JP4416190B2 - ゴム変性共重合樹脂組成物及びその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は改良されたゴム変性共重合樹脂組成物およびその製造方法に関し、さらに詳細にはスチレン−ブタジエン共重合ゴムの存在下で、スチレン系モノマーと、(メタ)アクリル酸アルキルとをグラフト共重合して得られる透明性、耐候性ならびに実用強度、とりわけ射出成形品や押出成形品にした場合の透明性、特に成形品の耐衝撃性に優れ、かつ耐候性や耐油性に優れたゴム変性共重合樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体であるMS樹脂は透明で強度に優れており、成形材料として照明用やプロジェクションテレビのディスプレー等の用途に使用されている。しかし、一般にMS樹脂は衝撃強度が弱く、用途が制限されるという欠点を有しており、そのため、MS樹脂の衝撃強度を向上させた樹脂として、例えば、特公平5−54484号公報、特開平6−16744号公報には、透明で耐衝撃性のスチレン系樹脂に関して、ゴム質重合体をモノマーに溶解させた後にグラフト重合して得られるゴム変性のスチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合樹脂や連続塊状重合法が開示されている。
【0003】
また、耐衝撃性と耐候性とを兼備した樹脂を製法する方法として、特開昭55−147514号公報には、ゴム状重合体と、メチルメタクリレートを必須成分とする単量体とを連続的に塊状重合させて重合転化率が5〜40重量%のシロップを得て、さらにキャスト法または懸濁重合法で完結させる製法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特公平5−54484号公報、特開平6−16744号公報に記載された、ゴム変性スチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合樹脂では、その耐候性はゴム変性のポリスチレンと同様に劣り屋外使用等の耐候性が要求される用途には性能上適さないのが現状であった。
【0005】
一方、特開昭55−147514号公報に開示されたもののなかで、ゴム状重合体としてポリブタジエンゴムを用い、かつ、単量体成分として、メチルメタクリレートと、スチレンとを併用した樹脂は、耐候性は優れるものの、耐衝撃性は未だ充分なものでない。また、塊状−懸濁重合法ではモノマーの転化率を98%以上まで進め完結させるので、重合初期と末期に生成するマトリックス樹脂に組成分布が発生して成形品の透明性が著しく失われるという欠点があった。また、この様な樹脂において耐衝撃性を向上すべく、ゴム量を高めたとしても、透明性は一層劣化するものであった。
【0006】
また、この方法はシロップを製造する工程は連続化されているとはいえ、ゴム変性ポリスチレンや前記のゴム変性スチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合樹脂の製法と同様なゴム溶液フィードからグラフト重合を経て、モノマーの除去、ペレット化まで一貫した連続塊状重合法に適用できるものでは無い。すなわち、バッチ方式を含む特開昭55−147514号公報の製法は、生産性や製造コストの削減の点で限界があり、予備重合時の粘性に制約が生じて製品中のゴム含量を増やせず、また、ゴム粒子径を小さくできないので、衝撃強度の格段に優れたゴム変性グラフト共重合体を製造できなかった。
【0007】
よって、本発明が解決しようとする課題は、耐候性、耐衝撃性及び透明性に著しく優れたゴム変性共重合樹脂組成物と、その製造方法である連続塊状重合法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、この様な状況に鑑み鋭意研究した結果、スチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合ゴムとスチレン系モノマー(b)と(メタ)アクリル酸アルキル(c)とのグラフト共重合体において、特定の共重合ゴム(a)を特定範囲の共重合モノマー組成を用いてグラフト重合させることで耐候性と耐衝撃性に優れた透明なゴム変性スチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合樹脂組成物が得られ、上記課題を解決できることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ゴム質重合体にスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルとがグラフト重合したグラフト共重合ゴム粒子が、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルとの共重合体をマトリックス樹脂として分散するゴム変性共重合樹脂組成物において、グラフト共重合ゴム粒子が、スチレン系モノマーとジエン系モノマーのランダム共重合体であって、かつ、スチレン骨格含有率が3〜15重量%のランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)及び(メタ)アクリル酸アルキル(c)とのグラフト共重合体であり、マトリックス樹脂が、スチレン系モノマー(b)の20〜35重量%と(メタ)アクリル酸アルキル(c)の65〜80重量%との共重合体であり、かつ、樹脂組成物の25℃でのトルエン不溶分含有率が10〜25重量%であることを特徴とするゴム変性共重合樹脂組成物、及び、スチレン系モノマーとジエン系モノマーのランダム共重合体であって、かつ、スチレン骨格含有率が3〜15重量%のランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)と、(メタ)アクリル酸アルキル(c)とを、スチレン系モノマー(b)/(メタ)アクリル酸アルキル(c)の重量比が(20〜35)/(80〜65)となる割合で用いてグラフト共重合することを特徴とするゴム変性共重合樹脂組成物の製造方法に関する。
【0010】
本発明のゴム変性共重合樹脂組成物は、上記の通り、グラフト共重合ゴム粒子と、マトリックス樹脂とから構成される。グラフト共重合ゴム粒子は、スチレン系モノマーとジエン系モノマーのランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)及び(メタ)アクリル酸アルキル(c)を必須の構成成分とするグラフト共重合体であり、本発明においては、前記ランダム共重合ゴム(a)中のスチレン骨格含有率が3〜15重量%であることが肝要である。
【0011】
即ち、ランダム共重合ゴム(a)中のスチレン骨格含有率が3重量%未満の場合、透明性に劣った成形体しか得られず、また、重合時において、ランダム共重合ゴム(a)の含有率も高められずに、耐衝撃性が低下する。一方、重量15%を越える場合には、耐候性が著しく低下する。常識的には、ポリブタジエン含有率が低下した方が二重結合含有率が低下する為、耐候性が向上すると考えられるが、本発明においては、驚くべきことに比較的ポリブタジエン含有率が高くなる範囲、即ち、スチレン骨格含有率で3〜15重量%なる低い範囲において耐候性が向上する。
【0012】
グラフト共重合樹脂粒子を構成するランダム共重合ゴム(a)は、スチレン系モノマーとジエン系モノマーとのランダム共重合体にしたことによって、本発明の組成物の耐候性が極めて優れたものになる。
【0013】
一方、本発明におけるマトリックス樹脂は、スチレン系モノマー(b)の20〜35重量%と(メタ)アクリル酸アルキル(c)の65〜80重量%との共重合体であり、これによって、透明性、優れた耐候性が発現されるほか、流動性、更に耐油性も良好なる。
【0014】
また、マトリックス樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステル(b)は、メタクリル酸メチルと、アクリル酸−n−ブチルとを併用することが組成物の流動性、透明性の点から好ましく、特に臭気がなく、また、沸点が低くて精製工程において脱気が容易である点から好ましい。
【0015】
また、本発明のゴム変性共重合樹脂組成物は、25℃でのトルエン不溶分含有率が10〜25重量%である。当該範囲においては、耐衝撃性が著しく良好なものとなる。また、本発明においては、耐衝撃性を向上させても透明性が低下することがない。
【0016】
更に、本発明のゴム変性共重合樹脂組成物は、上記のトルエン不溶分含有率を満たし、かつ、トルエンによる膨潤指数が6〜15で、かつトルエン不溶分含有率/膨潤指数が0.80〜2.50重量%であることが好ましい。この数値範囲にある場合、ゴム変性共重合樹脂は、該樹脂内において該共重合ゴムのグラフト化率と架橋の程度のバランスが良好となり、成形品の透明性、耐衝撃性及び耐候性のバランスが著しく良好なものとなる。
【0017】
また、マトリックス樹脂中に分散するグラフト共重合樹脂粒子の形状は特に限定されるものではないが、グラフト共重合ゴム粒子中にマトリックス樹脂がオクルードされて分散している、所謂「サラミ構造」の形態をとることが、耐衝撃性の点から好ましい。また、グラフト共重合樹脂粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、平均ゴム粒子径は0.20〜1.20μmであることが好ましく、特にゴム変性共重合樹脂組成物の透明性、耐衝撃性及び光沢に優れる点から0.40〜0.80μmであることがなかでも好ましい。本発明においては、25℃でのトルエン不溶分含有率を10〜25重量%と高い水準にしても、此の様に平均粒子径を小さくすることができ、その結果、透明性と耐衝撃性との効果が従来になく優れたものとなる。
【0018】
マトリックス樹脂である(a)、(b)及び(c)との共重合体の重量平均分子量(Mw)が5万〜18万で、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.8〜3.0のものが好ましく、なかでも重量平均分子量(Mw)が8〜15万のもの耐衝撃性及び樹脂の流動性が向上し透明性に優れる点から特に好ましい。
【0019】
また、本発明においては、上記マトリックス樹脂及びグラフト共重合樹脂に加え、イソパラフィン系石油炭化水素類を併用することにより、可塑性を付与できると共に耐油性を更に改善できる。このイソパラフィン系石油炭化水素類としては、例えば、イソブテン、イソペンテン、イソヘキセン、イソヘプテン、イソオクテン等に代表されるイソオレフィンを主たる成分とする原料成分の重合体或はその変性物であり、その構造はイソアルキレン単位を繰り返し単位とする構造を主構造とするもの、或は、イソアルキレン単位を繰り返し単位とする構造のマレイン酸変性体又は5硫化燐変性体等が挙げられる。
【0020】
これらのイソオレフィンの中でも特に耐油性の改善効果、可塑化の効果の点からイソブテンが好ましい。このイソブテンを主成分とする単量体成分は、イソブテンの他、1−ブテン、2−ブテン等のモノマーをも含有しており、これらを重合して得られる液状で粘性のある液体である。
【0021】
また、イソオレフィンの重合体の変性物を得るには、当該イソオレフィンを、マレイン酸、5硫化燐等の不飽和結合含有単量体と共に重合させるか、イソオレフィンを重合させた後、ポリマー中に存在する不飽和結合に、前記不飽和結合単量体を反応させればよい。また、得られるイソパラフィン系石油炭化水素は、分子内の不飽和結合を水添させたものでも良い。
【0022】
これらのイソパラフィン系石油炭化水素類は、特に分子量等については制限されるものではないが、通常、BM型粘度計による粘度が20〜10,000cps(38℃)であることが好ましく、なかでも50〜3,000cpsの範囲がマトリックス樹脂と混合する時の混合分散性、或いは、(a)〜(c)の各成分との相溶性に優れ、更に透明性、成形品の表面外観の点からも好ましい。また、同様の理由から平均分子量200〜3,000であることが好ましい。
【0023】
また、イソパラフィン系石油炭化水素類の含有量としては特に限定されるものではないが、可塑化の効果や耐油性の点から組成物中0.1〜10重量%となる範囲が好ましい。
【0024】
本発明のゴム変性共重合樹脂組成物を製造する方法としては、特に制限されるものではないが、以下に詳述する本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
【0025】
即ち、スチレン系モノマーとジエン系モノマーのランダム共重合体であって、かつ、スチレン骨格含有率が3〜15重量%のランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)と、(メタ)アクリル酸アルキル(c)とを、スチレン系モノマー(b)/(メタ)アクリル酸アルキル(c)の重量比(20〜35)/(80〜65)となる割合で用いてグラフト共重合する方法が、連続塊状重合法を容易に行うことができ好ましい。
【0026】
本発明の製造方法においては、スチレン系モノマー(b)と、(メタ)アクリル酸アルキル(c)とを、スチレン系モノマー(b)/(メタ)アクリル酸アルキル(c)の重量比(20〜35)/(80〜65)となる割合で用いることが肝要である。
【0027】
スチレン系モノマー(b)の使用割合が20重量%未満においては、透明性が著しく失われる他、管状反応器を用いた連続重合法の適用も困難なものとなる。また、スチレン系モノマー(b)の使用割合が35重量%を越える場合には、優れた耐候性が発現されない。
【0028】
ここで用いるスチレン系モノマーとジエン系モノマーとのランダム共重合ゴム(a)を構成するスチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、ターシャリーブチルスチレン、o−ブロムスチレン、m−ブロムスチレン、p−ブロムスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。
【0029】
一方、当該ランダム共重合ゴムを構成するジエン系モノマーとしては、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。ランダム共重合ゴム(a)はこれらのモノマーを組み合わせ反応させて得られるものが種々挙げられるが、それらの中でもとくに、上記2成分のお互いの反応性に優れる点からスチレン−ブタジエンランダム共重合ゴムが好ましい。
【0030】
また、ランダム共重合ゴム(a)中のスチレン骨格含有率は、前記した通り、1〜20重量%であることが耐候性の点から好ましい。更にスチレン骨格含有率が3〜15重量%であることが特に好ましい。
【0031】
また、ランダム共重合ゴム(a)はスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの結合様式がランダム結合であることによって、耐候性の向上効果が顕著になる。すなわち、ランダム共重合ゴムの結合スチレン量が増えるに従って、結合スチレンのブロック化率を下げることがゴム変性共重合樹脂組成物樹脂の耐候性を向上させるのに重要である。
【0032】
更に、本発明の製造方法で用いるランダム共重合ゴム(a)は、5重量%スチレン溶液粘度が5〜40センチポイズのものが、耐衝撃強度の向上効果が大きく、かつ、製造に際してゴム粒子径のコントロールが容易な点で好ましい。また、前述した通り、グラフト共重合樹脂粒子の平均粒子径は、0.40〜0.80μmの範囲において透明性、耐衝撃性及び光沢が良好になるが、25℃での5重量%スチレン溶液粘度が28〜35センチポイズであるランダム共重合ゴム(a)を用いて当該粒子径範囲のグラフト共重合樹脂粒子を得た場合には、これらの性能に加え耐候性を飛躍的に向上させることができる。また、ランダム共重合ゴム(a)は100℃でのLローター使用によるムーニー粘度が20〜80のものが好ましい。
【0033】
上記ランダム共重合ゴム(a)は、ジエン系モノマーに基づく不飽和結合のうちの1,2−ビニル結合の割合が14〜35%のもの、なかでも14〜25%のものが好ましい。この場合、1,2−ビニル結合の残りはシスおよびトランス結合を形成している。
【0034】
ここで、1,2−ビニル結合の割合が14%以上のランダム共重合ゴムを用いた場合には、ゴム変性共重合樹脂中のトルエン不溶分含有率が上昇し、耐衝撃性が向上する。一方、該1,2−ビニル結合の割合が35%以下の場合には、製造時の高温下での架橋の進行を抑制できる一方グラフト化率を高められ、ゴム弾性が向上し、やはり耐衝撃性が向上する。更に、14〜25%の範囲に入る場合は、グラフト共重合ゴム粒子のグラフト化率と架橋の程度とのバランスが著しく良好となり、ゴム弾性が著しく向上し好ましい。
【0035】
更に、上記ランダム共重合ゴム(a)は、ジエン系モノマ−に基づく脂肪族二重結合を部分水添したゴムでも良い。その水添率は、特に制限されないが、45%以下、なかでも30%以下であることがグラフト化率が向上し、耐衝撃性が良好となり好ましい。
【0036】
本発明で用いるスチレン系モノマー(b)としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、ターシャリーブチルスチレン、o−ブロムスチレン、m−ブロムスチレン、p−ブロムスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられ、なかでも透明性に優れる点からスチレンが好ましい。
【0037】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸アルキル(c)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等のアルキルエステル類が挙げられるが、本発明のゴム変性共重合樹脂組成物に透明性と強度を付与する必須成分であるが、なかでもメタアクリル酸メチルが好ましい。
【0038】
また、(メタ)アクリル酸アルキル(c)としてメタアクリル酸メチルと、その他のアクリル酸アルキルエステルとを併用することが流動性、透明性の点から好ましく、併用するアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。なかでもアクリル酸−n−ブチルが沸点がスチレンモノマーや溶剤に近くて、脱揮発工程において未反応モノマーの真空除去−凝縮−リサイクル使用の点から好ましい。また、その他のアクリル酸アルキルの使用割合は特に限定されるものではないが、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが全(メタ)アクリル酸アルキルエステル中の2〜20重量%となる範囲で用いることが好ましい。
【0039】
上記ランダム共重合ゴム(a)とスチレン系モノマー(b)と(メタ)アクリル酸アルキル(C)の使用割合は、特に限定されるものではないが、通常(a)/[(b)+(c)]の重量比が3/97〜16/84となる範囲が透明性と耐衝撃強度に優れたものが得られる点で好ましい。(a)/[(b)+(c)]の重量比は、更に5/95〜12/88となることが透明性と耐衝撃強度が一層向上する点から好ましい。
【0040】
本発明の製造方法は、上記ランダム共重合ゴム(a)の存在下に、スチレン系モノマー(b)と(メタ)アクリル酸アルキル(c)を必須成分として用い、更に必要に応じてその他の共重合可能なモノマーと共に塊状−懸濁重合、溶液重合又は塊状重合によりグラフト共重合させればよいが、なかでも連続塊状重合が生産性とコスト面から好ましい。
【0041】
ここで用いるその他の共重合可能なモノマーとしては、例えば(メタ)アクリロニトリル等のビニル・シアン化合物類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸等の重合性不飽和脂肪酸;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−p−ブロモフェニルマレイミド、N−o−クロルフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等に代表される不飽和カルボン酸無水物類;アリルアミン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸−アミノプロピル等のアミノ基含有不飽和化合物類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等アクリルアミド系化合物があげられる。
【0042】
連続塊状重合に用いる反応装置としては特に限定されないが、可動部分のない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている管状反応器(以下、「静的ミキシングエレメントを有する管状反応器」と略す)を組み込んだ連続塊状重合ラインであることが好ましい。
【0043】
当該塊状重合ラインを用いた重合方法としては、例えば、1個以上の撹拌式反応器と、静的ミキシングエレメントを有する管状反応器とを組み込んだ連続塊状重合ライン中で、該管状反応器による静的な混合を行いながら連続的に塊状重合を行う方法が、ゴム粒子径が小さく、ポリマー組成を均一にコントロールでき、透明性と耐衝撃性とに優れるゴム変性共重合樹脂が効率的に製造できる点で好ましい。
【0044】
この様な方法として、具体的には、例えば攪拌式反応器を2個連結し、引き続き静的ミキシングエレメントを有する管状反応器とを組み込んだ連続塊状重合ラインに連結された重合ラインを用い、前記(a)〜(c)の各成分、更に必要に応じその他の共重合可能なモノマーを攪拌式反応器に導入し、2つ目の攪拌式反応器内で重合率40〜60%まで重合を行い、次いで、連続塊状重合ラインに導入する方法が挙げられるが、以下の連続塊状重合法が、生産性に優れ、また、得られる組成物のゴム使用量を多くでき、耐衝撃性の向上を一層改善できる点から好ましい。
【0045】
即ち、ランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)と、(メタ)アクリル酸アルキル(c)とを含有する混合溶液を、
a.撹拌式反応器と、
b.撹拌式反応器から続き可動部分の全くない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている1個以上の管状反応器からなる初期重合ラインと、
c.初期重合ラインから続き可動部分の全くない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている1個以上の管状反応器からなる主重合ラインと、
d.初期重合ラインと主重合ラインとの間で分枝して初期重合ライン内に戻る還流ラインとによって構成される重合ラインを用い、初期重合ラインから出る初期重合液流の一部を還流ラインを経て還流させ、一方、還流されなかった初期重合液流を主重合ラインにおいて重合する、連続塊状重合法が好ましい。
【0046】
以下にこの連続塊状重合法の一例を図面により説明する。第1図は、静的ミキシングエレメントを有する管状反応器を組み込んだ連続塊状重合ラインの一例を示す工程図である。
【0047】
原料供給ライン(I)を構成するプランジャーポンプ(1)によって供給される前記(a)、(b)、(c)を必須成分として含む混合溶液は、まず、予備重合ライン(II)(攪拌式反応器(2))へ送られ、攪拌下で予備グラフト重合させた後、ギアポンプ(3)により、静的ミキシングエレメントを有する管状反応器(4)、(5)および(6)とを有する初期重合ライン(III)に送られる。
【0048】
尚、予備重合ライン(II)(攪拌式反応器(2))での予備グラフト重合と初期重合ライン(III)と組み合わせることで、ゴム粒子に余分な剪断が加わらずゴム粒子のより効率的な微細化が可能となり、重合工程でのポリマー組成を均一化出来る。この場合の予備グラフト重合は、スチレン系モノマー(b)と(メタ)アクリル酸アルキル(c)の合計の重合転化率が、該反応器(2)の出口において10〜28重量%、好ましくは14〜24重量%となる様に実施される。また攪拌式反応器(2)としては、例えば攪拌式槽型反応器、攪拌式塔型反応器等が挙げられ、攪拌翼としては、例えばアンカー型、タービン型、スクリュー型、ダブルヘリカル型等の攪拌翼が挙げられる。
【0049】
本発明では、反応器での上記混合溶液の粘性を低下させる為に溶剤を使用してもよく、その使用量は原料モノマーの合計100重量部に対して5〜20重量部である。溶剤の種類としては、通常、塊状重合法で使用されているトルエン、エチルベンゼン、キシレン等が適している。
【0050】
また、本発明では、上記混合溶液中にゴム変性共重合樹脂の分子量調節のために連鎖移動剤を添加すると好ましい。該連鎖移動剤の添加量は、通常原料モノマーの合計に100重量部に対して0.05〜0.5重量部の範囲である。
【0051】
上記の様に動的攪拌下に予備グラフト重合された混合溶液は、次いで初期重合ライン(III)で重合される。該初期重合ライン(III)から出る初期重合液の一部は、還流ライン(V)に導入されギヤポンプ(7)によって再度初期重合ライン(III)へ還流され、この循環によりグラフト重合が行われる。一方、初期重合ライン(III)から出る初期重合液のうち、還流されなかった初期重合液は、連続的に静的ミキシングエレメントを有する管状反応器(8),(9)および(10)が直列に組み込まれた主重合ライン(IV)に送られる。
【0052】
初期重合ライン(III)内での混合溶液中のゴム粒子は、該初期重合ライン(III)及び還流ライン(V)で構成される循環ライン内を循環しながら静的に混合されて安定化し、粒子径も固定化してくる。この場合、該循環ラインでの混合溶液の還流比(R)と(b)と(c)の合計の重合転化率が重要な因子となる。還流比Rは、主重合ライン(IV)に流出せずに還流ライン(V)内に流入する混合溶液の流量をF1(リットル/時間)とし、初期重合ライン(III)から主重合ライン(IV)に流出する混合溶液の流量F2(リットル/時間)とした場合、通常R=F1/F2が3〜15の範囲であり、なかでも管状反応器での圧力損失が小さく、生成するゴム質重合体粒子が安定で、粒径を小さくすることができ、かつゴム変性共重合樹脂中のスチレン系モノマー(b)と(メタ)アクリル酸アルキル(c)の含有比率を一定に保つことができる点でR=5〜10の範囲が特に好ましい。
【0053】
また、該初期重合ライン(III)でのグラフト重合は、該初期重合ライン(III)出口での(b)と(c)の合計の重合転化率が、通常35〜55重量%、好ましくは40〜50重量%になる様に重合させる。重合温度としては120〜135℃が適している。
【0054】
初期重合ライン(III)でグラフト重合された混合溶液は、次いで主重合ライン(IV)に供給され、通常140〜160℃の重合温度でスチレン系モノマー(b)と(メタ)アクリル酸アルキル(c)の合計の転化率が60〜85重量%となるまで連続的にグラフト重合される。次に、この混合溶液はキアポンプ(11)により予熱器、次いで脱揮発槽に送られ、減圧下にて未反応単量体および溶剤を除去した後、ペレット化することにより目的とするゴム変性共重合樹脂が得られる。この際、予熱器および脱揮発槽内での転化率の上昇が7重量%以下になる条件で予熱および脱揮発を行うと好ましい。
【0055】
本発明で用いる静的ミキシングエレメントを有する管状反応器の内部に固定されている複数のミキシングエレメントとしては、例えば管内に流入した重合液の流れの分割と流れ方向を変え、分割と合流を繰り返すことにより重合液を混合するものが挙げられる。このような管状反応器としては、例えば、SMX型、SMR型のスルザー式の管状ミキサー、ケニックス式のスタティックミキサー、東レ式の管状ミキサー等が好ましい。
【0056】
初期重合ライン(III)や主重合ライン(IV)に組み込まれるこれらの管状反応器の数は、上記の如き管状反応器の場合、その長さやミキシングエレメントの構造等による異なるので特に限定されないが、ミキシングエレメントを4個以上有する該管状反応器を4〜15個、好ましくは6〜10個組み合せて用いる。このうち初期重合ライン(III)内に組み込む該管状反応器の数は、通常1〜10個、好ましくは2〜6個である。
【0057】
本発明で原料として用いる混合溶液には、必要に応じて重合開始剤として分解した際にフリーラジカルを放出する有機過酸化物を添加すると、比較的低い温度でのクラフト化と反応の促進が行えるので好ましい。その添加量は原料モノマーの合計100重量部に対して0.005〜0.04重量部の範囲である。
【0058】
ここで用いる有機過酸化物としては、半減期が10時間になる温度が75〜170℃のものが好ましく、その具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシオクタン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキメタトルエート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のパーオキシエステル類等が挙げられ、単独あるいは2種以上組み合せて用いられる。
【0059】
さらに、本発明で用いる混合溶液には、必要に応じて、ミネラルオイル等の可塑剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、長鎖脂肪酸、そのエステルもしくはその金属塩等の離型剤、シリコンオイルなどの如き公知の添加剤を併用しても良い。また、シリコンオイルとして特にジメチルシロキサンやメチルフェニルシロキサンが好ましく、その場合の使用量は0.05〜0.5重量%であることが耐衝撃性の点から好ましい。
【0060】
また、本発明の組成物においてイソパラフィン系石油炭化水素類を併用する場合には、その混合方法は特に制限されないが、例えば、詳述した連続塊状重合ライン内でグラフト共重合する際に、
方法1:該連続塊状重合ライン途中で、イソパラフィン系石油炭化水素類を混合しつつグラフト共重合を行なうか、
方法2:(a)、(b)及び(c)の混合溶液中に、イソパラフィン系石油炭化水素類を溶解させ、次いで前記グラフト共重合を行うか、又は、
方法3:前記グラフト共重合を行って、グラフト共重合ゴム粒子とマトリックス樹脂との組成物を得た後、前記イソパラフィン系石油炭化水素類と溶融混練する、
上記方法1〜方法3の何れかで行うことが好ましい。
【0061】
このようにして得られる本発明のゴム変性共重合樹脂組成物は、さらに通常用いられる酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、補強材等を配合することが出来る。
【0062】
具体例としては、例えばミネラルオイル、エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、有機ポリシロキサン、高級脂肪酸及びその金属塩、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ガラス繊維等が挙げられ、それぞれ単独又は併用して用いることが出来る。特に、耐候性向上用に通常用いられている添加剤の具体例としては、チヌビンP、チヌビン327(日本チバガイギー(株))などに代表されるベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、スイミライザ−GMまたはGS、イルガノックス1076(日本チバガイギー(株))に代表されるヒンダードフェノール系の酸化防止剤、サノールLSー770に代表されるヒンダードアミン系の光安定剤、トリスノニルフェニルホスファイトに代表されるリン系酸化防止剤、ジミリスチルチオジプロピオネートに代表される有機イオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
【0063】
更に本発明のゴム変性共重合樹脂組成物には、必要に応じてポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、ゴム変性スチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、並びに、EEA、EMA等のエチレン−(メタ)アクリル酸アクリル等の熱可塑性樹脂を適宜添加することもできる。
【0064】
また、本発明のゴム変性共重合樹脂組成物は、特にその用途が限定されるものではないが、シート押出成形、未延伸フィルム押出成形、或いはシュリンクフィルム押出成形において特に有用である。
【0065】
シート若しくはフィルムの製造法は特に限定されず、上述した各成分を混合し、ドライブレンド又はプレミキシング等の方法により予め混合したものを溶融押出して、Tダイ、サーキュラーダイ等から連続的に押出し、そのホットパリソンより押出しをそのまま或いは冷却し延伸に適当な温度に調整して高延伸倍率、例えば2〜5倍で1軸若しくは2軸で面積延伸比に延伸する方法等が挙げられる。また、ブロック共重合体(C)を併用する場合には、シート若しくはフィルム成膜時の溶融混練時において、該(C)成分を混合することが好ましい。また、溶融押出した原反を1度冷却し、次いで再度再加熱により面積比で3〜15倍に延伸してもよい。シート若しくはフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、通常、0.01〜10.0mmであるが、衝撃強度向上効果が顕著に発現する好ましい範囲は、グラフト共重合ゴム粒子の粒子径により異なが、該粒子径が0.05〜0.80μmの場合にはシート若しくはフィルムの厚みは0.02〜5.0mmであることが好ましい。
【0066】
また、本発明のゴム変性共重合樹脂組成物は、上記のシート及びフィルムの他、射出成形、単軸押出成形、二軸押出成形、インフレ−ション押出成形、異形押出成形、真空成形、圧空成形、吹込成形などの成形方法により各種成形品にして使用することが出来る。その用途は広範なものに及び、例えば照明、看板、ディスプレイ、電気部品、弱電部品、カーポートサンルーフ等の建材などの用途がある。更に具体的には、複写機、プリンター、ファクシミリ、パソコンなどのOA機器の各種部品、医療器具類の部品等として用いることができる。
【0067】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明する。ただし、例中の部はすべて重量部を、また%は全光線透過率を除きすべて重量%を示す。
【0068】
尚、前記グラフト共重合樹脂粒子の平均粒子径、トルエン不溶分含有率とトルエンによる膨潤指数、アイゾット衝撃値、全光線透過率、曇価の測定方法を以下に記す。
【0069】
1.樹脂中のグラフト共重合樹脂粒子の平均粒子径樹脂の超薄切片法による透過型電子顕微鏡写真をとり、写真中の粒子1000個の粒子径を測定して次式により平均粒子径を求めた。
【0070】
【式1】
(ただし、niは粒径Diを有するゴム粒子の個数である。)
また、レーザー式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所製)を用いてゴム粒子分布も観察した。
【0071】
2.トルエン不溶分含有率およびトルエンによる膨潤指数ゴム変性共重合樹脂1gを精秤し、トルエン100mlに25℃で24時間かけて溶解させた後、溶解液を遠心管に移し、10℃以下、8500rpmで15分間遠心分離を行ない、上澄液をデカンテーションにより除いた後、トルエンで膨潤した不溶分の重さを測定する。次に60℃の真空乾燥器で24時間乾燥させ、得られたトルエン不溶分の重さを測定し、以下の式によりトルエン不溶分含有率を算出する。
【0072】
【式2】
また、膨潤指数は次式により算出する。
【0073】
【式3】
【0074】
3.アイゾット衝撃値
JIS K−6871に準拠した。
4.全光線透過率および曇価厚み2mmの試験片を射出成形法で作り、ASTMD−1003に準拠してその値を求めた。
【0075】
5.耐候性評価ウェザーメーター(スガ試験機製 WEL−SUN−DCH−B)にアイゾット衝撃強度用試験片を曝露し、500時間経過後に試験片を取り出してアイゾット衝撃強度を測定し、その保持率を下記により算出した。
【0076】
【式4】
【0077】
6.成形品の耐油性試験長さ160mmの試験用冶具に長さ165mmのダンベル試験片を弓状に固定し歪みを与える。試験片表面に油を塗布し、23℃、50%湿度下で放置した。
【0078】
一定時間後の成形品の外観観察と保持率を測定した。本試験ではサラダ油(食用大豆油)と灯油を使用した。
【0079】
実施例1
本実施例では第1図に示すように配列された装置を用いた。スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ゴム質重合体および溶媒を含む混合溶液を、プランジャーポンプ(1)によって20リットルの攪拌式反応器(2)へ送り、攪拌翼による動的混合下に初期グラフト重合した。次いでこの混合溶液をギアポンプ(3)によって初期重合ライン(I)に送る。初期重合ライン(I)は入口から順に内径2.5インチ管状反応器(スイス国ゲブリューダー・ズルツァー社製SMX型スタティックミキサー・静的ミキシングエレメント30個内蔵)(4)、(5)及び(6)と混合溶液を循環させるためのギアポンプ(7)から構成されている。管状反応器(6)とギアポンプ(7)を有する還流ライン(V)との間には主重合ライン(V)に続く出口が設けられている。主重合ライン(V)には入口から順に上記と同様の管状反応器(8)、(9)及び(10)とギアポンプ(11)が直列に連結されている。
【0080】
スチレン−ブタジエンランダム共重合ゴム〔25℃における5%スチレン溶液粘度(以下、5%SVと略す):32センチポイズ、スチレン/ブタジエン重量比:5/95〕7部、スチレン25部、メタクリル酸メチル70部、アクリル酸ブチル5部およびエチルベンゼン10部から成る混合溶液を調製し、連鎖移動剤として単量体混合物100部に対して0.2部のn−ドデシルメルカプタンおよび有機過酸化物として単量体混合物100部に対して0.015部の1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを加え、上記装置を用いて以下の条件下で連続的に塊状重合させた。
【0081】
混合溶液の連続的な供給量:10リットル/時間還流比R:7攪拌式反応器(2)での反応温度:115℃初期重合ライン(III)での反応温度:130℃主重合ライン(IV)での反応温度:140〜160℃重合させて得られた混合溶液を熱交換器で235 ℃まで加熱し、50mmHgの減圧下で揮発性成分を除去した後、ペレット化して本発明のゴム変性共重合樹脂組成物を得た。得られたゴム変性共重合樹脂組成物の電子顕微鏡写真から、マトリックス樹脂中のグラフト共重合ゴムはサラミ構造を有するものであった該樹脂の分析データおよび物性の測定結果を第1表に示す。
【0082】
実施例2
スチレン−ブタジエンランダム共重合ゴム〔5%SV:25センチポイズ、スチレン/ブタジエン重量比:10/90〕8部、スチレン30部、メタクリル酸メチル65部、アクリル酸ブチル5部およびエチルベンゼン10部から成る混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にして本発明のゴム変性共重合樹脂組成物を得た。分析データおよび物性の測定結果を第1表に示す。
【0083】
実施例3
実施例1で得られたゴム変性共重合樹脂組成物100部に対して、イソパラフィン系石油炭化水素類としてアモコ社製ポリブテン「アモコ・ポリブテンL−65(粘度120cps)」を2部混合し、二軸押出機を用いてペレット化して本発明のゴム変性共重合樹脂組成物を得た。分析データおよび物性の測定結果を第1表に示す。
【0084】
比較例1
スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴム〔5%SV:10センチポイズ、スチレン/ブタジエン重量比:35/65〕10部、スチレン46部、メタクリル酸メチル54およびエチルベンゼン10部から成る混合溶液を調製し、連鎖移動剤として単量体混合物100部に対して0.1部のn−ドデシルメルカプタンおよび有機過酸化物として単量体混合物100部に対して0.02部のt−ブチルパーオキシベンゾエートを加えた以外は実施例1と同様に連続的に塊状重合させ、ゴム変性共重合樹脂組成物を得た。
【0085】
比較例2
ポリブタジエン(5%SV:25センチポイズ)7部、スチレン30部、メタクリル酸メチル65部、アクリル酸ブチル5部およびエチルベンゼン10部から成る混合溶液を調製し、連鎖移動剤として単量体混合物100部に対して0.2部のn−ドデシルメルカプタンおよび有機過酸化物として単量体混合物100部に対して0.015部の1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを加えた以外は実施例1と同様に連続的に塊状重合させ、ゴム変性共重合樹脂組成物を得た。
【0086】
比較例3
部分水添ポリブタジエン(旭化成社製 TP−083、5%SV:85センチポイズ、水添率20%)7部、スチレン30部、メタクリル酸メチル65部、アクリル酸ブチル5部およびエチルベンゼン10部から成る混合溶液を調製し、連鎖移動剤として単量体混合物100部に対して 0.1部のn−ドデシルメルカプタンおよび有機過酸化物として単量体混合物100部に対して0.015部の1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを加えた以外は実施例1と同様に連続的に塊状重合させ、ゴム変性共重合樹脂組成物を得た。
【0087】
比較例4
スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴム〔5%SV:25センチポイズ、スチレン/ブタジエン重量比:10/90〕8部、スチレン30部、メタクリル酸メチル65部、アクリル酸ブチル5部およびエチルベンゼン10部から成る混合溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてゴム変性共重合樹脂組成物を得た。分析データおよび物性の測定結果を第2表に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
○:保持率80%以上 △:保持率50%以下 ×:破断
【0090】
【表2】
【0091】
○:保持率80%以上 △:保持率50%以下 ×:破断
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、成形品の耐候性、耐衝撃性及び透明性に著しく優れたゴム変性共重合樹脂組成物を提供できる。更に、本発明においてはこれらの効果のみならず、成形品の耐油性も著しく優れたものとなる。
【0093】
更に連続塊状重合を行った場合には、その生産性が著しく向上する。本発明の製法で得たゴム変性共重合樹脂組成物は、透明性、耐衝撃性、耐候性の実用強度に優れるため、各種成形品に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は、静的ミキシングエレメントを内部に有する管状反応器を組み込んだ連続重合ラインの一例を示す工程図である。
(1):プランジャーポンプ
(2):撹拌式反応器
(3):ギヤポンプ
(4):静的ミキシングエレメント
(5):静的ミキシングエレメントを内部に有する管状反応器
(6):静的ミキシングエレメントを内部に有する管状反応器
(7):ギヤポンプ
(8):静的ミキシングエレメントを内部に有する管状反応器
(9):静的ミキシングエレメントを内部に有する管状反応器
(10):静的ミキシングエレメントを内部に有する管状反応器
(11):ギヤポンプ
(I):原料供給ライン
(II):予備重合ライン
(III):初期重合ライン
(IV):主重合ライン
(V):還流ライン
Claims (10)
- ゴム質重合体にスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルとがグラフト重合したグラフト共重合ゴム粒子が、スチレン系モノマーとメタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとの共重合体をマトリックス樹脂として分散するゴム変性共重合樹脂組成物において、グラフト共重合ゴム粒子が、スチレン系モノマーとジエン系モノマーのランダム共重合体であって、かつ、スチレン骨格含有率が3〜15重量%のランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)及びメタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとのグラフト共重合体であり、マトリックス樹脂が、スチレン系モノマー(b)の20〜35重量%とメタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとの合計65〜80重量%との共重合体であり、かつ、樹脂組成物の25℃でのトルエン不溶分含有率が10〜25重量%であることを特徴とするゴム変性共重合樹脂組成物。
- 25℃でのトルエン不溶分含有率が10〜25重量%、トルエンによる膨潤指数が6〜15で、かつトルエン不溶分含有率/膨潤指数が0.80〜2.50重量%である請求項1記載の組成物。
- グラフト共重合ゴム粒子が、サラミ構造を有し、かつ、平均粒子径0.2〜1.2μmのものである請求項1又は2記載の組成物。
- マトリックス樹脂、グラフト共重合ゴム粒子に加え、更にイソパラフィン系石油炭化水素類を含有する請求項1〜3の何れか1つに記載の組成物。
- スチレン系モノマーとジエン系モノマーのランダム共重合体であって、かつ、スチレン骨格含有率が3〜15重量%のランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)と、メタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとを、スチレン系モノマー(b)/メタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとの合計重量比が(20〜35)/(80〜65)となる割合で用いてグラフト共重合することを特徴とするゴム変性共重合樹脂組成物の製造方法。
- ランダム共重合ゴム(a)が、25℃での5重量%スチレン溶液粘度が5〜40cpsのものである請求項5記載の製造方法。
- ランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)と、メタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとを、可動部分のない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている管状反応器を組み込んでなる連続塊状重合ライン内でグラフト共重合する請求項5〜6の何れか1つに記載の製造方法。
- ランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)と、メタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとを、1個以上の撹拌式反応器とそれに続き可動部分のない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている管状反応器を組み込んでなる連続塊状重合ライン内でグラフト共重合する請求項5〜7の何れか1つに記載の製造方法。
- ランダム共重合ゴム(a)と、スチレン系モノマー(b)と、メタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとを含有する混合溶液を、
a.撹拌式反応器と、
b.撹拌式反応器から続き可動部分の全くない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている1個以上の管状反応器からなる初期重合ラインと、
c.初期重合ラインから続き可動部分の全くない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている1個以上の管状反応器からなる主重合ラインと、
d.初期重合ラインと主重合ラインとの間で分枝して初期重合ライン内に戻る還流ラインとによって構成される重合ラインを用い、初期重合ラインから出る初期重合液流の一部を還流ラインを経て還流させ、一方、還流されなかった初期重合液流を主重合ラインにおいて重合する請求項7又は8記載の製造方法。 - 連続塊状重合ライン内でグラフト共重合する際に、
方法1:該連続塊状重合ライン途中で、イソパラフィン系石油炭化水素類(B)を混合しつつグラフト共重合を行なうか、
方法2:(a)、(b)及びメタアクリル酸メチルとアクリル酸−n−ブチルとの混合溶液中に、イソパラフィン系石油炭化水素類(B)を溶解させ、次いで前記グラフト共重合を行うか、又は、
方法3:前記グラフト共重合を行ってグラフト共重合(A)を得た後、前記イソパラフィン系石油炭化水素類(B)と溶融混練する請求項7、8又は9記載の製造方法。
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