付加されたバイアス収差に対応した10個のピンホールが設けられている。各々のピンホールの半径は、エアリーディスク径の例えば1/1.22倍としている。
ピンホール群147を通過したレーザ光は、フォトセンサ群148上の各々のピンホールに対応したフォトセンサに入射する。フォトセンサに入射した光は、電気信号に変換されて、収差モード検出回路149に入力される。収差モード検出回路149は、各フォトセンサによって入力された信号を収差モード毎に差動増幅し、差動増幅したデフォーカス収差検出信号、Xチルト検出信号、Yチルト検出信号、0度非点収差検出信号、及び45度非点収差検出信号の5つの検出信号をサーボコントローラ143に出力する。
0度非点収差及び45度非点収差が共に最小になる時に、対物レンズ64と透過側対物レンズ141との光軸が一致している。また、デフォーカス収差が最小になる時に、対物レンズ64と透過側対物レンズ141との集光点が一致している。よって、サーボコントローラ143は、0度非点収差検出信号及び45度非点収差検出信号が共に最小になる様に、透過側対物レンズアクチエータ142で透過側対物レンズ141の位置を制御することで、対物レンズ64と透過側対物レンズ141との光軸を一致させる。更に、サーボコントローラ143は、デフォーカス収差検出信号が最小になる様に、透過側対物レンズアクチエータ142で透過側対物レンズ141の位置を制御することで、対物レンズ64と透過側対物レンズ141との集光点を一致させる。
これら3つの検出信号が最小となる時のXチルト検出信号とYチルト検出信号とで、X方向とY方向のチルトを検出することができる。サーボコントローラ143は、Xチルト検出信号とYチルト検出信号とに基づいて、対物レンズアクチエータ65と透過側対物レンズアクチエータ142とを制御して、対物レンズ64と透過側対物レンズ141とを傾けて光ディスク140のチルトをキャンセルする。
以上説明した様な本実施の形態の光ディスク装置によれば、記録層に照射するレーザ光の一部を透過させてレーザ光入射面と反対側の面より出射させ、レーザ光の入射面と反対側の面より出射してきたレーザ光の波面の傾きを検出することで、光ディスクの高精度なチルト検出が可能となる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について図面を参照しながら説明する。
実施の形態6では、開口数(以下、NA:Numerical Apertureとする)が小さな光ビームで散乱物質を照射し、散乱した光をNAが大きな対物レンズで受光することで、実施の形態2よりもさらに感度の高い光ディスクのチルトの検出を実現している。
図14は、本発明の実施の形態6におけるチルト検出の原理について説明するための図であり、図14(a)は、光ディスクの断面を示す図であり、図14(b)は、図14(a)の光軸30に対して垂直な断面39において、光軸方向から光ディスクを見た場合の往路光と復路光とを示す図である。なお、図14(a)では、説明を簡単にするため、記録層が1層の例を示しているが、記録層が複数積層されている場合でも同様である。
図14(a)において、レーザ光の光軸30は、記録層32の法線31に対して所定の角度36だけ傾いており、この角度36がチルト角度である。基材37に入射した波長λ0のレーザ光は、記録層32の散乱部33によって散乱され、波長λ0の散乱光となる。往路光路34は、開口数、即ちNAが小さく、そして記録層32に集光している。往路光路34は、記録層32上の散乱物質33により散乱され、記録層法線31を中心に広い角度に散乱していく。よって、往路より大きいNAで散乱光を受光すると、開口部分の散乱光、即ち、復路光路35の光路内で往路光路34の光路と重ならない部分の反射光は、チルトによる収差がキャンセルされない。その部分は、図14(a)上で収差をキャンセルしない光路38、即ち、ほぼ復路光路35の外周輪帯開口部分である。図14(b)において、NAが小さい往路光路34と復路光路35とを合わせた光路3aが中心にあり、散乱光の一部分である復路光路35が中心部分も含めて広い範囲に分布している。収差がキャンセルされない光路38の外周輪帯開口部分は復路光路35だけである。よって、チルトを復路光路35によって検出することができる。
図15は、本発明の実施の形態6における光ディスク装置の構成を示す図である。なお、実施の形態6の構成は、実施の形態2とほとんど同じであるので説明を省略する。実施の形態2と異なる点は、デフォーマブルミラー6Qの動作と、ホログラム104の機能とである。
記録又は再生中(以下、記録再生モードと呼ぶ)において、デフォーマブルミラー6Qは、コリメートレンズ62からの光に球面収差を与えて、往路光が記録層に集光するまでに加わる球面収差をキャンセルする様にする。また、デフォーマブルミラー6Qは、周期的又は所定のタイミングで、デフォーマブルミラー6Qの外周輪帯部分を蹴ってNAが小さい光ビームを散乱部101に照射する(以下、チルト検出モードと呼ぶ)。記録再生モード時のNAは、0.6以上、0.85以下が望ましく、外周輪帯部分を蹴ったチルト検出モード時のNAは、0.1以上、0.2以下が望ましい。
デフォーマブルミラー6Qによって外周部分を蹴られたNAが小さい光ビーム、即ち、往路光は、偏光ビームスプリッター63、1/4波長板及び対物レンズ64を通り、光ディスク103内の所定の記録層に集光する。記録層には、散乱部101が設けられていて、散乱部101にビーム光が集光すると、散乱光が発生する。散乱光の内、対物レンズ64で受光された光でチルト検出を行う。この光を復路光と呼ぶ。よって、往路光のNAより復路光のNAの方が大きくなっている。この時の復路光のNAは、0.6以上が望ましい。
図15上で、一点鎖線で示されているのが、復路光である。復路光は、対物レンズ64及び1/4波長板6Tを通り、偏光ビームスプリッター63で反射して、ミラー102で更に反射して、チルトセンサ151に入射する。
チルトセンサ151は、図8に示す実施の形態2のチルトセンサ108と同じ種類のモーダルセンサであるが、チルト検出には、実施の形態2の場合の様に、一点鎖線で示された範囲の光を全て使用するのではなく、図14内に示された収差がキャンセルされない部分38に相当部分を使用する点が異なる。この部分の光は、図14より明らかの様に、ほぼ全てが散乱光であるので、非散乱光の影響が排除され、微弱な散乱光でも高いSN比が得られる。また、通常時(記録再生モード時)は、デフォーカス収差及び球面収差を検出する様になっている。
チルトセンサ151に入射した復路光は、ホログラム152に入射する。ホログラム152は、2つの部分に分かれている。1つは、外周の輪帯部分(図14(b)での収差がキャンセルされない部分38)であり、X方向及びY方向の2方向のチルト検出の為に正負のバイアスコマ収差が与えられる部分となっている。また、他の部分は、中心部分(図14(b)での往路光路34と復路光路35との重複部分3a)であり、正負のバイアスデフォーカス収差及び正負のバイアス球面収差が与えられる部分となっている。
バイアス収差が与えられた各々の復路光は、集光レンズ6Dを通り、ピンホール群154上の異なったピンホールに集光する様になっている。ピンホール群154を通過した光は、フォトセンサ群153上の各々別々のフォトセンサに入射する。フォトセンサ群153から、各々のフォトセンサに対応した検出信号が収差モード検出回路155に送られる。収差モード検出回路155は、各々の正負のバイアス収差が与えられたペアになる信号の差動増幅信号を生成し、各々X−Yチルト検出信号、デフォーカス検出信号及び球面収差検出信号を出力する。
実施の形態6では、実施の形態2で示した散乱による往路光の位相のランダム化で復路光の収差がキャンセルされないでチルトを検出する効果に加え、往路光に復路光よりも小さいNAの光ビームを使用することにより、往路光の位相影響がより一層小さくなり、復路光のチルト検出精度を上げることができる。さらに、散乱光だけが含まれている輪帯部分をチルト検出に使用するので、SN比が良くなり、より一層復路光のチルト検出精度を上げることができる。
また、実施の形態6では、1つの光ビームをデフォーマブルミラー6Qでチルト検出モードと記録再生モードとを時系列で切り替えているので、実施の形態2などと比べて構成を簡略化することができる。
なお、実施の形態6における光ディスクは、図9に示すように記録層と散乱層とを備えるものであってもよい。この場合はモード切り替え時にデフォーマブルミラー6Qは開口数だけでなくフォーカス位置も変えながら集光ビームを記録層と散乱層とに切り替える。この様な場合1ビームでも収差検出と記録再生とが可能であると共に、散乱部にレーザ光を照射するタイミングを装置側で任意に設定できるため、収差検出精度とディスクの記録再生の転送速度とのトレードオフに関する最適化が容易である。例えば、光ディスクのチルトが小さい場合には、収差検出頻度を下げることもできる。
また、さらに、光ディスクとしては、特に意図的に散乱部を形成していないものを用いても良い。例えば、通常の光ディスクの反射面でもNAを小さくしたチルト検出モードでは、入射した光の一部を輪帯領域側に散乱する程度の散乱性を有する。この場合、小さい開口数でレーザ光が入射されているために、記録層上のレーザ光のビームスポット径が大きくなる。この様な条件下では、ビームスポット内の記録マーク自体が散乱粒子とほぼ等価な働きをして、十分高い散乱性が得られる。
なお、以上では光ディスクの場合を用いて説明したが、本発明は、レーザを照射して情報の記録または再生を行いうる記録媒体と、それを制御する装置や方法に広く及ぶものである。
上記したように、本願発明に係る光ディスク装置は、透明な平板状のディスク基材と、前記ディスク基材に設けられた記録層と、前記記録層と所定の位置関係にある反射層とを備えた光ディスクに対し、光ビームを前記ディスク基材を介して前記記録層に照射し、前記記録層上に集光スポットを形成する光源と、前記反射層により反射された反射光を受光する光検出器と、前記光検出器の出力を用いて前記光ディスクのチルト検出を行うチルト検出手段とを備えることを特徴とする。
上記のように構成することによって、往路光と復路光とでの光ビームの収差の相殺によるチルト収差検出感度の低下を防止し、高精度のチルト検出を行うことができる。また、光ディスクの記録層に溝やピットが無くてもチルトを検出することができ、記録層が複数積層される多層記録における他の記録層での回折、散乱による光量の低下を効果的に抑制することができる。
また、上記発明において、前記記録層が前記反射層よりも前記光ビームの入射面に近いことが好ましい。上記のように構成することによって、記録層を透過した一部の光ビームが反射層により反射され、反射層により反射された光ビームを用いてチルト検出を行うので、記録層に記録されている情報を再生しながら、又は記録層に情報を記録しながらチルト検出を行うことができる。
また、上記発明において、前記反射光を前記光検出器に導く光路中に形成され、反射光のデフォーカス収差及び球面収差をキャンセルする収差キャンセル手段をさらに備えることが好ましい。
上記のように構成することによって、反射光に含まれるデフォーカス収差及び球面収差がキャンセルされるので、シュトレール比の高いクリアなビームスポットが得られ、SN比の高い検出出力を得ることができ、チルト検出の精度を向上させることができる。
また、上記発明において、前記収差キャンセル手段は、前記反射光の波面を制御する波面制御デバイスを備えることが好ましい。上記のように構成することによって、波面制御デバイスは反射光の波面を任意に変化させることが可能であるので、反射光に含まれる球面収差を簡単な構成でキャンセルすることができる。
また、上記発明において、前記収差キャンセル手段は、前記光検出器に前記反射光を集光する集光レンズと、前記集光レンズを移動させるレンズ移動手段とをさらに備えることが好ましい。
上記のように構成することによって、レンズ移動手段を用いて集光レンズを移動させるので、集光レンズの位置を変えることによりデフォーカス収差をキャンセルすることができ、チルト検出の精度を向上させることができる。
また、本願発明に係る光ディスクは、透明な平板状のディスク基材と、前記ディスク基材に設けられた記録層と、前記ディスク基材を介して入射した光ビームを反射させる反射層とを備え、前記記録層を挟んで前記ディスク基材と対向する位置に配置され、前記記録層と前記反射層との間隔が前記光ビームの波長よりも長い距離に設定されていることを特徴とする。
上記のように構成することによって、反射層により反射される反射光には、チルト収差やコマ収差がキャンセルされずに含まれるので、このチルト収差やコマ収差を用いてチルト検出を行うことができる。
また、上記発明において、前記記録層は、光ビームが照射されることによって2光子吸収現象を生じさせる光異性化材料により形成されることが好ましい。上記のように構成することによって、2光子吸収現象を利用して光ビームの焦点部分の光異性化材料のみ屈折率を変化させることができ、多層方式の光ディスクにおいて、光ビームの焦点を深さ方向に制御することによって、記録する記録層を選択することができる。
また、本願発明に係る光ディスク装置は、透明な平板状のディスク基材と、前記ディスク基材に設けられた記録層と、前記ディスク基材を介して入射した光ビームの位相を少なくとも一部ランダム化する散乱部とを備える光ディスクに対し、光源から出射した光ビームを前記ディスク基材を介して前記散乱部に照射して集光スポットを形成する光源と、前記散乱部によって散乱された散乱光を受光する光検出器と、前記光検出器の出力を用いて前記光ディスクのチルト検出を行うチルト検出手段とを備えることを特徴とする。上記のように構成することによって、往路光と復路光とでの光ビームの収差の相殺によるチルト収差検出感度の低下を防止し、高精度のチルト検出を行うことができる。
また、上記発明において、前記光源は、第1の光ビームを発生し、当該第1の光ビームを前記記録層上の情報記録部に集光して第1の集光スポットを形成する第1の光源と、前記第1の光ビームとは波長が異なる第2の光ビームを発生し、当該第2の光ビームを前記散乱部上に集光して第2の集光スポットを形成する第2の光源とを含み、前記光検出器は、第1の集光スポットにより反射された前記第1の光ビームを受光する第1の検出器と、第2の集光スポットにより反射された前記第2の光ビームを受光する第2の検出器とを含み、前記チルト検出手段は、前記第2の光検出器の出力を用いて前記光ディスクのチルト検出を行い、前記第1の光検出器の出力を用いて前記記録層に記録された情報を検出する記録情報検出手段をさらに備えることが好ましい。
上記のように構成することによって、記録層に記録された情報を検出するための第1の光ビームと、チルト検出を行うための第2の光ビームとの2つの光ビームが別個に照射されるので、記録層に記録されている情報の読み出しと、チルトの検出とを同時に行うことができる。
また、本願発明に係る光ディスクは、透明な平板状のディスク基材と、前記ディスク基材に設けられた記録層と、前記ディスク基材を介して入射した光ビームの位相を少なくとも一部ランダム化する散乱部とを備えることが好ましい。
上記のように構成することによって、光ビームの往路で発生した収差を含む波面の位相を、散乱部がランダム化し、この散乱部からの反射光を用いてチルトを検出する。光ビームが散乱されると、その散乱光は、もはや散乱される前の光ビーム、即ち、往路光の波面との相関が少なく又は無相関になり、散乱されてからの光、即ち、復路光の収差が加わり、チルト収差、コマ収差がキャンセルされない。これはあたかも、散乱の中心に新たに点光源を設けた様な振る舞いになる。このように、散乱部により散乱される散乱光には、チルト収差やコマ収差がキャンセルされずに含まれるので、このチルト収差やコマ収差を用いてチルト検出を行うことができる。
また、上記発明において、前記散乱部は、前記記録層に設けられることが好ましい。上記のように構成することによって、記録層に散乱部が設けられるので、記録層の散乱部に光ビームを集光させることで、光ビームを散乱させることができる。
また、上記発明において、前記散乱部は、前記記録層に設けられたサーボマークであることが好ましい。上記のように構成することによって、光ビームを散乱させる散乱部を記録層に別途設ける必要がなく、記録層に設けられているサーボマークを用いて光ビームを散乱させることができる。
また、上記発明において、前記散乱部は、前記記録層とは異なる層に設けてもよい。上記のように構成することによって、記録層以外の異なる層に散乱部が設けられているため、記録層内に散乱部を構成する場合に比べて光ディスクの製造を極めて容易にすることができる。また、情報を記録する面として記録層の全面を利用でき、収差検出も時間的に連続して行うことができる。
また、上記発明において、前記散乱部は、表面に凹部及び凸部の少なくとも一方を備え、前記光ビームを乱反射させることが好ましい。上記のように構成することによって、表面に微小な凹部及び凸部の少なくとも一方を備える散乱部により光ビームを乱反射させることができる。
また、上記発明において、前記凹部の深さまたは前記凸部の高さは、前記光ビームの半波長分以上であることが好ましい。上記のように構成することによって、光ビームを効率的に乱反射させることができる。
また、上記発明において、前記散乱部は、前記光ビームに対して透過性を有する媒質により形成され、当該媒質中に、前記光ビームを反射する散乱物質をその表面から前記光ビームの半波長分以上の深さにわたって分散させることが好ましい。
上記のように構成することによって、入射した光ビームが様々な深さにある散乱物質に反射されることにより位相がランダム化され、位相がランダム化された光ビームには、チルト収差やコマ収差がキャンセルされずに含まれるので、このチルト収差やコマ収差を用いてチルト検出を行うことができる。
また、上記発明において、前記散乱物質は、前記媒質に前記光ビームよりも高いエネルギーを選択的に付与することにより前記媒質を変質させて形成されることが好ましい。上記のように構成することによって、媒質に光ビームよりも高いエネルギーを選択的に付与することにより媒質を変質させて散乱物質を形成することができる。
また、上記発明において、前記散乱物質は、前記媒質に核となる吸光体を分散して配置し、前記吸光体に選択的に前記光ビームのエネルギーを吸収させて前記核を成長させることにより形成してもよい。
上記のように構成することによって、媒質に核となる吸光体を分散して配置し、吸光体に対して選択的に光ビームのエネルギーを吸収させて核を成長させ、散乱物質を形成することができる。
また、上記発明において、前記散乱部は、前記光ビームの波長とは異なる波長の光を発することが好ましい。上記のように構成することによって、光ビームのエネルギーが吸収されて異なる波長の光が発せられる。したがって、その往路光は、入射する光ビームの波面とは相関が少なく又は無相関になり、復路光の収差が加わり、チルト収差、コマ収差がキャンセルされずに含まれるので、このチルト収差やコマ収差を用いてチルト検出を行うことができる。
また、上記発明において、前記光ビームの波長とは異なる波長の光は、蛍光であることが好ましい。この場合、集光している記録層に集光している光ビームのエネルギーを吸収して、異なる波長の蛍光を発光する部分を集光している記録層上に設け、その蛍光で、集光している記録層のチルトを検出する。光ビームのエネルギーが吸収されて蛍光すると、その蛍光は、もはや往路光、即ち、入射する光ビームの波面とは相関が少なく又は無相関になり、蛍光してからの光、即ち、復路光の収差が加わり、チルト収差、コマ収差がキャンセルされない。従って、蛍光を発する形態も散乱部の1形態となる。
また、本願発明に係る光ディスク装置は、透明な平板状のディスク基材と、前記ディスク基材に設けられた記録層とを備えた光ディスクに対し、光ビームを前記ディスク基材を介して前記記録層に照射する光源と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器と、前記光源によって照射された光ビームを第1の開口数で前記光ディスクに入射させる往路光学系と、前記光ディスクからの反射光を前記第1の開口数よりも大きい第2の開口数で受光して前記光検出器に導く復路光学系と、前記光検出器の出力を用いて前記光ディスクのチルト検出を行うチルト検出手段とを備えることを特徴とする。
上記のように構成することによって、往路光に復路光よりも小さい開口数の光ビームを使用することにより、往路光の位相影響がより一層小さくなり、復路光のチルト検出精度を上げることができる。さらに、散乱光だけが含まれている輪帯部分をチルト検出に使用するので、SN比が良くなり、より一層復路光のチルト検出精度を上げることができる。
また、上記発明において、前記第1の開口数は0.2以下であり、前記第2の開口数は0.6以上であることが好ましい。
上記のように構成することによって、往路光の開口数を復路光の開口数よりも小さくすることができ、往路光の開口数を0.2以下にし、復路光の開口数を0.6以上にすることで、さらに復路光のチルト検出精度を上げることができる。
また、上記発明において、前記光ディスクは、前記反射光の位相を少なくとも一部ランダム化する散乱部を備えることが好ましい。上記のように構成することによって、1ビームでも収差検出と記録再生とが可能であると共に、散乱部に光ビームを照射するタイミングを装置側で任意に設定できるため、収差検出精度とディスクの記録再生の転送速度とのトレードオフに関する最適化が容易である。
また、上記発明において、前記光源によって照射される光ビームを前記記録層上の情報記録部に集光して、前記情報記録部への記録及び再生の少なくとも一方を行う記録再生モードと、前記光源によって照射される光ビームを前記散乱部に集光してチルト検出を行うチルト検出モードとを時分割で切り替えるモード切替手段と、前記光ディスクに入射させる前記光ビームの開口数を前記第1の開口数と前記第2の開口数との間で切り替える開口数切替手段とをさらに備え、前記開口数切替手段は、前記モード切替手段によってチルト検出モードに切り替えられている場合、前記光ビームを前記第1の開口数に切り替え、前記モード切替手段によって記録再生モードに切り替えられている場合、前記光ビームを前記第2の開口数に切り替えることが好ましい。
上記のように構成することによって、1つの光ビームを開口数切替手段(デフォーマブルミラー6Q)でチルト検出モードと記録再生モードとに時系列で切り替えているので、装置の構成を簡略化することができる。なお、実施の形態6におけるデフォーマブルミラー6Qが開口数切替手段の一例に相当する。
また、上記発明において、前記復路光光学系は、前記光ディスクからの反射光について、前記第1の開口数よりも大きくかつ前記第2の開口数以下に対応する輪帯領域内の光を前記光検出器に導くことが好ましい。
上記のように構成することによって、第1の開口数よりも大きくかつ第2の開口数以下に対応する輪帯領域内の光が検出器に導かれ、この輪帯領域内の光には収差が含まれるので、チルト検出を行うことができる。
また、本発明に係る光ディスク装置は、透明な平板状のディスク基材と、前記ディスク基材に設けられた記録層とを備えた光ディスクに対し、光ビームを前記ディスク基材を介して前記記録層に照射し、前記記録層上に集光スポットを形成する光源と、前記記録層に照射する光ビームの波面を制御する波面制御デバイスと、前記記録層による反射光を受光する光検出器とを備え、前記波面制御デバイスは、前記記録層に照射する光ビームの波面を、所定量のデフォーカス収差、又は球面収差が含まれる様に時分割制御し、前記反射光に含まれるチルト収差、又はコマ収差を前記光検出器の出力を用いて検出することで前記光ディスクのチルト検出を行うチルト検出手段とを備えることを特徴とする。
上記のように構成することによって、記録層に照射する光ビームの波面に所定のデフォーカス収差や球面収差が含まれるので、記録層が平坦であっても、その反射光で記録層のチルトに対応したチルト収差又はコマ収差を検出することができ、高精度なチルト検出が可能となる。なお、実施の形態4におけるデフォーマブルミラー6Qが波面制御デバイスの一例に相当する。
また、上記発明において、前記記録層で反射された前記光ビームの反射光を前記光検出器に導く光路中に形成され、前記反射光のデフォーカス収差及び球面収差をキャンセルする収差キャンセル手段をさらに備えることが好ましい。
上記のように構成することによって、反射光のデフォーカス収差及び球面収差がキャンセルされるので、チルト検出に必要な収差、例えばチルト収差やコマ収差のみを検出することができる。なお、実施の形態4におけるデフォーマブルミラー6Aが収差キャンセル手段の一例に相当する。
また、本発明に係る光ディスク装置は、透明な平板状のディスク基材と、前記ディスク基材に設けられた記録層とを備えた光ディスクに対し、光ビームを前記ディスク基材を介して前記記録層に照射する光源と、前記光ディスクは、前記光源によって照射された少なくとも一部の前記光ビームを透過し、前記光ディスクを透過した光ビームを受光する光検出器と、前記光検出器の出力を用いて前記光ディスクのチルト検出を行うチルト検出手段とを備えることを特徴とする。
上記のように構成することによって、透過した光ビームのチルト収差、及びコマ収差はキャンセルされないので、透過した光ビームのチルト収差、及びコマ収差を検出することで、光ディスクのチルトが検出できる。
また、本発明に係る光ディスクは、透明な平板状の第1のディスク基材及び第2のディスク基材と、前記第1のディスク基材と前記第2のディスク基材との間に設けられ、前記第1のディスク基材を介して照射された少なくとも一部の光ビームを前記第2のディスク基材に透過させる記録層とを備えることを特徴とする。
上記のように構成することによって、光ディスクに照射された光ビームのうちの少なくとも一部の光ビームが記録層を透過するので、透過した光ビームのチルト収差、及びコマ収差を検出することで、光ディスクのチルトが検出できる。
本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において、例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。