JP4421705B2 - ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤 - Google Patents
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Description
本発明は、ビニル系化合物、なかんずく塩化ビニル樹脂の懸濁重合用分散助剤に関し、更に詳しくは、ビニル系化合物の粒径分布が良好で、嵩密度が高く、可塑剤吸収性、脱モノマー性、フィッシュアイの低減等の性能に優れたビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤に関するものである。
【発明の属する技術分野】
【0002】
【従来の技術】
従来より、ケン化度70モル%以下のビニルエステル系樹脂は、ビニル系化合物(特にポリ塩化ビニル)の懸濁重合用分散助剤、バインダー、可塑剤、ホットメルト用等の接着剤として広く利用されており、特に懸濁重合用分散助剤として多用されている。かかる用途でのビニルエステル系樹脂としては、重合缶への仕込み時の作業性を向上させることが必要とされるため、本来、油溶性の高いケン化度70モル%以上のポリビニルアルコールを水溶液又は水分散液として扱うべく各種変性ポリビニルアルコールが用いられている。
【0003】
例えば、▲1▼特開平5−247106号公報には、40℃以上の加熱水媒体および末端にイオン性基を有するけん化度60モル%以下のポリビニルエステル系重合体からなる分散助剤が、▲2▼特開平10−168128号公報には、片末端にイオン性基を有するけん化度10〜85モル%、重合度50〜3000のポリビニルアルコール系重合体からなる分散助剤が、▲3▼特開平9−100301号公報には、特定のオキシアルキレン基の含有量が0.5〜10モル%で、ケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂を10〜50重量%含有する水性液からなる分散助剤が、▲4▼特開平9−183805号公報には、側鎖又は末端にスルホン酸基を0.01〜0.3モル%及びカルボキシル基を0.05〜1.0モル%有し、且つスルホン酸基とカルボキシル基のモル比が0.1〜0.5で、ケン化度が60モル%以下のポリビニルエステル重合体からなる分散助剤が、▲5▼特開平10−152508号公報には、水性分散液とした場合のpHが4.0〜7.0で、側鎖又は末端にイオン性基を10モル%以下含有し、ケン化度が60モル%以下のビニルエステル系重合体からなる分散助剤が、それぞれ開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】
しかしながら、上記▲1▼及び▲2▼の公報開示技術では、塩化ビニルの懸濁重合の際に、pH調整剤として緩衝剤を使用するような場合では、水溶液中での助剤の分散状態が安定せず、実用上満足できる自己乳化性が得られなかったり、又、得られたビニルエステル系重合体は該助剤の製造時、特に乾燥工程等において着色し、更に熱安定性に劣り、該助剤を用いて得られたビニル系化合物のフィッシュアイが多くなる等の問題がある。上記▲3▼の公報開示技術では、分散助剤を低濃度の水溶液に調整して使用する場合に2〜3%濃度に希釈して使用することができないので、塩化ビニル懸濁重合の反応缶に仕込む際の作業性に幾分問題が残る。更に、上記▲4▼の公報開示技術では、得られるビニルエステル重合体の粒子形状については球形度が高くなるものの、塩化ビニルモノマーへの溶解する成分量が一部スルホン酸変性されているために減少し、塩化ビニルのフィッシュアイ減衰速度の改善効果や塩化ビニル懸濁重合の安定性に問題が残る。上記▲5▼の公報開示技術では、分散助剤を水溶液にした場合、溶液濃度を高濃度化することができない等の問題が残るものであり、上記▲1▼〜▲5▼ではまだまだ満足のいくものではない。
更に、近年ではリフラックスコンデンサー等を使用してビニル系化合物の懸濁重合の重合速度が向上しているため、懸濁重合安定性の向上が更に求められるようになってきており、懸濁重合用の分散助剤について更なる改良が望まれている。
【0005】
そこで、本発明ではこのような背景下において、懸濁重合時の懸濁重合安定性が良好で、かつ塩化ビニル系化合物の粒径分布が良好で、嵩密度が高く、可塑剤吸収性、脱モノマー性、フィッシュアイの低減等の性能に優れた塩化ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤を提供することを目的とするものである。
【0006】
【問題点を解決するための手段】
本発明者等は、上記の事情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ビニルエステル系モノマー(a)を連鎖移動定数が0.01以上で、下記一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系モノマー(b1)の存在下で重合してなり、かつ、末端にカルボキシル基を有するビニルエステル系樹脂(I)からなるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤が上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【化2】
ここで、Rは水素又はメチル基、R 1 、R 2 は水素又はアルキル基、nは2〜100の整数である。
【0007】
本発明では、特にビニルエステル系樹脂(I)が、末端にカルボキシル基をもつアゾ系重合開始剤(c)を用いて、ビニルエステル系モノマー(a)を連鎖移動定数が0.01以上の化合物(b)の存在下で重合してなるビニルエステル系樹脂であるとき本発明の効果を顕著に発揮する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるビニルエステル系モノマー(a)としては、特に限定されず、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられるが、中でも酢酸ビニルが実用性の面で特に好ましい。
【0010】
又、本発明で用いる連鎖移動定数が0.01以上で、下記一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系モノマー(b1)は、該モノマーを用いて得られた分散助剤の水溶液の安定性及び塩化ビニル懸濁重合の安定性、粒径分布、嵩密度、可塑剤吸収性の点で好ましい。連鎖移動定数が0.01未満では得られるビニルエステル系樹脂の水溶液の放置安定性や透明性が不充分となり本発明の効果を発揮しない。
【0011】
【化3】
ここで、Rは水素またはメチル基、R 1 、R 2 は水素又はアルキル基、nは2〜100、好ましくは5〜60の整数である。
【0012】
nは2〜100、好ましくは5〜60のオキシアルキレン基が実用的で、オキシアルキレン基としてはポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が効果的であるが、好ましくはポリオキシエチレン基がより効果的である。
【0013】
ビニルエステル系樹脂(I)中のオキシアルキレン基の含有量は0.5〜6.0モル%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜4.0モル%、特に好ましくは1.0〜2.0モル%である。かかる含有量が0.5モル%未満ではビニルエステル系樹脂を水性液にした場合に水性液の分散安定性が悪くなり、6.0モル%を越えると懸濁重合して得られる塩化ビニル系樹脂のポロシティ分布の均一性、ポロシティ向上効果、脱モノマー性等が低下し好ましくない。
【0014】
かかるオキシアルキレン基を含有するモノマー(b1)としては、次のようなものが例示される。但し、本発明ではこれらのみに限定されるものではない。
一般式(2)で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0015】
【化4】
ここで、Rは水素又はメチル基、R1、R2は水素又はアルキル基、nは2〜100、好ましくは5〜60の整数である。
【0016】
本発明のビニルエステル系樹脂(I)は、上記ビニルエステル系モノマー(a)を連鎖移動定数が0.01以上で、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系モノマー(b1)の存在下で重合してなるが、更に、末端にカルボキシル基を有することが必要である。末端にカルボキシル基を導入する方法としては特に限定されず、(1)カルボキシル基を有するモノマーを共重合する方法、(2)カルボキシル基を有するアルコール、アルデヒドあるいはチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させ重合する方法、(3)ビニルエステル系モノマー(a)を連鎖移動定数が0.01以上の化合物(b)の存在下で重合を行う際に、重合開始剤として、末端にカルボキシル基をもつアゾ系重合開始剤(c)を用いる方法、等が挙げられるが、本発明では、(3)のビニルエステル系モノマー(a)を連鎖移動定数が0.01以上で、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系モノマー(b1)の存在下で重合を行う際に、重合開始剤として、末端にカルボキシル基をもつアゾ系重合開始剤(c)を用いる方法が好ましい。
【0017】
上記アゾ系重合開始剤(c)としては、末端にカルボキシル基を有する構造のアゾ系重合開始剤であれば特に限定されないが、特には4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレートが好ましく用いられる。
【0018】
ビニルエステル系モノマー(a)を連鎖移動定数が0.01以上で、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系モノマー(b1)の存在下で重合するに当たっては、特に制限されず、メタノール、エタノール、あるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合が実施される。勿論、乳化重合、懸濁重合も可能である。
【0019】
かかる溶液重合においてモノマーの仕込み方法としては、(1)ビニルエステル系モノマー(a)の重合を開始し、連鎖移動定数が0.01以上で、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系モノマー(b1)を重合期間中に連続的に又は分割的に添加する方法、(2)重合初期にビニルエステル系モノマー(a)と連鎖移動定数が0.01以上で、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系モノマー(b1)を同時に仕込む方法等任意の手段を用いることができる。
【0020】
重合反応は、上記の如き末端にカルボキシル基を持つアゾ系重合開始剤(c)、好ましくは4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレートを用いて行われる。反応温度については40℃〜沸点程度の範囲から選択される。
【0021】
末端にカルボキシル基を持つアゾ系重合開始剤(c)の使用量は、ビニルエステル系モノマー(a)に対して0.1〜0.6モル%、好ましくは0.2〜0.4モル%である。かかる使用量が0.1モル%未満では、ビニルエステル系樹脂の重合度によっては、水性液の樹脂分を10重量%以下とした場合の放置安定性が低下することになり、0.6モル%を越えるとビニルエステル系モノマー(a)を重合する際の重合熱を除去することが困難となり好ましくない。
本発明では、該アゾ系重合開始剤(c)を用いることにより、末端にカルボキシル基を有するビニルエステル系樹脂(I)が効率良く得られるのである。
【0022】
更に、必要に応じて、上記ビニルエステル系モノマー(a)、上記連鎖移動定数が0.01以上で、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系ポリマー(b1)以外に、他の一般的なモノマー(d)を10モル%以下、好ましくは5モル%以下の範囲内で共存せしめて重合を行っても良い。該モノマー(d)としては、下記のものが挙げられる。
【0023】
[エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル]
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、オレイン酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
【0024】
[飽和カルボン酸のアリルエステル]
ステアリン酸アリル、ラウリン酸アリル、ヤシ油脂肪酸アリル、オクチル酸アリル、酪酸アリル等が挙げられる。
[α−オレフィン]
エチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテン、α−デセン、α−ドデセン、α−ヘキサデセン、α−オクタデセン等が挙げられる。
【0025】
[エチレン性不飽和カルボン酸]
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、並びにこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
[アルキルビニルエーテル]
プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0026】
[アルキルアリルエーテル]
プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル、オクチルアリルエーテル、デシルアリルエーテル、ドデシルアリルエーテル、テトラデシルアリルエーテル、ヘキサデシルアリルエーテル、オクタデシルアリルエーテル等が挙げられる。
[その他]
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、エチレン性不飽和スルホン酸塩、スチレン、塩化ビニル等が挙げられる。
【0027】
上記の如き方法により得られるビニルエステル系樹脂(I)は、ビニルエステル成分を更にケン化してビニルアルコール成分に変えることが好ましい。該ケン化度は70モル%以下であることが好ましく、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは20〜60モル%、特に好ましくは30〜50モル%である。該ケン化度が70モル%を越えると、得られるビニル系化合物のポロシティ分布の均一性、ポロシティ、可塑剤吸収性が低下し好ましくない。
【0028】
かかるケン化工程においては、必要に応じて、残存モノマーを追い出してから、常法に従ってケン化される。即ち、ケン化に当たっては、該ビニルエステル系樹脂をアルコール又は含水アルコールに溶解し、必要に応じて、樹脂中の酸成分を中和後、或いは中和と同時に酸触媒又はアルカリ触媒でケン化が行われる。
【0029】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましい。アルコール中のビニルエステル系樹脂(I)の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、或いは硫酸、塩酸等の酸触媒が用いられる。
【0030】
かかる触媒の使用量は、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、通常ビニルエステルに対して0.1〜10モル%が適当である。
又、ケン化反応温度は特に制限はなく、通常10〜60℃で、好ましくは20〜50℃の範囲から選ばれる。ケン化反応終了後、必要に応じて中和し、アルコール等で洗浄し乾燥される。
【0031】
かくして本発明で用いるビニルエステル系樹脂(I)が得られるが、中でも、該ビニルエステル系樹脂(I)を完全ケン化した場合に、4重量%水溶液での粘度(20℃)で0.5〜10mPa・s、好ましくは1.5〜7mPa・s、特に好ましくは1.8〜3mPa・sとなるようなビニルエステル系樹脂であることが好ましい。該粘度が0.5mPa・s未満となるようなビニルエステル系樹脂では塩化ビニル懸濁重合の終了後の脱モノマー工程で発泡の原因となり、10mPa・sを越えるようなビニルエステル系樹脂では分散助剤水性液の樹脂濃度が上げられず、水性液の流動性が低下したり、ゲル状となったり、又、塩化ビニル懸濁重合時の分散助剤としての界面活性能が低下したりして好ましくない。
【0032】
更に、本発明で用いるビニルエステル系樹脂(I)は、その側鎖にカルボン酸基を有することが、該ビニルエステル系樹脂を水性液とした場合の水性液の透明性、放置安定性を更に向上させる点で好ましく、該カルボン酸基の含有量は0.1〜0.5モル%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4モル%、特に好ましくは0.1〜0.3モル%である。かかる含有量が0.5モル%を越えると懸濁重合の重合安定性が不安定となったり、得られるビニル系化合物中に粗大粒子が増えたり、重合系内のスケール発生の原因となり好ましくない。
【0033】
ビニルエステル系樹脂(I)の側鎖にカルボン酸基を導入する方法としては、例えば、連鎖移動定数が0.01以上で、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系ポリマー(b1)の存在下で、ビニルエステル系モノマー(a)とエチレン性不飽和カルボン酸を共重合する方法等が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、上記の(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、並びにこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0034】
次に、上記で得られるビニルエステル系樹脂(I)を懸濁重合用分散助剤として用いた場合のビニル系化合物の懸濁重合について説明する。
ビニル系化合物としては、塩化ビニルモノマー単独の他、塩化ビニルモノマーを主体とするモノマー混合物(塩化ビニル50重量%以上)が包含され、この塩化ビニルモノマーと共重合されるコモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、エチレン、プロピレン等のオレフィン、無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンその他塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーが例示される。
【0035】
又、本発明の分散助剤は必ずしも塩化ビニルモノマーの重合用に限定されるものではなく、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸及びそのエステル、マレイン酸及びその無水物、イタコン酸、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、イソブチレン、イソブテン、ブタジエン等のα−オレフィン及びエチレン等の群からなる1種又は2種以上の成分を含有するビニル化合物の懸濁重合に用いることも可能である。
【0036】
本発明の分散助剤は、上記のビニルエステル系樹脂(I)を粉末あるいは水性液として使用でき、特に、水性液とする場合は該ビニルエステル系樹脂(I)を水中に50重量%以下の割合で分散又は溶解させたものが好ましく、より好ましくは1〜45重量%、特に好ましくは3〜40重量%である。該ビニルエステル系樹脂(I)の割合が50重量%を越えると該水溶液の流動性が著しく低下したり、あるいはゲル状となったりして好ましくない。
【0037】
かかる水性液を得る方法としては、特に限定されず、ケン化時のアルコールをスチーム等の吹き込みにより水に置換する方法、撹拌下で水中へポリ酢酸ビニル系重合体を投入し、引き続き撹拌する方法、更に加熱を併用する方法等が挙げられる。本発明の水性液からなる分散助剤は、分散剤や乳化剤を使用しなくても1年以上の良好な放置安定性が得られる。
【0038】
又、水性液にはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ペンタクロルフェノールナトリウム塩、アノンLG(日本油脂社製)、カチオンF2−50E(日本油脂社製)、ホクスターL−100A(北興化学社製)、ホクスターHP(北興化学社製)等の公知の防腐剤を、分散助剤としての性能を阻害しない範囲内で適当量添加することができる。
【0039】
ビニル系化合物の懸濁重合を行う際には、通常、水又は加熱水媒体に本発明の分散助剤及び公知の主分散剤を添加し、ビニル系モノマーを分散させて油溶性触媒の存在下で重合を行う。
【0040】
該分散助剤は、ビニル系モノマーに対して、0.01〜0.15重量%、好ましくは0.01〜0.06重量%、特に好ましくは0.01〜0.04重量%で使用される。該分散安定剤が0.01重量%未満では重合体粒子の空隙率が低下し、残存するビニル系モノマーの除去性が低く、あるいは可塑剤吸収性が遅くなり、0.15重量%を越えると主分散剤の保護コロイド性を充分に発揮できなくなり、重合が不安定となり、充填効率を上げることができなくなり好ましくない。
【0041】
又、必要に応じビニル系樹脂の物性及び重合の安定性のために、アクリル酸系重合物、ゼラチン、ソルビタンエステル系、ポリエーテル系混合物等の周知の分散助剤のうちから1種又は2種以上を併用しても差し支えない。
【0042】
本発明で用いられる主分散剤としては、特に限定されないが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチンあるいはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられるが、中でもケン化度65〜95モル%、好ましくは68〜89モル%で、重合度200〜3500、好ましくは500〜2500のポリビニルアルコールが好適に用いられる。主分散剤として用いられるポリビニルアルコールとしては、カルボキシル基、スルホン酸基等のアニオン性基、アミノ基、アンモニウム基等のカチオン性基、環状あるいは非環状アミド基、長鎖アルキル基、アセトアセチル基等を10モル%以下の少量含有するものや分子内にカルボニル基を有するポリビニルアルコールや共役二重結合を含有するポリビニルアルコールも使用することができる。
【0043】
主分散剤は、ビニル系モノマーに対して0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.1重量%で使用されることが好ましい。
主分散剤と分散助剤の添加量の重量比は90/10〜30/70の範囲が好ましく、特に80/20〜50/50が好ましい。この割合が30/70より小さい場合は重合安定性に悪影響を及ぼす傾向があり、重合体粒子が粗粒子化する傾向となり、充填効率が上がらず、90/10より大きい場合は粒子のポロシティー分布が一定にならず、脱モノマー性、充填効率等が低下しフィッシュアイが増加することとなり好ましくない。
該主分散剤及び分散助剤は、重合の初期に一括仕込みしても、又重合の途中で分割して仕込んでも良い。
【0044】
又、使用される懸濁重合用触媒としては、油溶性の触媒であれば特に限定されず、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物、t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、γ−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物、ベンゾールパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物、α,α′−アゾビスイソブチロニトリル、α,α′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、更には過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を単独又は組み合わせて使用することができる。
【0045】
又、スケーリング防止のため、適当量のチオシアン酸アンモニウムや亜硝酸塩等の水溶性の重合禁止剤を添加してもよい。又、「NOXOL WSW」、「NOXOL ETH」(以上CIRS社製)等の公知のスケーリング防止剤が反応缶内壁に塗布されていてもよい。
重合温度は、当業者周知の範囲から、目的とするビニル系化合物の重合度に応じて任意に選択される。
又、その他の添加剤として、例えば重合度調整剤、加工性改良剤、帯電防止剤、pH調整剤、酸化防止剤、スケール防止剤、連鎖移動剤、ゲル防止剤等を1種又は2種以上使用できる。
【0046】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは、特に断わりのない限り、重量基準を意味する。
【0047】
実施例1
[懸濁重合用分散助剤の調製]
(分散助剤1)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた重合缶に、酢酸ビニル(a)100部、オキシエチレンの付加モル数が平均15のポリオキシエチレンモノアリルエーテル(b)(連鎖移動定数=0.0244)(日本油脂社製、『ユニオックスPKA−5004』)を酢酸ビニル(a)に対して2.0モル%、イソプロピルアルコール52部及び4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(c)を酸ビニル(a)に対して0.1モル%仕込み窒素気流下で撹拌しながら、沸点下で重合を開始した。重合開始4時間後、6時間後に4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(c)を酢酸ビニル(a)に対して各々0.1モル%添加して8時間重合を継続した。重合率は98%であった。
【0048】
次いで、メタノール蒸気を吹き込む方法により、未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶液を得た。続いて、該溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調製してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら水酸化ナトリウムを加えて中和した。これに更に水酸化ナトリウムをポリマー中の酢酸ビニル単位に対して6.6ミリモル加えてケン化し、析出物をろ別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥してビニルエステル系樹脂(分散助剤1)を得た。得られたビニルエステル系樹脂のケン化度は45モル%、完全ケン化物とした場合の4重量%水溶液粘度は2.9mPa・s、該ビニルエステル系樹脂中のオキシアルキレン基の含有量は1.8モル%であった。
得られたビニルエステル系樹脂(分散助剤1)について、以下の評価を行った。
【0049】
(水溶液の外観)
得られたビニルエステル系樹脂を2重量%水溶液に調整し、該水溶液の分散(又は溶解)状態を目視観察し、評価した。
評価基準は下記の通りである。
○・・・分散(又は溶解)状態は良好であった
×・・・分散(又は溶解)すると析出物が見られた
【0050】
(水溶液の放置安定性)
得られたビニルエステル系樹脂を2重量%水溶液に調整し、該水溶液を20℃で12ヶ月放置し、放置前後の分散(又は溶解)状態を目視観察し、評価した。評価基準は下記の通りである。
○・・・放置後も変化なし
×・・・放置後は析出物が見られた
【0051】
(水溶液の透明性)
得られたビニルエステル系樹脂を2重量%水溶液に調整し、25℃で該水溶液の波長420nmにおける透過率(5)を分光光度計(日本分光社製、V−560)により測定した。
【0052】
[塩化ビニルの懸濁重合]
表2の如く分散助剤及び主分散剤を用いて、以下の要領で塩化ビニルの重合を行って、得られたポリ塩化ビニル粒子について、後述の如き性能評価を行った。
【0053】
撹拌機を備えたリフラックスコンデンサー付きオートクレーブ中に塩化ビニルモノマー100部、水150部、表2に示す分散助剤の水性液及び主分散剤、更にジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート0.02部を仕込み、回転数400rpmで撹拌しながら、温度57℃にて懸濁重合を行った。オートクレーブ内の圧力が60℃における塩化ビニルの飽和蒸気圧により2kg/cm2に低下したところで重合を停止し、未反応の塩化ビニルを回収して反応を停止し、ポリ塩化ビニル粒子を得、以下の評価を行った。
【0054】
(粒径分布)
タイラーメッシュ基準の金網を使用して乾式ふるい分布により、60メッシュオンの粗大粒子量を測定し、全量に対する割合(重量%)で評価した。
(嵩密度)
JIS K−6721に準じて評価した。
【0055】
(可塑剤吸収性)
プラストグラフに接続されたプラネタリー型ミキサーに得られたポリ塩化ビニル粒子60部とDOP(ジオクチルフタレート)40部の混合物を投入して、80℃で撹拌しながら各時間毎の混練トルクを測定し、混練トルクが低下するまでの経過時間を調べた。評価基準は下記の通りである。
A・・・3分未満
B・・・3分以上5分未満
C・・・5分以上
【0056】
(残存モノマー)
得られたポリ塩化ビニル粒子の一定量をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させて、ガスクロマトグラフにより残存する塩化ビニルモノマーを定量した。
【0057】
(フィッシュアイ)
得られたポリ塩化ビニル粒子100部、DOP(ジオクチルフタレート)50部、ジオクチル錫ジラウレート3部及びステアリン酸亜鉛1部を155℃で3分間、ロール練りして0.3mm厚のシートを作製し、100mm×100mm当たりのフィッシュアイの数を測定した。評価基準は下記の通りである。
A・・・0〜4個
B・・・5〜10個
C・・・11個以上
【0058】
実施例2
[懸濁重合用分散助剤の調製]
(分散助剤2)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた重合缶に、酢酸ビニル(a)100部、オキシエチレンの付加モル数が平均30のポリオキシエチレンモノアリルエーテル(b)(連鎖移動定数=0.0244)(日本油脂社製、『PKA−5004』)を酢酸ビニル(a)に対して2.0モル%、メタノール33部及び4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(c)を酢酸ビニル(a)に対して0.15モル%仕込み窒素気流下で撹拌しながら、沸点下で重合を開始した。重合開始4時間後、6時間後に4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(c)を酢酸ビニル(a)に対して各々0.1モル%添加して8時間重合を継続した。重合率は99%であった。
【0059】
次いで、実施例1に準じて、メタノール蒸気を吹き込む方法により、未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去した後、水酸化ナトリウムによりケン化し、ビニルエステル系樹脂を得た。得られたビニルエステル系樹脂のケン化度は45モル%、完全ケン化物とした場合の4重量%水溶液粘度は6.0mPa・s、該ビニルエステル系樹脂中のオキシアルキレン基の含有量は1.8モル%であった。
得られたビニルエステル系樹脂(分散助剤2)について、実施例1と同様の評価を行った。
【0060】
[塩化ビニルの懸濁重合]
表2の如く分散助剤及び主分散剤を用いて、実施例1と同様にして塩化ビニルの重合を行い、得られたポリ塩化ビニル粒子について、実施例1と同様の評価を行った。
【0061】
実施例3
[懸濁重合用分散助剤の調製]
(分散助剤3)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた重合缶に、酢酸ビニル(a)100部、オキシエチレンの付加モル数が平均50のポリオキシエチレンビニルエーテル(b)(連鎖移動定数=0.0244)(旭電化社製、『アデカカーポールLX1383』)を酢酸ビニル(a)に対して2.0モル%、イソプロピルアルコール192部及びジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート(c)を酢酸ビニル(a)に対して0.1モル%仕込み窒素気流下で撹拌しながら、沸点下で重合を開始した。重合開始4時間後、6時間後にジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート(c)を酢酸ビニル(a)に対して各々0.1モル%添加して8時間重合を継続した。重合率は98.5%であった。
【0062】
次いで、実施例1に準じて、メタノール蒸気を吹き込む方法により、未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去した後、水酸化ナトリウムによりケン化し、ビニルエステル系樹脂を得た。得られたビニルエステル系樹脂のケン化度は40モル%、完全ケン化物とした場合の4重量%水溶液粘度は1mPa・s、該ビニルエステル系樹脂中のオキシアルキレン基の含有量は1.8モル%であった。
得られたビニルエステル系樹脂(分散助剤3)について、実施例1と同様の評価を行った。
【0063】
[塩化ビニルの懸濁重合]
表2の如く分散助剤及び主分散剤を用いて、実施例1と同様にして塩化ビニルの重合を行い、得られたポリ塩化ビニル粒子について、実施例1と同様の評価を行った。
【0064】
実施例4
[懸濁重合用分散助剤の調製]
(分散助剤4)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた重合缶に、酢酸ビニル(a)100部、オキシエチレンの付加モル数が平均30のポリオキシエチレンモノアリルエーテル(b)(連鎖移動定数=0.0244)(日本油脂社製、『PKA−5004』)を酢酸ビニル(a)に対して1.5モル%、マレイン酸モノメチルを酢酸ビニル(a)に対して0.3モル%、イソプロピルアルコール80部及び4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(c)を酢酸ビニル(a)に対して0.3モル%)を仕込み窒素気流下で撹拌しながら、沸点下で重合を開始し、8時間重合を継続した。重合率は95%であった。
【0065】
次いで、実施例1に準じて、メタノール蒸気を吹き込む方法により、未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去した後、水酸化ナトリウムによりケン化し、ビニルエステル系樹脂を得た。得られたビニルエステル系樹脂のケン化度は35モル%、完全ケン化物とした場合の4重量%水溶液粘度は2mPa・s、該ビニルエステル系樹脂中のオキシアルキレン基の含有量は1.3モル%、カルボン酸基の含有量は0.28モル%であった。
得られたビニルエステル系樹脂(分散助剤4)について、実施例1と同様の評価を行った。
【0066】
[塩化ビニルの懸濁重合]
表2の如く分散助剤及び主分散剤を用いて、実施例1と同様にして塩化ビニルの重合を行い、得られたポリ塩化ビニル粒子について、実施例1と同様の評価を行った。
【0067】
実施例5
[懸濁重合用分散助剤の調製]
(分散助剤5)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた重合缶に、酢酸ビニル(a)100部、オキシエチレンの付加モル数が平均50のポリオキシエチレンモノアリルエーテル(b)(連鎖移動定数=0.0244)(旭電化社製、『アデカカーポールLX1383』)を酢酸ビニル(a)に対して2.0モル%)、イタコン酸を酢酸ビニル(a)に対して0.5モル%、イソプロピルアルコール63部及びジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート(c)を酢酸ビニル(a)に対して0.4モル%仕込み窒素気流下で撹拌しながら、沸点下で重合を開始した。重合開始6時間後にジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート(c)を酢酸ビニル(a)に対して0.1モル%添加して8時間重合を継続した。重合率は99%であった。
【0068】
次いで、実施例1に準じて、メタノール蒸気を吹き込む方法により、未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去した後、水酸化ナトリウムによりケン化し、ビニルエステル系樹脂を得た。得られたビニルエステル系樹脂のケン化度は60モル%、完全ケン化物とした場合の4重量%水溶液粘度は3.3mPa・s、該ビニルエステル系樹脂中のオキシアルキレン基の含有量は1.9モル%、カルボン酸基の含有量は0.48モル%であった。
得られたビニルエステル系樹脂(分散助剤5)について、実施例1と同様の評価を行った。
【0069】
[塩化ビニルの懸濁重合]
表2の如く分散助剤及び主分散剤を用いて、実施例1と同様にして塩化ビニルの重合を行い、得られたポリ塩化ビニル粒子について、実施例1と同様の評価を行った。
【0070】
比較例1
[懸濁重合用分散助剤の調製]
(分散助剤6)
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた重合缶に、酢酸ビニル(a)100部、イソプロピルアルコール64部及び4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(c)を酢酸ビニル(a)に対して0.03モル%、仕込み窒素気流下で撹拌しながら、沸点下で重合を開始した。重合開始4時間後、6時間後に4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(c)を酢酸ビニル(a)に対して各々0.01モル%添加して8時間重合を継続した。重合率は95%であった。
【0071】
次いで、実施例1に準じて、メタノール蒸気を吹き込む方法により、未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去した後、水酸化ナトリウムによりケン化し、ビニルエステル系樹脂を得た。得られたビニルエステル系樹脂のケン化度は45モル%、完全ケン化物とした場合の4重量%水溶液粘度は3.33mPa・s、であった。
得られたビニルエステル系樹脂(分散助剤6)について、実施例1と同様の評価を行った。
【0072】
比較例2
[懸濁重合用分散助剤の調製]
(分散助剤7)
分散助剤1の調製において、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(c)をアゾビスイソブチロニトリルに変更した以外は同様に行い、ビニルエステル系樹脂を得た。得られたビニルエステル系樹脂のケン化度は45モル%、完全ケン化物とした場合の4重量%水溶液粘度は2.8mPa・s、該ビニルエステル系樹脂中のオキシアルキレン基の含有量は1.8モル%であった。
得られたビニルエステル系樹脂(分散助剤7)について、実施例1と同様の評価を行った。
【0073】
実施例及び比較例のビニルエステル系樹脂(分散助剤1〜7)の評価を表1に、該分散助剤1〜5を用いて得られたポリ塩化ビニル粒子の評価を表3に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【発明の効果】
本発明のビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤は、ビニルエステル系モノマー(a)を連鎖移動定数が0.01以上で、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基を含有するモノアリルエーテル系ポリマー(b1)の存在下で重合してなり、かつ、末端にカルボキシル基を有するビニルエステル系樹脂(I)からなるため、かかる水性液の安定性は良好で、従来のイオン性変性分散助剤に比べてビニル系化合物の重合条件に左右されることなく良好なビニル系化合物の重合体を得ることができ、特に懸濁重合時の懸濁重合安定性が良好で、かつビニル系化合物の粒径分布が良好で、嵩密度が高く、可塑剤吸収性、脱モノマー性、フィッシュアイの低減等の性能に優れたビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤として非常に有用性が高いものである。
【0078】
かかる分散助剤を用いて懸濁重合された塩化ビニル樹脂は、成形加工性に優れ、フィルム、ホース、シート、ビニルレザー、ビニル鋼板、防水帆布、塗装布、工業用手袋、印刷用ロール、靴底、発泡体、人形、クッション等の用途に利用することができる。
Claims (5)
- ビニルエステル系樹脂(I)が、該ビニルエステル系樹脂中のオキシアルキレン基の含有量が0.5〜6.0モル%で、ケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載のビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
- ビニルエステル系樹脂(I)が、ビニルエステル系樹脂を完全ケン化した場合に、4重量%水溶液粘度(20℃)で0.5〜10mPa・sとなるようなビニルエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
- ビニルエステル系樹脂(I)が、更に、側鎖にカルボン酸基を0.5モル%以下含有してなるビニルエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
- ビニルエステル系樹脂(I)を50重量%以下含有する水性液からなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤。
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