JP4408818B2 - マウント装置の取付構造 - Google Patents

Description

本発明は、自動車においてエンジンやトランスミッションなどをフレーム部材に支持させるためのマウント装置の取付構造に関し、特にフレーム部材に接合した支持プレートでマウント装置の固定部材を支持して支持剛性を高めるようにしたマウント装置の取付構造に関するものである。

自動車においては、車体前部において車体前後方法に延在するフロントサイドフレームの折曲変形により、車体衝突時の衝突エネルギーを吸収して乗員保護性能を高めることが一般に行われている。

他方、車体前部にエンジンを備えた自動車においては、フロントサイドフレームにエンジンマウントを介してエンジンを支持させており、このエンジンマウントはフロントサイドフレームに対して固定ボルトにより締結されるようになっているが、このエンジンマウントの支持剛性が不足すると振動が大きくなることから、支持プレートによりエンジンマウントの支持剛性を高めて振動低減を図る技術が知られている（特許文献１参照）。
特許第３３５８１２９号公報

しかしながら、前記従来の技術のように、フロントサイドフレームの長手方向に前後２箇所の締結で配置される支持プレート（補強ブラケット）によりエンジンマウントの支持剛性を高めた構成では、支持プレートが配設された領域においてフロントサイドフレームの剛性が部分的に高くなるため、車体衝突時のフロントサイドフレームの折曲変形の調整が面倒になるという不都合があった。

本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、マウント装置の支持剛性の向上を図ると共に、車体衝突時のフレーム部材の変形特性の調整を容易に行うことができるように構成されたマウント装置の取付構造を提供することにある。

このような課題を解決するために、本発明によるマウント装置の取付構造は、請求項１に示すとおり、車体前部において車体前後方向に延在するフロントサイドフレーム（１）に対するマウント装置（２）の取付構造であって、前記フロントサイドフレームが、ハット形状の断面をなす第１の部材（２７）と平板状の第２の部材（２８）とを上下のフランジ部（２９・３０）で互いに接合してなり、前記第１の部材による上壁（２１）、一方の側壁（２２）及び下壁（２４）と、前記第２の部材による他方の側壁（２３）とにより方形状の閉断面をなし、このフロントサイドフレームの上壁及び下壁のいずれかに、マウント装置を固定するための複数の固定部材（１７・１８）が前記フロントサイドフレームの延設方向に離間して配置され、この複数の固定部材を個別に支持する複数の支持プレート（４１・４２または５１・５２）が、互いに別体に形成されると共に、前記一方の側壁に接合された第１の接合部と、この第１の接合部（３３）から前記一方の側壁に対して傾斜した状態で前記フロントサイドフレームの内部を概ね仕切る隔壁状に延出されて、前記固定部材が取り付けられた隔壁状部（３４）と、この隔壁状部の上端からＬ字形状に横方向に折り曲げられた後に上向きに延出されて、上側の前記フランジ部（２９）にのみ接合された第２の接合部（３５）とを有し、車体衝突時に折曲変形の起点となる前記第１の接合部が、前記フロントサイドフレームの折曲変形を最適化可能な位置に配置されるように、前記隔壁状部の傾斜角度が設定されたものとした。

これによると、支持プレートが、フロントサイドフレームの内部を概ね仕切る隔壁状をなすため、高い支持剛性を確保することができる。

さらに、支持プレートの基部の接合部分（第１の接合部）においてフロントサイドフレームの剛性が部分的に高くなり、ここがフロントサイドフレームの折曲変形の起点となるが、支持プレートにおいてフロントサイドフレームの一方の側壁に接合された部分から隔壁状に延出された部分（隔壁状部）の延出角度を変えることで、固定部材の配設位置を変更することなく、支持プレートのフロントサイドフレームに対する接合位置、すなわちフロントサイドフレームと支持プレートとの接合により高剛性化された部分の位置を変更することができるため、フロントサイドフレームの折曲変形の調整を容易に行うことができる。

また、フロントサイドフレームの延設方向すなわち車体前後方向に離間して配設された複数の固定部材を別体の支持プレートで個別に支持させる構成としたため、各支持プレートのフロントサイドフレームに対する接合部分でのみフロントサイドフレームの剛性が高くなり、複数の固定部材を一体の支持プレートで支持する構成の場合に支持プレートの配設領域で全体的にフロントサイドフレームの剛性が高くなるのに比較して、フロントサイドフレームの折曲変形の調整が格段に容易になる。

また、フロントサイドフレームの折曲変形の調整のために支持プレートのフロントサイドフレームに対する接合位置をフロントサイドフレームの延設方向に沿って適宜に移動させる観点から、支持プレートのフロントサイドフレームに対する接合位置をフロントサイドフレームの側壁に限定する構成とすると良いが、このフロントサイドフレームの側壁における接合位置の近傍であれば、フロントサイドフレームの折曲変形に大きな影響を与えないため、例えばフロントサイドフレームの側壁の他に、その近傍の上壁や下壁に支持プレートを接合する構成とすることも可能である。

このように本発明によれば、支持プレートが、フロントサイドフレームの内部を概ね仕切る隔壁状をなすため、高い支持剛性を確保することができ、しかも、固定部材の位置を変更することなく、支持プレートのフロントサイドフレームに対する接合位置を容易に変更することができるため、フロントサイドフレームの折曲変形の調整を容易に行うことができ、マウント装置の支持剛性の向上による振動低減を図りつつ、車体衝突時のフロントサイドフレームの折曲変形を最適化して乗員保護性能を高めることが可能になる。

以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。

図１は、本発明によるマウント装置の取付構造を示す分解斜視図である。図２は、図１に示したマウント装置の取付構造を上方から見た断面図である。図３は、図１に示したマウント装置の取付構造が適用される車体前部を示す模式図である。ここでは、車体前部において車体前後方法に延在するフロントサイドフレーム（フレーム部材）１上に、車体前部に配置されるエンジンＥをフロントサイドフレーム１に支持させるためのエンジンマウント（マウント装置）２が設けられている。

フロントサイドフレーム１は、左右に一対設けられ、図３に示すように、この左右のフロントサイドフレーム１の間に、エンジンＥ及びトランスミッションＭを一体化したパワーユニットが搭載される。フロントサイドフレーム１は、略水平方向に延びた横方向部１ａと、その後側で斜め下向きに延びた傾斜部１ｂとを有し、傾斜部１ｂの後端は、車体の左右両側において車体前後方法に延在するサイドシル９に接続されている。エンジンマウント２は前側の横方向部１ａに取り付けられ、車体前面衝突時には、フロントサイドフレーム１の前端からエンジンマウント２の周辺部分に至る領域が主に折曲変形して衝突エネルギーを吸収する。

エンジンマウント２は、液体封入型のものであり、図１に示すように、エンジンＥの側部に設けられた取付ブラケット３が、ボルト４及びナット５により上端の取付部６に固定される。また、エンジンマウント２の下部には、エンジンマウント２をフロントサイドフレーム１に対して固定するための２つの固定ボルト１１・１２がそれぞれ挿通されるボルト挿入孔１３・１４を備えた取付フランジ１５が設けられている。

フロントサイドフレーム１は、上壁２１と、両側の側壁２２・２３と、下壁２４とを有する方形状の閉断面部材であり、その上壁２１には、エンジンマウント２の固定ボルト１１・１２が螺合する２つのナット部材（固定部材）１７・１８が、フロントサイドフレーム１の延設方向（車体前後方向）に並んで配置されている。各ナット部材１７・１８は、フロントサイドフレーム１の幅方向（車体左右方向）の略中心に位置する。特にここでは、フロントサイドフレーム１が、ハット形状の断面をなす部材２７と平板状の部材２８とを、上下のフランジ部２９・３０で互いに接合してなっている。

またフロントサイドフレーム１の上壁２１には、ナット部材１７・１８のねじ孔に整合する位置にボルト挿入孔２５・２６が開設されており、エンジンマウント２のボルト挿入孔１３・１４に挿通された固定ボルト１１・１２を、フロントサイドフレーム１のボルト挿入孔２５・２６に挿通してナット部材１７・１８に螺合させて締め付けることで、エンジンマウント２がフロントサイドフレーム１に対して固定される。

フロントサイドフレーム１の内部には、ナット部材１７・１８を個別に支持する２つの支持プレート（支持プレート）３１・３２が設けられており、これらの支持プレート３１・３２は、互いに対称形状に形成され、フロントサイドフレーム１の一方の側壁２２に接合される第１の側面接合部３３と、この第１の側面接合部３３からフロントサイドフレーム１の内部を概ね仕切る隔壁状に延出された隔壁状部３４と、フロントサイドフレーム１の他方の側壁２３に接合される第２の側面接合部３５と、フロントサイドフレーム１の下壁２４に接合される下面接合部３６とを有している。

第１の側面接合部３３は、側壁２２に沿うように設けられており、その側壁２２に対してスポット溶接により接合される。下面接合部３６は、下壁２４に沿うように隔壁状部３４の下端から横向きに延出されており、下壁２４に対してスポット溶接により接合される。

第２の側面接合部３５は、隔壁状部３４の上端からＬ字形状に横方向に折り曲げられた後に上向きに突片状に延出されて、フロントサイドフレーム１の上側のフランジ部２９において、フロントサイドフレーム１を構成する部材２７・２８間に挟み込まれ、これらの部材２７・２８に対してスポット溶接により接合される。

また支持プレート３１・３２の隔壁状部３４には、ナット部材１７・１８の横半分を受容するように半円筒状に湾曲形成された保持部３８が設けられており、この保持部３８にナット部材１７・１８の側面がすみ肉溶接などにより固着されている。

なお、支持プレート３１・３２には、支持剛性を高めるために、半円筒状の保持部３８の他、補強リブなどによる凹凸を適所に形成するようにしても良い。

図４・図５は、本発明によるマウント装置の取付構造の別の例を示す断面図である。前記図２に示した例では、上面視でフロントサイドフレーム１の側壁２２に対して直交する向きに支持プレート３１・３２の隔壁状部３４が配設されていたのに対し、図４・図５に示す例では、上面視でフロントサイドフレーム１の側壁２２に対して傾斜した向きに支持プレート４１・４２・５１・５２の隔壁状部３４が配設されている。２つのナット部材１７・１８の配設位置は、図２に示した例と同一である。なお、この図４・図５の例では、前記図１の例と同等の機能を有するものに同一の符号を付して、その説明を省略する。

特に図４に示す例では、ナット部材１７・１８を個別に支持する２つの支持プレート４１・４２の各第１の側面接合部３３が、フロントサイドフレーム１の延設方向（車体前後方向）について２つのナット部材１７・１８で挟まれた領域の内側において、互いに近接した位置でフロントサイドフレーム１の側壁２２に接合されており、２つの支持プレート４１・４２の各隔壁状部３４が、互いに離反する向きに傾斜した状態で第１の側面接合部３３から延出されている。

他方、図５に示す例では、ナット部材１７・１８を個別に支持する２つの支持プレート５１・５２の各第１の側面接合部３３が、フロントサイドフレーム１の延設方向（車体前後方向）について２つのナット部材１７・１８で挟まれた領域の外側において、互いに大きく離間した位置でフロントサイドフレーム１の側壁２２に接合されており、２つの支持プレート５１・５２の各隔壁状部３４が、互いに近接する向きに傾斜した状態で第１の側面接合部３３から延出されている。

このように本発明によるマウント装置の取付構造においては、支持プレート３１・３２・４１・４２・５１・５２の第１の側面接合部３３から延出した隔壁状部３４の延出角度を変えることで、ナット部材１７・１８の配設位置を変更することなく、支持プレート３１・３２・４１・４２・５１・５２のフロントサイドフレーム１に対する接合位置を、フロントサイドフレーム１の延設方向（車体前後方向）に移動させることができ、フロントサイドフレーム１を最適な折曲変形特性に容易に設定することができる。

特にエンジンマウント２をフロントサイドフレーム１に固定するための複数のナット部材１７・１８が、別体の支持プレート３１・３２・４１・４２・５１・５２で個別に支持されるため、各支持プレート３１・３２・４１・４２・５１・５２のフロントサイドフレーム１に対する接合部分でのみフロントサイドフレーム１の剛性が高くなり、複数のナット部材１７・１８を一体の支持プレートで支持させる構成の場合に支持プレートの配設領域で全体的にフロントサイドフレーム１の剛性が高くなるのに比較して、フロントサイドフレーム１の変形特性の調整が格段に容易になる。

本発明にかかるマウント装置の取付構造は、高い支持剛性を確保すると共に、車体衝突時のフレーム部材の変形特性の調整を容易に行うことができる効果を有し、特に車体前部に配置されたエンジンをフロントサイドフレームに支持させるためのマウント装置の取付構造などとして有用である。

本発明によるマウント装置の取付構造を示す斜視図である。 図１に示したマウント装置の取付構造を上方から見た断面図である。 図１に示したマウント装置の取付構造が適用される車体前部を示す模式図。 本発明によるマウント装置の取付構造の別の例を示す断面図である。 本発明によるマウント装置の取付構造の別の例を示す断面図である。

符号の説明

１ フロントサイドフレーム（フレーム部材）
２ エンジンマウント（マウント装置）
１７・１８ ナット部材（固定部材）
２１ 上壁
２２・２３ 側壁
２４ 下壁
３１・３２・４１・４２・５１・５２ 支持プレート
３３ 第１の側面接合部
３４ 隔壁状部
３５ 第２の側面接合部
Ｅ エンジン

Claims (1)

1. 車体前部において車体前後方向に延在するフロントサイドフレームに対するマウント装置の取付構造であって、
   前記フロントサイドフレームが、ハット形状の断面をなす第１の部材と平板状の第２の部材とを上下のフランジ部で互いに接合してなり、前記第１の部材による上壁、一方の側壁及び下壁と、前記第２の部材による他方の側壁とにより方形状の閉断面をなし、
   このフロントサイドフレームの上壁及び下壁のいずれかに、マウント装置を固定するための複数の固定部材が前記フロントサイドフレームの延設方向に離間して配置され、この複数の固定部材を個別に支持する複数の支持プレートが、互いに別体に形成されると共に、前記一方の側壁に接合された第１の接合部と、この第１の接合部から前記一方の側壁に対して傾斜した状態で前記フロントサイドフレームの内部を概ね仕切る隔壁状に延出されて、前記固定部材が取り付けられた隔壁状部と、この隔壁状部の上端からＬ字形状に横方向に折り曲げられた後に上向きに延出されて、上側の前記フランジ部にのみ接合された第２の接合部とを有し、車体衝突時に折曲変形の起点となる前記第１の接合部が、前記フロントサイドフレームの折曲変形を最適化可能な位置に配置されるように、前記隔壁状部の傾斜角度が設定されたことを特徴とするマウント装置の取付構造。

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