JP5016199B2 - 表面硬度に優れる透明樹脂組成物および該樹脂組成物を成形してなる透明樹脂成形品 - Google Patents
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Description
これらの欠点を改善するために、例えば少量のゴム成分を添加することにより、強度不足を改善することが提案されるが、その際には逆に十分な表面硬度が得られないことから、これらの性能をバランス良く有する樹脂材料が求められている。
特許文献1(特開2001−226547)には、分散相を形成する特定のゴム粒子径を有するグラフト共重合体と連続相を形成する特定の重量平均分子量を有するスチレンー(メタ)アクリル酸エステル系共重合体からなる透明性、表面硬度等を改善してなるゴム変性スチレン系樹脂組成物が提案されている。しかし、特許文献1に記載の樹脂組成物中のゴム含有量では、本発明の目的とする表面硬度(鉛筆硬度)は得られない。よって、表面硬度および強度のバランスに優れた透明樹脂材料が強く求められているのが現状である。
本発明における透明樹脂組成物は、スチレン3〜10重量%およびブタジエン97〜90重量%からなる体積平均粒子径0.5〜0.8μmであるゴム状重合体5〜60重量部の存在下に(メタ)アクリル酸エステル系単量体60〜80重量%、スチレン系単量体40〜20重量%からなる単量体混合物(合計)40〜95重量部を乳化重合法によってグラフト重合させたグラフト重合体(A)3〜10重量部、スチレン系単量体20〜40重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体60〜80重量%および共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる共重合体(B)97〜90重量部からなる樹脂組成物(A+Bの合計100重量部)である。
また、ゴム状重合体の体積平均粒子径について、0.5μm未満では十分な衝撃強度が得難く、0.8μmを超えると透明性が著しく損なわれる。好ましくは0.6〜0.8μmである。尚、ゴム状重合体の粒子径の調整は、重合の際の条件、すなわち重合開始剤の種類や量、重合率、重合時の温度あるいは攪拌条件等を変更することにより任意に調整することが可能である。
尚、ゴム状重合体の体積平均粒子径は試料0.3gをMEK30mlに溶解した後、レーザー光回折粒度分布測定装置(島津製作所製 SALD−1100)を用いて測定を行った。これらゴム状重合体の重合方法としては一般的に乳化重合法が用いられるが、目的に応じ
て他の重合法、例えば溶液重合法や塊状重合法、あるいはこれらを任意に組み合わせることも可能である。
なお、グラフト重合体(A)を構成するゴム状重合体として、体積平均粒子径0.4μm未満の小粒子径ゴム状重合体を公知の方法(例えば酸性物質を添加する方法(特公昭42−3112、特公昭55−19246、特公平2−9601、特開昭63−117005、特開昭63−132903、特開平7−157501)、酸基含有ラテックスを添加する方法(特開昭56−166201、特開昭59−93701、特開平1−126301、特開平8−59704)等を参照)にて凝集肥大化させて得られた体積平均粒子径0.5〜0.8μmのゴム状重合体を用いることが、衝撃強度の面で好ましい。
また、共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸等が例示され、それぞれ1種または2種以上を選択して使用することが可能である。
本発明における共重合体(B)は、スチレン系単量体20〜40重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体60〜80重量%および共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる共重合体である。共重合体(B)中に占めるスチレン系単量体20重量%未満では十分な強度が得られず、また40重量%を超えると表面硬度の低下が著しい。
本発明における共重合体(B)の重合方法には特に制限は無く、乳化重合法、溶液重合法や塊状重合法、あるいはこれらを任意に組み合わせることも可能である。
また、本発明の透明樹脂組成物は、通常の射出成形法により容易に目的とする成形品を作成することが出来る。加えて他の熱可塑性樹脂と組み合わせて複数のシリンダーを有する射出成形機による2色以上の射出成形法、ヒートサイクル成形法あるいは射出−圧縮成形法等を採用することも可能である。また、射出成形法のみならずシート、押出し、パイプ等の異型押出し法を採用することも可能である。成形時の加工温度については特に制限はないが、成形品の着色を防止する観点から200〜280℃の範囲であることが好ましい。
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
A−1:公知の乳化重合法により、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(スチレン5重量%、体積平均粒子径0.65μm)50重量部(固形分)、メタアクリル酸メチル35重量部、スチレン15重量部からなるグラフト重合体A−1を得た。
A−2:A−1と同様の方法によりスチレン−ブタジエンゴムラテックス(スチレン10重量%、体積平均粒子径0.80μm)50重量部(固形分)、メタアクリル酸メチル35重量部、スチレン15重量部からなるグラフト重合体A−2を得た。
A−3:公知の乳化重合法により、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(スチレン5重量%、体積平均粒子径0.35μm)を作成した後、凝集剤としてリン酸を使用して公知の方法で凝集肥大化処理を行い、凝集肥大化ゴムラテックス(体積平均粒子径0.71μm)を作成した。このゴムラテックス50重量部(固形分)およびメタアクリル酸メチル35重量部、スチレン15重量部を公知の乳化重合法によりグラフト重合を行いグラフト重合体A−3を得た。
A−i:A−1と同様の方法によりスチレン−ブタジエンゴムラテックス(スチレン5重量%、体積平均粒子径0.20μm)50重量部(固形分)、メタアクリル酸メチル35重量部、スチレン15重量部からなるグラフト重合体A−iを得た。
A−ii:A−1と同様の方法によりスチレン−ブタジエンゴムラテックス(スチレン5重量%、体積平均粒子径0.90μm)50重量部(固形分)、メタアクリル酸メチル5重量部、スチレン45重量部からなるグラフト重合体A−ii得た。
B−1:公知の乳化重合法によりメタアクリル酸メチル70重量%、スチレン30重量%からなる共重合体B−1を得た。尚共重合体B−1のポリスチレン換算重量平均分子量は10万、Q値は2.7であった。
B−i:公知の乳化重合法によりメタアクリル酸メチル90重量%、スチレン10重量%からなる共重合体B−iを得た。尚共重合体B−1のポリスチレン換算重量平均分子量は11万、Q値は2.5であった。
B−ii:公知の乳化重合法によりメタアクリル酸メチル50重量%、スチレン50重量%からなる共重合体B−iiを得た。尚共重合体B−iiのポリスチレン換算重量平均分子量は3万、Q値は2.5であった。
C−1:ヒンダードアミン系光安定剤 アデカスタブLA−77G(旭電化工業製)
C−2:フェノール系酸化防止剤 スミライザーBP−76(住友化学製)
C−3:シリコン化合物 KF96−100CS(信越化学工業製)
表1に示す割合で各種成分を混合した後、ベント付き40mm単軸押出し機((株)田辺プラスチックス社製)を使用し、設定温度220℃の条件で溶融混合を行った。尚、全ての試料には滑剤としてエチレンビスステアリルアミドを1部添加した。得られたペレットは3.5オンス縦型射出成形機(山城精機(株)製 SAV−100)を使用してシリンダー温度220℃の条件で試験片を作成し、以下の試験方法にて評価を実施した。
鉛筆硬度:JIS K−5400に準じて鉛筆硬度の測定を行った。
透明性:反射・透過率計HR−100(村上色彩技術研究所製)を用いて全光線透過率(%)を測定した。
Claims (5)
- スチレン3〜10重量%およびブタジエン97〜90重量%からなる体積平均粒子径0.5〜0.8μmであるゴム状重合体5〜60重量部の存在下に(メタ)アクリル酸エステル系単量体60〜80重量%、スチレン系単量体40〜20重量%からなる単量体混合物(合計)40〜95重量部を乳化重合法によってグラフト重合させたグラフト重合体(A)3〜10重量部、スチレン系単量体20〜40重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体60〜80重量%および共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる共重合体(B)97〜90重量部からなる樹脂組成物(A+Bの合計100重量部)であって、樹脂成形品(3mm厚み)とした時の全光線透過率が80%以上、かつ鉛筆硬度(JISK−5400)がF以上であることを特徴とする表面硬度に優れる透明樹脂組成物。
- グラフト重合体(A)を構成するゴム状重合体として、体積平均粒子径0.4μm未満の小粒子径ゴム状重合体を凝集肥大化させて得られた体積平均粒子径0.5〜0.8μmのゴム状重合体を用いてなる請求項1記載の表面硬度に優れる透明樹脂組成物。
- 共重合体(B)の重量平均分子量が5万〜15万の範囲である請求項1または2に記載の表面硬度に優れる透明樹脂組成物。
- 樹脂組成物(A+Bの合計)100重量部あたり、シリコン系化合物、フェノール系またはリン系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤から選ばれた少なくとも1種を0.01〜5.0重量部添加してなる請求項1〜3何れかに記載の表面硬度に優れる透明樹脂組成物。
- 請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物を成形してなる透明樹脂成形品。
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