JP4331498B2 - 電子写真用トナーバインダー及び電子写真用トナー - Google Patents

電子写真用トナーバインダー及び電子写真用トナー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真、静電記録、静電印刷などに用いられる電子写真用トナーバインダーとトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンタ等における画像の定着方式として一般的に採用されている熱定着方式用の電子写真用トナーバインダーは、高い定着温度でもトナーが熱ロールに融着せず(耐ホットオフセット性)、定着温度が低くてもトナーが定着できること(低温定着性)や、微粒子とするための適度な衝撃強度などが求められる。この基本的な要求性能を満たすためにビスフェノール類から誘導されるアルコール性化合物を構成単位としたポリエステル樹脂を用いることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第4939059号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、熱定着方式を用いた複写機やプリンタの耐久性に対する関心が高まり、複写機等を長期間繰り返し使用した後でも、安定した画像を形成することが強く要望されるようになってきた。
しかしながら従来のポリエステル樹脂からなるトナーバインダーやトナーを用いると、長期ランニング性が十分でないという問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、長期ランニング性に優れた熱定着方式用のポリエステル系トナーバインダーを開発すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(A)を含有するアルコール成分と酸成分から構成されるポリエステル樹脂からなる電子写真用トナーバインダーにおいて、(A)が、アルカリ下での溶剤抽出、及び/又は水の存在下での、アルミニウム、アルカリ土類金属、及びアルカリ金属からなる群より選ばれる1種以上の金属の酸化物及び/又は水酸化物(B)による処理により精製されたビスフェノール類の炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物であって、該ポリエステル樹脂のクロロホルム可溶分中の未反応のビスフェノール類の含有量が0.1ppm以下であることを特徴とする電子写真用トナーバインダー;並びに該トナーバインダー、着色剤、及び必要により添加剤からなることを特徴とする電子写真用トナーである。
HO−Ar−X−Ar−OH (1)
[式中、Xは炭素数1〜3のアルキレン基、−SO2 −、−O−、−S−、または直接結合、Arは、ハロゲンもしくは炭素数1〜30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳述する。
本発明のトナーバインダーに用いるポリエステル樹脂としては、アルコール成分と酸成分との重縮合物等が挙げられる。
アルコール成分としては、必須成分であるビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(A)とその他のポリオール、酸成分としてはポリカルボン酸が挙げられる。
【0007】
ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(A)は、通常、ビスフェノール類にアルキレンオキサイド(以下AOと略記する)を付加して得られる。
ビスフェノール類としては、下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
HO−Ar−X−Ar−OH (1)
[式中、Xは炭素数1〜3のアルキレン基、−SO2 −、−O−、−S−、または直接結合、Arは、ハロゲンもしくは炭素数1〜30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、トリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、2−メチルビスフェノールA、2,6−ジメチルビスフェノールA、2,2’−ジエチルビスフェノールFが挙げられ、これらは2種以上を併用することもできる。
これらビスフェノール類に付加するAOとしては、炭素数が2〜4のものが好ましく、具体的には、エチレンオキサイド(以下EOと略記する)、プロピレンオキサイド(以下POと略記する)、1,2−、2,3−、1,3−又はiso−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(以下THFと記載する)、並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらの中で好ましくはEO及び/又はPOである。AOの付加モル数は、好ましくは2〜10モル、更に好ましくは2〜4モルである。
(A)のうち、トナーの定着性の観点から好ましいものは、ビスフェノールAのEO及び/又はPO付加物(平均付加モル数2〜4、特に2〜3)である。
【0008】
ビスフェノール類にAOを付加させる際、触媒を使用する。触媒としては特に限定されないが、アルカリ触媒が好ましい。アルカリ触媒としては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、及びセシウム)の水酸化物、及びアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム)の水酸化物等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、水酸化カリウム及び水酸化セシウムである。
触媒の使用量は特に限定されないが、ビスフェノール類に対して、好ましくは0.0001〜10%、更に好ましくは0.001〜1%である。
上記及び以下において、特に記載の無い限り、%は重量%、比は重量比、部は重量部を表す。
【0009】
AO付加させる際には、ビスフェノール類とAOと触媒とを一括で仕込んで反応させてもよいし、ビスフェノール類と触媒の混合物に、必要により脱水後AOを導入して反応させてもよいし、或いはビスフェノール類に触媒とAOとを導入して反応させてもよい。これらの中で好ましいのは、ビスフェノール類と触媒の混合物にAOを導入して反応させる方法である。
ビスフェノール類にAOを付加させる際の反応温度は、好ましくは0℃〜250℃、更に好ましくは20℃〜180℃、特に好ましくは80℃〜150℃、最も好ましくは85℃〜120℃である。反応系内の圧力は、好ましくは−0.5〜6kgf/cm2 G、さらに好ましくは0.2〜5kgf/cm2 Gであり、所定量のAOを投入終了後は、上記温度にて反応系内の圧力が平衡に達するまで熟成を行なう方法が例示できる。
反応は、必要により1種以上の溶剤の存在下で行ってもよい。溶剤を用いる場合は、反応後に減圧ストリッピング等により溶剤を除去する。溶剤としては、例えば、水、アルコール(メタノール、エタノール等)、ケトン(アセトン等)、エーテル(THF等)、芳香族炭化水素(キシレン等)が挙げられる。
【0010】
(A)中の未反応のビスフェノール類の含有量は、好ましくは15ppm以下、更に好ましくは5ppm以下、特に好ましくは1ppm以下、最も好ましくは検出限界(0.1ppm)以下である。15ppm以下であれば、ポリエステル樹脂中の未反応のビスフェノール類の含有量が15ppm以下である本発明のトナーバインダーが容易に得られ、トナーとしたときの長期ランニング性が良好となる。
【0011】
本発明において、未反応のビスフェノール類の含有量は、以下の方法によって測定される。
[ビスフェノール類の含有量の測定法]
サンプル3gを精秤し、クロロホルム30mlに溶解し、0.5mol/L・KOH30mlを加え混合する。二層に分離させた後水層を取り出し、塩酸を加えPHを3以下にする。更にクロロホルム30mlを加え混合し、二層に分離させた後クロロホルム層を取り出し、それに少量の無水硫酸ソーダを加えて混合した後、無水硫酸ソーダをデカンテーションで分離する。クロロホルム層を減圧にてクロロホルムをストリッピングし、アセトニトリル3mlを加えストリッピング残物を溶解する。この溶液を液体クロマトグラフィー分析(LC分析)で測定する。予め各ビスフェノール類の濃度―面積の検量線を作成しておき、LCでの面積を測定後、検量線を使いビスフェノール類の濃度を求める。
LC分析の一例として下記が挙げられる。
LCシステム : LC−6A(島津製作所製)
カラム : ASAHIPAK GS−310
(7.5mmφ X 500mm)
溶離液 : アセトニトリル/水=40/60(vol%)
流速 : 1.5ml/min
検出器 : SPD−10AVvp(島津製作所製)
検出波長 : 230nm
注入量 : 20μl
【0012】
ポリオキシアルキレンエーテル(A)を得るのに、AO付加時にアルカリ触媒を使用した場合、これを除去する必要がある時には、通常、活性白土等の吸着剤に吸着させて、通常のろ過操作で重合物とアルカリ触媒とを分別する方法が行われる。この際、必要によりろ過助剤としてケイソウ土系ろ過助剤[例えば昭和化学工業(株)製のラヂオライト等]を用いることにより、ろ過操作に要する時間を短縮することも可能である。
しかしながら、通常のろ過操作のみでAO付加物と上記触媒とを分別しただけでは、ビスフェノール類は殆ど除去されず、AO付加物中の未反応のビスフェノール類の含量は、ビスフェノール類の種類によっても異なるが、通常20ppm〜5%である。
【0013】
未反応のビスフェノール類の含有量が、前記のようにさらに少ないビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(A)を得る方法は特に限定されないが、例えば次の(1)又は(2)の方法で精製することにより得られる。これらの方法は、繰り返し行ってもよいし、(1)と(2)を併用してもよい。
(1)ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテルと、アルミニウム、アルカリ土類金属、及びアルカリ金属からなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物及び/若しくは水酸化物(B)と、水とを混合し、固形分をろ過することで未反応のビスフェノール類を除去する方法。
(2)ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテルを、有機溶剤と水との混合溶剤中でアルカリ性にして、5〜40℃にて静置後分液し、未反応のビスフェノール類を溶剤抽出し除去する方法。
【0014】
(1)の方法の場合、(B)としては、ハイドロタルサイト、シリケート、並びにこれら以外の金属酸化物及び/若しくは水酸化物が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
ハイドロタルサイトとしては、例えば、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O及びMg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oが挙げられる。
これらは天然に産する鉱物、或いは合成によって得られる化合物であり、西ドイツ特許公告第1592126号およびヨーロッパ特許公開第0207811号等に記載されている既知の物質である。これら天然および合成のハイドロタルサイトのMg2+/Al3+の比は変動可能で約1〜8であり、また、OH-/CO3 2-の比も変動可能で約10〜20である。
【0015】
シリケートとしては、例えば、2MgO・6SiO2・xH2O及びAl23・9SiO2・xH2Oが挙げられる。
これら以外ののアルミニウム、アルカリ土類金属及びアルカリ金属からなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物及び/若しくは水酸化物としては、例えば、Al23・xH2O、2.5MgO・Al23・xH2O、Al23・Na2O・2CO3・xH2O、及びMg0.7Al0.31.15が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、ハイドロタルサイト及び/又はシリケートであり、更に好ましくは、(B)の少なくとも1部(好ましくは20%以上、特に30〜95%)としてハイドロタルサイトを用いるものであり、特に好ましくは、少なくとも1部Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oを用いるものである。
【0016】
(B)及び水の量は(B)の種類によって異なるが、未反応のビスフェノール類の除去効率及び生産コストの観点から、(A)100部に対して、何れもが好ましくは0.1〜5部である。(B)及び水の量は何れも、更に好ましくは0.2〜4部、特に好ましくは0.3〜3部である。また、(B)と水の比は、好ましくは1〜9:9〜1、更に好ましくは3〜7:7〜3、特に好ましくは4〜6:6〜4である。
【0017】
(A)と(B)及び水とを混合する方法は特に限定はない。(A)が高粘度(例えば1Pa・s以上)であるか固体である場合には(A)を溶剤に溶解して溶液の状態で精製することができる。使用できる溶剤としては、例えばアルコール類(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸n−ブチル等)、及びハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素及び1,2−ジクロロエタン等)が挙げられる。溶剤で溶解した場合における濃度は(B)と水が混合できれば特に限定はなく〔例えば(A)の溶液中の(A)の含有量が10〜99%〕、適度な粘度(例えば1Pa・s未満)に調整して使用すればよい。溶剤を使用した場合には精製後にストリッピング等の方法で脱溶剤を行えばよい。
【0018】
混合温度は、好ましくは50〜150℃であり、更に好ましくは70〜120℃である。混合時間は、好ましくは10分〜10時間であり、更に好ましくは20分〜2時間である。混合は、必要により加圧下(好ましくは5kgf/cm2G以下)で行ってもよい。
混合時に系内をPH7〜14に、好ましくは8〜13のアルカリ性にすれば(B)によるビスフェノール類の除去効果が更に高まる。アルカリ性にするのは前記のアルカリ金属の水酸化物やアミン類を添加することによって可能である。
上記アミン類としては、例えば、炭素数1〜12のアルキルアミン(ジエチルアミン、トリエチルアミン等)、炭素数2〜12のアルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等)が挙げられる。
混合が終了すれば通常のろ過操作によって(B)を取り除く。
上記精製操作1回で目標とするビスフェノール類含有量に達しなければ、達するまで繰り返せばよい。
【0019】
(2)の方法を用いる場合、有機溶剤としては、非水溶性のものが好ましく、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン)、脂肪族及び脂環式炭化水素(例えばシクロヘキサン、n−ヘキサン)等が挙げられる。有機溶剤と水の混合比は、特に限定されないが、好ましくは1〜9:9〜1、更に好ましくは2〜8:8〜2、特に好ましくは3〜7:7〜3である。
アルカリ性にする方法としては、(1)と同様のアルカリ金属の水酸化物やアミン類を添加する方法が挙げられ、PHは好ましくは8〜13である。
静置温度は、通常5〜40℃、好ましくは10〜35℃であり、静置時間は分液可能な時間であれば特に限定されないが、好ましくは5分〜10時間である。
これらの方法のうち、好ましいのは(1)の方法である。
【0020】
(1)および/または(2)の精製処理を行った後の、(A)中の、アルミニウム、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属の合計含有量は、長期ランニング性の点から、好ましくは2〜75ppmである。下限は更に好ましくは5ppmであり、上限は更に好ましくは60ppmである。上記の金属の合計含有量の範囲を満たす(A)は、(B)の種類や使用量を選択することにより得られる。
【0021】
本発明において、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアルミニウムの合計含有量は、以下の方法で各金属の含有量を測定し、その合計量を求めたものである。
[アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアルミニウム含有量の測定法]
サンプル10gをジメチルホルムアミド(DMF)90gに溶解させ、10%溶液を作成する。この溶液をICPS(Inductively Coupled Plasma Spectrometry)で測定する。あらかじめ作成した各対象金属の濃度−面積の検量線を使い、濃度を求める。
ICPS分析装置の一例を示すと、島津製作所製ICPS−8000などが挙げられる。
【0022】
本発明に用いるポリエステル樹脂の原料であるアルコール成分中に、必要により用いるその他のポリオールとしては、(A)以外のジオール(a)、3価以上のポリオール(b)が挙げられる。
ジオール(a)としては、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールなど);炭素数4〜24のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールAなど);及び上記脂環式ジオールのAO付加物(付加モル数2〜20)などが挙げられる。これらは2種以上併用して用いることもできる。
上記AOとしては炭素数2〜4のものが好ましく、EO及び/又はPOが更に好ましい〔以下に述べる化合物のAOについても同様〕。
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール、特にエチレングリコールである。また(a)の水酸基価は、180〜1850(mgKOH/g、以下の水酸基価も同じ)が好ましい。
【0023】
ポリオール(b)としては、3〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトールなど);上記脂肪族多価アルコールのAO付加物(付加モル数2〜20);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど);ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラックなど:平均重合度3〜60);上記トリスフェノール類のAO付加物(付加モル数2〜20);及び上記ノボラック樹脂のAO付加物(付加モル数2〜20)などが挙げられる。これらは2種以上併用して用いることもできる。
これらのうち好ましいものは、3〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール、及びノボラック樹脂のAO付加物であり、特に好ましいものはノボラック樹脂のAO付加物である。また(b)の水酸基価は、150〜1850が好ましい。
なお、アルコール成分として、ジオール(a)又は3価以上のポリオール(b)の低級(炭素数1〜8)アルカン酸エステルを用いてもよい。
【0024】
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、ジカルボン酸(c)、3価以上のポリカルボン酸(d)が挙げられる。
ジカルボン酸(c)としては、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデセニルコハク酸など);炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸及びフマル酸など);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらは2種以上を併用して用いることもできる。
これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸であり、特に好ましくは、マレイン酸、フマル酸、及びテレフタル酸である。また(c)の酸価(mgKOH/g、以下の酸価も同じ)は180〜1250が好ましい。
【0025】
ポリカルボン酸(d)としては、3価〜6価又はそれ以上のポリカルボン酸が好ましく、具体的には、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)、不飽和カルボン酸のビニル重合体(スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、α−オレフィン/マレイン酸共重合体、スチレン/フマル酸共重合体など)などが挙げられる。これらは2種以上を併用して用いることもできる。これらのうち好ましいものは、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸であり、特に好ましいものはトリメリット酸、及びピロメリット酸である。また(d)の酸価は150〜800が好ましい。
なお、酸成分として、ジカルボン酸(c)又は3価以上のポリカルボン酸(d)の、酸無水物又は低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。また好ましいカルボン酸の、酸無水物又は低級アルキルエステルも同様に好ましい。
また、(a)〜(d)の他にもヒドロキシカルボン酸(ヒドロキシステアリン酸及び硬化ヒマシ油脂肪酸など)を用いることができる。
【0026】
本発明のポリエステル樹脂からなるトナーバインダーを用いて、モノクロ複写機等に有用である低光沢画像を得る場合は、(A*)〔(A)及び必要により(a)を表す〕及び(c)と共に(b)及び/又は(d)を用いた非線状のポリエステルが好ましく、(A*)、(b)、(c)及び(d)の4成分からなるポリエステルが特に好ましい。(b)と(d)の両方を用いることで耐ホットオフッセト性がより向上する。
(b)及び(d)の比率は、(b)と(d)のモル数の和が(A*)〜(d)のモル数の合計に対して、好ましくは0.1〜40モル%、更に好ましくは0.5〜25モル%、特に1〜20モル%である。(c)と(d)とのモル比は、任意の割合でよいが、好ましくは90/10〜20/80、特に85/15〜30/70である。
【0027】
フルカラー複写機等に有用である高光沢画像を得る場合は、(A*)及び(c)を用いた線状ポリエステル、又は(A*)及び(c)に、更に(b)及び/又は(d)を併用した非線状ポリエステルが好ましい。
(b)及び/又は(d)の比率は、(b)と(d)のモル数の和が(A*)〜(d)のモル数の合計に対して、好ましくは0〜20モル%、更に好ましくは0〜15モル%、特に0〜10モル%である。
【0028】
トナーバインダー用ポリエステル樹脂は、THF不溶分を0〜70%含有していることが好ましい。モノクロ複写機に用いる場合は、更に好ましくは15〜60%、特に20〜50%である。THF不溶分が70%以下でより良好な低温定着性が得られる。
【0029】
尚、THF不溶分及びTHF可溶分は以下の方法で得られる。
200mlの共栓付きマイヤーフラスコに、試料約0.5gを精秤し、THF50mlを加え、3時間撹拌還流させて冷却後、グラスフィルターにて不溶分をろ別する。
THF不溶分の重量%は、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥した後の重量と試料の重量比から算出する。
後述する分子量の測定には、このろ液(THF可溶分)を使用する。
【0030】
本発明に用いるポリエステル樹脂において、全アルコール成分中の(A)の割合は、通常任意に設定できるが、トナーの保存性と定着性能及び粉砕性のバランスの観点から、(A)がアルコール成分の20モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは60モル%以上、特に80モル%以上である。
【0031】
アルコール成分と酸成分の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、更に好ましくは1.5/1〜1/1.5、特に好ましくは1.4/1〜1/1.4である。また使用するアルコール成分と酸成分の種類は、最終的に調製されるポリエステル樹脂からなるトナーバインダーのガラス転移点(Tg)が40〜90℃(特に45〜70℃)となるよう分子量調整も考慮して選択されるのが好ましい。
尚、上記及び以下において、Tgはセイコー電子工業(株)製 DSC20,SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0032】
ポリエステル樹脂における未反応のビスフェノール類の含有量は、通常15ppm以下、好ましくは10ppm以下、更に好ましくは3ppm以下、特に好ましくは検出限界(0.1ppm)以下である。15ppmを越えると、トナーとしたときの長期ランニング性が不良となる。
【0033】
ポリエステル樹脂のTHF可溶分の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下GPCと略記する)により得られる数平均分子量(Mn)は、好ましくは1500〜100万、更に好ましくは2000〜10万、特に好ましくは4000〜5万である。重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5000〜500万、更に好ましくは1万〜200万である。また、1500〜100万に分子量の極大値を有すれば、耐熱保存性及び粉体流動性が良好となり、好ましい。
【0034】
上記及び以下においてポリエステル樹脂の分子量は、GPCを用いて以下の条件で測定される。
装置 : 東ソー製 HLC−8120
カラム : TSKgelGMHXL(2本)
TSKgelMultiporeHXL−M(1本)
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25%のTHF溶液
溶液注入量: 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : ポリスチレン
【0035】
ポリエステル樹脂のTgは、好ましくは40〜90℃、更に好ましくは45〜70℃である。Tgが40℃〜90℃の範囲では、トナーとしたときの耐熱保存安定性と低温定着性がより良好となる。また、ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは0.1〜80、さらに好ましくは1〜60である。水酸基価は、好ましくは0.1〜100、さらに好ましくは1〜80である。
【0036】
本発明に用いるポリエステル樹脂は、アルコール成分〔(A)並びに、必要により(a)及び/又は(b)〕と、酸成分〔(c)、(d)、及びそれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルから選ばれる1種以上〕を、エステル化触媒の存在下で重縮合させることにより得られる。また、上記アルコール成分とAO及び酸無水物とを反応させてもよい。反応温度としては、特に制限はないが、好ましくは160℃〜250℃、更に好ましくは175〜240℃、特に好ましくは185〜230℃である。160〜250℃にすることで、反応中の熱分解によるビスフェノール類の生成を極めて少なくさせることが容易となる。
エステル化触媒の例としては、スズ含有触媒(例えばジブチルチンオキシド)、チタン含有触媒(テトラブチルチタネート;カルボン酸チタン、例えばテレフタル酸チタン;カルボン酸チタニル塩、例えばシュウ酸チタニルカリウム;等)が挙げられる。
【0037】
本発明のトナーバインダーには、本発明のトナーバインダーの必須成分であるポリエステル樹脂とともに、ポリエステル樹脂の特性を損なわない範囲で他の樹脂も含有させることができる。
他の樹脂としては、本発明以外のポリエステル樹脂〔(A)を構成単位に含まないポリエステル樹脂〕、スチレン系樹脂[スチレンとアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、及びスチレンとジエン系モノマーとの共重合体等]、エポキシ樹脂(ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの付加縮合物等)、ウレタン樹脂(ジオールとジイソシアネートの重付加物等)などが挙げられる。他の樹脂のMwは、好ましくは1000〜200万である。
これら他の樹脂の含有量は、トナーバインダーの重量を基準として、好ましくは0〜80%、更に好ましくは0〜49%、特に好ましくは0〜30%である。
【0038】
本発明の電子写真用トナーは、本発明のトナーバインダー及び着色剤からなり、必要により離型剤、荷電制御剤及び流動化剤など種々の添加剤等を含有させることができる。
【0039】
着色剤としては公知の染料、顔料及び磁性粉を用いることができる。具体的には、カーボンブラック、スーダンブラックSM、ファーストイエロ−G、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、バラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミン、ピグFBメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG
、オラゾールブラウンB、オイルピンクOP、マグネタイト、鉄黒などが挙げられる。
着色剤の含有量は、染料又は顔料を使用する場合は、トナーバインダーの重量に基づいて、好ましくは0.5〜15%、更に好ましくは0.6〜10%である。磁性粉を使用する場合は、好ましくは20〜150%、さらに好ましくは40〜120%である。
【0040】
離型剤としては、軟化点50〜170℃のワックス類等が挙げられる。ワックス類としては、ポリオレフィン樹脂類[ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン(炭素数3〜8)共重合体、フィッシャートロプシュワックス、ポリメチレンなど]、パラフィン類(n−パラフィン、イソパラフィンなど)、エステルワックス類(カルナウバワックス、モンタンワックス、ライスワックス等)、炭素数30以上の脂肪族アルコール、炭素数30以上の脂肪酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
トナー中の離型剤の含有量は、トナーバインダーの重量に基づいて、好ましくは0〜30%、更に好ましくは1〜20%である。
【0041】
荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩化合物、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸金属塩、スルホン酸基含有ポリマー、含フッソ系ポリマー及びハロゲン置換芳香環含有ポリマーが挙げられる。
トナー中の荷電制御剤の含有量は、トナーバインダーの重量に基づいて、好ましくは0〜5%である。
【0042】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末及び炭酸カルシウム粉末など通常用いられるものが使用でき、使用量はトナーバインダーの重量に基づいて、好ましくは0〜5%である。
これらの添加剤の合計含有量は、トナーバインダーの重量に基づいて、好ましくは0〜40%、更に好ましくは1〜25%である。
【0043】
本発明のトナーの製造法としては、公知の混練粉砕法などが挙げられる。上記トナー構成成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後、ジェットミルなどを用いて微粉砕し、更に風力分級してトナー粒子を得る。粒径D50は、好ましくは2〜20μmである。
【0044】
本発明の電子写真用トナーは必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト、及び樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂など)により表面をコーティングしたフェライトなどのキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。また、キャリアー粒子のかわりに帯電ブレードなどの部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
次いで、公知の熱ロール定着方法などにより支持体(紙、ポリエステルフィルムなど)に定着して記録材料とされる。
【0045】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、未反応のビスフェノールAの含有量、並びに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアルミニウムの合計含有量は、前記の方法による。
トナーの評価は以下の試験方法により行った。
【0046】
(1)最低定着温度(MFT)、ホットオフセット発生温度(HOT)、および長期ランニング性
トナー30部とフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)800部を均一混合し二成分現像剤として試験する。
市販複写機[AR5030、シャープ(株)製]を用いて現像した未定着画像を、市販フルカラープリンタ[LBP−2160、キヤノン(株)製]の定着ユニットを改造し熱ローラー温度を可変にした定着機でプロセススピード80mm/secで定着する。定着画像を布パッドで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる熱ローラー温度を最低定着温度(MFT)とする。また目視判定でホットオフセットが発生し始める温度をホットオフセット発生温度(HOT)とする。また、上記複写機にてトナーを補給しながらテストチャートを用いて5万枚複写を行ったときの画像ムラ(画像上に発生する黒点などの汚れ、文字の中ぬけ)を目視判定し、長期ランニング性を評価した。
画像ムラが認められない ◎
画像ムラが僅かに認められる ○
画像ムラが画像へ僅かに影響を与える程度に認められる △
画像ムラが画像へ顕著に影響する程度に認められる ×
【0047】
(2)トナー流動性
ホソカワミクロン製パウダーテスターでトナーの静かさ密度を測定し、トナー流動性を下記基準で判定する。○△以上が実用範囲である。
静かさ密度 36g/100ml以上 : トナー流動性 ◎
33〜36 : ○
30〜33 : ○△
27〜30 : △
27未満 : ×
【0048】
製造例1
撹拌及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、ビスフェノールA228部(1モル)、水酸化カリウム2部を入れ、100℃でPO120部(2.06モル)を3時間反応させた。得られた生成物は室温で極めて粘調であった。未反応のビスフェノールAの量を測定したところ200ppmであった。この生成物350部に「キョーワード500」[協和化学工業(株)製:Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O]5.2部、「キョーワード600」[協和化学工業(株)製:2MgO・6SiO2・XH2O]5.2部、及び水5.2部を投入し、90℃で30分攪拌した。その後ろ過を行って「キョーワード500」及び「キョーワード600」を除去して、脱水後、ビスフェノールAのPO2モル付加物を得た。このものの未反応のビスフェノールAの含有量は0.1ppmであった。またアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアルミニウムの合計含有量は28ppmであった。
【0049】
製造例2
PO120部(2.06モル)をEO91部(2.06モル)に代える以外は製造例1と同様にして反応を行った。得られた生成物は室温で白色固体であった。未反応のビスフェノールAの量を測定したところ160ppmであった。この生成物321部に「キョーワード500」5.2部、「キョーワード600」5.2部、及び水5.2部を投入し、90℃で30分攪拌した。その後ろ過を行って「キョーワード500」及び「キョーワード600」を除去して、脱水後、ビスフェノールAのEO2モル付加物を得た。このものの未反応のビスフェノールAの含有量は0.1ppmであった。またアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアルミニウムの合計含有量は25ppmであった。
【0050】
比較製造例1
製造例1と同様に、撹拌及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、ビスフェノールA228部(1モル)、水酸化カリウム2部を入れ、100℃でPO120部(2.06モル)を3時間反応させた。得られた生成物は室温で極めて粘調であった。吸着剤(活性白土)5.2部及びろ過助剤(「ラヂオライト」[昭和化学工業(株)製]2部を用いて触媒を除去して、ビスフェノールAのPO2モル付加物を得た。このものの未反応のビスフェノールAの含有量は195ppmであった。またアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアルミニウムの合計含有量は90ppmであった。
【0051】
実施例1
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、製造例1で得られたビスフェノールAのPO2モル付加物739部、テレフタル酸176部、無水マレイン酸78部及び縮合触媒としてジブチルチンオキサイド3部を入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで100mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出して、ポリエステルトナーバインダー(C−1)を得た。
(C−1)の酸価は2、水酸基価は30、Tgは65℃、Mnは4400、Mwは13000、未反応のビスフェノールAの含有量は検出限界(0.1ppm)以下であった。
【0052】
実施例2
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、製造例1で製造したビスフェノールAのPO2モル付加物309部、製造例2で製造したビスフェノールAのEO2モル付加物355部、フェノールノボラック(平均重合度約5)のEO5モル付加物21部、テレフタル酸121部、フマル酸74部及び縮合触媒としてジブチルチンオキサイド3部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になるまで反応させた。次いで、無水トリメリット酸87部を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ軟化点が121℃になった時点で取り出して、ポリエステルトナーバインダー(C−2)を得た。
(C−2)の酸価は30、水酸基価は28、Tgは59℃、Mn6200、Mwは20400、未反応のビスフェノールAの含有量は検出限界以下であった。
【0053】
実施例3
(C−1)500部、(C−2)500部をプラストミルに入れ、220℃で5分間撹拌して溶融混合し、トナーバインダー(C−3)を得た。
(C−3)の酸価は12、水酸基価は27、Tgは61.5℃、Mwは366000,Mnは4400、未反応のビスフェノールAの含有量は検出限界以下であった。
【0054】
実施例4
トナーバインダー(C−1)100部、シアニンブルーKRO[山陽色素(株)製]4部及びカルナバワックス(軟化点82℃)4部を二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で溶融混合した。混練物を冷却後、粗粉砕し、超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、粒径D50が約9μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子108部と流動化剤[日本アエロジル(株)製 アエロジルR972]0.7部とを混合(外添)して、トナー(T1)を得た。評価結果を表1に示す。
【0055】
実施例5
トナーバインダー(C−2)100部、カーボンブラック[三菱化学(株)製MA−100]4部及びビスコール550P[軟化点150℃;三洋化成工業(株)製]4部を二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で溶融混合した。混練物を実施例4と同様にして、トナー(T2)を得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
実施例6
トナーバインダー(C−3)100部、カーボンブラック[三菱化学(株)製MA−100]4部及びサゾールワックス(軟化点98℃)4部を二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で溶融混合した。混練物を実施例4と同様にして、電子写真用トナー(T3)を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
比較例1
製造例1で製造したビスフェノールAのPO2モル付加物を比較製造例1で製造したビスフェノールAのPO2モル付加物に代える以外は実施例1と同様にして比較トナーバインダー(HC−1)を得た。
(HC−1)の酸価は2、水酸基価は30、Tgは65℃、Mnは4450、Mwは13000、未反応のビスフェノールAの含有量は134ppmであった。
【0058】
比較例2
(C−1)を(HC−1)に代える以外は、実施例4と同様にして比較トナー(HT1)を得た。評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0004331498
【0060】
【発明の効果】
本発明の電子写真用トナーバインダーを用いることにより、定着温度幅が広く、かつ流動性が良いというビスフェノール類のオキシアルキレンエーテルを用いたポリエステル樹脂の持つ特性を維持したまま、長期ランニング性に優れたトナーを容易に得ることができる。また、環境負荷の疑いのあるビスフェノール類の含有量が、きわめて少ないので、環境への影響も小さい。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表されるビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(A)を含有するアルコール成分と酸成分から構成されるポリエステル樹脂からなる電子写真用トナーバインダーにおいて、(A)が、アルカリ下での溶剤抽出、及び/又は水の存在下での、アルミニウム、アルカリ土類金属、及びアルカリ金属からなる群より選ばれる1種以上の金属の酸化物及び/又は水酸化物(B)による処理により精製されたビスフェノール類の炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物であって、該ポリエステル樹脂のクロロホルム可溶分中の未反応のビスフェノール類の含有量が0.1ppm以下であることを特徴とする電子写真用トナーバインダー。
    HO−Ar−X−Ar−OH (1)
    [式中、Xは炭素数1〜3のアルキレン基、−SO2 −、−O−、−S−、または直接結合、Arは、ハロゲンもしくは炭素数1〜30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
  2. (A)が0.1ppmを越える未反応のビスフェノール類を含有しない請求項1記載の電子写真用トナーバインダー。
  3. アルコール成分が(A)を20〜100モル%含有する請求項1又は2記載の電子写真用トナーバインダー。
  4. (B)がハイドロタルサイト及び/又はシリケートである請求項1〜3のいずれか記載の電子写真用トナーバインダー。
  5. (A)が、アルミニウム、アルカリ土類金属、及びアルカリ金属を合計で2〜75ppm含有する請求項1〜4のいずれか記載の電子写真用トナーバインダー。
  6. 請求項1〜5のいずれか記載の電子写真用トナーバインダー、着色剤、及び必要により添加剤からなることを特徴とする電子写真用トナー。
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