JP4322376B2 - 難燃性樹脂組成物およびその成型品 - Google Patents

難燃性樹脂組成物およびその成型品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂を含む難燃性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、テレビ、モニター、プリンター、コピー機、ファクシミリ、パソコンなどの家電機器、OA機器のハウジング材および部品、バッテリーパック、液晶の反射板、自動車用材料、建築用材料などの高い難燃性が要求される用途において有用な難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性および電気的特性に優れたエンジニアリングプラスチックとして電気・電子・OA分野を始め、広範な分野にて使用されている。これら電気・電子・OAの分野では、パーソナルコンピュータ外装部品のように高度な難燃性(UL94V)や耐衝撃性が要求される。
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、自己消火性を備えた難燃性の高いプラスチック材料ではあるが、電気・電子・OA分野ではさらなる安全上の要求を満たすため、UL94V−0や94V−1相当の一層高い難燃性が求められている。
そこで、ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上するために、従来、臭素化ビスフェノールAのカーボネート誘導体のオリゴマーあるいはポリマーを、ポリカーボネートに多量に配合する方法が採用されていた。しかしながら、臭素化ビスフェノールAのカーボネート誘導体のオリゴマーあるいはポリマーを難燃剤として多量に配合すると、確かにポリカーボネート樹脂の難燃性は向上するものの、耐衝撃性が低下して、成型品に割れが発生しやすいという問題があった。また、臭素を含む多量のハロゲン系化合物を配合するため、燃焼時に当該ハロゲンを含むガスが発生する懸念もあり、環境面でも塩素、臭素などのハロゲンを含有しない難燃剤の使用が望まれていた。
【0004】
ハロゲンを含まない難燃剤としては、リン酸エステルとシリコーン樹脂が知られている。たとえば、特公昭62−25706号公報には、ポリカーボネート系樹脂の難燃性を改良するためにリン酸エステルを添加することが提案されている。しかしながら、ポリカーボネート系樹脂にリン酸エステルを添加すると、成型体を作製したときに、耐熱性や耐衝撃性が低下するという問題があった。
【0005】
これに対して、シリコーン樹脂は、耐熱性が高く、燃焼時に有害ガスが発生せず、しかもシリコーン樹脂自体の安全性も高いため、ポリカーボネート系樹脂の難燃剤として使用されるようになっている。
難燃剤としてのシリコーン化合物は、以下に示す4つのシロキサン単位(M単位、D単位、T単位、Q単位)の少なくともいずれかが重合してなるポリマーである。
【0006】
【化1】
Figure 0004322376
【0007】
たとえば特公昭62−60421号公報には、T単位を80重量%以上含有するシリコーン樹脂を熱可塑性樹脂に添加した難燃性樹脂組成物が開示されている。特開平5−86295号公報ではポリカーボネートなどの合成樹脂に、T単位を30〜99モル%、D単位を0〜80モル%、M単位を1〜70モル%、Q単位を0〜50モル%で含むシリコーン樹脂を添加した難燃性樹脂組成物が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの公報に記載されたシリコーン樹脂を単独で添加しても、大きな難燃効果を持つものは極めて少なく、また電気電子機器関係の厳しい難燃基準を満たすためにはシリコーン樹脂を多量に添加する必要があり、その結果、プラスチックスの成型性、混練性および他の必要特性に悪影響が生じることがあり、さらにはコスト的にも不利であるため、実用的ではなかった。
【0009】
そこで、シリコーン化合物自体の難燃効果を向上させ、かつシリコーン化合物の添加量も削減する試みとして、シリコーン化合物と金属塩とを併用する方法も提案されている。たとえば、特開昭56−100853号公報には、ポリカーボネートなどの重合体に、D単位から構成されるシリコーンと炭素数14〜20のカルボン酸のIIa族金属塩を配合した難燃性樹脂組成物が開示され、特公平3−48947号公報には、M単位とQ単位とから構成されるシリコーン樹脂を、他のシリコーン樹脂およびカルボン酸のIIa族金属塩とともに配合した難燃性組成物が開示されている。しかしながら、シリコーン化合物と金属塩とを併用しても、難燃性の面で効果に劣るため、十分な難燃効果を得るにはシリコーン樹脂の添加量を多くしたり、水酸化アルミニウムなどの無機難燃性充填材やハロゲンおよびリン化合物を併用することが必要であった。
【0010】
このように、シリコーン樹脂を難燃剤として添加する場合、添加量を多くしないと十分な難燃効果が得られず、添加量を多くすると樹脂組成物の成型性、成型品の外観や機械的強度などの諸物性が大幅に低下してしまったり、シリコーン樹脂は、それ自体が高価であるため、ポリカーボネート系樹脂に配合したときに、材料コストが高くなってしまうという問題があり、このためより難燃効果の大きいシリコーン樹脂添加剤、またはシリコーン樹脂と併用して効果を向上させられる添加剤の開発が望まれていた。
【0011】
特開平8−176425号公報には、エポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンと有機スルフォン酸のアルカリ金属塩を添加した難燃性樹脂組成物が、特開平8−176427号公報には、フェノール性水酸基含有オルガノポリシロキサンで変性したポリカーボネート樹脂と有機アルカリ金属塩を添加した難燃性樹脂組成物が記載されている。また、特開平9−169914号公報には、石油系重質油類又はピッチ類をシリコーン化合物と併用して難燃効果を向上させた組成物が記載されている。しかしながら、これらの組成物では、特開平8−176425号公報および特開平8−176427号公報のような高価なシリコーン樹脂を使用する必要があったり、また製造工程が複雑化することに伴うコストアップに見合うほどの十分な難燃化効果は得られないなど、更なる改善が望まれていた。
【0012】
また、上述した従来のシリコーン樹脂は、いずれも、ポリカーボネート樹脂への分散性および相溶性が十分でなかった。
さらにまた、特開平10−139964号公報には、分子量(重量平均分子量)が10000〜270000の範囲にあり、下記式で表されるD単位とT単位とを含むシリコーン樹脂を、芳香族系ポリカーボネートに配合した難燃性樹脂組成物が提案されている。
【0013】
【化2】
Figure 0004322376
【0014】
また、特開平11-140294号公報には、T単位を 50〜90モル%含有し、D単位を 10〜50モル%含有し、フェニル基を全有機置換基の中80モル%以上含有しているシリコーン樹脂が、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合された難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、特開平10−139964号公報、特開平11−140294号公報に記載された難燃性ポリカーボネート組成物では、燃焼時間が長く、かつドリップ性が不十分であり、実際に広く評価されているUL94に基づく燃焼性試験における難燃性がまだ不充分であった。
【0015】
さらにまた、特開平11−217494号公報には、下式で表される構造、すなわちD単位を主要構成単位とし、D単位とともにT単位および/またはQ単位とから構成され、かつ有機官能基として芳香族基を有するシリコーン化合物と、芳香族硫黄化合物の金属塩と、含フッ素ポリマーとを、ポリカーボネート樹脂に配合した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
【0016】
【化3】
Figure 0004322376
【0017】
(式中、RおよびXは有機官能基を示す。)
しかしながら、このようにD単位を必須成分として含むシリコーン樹脂は軟化点が著しく低く、室温で液状となりやすいので、ポリカーボネート樹脂への配合が極めて困難となることがあった。また、分子量を大きくすることで、D単位を必須成分として含むシリコーン樹脂であっても、室温で固体状のシリコーン樹脂が得られるが、この場合、分子量を大きくするための重合に長時間要することになる上に、添加しても難燃効果が低いという欠点もあった。
【0018】
このように、従来より提案されていた難燃性樹脂組成物では、難燃性、流動性、および得られた成型体の耐熱性、耐衝撃性などの特性において必ずしも満足しうるものは得られていなかった。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、D単位を実質的に含まず、T単位とM単位、またはT単位とQ単位とM単位とから構成されるシリコーン樹脂を難燃剤として使用し、このシリコーン樹脂とドリップ防止剤とを組み合わせてポリカーボネート系樹脂に配合することにより、高いレベルの難燃性を有し、かつ上記した問題点をいずれも解消しうる樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0019】
【発明の目的】
本発明は、耐熱性が高く、耐衝撃性に優れ、しかも難燃性に優れた難燃性樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0020】
【発明の概要】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、
(A)ポリカーボネート系樹脂と、(B)T単位とM単位から構成されるシリコーン樹脂またはT単位とM単位とQ単位から構成されるシリコーン樹脂と、(C)ドリップ防止剤とを含み、かつ
ポリカーボネート系樹脂(A)100重量部に対して、
T単位とM単位から構成されるシリコーン樹脂 またはT単位とM単位とQ単位から構成されるシリコーン樹脂(B)を0.1〜9重量部、および
ドリップ防止剤(C)を0.01〜10重量部の量で含むことを特徴としている。
【0021】
前記ドリップ防止剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることが好ましく、このポリテトラフルオロエチレンは、ポリカーボネート系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜2重量部の量で含まれていることが好ましい。
本発明に係る電気電子機器部品は、前記記載の難燃性樹脂組成物から成形されてなる。また、本発明に係るハウジング材は、前記記載の難燃性樹脂組成物から成形されてなる。
【0022】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に難燃性樹脂組成物について説明する。
[難燃性樹脂組成物]
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート系樹脂と、(B)T単位とM単位から構成されるシリコーン樹脂またはT単位とM単位とQ単位から構成されるシリコーン樹脂と、(C)ドリップ防止剤とを含むことを特徴としている。
【0023】
ポリカーボネート系樹脂 (A)
本発明において使用されるポリカーボネート系樹脂(A)は、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させて得られる芳香族ホモポリカーボネートまたは芳香族コポリカーボネートである。
カーボネート系樹脂は一般に、下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有するものである。
【0024】
【化4】
Figure 0004322376
【0025】
(上記式中、Aは芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される2価の残基である)芳香族ジヒドロキシ化合物としては、官能基であるヒドロキシ基を2個含有し、各ヒドロキシ基が芳香核の炭素原子に直接接合した単核または多核の芳香族化合物が挙げられる。
芳香族ジヒドロキシ化合物として具体的には、下記式(2)で表されるビスフェノール化合物が例示される。
【0026】
【化5】
Figure 0004322376
【0027】
このような式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物として、具体的には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆるビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類;4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
これら芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましく用いられる。
また、上記式(2)以外の芳香族ジヒドロキシ化合物として、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を使用することもできる。
【0029】
【化6】
Figure 0004322376
【0030】
(ここで、Rfはそれぞれ独立して、炭素数1〜10個の炭化水素基、該炭化水素基の1以上がハロゲン原子で置換されたハロゲン化炭化水素基、またはハロゲン原子であり、pは0〜4の整数である)
このような化合物としては、たとえばレゾルシン;および3-メチルレゾルシン、3-エチルレゾルシン、3-プロピルレゾルシン、3-ブチルレゾルシン、3-t-ブチルレゾルシン、3-フェニルレゾルシン、3-クミルレゾルシン、2,3,4,6-テトラフルオロレゾルシン、2,3,4,6-テトラブロモレゾルシンなどの置換レゾルシン;カテコール;ヒドロキノン、および3-メチルヒドロキノン、3-エチルヒドロキノン、3-プロピルヒドロキノン、3-ブチルヒドロキノン、3-t-ブチルヒドロキノン、3-フェニルヒドロキノン、3-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノンなど、および、次式
【0031】
【化7】
Figure 0004322376
【0032】
で表される2,2,2',2'-テトラヒドロ-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビ−[1H−インデン]-7,7'-ジオールなどを用いることもできる。
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリカーボネートは、線状のものであっても、分岐を有するものであってもよい。また線状ポリカーボネートと分岐状ポリカーボネートのブレンド物であってもよい。
【0033】
このような分岐ポリカーボネートは、多官能性芳香族化合物を芳香族ジヒドロキシ化合物およびカーボネート前駆体と反応させることにより得られる。このような多官能性芳香族化合物の代表例は、米国特許明細書第3,028,385号、第3,334,154号、第4,001,124号および第4,131,576号に記載されており、具体的には、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル) エタン、2,2',2"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、α-メチル-α,α',α'-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジエチルベンゼン、α,α',α"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン-2、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル) ベンゼン、2,2-ビス-[4,4-(4,4'-ジヒドロキシフェニル)-シクロヘキシル]-プロパン、トリメリット酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸などが挙げられる。これらのうち、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼンなどが好ましく用いられる。
【0034】
このポリカーボネート系樹脂の塩化メチレン中、25℃で測定した固有粘度は、特に制限されるものではなく、目的とする用途、および成型性を鑑み適宜選択されるが、通常、0.26dl/g以上、好ましくは0.30dl/g〜0.98dl/g、さらに好ましくは 0.34dl/g〜0.64dl/gの範囲にあり、粘度平均分子量に換算した場合、通常、10000以上、好ましくは12000〜50000、さらに好ましくは14000〜30000の範囲にあることが望ましい。また、複数の異なる個有粘度のポリカーボネート樹脂を混合して使用できる。
【0035】
本発明で使用されるポリカーボネート系樹脂は、公知の製造方法によって製造される。たとえば、
▲1▼芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(たとえば炭酸ジエステル)とを溶融状態でエステル交換反応させて、ポリカーボネートを合成する方法(溶融法)、
▲2▼溶液中で芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(たとえばホスゲン)とを反応させる方法(界面法)などが挙げられる。
【0036】
これらの製造法については、たとえば特開平2−175723号公報、特開平2-124934号公報、米国特許第4,001,184号明細書、同第4,238,569号明細書、同第4,238,597号明細書、同第4,474,999号明細書などに記載されている。
[溶融法]
▲1▼の方法(溶融法)において使用される炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4- ジクロルフェニル) カーボネート、ビス(2,4,6-トリクロルフェニル) カーボネート、ビス(2-シアノフェニル) カーボネート、ビス(o-ニトロフェニル) カーボネート、ジトリルカーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル) カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、ジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。これらを2種以上併用することもできる。これらのうちでも特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。また、このような炭酸ジエステル中には、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステルが含有されていてもよい。具体的に、炭酸ジエステルは、ジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステルを好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量で含有していてもよい。
このようなジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、セバシン酸ジフェニル、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル、デカン二酸ジフェニル、ドデカン二酸ジフェニルなどを挙げることができる。炭酸ジエステルは、これらのジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステルを2種以上含有していてもよい。
【0037】
以上のような炭酸ジエステルと、前記芳香族ジヒドロキシ化合物とを重縮合させると、ポリカーボネートが得られる。ポリカーボネートを製造するに際して、上記のような炭酸ジエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物総量1モルに対して、0.95〜1.30モル、好ましくは1.01〜1.20モルの量で用いられることが望ましい。
【0038】
このような溶融法では、触媒として、たとえば本出願人が特開平4-175368号公報において提案した化合物を使用される。
具体的に溶融重縮合触媒として、通常、(a)アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物(以下(a) アルカリ(土類)金属化合物ともいう)が使用される。
(a) アルカリ(土類)金属化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩、無機酸塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコラートなどが好ましく用いられる。
【0039】
具体的には、アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、二リチウム塩、フェーノル類のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられ、
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどが挙げられる。これら化合物を2種以上併用することもできる。
【0040】
このようなアルカリ(土類)金属化合物は、ビスフェノール類1モルに対して、1×10-8〜1×10-3モル、好ましくは1×10-7〜2×10-6モル、さらに好ましくは1×10-7〜8×10-7モルの量で、溶融重縮合反応中に含まれていることが望ましい。また、溶融重縮合反応の原料であるビスフェノール類中に予めアルカリ(土類)金属化合物が含まれている場合、溶融重縮合反応時に存在するアルカリ(土類)金属化合物の量が、ビスフェノール類1モルに対して、前記範囲となるように添加量を制御することが望ましい。
【0041】
また、溶融重縮合触媒として、上記のような(a)アルカリ(土類)金属化合物に加えて(b)塩基性化合物を併用されていてもよい。
このような(b)塩基性化合物としては、たとえば高温で易分解性あるいは揮発性の含窒素塩基性化合物が挙げられ、具体的には、以下のような化合物を挙げることができる。
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3NOH)などのアルキル、アリール、アルアリール基などを有するアンモニウムヒドロオキシド類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミンなどの三級アミン類、
2NH(式中Rはメチル、エチルなどのアルキル基、フェニル、トリルなどのアリール基などである)で示される二級アミン類、
RNH2(式中Rは上記と同じである)で示される一級アミン類、
4-ジメチルアミノピリジン、4-ジエチルアミノピリジン、4-ピロリジノピリジンなどのピリジン類、
2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類、
あるいはアンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)などの塩基性塩。
これらのうち、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類が好ましく用いられる。
上記のような(b) 含窒素塩基性化合物は、ビスフェノール類1モルに対して、1×10-6〜1×10-1モル好ましくは1×10-5〜1×10-2モルの量で用いることができる。
またさらに触媒として、(c)ホウ酸化合物を用いることもできる。
【0042】
このような(c) ホウ酸化合物としては、ホウ酸およびホウ酸エステルなどを挙げることができる。
ホウ酸エステルとしては、下記一般式で示されるホウ酸エステルを挙げることができる。
B(OR)n(OH)3-n
式中、Rはメチル、エチルなどのアルキル、フェニルなどのアリールなどであり、nは1,2または3である。
このようなホウ酸エステルとしては、具体的には、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリヘプチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリトリル、ホウ酸トリナフチルなどが挙げられる。 このような(c) ホウ酸またはホウ酸エステルは、ビスフェノール類1モルに対して、1×10-8〜1×10-1モル、好ましくは1×10-7〜1×10-2モル、さらに好ましくは1×10-6〜1×10-4モルの量で用いることができる。
溶融重縮合触媒としては、たとえば(a)アルカリ(土類)金属化合物と(b)含窒素塩基性化合物とを組み合わせて、さらには(a)アルカリ(土類)金属化合物と(b)含窒素塩基性化合物と(c)ホウ酸またはホウ酸エステルとの三者を組み合わせて用いることが好ましい。
触媒として、上記のような量の(a)アルカリ(土類)金属化合物と(b)含窒素塩基性化合物とを組み合わせて用いると、重縮合反応を十分な速度で進行させることができるとともに、高分子量のポリカーボネートを高い重合活性で生成させることができるので好ましい。
【0043】
なお、(a)アルカリ(土類)金属化合物と(b)含窒素塩基性化合物とを併用する場合、あるいは(a)アルカリ(土類)金属化合物と(b)含窒素塩基性化合物と(c)ホウ酸またはホウ酸エステルとを併用する場合、各触媒成分を混合したものを、ビスフェノール類と炭酸ジエステルとの溶融混合物に添加してもよく、また、個別にビスフェノール類と炭酸ジエステルとの溶融混合物に添加してもよい。
[界面法]
▲2▼の界面法において使用されるカーボネート前駆体としては、たとえばハロゲン化カルボニル、ジアリールカーボネート、ビスハロホルメートが挙げられ、いずれを使用してもよい。ハロゲン化カルボニルとしては、たとえば臭化カルボニル、塩化カルボニル(いわゆるホスゲン)およびこれらの混合物が挙げられる。アリールカーボネートとしては、たとえばジフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネートなどが挙げられる。また、ビスハロホルメートとしては、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、ヒドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメートもしくはビスブロモホルメート;エチレングリコールなどのグリコール類のビスクロロホルメートもしくはビスブロモホルメートなどが挙げられる。上記のカーボネート前駆体は、いずれも有用であるが、塩化カルボニル(すなわちホスゲン)が好適である。
【0044】
この界面法では、まず苛性アルカリ水溶液中に前記芳香族ジヒドロキシ化合物を溶解または分散させ、得られた混合物を水と相溶しない溶媒を加え、そしてこれらの反応物質を、適当な触媒の存在下、特定のpH条件のもとホスゲンのようなカーボネート前駆体と接触させることによって行われる。通常、使用される水と相溶しない溶媒としては、メチレンクロライド、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが使用される。界面法で使用される触媒としては、特に限定されないが、通常、トリエチルアミンのような第三アミン、第四ホスホニウム化合物、第四アンモニウム化合物などが使用される。界面法における反応温度も、反応が進行する温度であれば、特に制限されるものではないが、好ましくは室温(25℃)から50℃までの温度の範囲が望ましい。
【0045】
これら▲1▼または▲2▼の製造法で得られたポリカーボネートは、必要に応じて特定の官能基で末端封止されていてもよい。
末端封止剤としては、特に限定はされないがフェーノル、クロマン−I、p−クミルフェノールなどの1価のフェーノル類などが挙げられる。
シリコーン樹脂 (B)
本発明における(B)成分のシリコーン樹脂としては、下記に示す[RSiO1.5]T単位と[R3SiO0.5]M単位とから構成されるシリコーン樹脂、または[RSiO1.5]T単位と[R3SiO0.5]M単位と[SiO2]Q単位とから構成されるシリコーン樹脂である。
【0046】
【化8】
Figure 0004322376
【0047】
シリコーン樹脂を構成する有機基Rは、同一でも異なっていてもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基などが例示される。
このような有機基Rのうち、シリコーン樹脂としての入手が容易であり、ポリカーボネート系樹脂への分散性および難燃性から、特に有機基Rとしてメチル基および/またはフェニル基を有するシリコーン樹脂が好ましい。特にフェニル基を有するシリコーン樹脂は、難燃性に優れるほか、ポリカーボネートとの相溶性に優れ、しかもポリカーボネートの透明性を向上させる。このようなフェニル基は、シリコーン樹脂中の全有機基に対して20モル%以上が好ましく、さらに好ましくは40モル%以上であることが望ましい。
【0048】
シリコーン樹脂中のM単位は、T単位1モルに対して、0.03〜1モル、好ましくは0.05〜0.3モルの量で含まれていることが望ましい。また、シリコーン樹脂中にQ単位が含まれている場合、Q単位は、T単位1モルに対して、0.001〜0.5モル、好ましくは0.01〜0.05モルの量で含まれていることが望ましい。難燃性のためには酸化度の高いQ単位をより多量に含有している方がより有利であるが、シロキサン中のQ単位が多いと、無機微粒子的性質が強くなりすぎるため、ポリカーボネート系樹脂中への分散性が不良となるので、配合量は上記範囲内に抑える必要がある。
【0049】
以上のシロキサン単位含有率範囲から、難燃性、加工性、成型品の性能などのバランスを考慮して、シリコーン樹脂のうち50〜97モル%をT単位が占めるような領域を選択することがさらに望ましい。
このようなシリコーン樹脂は、公知の方法で合成でき、たとえばオルガノクロロシランやオルガノアルコキシシラン等を過剰の水で加水分解・縮合反応させることにより得られる。具体的には、まず、RSiO1.5単位(T単位)、SiO2単位(Q単位)を形成するシラン化合物を水で加水分解・縮合反応させて、シラノール基含有シリコーン樹脂を作製し、次いでこのシラノール基をトリオルガノシリル化することによってシリコーン樹脂を作製すると、分子量制御が容易に行うことできるので望ましい。
【0050】
具体的にこのようなシリコーン樹脂の製造方法としては、(a)[RSiO1.5]T単位からなるシラノール基含有シリコーン樹脂100重量部に対して、(b)(R1 3Si)aZ〔式中、R1は互いに同一または異種の置換または非置換の1価炭化水素基を示し、aは1〜3の整数を表し、Zは、aが1のときは水素原子、ハロゲン原子、水酸基または加水分解性基を示し、aが2のときは−O−、−NX−または
【0051】
【化9】
Figure 0004322376
【0052】
また、Xは水素原子、炭素数1〜4の1価炭化水素基を表す〕で表されるシリコーン化合物5〜100重量部を反応させることにより得ることができる。
(a)成分のシラノール基含有シリコーン樹脂は、公知の方法で合成でき、たとえばオルガノクロロシランやオルガノアルコキシシラン等を過剰の水で加水分解・縮合反応させることにより得られる。このような反応において、水の量や加水分解触媒の種類あるいは量、縮合反応の時間や温度等を調整することにより、各種の重合度のシリコーン樹脂が得られる。こうして得られるシリコーン樹脂は一般にシラノール基(−SiOH)を含有している。
【0053】
(b)成分の(R1 3Si)aZで表されるシリコーン化合物は、(a)成分中のシラノール基をシリル化するものであり、Zの加水分解性基としては、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、イソプロポキシル基、ブトキシル基のアルコキシル基、塩素、臭素などのハロゲン、プロペノキシ基等のアルケニルオキシ基、アセトキシ基、ベンゾキシ基等のアシロキシ基、アセエトンオキシム基、ブタノンオキシム基等のオルガノオキシム基、ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のオルガノアミノキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基シクロヘキシルアミノ基等のオルガノアミノ基、N−メチルアセトアミド基等のオルガノアミド基等が例示される。
【0054】
(b)成分の具体例としては、トリメチルシラン、トリエチルシラン等のハイドロジェンシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラントリフェニルクロロシラン等のクロロシラン、トリメチルシラノール等のシラノール、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、(CH3)3SiNHCH3、(CH3)3SiNHC25、(CH3)3SiNH(CH3)2、(CH3)3SiNH(C25)2等のアミノシラン、(CH3)3SiOCOCH3等のアシロキシシラン、ヘキサメチルジシラザン[(CH3)2Si]2NH、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン等のジシラザン、ノナメチルトリシラザン[(CH3)3Si]3N等のトリシラザンなどが挙げられる。これらの中でも、反応の制御や未反応物の除去が容易なことから、シラザン類やクロロシラン類が好ましく用いられる。
上述した(a)成分と(b)成分との反応は、シラノールをシリル化する公知の条件で行うことができる。たとえば、(b)成分がシラザンやクロロシランの場合、(a)成分と(b)成分とを混合して加熱するだけで容易に反応は進行する。このとき(b)成分の使用量は、(a)成分100重量部に対して5〜100重量部の範囲にあることが好ましい。なお、(b)成分が5重量部未満であると、(a)成分のシラノール基を十分にシリル化することができず、反応中にゲル化するなどの不具合を生じることがある。また、(b)成分が100重量部を超えると、未反応の(b)成分が過剰に残るので、原料的に経済性が悪く、未反応の(b)成分を除くのに長時間を要するので、工程が煩雑化する。
なお、上記シリル化反応は、反応温度を制御したり、副反応の脱水縮合反応を抑制するために、有機溶媒中で行うことが好ましい。このような有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、工業用ガソリン、ミネラルスピッリット、ケロシン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒等が挙げられる。反応温度は、特に制限されるものではないが、好適には、室温から120℃の範囲である。反応によって生成する塩酸、アンモニア、塩化アンモニウム、アルコール等は水洗による除去もしくは溶媒と同時に留去することができる。
上述したような方法で得られるシリコーン樹脂は、一般に室温で液状または固体状である。
【0055】
ポリカーボネート系樹脂に配合されるシリコーン樹脂は、固体のものが、ポリカーボネート系樹脂に均一に分散させることができるので好ましい。特に、軟化点が40℃以上、好ましくは70〜250℃の固体状シリコーン樹脂が、好適である。なお、軟化点の異なる2種以上のシリコーン樹脂を混合して、シリコーン樹脂の軟化点を調整してもよい。
本発明の難燃性樹脂組成物に使用するシリコーン樹脂の分子量は、1000〜50000の範囲が好ましく、より好ましくは2000〜20000、特に好ましくは3000〜10000である。分子量が1000未満であると使用条件においては固体状態を保持することが難しく作業性に劣り、また、分子量が50000を超えるとポリカーボネートへの分散性に劣ることがある。
【0056】
なお、このような分子量は、(a)成分のシラノール基含有シリコーン樹脂の分子量、シリル化されるシラノール基、シリル化剤となる(b)成分の種類によって制御することができる。
本発明で使用されるシリコーン樹脂は、実質的にR2SiO1.0で表される2官能シロキサン(D単位)を有していない。D単位を有していると軟化点が著しく下がり、室温で液状となりやすく、ポリカーボネートへの配合が困難となる。また、分子量を高くすれば、D単位を有するシリコーン樹脂でも室温で固体状のシリコーン樹脂が得られるものの、分子量を高くするための重合時間が長くなる上に、T単位とM単位とから構成されるシリコーン樹脂、またはT単位とM単位とQ単位とシリコーン樹脂に比べ、難燃効果が低い。
使用するシリコーン樹脂は、少量のシラノール基やアルコキシ基を有してもよいが、保存安定性、熔融加工時安定性また難燃性の点からシラノール基量は、少ないことが好ましく、シラノール基はシリコーン樹脂中に0.5重量%以下の量で含まれていることが望ましく、さらには0.3重量%以下が望ましい。また、シリコーン樹脂に、アルコキシ基などの架橋性官能基は、必ずしも必要でなく、シリコーン樹脂中のアルコキシ基含有量は5重量%以下であればよい。
【0057】
本発明の難燃性樹脂組成物に配合されるシリコーン樹脂の量は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して0.1〜9重量部、好ましくは0.3〜6重量部である。シリコーン樹脂の量が、0.1重量部未満では難燃性を十分に付与することができず、9重量部を超えても、さらなる難燃性の向上は見込めないばかりか、成型品の外観および光学的透明性や強度に悪影響を与えることがある。なお、これらのシリコーン樹脂は、いずれも燃焼時には有害なガスを発生させることがない。
【0058】
[ドリップ防止剤(C)]
本発明で使用されるドリップ防止剤とは、燃焼の際に、ドリップ(滴下)を抑制する働きのある添加剤であり、公知のものが使用できる。特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などに代表されるポリカーボネート系樹脂中でフィブリル構造を形成するものがドリップの抑制効果が高いので好適である。
【0059】
このようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の中でも、分散性に優れたもの、たとえば水などの溶液にPTFEを乳化分散させたもの、またポリカーボネートやスチレン−アクリロニトリル共重合体に代表される樹脂でPTFEをカプセル化処理したものは、ポリカーボネート組成物からなる成型体に、よい表面外観を与えるので好ましい。
【0060】
水などの溶液にPTFEを乳化分散させたものの場合、特に制限はないが、PTFEが1ミクロン以下の平均粒子径であるものが好ましく、特に0.5ミクロン以下であることが好ましい。
このようなPTFEとして市販されているものの具体例としては、テフロン30J(商標、 三井デュポンフルオロケミカル(株))、ポリフロン D−2C(商標、 ダイキン化学工業(株))、アフロン AD1(商標、旭硝子(株))などがあげられる。
【0061】
ドリップ防止剤は、ポリカーボネート系樹脂100 重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜2重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部の範囲で添加される。
成分(C)の量が上記の範囲より少ないと優れた難燃性のポリカーボネート組成物が得られず、上記の範囲より多いと流動性が損なわれることがある。
【0062】
また、このようなポリテトラフルオロエチレンは、公知の方法によって製造することもできる(米国特許第2393967号明細書参照)。具体的には、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムなどの遊離基触媒を使用して、水性の溶媒中において、100〜1000psiの圧力下で、0〜200℃好ましくは20〜100℃の温度条件のもと、テトラフルオロエチレンを重合させることによって、ポリテトラフルオロエチレンを白色の固体として得ることができる。
【0063】
このようなポリテトラフルオロエチレンは、分子量が50万以上、好ましくは100万〜5000万程度のものが望ましい。
このため、ポリテトラフルオロエチレンが配合された樹脂組成物は、燃焼時のドリップが抑制される。さらに、ポリテトラフルオロエチレンとシリコーン樹脂とを併用すると、ポリテトラフルオロエチレンのみを添加したときに比べて、さらにドリップを抑制し、しかも燃焼時間を短くすることができる。
【0064】
本発明では、ドリップ防止剤として、以上のようなポリテトラフルオロエチレンとともに、ポリフェニレンエーテル(PPE)を併用してもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂はそれ自体公知であり、下記式(I):
【0065】
【化10】
Figure 0004322376
【0066】
(式中、R5 、R6 、R7およびR8はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基および置換炭化水素基(たとえばハロゲン化炭化水素基)から選ばれる)で示される単位からなるホモ重合体および/または共重合体である。
このようなPPEの具体例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4 -フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4 -フェニレン)エ―テル、ポリ(2-メチル-6- エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6‐ジメトキシ-1,4-フェニレン)エ―テル、ポリ(2,6-ジクロロメチル-1,4 -フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジブロモメチル-1,4 -フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジトリル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジベンジル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,5-ジメチル-1,4 -フェニレン)エーテルなどが挙げられる。特に好ましいPPE系樹脂は、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルである。またポリフェニレンエーテル共重合体としては、上記ポリフェニレンエーテル繰り返し単位中にアルキル三置換フェーノルたとえば2,3,6-トリメチルフェーノルを一部含有する共重合体を挙げることができる。またこれらのポリフェニレンエーテルに、スチレン系化合物がグラフトした共重合体であってもよい。スチレン系化合物グラフト化ポリフェニレンエーテルとしては上記ポリフェニレンエーテルにスチレン系化合物として、たとえばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどをグラフト重合して得られる共重合体が挙げられる。
【0067】
さらにまた、ドリップ防止剤として、上記のようなポリテトラフルオロエチレンとともに、無機系ドリップ防止剤を併用してもよい。無機系ドリップ剤としては、シリカ、石英、ケイ酸アルミニウム、マイカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、炭化珪素、窒化ケイ素、窒化硼素、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0068】
[その他成分]
本発明の難燃性樹脂組成物は、その物性を損なわない限りにおいて、その目的に応じて、ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、芳香族ビニル・ジエン・シアン化ビニル系共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂およびメチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。これらの樹脂は2種以上組み合わせてもよい。
【0069】
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)などが挙げられる。
芳香族ビニル・ジエン・シアン化ビニル系共重合体としては、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)などが挙げられる。
アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0070】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などが挙げられる。
【0071】
ポリフェニレンオキシド系樹脂としては、ポリフェニレンオキシド樹脂が挙げられ、そのベンゼン核結合水素がたとえばアルキル基、ハロゲン原子などで置換されていてもよい。
これらのその他の熱可塑性樹脂成分は、ポリカーボネート(A)100重量部に対して、200重量部以下、好ましくは100重量部以下の量で配合されていることが好ましい。200重量部を超える量で、その他の熱可塑性樹脂成分を配合すると、ポリカーボネート系樹脂の特性が低下することがある。
【0072】
本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに、紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系安定剤、エポキシ安定剤などが含まれていてもよい。
紫外線吸収剤:
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0073】
ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤としては、具体的には2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-ドデシル-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェーノル]などが挙げられる。このようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、たとえばアメリカンサイアナミッド社からUV5411として市販されている。またベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、たとえばサイナミット社からUV531として市販されている。さらにサリチレート系紫外線吸収剤としては、たとえばフェニルサリチレート、p-t-ブチルフェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレートなどが挙げられる。
【0074】
これらの紫外線吸収剤は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部の量で使用される。
リン系安定剤
リン系安定剤としては、従来より酸化防止剤として市販されているものを特に制限なく使用することができる。
【0075】
具体的には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルノニルホスファイト、トリス-(2,4-ジ-t- ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、2,2'-メチレンビス (4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)フルオロホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジブチルハイドロゲンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスフォナイト、4,4'-イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜C15)ホスファイト、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ジ-トリデシルホスファイト、ビス(2,4-ジ-t- ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリル-ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル-ビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、3,4,5,6-テトラベンゾ-1,2-オキサホスファン-2-オキシドなどを使用できる。これらのホスファイトの部分加水分解物も使用できる。このようなリン系安定剤の市販品の例として、アデカスタブ PEP−36,PEP−24、PEP−4C、PEP−8(旭電化工業(株)製)、Irgafos168( 商標:チバ・ガイギー社製),Sandstab P-EPQ(商標:Sandoz社製)、 Chelex L(商標:堺化学工業(株)製)、3P2S(商標:イハラケミカル工業(株)製)、Mark 329K(商標:旭電化工業(株)製)、Mark P(同前)、Weston 618 (商標:三光化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0076】
このようなリン系安定剤は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して、0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部の範囲で配合されることが望ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、n-オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0077】
このようなヒンダードフェノール系安定剤は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して、0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部の範囲で配合されることが望ましい。
エポキシ系安定剤
エポキシ系安定剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル -3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル -3',4'-エポキシ-6'-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4-(3,4-エポキシ-5- メチルシクロヘキシル)ブチル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル-3,4- エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6'-メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス- エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス-エポキシエチレングリコール、ビス- エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3,5-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3-メチル-5-t-ブチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、オクタデシル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2,2- ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル-2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2-イソプロピル-3,4- エポキシ-5- メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル-3,4- エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2-エチルヘキシル-3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6-ジメチル-2,3-エポキシシクロヘキシル -3',4'-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3-t-ブチル-4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル-4,5- エポキシ- シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ-n- ブチル-3-t- ブチル-4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレートなどが挙げられる。
【0078】
このようなエポキシ系安定剤は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して、0.0001〜5重量部、好ましくは0.001〜1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.5重量部の範囲で配合されることが望ましい。
さらに、チオール系、金属塩系などの安定剤を用いることもできる。
離型剤
離型剤としては、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーン系離型剤、ペンタエリスリトールテトラステアレートやグリセリンモノステアレート、モンタン酸ワックスなどのエステル系などの離型剤、ポリα-オレフィンなどのオレフィン系離型剤などが挙げられる。離型剤は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部の範囲で配合されることが望ましい。
【0079】
本発明に係る難燃性樹脂組成物には、その物性を損なわない限り、目的に応じて樹脂組成物の混合時または成型時に、公知の添加剤、たとえば着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、染料)、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ)、滑剤、可塑剤、難燃剤、流動性改良剤などが、添加されていてもよい。
【0080】
本発明の樹脂組成物を製造するための方法としては、特に制限はなく、公知の方法が使用できる。特に、溶融混合法が望ましい。樹脂組成物を製造する際には、少量の溶剤を添加してもよい。
装置としては特に押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダーなどを例として挙げることができ、これらを回分的または連続的に運転する。このとき、成分の混合順は特に限定されない。
【0081】
以上のような本発明に係る難燃性樹脂組成物は、難燃性に優れ、燃焼時にドリップが発生することがない。
たとえば、本発明に係る難燃性樹脂組成物は、アンダーライターズラボラトリーインコーポレーションのブレテン94「材料分類のための燃焼試験」(以下、UL−94という)に示される試験方法に従って、厚み1/16インチの試料片を作製し、UL−94 Vの評価をしたとき、UL−94 V−0級を満たすものである。なお、UL−94について、各V級の基準は、概略以下の通りである。
【0082】
V−0:1つの試料について2回接炎を行い、接炎後の5個の試料(10回接炎)の合計火炎保持時間が50秒以内であり、1回接炎したときの火炎保持時間が10秒以内であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する発火粒(ドリップ)を滴下しない。
V−1:接炎後の5個の試料(10回接炎)の合計火炎保持時間が250秒以内であり、1回接炎したときの火炎保持時間が30秒以内であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する発火粒(ドリップ)を滴下しない。
【0083】
V−2:接炎後の5個の試料(10回接炎)の合計火炎保持時間が250秒以内であり、1回接炎したときの火炎保持時間が30秒以内であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する発火粒(ドリップ)を滴下する。
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、射出成型、押出成形、ブロー成型など任意の成型方法を使用し、任意の形状の成形することができる。
【0084】
こうして得られた成型品は、優れた耐衝撃性を有するとともに高い耐熱性を有しており、しかも難燃性にも優れている。このため、本発明の樹脂組成物の成型品は、OA機器や家電の外板、ハウジング材、電子電気機器部品として好適である。
【0085】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂組成物は、耐衝撃性や成型性を損なうことなく高度な難燃性を具備し、かつ塩素、臭素化合物等からなる難燃剤を含まないことから燃焼時に当該難燃剤に起因するハロゲンを含むガスの発生の懸念もなく、環境保護の面においても優れた性能を有している。
【0086】
このため、このような難燃性樹脂組成物は、テレビ、モニター、プリンター、コピー機、ファクシミリ、パソコンなどの家電機器、OA機器のハウジング材および部品、バッテリーパック、液晶の反射板、自動車用材料、建築用材料などの高い難燃性が要求される用途において、極めて有用である。
【0087】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、特にことわりのない限り、実施例中の部は重量部を、%は重量%を表す。
【0088】
なお、各成分として次の化合物を使用した。
▲1▼ポリカーボネート系樹脂(PC):
ビスフェノールAのポリカーボネート:LEXAN(商品名、日本ジーイープラスチックス社製)、塩化メチレン中、25℃で測定した固有粘度0.42dl/g、粘度平均分子量(Mv)=18000(計算値)。
▲2▼ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):
ポリフロン D−2C(商標、ダイキン化学工業(株))。 水にPTFEを乳化分散させたもので、PTFE含有量が60%。 なお、ポリフロン D−2Cは、ポリカーボネート系樹脂に対して、0.82%の量で添加されるので、実際のPTFEは、0.49%添加されたことになる。また、水は、樹脂組成物調製時に揮散する。
▲3▼シリコーン樹脂
シリコーン樹脂は以下のようにして、合成したものを使用した。
【0089】
【調製例1】
攪拌機、加熱ジャケット、還流冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、トルエン 1764部、イオン交換水 1050部を仕込み、攪拌を行った。メチルトリイソプロポキシシラン990.3部(4.5モル)とフェニルトリクロロシラン 634.8部(3モル)を仕込み混合を行い、この混合物を、滴下ロートを使用して、フラスコ内へ45分かけて滴下し、フラスコ内でシラン化合物の加水分解を行った。滴下終了から、60分後に攪拌を止め、二層分離した反応液から有機層を取り出し、該有機層を水洗して塩酸分を除去したのち、さらに有機層を減圧して、有機層中の水分の除去を行い、分子量2500のシラノール基含有シリコーン樹脂トルエン溶液(P−1)を得た。
【0090】
次に得られたシリコーン樹脂トルエン溶液(P−1)をシリコーン樹脂分に換算したときの600部に対し、トリメチルクロロシラン57部(0.52モル)およびヘキサメチルジシラザン95部(0.589モル)を仕込み、70〜80℃の温度となるように加熱攪拌を行った。2時間加熱攪拌後、IRによりOH基の吸収(3200cm-1)が減少したことを確認し、次いで反応によって生じたアンモニア、塩酸、あるいはそれらの塩を水洗によって除去し、さらに水層を分離除去した後、トルエン層を減圧して水分の除去を行った。続いて、濾過助剤を用いて、水洗で十分取り除けなかった塩の濾過を行い、トルエンを除去してトリメチルシリル化された分子量3400のシリコーン樹脂(A−1)を得た。なお、シリコーン樹脂(A−1)の重量平均分子量は、GPC(HLC−802U 東ソー(株)製)を用いて(ポリスチレン換算の)分子量を測定し、OH基の有無はIR測定より、ランベルトの法則を用いて確認した。
【0091】
【調製例2〜5】
トルエン、イオン交換水、フェニルトリクロロシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンの仕込み量を表1に示すようにした以外は、上記調製例1と同様にして、シリコーン樹脂(A−2)〜(A−5)を合成した。得られたシリコーン樹脂の特性を、表1に示す。
【0092】
【調製例6】
攪拌機、加熱ジャケット、還流冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、トルエン 1350部、イオン交換水 1600部を仕込み、攪拌を行う。滴下ロートにメチルトリイソプロポキシシラン950.4部(4.32モル)とフェニルトリクロロシラン 304.7部(1.44モル)、ジフェニルジクロロシラン364.6部(1.44モル)を仕込み、混合を行い、この混合物をフラスコ内に、45分かけて滴下を行い、シラン化合物の加水分解を行った。全量滴下終了後、トルエンの還流温度にて2時間加熱攪拌を行い、冷却後に攪拌を止め、二層分離した反応液から有機層を取り出し、有機層(トルエン層)を水洗して塩酸分を除去し、さらに有機層を減圧して、有機層中の水分の除去を行い、分子量18000のシラノール基含有シリコーン樹脂トルエン溶液を得た。次にシリコーン樹脂分に換算したときに770部となる量でシリコーン樹脂を含むトルエン溶液に、トリメチルクロロシラン57部(0.52モル)およびヘキサメチルジシラザン95部(0.589モル)を仕込み、70〜80℃の温度で加熱攪拌を行った。2時間加熱攪拌後、IRによりOH基の吸収(3200cm-1)が減少したことを確認し、反応によって生じたアンモニア、塩酸、あるいはそれらの塩を水洗によって除去し、水層を分離後、減圧して水分の除去を行った。続いて、濾過助剤を用いて、水洗で充分に取り除けなかった塩の濾過を行い、トルエンを除去してトリメチルシリル化された分子量20000のシリコーン樹脂(B−1)を得た。
【0093】
得られたシリコーン樹脂(B−1)の特性を表1に示す。
【0094】
【調製例7】
トルエン、イオン交換水、フェニルトリクロロシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジフェニルジクロロシランの仕込み量を表1に示すようにした以外は、上記調製例5と同様にして、シリコーン樹脂(B−2)を合成した。
【0095】
得られたシリコーン樹脂の特性を、表1に示す。
【0096】
【調製例8】
攪拌機、加熱ジャケット、還流冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、トルエン 1350部、イオン交換水 1600部を仕込み、攪拌を行う。滴下ロートにメチルトリイソプロポキシシラン554.4部(2.52モル)とフェニルトリクロロシラン 685.6部(3.24モル)、ジフェニルジクロロシラン364.6部(1.44モル)を仕込み混合を行い、この混合物をフラスコ内へ45分かけて、滴下して、該シランの加水分解を行った。滴下終了後、トルエンの還流温度にて10時間加熱攪拌を行い、冷却後に攪拌を止め、分液後有機層を水洗して塩酸分を除去し、さらに有機層を減圧脱溶し、有機層中の水分の除去を行い、分子量74000のシラノール基含有シロキサン樹脂トルエン溶液を得た。次に該シロキサン樹脂トルエン溶液・樹脂分換算770部に対しトリメチルクロロシラン57部(0.52モル)およびヘキサメチルジシラザン95部(0.589モル)を仕込み加熱攪拌を行った。70〜80℃で2時間加熱攪拌後、IRによりOH基の吸収(3200cm-1)が減少したことを確認し、反応によって生じたアンモニア、塩酸、あるいはそれらの塩を水洗によって除去し、水層を分離後、減圧して水分の除去を行った。続いて、濾過助剤を用いて、水洗で充分に取り除けなかった塩の濾過を行い、トルエンを除去して、IRによりOH基の吸収(3200cm-1)が減少したことを確認した後、反応によって生じたアンモニア、塩酸、あるいはそれらの塩を水洗によって除去し、水層を分離後、減圧脱水により水分の除去を行った。続いて、濾過助剤を用いて、濾過を行い、トルエンを脱溶除去してトリメチルシリル化された分子量75000のシリコーン樹脂(B−3)を得た。
【0097】
得られたシリコーン樹脂の特性を、表1に示す。
【0098】
【表1】
Figure 0004322376
【0099】
【実施例1】
ポリカーボネート100重量部、シリコーン樹脂(A-1)2重量部、PTFE0.49重量部、リン系安定剤トリス(2,4ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(商標;Irgafos168、チバガイキー社製)0.045重量部を混合し、2軸押出機により、スクリュー回転数270rpm 、バレル温度280℃の押出し条件にて押出しを行い、所定の長さに切断してペレットを製造した。このペレットを用いて、100t 射出成型機により、バレル温度280℃、金型温度80℃の成型条件にて、試験片(125×13×1.6mm)を射出成形した。得られた成型品について、難燃性試験を行った。
【0100】
難燃性試験は、UL−94に準拠した試験を行った。すなわち、アンダーライターズラボラトリーインコーポレーションのブレテン94”材料分類のための燃焼試験”(以下、UL−94という)に示される試験方法に従って、試験した。具体的には、鉛直に保持した試験片にバーナーの炎を10秒間接炎し、火炎保持時間を測定する。この接炎を一つの試料当たり2回、5本の試料について行い、10回接炎したときの合計火炎保持時間、および1回の接炎における火炎保持時間を評価し、さらに、発火粒を滴下するかどうか評価する。この評価から、以下の等級に分けられる。本実施例では、V−0に合格するか否かを評価した。
【0101】
V−0:接炎後の5個の試料(10回接炎)の合計火炎保持時間が50秒以内であり、1回の接炎における火炎保持時間が10秒以内であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する発火粒を滴下しない。
V−1:接炎後の5個の試料(10回接炎)の合計火炎保持時間が250秒以内であり、1回の接炎における火炎保持時間が30秒以内であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する発火粒を滴下しない。
【0102】
V−2:接炎後の5個の試料(10回接炎)の合計火炎保持時間が250秒以内であり、1回の接炎における火炎保持時間が30秒以内であり、かつ全試料とも脱脂綿に着火する発火粒を滴下する。
結果を表2に示す。
【0103】
【実施例2〜5】
実施例1において、シリコーン樹脂(A-1)の代わりに、シリコーン樹脂(A-2)〜(A-5)を使用した以外は実施例1と同様にしてペレットを作製し、難燃性試験を行った。
結果を表2に示す。
【0104】
【比較例1〜7】
表2のような組成となるようにした以外は、実施例1と同様にしてペレットを作製し、難燃性試験を行った。なお、同様にポリカーボネート100重量部に対して、リン系安定剤トリス(2,4ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(商標;Irgafos168、チバガイキー社製)0.045重量部を添加した。
結果を表2に示す。
【0105】
【表2】
Figure 0004322376
【0106】
表2に示されているように、本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂に、T単位とM単位とからなるシリコーン樹脂とドリップ防止剤とが両方とも添加されているので、燃焼時間が短く、しかも、ドリップの発生も抑制され、高度な難燃性(UL94 V−0)を有している。

Claims (4)

  1. (A)ポリカーボネート系樹脂と、
    (B)RSiO1.5で表されるシロキサン単位(T単位)とR3SiO0.5で表されるシロキサン単位(M単位)から構成されるシリコーン樹脂、またはT単位とM単位とSiO2.0で表されるシロキサン単位(Q単位)とから構成され、重量平均分子量が3000〜10000の範囲にあるシリコーン樹脂(Rは、炭素数1〜10の非置換または置換1価炭化水素基を表す)と、
    (C)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるドリップ防止剤とを含み、かつポリカーボネート系樹脂(A)100重量部に対して、シリコーン樹脂(B)を0.1〜9重量部、およびドリップ防止剤(C)を0.01〜10重量部の量で含むことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  2. 前記ポリテトラフルオロエチレンを、ポリカーボネート系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜2重量部の量で含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物から成形されてなる電気電子機器部品。
  4. 請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物から成形されてなるハウジング材。
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